以下、車両用スライドドア装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、車体2の側面2aに設けられたドア開口部3を開閉可能なスライドドア5を備えている。具体的には、このスライドドア5は、車両1のフロントドア6として構成されている。また、この車両1には、車両前後方向(各図中、左右方向)に延びる複数(三本)のガイドレール10と、これら各ガイドレール10(10A〜10C)に連結される複数のガイドローラユニット20(20A〜20C)と、を備えたスライドドア装置30が設けられている。尚、図1は、このスライドドア装置30を車室側から見たと仮定した場合における各ガイドレール10及び各ガイドローラユニット20の位置関係を示している。そして、スライドドア5は、これらの各ガイドレール10及び各ガイドローラユニット20を介して車体2の側面2aに支持されることにより、車両前後方向に移動して、その車体2の側面2aに形成されたドア開口部3を開閉することが可能となっている。
詳述すると、図1〜図3に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、スライドドア5側に設けられた第1及び第2のドア側ガイドレール10A,10Bと、車体2側に設けられた車体側ガイドレール10Cと、を備えている。そして、このスライドドア装置30は、上記第1及び第2のドア側ガイドレール10A,10Bに連結される第1及び第2の車体側ガイドローラユニット20A,20Bと、スライドドア5に支持された状態で上記車体側ガイドレール10Cに連結されるドア側ガイドローラユニット20Cと、を備えている。
具体的には、図1に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のドア側ガイドレール10A(アッパレール)は、スライドドア5に設けられた窓部5wの下側に設けられている。また、第2のドア側ガイドレール10B(センターレール)は、この第1のドア側ガイドレール10Aよりも下方に設けられている。そして、車体側ガイドレール10C(ロアレール)は、この第2のドア側ガイドレール10Bよりも下方となるドア開口部3の下縁部3aに設けられている。
一方、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のドア側ガイドレール10Aに連結される第1の車体側ガイドローラユニット20Aは、ドア開口部3の前縁部3bから車両後方側(図1中、右側)に突出する態様で設けられた第1の支持ブラケット32Aに支持されている。また、第2のドア側ガイドレール10Bに連結される第2の車体側ガイドローラユニット20Bは、上記第1の支持ブラケット32Aの下方となる位置において、そのドア開口部3の前縁部3bに設けられた第2の支持ブラケット32Bに支持されている。そして、車体側ガイドレール10Cに連結されるドア側ガイドローラユニット20Cは、スライドドア5の後方下端部5rbに設けられている。
即ち、本実施形態のスライドドア装置30において、第1及び第2の車体側ガイドローラユニット20A,20Bは、スライドドア5の開閉動作に伴い車両前後方向に支持する位置を変えつつ当該スライドドア5の荷重を支える第1及び第2の支持点X1,X2を形成する。また、ドア側ガイドローラユニット20Cは、スライドドア5の開閉動作に伴い当該スライドドア5とともに車両前後方向に移動しつつ、そのスライドドア5の荷重を支える第3の支持点X3を形成する。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、開動作時、その車両1のフロントドア6を構成するスライドドア5が、車両前方側に向かって移動するように構成されている。
さらに詳述すると、図2及び図4に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のドア側ガイドレール10Aは、スライドドア5の内側面5sに対して固定されるレール構造部34と、車両1の下方側(図4中、下側)に開口する断面略コ字形状を有してレール構造部34に支持されるガイド部35と、を備えている。
具体的には、本実施形態のレール構造部34は、上下方向に延びる縦壁部36と、この縦壁部36から車体2側(図4中、左側)に向かって延びる第1〜第3の横壁部37〜39と、を備えている。また、本実施形態のレール構造部34において、第1〜第3の横壁部37〜39は、互いに略平行となるように上下方向に離間した位置に設けられている。そして、ガイド部35は、その最も上側に配置される第1の横壁部37の下面37bに固定されている。
また、図2、図4及び図5に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のドア側ガイドレール10Aに連結される第1の車体側ガイドローラユニット20Aは、上下方向に延びる回動軸L1を基端部に有して回動可能に第1の支持ブラケット32Aに連結される延伸部41を備えている。本実施形態の延伸部41は、その延伸方向両側に開口する略角筒形状を有している。そして、この延伸部41の先端部には、略クランク状の折曲板形状を有したローラ保持部42が設けられている。
具体的には、本実施形態のローラ保持部42は、延伸部41の下側に締結される締結部42aと、この締結部42aの一端から上方に延びる立設部42bと、この立設部42bの上端から上記締結部42aとは反対方向に延びるフランジ部42cと、を備えている。また、そのフランジ部42cには、互いに離間した位置において上下方向に延びる二本の支軸43が設けられている。そして、第1の車体側ガイドローラユニット20Aは、これら各支軸43により回転自在に軸支された一対のガイドローラ44Aを備えている。
また、第1の車体側ガイドローラユニット20Aにおいて、ローラ保持部42の立設部42bには、当該立設部42bを厚み方向に貫通する態様で、上記各ガイドローラ44Aの支軸43の延伸方向に対して交差する方向(図4中、左右方向)に延びる支軸45が設けられている。具体的には、この支軸45は、互いに離間した位置に設けられた各ガイドローラ44Aの下方において、その中間となる位置に設けられている。そして、第1の車体側ガイドローラユニット20Aは、この支軸45により回転自在に軸支された第1のロードローラ46Aを備えている。
即ち、図4に示すように、第1の車体側ガイドローラユニット20Aは、そのローラ保持部42のフランジ部42cに設けられた各ガイドローラ44Aが、ガイド部35内に挿入される態様で第1のドア側ガイドレール10Aに連結される。また、これにより、ローラ保持部42の立設部42bに設けられた第1のロードローラ46Aは、第1のドア側ガイドレール10Aのレール構造部34を構成する第2及び第3の横壁部38,39の間に配置される。そして、第1の車体側ガイドローラユニット20Aは、第1のドア側ガイドレール10Aのガイド部35内に配置された各ガイドローラ44Aが、そのガイド部35を構成する何れかの側壁部35a,35bに対して転動可能に摺接することにより、そのレール幅方向(図4参照、左右方向)の相対移動を規制する構成になっている。
一方、図6に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第2のドア側ガイドレール10Bは、スライドドア5の内側面5sに対して固定されるレール構造部54と、車両1の下方側(図6中、下側)に開口する断面略コ字形状を有してレール構造部54に支持されるガイド部55と、を備えている。
具体的には、第2のドア側ガイドレール10Bのレール構造部54は、上下方向に延びる縦壁部56と、この縦壁部56から車体2側(図6中、左側)に向かって延びる第1及び第2の横壁部57,58と、を備えている。また、このレール構造部54において、第1及び第2の横壁部57,58は、互いに略平行となるように上下方向に離間した位置に設けられている。そして、ガイド部55は、上側に配置される第1の横壁部57の下面57bに固定されている。
また、図5及び図6に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第2のドア側ガイドレール10Bに連結される第2の車体側ガイドローラユニット20Bは、上記第1の車体側ガイドローラユニット20Aと略同一の構成を有している。
具体的には、第2の車体側ガイドローラユニット20Bもまた、上下方向に延びる回動軸L2を基端部に有して回動可能に第2の支持ブラケット32Bに支持される延伸部41と、この延伸部41の先端部に設けられたローラ保持部42と、を備えている。そして、第2の車体側ガイドローラユニット20Bは、そのローラ保持部42のフランジ部42cに設けられた二本の支軸43により回転自在に軸支された一対のガイドローラ44Bと、ローラ保持部42の立設部42bに設けられた支軸45により回転自在に軸支された第2のロードローラ46Bと、を備えている。
尚、第1及び第2の支持ブラケット32A,32Bは、形状に違いあるものの、車体2に対し車体側ガイドローラユニット(20A,20B)を回動可能に支持する点に相違はない。このため、説明の便宜上、図5中には、第1の支持ブラケット32Aについてのみ、その外形を示すものとする。
即ち、図6に示すように、第2の車体側ガイドローラユニット20Bは、そのローラ保持部42のフランジ部42cに設けられた各ガイドローラ44Bが、ガイド部55内に挿入される態様で第2のドア側ガイドレール10Bに連結される。また、これにより、ローラ保持部42の立設部42bに設けられた第2のロードローラ46Bは、第2のドア側ガイドレール10Bのレール構造部54を構成する第2の横壁部58の下方に配置される。そして、第2の車体側ガイドローラユニット20Bは、第2のドア側ガイドレール10Bのガイド部55内に配置された各ガイドローラ44Bが、そのガイド部55を構成する何れかの側壁部55a,55bに対して転動可能に摺接することにより、そのレール幅方向(図6参照、左右方向)の相対移動を規制する構成になっている。
また、図3及び図7に示すように、本実施形態の車両1において、車体2の側面2aには、そのドア開口部3の下縁部3aとなる位置に、車幅方向外側(図7中、右側)に開口する凹部59が形成されている。そして、車体側ガイドレール10Cは、この凹部59内に設けられている。
具体的には、本実施形態のスライドドア装置30において、車体側ガイドレール10Cは、車両1の下方側(図7中、下側)に開口する断面略コ字状の外形を有している。そして、図示しない支持部材に支持されることにより、ドア開口部3の下縁部3a内に形成された凹部59内において、その底面59sとの間に隙間を形成する位置に配置されている。
また、図3に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、車体側ガイドレール10Cに連結されるドア側ガイドローラユニット20Cは、略L字状の折曲板形状を有してスライドドア5の内側面に固定される締結部60と、この締結部60に支持された状態で車幅方向内側に向かって車体2側に延びる支持アーム61とを備えている。そして、この支持アーム61の先端部には、上下方向に延びる回動軸L3を有して支持アーム61の先端に連結されたローラ保持部62が設けられている。
図7に示すように、このローラ保持部62には、上下方向に延びる支軸63により回転自在に軸支されたガイドローラ44Cと、このガイドローラ44Cの支軸63の延伸方向に対して交差する方向(図7中、左右方向)に延びる支軸65により回転自在に軸支された第3のロードローラ46Cと、が設けられている。尚、本実施形態では、この車体側ガイドレール10Cもまた、互いに離間した位置に配置されるガイドローラ44Cを備えている。そして、第3のロードローラ46Cもまた、これらのガイドローラ44Cの下方において、その中間となる位置に設けられている。
即ち、ドア側ガイドローラユニット20Cは、ドア開口部3の下縁部3aとなる位置において車体2の側面2aに設けられた凹部59に対し、そのローラ保持部62の先端部が挿入される。また、ドア側ガイドローラユニット20Cは、そのローラ保持部62に設けられたガイドローラ44Cが車体側ガイドレール10C内に挿入される態様で車体側ガイドレール10Cに対して連結される。そして、ドア側ガイドローラユニット20Cは、これにより車体側ガイドレール10C内に配置された各ガイドローラ44Cが、その車体側ガイドレール10Cを構成する何れかの側壁部67a,67bに対して転動可能に摺接することで、そのレール幅方向(図7参照、左右方向)の相対移動が規制される構成になっている。
つまり、本実施形態のスライドドア装置30は、上記のように構成された各ガイドレール10(10A〜10C)が、スライドドア5の車幅方向荷重を支えつつ、その延伸方向に沿ってスライドドア5を案内する。そして、これにより、その車体2に支持するスライドドア5を円滑に開閉動作させることが可能になっている。
また、図2に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のドア側ガイドレール10Aは、車両後方側から前方側に向かって車幅方向外側に湾曲するコーナー部68を有している。同様に、第2のドア側ガイドレール10Bもまた、車両後方側から前方側に向かって車幅方向外側に湾曲するコーナー部を有している(図示略)。更に、図3に示すように、車体側ガイドレール10Cは、車両前方側から後方側に向かって車幅方向内側に湾曲するコーナー部69を有している。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これらの各ガイドレール10(10A〜10C)に設定された湾曲形状に基づいて、その車幅方向の変位を伴いつつ、スライドドア5が車両前後方向に移動するように構成されている。
即ち、第1及び第2の車体側ガイドローラユニット20A,20Bは、それぞれ、第1及び第2の支持ブラケット32A,32Bとの間に設けられた回動軸L1,L2周りの回動を伴いつつ、その延伸方向に沿った第1及び第2のドア側ガイドレール10A,10Bの相対移動を許容する(図2及び図5参照)。また、ドア側ガイドローラユニット20Cは、その支持アーム61とローラ保持部62との間に設けられた回動軸L3の回動を伴いつつ、車体側ガイドレール10Cの延伸方向に沿って移動する(図3参照)。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、その車両前方側に開動作するスライドドア5が車幅方向外側に移動することで、当該スライドドア5が車体2の側面2aに干渉しないように構成されている(図2及び図3参照)。
(スライドドアの荷重支持構造)
次に、本実施形態のスライドドア装置30におけるスライドドアの荷重支持構造について説明する。
図4に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、第1のドア側ガイドレール10Aに対して第1の車体側ガイドローラユニット20Aが連結されることにより、その第1のロードローラ46Aに対して第1のドア側ガイドレール10Aに設けられた第3の横壁部39が下側から当接するように構成されている。そして、この第3の横壁部39の上面39aを第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aに対する第1のドア側ガイドレール10A側の第1の摺動面S1とすることにより、そのスライドドア5の荷重を上側から支える第1の支持点X1が形成されるようになっている。
また、図6に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、第2のドア側ガイドレール10Bに対して第2の車体側ガイドローラユニット20Bが連結されることにより、その第2のロードローラ46Bに対して第2のドア側ガイドレール10Bに設けられた第2の横壁部58が上側から当接するように構成されている。そして、この第2の横壁部58の下面58bを第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46Bに対する第2のドア側ガイドレール10B側の第2の摺動面S2とすることにより、そのスライドドア5の荷重を下側から支える第2の支持点X2が形成されるようになっている。
更に、図7に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、車体側ガイドレール10Cに対してドア側ガイドローラユニット20Cが連結されることにより、その第3のロードローラ46Cが、車体側ガイドレール10Cが設けられた車体2側の凹部59の底面59sに対して上側から当接するように構成されている。そして、この車体2側に形成された凹部59の底面59sをドア側ガイドローラユニット20Cに設けられた第3のロードローラ46Cが摺動する第3の摺動面S3とすることで、そのスライドドア5の荷重を下側から支える第3の支持点X3が形成されるようになっている。
図8及び図9に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、スライドドア5の開閉動作に伴い、そのスライドドア5の荷重を支える主たる支持点が遷移する。尚、図8及び図9中に示す矢印は、これら第1〜第3の支持点X1〜X3がスライドドア5を支える力(保持反力)の方向を示している。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、安定的に、そのスライドドア5を支持することが可能となっている。
詳述すると、図8に示すように、スライドドア5が全閉位置付近にある場合、本実施形態のスライドドア装置30は、上記第1〜第3の支持点X1〜X3を結ぶ三角形δの底辺に位置する第2及び第3の支持点X2,X3において、その上下方向におけるスライドドア5の荷重を支える状態になる。
即ち、本実施形態のスライドドア装置30において、スライドドア5は、その車両前後方向の中間部分に重心Pを有している。また、スライドドア5が全閉位置付近にある場合、そのスライドドア5の後方下端部5rbに設けられたドア側ガイドローラユニット20Cが形成する第3の支持点X3は、ドア開口部3の前縁部3bに設けられた第2の車体側ガイドローラユニット20Bが形成する第2の支持点X2から車両後方側に離間した位置にある。このため、そのスライドドア5の荷重は、第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46Bが形成する第2の支持点X2及びドア側ガイドローラユニット20Cに設けられた第3のロードローラ46Cが形成する第3の支持点X3に分散される。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、そのスライドドア5の荷重を、第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46B及びドア側ガイドローラユニット20Cに設けられた第3のロードローラ46Cが下側から支える構成になっている。
また、本実施形態のスライドドア装置30において、第1の車体側ガイドローラユニット20Aは、ドア開口部3の前縁部3bから車両後方側に突出する第1の支持ブラケット32Aに支持されている。このため、第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aは、第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46Bよりも車両後方側、即ちスライドドア5の閉動作方向に配置されている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、スライドドア5が全閉位置付近にある場合において、その第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aが形成する第1の支持点X1をスライドドア5の重心Pに近付ける構成になっている。
即ち、スライドドア5の重心Pが車両前後方向において第2及び第3の支持点X2,X3の間にある場合には、第1〜第3の支持点X1〜X3を結ぶ三角形δの頂点に位置する第1の支持点X1をスライドドア5の重心Pに近付けることで、その荷重バランスが改善される。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、より安定的に、スライドドア5を支持することが可能になっている。
更に、図4に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のドア側ガイドレール10Aは、例えば、スライドドア5が下方に沈み込むような状況が生じた場合に、その第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aに対し、レール構造部34を構成する第2の横壁部38が上側から当接する。即ち、本実施形態のスライドドア装置30は、この第2の横壁部38の下面38bが、第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aに対して上側から当接可能な第4の摺動面S4となっている。そして、これにより、この第1の支持点X1においてもまた、その第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aがスライドドア5の荷重を下側から支えることが可能になっている。
一方、図9に示すように、スライドドア5が全開位置付近にある場合、本実施形態のスライドドア装置30は、主に、上記第1〜第3の支持点X1〜X3を結ぶ三角形δにおいて、スライドドア5の開動作方向に位置する第1及び第2の支持点X1,X2において、その上下方向におけるスライドドア5の荷重を支える状態になる。
即ち、本実施形態のスライドドア装置30において、第3の支持点X3を構成するドア側ガイドローラユニット20Cは、スライドドア5の開動作時、そのスライドドア5と一体に車両前方側に移動する。そして、これにより、その第1〜第3の支持点X1〜X3を結ぶ三角形δが縮小することになる。
また、この過程において、スライドドア5の重心Pは、最も車両前方側に位置する第2の支持点X2を超えて、さらに車両前方側へと移動する。そして、これにより、スライドドア5の姿勢は、第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46Bが形成する第2の支持点X2を支点として、そのドア側ガイドローラユニット20Cが設けられた後方下端部5rbが持ち上がる態様で車両前方側に傾くことになる。
しかしながら、本実施形態のスライドドア装置30において、第1の支持点X1を構成する第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aは、その第2の支持点X2を構成する第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46Bよりも車両後方側に配置されている。そして、第1の支持点X1は、この第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aに対して第1のドア側ガイドレール10Aに形成された第1の摺動面S1が下側から当接することにより、その第1のロードローラ46Aが上側からスライドドア5の荷重を支える構成になっている。
即ち、スライドドア5と一体にドア側ガイドローラユニット20Cが車両前方側に移動することで、その第3の支持点X3を構成する第3のロードローラ46Cが支えるスライドドア5の荷重は徐々に減少する。しかしながら、これにより、スライドドア5の姿勢が車両前方側に傾くことで、その第1の支持点X1を構成する第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aに対し、第1のドア側ガイドレール10Aに形成された第1の摺動面S1が下側から押し当てられることになる。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、そのスライドドア5の荷重を支える主たる支持点を、第1及び第3の支持点X1,X3から第1及び第2の支持点X1,X2に遷移させることで、スライドドア5の開動作時においても、そのスライドドア5を安定的に支持することが可能になっている。
(ガイドローラユニットのストッパ構造)
次に、本実施形態のスライドドア装置30におけるガイドローラユニットのストッパ構造について説明する。
図3に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、車体側ガイドレール10Cが設けられた車体2側の凹部59には、その車両前方側の端部59aに、略四角板状のストッパ部材71が設けられている。そして、ドア側ガイドローラユニット20Cは、このストッパ部材71に当接することにより、その車両前方側、即ちスライドドア5の開動作方向への移動が規制されるようになっている。
また、図2及び図10に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、第1のドア側ガイドレール10Aの後端部80に設けられたストッパ部材81を備えている。そして、本実施形態のスライドドア装置30においては、このストッパ部材81が第1の車体側ガイドローラユニット20Aに当接することで、その車両前方側、即ちスライドドア5と一体に開動作方向に向かう第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動が規制されるようになっている。
詳述すると、本実施形態のスライドドア装置30において、このストッパ部材81は、略四角板状の外形を有している。また、このストッパ部材81は、第1のドア側ガイドレール10Aの後端部80において、そのレール構造部34を構成する第3の横壁部39上に固定されている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、そのスライドドア5と一体に開動作方向に向かう第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動に基づいて、当該第1のドア側ガイドレール10Aの後端部80に設けられたストッパ部材81が第1の車体側ガイドローラユニット20Aに当接する構成になっている。
さらに詳述すると、図11に示すように、本実施形態のストッパ部材81は、第1のドア側ガイドレール10Aの後端部80に固定された状態において、そのスライドドア5の開動作方向(図11中、上側)に開口するスリット82を有している。具体的には、このスリット82は、その開口部に拡開部83を有している。また、このスリット82の周縁には、そのストッパ部材81の表面81sから板厚方向(図11中、紙面手前側)に盛り上がった厚肉部84を有している。そして、本実施形態のストッパ部材81は、このスリット82に対し、上記ローラ保持部42を構成する略平板状の立設部42bが進入する態様で、その第1の車体側ガイドローラユニット20Aに当接する構成になっている。
即ち、本実施形態のストッパ部材81は、第1の車体側ガイドローラユニット20A側の当接部となるローラ保持部42の立設部42bに対してスリット82内の後端壁82cが当接することにより、そのスライドドア5と一体に開動作方向に向かう第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動を規制する。また、このとき、スリット82内に進入したローラ保持部42の立設部42bは、その第1のドア側ガイドレール10Aのレール幅方向両側(図11中、左右方向)が、スリット82の両側壁部82a,82bに挟まれる位置関係となる。そして、本実施形態のストッパ部材81は、このスリット82の両側壁部82a,82bを規制部としてローラ保持部42の立設部42bに係合することで、そのレール幅方向における第1の車体側ガイドローラユニット20Aに対する第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動を規制することが可能になっている。
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)スライドドア装置30は、車体2の側面2aに設けられたドア開口部3を開閉するスライドドア5に設けられた第1のドア側ガイドレール10Aと、車体2に支持された状態で第1のドア側ガイドレール10Aに連結される第1の車体側ガイドローラユニット20Aと、を備える。また、第1のドア側ガイドレール10Aよりも下方に配置される第2のドア側ガイドレール10Bと、車体2に支持された状態で第2のドア側ガイドレール10Bに連結される第2の車体側ガイドローラユニット20Bと、を備える。そして、ドア開口部3の下縁部3aにおいて車体2に設けられる車体側ガイドレール10Cと、スライドドア5に支持された状態で車体側ガイドレール10Cに連結されるドア側ガイドローラユニット20Cと、を備える。
上記構成によれば、車体2の側面2aに露出するガイドレールを廃止して、高いデザイン性を確保することができる。そして、例えば、開動作時における車幅方向外側への飛び出し量を抑えつつ、大きなドアストロークを確保することができる等、併せて、好適なスライドドア5の開閉動作を確保することができる。
また、車両1のフロントドア6のように、そのドア開口部3の上縁部、前縁部及び後縁部にガイドレールを配置し難い設計上の制約があるものについても、そのスライドドア化が可能になる。そして、これにより、より優れた車両デザインを実現することができる。
(2)第1のドア側ガイドレール10Aは、第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aに対して下側から当接する第1の摺動面S1を有する。また、第2のドア側ガイドレール10Bは、第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46Bに対して上側から当接する第2の摺動面S2を有する。更に、ドア側ガイドローラユニット20Cは、車体2側に形成される第3の摺動面S3に対して上側から当接する第3のロードローラ46Cを有する。そして、第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aは、第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46Bよりもスライドドア5の車両後方側に配置される。
上記構成によれば、第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aが、スライドドア5の荷重を上側から支える第1の支持点X1を形成する。また、第2の車体側ガイドローラユニット20Bに設けられた第2のロードローラ46B及びドア側ガイドローラユニット20Cに設けられた第3のロードローラ46Cが、それぞれ、スライドドア5の荷重を下側から支える第2及び第3の支持点X2,X3を形成する。更に、第1の支持点X1は、第2の支持点X2よりもスライドドア5の閉動作方向に形成される。そして、これにより、スライドドア5の開閉動作に伴い、そのスライドドア5の荷重を支える主たる支持点を遷移させつつ、安定的に、そのスライドドア5を支持することができる。
(3)第1のドア側ガイドレール10Aは、第1の車体側ガイドローラユニットに設けられた第1のロードローラ46Aに対して上側から当接可能な位置に設けられた第4の摺動面S4を有する。
上記構成によれば、例えば、スライドドア5が下方に沈み込むような状況が生じた場合に、第1の車体側ガイドローラユニット20Aに設けられた第1のロードローラ46Aが形成する第1の支持点X1においても、そのスライドドア5の荷重を下側から支えることができる。そして、これにより、より安定的に、スライドドア5を支持することができる。
(4)第1のドア側ガイドレール10Aには、第1の車体側ガイドローラユニット20Aに当接することにより、スライドドア5と一体に開動作方向に向かう第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動を規制するストッパ部材81が設けられる。
上記構成によれば、ストッパ部材81が第1の車体側ガイドローラユニット20Aに当接する位置において、そのスライドドア5と一体に開動作方向に向かう第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動を規制することができる。そして、これにより、その全開位置を超えたスライドドア5の開動作(オーバーストローク)を抑えることができる。その結果、第1のドア側ガイドレール10Aの長さを短縮することができる。
また、第1のドア側ガイドレール10Aに対して直接設けることで、その第1のドア側ガイドレール10Aがスライドドア5の内側面5sから離れた位置に配置される構成についても適用することができる。そして、車体2側において、そのスライドドア5と一体に開動作方向に向かうドア側ガイドローラユニット20Cの移動を規制するストッパ部材71と併用することにより、より確実に、そのスライドドア5のオーバーストロークを抑えることができる。
(5)ストッパ部材81は、第1の車体側ガイドローラユニット20A側の当接部を構成するローラ保持部42の立設部42bに係合するスリット82を有する。そして、このスリット82の両側壁部82a,82bを規制部として、ローラ保持部42の立設部42bが係合部としてのスリット82に係合することにより、その第1のドア側ガイドレール10Aのレール幅方向における第1の車体側ガイドローラユニット20Aに対する第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動が規制される。
上記構成によれば、全開位置におけるスライドドアのガタツキを抑えることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・スライドドア5は、開閉駆動装置を有したパワースライドドアであってもよく、手動式のものであってもよい。
・上記実施形態では、車両1のフロントドア6として構成されたスライドドア5に具体化したが、これに限らず、後部ドアに適用してもよい。また、開動作方向は、車両前方側でなく、車両後方側であってもよい。そして、車両のバックドア等、その他のドア開口部を開閉する構成についてもまた、これを排除しない。
・上記実施形態では、第1のドア側ガイドレール10Aにストッパ部材81を設けることとしたが、第2のドア側ガイドレール10Bに設けてもよい。そして、第1及び第2のドア側ガイドレール10A,10Bの両方に設けてもよい。
・上記実施形態では、ストッパ部材81は、ローラ保持部42を構成する略平板状の立設部42bを第1の車体側ガイドローラユニット20A側の当接部とすることとした。しかし、これに限らず、第1の車体側ガイドローラユニット20A側の当接部は、任意に変更してもよい。
・また、ストッパ部材81は、第1の車体側ガイドローラユニット20A側の当接部を構成する立設部42bが進入する係合部としてのスリット82を有する。そして、その両側壁部82a,82bを規制部として、第1のドア側ガイドレール10Aのレール幅方向における第1の車体側ガイドローラユニット20Aに対する第1のドア側ガイドレール10Aの相対移動を規制することとした。しかし、レール幅方向の相対移動を規制する係合部の構成については、任意に変更してもよい。