JP2017087394A - マルチワイヤ放電加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ワイヤ用給電子に多くの電力を供給しなくても、1回のパルス印加で複数状のワイヤに放電を発生させることができるマルチワイヤ放電加工装置を提供する。【解決手段】マルチワイヤ放電加工装置は、複数条に並列する並列ワイヤ部を構成するワイヤと、半導体である被加工物を固定する導電材で形成された基台と、基台に固定された被加工物に加工ワイヤ部が切り込む加工送り手段と、並列ワイヤ部と基台に高周波パルス電圧を印加する高周波パルス電源ユニットと、各構成要素を制御する制御手段と、を備える。高周波パルス電源ユニットは、電源と、基台に給電する基台用給電子と、並列ワイヤ部の複数条のワイヤに一括して給電するワイヤ用給電子と、電源とワイヤ用給電子との間に接続され蓄積した電力をワイヤ用給電子に供給するコンデンサと、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、マルチワイヤ放電加工装置に関する。
シリコンインゴットをスライスしてウェーハにする方法の一つとしてワイヤーソーを用いる方法が知られている。ワイヤーソーを用いてSiCインゴットのような硬質な被加工物をスライスする場合、砥粒による除去力が小さすぎて加工時間が長くなったり加工負荷によりワイヤが切断されたりする可能性がある。そのため、マルチワイヤ放電加工装置の開発が行われている(特許文献1参照)。
マルチワイヤ放電加工装置は複数条のワイヤで複数の分割ラインを一度に形成可能である。基本的には、マルチワイヤ放電加工装置は1パルスのパルス電圧の印加でワイヤの1箇所で放電を発生させて被加工物を加工する。加工速度の向上のために1パルスのパルス電圧の印加で複数の放電電極(複数条のワイヤ)のそれぞれで放電を発生させる放電加工装置が提案されている(特許文献2及び特許文献3参照)。
特開2012−125879号公報 特開2003−260617号公報 特開2014−073578号公報
1パルスのパルス電圧の印加で複数条のワイヤのそれぞれで放電を発生させることにより加工レートは飛躍的に向上する。しかし、1パルスのパルス電圧の印加で複数条のワイヤのそれぞれで放電を発生させる場合、電源からワイヤ用給電子に出力する電力を大きくする必要がある。
本発明は、電源からワイヤ用給電子に出力する電力を抑制しつつ、1パルスのパルス電圧の印加で複数条のワイヤに放電を発生させることができるマルチワイヤ放電加工装置を提供することを目的とする。
本発明に係るマルチワイヤ放電加工装置は、複数のガイドローラに複数回巻回し複数条に並列する並列ワイヤ部を構成するワイヤと、半導体である被加工物を固定する導電材で形成された基台と、該ワイヤと該基台を相対移動させて該基台に固定された被加工物に加工ワイヤ部が切り込む加工送り手段と、該並列ワイヤ部と該基台に高周波パルス電圧を印加する高周波パルス電源ユニットと、各構成要素を制御する制御手段と、を備えるマルチワイヤ放電加工装置であって、該高周波パルス電源ユニットは、電源と、該基台に給電する基台用給電子と、該並列ワイヤ部の複数条のワイヤに一括して給電するワイヤ用給電子と、該電源と該ワイヤ用給電子との間に接続され蓄積した電力を該ワイヤ用給電子に供給するコンデンサと、を備え、該ワイヤ用給電子から被加工物までのワイヤは所定の抵抗値を有し、該ワイヤ用給電子からの1パルスの給電に対し複数条のワイヤで放電が発生することを特徴とする。
本発明に係るマルチワイヤ放電加工装置において、該制御手段は、ワイヤと被加工物との間で流れる電流値を測定する電流測定手段と、該電流測定手段の測定値から短絡状態を検出する短絡判定手段と、を備え、該短絡判定手段は、パルス電圧の印加開始から該電流値の上昇開始までの時間が所定以下の場合に短絡と判定し、パルス電圧の印加を休止又は該加工送り手段の駆動を停止することが好ましい。
本発明に係るマルチワイヤ放電加工装置によれば、コンデンサで蓄積された電力が急激にワイヤ用給電子に印加されるので、電源からワイヤ用給電子に出力する電力を抑制しつつ、1パルスのパルス電圧の印加で複数条のワイヤに放電を発生させることができる。
図1は、本実施形態に係るマルチワイヤ放電加工装置の一例を示す概略図である。 図2は、本実施形態に係る高周波パルス電源ユニットの電気回路の一例を示す模式図である。 図3は、放電加工される被加工物Wの一例を示す模式図である。 図4は、本実施形態に係る短絡判定手段による短絡判定方法の一例を説明するための図である。 図5は、無放電状態のワイヤ及び被加工物の一例を模式的に示す図である。 図6は、放電状態のワイヤ及び被加工物の一例を模式的に示す図である。 図7は、短絡状態のワイヤ及び被加工物の一例を模式的に示す図である。 図8は、本実施形態に係るマルチワイヤ放電加工装置の動作の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定しこのXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。
図1は、本実施形態に係るマルチワイヤ放電加工装置1の一例を示す概略図である。マルチワイヤ放電加工装置1は、並列された複数条のワイヤ2で発生する放電により被加工物Wを薄く切断する。
図1に示すように、マルチワイヤ放電加工装置1は、複数のガイドローラ3に複数回巻回し複数条に並列する並列ワイヤ部4を構成するワイヤ2と、半導体である被加工物Wを固定する導電材で形成された基台5を有する支持機構13と、ワイヤ2と基台5とを相対移動させて基台5に固定された被加工物Wに加工ワイヤ部6が切り込む加工送り手段7と、並列ワイヤ部4と基台5とに高周波パルス電圧を印加する高周波パルス電源ユニット8と、各構成要素を制御する制御手段9と、を備える。
また、マルチワイヤ放電加工装置1は、ワイヤ2が巻かれそのワイヤ2を繰り出す繰り出しボビン10と、ワイヤ2を巻き取る巻き取りボビン11と、加工液Fが満たされる加工槽12と、を備える。
被加工物Wは、半導体で形成される。被加工物Wは、円柱状の半導体インゴットである。本実施形態において、半導体とは、体積低効率が0.01[Ω・cm]以上、好ましくは0.1[Ω・cm]以上の部材をいう。被加工物Wは、SiC(炭化ケイ素)を含む。なお、被加工物Wが、単結晶ダイヤモンド、シリコン、及びGaN(窒化ガリウム)の少なくとも一つを含んでもよい。
ワイヤ2は、導電材で形成される。ワイヤ2は、例えば黄銅等の金属線である。ワイヤ2は繰り出しボビン10に巻かれている。繰り出しボビン10は、Y軸と平行な回転軸を中心に回転可能であり、ガイドローラ3にワイヤ2を繰り出す。
ガイドローラ3は、繰り出しボビン10から繰り出されたワイヤ2をガイドしながら移動させる。ガイドローラ3は、ワイヤ2の移動方向に間隔をおいて複数配置される。ガイドローラ3は、円柱状の部材であり、Y軸と平行な回転軸を中心に回転可能である。ガイドローラ3の表面にガイド溝が設けられる。ワイヤ2は、ガイドローラ3のガイド溝に配置された状態で移動する。ガイドローラ3の表面は、合成樹脂のような絶縁体で形成される。
本実施形態において、ガイドローラ3は、6つのガイドローラ3A,3B,3C,3D,3E,3Fを含む。ガイドローラ3Aは、繰り出しボビン10の近傍に配置され、繰り出しボビン10から繰り出されたワイヤ2を支持する。ガイドローラ3Aは、ワイヤ2をガイドローラ3B〜3Eに送る。
ガイドローラ3B〜3Eは、ワイヤ2が環状になるようにそのワイヤ2を支持する。ワイヤ2は、ガイドローラ3B〜3Eを周回する。ワイヤ2は、Y軸方向に間隔をあけながらガイドローラ3B〜3Eに複数回巻かれる。ワイヤ2が複数のガイドローラ3B〜3Eに複数回巻回されることにより、Y軸方向に複数条に並列するワイヤ2からなる並列ワイヤ部4が形成される。ガイドローラ3B〜3Eは、環状のワイヤ2を内側から支持する。並列ワイヤ部4のワイヤ2は、例えば、Y軸方向に0.5[mm]以上5.0[mm]以下の間隔をあけてガイドローラ3B〜3Eを複数回周回する。Y軸方向に並列するワイヤ2の条数は例えば‘8’である。
ガイドローラ3Aからガイドローラ3Bに送られたワイヤ2は、ガイドローラ3Bに支持された後、ガイドローラ3Cに送られる。ガイドローラ3Bからガイドローラ3Cに送られたワイヤ2は、ガイドローラ3Cに支持された後、ガイドローラ3Dに送られる。ガイドローラ3Cからガイドローラ3Dに送られたワイヤ2は、ガイドローラ3Dに支持された後、ガイドローラ3Eに送られる。ガイドローラ3Dからガイドローラ3Eに送られたワイヤ2は、ガイドローラ3Eに支持された後、ガイドローラ3Bに送られる。これにより、複数条に並列するワイヤ2の並列ワイヤ部4のうち1周分(1条分)のワイヤ2がガイドローラ3B〜3Eを周回したこととなる。ワイヤ2は、Y軸方向に間隔をあけつつガイドローラ3B〜30Eを複数回周回する。ワイヤ2は、ガイドローラ3B〜30Eを複数回周回した後、ガイドローラ3Bからガイドローラ3Fに送られる。
ガイドローラ3Fは、巻き取りボビン11の近傍に配置され、ガイドローラ3Bから送られたワイヤ2を支持する。ガイドローラ3Bからガイドローラ3Fに送られたワイヤ2は、ガイドローラ3Fに支持された後、巻き取りボビン11に送られる。巻き取りボビン11は、Y軸と平行な回転軸を中心に回転可能であり、ガイドローラ3Fから送られたワイヤ2を巻き取る。
繰り出しボビン10、巻き取りボビン11、及びガイドローラ3は、サーボモータのような駆動装置の駆動力により回転する。複数のガイドローラ3A〜3Fの全てが駆動装置の駆動力で回転してもよいし、並列ワイヤ部4のワイヤ2を支持するガイドローラ3B〜3Eが駆動装置の駆動力で回転する駆動ローラで並列ワイヤ部4のワイヤ2を支持しないガイドローラ3A,3Fが従動ローラでもよい。ガイドローラ3の回転により移動するワイヤ2の移動速度は、例えば0.1[m/sec.]以上3.0[m/sec.]以下である。
並列ワイヤ部4のワイヤ2は、一対のガイドローラ3D,3EによりZ軸方向に配置される。ガイドローラ3Dとガイドローラ3Eとの間のワイヤ2は、一定の張力で張られる。加工ワイヤ部6は、ガイドローラ3Dとガイドローラ3Eとにより張られたワイヤ2を含む。加工ワイヤ部6のワイヤ2は、+Z方向に移動する。加工ワイヤ部6は、ガイドローラ3Dとガイドローラ3Eとの間のワイヤ2を使って、基台5に固定された被加工物Wを切断する。
支持機構13は、被加工物Wを支持する。支持機構13は、被加工物Wを固定する基台5と、基台5を支持する支柱14とを有する。基台5は、サブストレート15を介して被加工物Wを支持する。基台5及びサブストレート15は、金属のような導電材で形成されている。支柱14の上端部に基台5が固定され、支柱14の下端部に加工送り手段7が固定される。
加工送り手段7は、駆動装置を含み、支柱14を介して基台5をX軸方向に移動可能である。加工送り手段7は、基台5をX軸方向に移動させて基台5に固定された被加工物Wに加工ワイヤ部6を切り込ませる。加工送り手段7は、X軸方向に延在するボールねじと、パルスモータのような駆動装置とを有する。加工送り手段7は、駆動装置を駆動して、被加工物Wが加工ワイヤ部6に接近する方向(−X方向)及び加工ワイヤ部6から離れる方向(+X方向)のそれぞれに基台5を移動可能である。被加工物Wが加工送り方向である−X方向に移動すると、被加工物Wは加工ワイヤ部6に切り込まれる。
なお、本実施形態においては、加工ワイヤ部6を用いる被加工物Wの加工において基台5がX軸方向に移動することとするが、加工ワイヤ部6がX軸方向に移動してもよいし、加工ワイヤ部6及び基台5の両方がX軸方向に移動してもよい。
加工槽12は、誘電体である水又は油のような加工液Fを保持する。加工ワイヤ部6は、加工槽12に満たされた加工液Fに浸漬される。加工槽12の内側で、加工液Fに浸漬された加工ワイヤ部6のワイヤ2が被加工物Wを加工する。
加工槽12は、開口部16を有する。ガイドローラ3Bからガイドローラ3Cに送られるワイヤ2は、開口部16から加工槽12の内側に進入する。加工槽12の内側に進入したワイヤ2は、加工槽12に配置されたガイドローラ3C,3Dにより開口部16から加工槽12の外側に送られる。
基台5の一部は、開口部16を介して加工槽12の内側に入り込む。基台5は、加工槽12と接触しない状態でX軸方向に移動可能である。
高周波パルス電源ユニット8は、並列ワイヤ部4のワイヤ2と、基台5に固定された被加工物Wとのそれぞれに高周波パルス電圧を印加する。高周波パルス電源ユニット8は、電源17と、電圧調整手段18と、パルス調整手段19とを有する。
電圧調整手段18は、高周波パルス電圧の電圧値を調整する。高周波パルス電源ユニット8は、電圧調整手段18により、例えば150[V]の高周波パルス電圧を出力する。
パルス調整手段19は、高周波パルス電圧の周波数及びパルス幅を調整する。高周波パルス電源ユニット8は、パルス調整手段19により、例えば150[kHz]でパルス幅が1[μsec.]の高周波パルス電圧を出力する。
また、高周波パルス電源ユニット8は、基台5に給電する基台用給電子20と、並列ワイヤ部4の複数条のワイヤ2に一括して給電するワイヤ用給電子21と、を備える。
基台用給電子20は、加工槽12の外側において基台5に固定される。高周波パルス電源ユニット8の電源17は、基台用給電子20と接続される。高周波パルス電源ユニット8は、基台用給電子20及び基台5を介して、高周波パルス電圧を被加工物Wに印加する。
ワイヤ用給電子21は、加工槽12の外側において並列ワイヤ部4のワイヤ2に接触するように配置される。ワイヤ用給電子21は、ガイドローラ3Bの近傍に配置され、ガイドローラ3Bとガイドローラ3Cとの間のワイヤ2に接触する。ワイヤ用給電子21は、棒状の部材であり、複数条のワイヤ2と一括して接触する。電源17は、ワイヤ用給電子21と接続される。高周波パルス電源ユニット8は、ワイヤ用給電子21を介して、高周波パルス電圧を複数条のワイヤ2に一括して印加する。
制御手段9は、コンピュータシステムを含み、繰り出しボビン10、巻き取りボビン11、ガイドローラ3、加工送り手段7、及び高周波パルス電源ユニット8を制御する。制御手段9は、繰り出しボビン10、巻き取りボビン11、及びガイドローラ3を駆動可能な駆動装置に制御信号を出力して、ワイヤ2の移動条件を制御する。制御手段9は、加工送り手段7の駆動装置に制御信号を出力して、被加工物Wと加工ワイヤ部6との相対位置又は相対速度を制御する。制御手段9は、高周波パルス電源ユニット8に制御信号を出力して、高周波パルス電圧の出力条件を制御する。
制御手段9は、ワイヤ2と被加工物Wとの間で流れる電流値を測定する電流測定手段22と、電流測定手段22の測定値から短絡状態を検出する短絡判定手段23と、を備える。
図2は、本実施形態に係る高周波パルス電源ユニット8の電気回路24の一例を示す模式図である。図2に示すように、高周波パルス電源ユニット8は、電源17(17A,17B)と、基台5に給電する基台用給電子20と、並列ワイヤ部4の複数条のワイヤ2に一括して給電するワイヤ用給電子21と、電源17とワイヤ用給電子21との間に接続され蓄積した電力をワイヤ用給電子21に供給するコンデンサ25と、を備える。
電源17は、直流電源である。電源17は、第1電源17Aと第2電源17Bとを含む。第1電源17Aは放電加工用電源であり、第2電源17Bは放電加工補助用電源である。第1電源17Aの負極は、スイッチング素子26A、抵抗27A、及び電線28を介して、ワイヤ用給電子21と接続される。第1電源17Aの正極は、電線29を介して、基台用給電子20と接続される。第2電源17Bの負極は、スイッチング素子26B、抵抗27B、及び電線29を介して、基台用給電20と接続される。第2電源17Bの正極は、電流の逆流を防止するためのダイオード30、及び電線28を介して、ワイヤ用給電子21と接続される。
スイッチング素子26A,26Bは、基台用給電子20とワイヤ用給電子21とに対する電圧印加のオン及びオフを実施して、基台用給電子20とワイヤ用給電子21とに対する給電時間を制御する。基台用給電子20とワイヤ用給電子21とに対する給電時間が制御されることにより、加工エネルギーが調整される。抵抗27A,27Bは、短絡発生時における部品破損を目的とした抵抗であり、その抵抗値は部品破損を考慮した上で低い値が望ましい。第1電源17Aは加工パルス電圧を供給し、第2電源17Bは構成部品(コンデンサ25等)に蓄積された印加電圧を解放するパルス電圧を供給する。
ワイヤ用給電子21は、並列ワイヤ部4の複数条のワイヤ2に一括して接触し一括して給電する。ワイヤ用給電子21から被加工物Wまでのワイヤ2は、所定の抵抗値を有する。図1に示したように、ワイヤ用給電子21は、ガイドローラ3Bの近傍に配置されている。
ワイヤ用給電子21から被加工物Wまでのワイヤ2の抵抗値は、例えば1[Ω]以上である。ワイヤ用給電子21から被加工物Wまでのワイヤ2の抵抗値は、電源17からワイヤ用給電子21までの抵抗値よりも大きい。
コンデンサ25は、電源17とワイヤ用給電子21との間において、ワイヤ用給電子21に対して並列に接続される。電源17から高周波パルス電圧が出力され、電線28と電線29との間に電位差が生じると、コンデンサ25に電荷が蓄積される。コンデンサ25の電位差が電源17から出力された高周波パルス電圧と同じ値になるまでコンデンサ25に電荷が蓄積される。コンデンサ25の放電が開始されると、コンデンサ25の放電に伴う高周波パルス電圧がワイヤ用給電子21に印加される。コンデンサ25の放電が開始されてから一定時間が経過しコンデンサ25の放電が終了すると、コンデンサ25によるワイヤ用給電子21に対する高周波パルス電圧の印加が終了する。
例えば第1電源17Aから1パルス分の高周波パルス電圧が出力された場合、ワイヤ用給電子21には、第1電源17Aから出力された高周波パルス電圧が印加されるとともに、コンデンサ25の放電に伴う高周波パルス電圧が印加される。コンデンサ25の放電が開始されてから一定時間が経過しコンデンサ25の放電が終了すると、コンデンサ25によるワイヤ用給電子21に対する高周波パルス電圧の印加が終了する。第1電源17Aから次の1パルス分の高周波パルス電圧が出力された場合、ワイヤ用給電子21には、第1電源17Aから出力された高周波パルス電圧が印加されるとともに、コンデンサ25の放電に伴う高周波パルス電圧が印加される。コンデンサ25の放電が開始されてから一定時間が経過しコンデンサ25の放電が終了すると、コンデンサ25によるワイヤ用給電子21に対する高周波パルス電圧の印加が終了する。このように、第1電源17Aから1パルス分の高周波パルス電圧が出力される度に、ワイヤ用給電子21には、コンデンサ25の放電に伴う高周波パルス電圧が印加される。コンデンサ25に電荷が蓄積され、コンデンサ25の放電が開始されることにより、コンデンサ25の放電に伴う高周波パルス電圧がワイヤ用給電子21に急激に印加される。そのため、第1電源17Aから出力させる電力を大きくしなくても、1パルスの高周波パルス電圧の印加で複数条のワイヤ2に放電を発生させるのに十分な電力をワイヤ用給電子21に供給することができる。なお、第2電源17Bから高周波パルス電圧が出力される場合も同様である。
このように、コンデンサ25が設けられることにより、急峻な高周波パルス電圧がワイヤ用給電子21に印加される。なお、コンデンサ25の容量が大き過ぎると、コンデンサ25のチャージ時間が長くなり、急峻な高周波パルス電圧を印加できない場合があるため、急峻な高周波パルス電圧を印加できる容量を有するコンデンサ25が使用される。
電流測定手段22は、電線29に接続される。電流測定手段22は、ワイヤ2と被加工物Wとの間の放電電流の電流値を測定する。
図3は、放電加工される被加工物Wの一例を示す模式図である。電源17が作動し、ワイヤ用給電子21及び基台用給電子20を介して、ワイヤ2と被加工物Wとの間に高周波パルス電圧が印加される。ワイヤ用給電子21は、並列ワイヤ部4の複数条のワイヤ2に一括して給電する。ワイヤ用給電子21からの1パルスの給電に対し、複数条のワイヤ2で放電が発生する。ワイヤ2は、正面に配置された被加工物Wに放電を発生する。例えば、加工液Fにおいては加工ワイヤ部6のワイヤ2と被加工物Wとは絶縁状態である。絶縁状態であるワイヤ2と被加工物Wとが所定距離まで接近すると、ワイヤ2と被加工物Wとの絶縁状態が破壊され放電が発生する。この放電によって被加工物Wが加熱及び溶融される。また、加工液Fの温度が急激に上昇して加工液Fが気化し、その加工液Fの体積膨張によって被加工物Wの溶融部分が飛散する。このように、高周波パルス電圧が加工ワイヤ部6のワイヤ2に印加されることによって、被加工物Wが溶融及び飛散する現象が断続的に発生する。これにより、被加工物Wが放電加工される。図3に示すように、複数条のワイヤ2による放電加工により被加工物Wに加工溝Dが形成され、被加工物Wが薄く切断され、ウェーハのような薄片が形成される。
次に、短絡判定手段23について説明する。短絡判定手段23は、ワイヤ2と被加工物Wとが短絡したか否かを判定する。本実施形態において、短絡判定手段23は、高周波パルス電圧の印加開始から放電電流の電流値の上昇開始までの時間が所定以下の場合に短絡と判定する。
図4は、本実施形態に係る短絡判定手段23による短絡判定方法の一例を説明するための図である。図4は、高周波パルス電源ユニット8から出力される高周波パルス電圧の設定値と、ワイヤ2と被加工物Wとの間の放電電圧の測定値と、ワイヤ2と被加工物Wとの間の放電電流の測定値との関係を示す図である。図4において、横軸は時間を示す。放電電流の測定値は、電流測定手段22によって取得される。放電電圧の測定値は、電圧測定手段(不図示)によって取得される。
図5、図6、及び図7は、図3の円形部分Kを拡大した図である。図5は、無放電状態のワイヤ2及び被加工物Wを模式的に示す図である。図6は、放電状態のワイヤ2及び被加工物Wを模式的に示す図である。図7は、短絡状態のワイヤ2及び被加工物Wを模式的に示す図である。
図4及び図5において、無放電状態とは、ワイヤ2と被加工物Wとの距離Gが十分に大きく、放電が発生しない状態をいう。無放電状態においては、被加工物Wは放電加工されない。
図4及び図6において、放電状態とは、ワイヤ2と被加工物Wとが接近し、ワイヤ2と被加工物Wとの距離Gが所定距離に調整され、放電が発生している状態をいう。放電状態においては、被加工物Wは放電加工される。
図4及び図7において、短絡状態とは、ワイヤ2と被加工物Wとが接触し、放電が発生しない状態をいう。短絡状態においては、被加工物Wは放電加工されず、ワイヤ2が発熱して劣化したり破断したりする可能性が高くなる。
高周波パルス電圧の設定値は制御手段9により生成される。高周波パルス電源ユニット8は、電圧調整手段18及びパルス調整手段19を用いて、設定値に基づく高周波パルス電圧を出力し、ワイヤ2及び被加工物Wに印加する。図4に示す例においては、時点t0において高周波パルス電圧の出力が開始されることとする。以下の説明においては、高周波パルス電源ユニット8から高周波パルス電圧が出力され、ワイヤ2と被加工物Wとの間に印加された時点t0を適宜、高周波パルス電圧の印加開始時点t0、と称する。
図4に示すように、無放電状態においては、印加開始時点t0から所定時間だけ経過した時点において放電電圧の電圧値がゼロから上昇し、放電電圧についての閾値SHよりも大きくなった後、ゼロになるまで下降する。一方、放電電流は変化しない。無放電状態においては、距離Gが大きいため、ワイヤ2と被加工物Wとの間において放電電流は流れず、ゼロのままである。
図4に示すように、放電状態においては、印加開始時点t0から所定時間だけ経過した時点において放電電圧の電圧値がゼロから上昇し、閾値SHよりも大きくなった後、ゼロになるまで下降する。また、印加開始時点t0から電流上昇時間T1だけ経過後の時点t1において、放電電流の電流値がゼロから上昇を開始し、放電電流についての閾値Iよりも大きくなった後、ゼロになるまで下降する。
図4に示すように、短絡状態においては、印加開始時点t0から所定時間だけ経過した時点において放電電圧の電圧値がゼロから上昇した後、ゼロになるまで下降する。また、印加開始時点t0から電流上昇時間T2だけ経過後の時点t2において、放電電流の電流値がゼロから上昇を開始し、閾値Iよりも大きくなった後、ゼロになるまで下降する。電流上昇時間T2は電流上昇時間T1よりも短い。
本実施形態において、被加工物Wは半導体であり、電気を流すとともに、0.01[Ω・cm]以上、好ましくは0.1[Ω・cm]以上の電気抵抗を有する。ワイヤ2と被加工物Wとの間に高周波パルス電圧が印加されることにより、被加工物Wに電荷が溜められる。放電電圧が徐々に上昇し、閾値SHを超えた辺りで、放電が発生し、放電電流が流れる。
このように、被加工物Wが半導体であることにより、放電状態及び短絡状態の両方においては、高周波パルス電圧の印加が開始される印加開始時点t0から放電電流の上昇が開始する上昇開始時点t(t1、t2)までの間に電流上昇時間T(T1,T2)だけタイムラグが発生する。また、放電状態における印加開始時点t0から上昇開始時点t1までの電流上昇時間T1と、短絡状態における印加開始時点t0から上昇開始時点t2までの電流上昇時間T2とは、異なる。
したがって、電流測定手段22で放電電流の電流値を測定し、印加開始時点t0から放電電流の上昇開始時点t(t1,t2)までの電流上昇時間T(T1,T2)を測定することにより、短絡判定手段23は、放電状態か短絡状態かを判定することができる。
本実施形態において、短絡判定手段23は、高周波パルス電圧の印加開始から放電電流の電流値の上昇開始までの時間が、予め決められている所定値(閾値)以下の場合に、短絡と判定する。放電状態か短絡状態かを判定するための電流上昇時間Tについての閾値は、実験又はシミュレーションにより予め求めることができる。
表1は、無放電状態、放電状態、及び短絡状態と、放電電圧の有無、放電電流の有無、及び電流上昇時間の長短との関係を示す。
Figure 2017087394
表1において、放電電圧が「有:○」とは、放電電圧が閾値SH以上になることを示し、放電電圧が「無:×」とは、放電電圧が閾値SHを超えないことを示す。また、放電電流が「有:○」とは、放電電流が閾値I以上になることを示し、放電電流が「無:×」とは、放電電流が閾値Iを超えないことを示す。また、電流上昇時間が「長:○」とは、図4を参照して説明した電流上昇時間Tが長い電流上昇時間T1であることを示し、電流上昇時間が「短:×」とは、電流上昇時間Tが短い電流上昇時間T2であることを示す。
図4を参照して説明したように、無放電状態及び放電状態においては、放電電圧が閾値SH以上になる。短絡状態においては、放電電圧が閾値SH以上になる場合及び閾値SHを超えない場合の両方のケースがある。
図4を参照して説明したように、無放電状態においては、放電電流は閾値Iを超えず、放電状態及び短絡状態においては、放電電流は閾値I以上になる。
図4を参照して説明したように、放電状態においては、電流上昇時間Tは長い電流上昇時間T1であり、短絡状態においては、電流上昇時間Tは短い電流上昇時間T2であり、無放電状態においては、電流上昇時間Tは発生しない。
表1に示すように、放電電圧、放電電流、及び電流上昇時間の組み合わせは、無放電状態においては「○、×、×」であり、放電状態においては「○、○、○」であり、短絡状態においては「○/×、○、×」である。このように、無放電状態と放電状態と短絡状態とでは、放電電圧、放電電流、及び電流上昇時間の組み合わせが異なる。したがって、短絡判定手段23は、放電電圧、放電電流、及び電流上昇時間の検出結果に基づいて、無放電状態、放電状態、及び短絡状態のいずれの状態であるかを判定することができる。
次に、本実施形態に係るマルチワイヤ放電加工装置1の動作の一例について説明する。図8は、本実施形態に係るマルチワイヤ放電加工装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
制御手段9は、高周波パルス電源ユニット8を制御し、ワイヤ2及び被加工物Wに対する高周波パルス電圧の印加を開始する。また、制御手段9は、放電状態の監視及び判定を開始する(ステップSP1)。次に、制御手段9は、加工送り手段7を制御し、被加工物Wを加工送り方向に移動して、加工ワイヤ部6のワイヤ2に被加工物Wを接近させる(ステップSP2)。
短絡判定手段23は、ワイヤ2と被加工物Wとが短絡しているか否かを判定する。本実施形態において、短絡判定手段23は、高周波パルス電圧を1パルス印加する度に、電圧測定手段及び電流測定手段の検出結果に基づいて、短絡状態であるか否かを判定する。本実施形態において、短絡判定手段23は、連続する複数パルスの高周波パルス電圧を印加したときに短絡状態が連続して発生するか否かを監視する。短絡判定手段23は、連続して発生する短絡状態の数を示す連続短絡数を導出し、その連続短絡数が予め決められている所定値以上か否かを判定する(ステップSP3)。図4及び表1等を参照して説明したように、短絡判定手段23は、高周波パルス電圧を1パルス印加する度に、放電電圧の電圧値が閾値SH以上か否か、放電電流の電流値が閾値I以上か否か、及び高周波パルス電圧の印加開始時点t0から放電電流の電流値の上昇開始時点tまでの電流上昇時間Tが閾値以下か否かを判定し、その判定結果に基づいて、連続短絡数が所定値以上か否かを判定することができる。短絡判定手段23は、連続短絡数が所定値以上である場合、ワイヤ2と被加工物Wとが短絡していると判定し、連続短絡数が所定値未満である場合、ワイヤ2と被加工物Wとは短絡していないと判定する。
ステップSP3において、ワイヤ2と被加工物Wとが短絡していないと判定された場合(ステップSP3:No)、制御手段9は、加工送りを継続して放電加工動作を継続する(ステップSP4)。これにより、図3に示したように、加工ワイヤ部6のワイヤ2で被加工物Wが加工される。
制御手段9は、放電加工動作が完了したか否かを判定する(ステップSP5)。すなわち、制御手段9は、被加工物Wが完全に薄く切断されたか否かを判定する。例えば、制御手段9は、ワイヤ2と被加工物Wとの間を流れる放電電流の電流値の変化に基づいて、被加工物Wが完全に薄く切断されたと判定することができる。また、制御手段9は、被加工物Wの加工量、すなわち、X軸方向における被加工物Wの移動距離に基づいて、被加工物Wが完全に薄く切断されたと判定することができる。被加工物Wが完全に薄く切断され、放電加工動作が完了したと判定された場合(ステップSP5:Yes)、制御手段9は、ウェーハが形成されたと判定し、加工送りを終了して放電加工動作を終了する。また、放電加工動作が完了していないと判定された場合(ステップSP5:No)、制御手段9は、ステップSP3に進み、放電加工動作を継続する。
ステップSP3において、被加工物Wとワイヤ2とが短絡していると判定された場合(ステップSP3:Yes)、制御手段9は、所定パルス数だけ、高周波パルス電圧の印加を連続して停止する(ステップSP7)。すなわち、制御手段9は、高周波パルス電圧の印加を所定パルス数(所定時間)だけ休止する。
ステップSP7の所定パルス数は、例えば「5」である。制御手段9は、所定パルス数だけ高周波パルス電圧の印加を休止するように、高周波パルス電源ユニット8を制御する。高周波パルス電圧の印加を休止させる理由は、短絡の原因によっては、高周波パルス電圧の印加を休止している間に短絡が解消する可能性があるからである。例えば、ワイヤ2と被加工物Wとの間に滞留する加工屑を介して被加工物Wとワイヤ2とが接続された場合においても、ワイヤ2は高速度で移動しているので、そのワイヤ2の移動により、被加工物Wの加工溝Dとワイヤ2と間に滞留する加工屑が加工溝Dから排出されて短絡が解消する可能性があるからである。
制御手段9は、連続して停止した高周波パルス電圧のパルス数は所定パルス数以上か否かを判定する(ステップSP8)。ステップSP8において、連続して停止したパルス数が所定パルス数以上でないと判定された場合(ステップSP8:No)、制御手段9は、ステップSP3に進み、放電加工動作を実施する。
ステップSP8において、連続して停止したパルス数が所定パルス数以上であると判定された場合(ステップSP8:Yes)、制御手段9は、加工送り手段7の駆動装置を停止させて、被加工物Wの加工送り方向への移動を停止する(ステップSP9)。被加工物Wの加工送りを停止させる理由は、被加工物Wとワイヤ2とが接触して短絡した場合に被加工物Wの加工送りを継続すると、ワイヤ2に被加工物Wを押し当てることになり、ワイヤ2に負荷がかかって断線のおそれがあるからである。なお、ステップSP8において、連続して停止したパルス数が所定パルス数以上であると判定された場合、制御手段9は、加工送り手段7の駆動装置を制御して、加工送り方向の反対方向へ被加工物Wを移動させてもよい。すなわち、制御手段9は、被加工物Wがワイヤ2から離れるように被加工物Wを移動させてもよい。
制御手段9は、短絡状態が解消されたか否かを判定する(ステップSP10)。ステップSP10において、短絡状態が解消されたと判定された場合(ステップSP10:Yes)、制御手段9は、ステップSP3に進み、放電加工動作を実施する。ステップSP10において、短絡状態が解消されないと判定された場合(ステップSP10:No)、制御手段9は、放電加工動作を終了する。
以上説明したように、本実施形態によれば、高周波パルス電源ユニット8は、電源17とワイヤ用給電子21との間に接続され蓄積した電力をワイヤ用給電子21に供給するコンデンサ25を備えるので、コンデンサ25で蓄積された電力が急激にワイヤ用給電子21に印加される。すなわち、コンデンサ25により、急峻な高周波パルス電圧がワイヤ用給電子21に印加される。これにより、電源17からワイヤ用給電子21に出力する電力を抑制しつつ、1パルスの高周波パルス電圧の印加で複数条のワイヤ2に放電を発生させることができる。
また、本実施形態によれば、ワイヤ2は所定の抵抗値を有し、そのワイヤ2の抵抗を利用して、全てのワイヤ2で放電を発生させることができる。
また、本実施形態よれば、短絡判定手段23は、高周波パルス電圧の印加開始から放電電流の電流値の上昇開始までの電流上昇時間が所定以下の場合に短絡と判定する。従来技術においては、ワイヤ2の抵抗値により放電発生近辺における電圧変化を測定できないという課題があった。本実施形態においては、複数のワイヤ2で放電を発生させる場合においても、ワイヤ2と被加工物Wとの間で流れる放電電流の電流値を測定し、高周波パルス電圧の印加開始時と検出される電流値発生時との時間差が所定値(閾値)よりも小さければ、複数条のワイヤ2のどこかで短絡が発生していると判定することができる。
また、本実施形態によれば、制御手段9は、短絡判定手段23で短絡と判定された場合、高周波パルス電圧の印加を所定時間休止させた後、再度短絡判定手段23で短絡を検査し、短絡と判定されなくなるまで高周波パルス電圧の印加休止と短絡状態の検査を繰り返し実行させる。そして、制御手段9は、繰り返しを所定回数以上実施しても短絡と判定された場合は、短絡と判定されなくなるまで加工送り手段7による加工送りを停止させる、又は短絡と判定されなくなるまで加工送り方向と反対方向に被加工物Wとワイヤ2とを相対移動させる。これにより、被加工物Wの加工溝Dとワイヤ2と間に滞留する加工屑を介して被加工物Wとワイヤ2とが接続された場合には、高周波パルス電圧の印加を休止して放電加工を停止しただけで、ワイヤ2の走行に伴って加工屑が自然に加工溝Dから排出され、短絡が解消されることが期待できる。
また、加工屑を介して被加工物Wとワイヤ2とが接続された場合に、被加工物Wを加工送りした状態で所定時間印加を休止しても短絡が解消されないとき、被加工物Wの加工送りを停止して、ワイヤ2の走行に伴って加工屑を自然に加工溝Dから排出することで、短絡が解消することが期待できる。このとき、被加工物Wの加工送りを停止しているので、被加工物Wとワイヤ2とが接触して短絡していた場合に、ワイヤ2に被加工物Wを押し当てることがない。これにより、ワイヤ2に対する負荷が軽減され、断線を抑制できる。
また、ワイヤ2の走行に伴って加工屑が自然に加工溝Dから排出されて短絡が解消することが期待できない場合、すなわち、被加工物Wとワイヤ2とが接触して短絡した場合に、被加工物Wを反対方向に加工送りして被加工物Wとワイヤ2を非接触状態とすることで、確実に短絡を解消できる。
このように、従来のように、短絡発生時に、直ぐに被加工物Wを反対方向に加工送りしてワイヤ2と離間させるようなことは行わずに、先ずはワイヤ2の走行により自然に短絡を解消させる動作を行うので、反対方向へ加工送りするような過剰な加工停止動作を極力行わずに短絡を解消できる。これにより、短時間で短絡を解消することができ、短絡による発熱が誘発するワイヤの断線を自動的に抑制でき、加工送りが自動的に調整され、適切な加工送りを実施することができる。
1 マルチワイヤ放電加工装置
2 ワイヤ
3 ガイドローラ
4 並列ワイヤ部
5 基台
6 加工ワイヤ部
7 加工送り手段
8 高周波パルス電源ユニット
9 制御手段
10 繰り出しボビン
11 巻き取りボビン
12 加工槽
13 支持機構
14 支柱
15 サブストレート
16 開口部
17 電源
18 電圧調整手段
19 パルス調整手段
20 基台用給電子
21 ワイヤ用給電子
22 電流測定手段
23 短絡判定手段
24 電気回路
25 コンデンサ
26A スイッチング素子
26B スイッチング素子
27A 抵抗
27B 抵抗
28 電線
29 電線
30 ダイオード
F 加工液
W 被加工物

Claims (2)

  1. 複数のガイドローラに複数回巻回し複数条に並列する並列ワイヤ部を構成するワイヤと、半導体である被加工物を固定する導電材で形成された基台と、該ワイヤと該基台を相対移動させて該基台に固定された被加工物に加工ワイヤ部が切り込む加工送り手段と、該並列ワイヤ部と該基台に高周波パルス電圧を印加する高周波パルス電源ユニットと、各構成要素を制御する制御手段と、を備えるマルチワイヤ放電加工装置であって、
    該高周波パルス電源ユニットは、
    電源と、該基台に給電する基台用給電子と、該並列ワイヤ部の複数条のワイヤに一括して給電するワイヤ用給電子と、該電源と該ワイヤ用給電子との間に接続され蓄積した電力を該ワイヤ用給電子に供給するコンデンサと、を備え、
    該ワイヤ用給電子から被加工物までのワイヤは所定の抵抗値を有し、該ワイヤ用給電子からの1パルスの給電に対し複数条のワイヤで放電が発生することを特徴とするマルチワイヤ放電加工装置。
  2. 該制御手段は、
    ワイヤと被加工物との間で流れる電流値を測定する電流測定手段と、
    該電流測定手段の測定値から短絡状態を検出する短絡判定手段と、を備え、
    該短絡判定手段は、
    パルス電圧の印加開始から該電流値の上昇開始までの時間が所定以下の場合に短絡と判定し、パルス電圧の印加を休止又は該加工送り手段の駆動を停止することを特徴とする請求項1記載のマルチワイヤ放電加工装置。
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