JP2017101164A - アルミニウムキレート系潜在性硬化剤、その製造方法及び熱硬化型エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

アルミニウムキレート系潜在性硬化剤、その製造方法及び熱硬化型エポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】多官能イソシアネート化合物の界面重合物をマイクロカプセル壁として利用しているにも関わらず、低温領域で良好な熱応答性を示すアルミキレート系潜在性硬化剤を提供する。
【解決手段】熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させるためのアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、アルミニウムキレート系硬化剤を、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時に、ラジカル重合開始剤の存在下でポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合させて得た多孔性樹脂に保持させた後、扁平化処理を施し、扁平化したものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤のうち、アルミニウムキレート系硬化剤が多孔性樹脂に保持されてなるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤に関する。
従来、エポキシ樹脂に対する低温速硬化活性を示す硬化剤として、多官能イソシアネート化合物を水中で界面重合させて得た真球状の多孔性樹脂にアルミニウムキレート系硬化剤を保持させたマイクロカプセル化アルミニウムキレート系潜在性硬化剤が知られている。このようなアルミニウムキレート系潜在性硬化剤に対し、低温領域における熱応答性を今まで以上にシャープなものとするために、多官能イソシアネート化合物の界面重合の際に、イソシアネート基との反応性が低いラジカル重合性化合物としてジビニルベンゼンを共存させ、ラジカル重合を同時に行うことが提案されている(特許文献1)。
ところで、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤が配合されている熱硬化型エポキシ樹脂組成物が適用される電子部品の熱による損傷や性能低下が問題視されるにつれ、特許文献1で提案されているアルミニウムキレート系潜在性硬化剤に対して、今まで以上に発熱開始温度と発熱ピーク温度とを低温側にシフトすることが求められるようになっている。この求めに応ずるため、高シェア型の乳化装置を用いて多官能イソシアネート化合物を微細乳化状態とした上で界面重合させることによりアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の表面積を増大させることが試みられている。
特開2009−221465号公報
しかしながら、高シェア型の乳化装置は、その乳化処理時にかなりの熱を発生するため、多官能イソシアネート化合物と水との反応が促進され、多量の粒子凝集物が生じ、意図した微細乳化状態での多官能イソシアネート化合物の界面重合が困難になるという問題があった。
本発明の目的は、以上の従来技術の課題を解決しようとするものであり、多官能イソシアネート化合物を水中で界面重合させて得た多孔性樹脂にアルミニウムキレート系硬化剤を保持させたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の表面積を増大させることにより、低温領域における熱応答性を改善することである。
本発明者は、粒子の表面積を大きくするために有用な高シェア型乳化装置の使用が制限されることから、界面重合によりいったん得られた真球状の粒子自体の表面積を増大させるためには、個々の粒子について、実質的に体積を変えずにその形状を扁平なものとすることにより可能になることを見出した。そして、それを可能とするには、界面重合の際に共存させるラジカル重合性化合物として、ジビニルベンゼンに代えて、従来は粒子凝集物を生成してしまうために使用されていなかった親水性構造を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用して粒子凝集物を積極的に生成させ、それを解砕しながら個々の粒子を押圧するという扁平化処理を施せばよいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させるためのアルミニウムキレート系潜在性硬化剤であって、アルミニウムキレート系硬化剤を、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時に、ラジカル重合開始剤の存在下でポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合させて得た多孔性樹脂に保持させた後、扁平化処理が施されていることを特徴とするアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を提供する。
また、本発明は、上述のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の製造方法であって、アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート及びラジカル重合開始剤を、揮発性有機溶媒に溶解または分散させて得た油相を、分散剤を含有する水相に投入しながら加熱撹拌することにより、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時にポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合反応させ、それにより得られる多孔性樹脂に、アルミニウムキレート系硬化剤を保持させ、得られた粒子凝集物を扁平化処理することを特徴とする製造方法を提供する。
更に、本発明は、上述のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、エポキシ樹脂と、シラン化合物とを含有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物を提供する。
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤においては、エポキシ樹脂を硬化させることのできるアルミニウムキレート系硬化剤を、多官能イソシアネート化合物とラジカル重合性化合物としてポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとを同時にそれぞれ界面重合とラジカル重合させて粒子凝集物として得られる多孔性樹脂に保持させている。このため多孔性樹脂壁が脆弱化するだけでなく、扁平化処理により表面積を増大させることができる。その結果、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、低温領域でシャープな熱応答性を示すことができる。
比較例1の重合液回収品を処理ガス圧0.6Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の粒度分布チャートである。 比較例2の凝集粒子層回収品を処理ガス圧0.6Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の粒度分布チャートである。 実施例1の凝集粒子層回収品を処理ガス圧0.9Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の粒度分布チャートである。 比較例1の重合液回収品を処理ガス圧0.6Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(2000倍)である。 比較例2の凝集粒子層回収品を処理ガス圧0.6Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(2000倍)である。 実施例1の凝集粒子層回収品を処理ガス圧0.9Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(5000倍)である。 実施例1の凝集粒子層回収品の処理ガス圧0.9Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(25000倍)である。 比較例1と実施例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を使用した熱硬化型エポキシ樹脂組成物のDSCチャートである。 実施例1と実施例2のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を使用した熱硬化型エポキシ樹脂組成物のDSCチャートである。 実施例2の凝集粒子層回収品を処理ガス圧0.98Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(5000倍)である。 実施例2の凝集粒子層回収品を処理ガス圧0.98Mpaで扁平化処理することにより得たアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(25000倍)である。
<アルミニウムキレート系潜在性硬化剤>
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させるためのアルミニウムキレート系潜在性硬化剤であって、アルミニウムキレート系硬化剤を、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時に、ラジカル重合開始剤の存在下でラジカル重合性化合物であるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合させて得た多孔性樹脂に保持させた後、扁平化処理が施されているものである。より具体的には、アルミニウムキレート系硬化剤のコアの周囲を多孔性樹脂のシェルで被覆した単純な構造のマイクロカプセルではなく、多孔性樹脂マトリックス中に存在する微細な多数の孔にアルミニウムキレート系硬化剤が保持された構造の粒子であって、扁平化処理が施されているものである。
(扁平化処理)
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、主として界面重合法を利用して製造されるため、その形状は本来的には球状となるべきものであるが、界面重合の際にラジカル重合させるラジカル重合性化合物として親水性構造部を有するポリアルキレングルコールジ(メタ)アクリレートを使用しているため、重合反応中に粒子凝集物が粒子凝集層として生成することになる。本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤においては、生成した粒子凝集層を濾取し、洗浄後、乾燥した後、解砕しながら個々の粒子を押圧するという扁平化処理が施される。それにより球を押し潰した扁平形状粒子となる。
このような扁平化処理の具体例としては、ジェットミル(例えば、(株)セイシン企業製のA−Oジェットミル)を用いた解砕処理が挙げられる。この解砕処理の条件としては、通常、温度10〜40℃、処理ガス圧力0.5〜1.5MPaという条件が挙げられる。使用ガスとしては、空気でもよいが不活性ガス(例えば、窒素ガス)が好ましい。なお、このようなジェットミルによる解砕処理の際の処理ガス圧が十分でない場合には、解砕も進まず、扁平化もされにくいため、扁平化処理が施されたとはいえない。
このような扁平化処理の結果、本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定により得られる体積平均粒子径(即ち、球を押し潰した扁平形状粒子の扁平面の長径)は、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.5〜10μmとなり、CV値は好ましくは5〜80%、より好ましくは10〜60%となる。ここで、CV値は、粒子径の標準偏差を体積平均粒子径で除した数値であり、その値が大きくなると、粒子径のバラツキが大きいことを意味する。
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の扁平化度は、体積平均粒子径と扁平形状粒子の平均厚みとの差を体積平均粒径で除した数値で表すと、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.3〜0.9となる。この範囲であれば、低温活性化という効果が得られる。ここで、扁平形状粒子の平均厚みは、画像解析式粒度分布測定装置により求めることができる数値である。
なお、扁平化している粒子の全粒子中の割合は、発明の効果を十分に得るためには、少なくとも質量基準で30%以上であることが好ましい。
また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、使用する多孔性樹脂の架橋度が小さすぎるとその潜在性が低下し、大きすぎるとその熱応答性が低下する傾向があるので、使用目的に応じて、架橋度が調整された多孔性樹脂を使用することが好ましい。ここで、多孔性樹脂の架橋度は、微小圧縮試験により計測することができる。
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を構成する多孔性樹脂の孔の大きさは、扁平化処理の前後で大きな変動はなく、通常、1〜500nm、好ましくは10〜100nmである。孔の大きさは、細孔分布測定装置により測定することができる。
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、その界面重合時に使用する有機溶剤を実質的に含有していないこと、具体的には、1ppm以下であることが、硬化安定性の点で好ましい。
また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤における多孔性樹脂とアルミニウムキレート系硬化剤との配合は、アルミニウムキレート系硬化剤の配合量が少なすぎると、硬化させるべきエポキシ樹脂の硬化性が低下し、多すぎるとアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の潜在性が低下するので、多孔性樹脂を構成する多官能イソシアネート化合物とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとの合計100質量部に対し、アルミニウムキレート系硬化剤を、好ましくは10〜500質量部、より好ましくは10〜300質量部である。
(アルミニウムキレート系硬化剤)
また、本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を構成するアルミニウムキレート系硬化剤としては、式(1)に表される、3つのβ−ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体化合物が挙げられる。
ここで、R、R及びRは、それぞれ独立的にアルキル基又はアルコキシル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、オレイルオキシ基等が挙げられる。
式(1)で表されるアルミニウムキレート系硬化剤の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
(多官能イソシアネート化合物)
多孔性樹脂を構成するための多官能イソシアネート化合物は、好ましくは一分子中に2個以上のイソシアネート基、好ましくは3個のイソシアネート基を有する化合物である。このような3官能イソシアネート化合物の更に好ましい例としては、トリメチロールプロパン1モルにジイソシアネート化合物3モルを反応させた式(2)のTMPアダクト体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させた式(3)のイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モルのうちの2モルから得られるジイソシアネートウレアに残りの1モルのジイソシアネートが縮合した式(4)のビュウレット体が挙げられる。
上記式(2)〜(4)において、置換基Rは、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた部分である。このようなジイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられる。
(ポリアルキレングルコールジ(メタ)アクリレート)
また、多孔性樹脂を構成するためのもう一つの成分であるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、イソシアネート化合物の界面重合の際に、同時にラジカル重合し、マイクロカプセル壁となる多孔性樹脂の機械的性質を改質し、また、分子内に親水性構造(ポリアルキレンオキシ構造)を有しているため粒子凝集物を生成させやすくし、続く扁平化処理により、粒子表面積を増大させることができる。これにより、エポキシ樹脂の硬化時の熱応答性、特に低温領域でシャープな熱応答性を実現することができる。この理由は明確ではないが、界面重合とラジカル重合とが同時に生じ、多孔性樹脂中に層分離構造が形成され、その結果、イソシアネート化合物の単独重合系よりもポリウレア−ウレタン部位の架橋密度が小さくなることが一因と考えられる。
このようなポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのポリアルキレン残基としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール等のポリブチレングリコール、これらのブロックポリマータイプのグリコール、ランダムポリマータイプのグリコール等が挙げられる。中でも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールが好ましく、特にテトラエチレングリコールが好ましい。
(メタ)アクリレート残基としては、アクリレート、メタクリレートが挙げられるが、アクリレートが好ましい。従って、特に好ましいポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとして、テトラエチレングリコールジアクリレートを挙げることができる。
(他のラジカル重合性化合物)
本発明においては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートに加え、発明の効果を損なわない範囲で、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の熱応答性を変化させたりするために、他の単官能ラジカル重合性化合物や多官能ラジカル重合性化合物を併用してもよい。他のラジカル重合性化合物を併用した場合、全ラジカル重合性化合物中のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上とすることが好ましい。
単官能ラジカル重合性化合物としては、スチレン、メチルスチレン等の単官能ビニル系化合物、ブチルアクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。多官能ラジカル重合性化合物としては、ジビニルベンゼン等の多官能ビニル系化合物、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系化合物を例示することができる。
(ラジカル重合開始剤)
本発明で使用するラジカル重合開始剤としては、多官能イソシアネート化合物の界面重合条件下で、ラジカル重合を開始させることができるものであり、例えば、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤等を使用することができる。
本発明において、多官能イソシアネート化合物を界面重合させ同時に、ラジカル重合開始剤の存在下でポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合させて得られる多孔性樹脂は、界面重合の間にイソシアネート基の一部が加水分解を受けてアミノ基となり、そのアミノ基とイソシアネート基とが反応して尿素結合を生成してポリマー化して得られる多孔性ポリウレアという側面と、ラジカル重合の間に、ラジカル重合開始剤の分解により生じたラジカルが不飽和結合を連鎖的に結合してなる2次元的ないしは3次元的ポリマーという側面がある。このような側面を有する多孔性樹脂とその孔に保持されたアルミニウムキレート系硬化剤とからなるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化のために加熱されると、明確な理由は不明であるが、多孔性樹脂に保持されているアルミニウムキレート系硬化剤が、多孔性樹脂の外部に存在するシランカップリング剤やシラノール化合物等のシラン系化合物と接触し、エポキシ樹脂のカチオン重合を開始させることができるようになる。
なお、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の構造上、その表面にもアルミニウムキレート系硬化剤が存在することになると思われるが、界面重合の際に重合系内に存在する水により不活性化し、アルミニウムキレート系硬化剤は多孔性樹脂の内部で保持されたものだけが活性を保持していることになり、結果的に得られる硬化剤は潜在性を獲得できたものと考えられる。
<アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の製造方法>
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート及びラジカル重合開始剤を、揮発性有機溶媒に溶解または分散させて得た油相を、分散剤を含有する水相に投入しながら加熱撹拌することにより、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時にポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合反応させ、それにより得られる多孔性樹脂に、アルミニウムキレート系硬化剤を保持させ、得られた粒子凝集物を扁平化処理することにより製造することができる。以下、更に詳細に説明する。
この製造方法においては、まず、アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびラジカル重合開始剤を揮発性有機溶剤に溶解または分散させ、界面重合における油相を調製する。ここで、揮発性有機溶剤を使用する理由は以下の通りである。即ち、通常の界面重合法で使用するような沸点が300℃を超える高沸点溶剤を用いた場合、界面重合の間に有機溶剤が揮発しないために、イソシアネート−水との接触確率が増大せず、それらの間での界面重合の進行度合いが不十分となるからである。そのため、界面重合させても良好な保形性の重合物が得られ難く、また、得られた場合でも重合物に高沸点溶剤が取り込まれたままとなり、熱硬化型樹脂組成物に配合した場合に、高沸点溶剤が熱硬化型樹脂組成物の硬化物の物性に悪影響を与えるからである。このため、この製造方法においては、油相を調製する際に使用する有機溶剤として、揮発性のものを使用することが好ましい。
このような揮発性有機溶剤としては、アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、多官能ラジカル重合性化合物およびラジカル重合開始剤のそれぞれの良溶媒(それぞれの溶解度が好ましくは0.1g/ml(有機溶剤)以上)であって、水に対しては実質的に溶解せず(水の溶解度が0.5g/ml(有機溶剤)以下)、大気圧下での沸点が100℃以下のものが好ましい。このような揮発性有機溶剤の具体例としては、アルコール類、酢酸エステル類、ケトン類等が挙げられる。中でも、高極性、低沸点、貧水溶性の点で酢酸エチルが好ましい。
揮発性有機溶剤の使用量は、アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびラジカル重合開始剤の合計量100質量部に対し、少なすぎると粒子サイズ及び硬化特性が多分散化し、多すぎると硬化特性が低下するので、好ましくは10〜500質量部である。
なお、揮発性有機溶剤の使用量範囲内において、揮発性有機溶剤の使用量を比較的多く使用すること等により、油相となる溶液の粘度を下げることができるが、粘度を下げると撹拌効率が向上するため、反応系における油相滴をより微細化かつ均一化することが可能になり、結果的に得られる潜在性硬化剤粒子径をサブミクロン〜数ミクロン程度の大きさに制御しつつ、粒度分布を単分散とすることが可能となる。油相となる溶液の粘度は1〜500mPa・sに設定することが好ましい。
また、多官能イソシアネート化合物等を水相に乳化分散する際にPVAを用いた場合、PVAの水酸基と多官能イソシアネート化合物が反応してしまうため、副生成物が異物として潜在性硬化剤粒子の周囲に付着してしまったり、粒子形状そのものが異形化してしまったりする。この現象を防ぐためには、多官能イソシアネート化合物と水との反応性を促進すること、あるいは多官能イソシアネート化合物とPVAとの反応性を抑制することが挙げられる。
多官能イソシアネート化合物と水との反応性を促進するためには、アルミニウムキレート系硬化剤の配合量を多官能イソシアネート化合物の重量で好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下とする。これにより、多官能イソシアネート化合物と水とが接触する確率が高くなり、PVAが油相滴表面に接触する前に多官能イソシアネート化合物と水とが反応し易くなる。
また、多官能イソシアネート化合物とPVAとの反応性を抑制するためには、油相中のアルミニウムキレート系硬化剤の配合量を増大させることが挙げられる。具体的には、アルミニウムキレート系硬化剤の配合量を多官能イソシアネート化合物の重量で好ましくは等倍以上、より好ましくは1.0〜3.0倍とする。これにより、油相滴表面におけるイソシアネート濃度が低下する。さらに多官能イソシアネート化合物は水酸基よりも加水分解により形成されるアミンとの反応(界面重合)速度が大きいため、多官能イソシアネート化合物とPVAとの反応確率を低下させることができる。
アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびラジカル重合開始剤を揮発性有機溶剤に溶解または分散させる際には、大気圧下、室温で混合撹拌するだけでもよいが、必要に応じ、加熱してもよい。
次に、この製造方法においては、アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびラジカル重合開始剤を揮発性有機溶剤に溶解または分散した油相を、分散剤を含有する水相に投入し、加熱撹拌することにより界面重合とラジカル重合とを行う。ここで、分散剤としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等の通常の界面重合法において使用されるものを使用することができる。分散剤の使用量は、通常、水相の0.1〜10.0質量%である。
油相の水相に対する配合量は、油相が少なすぎると多分散化し、多すぎると微細化により凝集が生ずるので、水相100質量部に対し、好ましくは5〜70質量部である。
界面重合における乳化条件としては、油相の大きさが好ましくは0.5〜100μmとなるような撹拌条件(撹拌装置ホモジナイザー;撹拌速度6000rpm以上)で、重合条件としては、通常、大気圧下、温度30〜80℃、撹拌時間2〜12時間、加熱撹拌する条件を挙げることができる。
界面重合およびラジカル重合終了後に、重合体微粒子が凝集した凝集粒子層を濾別し、必要に応じて水等の洗浄液で洗浄した後、自然乾燥もしくは真空乾燥する。続いて、得られた粒子凝集物を扁平化処理することにより本発明で使用できるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を得ることができる。
本発明における扁平化処理とは、既に説明したように、粒子凝集物を解砕しながら個々の粒子を押圧する処理であり、それにより球を押し潰した扁平形状粒子が得られる。このような扁平化処理の具体例としては、ジェットミル(例えば、(株)セイシン企業製のA−Oジェットミル)を用いた解砕処理が挙げられる。この解砕処理の条件としては、通常、温度10〜40℃、処理ガス圧力0.5〜1.5MPaという条件が挙げられる。
なお、本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の製造方法において、多官能イソシアネート化合物の種類や使用量、アルミニウムキレート系硬化剤の種類や使用量、界面重合条件、あるいはポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびラジカル重合開始剤の種類や使用量、ラジカル重合条件、扁平化条件等を変化させることにより、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の硬化特性をコントロールすることができる。例えば、重合温度を低くすると硬化温度を低下させることができ、反対に重合温度を高くすると硬化温度を上昇させることができる。また、ジェットミルの処理エアー圧力を高めると、扁平化度を高め、表面積を増大させることができる。
なお、本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の製造方法において、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、テトラエチレングリコールジアクリレートが特に好ましく、扁平化処理としては、ジェットミルによる解砕処理が好ましく、また、アルミニウムキレート系硬化剤の含有量が、多官能イソシアネート化合物とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとの合計100質量部に対し、10〜500質量部であることが好ましい。
(熱硬化型エポキシ樹脂組成物)
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、エポキシ樹脂およびシラン系化合物に添加することにより、低温速硬化性の熱硬化型エポキシ樹脂組成物を提供することができる。このような熱硬化型エポキシ樹脂組成物も本発明の一部である。
なお、本発明の熱硬化型エポキシ樹脂組成物におけるアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の含有量は、少なすぎると十分に硬化せず、多すぎるとその組成物の硬化物の樹脂特性(例えば、可撓性)が低下するので、エポキシ樹脂100質量部に対し1〜70質量部、好ましくは1〜50質量部である。
本発明の熱硬化型エポキシ樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂は、成膜成分として使用されているものである。そのようなエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂のみならず、従来、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤とシラノール化合物との混合系においては使用できなかったグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も使用することができる。このようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エステル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、樹脂特性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく使用できる。また、これらのエポキシ樹脂にはモノマーやオリゴマーも含まれる。
本発明の熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、樹脂成分として、このようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の他に、発熱ピークをシャープにするために、オキセタン化合物を併用することもできる。好ましいオキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4´−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸 ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)]メチルエステル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン等を挙げることができる。オキセタン化合物を使用する場合、その使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜70質量部である。
本発明の熱硬化型エポキシ樹脂組成物に配合するシラン系化合物は、特開2002−212537号公報の段落0007〜0010に記載されているように、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤に保持されていたアルミニウムキレート系硬化剤と共働して熱硬化性樹脂(例えば、熱硬化型エポキシ樹脂)のカチオン重合を開始させる機能を有する。従って、このような、シラン系化合物を併用することにより、エポキシ樹脂の硬化を促進するという効果が得られる。このようなシラン系化合物としては、高立体障害性のシラノール化合物や、分子中に1〜3の低級アルコキシ基を有するシランカップリング剤等を挙げることができる。なお、シランカップリング剤の分子中に熱硬化性樹脂の官能基に対して反応性を有する基、例えば、ビニル基、スチリル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等を有していてもよいが、アミノ基やメルカプト基を有するカップリング剤は、本発明の潜在性硬化剤がカチオン型硬化剤であるため、アミノ基やメルカプト基が発生カチオン種を実質的に捕捉しない場合に使用することができる。
シラン系化合物として高立体障害性のシラノール化合物を使用した場合、本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤に対する高立体障害性のシラノール化合物の配合量は、少なすぎると硬化不足となり、多すぎると硬化後の樹脂特性が低下するので、熱硬化性樹脂100質量部に対し、シラノール化合物を好ましくは1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部である。
本発明で使用する高立体障害性のシラノール化合物は、トリアルコキシ基を有している従来シランカップリング剤とは異なり、以下の式(A)の化学構造を有するアリールシランオールである。
式中、mは2又は3、好ましくは3であり、但しmとnとの和は4である。従って、式(A)のシラノール化合物は、モノまたはジオール体となる。“Ar”は、置換されてもよいアリール基であるが、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基(例えば、1または2−ナフチル基)、アントラセニル基(例えば、1、2または9−アントラセニル基、ベンズ[a]−9−アントラセニル基)、フェナリル基(例えば、3または9−フェナリル基)、ピレニル基(例えば、1−ピレニル基)、アズレニル基、フルオレニル基、ビフェニル基(例えば、2,3または4−ビフェニル基)、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基等を挙げることができる。中でも、入手容易性、入手コストの観点からフェニル基が好ましい。m個のArは、いずれも同一でもよく異なっていてもよいが、入手容易性の点から同一であることが好ましい。
これらのアリール基は、1〜3個の置換基を有することができ、例えば、クロロ、ブロモ等のハロゲン;トリフルオロメチル;ニトロ;スルホ;カルボキシル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル;ホルミル等の電子吸引基、メチル、エチル、プロピルなどのアルキル;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ;ヒドロキシ;アミノ;モノメチルアミノ等のモノアルキルアミノ;ジメチルアミノ等のジアルキルアミノ等の電子供与基などが挙げられる。なお、置換基として電子吸引基を使用することによりシラノールの水酸基の酸度を上げることができ、逆に、電子供与基を使用することにより酸度を下げることができるので、硬化活性のコントロールが可能となる。ここで、m個のAr毎に、置換基が異なっていてもよいが、m個のArについて入手容易性の点から置換基は同一であることが好ましい。また、一部のArだけに置換基があり、他のArに置換基が無くてもよい。置換基を有するフェニル基の具体例としては、2、3または4−メチルフェニル基;2,6−ジメチル、3,5−ジメチル、2,4−ジメチル、2,3−ジメチル、2,5−ジメチルまたは3,4−ジメチルフェニル基;2,4,6−トリメチルフェニル基;2または4−エチルフェニル基等が挙げられる。
式(A)のシラノール化合物の中でも、好ましいものとして、トリフェニルシラノール又はジフェニルシランジオールが挙げられる。特に好ましいものは、トリフェニルシラノールである。
他方、シラン系化合物として分子中に1〜3の低級アルコキシ基を有するシランカップリング剤を使用した場合、本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤におけるシランカップリング剤の配合量は、少なすぎると添加効果が望めず、多すぎるとシランカップリング剤から発生するシラノレートアニオンによる重合停止反応の影響が生じてくるので、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤100質量部に対し1〜300質量部、好ましくは1〜100質量部である。
本発明において使用できるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
このようにして得られた本発明の熱硬化型エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として扁平化されたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を使用しているので、一剤型であるにも関わらず、保存安定性に優れていると同時に発熱開始温度と発熱ピーク温度とを低温側にシフトさせることができる。また、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤で十分に硬化させることができなかったグリシジルエーテル系エポキシ樹脂を含有しているにも関わらず、高立体障害性のシラノール化合物が含有されているので、熱硬化型エポキシ樹脂組成物を低温速硬化でカチオン重合させることができる。
本発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、更に必要に応じて、シリカ、マイカなどの充填剤、顔料、帯電防止剤などを含有させることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
比較例1、2
蒸留水800質量部と、界面活性剤(ニューレックスR−T、日油(株))0.05質量部と、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA−205、(株)クラレ)4質量部とを、温度計を備えた3リットルの界面重合容器に入れ、均一に混合し水相を調製した。
この水相に、更に、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24%イソプロパノール溶液(アルミキレートD、川研ファインケミカル(株))100質量部と、多官能イソシアネート化合物としてメチレンジフェニル−4,4´−ジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物(D−109、三井化学(株))70質量部と、ラジカル重合性化合物としてライトアクリレート4EG−A(主成分テトラエチレングリコールジアクリレート:共栄社化学(株))30質量部と、ラジカル重合開始剤(パーロイルL、日油(株))をラジカル重合性化合物の1質量%相当量(0.3質量部)とを、酢酸エチル100質量部に溶解した油相を投入し、ホモジナイザー(7600rpm/5分:T−50、IKAジャパン(株))で乳化混合後、200rpm、80℃、6時間という条件で界面重合とラジカル重合を行った。反応終了後、重合反応液を室温まで放冷し、重合液(上澄み)と、凝集粒子層とを別々に回収し、それぞれ蒸留水で洗浄した後、室温下で自然乾燥し、前者から重合液回収品を、後者から粒子凝集物である凝集粒子層回収品を得た。
得られた重合液回収品と凝集粒子層回収品とについて、ジェットミル(A−Oジェットミル、(株)セイシン企業)を用いて、室温下、0.6Mpaの処理エアー圧で解砕して扁平化処理することにより比較例1、2のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を得た。
実施例1
比較例2を繰り返すことにより得た凝集粒子層回収品について、ジェットミル(A−Oジェットミル、(株)セイシン企業)を用いて、室温下、0.9MPaの処理ガス(窒素ガス)圧で解砕して扁平化処理することにより扁平化したアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を得た。
(粒度分布測定)
比較例1、2及び実施例1で得られたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の粒度分布を、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置(MT3300EXII、マイクロトラック・ベル(株))を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。また、比較例1、比較例2及び実施例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の粒度分布チャートを、それぞれ図1、図2及び図3に示す。また、体積平均粒子径と扁平形状粒子の平均厚みとの差を体積平均粒子径で除した数値である扁平化度も併せて表1に示す。
(電子顕微鏡写真)
電子顕微鏡(JSM−6510A、日本電子(株))を用いて、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真を取得した。比較例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(2000倍)を図4に、比較例2のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(2000倍)を図5に、実施例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(5000倍)を図6に、そして同じく実施例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真(25000倍)を図7に示す。
(評価)
表1及び図1〜7から、凝集粒子層から取得したアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、扁平化するに十分な条件で扁平化処理すると、粒度分布チャートにおける凝集物ピークが消失して正規分布になり、また、体積平均粒子径と最大粒子径とは共に小さくなり、更にCV値も大きく減少することがわかる。電子顕微鏡写真からも粒子が扁平化していることが確認できる。
それに対し、重合液から取得した比較例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、粒度分布が当初から正規分布であり、扁平化処理により扁平化されにくいものであった。扁平化度も非常に小さい値であった。このため、扁平化処理しても体積平均粒子径と最大粒子径とがあまり変化しないことが強く推認された。また、扁平化処理の際の処理ガス圧が十分でない比較例2の場合、粒子凝集物が十分に解砕されず、しかも扁平化していないことがわかる。
(DSC測定)
アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の硬化性能を評価するために、比較例1及び実施例1のそれぞれで得られたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤4質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EP828、三菱化学(株))80質量部およびトリフェニルシラノール8質量部を均一に混合することにより熱硬化型エポキシ樹脂組成物を調製し、この熱硬化型エポキシ樹脂組成物を、示差走査熱分析装置(DSC)(DSC6200、(株)日立ハイテクサイエンス)を用いて熱分析した。得られた結果を表2と図8とに示す。ここで、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の硬化特性に関し、発熱開始温度は硬化開始温度を意味しており、発熱ピーク温度は最も硬化が活性となる温度を意味しており、発熱ピーク強度は速硬化性の指標であり、シャープであると速硬化性が良好であることを意味しており、そして総発熱量(ピーク面積)は硬化進行度合いを示しており、良好な低温速硬化性を実現するために、実用上250J/g以上であることが望まれる。
表2及び図8の結果の結果から、実施例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、扁平化しているので、粒子表面積が増大しており、扁平化していない比較例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤に比べて発熱開始温度が24℃低温側にシフトし、また、発熱ピーク温度も21℃低温側にシフトし、熱応答性が増大していることが確認できた。
実施例2
ライトアクリレート4EG−A(主成分テトラエチレングリコールジアクリレート:共栄社化学(株))に代えて、ラジカル重合性化合物としてライトアクリレート3EG−A(トリエチレングリコールジアクリレート:共栄社化学(株))を使用し、扁平化処理の処理ガス圧を0.9MPaから0.98MPaに高めること以外、実施例1を繰り返すことにより、アルミニウムキレート系潜在性硬化剤を調製し、更に熱硬化型エポキシ樹脂組成物を調製した。
得られた熱硬化型エポキシ樹脂組成物のDSC測定結果を表3と図9に示す。また、得られたアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の電子顕微鏡写真を図10(5000倍)と図11(2500倍)とに示す。なお、実施例1の実施例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤を使用して調製した熱硬化型エポキシ樹脂組成物の結果も参考のために併せて表記した。
表3及び図9の結果の結果から、実施例2のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤も、実施例1のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤と同様に、良好な低温活性を示し、熱応答性が増大していることが確認できた。また、図10及び図11の電子顕微鏡写真から扁平化していることが確認できた。
発明のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤は、多官能イソシアネート化合物の界面重合物をマイクロカプセル壁として利用しているにも関わらず、低温領域で良好な熱応答性を示す。従って、低温短時間接続用のエポキシ系接着剤の潜在性硬化剤として有用である。

Claims (9)

  1. 熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させるためのアルミニウムキレート系潜在性硬化剤であって、アルミニウムキレート系硬化剤を、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時に、ラジカル重合開始剤の存在下でポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合させて得た多孔性樹脂に保持させた後、扁平化処理が施されていることを特徴とするアルミニウムキレート系潜在性硬化剤。
  2. レーザー回折・散乱法による粒度分布測定により得られる体積平均粒子径が0.1〜30μmであり、CV値が5〜80である請求項1記載のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤。
  3. アルミニウムキレート系潜在性硬化剤の扁平化度が、体積平均粒子径と扁平形状粒子の平均厚みとの差を体積平均粒子径で除した数値で表した場合に0.1〜0.9である請求項1又は2記載のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤。
  4. ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが、テトラエチレングリコールジアクリレートである請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤。
  5. 扁平化処理が、ジェットミルによる解砕処理である請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤。
  6. アルミニウムキレート系硬化剤の含有量が、多官能イソシアネート化合物とポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとの合計100質量部に対し、10〜500質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤。
  7. 請求項1記載のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤の製造方法であって、
    アルミニウムキレート系硬化剤、多官能イソシアネート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート及びラジカル重合開始剤を、揮発性有機溶媒に溶解または分散させて得た油相を、分散剤を含有する水相に投入しながら加熱撹拌することにより、多官能イソシアネート化合物を界面重合させると同時にポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートをラジカル重合反応させ、それにより得られる多孔性樹脂に、アルミニウムキレート系硬化剤を保持させ、得られた粒子凝集物を扁平化処理することを特徴とする製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウムキレート系潜在性硬化剤と、エポキシ樹脂と、シラン系化合物とを含有する熱硬化型エポキシ樹脂組成物。
  9. シラン系化合物が、トリフェニルシラノールである請求項8記載の熱硬化型エポキシ樹脂組成物。
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