JP2017095305A - 半導体基板の製造方法、半導体基板および半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶欠陥による亀裂が抑制された半導体基板を生産性良く製造する方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1の製造方法はシリコン基板2上に炭化緩衝層3を形成し、シリコンが昇華しない第1温度で炭化緩衝層3上に第1炭化シリコン層5を形成し、第1温度を超える第2温度で第1炭化シリコン層5上に第2炭化シリコン層7を形成する。第1温度は700度以上1100度以下である。第2温度は700度以上1350度以下である。第1炭化シリコン層5の厚みは50nm以上5000nm以下である。
【選択図】図2
【解決手段】半導体基板1の製造方法はシリコン基板2上に炭化緩衝層3を形成し、シリコンが昇華しない第1温度で炭化緩衝層3上に第1炭化シリコン層5を形成し、第1温度を超える第2温度で第1炭化シリコン層5上に第2炭化シリコン層7を形成する。第1温度は700度以上1100度以下である。第2温度は700度以上1350度以下である。第1炭化シリコン層5の厚みは50nm以上5000nm以下である。
【選択図】図2
Description
本発明は、半導体基板の製造方法、半導体基板および半導体装置に関するものである。
従来、主に電力用途に用いられる高耐圧の半導体素子としてパワーデバイスと呼ばれるものがある。炭化シリコン(SiC)は、単結晶シリコンに比べ2倍以上のバンドギャップを有することから、このような高耐圧デバイス用の半導体材料として注目されている。炭化シリコンの単結晶形成法には昇華法によるバルク成長と基板上へのエピタキシャル成長による薄膜形成がある。バルク成長による炭化シリコンの形成では、高温相の結晶多形である六方晶(4H−SiC、6H−SiC)を形成することができるが、欠陥(マイクロパイプ)の低減や、結晶の大口径化が難しいという課題がある。
また、エピタキシャル成長による薄膜形成による炭化シリコンの形成は、シリコン基板等の立方晶単結晶基板上に低温相の結晶多形である立方晶炭化シリコン(3C−SiC)を形成させる方法がとられる。しかしながら、エピタキシャル成長による薄膜形成では大口径の単結晶膜形成、膜形成中での不純物添加が可能である一方、単結晶基板と3C−SiC膜との物性差による結晶欠陥発生が問題となる。例えば、単結晶基板としてシリコン基板を用いた場合、シリコン、3C−SiCの格子定数はそれぞれ0.543nm、0.436nmで、熱膨張係数もそれぞれ2.55×10-6K-1、2.77×10-6K-1と差がある。このため、3C−SiC膜中に物性差に起因した結晶欠陥や内部応力が発生してしまうという問題がある。
上記の課題又は問題の解決のための技術は従来から検討されており、例えばエピタキシャル成長による薄膜形成において、特許文献1には、シリコン基板上に緩衝層としての炭化シリコン膜を形成し、当該炭化シリコン膜の上に炭化シリコン単結晶膜を形成することが記載されている。
しかしながら、エピタキシャル成長による薄膜形成の場合には、しばしばエピタキシャル成長中にシリコン基板からシリコンが蒸発してしまう現象が見られる。この場合、基板表面にはシリコンが蒸発することによる空孔が形成され、当該空孔の近辺ではシリコン基板から蒸発したシリコン原子の影響を受け、局所的に炭化シリコン膜および炭化シリコン単結晶膜の成長阻害が起きるなど、結晶欠陥密度の高い領域が形成されてしまうという問題があった。
本発明は、上述した課題および問題の少なくともひとつを解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例を取ることができる。
[適用例1]
本発明に係る半導体基板の製造方法は、シリコン基板上に炭化緩衝層を形成し、シリコンが昇華しない第1温度で前記炭化緩衝層上に第1炭化シリコン層を形成し、前記第1温度を超える第2温度で前記第1炭化シリコン層上に第2炭化シリコン層を形成することを特徴とする。
本発明に係る半導体基板の製造方法は、シリコン基板上に炭化緩衝層を形成し、シリコンが昇華しない第1温度で前記炭化緩衝層上に第1炭化シリコン層を形成し、前記第1温度を超える第2温度で前記第1炭化シリコン層上に第2炭化シリコン層を形成することを特徴とする。
この方法によれば、炭化緩衝層形成の後にシリコンが昇華しない第1温度で第1炭化シリコン層を形成することにより炭化緩衝層に形成されたシリコンが昇華する経路を塞ぐことができ、第1炭化シリコン層上に形成する第2炭化シリコン層の結晶欠陥を少なくすることを図ることができる。
シリコン基板上に形成される炭化緩衝層は、ヘテロエピタキシャル成長により形成される炭化シリコンの層である。炭化緩衝層は、シリコンの格子定数と炭化シリコンの格子定数の違いを緩和する役割を有し、当該格子定数の違いによる結晶欠陥を抑制することを目的とする。当該ヘテロエピタキシャル成長に好ましい温度は、シリコン基板からのシリコンの昇華を招く温度でもある。このシリコンの昇華は、シリコン基板表面に欠損部分(ピット)を形成する共に炭化緩衝層に昇華経路としてピンホール(空洞)のような欠陥部位(ボイド)を形成してしまう要因となる。このため、炭化緩衝層には、格子定数の違いが原因である結晶欠陥とシリコンの昇華が原因である結晶欠陥の2種類の結晶欠陥が存在することになる。
しかしながら、炭化緩衝層の形成後、シリコンが昇華しない第1温度で第1炭化シリコン層を形成することで、上述したシリコン基板におけるピット及び炭化緩衝層おけるボイドに炭化シリコンが形成され、ピットおよびボイドを塞ぐことができる。これにより、シリコンが昇華する経路が塞がれ、以降はシリコンの昇華が原因となる結晶欠陥の発生を抑制することが可能となる。これにより、第1炭化シリコン層上に形成される第2炭化シリコン層においてシリコンの昇華による結晶欠陥を防ぐことができる。
炭化シリコンの層である炭化緩衝層の格子定数および第1炭化シリコン層の格子定数は、同じである。このため、第1炭化シリコン層を形成するエピタキシャル成長はホモエピタキシャル成長であり、比較的低温でエピタキシャル成長を行わせても、成長速度が遅くなるものの、この2つの層の界面が起点となる格子定数が原因の新たな結晶欠陥は生じにくい。
また、第2炭化シリコン層を形成するホモエピタキシャル成長における温度である第2温度は、第1温度よりも高い温度であり、第2炭化シリコン層の成長は第1炭化シリコン層の成長よりも早い。従って、より短時間で質の良い炭化シリコン層の形成が可能となる。
これにより第1温度よりも高い第2温度で第1炭化シリコン層上に第2炭化シリコン層をエピタキシャル成長させることで、第2炭化シリコン層をシリコンの昇華やシリコンの昇華に伴う結晶欠陥の影響の少ない、より質の高い炭化シリコン層とすることができる。
[適用例2]
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第1温度は700度以上1100度以下であることが好ましい。
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第1温度は700度以上1100度以下であることが好ましい。
この方法によれば、第1温度を700度以上1100度以下にすることにより、シリコン基板からのシリコンの昇華を抑えながら第1炭化シリコン層を形成することができる。
[適用例3]
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第2温度は1350度以下であることが好ましい。
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第2温度は1350度以下であることが好ましい。
この方法によれば、第1温度よりも高い第2温度を1350度以下とすることで、シリコン基板の溶融を防ぎながら、第2炭化シリコン層をエピタキシャル成長により形成することができる。シリコンの溶融温度は約1414度であり、シリコン基板に損傷を与えることなく炭化シリコン層を備える半導体基板の製造を行なうことができる。
[適用例4]
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第1炭化シリコン層の厚みは50nm以上5000nm以下であることが好ましい。
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第1炭化シリコン層の厚みは50nm以上5000nm以下であることが好ましい。
この方法によれば、第1炭化シリコン層の厚みが50nmから5000nmとなるようにエピタキシャル成長をさせることで、シリコン基板表面のピットおよび炭化緩衝層のボイドを塞ぐ厚さの炭化シリコンの層を形成することができる。炭化緩衝層は、異なる格子定数の緩和を目的とするものであり、1原子分の厚み以上であればよい。従って、炭化緩衝層の厚さは、第1炭化シリコン層の厚さが50nmから5000nmとなるようにしたときに上述したピット及びボイドが塞がれる厚さであれば十分に役割を果たすことができる。これにより、製造時における炭化緩衝層の厚さの上限値を規定することができ、製造装置の制御の容易化を図ることができる。
[適用例5]
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第2炭化シリコン層を形成する前に、前記第1炭化シリコン層上に開口部を有する所定の厚さのマスク層を設置することが好ましい。
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記第2炭化シリコン層を形成する前に、前記第1炭化シリコン層上に開口部を有する所定の厚さのマスク層を設置することが好ましい。
この方法によれば、第1炭化シリコン層上に開口部を有する所定の厚さのマスク層を形成することで、第1炭化シリコン層から伝播した上述した格子定数の違いに基づく結晶欠陥をマスク層により終端させることができる。
第2炭化シリコン層の形成前は、マスク層の開口部には第1炭化シリコン層が露出しており、第1炭化シリコン層の表面には、シリコンの昇華に伴う結晶欠陥はないものの、上述した格子定数に基づく結晶欠陥が残されている可能性がある、この格子定数に基づく結晶欠陥は第2炭化シリコン層にも引き継がれる。しかしながら、この結晶欠陥は第1炭化シリコン層表面から斜め方向に成長する結晶欠陥であり、マスク層の側壁で終端することができる。終端された結晶欠陥はそれ以上の成長はなく、第2炭化シリコン層のマスク層よりも上に形成された部分は質の良い炭化シリコンの層とすることができる。マスク層の厚さは、結晶欠陥を終端するのに十分な厚さがあればよい。
[適用例6]
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記マスク層の厚さは、前記開口部の幅の√2倍以上であることが好ましい。
上記の適用例における半導体基板の製造方法において、前記マスク層の厚さは、前記開口部の幅の√2倍以上であることが好ましい。
この方法によれば、マスク層の厚さをマスク層の開口部の幅の√2倍以上にすることで、開口部から成長してくる上述した格子定数に基づく結晶欠陥を確実に終端させることができる。
[適用例7]
本発明に係る半導体基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に設置された炭化緩衝層と、前記炭化緩衝層上に設置された第1炭化シリコン層と、前記第1炭化シリコン層上に設置された第2炭化シリコン層と、を備え、前記炭化緩衝層における欠陥部分が前記第1炭化シリコン層により塞がれていることを特徴とする。
本発明に係る半導体基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に設置された炭化緩衝層と、前記炭化緩衝層上に設置された第1炭化シリコン層と、前記第1炭化シリコン層上に設置された第2炭化シリコン層と、を備え、前記炭化緩衝層における欠陥部分が前記第1炭化シリコン層により塞がれていることを特徴とする。
この構成によれば、炭化緩衝層における欠陥部分が第1炭化シリコン層により塞がれていることで、第2炭化シリコン層を当該ボイドが原因となる結晶欠陥が存在しない層とすることができる。
[適用例8]
上記の適用例における半導体基板において、前記欠陥部分は前記シリコン基板の表面の結晶空孔に続いており、前記欠陥部分が、前記第1炭化シリコン層にて塞がれていることが好ましい。
上記の適用例における半導体基板において、前記欠陥部分は前記シリコン基板の表面の結晶空孔に続いており、前記欠陥部分が、前記第1炭化シリコン層にて塞がれていることが好ましい。
この構成によれば、欠陥部分に繋がるシリコン基板の部分に空孔があるときに、欠陥部分が第1炭化シリコン層に塞がれていることで、第2炭化シリコン層を欠陥部が原因となる結晶欠陥が存在しない層とすることができる。また、基板内に空孔が存在することによる応力の発生を防ぐことが可能な半導体基板とすることができる。
[適用例9]
上記の適用例における半導体基板において、更に、前記第1炭化シリコン層上に開口部を有するマスク層を有し、前記第2炭化シリコン層は、前記マスク層上及び前記開口部における前記第1炭化シリコン層上に設置されており、前記マスク層上の前記第2炭化シリコン層には、略垂直に会合欠陥が存在することが好ましい。
上記の適用例における半導体基板において、更に、前記第1炭化シリコン層上に開口部を有するマスク層を有し、前記第2炭化シリコン層は、前記マスク層上及び前記開口部における前記第1炭化シリコン層上に設置されており、前記マスク層上の前記第2炭化シリコン層には、略垂直に会合欠陥が存在することが好ましい。
この構成によれば、第2炭化シリコン層にはボイド及びピットが要因となる結晶欠陥はないものの不測の原因により結晶欠陥が生成される場合があるが、このような結晶欠陥はマスク層において除去され、複数の開口部において成長した炭化シリコンはマスク層上で会合することになり会合欠陥を形成する。このため、会合欠陥はマスク層上に略垂直に形成される。しかしながら、基板に形成する半導体素子内に会合欠陥が存在すると当該半導体素子は正しく動作することができない。会合欠陥はマスク層上に形成され、マスク層の開口部の位置から存在する場所を容易に識別することができる。このため、半導体素子を形成するのに不都合な部分を容易に識別することが可能な炭化シリコン層を有する半導体基板とすることができる。
[適用例10]
本発明に係る半導体装置は、上記の適用例の半導体基板を用い、半導体素子が前記会合欠陥を避けて配置されていることを特徴とする。
本発明に係る半導体装置は、上記の適用例の半導体基板を用い、半導体素子が前記会合欠陥を避けて配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、半導体素子が会合欠陥のある部分に形成されていないので、動作が保証された半導体装置とすることができる。
以下、実施形態について図面に従って説明する。尚、説明に用いる図は便宜上のものであり、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る半導体基板の一実施形態について示すものである。図1に本発明に係る半導体基板1の概略斜視図を示す。半導体基板1は、円盤状のシリコン基板上に本発明に係る炭化シリコン層を形成したものであり、ベースとなったシリコン基板と同じ円盤状の形状を有する。当該炭化シリコン層に形成される半導体素子は高耐圧なものとなる。
本実施形態は、本発明に係る半導体基板の一実施形態について示すものである。図1に本発明に係る半導体基板1の概略斜視図を示す。半導体基板1は、円盤状のシリコン基板上に本発明に係る炭化シリコン層を形成したものであり、ベースとなったシリコン基板と同じ円盤状の形状を有する。当該炭化シリコン層に形成される半導体素子は高耐圧なものとなる。
図2は半導体基板1の厚さ方向における部分断面図である。半導体基板1は、シリコン基板2上に炭化緩衝層3、第1炭化シリコン層5、マスク層6及び第2炭化シリコン層7がこの順に積層されている。マスク層6は開口部を有し、第2炭化シリコン層7はマスク層6の開口部に露出された第1炭化シリコン層5の表面を起点として形成されている。
シリコン基板2は、例えばCZ法(チョクラルスキー法)により引上げられたシリコン単結晶インゴットをスライス、研磨して形成された基板である。このシリコン基板2の表面はミラー指数(100)で表される結晶面を成している。シリコン基板2の表面は単結晶シリコンであり、また、単結晶シリコンの格子定数は0.543nmである。
炭化緩衝層3はシリコン基板2の表面に形成される。炭化緩衝層3は立方晶炭化シリコンの単結晶層または多結晶層である。炭化緩衝層3は、シリコン基板2表面の炭化処理によって形成される。炭化緩衝層3の厚みは少なくとも1原子層分の厚みで形成されていればよく、例えば2nm以上30nm以下の厚みで良い。
炭化緩衝層3の役割は、第1炭化シリコン層5を形成する際にシリコン基板2表面からのSi蒸発を抑制するとともに、シリコン基板2と第1炭化シリコン層5との格子不整合を緩和し、第1炭化シリコン層5に転移欠陥が発生するのを抑制することである。
しかしながら、炭化緩衝層3中には結晶欠陥、ピンホール等の欠陥部分3aが存在している場合がある。炭化緩衝層3は、シリコン基板2の表面を炭化処理されて形成されるが、この際にシリコン基板2から蒸発したSiが供給されることで立方晶炭化シリコンの層として形成される。
上記したように単結晶シリコンの格子定数は0.543nmであり、これに対して立方晶炭化シリコンの格子定数は0.436nmであり、この格子定数の違いが結晶欠陥を発生させる。また、蒸発するSiが炭化緩衝層3中にピンホール状の欠陥部分3aを生成するとともに、シリコン基板2の表面に空孔2aを形成する。尚、結晶欠陥の生成には、上記した格子定数の違いだけでなく、シリコンと炭化シリコンとの熱膨張係数の違いも影響する。シリコンの熱膨張係数は2.55×10-6K-1であり、炭化シリコンの熱膨張係数は2.77×10-6K-1である。尚、本明細書においては、当該結晶欠陥を積層によるものであることから積層欠陥と呼ぶことがある。本実施形態においては、シリコン基板2の表面は(100)面である。シリコン基板2の表面が(100)面であるとき、積層欠陥4は(111)面に沿って伝播する。シリコン基板2の表面と積層欠陥4とがなす積層欠陥面角度4aは54.73度になる。
第1炭化シリコン層5は、炭化緩衝層3上にエピタキシャル成長により形成された立方晶炭化シリコンの単結晶層である。第1炭化シリコン層5はシリコン昇華温度以下の温度で形成される。このため、第1炭化シリコン層5の形成中にシリコンが蒸発することは無く、炭化緩衝層3中の欠陥部分3aと欠陥部分3aの下にあるシリコン基板2の空孔2aにも第1炭化シリコン層5が形成されている。欠陥部分3aおよび空孔2aを塞ぐことで、以降の製造過程でシリコン基板2の表面からSiが脱離することが抑制される。
第1炭化シリコン層5の厚みは、炭化緩衝層3中の欠陥部分3aが充分に塞がれる膜厚であればよく、例えば50nm以上5000nm以下の厚みで良い。
マスク層6は、第1炭化シリコン層5の表面に形成される。マスク層6は、第1炭化シリコン層5の表面が露出する複数の開口部6aを有する。マスク層6は、例えば酸化シリコン(SiO2)を含んで構成されている。なお、マスク層6は窒化シリコンや酸化アルミニウムを含んで構成されていてもよい。尚、図2に示すように、マスク厚6bは、シリコン基板2の表面に直交する方向におけるマスク層6の長さ(マスク層6の高さ)であり、開口部幅6cは、開口部6aの幅である。
第1炭化シリコン層5により欠陥部分3aは遮断できるものの、積層欠陥4を完全除去することはできないが、マスク厚6bおよび開口部幅6cを適切な値に設定することにより、第2炭化シリコン層7における積層欠陥4を遮断することが可能となる。
第2炭化シリコン層7は、開口部6aに露出した第1炭化シリコン層5を起点にエピタキシャル成長し、マスク層6を覆って形成された、立方晶炭化シリコン層である。立方晶単結晶シリコン(3C−SiC)はバンドギャップ値が2.2eV以上と広く、熱伝導率や絶縁破壊電界が高いため、パワーデバイス用のワイドバンドギャップ半導体として好適である。尚、第2炭化シリコン層7においては、マスク層6により積層欠陥4が遮断され、積層欠陥4はマスク層6の高さ以上の高さには伝播されない。
上記たように第2炭化シリコン層7におけるマスク層6の高さ以上の部分には、欠陥部分3aおよび積層欠陥4のいずれも存在しない。しかしながら、マスク層6における複数の開口部6aの位置や形状により違いが出るものの、マスク層6の直上にエピタキシャル成長による第2炭化シリコン層7が会合して形成された会合欠陥7aが存在する。会合欠陥7aの位置は、半導体基板1を平面視したときのマスク層6における開口部6aの形状から特定することが可能である。第2炭化シリコン層7において、会合欠陥7aを除いた領域は積層欠陥が存在せず、無欠陥領域となる。当該無欠陥領域に半導体素子や配線等を配置することにより、半導体装置としての歩留りの低減を図ることができる。
このような無欠陥領域はマスク厚6bと開口部幅6cとの関係が所定の関係を満たすことにより形成される。本実施形態において、マスク厚6bは開口部幅6cの√2倍以上の高さとなる。例えば、マスク厚6bは800nmであり、開口部幅6cは500nmである。上記関係を満たす場合、積層欠陥面角度4aが54.73度であるため、開口部6aで第2炭化シリコン層7に伝播する積層欠陥4は開口部6aの側面にて伝播が終端される。その結果、第2炭化シリコン層7の表面は会合欠陥7aを除いた領域で積層欠陥4のない無欠陥領域となる。
尚、本実施形態では、シリコン基板2として単結晶シリコン基板を用いているが、これに限らない。例えば、石英、サファイヤ、ステンレスからなる基板上に単結晶シリコン膜を形成したものでもよい。また、結晶面の結晶軸が数度傾いたオフセット基板を用いてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態で示した半導体基板1の製造方法について示すものである。尚、本実施形態を含め、以降の実施形態及び実施例において、第1実施形態で説明した構成要素と同様の構成要素については同じ番号を付与しその説明を省略する場合がある。尚、本実施形態の説明に用いる図4から図8は、いずれもシリコン基板2の厚さ方向の断面図として示している。
本実施形態は、第1実施形態で示した半導体基板1の製造方法について示すものである。尚、本実施形態を含め、以降の実施形態及び実施例において、第1実施形態で説明した構成要素と同様の構成要素については同じ番号を付与しその説明を省略する場合がある。尚、本実施形態の説明に用いる図4から図8は、いずれもシリコン基板2の厚さ方向の断面図として示している。
図3に、本実施形態に係る半導体基板製造工程のフローチャートを示す。本製造方法は基板洗浄工程(S1)、炭化緩衝層形成工程(S2)、第1炭化シリコン層形成工程(S3)、マスク層形成工程(S4)、第2炭化シリコン層形成工程(S5)を含む。
まず、基板洗浄工程(S1)について説明する。本工程は、シリコン基板2を洗浄する工程であり、シリコン基板2をエピタキシャル成長装置の真空チャンバー内に設置し、減圧雰囲気下で熱処理することで行う。当該熱処理は、シリコン基板2の表面に付着した不純部等を除去できればよく、例えば750℃で5分間加熱することでもよい。図4は、洗浄されたシリコン基板2を示すものである。
次に、炭化緩衝層形成工程(S2)について説明する。尚、以降の説明において、「基板温度」とはシリコン基板2の温度のことをいう。
シリコン基板2を真空チャンバー内に設置したまま、基板温度を所定温度、例えば600℃で安定させた後、炭化緩衝層の原料ガスをチャンバー内に導入し、基板温度を1000℃程度まで上昇させて一定時間、例えば10分維持する。この処理によりシリコン基板2の一面に炭化緩衝層3が形成される。図5に、炭化緩衝層3が形成されたシリコン基板2の状態を示す。炭化緩衝層3には、空孔2a、欠陥部分3aおよび積層欠陥4が形成されている。
炭化緩衝層3の原料ガスとしては、例えばエチレン(C2H4)ガスやネオペンタン(neo−C5H12)ガスを用いる。原料ガスの流量としては、例えばエチレン(C2H4)ガスの流量を30sccmとする。
次に、第1炭化シリコン層形成工程(S3)について説明する。第1炭化シリコン層5の原料ガスをチャンバー内に導入し、基板温度を700度以上1000度未満に設定し、第1炭化シリコン層5が所望の膜厚に成長するまで熱処理する。所望の膜厚とは炭化緩衝層3中の欠陥部分3aが充分に塞がれる膜厚で、例えば200nm程である。
第1炭化シリコン層5の原料ガスとしては、エチレン(C2H4)及びジクロルシラン(SiH2Cl2)の混合ガスや、四塩化シリコン、トリクロロシラン(SiHCl3)、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、その他の有機シランガスを混合したものを用いることもできるが、比較的低温でSiC層を形成可能なモノメチルシラン(SiH3CH3)ガスがより好ましい。原料ガスの流量としては、例えばモノメチルシランガスの場合、3sccmとする。
図6に、第1炭化シリコン層5が形成された状態を示す。第1炭化シリコン層5は、空孔2aおよび欠陥部分3aのないものが形成され、その影響は除去されている。しかしながら、積層欠陥4は第1炭化シリコン層5においても伝播されている。
続いて、マスク層形成工程(S4)について説明する。まず、高密度プラズマCVD装置等を用いて第1炭化シリコン層5の表面に酸化シリコン膜を800nm堆積させる。次に、酸化シリコン膜に開口部6aを形成し、第1炭化シリコン層5の表面の一部を露出させる。
開口部6aの形成は、例えば、形成した酸化シリコン膜にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法によりレジストを所望の形状にパターニングし、パターニングされたレジストをマスクとしエッチングを施すことで行うことでよい。これにより、酸化シリコン膜が所望の形状にパターニングされ、開口部6aを有するマスク層6が形成され、開口部6aに第1炭化シリコン層5の表面を露出させることができる。開口部6aの形状は特に限定されないが、ストライプ状やマトリックス状等の規則的な形状でもよい。また、酸化シリコン膜のエッチングは、開口部6aの側壁の垂直性が必用となるため、反応性イオンエッチングなど、ドライエッチングによる異方性エッチングで行うことが好ましい。マスク層6が形成された状態の基板の断面図を図7に示す。
次に、第2炭化シリコン層形成工程(S5)について説明する。マスク層6の形成された基板をエピタキシャル成長装置の真空チャンバーに収容し、第2炭化シリコン層7の原料ガスをチャンバー内に導入して熱処理する。これにより、開口部6aから露出した第1炭化シリコン層5を起点として立方晶炭化シリコン膜がエピタキシャル成長される。この立方晶炭化シリコン膜が成長し、マスク層6を覆うことで第2炭化シリコン層7が形成される。
尚、第2炭化シリコン層7が成長する過程で、積層欠陥4はマスク層6の側面に衝突して終端される。従って、第2炭化シリコン層7で、マスク層6の上部の領域では積層欠陥4が排除される。しかしながら、マスク層6上において会合欠陥7aが形成されるが、会合欠陥7a以外の部分は無欠陥領域となる。図8に第2炭化シリコン層7が形成された基板の断面図を示す。
第2炭化シリコン層7の原料ガスとしては、第1炭化シリコン層5の場合と同様にエチレン(C2H4)及びジクロルシラン(SiH2Cl2)の混合ガスや、四塩化シリコン、トリクロロシラン(SiHCl3)、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、その他の有機シランガスを混合したものでよい。本実施形態では、例えば、エチレンガスを2.5sccm、ジクロロシランガスを10sccm導入する。
第2炭化シリコン層7を形成する際の基板温度は700度以上1350度以下でよい。基板温度は、より高温のほうが第2炭化シリコン層7の成長速度が上がることから、設定可能であれば上記の温度範囲の中でより高温であることが好ましい。また、シリコン基板2からのシリコン蒸発は炭化緩衝層3及び第1炭化シリコン層5で抑制されるため、基板温度は1100度以上に設定することができる。本実施形態では、例えば、基板温度を1150度とした。
以上の工程により、半導体基板1が形成される。尚、図9に本実施形態における基板温度のプロファイルを示す。図9において横軸は時間、縦軸はシリコン基板2の基板温度を示す。本実施形態では一例として、洗浄工程(S1)では基板温度を750度に設定し、5分間熱処理する。炭化緩衝層形成工程(S2)では基板温度を600度で安定させた後、炭化緩衝層の原料ガスを導入し、1000度まで昇温して、10分熱処理する。第1炭化シリコン層形成工程(S3)では基板温度を900度に設定し、1時間熱処理する。第1炭化シリコン層形成工程(S3)後はチャンバーから基板を取り出し、マスク層形成工程(S4)を実施する。マスク層形成工程後、再びチャンバー内に基板を収容し、第2炭化シリコン層形成工程(S5)を実施する。第2炭化シリコン層形成工程では基板温度を1150度に設定し、基板温度が安定した後、第2炭化シリコン層の原料ガスを導入して第2炭化シリコン層が所望の膜厚になるまで処理を続ける。
(第3実施形態)
本実施形態は、半導体基板1を用いた半導体装置の一実施形態を示すものである。半導体基板1から、例えば図10に示す半導体装置17が複数個製造される。半導体装置17は、その構成要素として半導体素子19、端子20および配線21が形成されている。半導体装置17は、第2炭化シリコン層7の無欠陥領域に複数個形成され、所定の大きさに切断される。半導体装置17は、所定のケースにパッケージされる等して利用されることになる。
本実施形態は、半導体基板1を用いた半導体装置の一実施形態を示すものである。半導体基板1から、例えば図10に示す半導体装置17が複数個製造される。半導体装置17は、その構成要素として半導体素子19、端子20および配線21が形成されている。半導体装置17は、第2炭化シリコン層7の無欠陥領域に複数個形成され、所定の大きさに切断される。半導体装置17は、所定のケースにパッケージされる等して利用されることになる。
以上、本発明に係る実施形態について説明を行ったが、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。本発明は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において広く適用が可能である。
1…半導体基板、2…シリコン基板、3…炭化緩衝層、3a…欠陥部分、5…第1炭化シリコン層、6…マスク層、6a…開口部、6b…マスク層の厚みとしてのマスク厚、7…第2炭化シリコン層、17…半導体装置、19…半導体素子。
Claims (10)
- シリコン基板上に炭化緩衝層を形成し、
シリコンが昇華しない第1温度で前記炭化緩衝層上に第1炭化シリコン層を形成し、
前記第1温度を超える第2温度で前記第1炭化シリコン層上に第2炭化シリコン層を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。 - 請求項1に記載の半導体基板の製造方法であって、
前記第1温度は700度以上1100度以下であることを特徴とする半導体基板の製造方法。 - 請求項1または2に記載の半導体基板の製造方法であって、
前記第2温度は1350度以下であることを特徴とする半導体基板の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法であって、
前記第1炭化シリコン層の厚みは50nm以上5000nm以下であることを特徴とする半導体基板の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法であって、
前記第2炭化シリコン層を形成する前に、前記第1炭化シリコン層上に開口部を有する所定の厚さのマスク層を設置することを特徴とする半導体基板の製造方法。 - 請求項5に記載の半導体基板の製造方法であって、
前記マスク層の厚さは、前記開口部の幅の√2倍以上であることを特徴とする半導体基板の製造方法。 - シリコン基板と、
前記シリコン基板上に設置された炭化緩衝層と、
前記炭化緩衝層上に設置された第1炭化シリコン層と、
前記第1炭化シリコン層上に設置された第2炭化シリコン層と、を備え、
前記炭化緩衝層における欠陥部分が前記第1炭化シリコン層にて塞がれていることを特徴とする半導体基板。 - 請求項7に記載の半導体基板であって、
前記欠陥部分は前記シリコン基板の表面の空孔に続いており、
前記欠陥部分が、前記第1炭化シリコン層にて塞がれていることを特徴とする半導体基板。 - 請求項7または8に記載の半導体基板であって、
更に、前記第1炭化シリコン層上に開口部を有するマスク層を有し、
前記第2炭化シリコン層は、前記マスク層上及び前記開口部における前記第1炭化シリコン層上に設置されており、
前記マスク層上の前記第2炭化シリコン層には、略垂直に会合欠陥が存在することを特徴とする半導体基板。 - 半導体装置であって、請求項9に記載の半導体基板を用い、半導体素子が前記会合欠陥を避けて配置されていることを特徴とする半導体装置。
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JP2015229385A JP2017095305A (ja) | 2015-11-25 | 2015-11-25 | 半導体基板の製造方法、半導体基板および半導体装置 |
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