本発明に係るワイヤ放電加工機について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
図1は、ワイヤ放電加工機10の機械的な概略構成図である。ワイヤ放電加工機10は、加工液中で、ワイヤ電極12と加工対象物W(図2参照)とで形成される極間(隙間)EG(図2参照)に電圧を印加して放電を発生させることで、加工対象物(被加工物)Wに対して加工(放電加工)を施す工作機械である。ワイヤ放電加工機10は、加工機本体14、加工液処理装置16、および、制御装置18を備える。
ワイヤ電極12の材質は、例えば、タングステン系、銅合金系、黄銅系等の金属材料である。一方、加工対象物Wの材質は、例えば、鉄系材料または超硬材料等の金属材料である。
加工機本体14は、加工対象物(ワーク、被加工物)Wに向けたワイヤ電極12を供給する供給系統20aと、加工対象物Wを通過したワイヤ電極12を回収する回収系統20bとを備える。
供給系統20aは、ワイヤ電極12が巻かれたワイヤボビン22と、ワイヤボビン22に対してトルクを付与するトルクモータ24と、ワイヤ電極12に対して摩擦による制動力を付与するブレーキシュー26と、ブレーキシュー26に対してブレーキトルクを付与するブレーキモータ28と、ワイヤ電極12の張力の大きさを検出する張力検出部30と、加工対象物Wの上方でワイヤ電極12をガイドするワイヤガイド(上ワイヤガイド)32とを備える。
回収系統20bは、加工対象物Wの下方でワイヤ電極12をガイドするワイヤガイド(下ワイヤガイド)34と、ワイヤ電極12を挟持可能なピンチローラ36およびフィードローラ38と、ピンチローラ36およびフィードローラ38により搬送されたワイヤ電極12を回収するワイヤ回収箱40とを備える。
加工機本体14は、放電加工の際に使用される脱イオン水または油等の加工液を貯留可能な加工槽42を備え、加工槽42内に、ワイヤガイド32、34が配置されている。この加工槽42は、ベース部44上に載置されている。加工対象物Wは、ワイヤガイド32とワイヤガイド34との間に設けられている。ワイヤガイド32、34は、ワイヤ電極12を支持するダイスガイド32a、34aを有する。また、ワイヤガイド34は、ワイヤ電極12の向きを変えながらピンチローラ36およびフィードローラ38に案内するガイドローラ34bを備える。
なお、ワイヤガイド32は、スラッジ(加工屑)を含まない清浄な加工液を噴出する。これにより、ワイヤ電極12と加工対象物Wとの隙間(極間)EGを、放電加工に適した清浄な加工液で満たすことができ、放電加工によって発生したスラッジによって放電加工の精度が低下することを防止することができる。また、ワイヤガイド34も、スラッジを含まない清浄な加工液を噴出してもよい。
加工対象物Wは、X方向およびY方向に移動可能なテーブル(図示略)によって支持されている。ワイヤガイド32、34、加工対象物W、および、前記テーブルは、加工槽42によって貯留された加工液に浸漬している。
ここで、この加工対象物Wには、放電加工の開始点となる開始孔または加工溝(ともに図示略)が形成され、この開始孔または加工溝にワイヤ電極12が挿通されてワイヤ電極12が結線される。この加工対象物Wの開始孔または加工溝とワイヤ電極12との隙間が、極間EGとなる。ワイヤ放電加工機10は、ワイヤ電極12が開始孔または加工溝に挿通されて結線された後で、ワイヤ電極12を加工対象物Wに向けて下方向(−Z方向)に送り出しながら、前記テーブル(加工対象物W)をXY平面と平行する平面上で移動させることで、加工対象物Wを加工する。ワイヤ電極12の結線とは、ワイヤボビン22に巻かれたワイヤ電極12を、ワイヤガイド32、加工対象物W、および、ワイヤガイド34に通して、ピンチローラ36およびフィードローラ38で挟持させることを言い、ワイヤ電極12が結線されると、ワイヤ電極12には所定の張力が付与されている。なお、X方向およびY方向は互いに直交しており、XY平面(水平面)と直交する方向をZ方向(重力が働く方向)とする。
加工液処理装置16は、加工槽42に発生した加工屑(スラッジ)を除去するとともに、電気抵抗率・温度の調整等を行うことで加工液の液質を管理する装置である。この加工液処理装置16によって液質が管理された加工液が再び加工槽42に戻される。制御装置18は、加工機本体14および加工液処理装置16を制御する。
図2は、ワイヤ電極12と加工対象物Wとの間で形成される極間EGに加工電圧を印加するためのワイヤ放電加工機10の電気的な回路構成図である。ワイヤ放電加工機10は、加工電源50と、電圧検出部52とを備える。加工電源50は、極間EGに電圧を印加するための電源である。加工電源50は、制御装置18によって制御される。加工電源50は、第1電圧印加回路54と、第2電圧印加回路56とを有する。
第1電圧印加回路54は、加工対象物W側を正極、ワイヤ電極12側を負極とする正極性電圧を印加するように、極間EGに接続された第1直流電源58と、第1直流電源58と極間EGとの間に設けられ、極間EGへの正極性電圧の印加のオン/オフを切り換える第1スイッチSW1とを有する。図2では、第1直流電源58の正極と加工対象物Wとの間、および、第1直流電源58の負極とワイヤ電極12との間に、第1スイッチSW1をそれぞれ設けたが、一方のみであってもよい。
第2電圧印加回路56は、加工対象物W側を負極、ワイヤ電極12側を正極とする逆極性電圧を印加するように、極間EGに接続された第2直流電源60と、第2直流電源60と極間EGとの間に設けられ、極間EGへの逆極性電圧の印加をオン/オフに切り換える第2スイッチSW2とを有する。図2では、第2直流電源60の正極とワイヤ電極12との間、および、第2直流電源60の負極と加工対象物Wとの間に、第2スイッチSW2をそれぞれ設けたが、一方のみであってもよい。
ここで、第2直流電源60の逆極性電圧の絶対値(大きさ)が、第1直流電源58の正極性電圧の絶対値(大きさ)未満となるように、第1直流電源58および第2直流電源60が設定されている。正極性電圧および逆極性電圧はともに、極間EGに放電を発生させて放電電流(加工電流)を流すことができる電圧である。なお、極間EGの電圧Vegは、加工対象物Wを基準としたワイヤ電極12の電圧値としているので、正極性電圧は、負(−)の電圧となり、逆極性電圧は、正(+)の電圧となる。
電圧検出部52は、極間EGの電圧Vegを検出する電圧センサである。
制御装置18は、CPU等のプロセッサとプログラムが記憶されたメモリチップとを有し、プロセッサがこのプログラムを実行することによって、本実施の形態の制御装置18として機能する。
制御装置18は、スイッチ制御部62、平均電圧計測部64、および、期間設定変更部66を備える。スイッチ制御部62は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2のオン/オフを制御する。スイッチ制御部62は、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とが同時にオンしないように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御する。第1スイッチSW1および第2スイッチSW2は、トランジスタ等で構成される半導体のスイッチング素子であってもよい。第1スイッチSW1がオンになることで第1直流電源58の正極性電圧(負の電圧)が極間EGに印加され、第2スイッチSW2がオンになることで第2直流電源60の逆極性電圧(正の電圧)が極間EGに印加される。
ここで、正極性電圧が極間EGに印加される期間を第1の期間T1と呼び、逆極性電圧が印加される期間を第2の期間T2と呼ぶ。スイッチ制御部62は、第1の期間T1と第2の期間T2とが交互に切り換わるように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御する。なお、第1の期間T1は、少なくとも正極性電圧が極間EGに印加される時間を含む期間であり、第2の期間T2は、少なくとも逆極性電圧が極間EGに印加される時間を含む期間である。
第1の期間T1および第2の期間T2は、予め設定されている。第2の期間T2は、第1の期間T1より長く設定されていてもよい。例えば、第1の期間T1に極間EGに印加される正極性電圧の絶対値(大きさ)は、第2の期間T2に極間EGに印加される逆極性電圧の絶対値(大きさ)より高いので、極間EGの平均電圧Vaを正極性電圧より高い目標電圧(例えば、0V)にするために、第2の期間T2を第1の期間T1より長くする必要がある。なお、本実施の形態では目標電圧を0Vとしたが、ワイヤ電極12および加工対象物(ワーク)Wの材質や極間EGに印加する電圧の大きさに応じて、ワイヤ電極12の電食防止のために平均電圧Vaを負側(=正極性側)に偏向させてもよいし、逆に加工対象物(ワーク)Wの電食防止のために正側(=逆極性側)に偏向させてもよい。
平均電圧計測部64は、電圧検出部52が検出した極間EGの電圧Vegに基づいて、極間EGの平均電圧Vaを計測する。平均電圧計測部64は、電圧検出部52が検出した極間EGの電圧Vegを逐次記憶していき、該記憶した複数の電圧Vegを平均することで、極間EGの平均電圧Vaを算出(計測)する。
期間設定変更部66は、第1の期間T1および第2の期間T2のうち少なくとも一方の設定を変更する。期間設定変更部66は、平均電圧計測部64が測定した極間EGの平均電圧Vaが目標電圧となるように、第1の期間T1および第2の期間T2のうち少なくとも一方の設定を変更する。本実施の形態では、電解現象の発生や加工対象物Wの電食を確実に防止すべく、目標電圧を0Vとするので、第2の期間T2は、第1の期間T1より長くなるように設定されている。
スイッチ制御部62は、期間設定変更部66が変更した第1の期間T1および第2の期間T2に基づいて、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2のオン/オフを制御する。なお、期間設定変更部66を設けなくてもよい。この場合は、スイッチ制御部62は、予め設定された第1の期間T1および第2の期間T2に基づいて、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御すればよい。
以下、スイッチ制御部62による第1スイッチSW1および第2スイッチSW2の制御について詳しく説明する。第1スイッチSW1および第2スイッチSW2の制御方法として2つ例を挙げて説明する。
<第1のスイッチ制御方法>
第1のスイッチ制御方法では、第1スイッチSW1の1回のオン時間(以下、第1継続オン時間と呼ぶ)To1および第2スイッチSW2の1回のオン時間(以下、第2継続オン時間)To2は予め定められている。この第1継続オン時間To1は、第1の期間T1以下の長さであり、第2継続オン時間To2は、第2の期間T2以下の長さである。第2継続オン時間To2は、第1継続オン時間To1以上の長さであってもよい。
スイッチ制御部62は、第1の期間T1中は、第1スイッチSW1を1回または複数回オンにすることで、極間EGに正極性電圧を印加させ、第2の期間T2中は、第2スイッチSW2を1回または複数回オンにすることで、極間EGに逆極性電圧を印加させる。第1の期間T1中に第1スイッチSW1がオンになる回数(第1所定回数)をN1、第2の期間T2中に第2スイッチSW2がオンになる回数(第2所定回数)をN2とすると、実際に逆極性電圧が極間EGに印加される時間(=To2×N2)は、実際に正極性電圧が極間EGに印加される時間(=To1×N1)より長くなるように、第1継続オン時間To1、第2継続オン時間To2、および、回数N1、N2が決められている。
第1の期間T1、第1継続オン時間To1、および、回数N1は、T1≧To1×N1、の関係を有し、第2の期間T2、第2継続オン時間To2、および、回数N2は、T2≧To2×N2、の関係を有する。このとき、第1継続オン時間To1および回数N1と第2継続オン時間To2および回数N2とは、(To1×N1)/(To2×N2)=逆極性電圧/正極性電圧、の関係を有することが好ましい。
図3は、第1のスイッチ制御方法によって、スイッチ制御部62が第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御したときの極間EGの電圧Vegを示すタイムチャートである。図3に示す例では、To1=To2、N1=1、N2=3、正極性電圧の絶対値と逆極性電圧の絶対値との比を約3対1としている。
図3では、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2の切り換わりによって極間EGに印加される電圧状態をわかり易くするために、正極性電圧および逆極性電圧が極間EGに印加されても、極間EGに放電が発生していない状態を示すものとする。なお、放電が発生した場合は、極間EGに印加された電圧の絶対値は、アーク電圧まで低下する。この放電が発生することによって極間EGに放電電流(加工電流)が流れ加工対象物Wが加工される。つまり、放電が発生しなければ、加工対象物Wが加工されることもなく、ワイヤ電極12も消耗しない。
図3を見るとわかるように、スイッチ制御部62は、正極性電圧が印加される第1の期間T1と、逆極性電圧が印加される第2の期間T2とが交互に切り換わるように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御している。図3に示す例では、第1スイッチSW1が1回のオンに対して、第2スイッチSW2を3回オンにさせる。その理由は、正極性電圧の絶対値と逆極性電圧の絶対値との比が約3対1となっており、その場合であっても極間EGの平均電圧Vaを約0V(目標電圧)にするためである。
したがって、第1の期間T1は、第1継続オン時間To1と等しくなる(T1=To1)。第2の期間T2は、第2スイッチSW2が3回オンになる期間なので、第2スイッチSW2が1回目にオンにされるタイミングから3回目のオンがオフになるタイミングまでの期間を第2の期間T2とする。また、1回目のオンと2回目のオンとの間、2回目と3回目のオンとの間には、第2スイッチSW2がオフになるオフ時間を設けている。したがって、第2の期間T2は、第2継続オン時間To2の3倍より長い期間となる(T2>3×To2)。
なお、第2の期間T2中に、第2スイッチSW2がオンになる第2継続オン時間To2と第2継続オン時間To2との間に第2スイッチSW2がオフになるオフ時間を設けたが、このオフ時間を設けなくてもよい。この場合は、第2の期間T2は、第2継続オン時間To2の3倍の長さとなる(T2=3×To2)。
反対に、第1の期間T1に第1スイッチSW1がオンになる回数を複数回にする場合は、第1の期間T1中に、第1スイッチSW1がオンになる第1継続オン時間To1と第1継続オン時間To1との間に、第1スイッチSW1がオフになるオフ時間を設けてもよいし、設けなくてもよい。
第1スイッチSW1がオンになると、極間EGに正極性電圧(負の電圧)が印加され、第2スイッチSW2がオンになると、極間EGに逆極性電圧(正の電圧)が印加される。第1の期間T1に第1スイッチSW1がオンになり、第2の期間T2に第2スイッチSW2がオンになるので、第1の期間T1中は、極間EGに正極性電圧が印加され、第2の期間T2中は、極間EGに逆極性電圧が印加される。
なお、第1の期間T1と第2の期間T2との間に、極間EGに電圧が印加されないオフ期間(第1スイッチSW1および第2スイッチSW2がともにオフになる期間)を設けたが、このオフ期間は設けなくてもよい。
スイッチ制御部62は、期間設定変更部66によって第1の期間T1が変更された場合は、それに応じて、第1継続オン時間To1を変更してもよいし、第1スイッチSW1をオンにする回数N1を変更してもよい。また、スイッチ制御部62は、期間設定変更部66によって第2の期間T2が変更された場合は、それに応じて、第2継続オン時間To2を変更してもよいし、第2スイッチSW2をオンにする回数N2を変更してもよい。
<第2のスイッチ制御方法>
第2のスイッチ制御方法では、第1スイッチSW1の1回のオン時間(第1継続オン時間)To1は第1の期間T1と等しく(To1=T1)、第2スイッチSW2の1回のオン時間(第2継続オン時間)To2は第2の期間T2と等しい(To2=T2)。このとき、第1の期間T1(=第1継続オン時間To1)と第2の期間T2(=第2継続オン時間To2)との関係は、第1の期間T1/第2の期間T2=逆極性電圧/正極性電圧、の関係を有することが好ましい。
図4は、第2のスイッチ制御方法によってスイッチ制御部62が第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御したときの極間EGの電圧Vegを示すタイムチャートである。図4に示す例では、第1の期間T1(=第1継続オン時間To1)と第2の期間T2(=第2継続オン時間To2)との比を約1対3、正極性電圧の絶対値と逆極性電圧の絶対値との比を約3対1としている。
図4においても、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2の切り換わりによって極間EGに印加される電圧状態をわかり易くするために、正極性電圧および逆極性電圧が極間EGに印加されても、極間EGに放電が発生していない状態を示すものとする。
図4を見るとわかるように、スイッチ制御部62は、正極性電圧が印加される第1の期間T1と、逆極性電圧が印加される第2の期間T2とが交互に切り換わるように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御している。図4に示す例では、第1スイッチSW1がオン状態になる第1の期間T1(第1継続オン時間To1)に対して、第2スイッチSW2がオン状態になる第2の期間T2(第2継続オン時間To2)の長さを約3倍にしている。その理由は、正極性電圧の絶対値と逆極性電圧の絶対値との比が約3対1となっており、その場合であっても極間EGの平均電圧Vaを約0V(目標電圧)にするためである。
第1スイッチSW1がオンになると、極間EGに正極性電圧(負の電圧)が印加され、第2スイッチSW2がオンになると、極間EGに逆極性電圧(正の電圧)が印加される。第1の期間T1に第1スイッチSW1がオン状態になり、第2の期間T2に第2スイッチSW2がオン状態になるので、第1の期間T1中は、極間EGに正極性電圧が印加され、第2の期間T2中は、極間EGに逆極性電圧が印加される。
なお、第1の期間T1と第2の期間T2との間に、極間EGに電圧が印加されないオフ期間(第1スイッチSW1および第2スイッチSW2がともにオフになる期間)を設けたが、このオフ期間は設けなくてもよい。
ここで、従来と比較して、本実施の形態のワイヤ放電加工機10によって得られる効果を説明する。図5は、従来の極間EGに印加させる電圧の波形を示す図、図6は、図5に示す波形の電圧Vegによって削られる加工対象物Wおよびワイヤ電極12の形状を示す図である。また、図7は、図3または図4に示す波形の電圧Vegによって削られる加工対象物Wおよびワイヤ電極12の形状を示す図である。なお、図6、図7中の加工対象物Wに付された点線は、加工によって形成される設計上の加工面を表しており、ワイヤ電極12に付された点線は、ワイヤ電極12の消耗部分を示している。
従来においては、例えば、絶対値(大きさ)が同一の正極性電圧と逆極性電圧とを交互に極間EGに印加していた(図5参照)。そのため、このような電圧が極間EGに印加されて放電が発生すると、図6に示すように、加工対象物Wは、その上面に近い程あまり消耗されていないワイヤ電極12で加工が行なわれ、下方になるにつれ消耗が大きいワイヤ電極12で加工が行なわれてしまう。そのため、加工対象物Wの上部に対しては、ワイヤ電極12によって所望の加工が施されるが、下部に対しては所望の加工が施されず、削り残しが多くなってしまう。そのため、加工対象物Wの上部に対して下部が太るという下膨れ状態となり、加工精度が悪化する。
これに対して、本実施の形態のワイヤ放電加工機10では、逆極性電圧の絶対値(大きさ)を正極性電圧の絶対値(大きさ)より小さくしているので、逆極性電圧が極間EGに印加されたときに発生する放電回数を、正極性電圧が極間EGに印加されたときに発生する放電回数より少なくすることができる。また、逆極性電圧が極間EGに印加されたときに放電が発生した場合であっても、小さい加工エネルギーとなるので、ワイヤ電極12の消耗を抑えることができる。したがって、図7に示すように、加工対象物Wの下部においてもワイヤ電極12の消耗は小さくなるため、加工対象物Wの下部に対しても精度よく加工を施すことができ、加工精度の悪化を防止することができる。また、電解現象の発生や加工対象物Wの電食を確実に防止することができる。
また、図5のような従来の電圧印加方式を用いる場合、加工精度の向上のため、ワイヤ電極12の消耗量を予測し、予測したワイヤ電極12の消耗量に応じてワイヤ電極12を、その進行方向(送り方向)に対して傾けることが考えられる。これにより、図8に示すように、ワイヤ電極12の加工対象物Wと対向する側面と加工対象物Wの設計上の加工面とを略平行にすることができる。しかしながら、ワイヤ電極12の消耗量を予測することは困難であり、また、加工条件を変更する度にワイヤ電極12の傾斜量も調整し直す必要があり、手間がかかる。また、板厚が変化する加工対象物(ワーク)Wの場合、最も板厚の厚い箇所(=ワイヤ電極12の消耗量が最も多い箇所)に合わせてワイヤ電極12の傾斜量を決めると、加工対象物(ワーク)Wの板厚が半分以下となるような薄い箇所では、傾斜量が過多となり、精度を悪化させてしまう。このように、実加工において最適な傾斜量を求めることは非常に困難である。これに対して、本実施の形態によれば、ワイヤ電極12の消耗量を予測してワイヤ電極12を傾斜させる必要がなく、手間もかからない。なお、図8中の加工対象物Wおよびワイヤ電極12に付された点線の意味は、図6、図7と同様である。
[変形例]
上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)図9は、変形例1におけるワイヤ放電加工機10の電気的な回路構成図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみを説明する。
変形例1においては、極間EGに逆極性電圧を印加する第2電圧印加回路56は、第2直流電源60と極間EGとの間に挿入された電流制限抵抗R2をさらに有する。具体的には、電流制限抵抗R2は、第2スイッチSW2と極間EGとの間に挿入されている。つまり、第2直流電源60の正極に接続された第2スイッチSW2とワイヤ電極12との間、および、第2直流電源60の負極に接続された第2スイッチSW2と加工対象物Wとの間に電流制限抵抗R2が挿入されている。
なお、電流制限抵抗R2を、第2スイッチSW2と第2直流電源60との間に設けてもよい。つまり、第2直流電源60の正極に接続される第2スイッチSW2と第2直流電源60の正極との間、および、第2直流電源60の負極に接続される第2スイッチSW2と第2直流電源60の負極との間に電流制限抵抗R2を挿入してもよい。また、図9に示す例では、第2直流電源60の正極とワイヤ電極12との間、および、第2直流電源60の負極と加工対象物Wとの間に、電流制限抵抗R2をそれぞれ設けたが、一方のみであってもよい。
この電流制限抵抗R2を挿入することで、逆極性電圧の極間EGへの印加(第2スイッチSW2がオン)によって放電が発生した場合であっても、ワイヤ電極12の消耗をより効果的に抑えることができる。つまり、電流制限抵抗R2を設けることで、放電によって極間EGに流れる放電電流が減少する(制限される)ので、ワイヤ電極12の消耗を抑えることができる。
なお、極間EGに正極性電圧を印加する第1電圧印加回路54も、同様に、第1直流電源58と極間EGとの間に挿入された電流制限抵抗R1(図示略)をさらに有してもよい。電流制限抵抗R1は、第1スイッチSW1と極間EGとの間に挿入されていてもよいし、第1スイッチSW1と第1直流電源58との間に挿入されていてもよい。また、第1直流電源58の正極とワイヤ電極12との間、および、第1直流電源58の負極と加工対象物Wとの間に、電流制限抵抗R1をそれぞれ設けてもいし、一方のみであってもよい。この場合は、電流制限抵抗R1の抵抗値を、電流制限抵抗R2の抵抗値以下とする。電流制限抵抗R1によって、正極性電圧の極間EGへの印加(第1スイッチSW1がオン)によって極間EGに流れる電流を過度に制限すると、加工対象物Wの加工速度が低下するからである。
(変形例2)図10は、変形例2におけるワイヤ放電加工機10の電気的な回路構成図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみを説明する。
変形例2においては、極間EGに正極性電圧を印加する第1電圧印加回路54は、第1直流電源58と並列に接続された第1コンデンサC1をさらに有する。また、極間EGに逆極性電圧を印加する第2電圧印加回路56は、第2直流電源60と並列に接続された第2コンデンサC2をさらに有する。具体的には、第1コンデンサC1は、第1スイッチSW1と第1直流電源58との間に設けられており、第2コンデンサC2は、第2スイッチSW2と第2直流電源60との間に設けられている。通常、第1スイッチSW1と第1直流電源58とはある程度離れた位置に設置されるため、第1スイッチSW1の近くに第1コンデンサC1を設けるとよい。同様に、第2スイッチSW2と第2直流電源60とはある程度離れた位置に設置されるため、第2スイッチSW2の近くに第2コンデンサC2を設けるとよい。
第1コンデンサC1は、極間EGに印加される正極性電圧を安定化させるためのものであり、第2コンデンサC2は、極間EGに印加される逆極性電圧を安定化させるためのものである。第1コンデンサC1の容量は、第2コンデンサC2の容量以上である。第1コンデンサC1の容量は、正極性電圧の安定化に必要な容量よりも大きい。これにより、極間EGへの正極性電圧の印加によって極間EGに流れる放電電流(加工電流)を増加させて加工量を増やすことができ、加工効率を高めることができる。また、第2コンデンサC2の容量を、逆極性電圧の安定化に必要な最低限の容量とすることが好ましい。これにより、極間EGへの逆極性電圧の印加によって極間EGに流れる放電電流を抑えることができ、ワイヤ電極12の消耗を抑えることができる。なお、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2のうち、一方のみを設けてもよい。
(変形例3)上記実施の形態では、スイッチ制御部62は、予め設定された第1の期間T1と第2の期間T2とが交互に切り替わるように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御した。しかしながら、変形例3では、正極性電圧が印加される第1の期間T1および逆極性電圧が印加される第2の期間T2は、設定されておらず、極間EGの平均電圧Vaに基づいて、次に印加する電圧の極性を決定するというものである。なお、第1スイッチSW1の第1継続オン時間To1および第2スイッチSW2の第2継続オン時間To2は予め定められているものとする。
図11は、変形例3におけるワイヤ放電加工機10の電気的な回路構成図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみを説明する。
制御装置18は、スイッチ制御部62、平均電圧計測部64、および、極性決定部70を備える。極性決定部70は、平均電圧計測部64が計測した平均電圧Vaと目標電圧とを比較する。極性決定部70は、比較結果に基づいて、平均電圧Vaが目標電圧に近づく極性を判別し、次回極間EGに印加する極性を決定する。例えば、平均電圧Vaが目標電圧より低い場合は、平均電圧Vaが目標電圧に近づく(上昇する)極性は逆極性となるので、極性決定部70は、逆極性を次回極間EGに印加する極性として決定する。また、平均電圧Vaが目標電圧より高い場合は、平均電圧Vaが目標電圧に近づく(低下する)極性は正極性となるので、極性決定部70は、正極性を次回極間EGに印加する極性として決定する。
スイッチ制御部62は、極性決定部70が決定した極性の電圧を極間EGに印加する。つまり、現在極間EGに印加している電圧の印加が終了すると、極性決定部70が決定した極性の電圧を極間EGに印加する。例えば、極性決定部70が決定した極性が正極性の場合は、スイッチ制御部62は、第1スイッチSW1を第1継続オン時間To1の間だけオンにすることで、極間EGに正極性電圧を印加する。また、極性決定部70が決定した極性が逆極性の場合は、スイッチ制御部62は、第2スイッチSW2を第2継続オン時間To2の間だけオンにすることで、極間EGに逆極性電圧を印加する。
このように、極性決定部70が、現在の極間EGの平均電圧Vaと目標電圧との比較結果に基づいて、次に極間EGに印加する電圧の極性を決定するので、極間EGの平均電圧Vaを目標電圧にすることができる。したがって、目標電圧を例えば0Vとすることで、電解現象の発生や加工対象物Wの電食を確実に防止することができる。
(変形例4)図12は、変形例4におけるワイヤ放電加工機10の電気的な回路構成図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみを説明する。
変形例4では、制御装置18は、スイッチ制御部62、平均電圧計測部64、および、期間設定変更部66の他にさらに、放電判断部80を備える。放電判断部80は、第1電圧印加回路54および第2電圧印加回路56の一方が、極間EGに電圧(正極性電圧または逆極性電圧)を印加している最中に、極間EGに放電が発生したか否かを判断する。放電判断部80は、電圧検出部52が検出した電圧Vegに基づいて放電が発生したか否かを判断する。具体的には、放電判断部80は、第1電圧印加回路54および第2電圧印加回路56の一方が、極間EGに電圧(正極性電圧または逆極性電圧)を印加している最中に、電圧検出部52が検出した電圧Vegの絶対値が、所定値まで低下すると、放電が発生したと判断する。なお、放電が発生すると、極間EGの電圧(絶対値)は低下し、極間EGの電圧はアーク電圧となる。
また、変形例4では、加工電源50は、第1電圧印加回路54および第2電圧印加回路56の他に、さらに、第3電圧印加回路82を備える。第3電圧印加回路82は、加工対象物W側を正極、ワイヤ電極12側を負極とする正極性の主加工電圧を印加するように、極間EGに接続された第3直流電源84と、第3直流電源84と極間EGとの間に設けられ、極間EGへの主加工電圧の印加のオン/オフを切り換える第3スイッチSW3とを有する。図12では、第3直流電源84の正極と加工対象物Wとの間、および、第3直流電源84の負極とワイヤ電極12との間に、第3スイッチSW3をそれぞれ設けたが、一方のみであってもよい。
第3直流電源84は、極間EGに大電流の放電電流(加工電流)である主加工電流を流すため、第1直流電源58および第2直流電源60が極間EGに印加する電圧(絶対値)より大きい電圧(絶対値)を極間EGに印加する。これにより、加工対象物Wの加工量を多くすることができる。
スイッチ制御部62は、正極性電圧または逆極性電圧の一方の印加を開始してから(第1スイッチSW1または第2スイッチSW2がオンしてから)、その印加が終了する(第1スイッチSW1または第2スイッチSW2がオフになる)までの間に、放電判断部80によって放電が発生したと判断された場合は、第3スイッチSW3をオンにすることで、極間EGに主加工電圧(正極性の電圧)を印加して主加工電流を流す。
荒加工(1st加工、最初の加工)時、加工速度の速い2nd加工(2回目の加工)時には、加工対象物Wの加工量を多くする必要がある。そのため、スイッチ制御部62は、荒加工および加工速度の速い2nd加工時には、正極性電圧または逆極性電圧の印加中に、放電が発生すると、第3スイッチSW3をオンにして、アーク放電中の極間EGに主加工電圧を印加して主加工電流を流す。主加工電圧は、正極性の電圧となっているので、つまり、加工対象物Wが正極、ワイヤ電極12が負極となる電圧なので、ワイヤ電極12の消耗を抑えつつ、従来通りの荒加工や2nd加工を行うことができる。
スイッチ制御部62は、予め決められた第3継続オン時間To3だけ第3スイッチSW3をオンにして、主加工電圧を極間EGに印加する。スイッチ制御部62は、第3スイッチSW3をオンにして、主加工電圧を極間EGに印加して主加工電流を流した後は、第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3の全てがオフになる休止時間を設ける。つまり、スイッチ制御部62は、第3継続オン時間To3が経過すると、第3スイッチSW3をオフにするとともに、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2もオフ状態にする。そして、第1スイッチSW1〜第3スイッチSW3がオフ状態になってから休止時間が経過すると、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2の一方をオンにして、極間EGに正極性電圧または逆極性電圧を印加する。
例えば、上記実施の形態および変形例1、2の場合は、スイッチ制御部62は、休止時間が経過した後は、再び、第1の期間T1と第2の期間T2とが交互に切り換わるように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御する。また、上記変形例3の場合は、スイッチ制御部62は、休止時間が経過した後は、再び、極間EGの平均電圧Vaと目標電圧とに応じて、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御する。
なお、仕上げ加工時には、上記実施の形態または変形例1〜3で説明したように、第1電圧印加回路54による正極性電圧の印加と第2電圧印加回路56による逆極性電圧の印加のみを用いて行ってもよい。
(変形例5)矛盾が生じない範囲内で、上記変形例1〜変形例4のいずれか2以上を任意に組み合わせた態様であってもよい。
以上のように、上記実施の形態および変形例1〜5で説明したワイヤ放電加工機10は、ワイヤ電極12と加工対象物Wとで形成される極間EGに電圧を印加して放電を発生させることで、加工対象物Wに対して放電加工を施す。
ワイヤ放電加工機10は、第1電圧印加回路54、第2電圧印加回路56、および、スイッチ制御部62を備える。第1電圧印加回路54は、加工対象物W側を正極、ワイヤ電極12側を負極とする正極性電圧を印加するように極間EGに接続された第1直流電源58と、第1直流電源58と極間EGとの間に設けられ、極間EGへの正極性電圧の印加のオン/オフを切り換える第1スイッチSW1とを有する。第2電圧印加回路56は、ワイヤ電極12側を正極、加工対象物W側を負極とする逆極性電圧を印加するように極間EGに接続された第2直流電源60と、第2直流電源60と極間EGとの間に設けられ、極間EGへの逆極性電圧の印加のオン/オフを切り換える第2スイッチSW2とを有する。スイッチ制御部62は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2のオン/オフを制御し、且つ、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2とが同時にオンしないように第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御する。逆極性電圧の絶対値が正極性電圧の絶対値未満となるように、第1直流電源58および第2直流電源60が設定されている。
このように、逆極性電圧の絶対値が正極性電圧の絶対値未満となるように、第1直流電源58および第2直流電源60が設定されているので、ワイヤ電極12の消耗を抑えることができ、加工精度が悪化することを防止することができる。また、正極性電圧と逆極性電圧とを極間EGに印加するので、電解現象の発生や加工対象物Wの電食を防止することができる。
スイッチ制御部62は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御することで、極間EGに正極性電圧が印加される第1の期間T1と、逆極性電圧が印加される第2の期間T2とを交互に切り換えてもよい。
これにより、ワイヤ電極12の消耗を抑えつつ、加工精度の悪化を防止することができるとともに、電解現象の発生や加工対象物Wの電食を防止することができる。
第2の期間T2は、第1の期間T1より長く設定されていてもよい。これにより、電解現象の発生や加工対象物Wの電食をさらに防止することができる。
ワイヤ放電加工機10は、電圧検出部52、平均電圧計測部64、および、期間設定変更部66と、を備えてもよい。電圧検出部52は、極間EGの電圧Vegを検出する。平均電圧計測部64は、電圧検出部52が検出した極間EGの電圧Vegに基づいて、極間EGの平均電圧Vaを計測する。期間設定変更部66は、平均電圧計測部64が計測した極間EGの平均電圧Vaが目標電圧となるように、第1の期間T1および第2の期間T2のうち少なくとも一方を変更する。
これにより、極間EGの平均電圧Vaを目標電圧に近づけることができる。したがって、ワイヤ電極12の消耗をさらに抑えつつ、加工精度の悪化を防止することができる。また、電解現象の発生や加工対象物Wの電食をさらに防止することができる。
第1スイッチSW1の1回のオン時間である第1継続オン時間To1および第2スイッチSW2の1回のオン時間である第2継続オン時間To2は予め定められており、第1継続オン時間To1は、第1の期間T1以下の長さであり、第2継続オン時間To2は、第2の期間T2以下の長さであってもよい。そして、スイッチ制御部62は、第1の期間T1中は、第1スイッチSW1を1回または複数回オンにすることで、極間EGに正極性電圧を印加させ、第2の期間T2中は、第2スイッチSW2を1回または複数回オンにすることで、極間EGに逆極性電圧を印加させてもよい。そして、第2の期間T2中に逆極性電圧が実際に極間EGに印加される時間が、第1の期間T1中に正極性電圧が実際に極間EGに印加される時間より長くなるように、第1継続オン時間To1および第2継続オン時間To2と、第1の期間T1中に第1スイッチSW1がオンになる回数N1および第2の期間T2中に第2スイッチSW2がオンになる回数N2とが定められていてもよい。
これにより、絶対値が大きい正極性電圧が実際に極間EGに印加される時間より絶対値が低い逆極性電圧が実際に極間EGに印加される時間を長くすることができ、ワイヤ電極12の消耗をさらに抑えつつ、加工精度の悪化を防止することができる。また、電解現象の発生や加工対象物Wの電食をさらに防止することができる。
また、第1スイッチSW1の1回のオン時間は第1の期間T1であり、第2スイッチSW2の1回のオン時間は第2の期間T2であってもよい。そして、スイッチ制御部62は、第1の期間T1中は、第1スイッチSW1をオン状態にし、第2の期間T2中は、第2スイッチSW2をオン状態にしてもよい。
これにより、絶対値が大きい正極性電圧が実際に極間EGに印加される時間より絶対値が低い逆極性電圧が実際に極間EGに印加される時間を長くすることができ、ワイヤ電極12の消耗をさらに抑えつつ、加工精度の悪化を防止することができる。また、電解現象の発生や加工対象物Wの電食をさらに防止することができる。
第1スイッチSW1の1回のオン時間である第1継続オン時間To1および第2スイッチSW2の1回のオン時間である第2継続オン時間To2は予め決められていてもよい。そして、ワイヤ放電加工機10は、電圧検出部52、平均電圧計測部64、および、極性決定部70と、を備えてもよい。極性決定部70は、平均電圧計測部64が計測した極間EGの平均電圧Vaと目標電圧とを比較して、極間EGの平均電圧Vaが目標電圧に近づく極性を判別し、次回印加する電圧の極性を決定する。そして、スイッチ制御部62は、極性決定部70が決定した極性の電圧が印加されるように、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を制御してもよい。
これにより、極間EGの平均電圧Vaを目標電圧に近づけることができる。したがって、ワイヤ電極12の消耗をさらに抑えつつ、加工精度の悪化を防止することができる。また、電解現象の発生や加工対象物Wの電食をさらに防止することができる。
第2電圧印加回路56は、第2直流電源60と極間EGとの間に挿入された電流制限抵抗R2を有してもよい。これにより、逆極性電圧の極間EGへの印加(第2スイッチSW2がオン)によって放電が発生した場合であっても、ワイヤ電極12の消耗をより効果的に抑えることができる。
第1電圧印加回路54は、第1直流電源58と並列に接続された第1コンデンサC1を有し、第2電圧印加回路56は、第2直流電源60と並列に接続された第2コンデンサC2を有してもよい。この場合は、第1コンデンサC1の容量を、第2コンデンサC2の容量以上としてもよい。これにより、極間EGへの正極性電圧の印加によって極間EGに流れる放電電流(加工電流)を増加させて加工量を増やすことができ、加工効率を高めることができる。また、極間EGへの逆極性電圧の印加によって極間EGに流れる放電電流を抑えることができ、ワイヤ電極12の消耗を抑えることができる。
ワイヤ放電加工機10は、電圧検出部52、放電判断部80、および、第3電圧印加回路82を備えてもよい。放電判断部80は、電圧検出部52が検出した極間EGの電圧Vegに基づいて、放電が発生したか否かを判断する。第3電圧印加回路82は、加工対象物W側を正極、ワイヤ電極12側を負極とする正極性の主加工電圧を印加するように極間EGに接続された第3直流電源84と、第3直流電源84と極間EGとの間に設けられ、極間EGへの主加工電圧の印加のオン/オフを切り換える第3スイッチSW3とを有する。そして、スイッチ制御部62は、正極性電圧または逆極性電圧の一方の印加を開始してからその印加が終了するまでの間に、放電判断部80によって放電が発生したと判断された場合は、第3スイッチSW3をオンにすることで、極間EGに主加工電圧を印加して主加工電流を流してもよい。これにより、ワイヤ電極12の消耗を抑えつつ、加工対象物Wの加工量を多くすることができる。