JP2017090030A - マイクロ波を利用したマグネシウム製錬装置及び製錬方法 - Google Patents

マイクロ波を利用したマグネシウム製錬装置及び製錬方法 Download PDF

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Abstract

【課題】空気汚染などの環境への悪影響を抑えると共に、ターゲットに対してマイクロ波を効率よく照射し、還元に必要なエネルギーを最小限に抑え、金属マグネシウムを低コストで還元し製錬する方法の提供。
【解決手段】原材料を加熱し還元する加熱室2と、加熱により蒸発した原材料を凝集する凝縮室3から構成され、加熱室2には、酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料9を、減圧雰囲気下において還元するための加熱源として、マイクロ波源4が設けられ、加熱室2は、導電性物質から成るシールド6で覆われており、マルチモード又はシングルモードの共振構造であり、加熱室2と凝縮室3の間に、導電性物質から形成されたチョーク構造を有する円筒形の蒸気出口8が設けられる構成であるマグネシウム製錬装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、マグネシウムの製錬装置及び製錬方法に関し、詳しくは、マイクロ波を照射してマグネシウムを加熱し、マグネシウム蒸気を発生させることにより、それを捕捉して高純度の金属マグネシウムを取り出すことができるマグネシウム製錬装置及び製錬方法に関する。
従来から、金属マグネシウムの製錬方法として、ピジョン法が知られている。このピジョン法とは、真空装置内に、酸化マグネシウムをフェロシリコン等の還元剤と混合したものを配置し、これを1150℃以上に加熱することで蒸発させ、同真空装置内に設けられた冷却部分に蒸着させることによって、金属マグネシウムを取り出すという方法である。このピジョン法では、多くの場合、石炭等の化石燃料を燃焼させることによって加熱源としている。このピジョン法は、石炭等の化石燃料を加熱源としていることから、石炭等の燃焼によって、二酸化炭素や粒子状汚染物質(PM)が放出され、環境汚染の原因の一つとされる問題がある。
一方、加熱源として、化石燃料以外を用いた技術も提案されている。
特許文献1に記載の技術は、加熱源として「電気炉」を用いたものであり、「真空精製部と、これを加熱する電気炉を備えた加熱部とを主要構成部とする高純度マグネシウムの製造装置」に関するものである。この技術では、原料となる金属マグネシウムをるつぼに入れ、これを電気炉に入れて、全体的に加熱するという手段を採用しており、マグネシウムの還元に寄与しない部分まで加熱することになり、エネルギー効率が悪いという問題がある。
特許文献2に記載の技術は、加熱源として「マイクロ波」を用いたものであり、「マグネシア系耐火物からなる筐体を有する反応炉と、この反応炉内にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、前記反応炉内に鉄鉱石及び炭素源を含む原料を供給する原料供給装置と、前記反応炉から溶銑を取り出す取出部と、を有することを特徴とするマイクロ波製鉄炉」に関するものである。この技術は、マイクロ波の照射により鉄を加熱し、溶融させるものであるが、対象物は鉄であり、マグネシウムの還元や製錬については触れられていない。
非特許文献1に記載の技術も、加熱源として「マイクロ波」を用いたものであり、マグネシウムにマイクロ波を照射することによって加熱し、還元するものである。しかし、非特許文献1は、学術的な研究成果を公表しているに過ぎず、工業的な面が考慮されておらず、十分な量のマグネシウムを得ることができないという問題がある。
特開平10−158753 特開2009−35776
Carbothermic Reduction of MgO by Microwave Irradiation, Materials Transactions, vol.44 No.4, pp.722-726
そこで、本発明の課題は、空気汚染などの環境への悪影響を抑えると共に、ターゲットに対してマイクロ波を効率よく照射し、還元に必要なエネルギーを最小限に抑え、金属マグネシウムを低コストで還元し製錬することにある。
上記本発明の課題は、下記の手段により達成される。
1.原材料を加熱し還元する加熱室と、加熱により蒸発した原材料を凝集する凝縮室から構成され、
前記加熱室には、酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料を、減圧雰囲気下において還元するための加熱源として、マイクロ波源が設けられ、
前記加熱室は、導電性物質から成るシールドで覆われており、マルチモード又はシングルモードの共振構造であり、
前記加熱室と前記凝縮室の間に、導電性物質から形成されたチョーク構造を有する円筒形の蒸気出口が設けられることを特徴とするマグネシウム製錬装置。
2.マイクロ波源は、反射波の大きさによって還元反応の終点を判定するため、マイクロ波の進行波と反射波を監視するモニタリング装置を有し、前記モニタリング装置によって得られた反射波の大きさに応じて、発振するマイクロ波の強度を調整し、反射波が進行波の40%を超えると、マイクロ波の発振を停止する制御装置が設けられていることを特徴とする上記1に記載のマグネシウム製錬装置。
3.蒸気出口の直径が、マイクロ波源から発振されるマイクロ波の波長の1/8以下であり、長さが、前記マイクロ波の波長の1/4以上であることを特徴とする上記1又は2に記載のマグネシウム製錬装置。
4.生成マグネシウム蒸気の凝縮を防ぐために蒸気出口を加熱するヒーターが設けられ、
前記ヒーターと、原材料加熱によって生じる輻射熱によって、前記蒸気出口の温度が、200℃以上に加熱されることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
5.加熱室を覆う導電性物質から成るシールドは、多面体の形状であり、
この多面体の少なくとも1辺に、導電性物質から成る反射板を設置することで、前記シールドの形状を変更できる構成であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
6.加熱室を覆う導電性物質から成るシールドは、立方体の形状であり、
この立方体の水平方向又は垂直方向に伸びる4辺に、導電性物質から成る反射板を設置することで、前記シールドの形状を、八角柱に変更できる構成であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
7.マイクロ波を加熱室に導入するマイクロ波導入口を、原材料の設置位置より下方に設けると共に、
前記マイクロ波導入口は、前記原材料の設置位置から一波長以内の距離であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
8.マイクロ波導入口又は加熱室とマイクロ波源を接続する導波管には、マイクロ波を透過する材料からなるマイクロ波透過窓が設けられ、前記マイクロ波透過窓が、二重構造であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
9.マイクロ波を原材料に照射する際の加熱室内の圧力が、20Pa以下に保持される構成であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
10.凝縮室には、取り外し可能な内壁が設けられ、この内壁が200℃以下に保持され、生成マグネシウム蒸気を凝集及び回収することを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
11.酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料に、減圧雰囲気下においてマイクロ波を照射して加熱し、マグネシウムを還元する方法において、
照射するマイクロ波は、マルチモード又はシングルモードの共振状態であり、
前記原材料には、マイクロ波吸収剤、触媒又はバインダーのうち少なくとも1つが添加され、この原材料を加圧成形して団鉱とすることで、この団鉱の内部には還元剤及び/又はマイクロ波吸収剤からなる層が少なくとも1層形成されていることを特徴とするマグネシウム製錬方法。
12.酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料に、減圧雰囲気下においてマイクロ波を照射して加熱し、マグネシウムを還元する方法において、
照射するマイクロ波は、マルチモード又はシングルモードの共振状態であり、
前記原材料には、マイクロ波吸収剤、触媒又はバインダーのうち少なくとも1つが添加され、この原材料を加圧成形して団鉱とすることで、この団鉱の内部には還元剤及び/又はマイクロ波吸収剤からなる集合体が少なくとも1つ形成されていることを特徴とするマグネシウム製錬方法。
13.還元剤として、金属系還元剤が用いられ、これを含む原材料が、磁場強度の強い位置に配置されることを特徴とする上記11又は12に記載のマグネシウム製錬方法。
14.還元剤として、炭素系還元剤が用いられ、これを含む原材料が、電場強度の強い位置に配置されることを特徴とする上記11又は12に記載のマグネシウム製錬方法。
上記1に示す発明によれば、酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料に対し、減圧雰囲気下においてマイクロ波を照射することで、原材料の誘電損失やジュール損失から、内部が加熱される。加熱室が、導電性材料で覆われ電磁シールドとなることから、マイクロ波は加熱室に閉じ込められ、更に、蒸気出口が、チョーク構造となることにより、加熱室にのみ電磁波(マイクロ波)エネルギーが閉じ込められる。これらの構造により、マイクロ波は、マルチモード又はシングルモードの共振状態となり、電磁波エネルギーは、原材料の加熱のみで消費され、原材料にマイクロ波を効率よく照射することができ、還元に必要なエネルギーを最小限に抑えることができる。
マイクロ波照射による加熱により蒸発したマグネシウム蒸気は、蒸気出口から凝縮室に達し、冷却装置によって冷却されることで凝縮室内壁に凝集し固化する。この凝集したマグネシウムを取り出すことで、高純度の金属マグネシウムを得ることができる。
これらの構成によれば、化石燃料を燃焼することがないので、空気汚染などの環境への悪影響を抑えることができると共に、ターゲットである原材料に対してマイクロ波を効率よく照射することができ、還元に必要なエネルギーを最小限に抑えることができ、金属マグネシウムを低コストで製錬することができる。
上記2に示す発明は、マイクロ波の反射波の大きさを監視するモニタリング装置と、マイクロ波の照射強度を調整する制御装置とが設けられている。この制御装置は、原材料の
量が多いときには、マイクロ波の照射強度を大きくし、原材料の残量が減少すれば、マイクロ波の照射強度を小さくし、原材料が無くなれば、マイクロ波の照射を停止するものである。停止する条件について詳述すれば、反射波が進行波の40%を超えると、マイクロ波の発振を停止する構成である。
原材料にマイクロ波を照射する際、原材料の量が多い場合には、マイクロ波の電磁波エネルギーは原材料に吸収される。一方で、還元反応が進み、原材料が消費され量が少なくなると、電磁波エネルギーは原材料で消費され尽さず、余ったエネルギーがマイクロ波の照射口に戻り、反射波となる。即ち、反射波が小さければ、原材料の残量は多く、反対に、反射波が大きければ、原材料の残量は少ないことが分かる。
このように、モニタリング装置を設けることによって、反射波の大きさにより、原材料の量を把握することが可能になり、制御装置を設けることによって、原材料の量に応じて必要な大きさのマイクロ波を照射することができ、消費エネルギーの無駄を抑制することができる。
上記3に示す発明によれば、蒸気出口の直径を、マイクロ波源から発振されるマイクロ波の波長の1/8以下とし、長さを、マイクロ波の波長の1/4以上とすることで、蒸気出口をチョーク構造とすることができ、マイクロ波を加熱室に閉じ込めることができる。これにより、原材料にマイクロ波を効率よく照射することができ、還元に必要なエネルギーを最小限に抑えることができる。
上記4に示す発明によれば、蒸気出口にヒーターを設けて加熱することで、この蒸気出口に生成マグネシウム蒸気が凝縮して付着することを防止又は抑制できる。特に、ヒーターと原材料加熱によって生じる輻射熱によって、蒸気出口の加熱温度を200℃以上とすることで、蒸気出口におけるマグネシウム蒸気の凝縮を防止・抑制することができ、このマグネシウム蒸気を加熱室から凝縮室まで滞りなく移動させることができる。また、加熱手段として、ヒーターを用いることで温度調整を可能とし、更には、原材料加熱によって生じる輻射熱をも利用することで、ヒーター加熱によるエネルギー消費を抑制することができる。
上記5〜6に示す発明によれば、加熱室に導電性物質からなる反射板を設置し、シールドの形状を変化させることによって、加熱室内の電磁波分布を変えることができ、マイクロ波を原材料に効率よく照射させることができる。
上記7に示す発明によれば、加熱により原材料からガスが生じ、このガスにより発生するプラズマによって、マイクロ波が反射され、マイクロ波エネルギーが原材料に到達しないという問題を解消できる。
上記効果を詳述する。マイクロ波加熱によって原材料からはガスが生じ、このガスの発生により原材料の上部にプラズマ発生する。このプラズマは、マイクロ波を金属板のように反射する性質を有しており、マイクロ波導入口と原材料の間にプラズマが発生すると、マイクロ波はこれに反射されて反射波となり、エネルギーロスを増大させることになる。そこで、マイクロ波導入口を原材料よりも下方に設け、マイクロ波導入口と原材料との間にプラズマが介在しない構成とすることで、上記エネルギーロスを防止・抑制することができる。
また、上記7に示す発明によれば、マイクロ波導入口と原材料の設置位置の距離を、一波長以内とすることで、不要な定在波の発生を抑え、効率的な原材料加熱が可能となる。
上記8に示す発明によれば、マイクロ波導入口にマイクロ波透過窓を設けることで、加
熱室の密封性を高めることができ、減圧状態を維持することができる。また、マイクロ波透過窓を二重にすることで、一枚の窓が破損する事態に至っても、空気の急激な流入を防ぐことができ、加熱室内で生じたマグネシウムの酸化、発火又は燃焼を防止することができる。
上記9に示す発明によれば、マイクロ波を原材料に照射して加熱する際の加熱室内の圧力を、20Pa以下に保持することで、プラズマの発生を抑えることができる。これにより、マイクロ波を原材料の加熱に集中させることができ、エネルギー効率を高めることができる。
上記10に示す発明によれば、凝縮室に取り外し可能な内壁を設け、この内壁を200℃以下に冷却すれば、生成マグネシウム蒸気を凝集・固化することができ、これを回収することができる。また、内壁を取り外し可能な構成とすることで、凝集したマグネシウムを内壁ごと凝縮室の外に取出すことができるので、この凝集したマグネシウムを容易に回収することができる。
上記11〜12に示す発明によれば、原材料を、還元剤及び/又はマイクロ波吸収剤を含む層又は集合体を形成した団鉱とすることで、マイクロ波の磁場による誘導電流と磁性損失による加熱を発生させることができ、更に、酸化マグネシウムとの接触面積を増やして反応場を増加させ、収率を向上させることができる。
上記13に示す発明によれば、還元剤として金属系還元剤を用い、これを含む原材料を磁場強度の強い位置に配置することで、原材料の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。
即ち、金属系還元剤は、103S/m以上の導電性を有し、磁性損失を有することから
、磁場による誘電加熱や磁性損失による加熱を有効に作用させることができ、この金属系還元剤を含む原材料を、加熱室における磁場強度の高い位置に配置することで、原材料の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。
上記14に示す発明によれば、還元剤として炭素系還元剤を用い、これを含む原材料を電場強度の強い位置に配置することで、原材料の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。
即ち、炭素系還元剤は、磁性損失がなく、導電性と誘電損失が大きいことから、絶縁材料と混合させることにより、電場によるジュール損失と誘電損失による加熱を有効に作用させることができ、この炭素系還元剤を含む原材料を、加熱室における電場強度の高い位置に配置することで、原材料の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。
本発明に係るマグネシウム製錬装置の一実施例を表す概略構成図 本発明に係るマグネシウム製錬装置の他の実施例を表す概略構成図 マイクロ波源の構成を表すブロック図 反射波と反応の終点の関係を示す棒グラフ及び折線グラフ 加熱室に反射板を設置した実施例を示す概略構成図 反射板を設置しない場合における、(a)マイクロ波照射開始から間もない時点でのシールド内の温度分布図、(b)マイクロ波照射開始から20分後のシールド内の温度分布図 反射板をシールドの上下の面に対して45度の角度で設置した場合における、(a)マイクロ波照射開始から間もない時点でのシールド内の温度分布図、(b)マイクロ波照射開始から20分後のシールド内の温度分布図、(c)反射板の設置角度を示す模式図 反射板をシールドの上下の面に対して55度の角度で設置した場合における、(a)マイクロ波照射開始から間もない時点でのシールド内の温度分布図、(b)マイクロ波照射開始から20分後のシールド内の温度分布図、(c)反射板の設置角度を示す模式図 温度とマグネシウム蒸気の付着率を示す棒グラフ マイクロ波導入口を原材料の上部に設置した場合におけるマイクロ波とプラズマの関係を示す図 マイクロ波導入口を原材料の下部に設置した場合におけるマイクロ波とプラズマの関係を示す説明図 原材料を層構造に成形した態様を示す図 原材料を集合体構造に成形した態様を示す図 原材料の団鉱形状による温度上昇の相違を表す折線グラフ 原材料の還元剤として金属系還元剤を用いた場合における加熱室内の電場と磁場の加熱の挙動を示す折線グラフ 加熱室の圧力とプラズマの発生の関係を示す折線グラフ
以下、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
本発明に係るマグネシウム製錬装置(以下、単に「マグネシウム製錬装置」ともいう。)1の実施例を表す概略構成図を、図1及び2に示す。
図1又は2に示されるように、マグネシウム製錬装置1は、加熱室2、凝縮室3、マイクロ波源4、導波管5、シールド6、隔壁7及び蒸気出口8から構成される。
図1は、加熱室2と凝縮室3とが水平方向(左右方向)に並べられた構成であり、図2は、加熱室2と凝縮室3とが垂直方向(上下方向)に並べられた構成の実施例である。図1〜2に示されるいずれの実施例も、加熱室2にはマイクロ波源4が導波管5を介して接続され、加熱室2はシールド6で包囲されており、加熱室2と凝縮室3の間には、隔壁7と蒸気出口8が設けられる。
加熱室2は、原材料9を加熱する空間であり、高温に耐え得る材料から形成された加熱室筐体21によって形成される。加熱室2に原材料9が設置され、この原材料9にマイクロ波を照射して加熱する。
加熱室筐体21は、マイクロ波を吸収せず、かつマグネシウム蒸気と反応せず、耐熱温度が1200℃以上である材料で形成される。原材料容器11を用いず、加熱室2に直接原材料9を投入する場合は、例えば、アルミナ系耐火物やジルコニア系耐火物やマグネシア系耐火物で形成することができる。原材料容器11を用いて原材料9を配置する場合は、耐熱鋼やステンレス合金で形成することができ、シールド6と一体となっていても良い。
加熱室2には、原材料9を設置・固定するための構成が設けられることが好ましい。例えば、図1〜2に示されるように、加熱室2内に原材料9を設置・固定するための置き台となる原材料載置台10を設け、原材料9を原材料容器11に収容した上で、前記原材料載置台10の上に載置する構成を挙げることができる。この際、原材料載置台10と原材料容器11とは、公知公用の手段で固定することができる。
原材料載置台10と原材料容器11の材質として、マイクロ波を吸収せず、かつ酸化マグネシウム及びマグネシウムと反応せず、1200℃以上の耐熱性を有するアルミナ系耐火物やジルコニア系耐火物やマグネシア系耐火物を挙げることができる。
また、加熱室2には、原材料9を投入するための投入口(図示しない)が設けられる。
投入口の構造や形態に限定はなく、本発明に係る技術分野における公知公用の技術を特別な制限なく採用することができる。例えば、投入口は、開閉可能な扉状の形態を挙げることができる。例えば、原材料容器11を引き出し式の形態とし、この扉状の投入口から出し入れする構成を挙げることができる。
原材料9は、酸化マグネシウムと還元剤の混合物であることを基本とし、添加物として、マイクロ波吸収剤、触媒又はバインダーのうち少なくとも1つ(全てを添加することを含む。)を添加することができる。そして、これらを加圧成形により団鉱とすることが好ましい。
本発明において、酸化マグネシウムとは、酸化マグネシウム及びマグネシウム複合酸化物を含む概念であり、酸化マグネシウム、ドロマイト、軽焼ドロマイト等を含むものである。
還元剤としては、例えば、フェロシリコンやシリコン、活性炭や石灰窒素、カルシウムやアルミニウム等を挙げることができるが、これに限らず、本発明に係る技術分野における公知公用の還元剤を用いてもよいし、これらを2つ以上の組み合わせで用いても構わない。
マイクロ波吸収剤としては、炭化ケイ素を挙げることができるが、これに限らず、本発明に係る技術分野における公知公用のマイクロ波吸収剤を用いてもよいし、これらを2つ以上の組み合わせで用いることもできる。
触媒としては、フッ化カルシウムやアルミニウムを挙げることができるが、これに限らず、本発明に係る技術分野における公知公用の触媒を用いてもよいし、これらを2つ以上の組み合わせで用いることもできる。
バインダーとしては、リグニンを挙げることができるが、これに限らず、本発明に係る技術分野における公知公用のバインダーを用いてもよいし、これらを2つ以上の組み合わせで用いることもできる。
原材料9は、使用する還元剤の種類によって、加熱室2の磁場あるいは電場強度の強い位置に設置することが好ましい。詳しくは、金属系還元剤を用いる場合は磁場、炭素系還元剤を用いる場合は電場強度の強い位置に設置することが好ましい。そのため、加熱室2には、原材料9を所定の位置に設置できるように、上述した原材料載置台10を設け、原材料9を原材料容器11に収容して設置することが好ましい。あるいは、後述するように、原材料9の設置位置に対して、磁場あるいは電場が集中するよう、加熱室2内に反射板12を設置することが好ましい。
凝縮室3は、加熱室2にて原材料9を加熱することで生じたマグネシウム蒸気を冷却する空間であり、冷却室筐体31によって形成される。
凝縮室3の内壁32は、冷却装置13によって冷却される構成とすることができる。これにより、マグネシウム蒸気は、この凝縮室内壁32に付着し、凝集し固化する。加熱室2と凝縮室3とは、後述する蒸気出口8によって接続されている。
凝縮室内壁32は、凝縮室3から取り外しが可能な構成とすることが好ましい。内壁32を取り外し可能な構成とすることで、凝集したマグネシウムを内壁32ごと凝縮室3の外に取出すことができるので、この凝集したマグネシウムを容易に回収することができる。
尚、冷却装置13は、水冷等の冷却装置と接続されたものや、水、ガスその他の冷媒を循環させて冷却する機能を有するものを、公知公用の手段を特別の制限なく採用することができる。あるいは、冷却装置13を採用せず、空冷することもできる。
冷却装置13を用いるか否かによらず、凝縮室内壁32の温度は、200℃以下であることが好ましい。
凝縮室3には、アルカリコンデンサ14を設けることが好ましい。アルカリコンデンサ14は、凝縮室3に流入してきたマグネシウム以外の蒸気(カルシウム等のアルカリ金属を含む不純物等)を付着させるためのものである。マグネシウム蒸気とそれ以外の金属蒸気は、蒸気圧が異なるので、マグネシウム以外の金属蒸気のみを付着させることができる。アルカリコンデンサ14は、水冷等の冷却装置や、水、ガスその他の冷媒を循環させて冷却する機能を有する公知公用の手段と特別の制限なく接続し、使用することができる。
凝縮室3には、得られた金属マグネシウムを取り出すため、取出口(図示しない)が設けられる。取出口の構造や形態に限定はなく、本発明に係る技術分野における公知公用の技術を特別な制限なく採用することができる。例えば、取出口は、開閉可能な扉状の形態を挙げることができる。
凝縮室3には、加熱室2と凝縮室3を減圧するための真空ポンプVが接続される。また、減圧状態を解除するために、排気弁(図示しない)が設けられる。
凝縮室3にて得られた金属マグネシウムの取出し方法としては、公知公用の方法を特別の制限なく採用でき、例えば、マイクロ波の照射を停止した後、原材料が100℃以下の温度になってから、凝縮室3を減圧状態から大気圧になるよう排気弁からリークし、取出し口から金属マグネシウムを掻き出す方法を採用することができる。
マイクロ波源4は、マイクロ波発振器41を含み、加熱室2に設置された原材料9に照射するためのマイクロ波を発振させる装置である。
マイクロ波源4は、図3に示されるように、マイクロ波発振器41、アイソレータ42、モニタリング装置43、チューナ44、アプリケータ45及び制御装置46から構成されることが好ましい。
マイクロ波発振器41は、マイクロ波を発振し伝播する装置であり、例えば、マグネトロンと導波管の組み合わせを採用することができる。
アイソレータ42は、進行波をアプリケータ45側に通過させ、反射波をダミーロードに吸収させ、反射波が発振器41に伝わることを防止する装置である。
モニタリング装置43は、進行波と反射波の大きさ、特に電力を測定し監視する装置である。このモニタリング装置43を設けることにより、反射波の大きさによって原材料の残量を把握し、かつ、原材料の還元反応の終点を検知することが可能になる。
チューナ44は、負荷とのマッチングをとる装置である。
アプリケータ45は、マイクロ波を原材料に照射して加熱する機構であり、マイクロ波源4に接続された導波管5や加熱室2を含む場合がある。
制御装置46は、モニタリング装置43で得られた反射波の大きさに応じて、発振するマイクロ波の強度を調整し、反射波が一定の大きさを超えると、マイクロ波の発振を停止する装置である。
特に、制御装置46は、モニタリング装置43によって、マイクロ波の反射波が進行波の40%を超えたことを検知した場合に、マイクロ波の発振を停止させる構成であること
が好ましい。図4の「反射波と反応の終点」に関する実験データによれば、マイクロ波の反射波が進行波の40%を超えると、温度が急激に下降している。これは、反射波/進行波が40%を超えると、原材料が残渣(主成分は、ケイ酸カルシウム。)に変化したことで、あるいはマイクロ波を吸収可能な団鉱形状が崩壊したことで、原材料の還元反応が終了していることを示すものである。従って、反射波/進行波が40%を超えたところで、マイクロ波の発振を停止することが好ましい。これにより、原材料の残量に応じて必要な大きさのマイクロ波を照射することができると共に、還元反応が終了したことを検知してマイクロ波の発振を停止することができるので、消費エネルギーの無駄を抑制することができる。
導波管5は、マイクロ波源4で発振されたマイクロ波を、加熱室2に伝播するための部材であり、マイクロ波源4と加熱室2とを接続する位置に設けられる。
マイクロ波源4と導波管5は、上述した構成のほか、公知公用の技術を特別の制限なく採用することができる。
シールド6は、金属等の導電性物質によって形成され、加熱室2を覆い、電磁波を外界と遮断するために設けられている。シールド6は、加熱室2を覆う態様で設置されていればよいが、図1〜2に示されるように、加熱室2を覆う態様で設置され、加熱室2に断熱材I(図6〜8参照。)が設けられる構成では、その外側に設置されることが好ましい。
なお、この断熱材Iは、多孔質アルミナ等のマイクロ波を吸収せず、マグネシウム蒸気と反応せず、更に耐熱温度1200℃程度のものを用いることができる。この断熱材Iは、原材料9を覆う態様で加熱室2内に設けることで、マイクロ波照射によって加熱された原材料9が発する熱を、原材料9近辺に保持・保温し、加熱効率を高めることができる。
シールド6は、マイクロ波を反射し、かつマグネシウムと反応せず、耐熱温度が1200℃以上の導電性物質からなる材料で形成され、例えば、耐熱鋼、ステンレス合金などで形成することができる。
シールド6は、直方体(6面体)の形状を基本とし、この直方体の辺部に導電性物質からなる反射板12を設置することで、形状を7面体以上の多面体に変更し、加熱室2内の電磁波分布を変更可能な構成とすることができる。反射板12は、少なくとも1辺に設置することで、加熱室2内の電磁波分布を変更することができる。図5は、水平方向に伸びる4辺に、反射板12を設置することで、シールド8の形状を10面体(八角柱)に変更した例の概略図である。
なお、シールド6の形状は、予め7面体以上の多面体に形成してもよい。
反射板12を設置した場合の効果について、以下に述べる。原材料9に、酸化マグネシウム(MgO)と、還元剤として活性炭を用い、加熱室2のマイクロ波加熱シミュレーションを行った。この結果を、図6〜8に示す。なお、この加熱シミュレーションでは、原材料9を断熱材Iで覆っている。
先ず、シールド6の形状が直方体である場合における、このシールド6内の温度分布を図6に示す。図6(a)は、マイクロ波の照射を開始して間もない時点での温度分布であり、図6(b)は、マイクロ波の照射を開始して20分経過した時点での温度分布である。
図6(a)では、原材料9の下部に発熱点が1箇所認められるが、その他の箇所に発熱点は少なく、かつ小さい。図6(b)では、原材料9に温度ムラが認められる。
これらの温度分布から、シールド6に反射板12を設置しない場合には、マイクロ波が原材料9に均一に照射されておらず、原材料9に温度ムラが生じていることがわかる。
次に、上記した直方体のシールド6に対して、水平方向に伸びる4辺に、反射板12を設置することで電場分布を変えることを試みた(図5参照)。反射板12は、シールド6の上下の面に対して45度の角度で設置した。
この場合の温度分布を、図7に示す。図7(a)は、マイクロ波の照射を開始して間もない時点での温度分布であり、図7(b)は、マイクロ波の照射を開始して20分経過した時点での温度分布である。図7(c)は、図7(a)又は(b)を側方から観察した場合における、反射板12の設置角度を示す模式図である。
図7(a)では、原材料9の下部に2箇所の発熱点が認められ、全体的に温度が高い。図7(b)では、原材料9全体が集中的に加熱されており、温度ムラがみられない。
これらの温度分布から、原材料9に対して効果的に加熱されていることが分かり、加熱室2内の電波分布が改善され、原材料9に対してマイクロ波が効率的に照射されていることが分かる。
その後、反射板12の設置角度を変えて試験した。例として、図8に、反射板12をシールド6の上下の面に対して55度の角度で設置した場合における、シールド6内の温度分布を示す。
図8(a)は、マイクロ波の照射を開始して間もない時点での温度分布であり、図8(b)は、マイクロ波の照射を開始して20分経過した時点での温度分布である。図8(c)は、図8(a)又は(b)を側方から観察した場合における、反射板12の設置角度を示す模式図である。
図8(a)では、原材料9に1箇所の発熱点があるとみられるが、極めて微弱である。図8(b)では、原材料9に温度ムラが認められる。
これらの温度分布から、図7の温度分布に比して、原材料9にマイクロ波エネルギーが集中していないと考えられ、温度ムラが生じていることが分かる。
これらの結果から、加熱室2の中央部に設置した原材料9を迅速かつ均一に加熱するには、反射板12をシールド6の上下の面に対して45度の角度で設置し、シールド6の形状を、それぞれの内角が135度の八角柱の形状とすることが好ましいとわかった。
隔壁7は、加熱室2と凝縮室3とを隔てる壁体であり、マイクロ波を吸収せず、酸化マグネシウムやマグネシウムと反応せず、遮熱性と耐熱性を有する材料で形成される。例えば、1200℃以上の耐熱性を有するアルミナ系耐火物やジルコニア系耐火物を用いることができる。また、金属製板の表面にセラミックスを吹きつけ、耐火性を付与したものを用いてもよい。この場合、金属製板は耐熱鋼やステンレス合金が適し、セラミックスはアルミナ系耐火物やジルコニア系耐火物やマグネシア系耐火物が適している。
蒸気出口8は、加熱室2と凝縮室3を接続する通路であり、隔壁7に孔を穿設することで設けることができる。蒸気出口8は、加熱室2で生じたマグネシウム蒸気が、凝縮室3に移動するための通路であり、マイクロ波の漏えいを防止するチョーク構造である。この蒸気出口8は、1つ又は複数設けることができ、その数量に限定はない。
蒸気出口8は、金属等の導電性物質で側壁が形成され、その形状は、円筒型である。
蒸気出口8の直径は、マイクロ波源4から発振されるマイクロ波の波長の1/8以下であり、好ましくは1/64以上であって、長さは、同じくマイクロ波源4から発振されるマイクロ波の波長の1/4以上であり、好ましくは1波長以下に形成されている。かかる大きさに蒸気出口8を形成することで、チョーク構造となり、蒸気出口8からマイクロ波が漏洩することを防ぐことができる。この構造により、加熱室2に電磁波(マイクロ波)エネルギーが閉じ込められ、マイクロ波は、マルチモード又はシングルモードの共振状態となり、電磁波エネルギーは、原材料9のみで消費され、原材料9にマイクロ波を効率よく照射することができ、還元に必要なエネルギーを最小限に抑えることができる。
隔壁7には、蒸気出口8を、特に蒸気出口8の側壁を加熱するためのヒーター15が設けられる。ヒーター15による加熱と、加熱室2の原材料9の加熱から生じる輻射熱により、蒸気出口8の温度は、200℃以上、好ましくは500℃以上に維持されることが好ましい。蒸気出口8をかかる温度に加熱することで、通過するマグネシウム蒸気が蒸気出口8に付着することを防ぎ、滞りなく凝縮室3まで移動させることができる。この場合、ヒーター15は、SiCヒーター等、公知公用のものを特別の制限なく採用することができる。
蒸気出口8の温度を200℃以上に加熱することにより、マグネシウム蒸気の付着を防止できることを見出すため、次のような実験を行った。
先ず、長さ700mmの石英試験管の底部に、マグネシウム蒸気発生源(マグネシウムリボン等)を置き、真空ポンプと接続して減圧状態とした。
次に、マグネシウム蒸気が通過あるいは凝縮する箇所(保温部)を電熱コイル等で任意の温度に加熱、保温した上で、マグネシウム蒸気発生源の設置部分を電気炉等で加熱し、マグネシウム蒸気を発生させた。
そして、保温部へのマグネシウム付着挙動を観察したところ、図9に示す結果を得た。なお、図9に示す付着率とは、「マグネシウム蒸気の発生箇所から20cm以内の距離における保温部内壁に付着したマグネシウム量/マグネシウム発生箇所におけるマグネシウム蒸気量×100(%)」から算出された数値である。付着したマグネシウム量は、目視によるものである。
この実験結果によれば、マグネシウム蒸気を付着させずに通過させるために必要な蒸気出口の温度は200℃以上、好ましくは500℃以上とするべきことがわかる。
上述のとおり、マイクロ波源4から導波管5を介して加熱室2内に導入される部分を、マイクロ波導入口16とする。
このマイクロ波導入口16は、加熱室2における原材料9の設置位置よりも下方に設けられることが好ましい(図1〜2参照)。
原材料9であるドロマイトや軽焼ドロマイトは、空気中の水やガスを吸着する性質を持つため、減圧状態ではそれらの水やガスが放出される。そこに、マイクロ波が照射されるとプラズマが発生する。ガスは原材料9の上部に放出されるため、原材料9の上部にプラズマが発生する。このプラズマは、マイクロ波を金属板のように反射する性質を有しており、マイクロ波導入口と原材料の間にプラズマが発生すると、マイクロ波はこれに反射されて反射波となり、マイクロ波エネルギーが原材料に到達せず、エネルギーロスを増大させることになる。
図10に示されるように、マイクロ波導入口16を、原材料9の位置よりも上部に設けた場合、マイクロ波導入口16と原材料9の間にプラズマPが発生する。
一方で、図11に示されるように、マイクロ波導入口16を、原材料9の位置よりも下部に設ければ、マイクロ波導入口16と原材料9の間プラズマPは介在しない。この場合において、プラズマPに到達するマイクロ波エネルギーは、原材料加熱に使用された余剰分であり、原材料はプラズマPに妨害されず加熱される。従って、マイクロ波を原材料9に対して効率よく照射することができ、エネルギーロスを防止・抑制することができる。更に、プラズマPに到達した余剰分のマイクロ波エネルギーは、プラズマPに反射され、再度原材料9に当たるため、エネルギーロスの抑制のみならず、エネルギー効率の向上にも寄与する。
上記した問題点は、本発明における原材料9が、水やガスを吸着する性質を持つドロマイトや軽焼ドロマイトであるというマグネシウムに特有の課題であるが、マイクロ波導入
口16を原材料9の位置よりも下方に設けるという本発明特有の構成であれば、この問題点を解決することができる。
また、マイクロ波導入口16と原材料9の設置位置の距離は、一波長以内とすることが好ましい。この構成とすることにより、不要な定在波の発生を抑え、効率的な原材料加熱が可能となる。
導波管5、特に導波管5の加熱室2側の先端であるマイクロ波導入口16には、図1〜2に示されるように、マイクロ波透過窓51を設けることが好ましい。また、このマイクロ波透過窓51は、二重に設けられることがより好ましい。これにより、加熱室2の密封性を高めることができ、減圧状態を維持することができる。
また、上述のとおり、導波管5の加熱室2側の先端部ともいえるマイクロ波導入口16は、原材料9よりも下部に設けられることが好ましい。この構成では、原材料9の落下等によって、マイクロ波透過窓51が破損することも考えられる。マイクロ波透過窓51を二重にすれば、一枚の窓が破損する事態に至っても、空気の急激な流入を防ぐことができ、加熱室2内で生じたマグネシウムの酸化、発火又は燃焼を防止することができる。
マイクロ波透過窓51は、石英板等のマイクロ波透過材料によって形成される。マイクロ波透過窓51は、導波管5に2箇所のフランジ部を設けて取り付けることができる。
マグネシウム製錬装置1には、真空ポンプVが接続される。原材料9に対してマイクロ波を照射する際には、加熱室2と凝縮室3を減圧する。使用する真空ポンプVに限定はなく、公知公用の真空装置を特別の制限なく使用することができ、例えば、ロータリーポンプを使用することができる。また、マグネシウム蒸気などが真空ポンプVへ流入するのを防ぐため、凝縮室3との間にフィルタ(図示しない)を設けてもよい。
原材料9は、図12〜13に示されるように、還元剤(マイクロ波吸収剤を含んでもよい)を含む層91又は集合体92を形成した団鉱とすることが好ましい。これにより、マイクロ波の磁場による誘導電流と磁性損失による加熱を発生させることができ、更に、酸化マグネシウムとの接触面積を増やして反応場を増加させ、収率を向上させることができる。
原材料9が、酸化マグネシウムと還元剤からなる場合、層91又は集合体92は、還元剤によって形成される。原材料9に、マイクロ波吸収剤が添加される場合、触媒又はバインダーが添加されるか否かによらず、層91又は集合体92は、還元剤又はマイクロ波吸収剤によって形成されるか、還元剤及びマイクロ波吸収剤によって形成される。原材料9に、触媒若しくはバインダーのいずれか1つ又は触媒及びバインダーの両方が添加され、マイクロ波吸収剤が添加されない場合、層91又は集合体92は、還元剤によって形成される。
図12は、主にドロマイト(酸化マグネシウム)からなる原材料9に、フェロシリコン等の還元剤からなる層91が形成された態様を表し、上図は1層の場合、下図は多層の場合の態様を表す。層構造を有する原材料9の形成手段に限定はないが、1層の場合は、フェロシリコン(還元剤)の扁平な団鉱をドロマイト(酸化マグネシウム)で包み、これを加圧することで成形でき、多層の場合は、粒径の異なるドロマイトとフェロシリコンとを混合し、団鉱内でフェロシリコンの層を形成するように加圧することで成形することができる。
図13は、主にドロマイト(酸化マグネシウム)からなる原材料9に、フェロシリコン等の還元剤からなる集合体92が形成された態様を表し、上図は1つの集合体の場合、下図は複数の集合体の場合の態様を表す。集合体構造を有する原材料9の形成手段に限定は
ないが、粒径の異なるドロマイトとフェロシリコンとを混合し、フェロシリコンの集合体を形成するように加圧することで成形することができる。
図14に、原材料9の団鉱形状による温度上昇の相違を表す実験データを示す。
これによれば、還元剤が分散して混合された団鉱は、マイクロ波出力が900Wを超えてから緩やかに温度上昇している。これに対して、還元剤が層状に混合された団鉱(図12参照)は、マイクロ波出力が600Wを超えてから急激に温度上昇し、還元剤が集合体として混合された団鉱(図13参照)は、マイクロ波出力が900Wを超えてから急激に温度上昇している。これらの結果から、原材料9を還元剤が層状又は集合体として混合された団鉱として成形することで、原材料9を効率的に加熱できることがわかる。
軽焼ドロマイト又は酸化マグネシウムと還元剤(フェロシリコン等)の粉末原料を、均一に混合して圧縮成形し、これにより得られた団鉱である原材料9にマイクロ波を照射した場合、ドロマイトが絶縁体であるため原材料に誘導電流が流れず、団鉱を加熱することはできない。これを解決するため、既存の外部加熱によって原材料を一定温度まで加熱し、マイクロ波吸収能を高めた上で、原材料に対してマイクロ波を照射する手段も考えられる。
しかし、本発明のように、初期加熱からマイクロ波を用いる場合は、原材料9である団鉱内に誘導電流を流す還元剤を、層91又は集合体92として原材料に内包させることで、上記問題点を解決することができる。本発明では、原材料9を加熱するだけでなく、還元反応を行う必要があるため、反応表面を確保するため、薄い層91を多重に設けるか、小さな集合体92を多数含ませることが好ましい。
還元剤として金属系還元剤を用いことができる。これを含む原材料9を磁場強度の強い位置に配置することで、原材料9の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。即ち、金属系還元剤は、103S/m以上の導電性を有し、磁性損失を有することか
ら、磁場による誘電加熱や磁性損失による加熱を有効に作用させることができ、この金属系還元剤を含む原材料9を、加熱室2における磁場強度の高い位置に配置することで、原材料9の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。
図15に、金属系還元剤を用いた場合における、加熱室2内の電場と磁場それぞれによる加熱の挙動を観察した実験データを示す。金属系還元剤としては、フェロシリコンを用いた。
これによれば、金属系の物質を還元剤として使用した場合には、磁場による加熱が効果的であることがわかった。
なお、金属系還元剤としては、フェロシリコンの他、アルミニウムも有用である。
また、還元剤として炭素系還元剤を用いることもできる。これを含む原材料9を電場強度の強い位置に配置することで、原材料9の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。即ち、炭素系還元剤は、磁性損失がなく、導電性と誘電損失が大きいことから、絶縁材料と混合させることにより、電場によるジュール損失と誘電損失による加熱を有効に作用させることができ、この炭素系還元剤を含む原材料9を、加熱室2における電場強度の高い位置に配置することで、原材料9の昇温速度を早め、高い到達温度を実現することができる。
加熱室2は、真空ポンプV等によって減圧されるが、この場合、加熱室2の圧力を20Pa以下に保持することが好ましい。これにより、プラズマの発生を抑え、マイクロ波を原材料9の加熱に集中させることができ、プラズマ発生によるエネルギーロスを削減することができる。
プラズマPの発生が微量である場合には、図10〜11に示されるように、プラズマPが原材料9の上部に留まるため、上記したようにマイクロ波導入口16を原材料9の位置よりも下方に設ける構成で、プラズマPによるエネルギーロスという問題点を解消できる。
しかし、プラズマPの発生が大量になると、原材料9の上部に留まらないため、上記構成では上記問題点を解消できないばかりか、導波管5にプラズマPが走り、マイクロ波源4を破損する要因ともなりかねない。
そこで、加熱室2の圧力を20Pa以下に保持することで、プラズマPの発生を抑えることが有用となる。
図16に、加熱室2の圧力が、プラズマ発生の有無に及ぼす影響を検証した実験データを示す。この実験は、セパラブルフラスコ内に保温箱と原材料入り坩堝を設置し、フラスコ内を減圧し、マイクロ波を照射して、プラズマの発生の有無を確認した。
これによれば、圧力が20Paを超えるとプラズマが発生し、20Pa以下に減圧するとプラズマが消失した。
続いて、本発明に係るマグネシウム製錬装置1を使用した、マグネシウムの製錬方法について説明する。
原材料9は、主に、酸化マグネシウムと還元剤から構成される。酸化マグネシウムは、ドロマイトや軽焼ドロマイトを用いることができる。還元剤は、フェロシリコンや活性炭を用いることができる。
原材料9には、上記酸化マグネシウムと還元剤の他、マイクロ波吸収剤(炭化ケイ素等)、触媒(フッ化カルシウム等)及びバインダー(リグニン等)のうち少なくとも1つを加えてもよい。
原材料9は、これらを加圧成形して、団鉱とすることが好ましい。
原材料9は、図12〜13に示されるように、還元剤(マイクロ波吸収剤を含んでもよい)を含む層91又は集合体92を形成した団鉱とすることが好ましい。原材料9が、酸化マグネシウムと還元剤からなる場合、層91又は集合体92は、還元剤によって形成される。原材料9に、マイクロ波吸収剤が添加される場合、触媒又はバインダーが添加されるか否かによらず、層91又は集合体92は、還元剤又はマイクロ波吸収剤によって形成されるか、還元剤及びマイクロ波吸収剤によって形成される。原材料9に、触媒若しくはバインダーのいずれか1つ又は触媒及びバインダーの両方が添加され、マイクロ波吸収剤が添加されない場合、層91又は集合体92は、還元剤によって形成される。
成形した原材料9は、投入口から加熱室2に設置する。原材料9は、原材料容器11に収容し、原材料載置台10に載置することが好ましい。原材料9を設置する位置は、還元剤として金属系還元剤を用いた場合には、磁場強度の強い位置に、炭素系還元剤を用いた場合には、電場強度の強い位置とすることが好ましい。また、原材料9の位置は固定し、加熱室2に反射板12を設置することで、原材料9の位置が、磁場強度又は電場強度が強くなるように調整してもよい。
加熱室2は、真空ポンプVによって減圧する。加熱室2の圧力は、20Pa以下であることが好ましい。
原材料9に照射するマイクロ波は、マルチモード又はシングルモードの共振状態である。
原材料9にマイクロ波を照射すると、原材料9は加熱され、1000℃以上になると、酸化マグネシウムの還元反応が進み、マグネシウム蒸気が発生する。
マグネシウム蒸気は、蒸気出口8を通過し、凝縮室3に到達し、凝縮室内壁32に凝集
される。凝縮室3は、冷却装置13によって内壁32を冷却することが好ましく、200℃以下とすることがより好ましい。
マグネシウム以外の金属蒸気は、その蒸気圧の違いから、アルカリコンデンサ14に付着する。
反応が進むと、原材料9は次第に消費され、マイクロ波の反射波が多くなる。この反射波の大きさをモニタリング装置43で測定し、制御装置46でマイクロ波の出力を調整し、反射波の大きさが一定の値に達したら、制御装置46はマイクロ波発振器41を停止する。マイクロ波の反射波が進行波の40%を超えたことを検知した場合に、マイクロ波の発振を停止させることが好ましい。
マイクロ波の発振を停止した後、原材料9が100℃以下の温度になってから、加熱室2を減圧状態から大気圧になるよう排気弁からリークし、投入口を開放して残渣を取り除く。
また、同じくマイクロ波の照射を停止した後、原材料9が100℃以下の温度になってから、凝縮室3を減圧状態から大気圧になるよう排気弁からリークし、取出口を開放して金属マグネシウムを掻き出すようにして、凝縮室内壁32に付着したマグネシウムを採取する。なお、マグネシウムの取り出し手段に限定はなく、この種の技術分野における公知公用の技術を特別の制限なく採用することができる。例えば、凝縮室内壁32を凝縮室3から取り外し可能な構成とすれば、マグネシウムが付着した凝縮室内壁32を凝縮室3から取出した上で、マグネシウムを収集することができる。
1 マグネシウム製錬装置
2 加熱室
21 加熱室筐体
3 凝縮室
31 凝縮室筐体
32 凝縮室内壁
4 マイクロ波源
41 マイクロ波発振器
42 アイソレータ
43 モニタリング装置
44 チューナ
45 アプリケータ
46 制御装置
5 導波管
51 マイクロ波透過窓
6 シールド
7 隔壁
8 蒸気出口
9 原材料
91 層
92 集合体
10 原材料載置台
11 原材料容器
12 反射板
13 冷却装置
14 アルカリコンデンサ
15 ヒーター
16 マイクロ波導入口
I 断熱材
P プラズマ
V 真空ポンプ

Claims (14)

  1. 原材料を加熱し還元する加熱室と、加熱により蒸発した原材料を凝集する凝縮室から構成され、
    前記加熱室には、酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料を、減圧雰囲気下において還元するための加熱源として、マイクロ波源が設けられ、
    前記加熱室は、導電性物質から成るシールドで覆われており、マルチモード又はシングルモードの共振構造であり、
    前記加熱室と前記凝縮室の間に、導電性物質から形成されたチョーク構造を有する円筒形の蒸気出口が設けられることを特徴とするマグネシウム製錬装置。
  2. マイクロ波源は、反射波の大きさによって還元反応の終点を判定するため、マイクロ波の進行波と反射波を監視するモニタリング装置を有し、前記モニタリング装置によって得られた反射波の大きさに応じて、発振するマイクロ波の強度を調整し、反射波が進行波の40%を超えると、マイクロ波の発振を停止する制御装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム製錬装置。
  3. 蒸気出口の直径が、マイクロ波源から発振されるマイクロ波の波長の1/8以下であり、長さが、前記マイクロ波の波長の1/4以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネシウム製錬装置。
  4. 生成マグネシウム蒸気の凝縮を防ぐために蒸気出口を加熱するヒーターが設けられ、
    前記ヒーターと、原材料加熱によって生じる輻射熱によって、前記蒸気出口の温度が、200℃以上に加熱されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
  5. 加熱室を覆う導電性物質から成るシールドは、多面体の形状であり、
    この多面体の少なくとも1辺に、導電性物質から成る反射板を設置することで、前記シールドの形状を変更できる構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
  6. 加熱室を覆う導電性物質から成るシールドは、立方体の形状であり、
    この立方体の水平方向又は垂直方向に伸びる4辺に、導電性物質から成る反射板を設置することで、前記シールドの形状を、八角柱に変更できる構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
  7. マイクロ波を加熱室に導入するマイクロ波導入口を、原材料の設置位置より下方に設けると共に、
    前記マイクロ波導入口は、前記原材料の設置位置から一波長以内の距離であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
  8. マイクロ波導入口又は加熱室とマイクロ波源を接続する導波管には、マイクロ波を透過する材料からなるマイクロ波透過窓が設けられ、前記マイクロ波透過窓が、二重構造であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
  9. マイクロ波を原材料に照射する際の加熱室内の圧力が、20Pa以下に保持される構成であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のマグネシウム製錬装置。
  10. 凝縮室には、取り外し可能な内壁が設けられ、この内壁が200度以下に保持され、生成マグネシウム蒸気を凝集及び回収することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載
    のマグネシウム製錬装置。
  11. 酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料に、減圧雰囲気下においてマイクロ波を照射して加熱し、マグネシウムを還元する方法において、
    照射するマイクロ波は、マルチモード又はシングルモードの共振状態であり、
    前記原材料には、マイクロ波吸収剤、触媒又はバインダーのうち少なくとも1つが添加され、
    この原材料を加圧成形して団鉱とすることで、この団鉱の内部には還元剤及び/又はマイクロ波吸収剤からなる層が少なくとも1層形成されていることを特徴とするマグネシウム製錬方法。
  12. 酸化マグネシウムと還元剤の混合物である原材料に、減圧雰囲気下においてマイクロ波を照射して加熱し、マグネシウムを還元する方法において、
    照射するマイクロ波は、マルチモード又はシングルモードの共振状態であり、
    前記原材料には、マイクロ波吸収剤、触媒又はバインダーのうち少なくとも1つが添加され、
    この原材料を加圧成形して団鉱とすることで、この団鉱の内部には還元剤及び/又はマイクロ波吸収剤からなる集合体が少なくとも1つ形成されていることを特徴とするマグネシウム製錬方法。
  13. 還元剤として、金属系還元剤が用いられ、これを含む原材料が、磁場強度の強い位置に配置されることを特徴とする請求項11又は12に記載のマグネシウム製錬方法。
  14. 還元剤として、炭素系還元剤が用いられ、これを含む原材料が、電場強度の強い位置に配置されることを特徴とする請求項11又は12に記載のマグネシウム製錬方法。
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