JP2017084676A - リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
Description
(a):活物質の表面で電解液が分解する副反応をなるべく抑制する。かつてはAl2O3やZrO2などの単独元素の酸化物が主体となっていたが、これで活物質表面を全部修飾してしまうとLiイオンの挿入脱離ができなくなってしまうため、現在は部分的に表面を修飾したり、Liイオン伝導体や活物質で表面修飾する技術が主体となっている。
(b):電解液中のフッ化水素不純物により活物質から遷移金属(特にMn)が溶出することを防止する。この場合も(a)と同様に活物質表面を全部修飾することはできないため、現在はNi系活物質とのブレンドにより電解液中のフッ化水素不純物を反応させてMn溶出を抑制する技術が主体となっている。Mnが特に溶出抑制対象となっている理由として、負極の炭素と反応しやすいことが挙げられ、正極がMn系活物質でかつ負極が黒鉛系活物質の電池で充放電を繰り返した場合、電池の設計によっては10サイクルで初期の10分の1の放電容量しかなくなってしまう。
(c):電子伝導性の低い活物質への、電子伝導性の高い物質を被覆する技術がある。この技術に関しては、リン酸塩系やケイ酸塩系、リチウムチタン系の活物質などに炭素材料を被覆する技術として確立しており、製造も容易であることから工具用などの電池に実用化されている。
(前記式において、1.01≦x≦1.05、a≧0.5、0<b≦0.25、0<c≦0.35)
で表される粒子Aの表面に、LiとZrとWとを含む酸化物Bを有し、前記酸化物Bの構造の空間群が、常温でP213である部分を有するリチウムイオン電池用正極活物質である。
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、組成式:LixNiaCobMncO2
(前記式において、1.01≦x≦1.05、a≧0.5、0<b≦0.25、0<c≦0.35)
で表される粒子Aの表面に、LiとZrとWとを含む酸化物Bを有し、前記LiとZrとWとを含む酸化物の構造の空間群が、常温でP213である部分を有するリチウムイオン電池用正極活物質である。尚、表面修飾した酸化物は常温ではP213相であるが、おおよそ400〜500K以上の温度になると、Pa−3相となる(ここで、Pa−3のバーは、表記としては、実際には3の上に記載される。以下同様。)
(前記式において、1.01≦x≦1.05、a≧0.5、0<b≦0.25、0<c≦0.35)
で表される。ここで、リチウムの比率が1.01〜1.05であるが、これは、1.01未満では、安定した結晶構造を保持し難く、1.05超では電池の高容量が確保できなくなるおそれがあるためである。また、ニッケルの組成が0.5以上であるため、当該リチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池の容量、出力、安全性の三つがバランスよく向上する。リチウムイオン電池用正極活物質におけるニッケルの組成は好ましくは0.5〜0.9、より好ましくは0.7〜0.9、更により好ましくは0.8〜0.9である。
上記構成によってなぜサイクル効率および保存率が向上するかについては今のところ不明であるが、本発明では次のように推測している。すなわち、ZrまたはWのどちらかの遷移金属に弱く吸着したスルホラン中の炭素−硫黄結合が分解して熱が発生すると、P213またはPa−3の構造に基づくZr−O−Wの横揺れが発生し、吸着したスルホランが外れてしまって、さらなる分解が抑制されるものと考えられる。従来、ZrやWを正極活物質に添加した技術は数多く存在するが、その構造がP213またはPa−3の構造によるものではなく、おおよそLi2ZrO3(空間群C2/C)またはLi2WO4(空間群I41/amd)の構造によるものがほとんどであった。そのため、従来の正極活物質をスルホラン添加電池に適用したとしてもP213またはPa−3の構造に基づくZr−O−Wの横揺れがなく、スルホランの想定以上の分解が避けられなかった。その結果、初期にランダムにスルホランが分解され、SEIに厚いところと薄いところができ、サイクル特性は改善するものの、その幅は小さいところにとどまっていたものと考えられる。これに対して、本発明の正極活物質は、コアとなるリチウム複合酸化物の粒子の表面を修飾するLiとZrとWとを含む酸化物は、当該酸化物の構造の空間群が、常温でP213である部分を有するため、当該正極活物質によって、リチウムイオン電池内でスルホランの分解がより均一に行われてSEIの厚さが均一化するため、より顕著にサイクル特性が改善する。さらに、コアの粒子表面の修飾物質であるLiとZrとWとを含む酸化物(シェル)中にリチウムが含まれているため、スルホランの分解反応の結果、生成したSEIがリチウムを含有していないものと異なっており、その結果サイクル特性とともに高温での保存特性が向上する。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤をアルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極と、負極と、スルホランを含む電解質とを有する。
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
リチウム複合酸化物の粒子の表面を修飾するLiとZrとWとを含む酸化物を以下のように作製する。
まず、Liアルコキシド、Zrアルコキシド含有アルコール溶液、及び、Wアルコキシド含有アルコール溶液、およびアセチルアセトンを、Li:Zr:W:アセチルアセトンのモル比が所定の値となるように混合し、その後、水を添加してゲルを作製する。
次に、当該ゲルに対し、例えば400〜500℃で1〜20時間の仮焼を実施する(この温度、時間については、当業者が有機物を除去可能と考える範囲で適宜変更可能である)。続いて、仮焼して生成した粉体を金型に充填し、放電プラズマ焼結装置によって不活性ガス雰囲気下、プレス圧30〜250MPa、昇温速度70〜500℃/minで585〜612℃まで急昇温し、1〜20分保持した後、4〜40℃に保持した大量の水の中に投入して急冷する。
急冷後、ロールミルで粗粉砕し、例えばφ2mm程度のジルコニアビーズ、ソルミックスA−7とともに適当なポットに充填し、振動ミルによって微粉砕する。粉末とビーズとソルミックスとの重量比は例えば1:0.5〜7:0.001〜0.005であり、粉砕時間は30〜120分である。
粉砕後、取り出した粉を適当なふるいで分級し、ふるい下を修飾物質とした。
リチウム複合酸化物については、多数の先行特許(例えば、特開2003−168428等)に記載された手法が使用可能であるが、本発明にて検討した内容を以下に記載する。
まず、純水に硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトを、所定のモル比となるように40℃程度で溶解し、(Ni+Co+Mn)の濃度が1〜2mol/kgとなる40℃程度の水溶液Aを作製する。この水溶液Aの中には、Ni、Co、Mn、SO4、H2O以外は実質的に含まない。
水溶液Aとは別に、NaOHを純水に溶解して、1.5〜3mol/kgのNaOH水溶液Bを作製する。
水溶液A及びBとは別に、アンモニア水溶液を純水で薄めて、0.001mol%以上のアンモニア水溶液Cを作製する。このCについては、取り扱う温度での飽和濃度のものを使用できる。
次に、水溶液B及びCの温度を加熱して40℃程度とし、別途準備した反応槽、水溶液A、B及びCに、それぞれ窒素を流して空気を追い出す。
次に、水溶液A及びBをチューブポンプ等で、毎分1〜2Lずつ10分程度反応槽に送液して種晶を形成した後(この時、水溶液A、Bの送液と同時にCを送液してもよい)、水溶液A、B及びCをチューブポンプによって毎分0.5〜1Lずつ送液する。生成したスラリーをレーザー回折・散乱型粒度分布計(マイクロトラック)で粒度分布測定を行い、平均粒子径(D50)が所望の値に到達したところですべての送液を止める。これをろ過・水洗した後、320〜600℃で0.5〜15時間加熱して前駆体を得る。当該焼成温度及び焼成時間は、当業者が水酸化物を酸化物に変換可能と考える範囲で適宜変更可能である。
上述の方法で作製した、LiとZrとWとを含む酸化物(修飾物質)である、ふるい下の粉体を、上述の方法で作製したコアとなるリチウム複合酸化物と共に、それぞれ所定の重量比で乾式粒子複合化装置内に投入し、粒子を複合化することで、正極活物質を得る。
その後、必要であれば、正極活物質を例えばパルベライザー等を用いて解砕することにより正極活物質の粉体を得る。
・コアとなるリチウム複合酸化物の合成
まず、純水に硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトを40℃で溶解し、(Ni+Co+Mn)の濃度が1.15mol/kgであり、Ni:Co:Mnのモル比が8:1:1である40℃の水溶液Aを用意した。この水溶液Aの中には、Ni、Co、Mn、SO4、H2O以外は実質的に含まない。水溶液Aとは別に、NaOHを純水に溶解して、1.85mol/kgのNaOH水溶液Bを作製した。また、市販の約29wt%のアンモニア水溶液(関東化学)を純水で薄めて、0.1mol%のアンモニア水溶液Cとした。加熱して水溶液B及びCの温度を40℃とし、別途準備した反応槽、水溶液A、B及びCに、それぞれ窒素を流して空気を追い出した。そして、水溶液A及びBをチューブポンプによって毎分1.5Lずつ10分程度反応槽に送液して種晶を形成した後、水溶液A、B及びCをチューブポンプによって毎分0.8Lずつ送液した。生成したスラリーをレーザー回折・散乱型粒度分布計(マイクロトラック)で粒度分布測定を行い、平均粒子径(D50)が15μmを超えたところですべての送液を止めた。これをろ過・水洗した後、400℃で3時間、空気中で加熱して前駆体を得た。
次に、前駆体中に含まれるニッケル、マンガン、コバルトの含量をICP−MSで分析し、Li/(Ni+Co+Mn)がモル比で1.01となるようにLiOH・H2Oの量を決定した。ICP−MSの分析は常法によった。LiOH・H2Oをジェットミルにて粉砕後、ヘンシェルミキサー容器内に前駆体、LiOH・H2Oの順に投入し、蓋を閉じて5分間混合した。混合された粉を取り出した後、10℃/minで500℃まで、5℃/minで780℃まで加熱し、780℃で10時間保持し、5℃/minで400℃まで冷却後、炉扉を徐々に開放して常温まで冷却して解砕することで、コアとなるリチウム複合酸化物を得た。
・LiとZrとWとを含む酸化物(修飾物質)の合成
リチウムイソプロポキシド、ジルコニウム(IV)イソプロポキシドのイソプロパノール溶液、タングステン(VI)イソプロポキシドのイソプロパノール溶液、アセチルアセトンをLi:Zr:W:アセチルアセトンがモル比で3:1:2:6となるように窒素中で混合し、その後、Liに対して1mol分、Zrに対して4mol分、Wに対して6mol分の総和の水を添加してゲルを形成させた。次に、当該ゲルを450℃で12時間仮焼した。仮焼した粉体を黒鉛製金型(治具径20mmφ)に充填し、放電プラズマ焼結装置によって1気圧のアルゴンガス雰囲気下、プレス圧50MPa、昇温速度100℃/minで600℃まで昇温し、10分保持した後20℃に保持した大量の水の中に投入して急冷した。急冷後、ロールミルで粗粉砕し、φ2mmのジルコニアビーズ、ソルミックスA−7とともにポットに充填し、振動ミルによって微粉砕した。粉末とビーズとソルミックスとの重量比は1:2:0.0002であり、粉砕時間は46.06分であった。粉砕後、取り出した粉を常温にて目のサイズが22μmであるふるいにかけ、ふるい下を修飾物質とした。この修飾物質のXRDを常温で測定したところ、P213に同定できた。
次に、LiとZrとWとを含む酸化物(修飾物質)である、ふるい下の粉体を、比較例1と同様に作製したコアとなるリチウム複合酸化物と共に、ふるい下の粉体:コアとなるリチウム複合酸化物の重量比が1:99となるように乾式粒子複合化装置内に投入し、粒子を複合化することで、正極活物質を得た。これを実施例1とした。
コアのNi:Co:Mnの組成を5:2:3としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を作製し、実施例2とした。
コアのNi:Co:Mnの組成を5:2:3としたこと以外は比較例1と同様に正極活物質を作製し、比較例2とした。
修飾物質のLi:Zr:W:アセチルアセトンをモル比で3:2:1:6としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を作製し、実施例3とした。
修飾物質の合成の際、ふるい下の粉体:コアとなるリチウム複合酸化物の重量比が5:95となるようにしたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を作製し、実施例4とした。
コアのNi:Co:Mnの組成を85:7.5:7.5とした以外は実施例1と同様に正極活物質を作製し、実施例5とした。
コアのNi:Co:Mnの組成を85:7.5:7.5とした以外は比較例1と同様に正極活物質を作製し、比較例3とした。
コアのLi/(Ni+Co+Mn)をモル比で1.05としたこと以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製し、実施例6とした。
・LiとZrとを含む酸化物(修飾物質)の合成
市販のLi2CO3とZrO2とをLi:Zrがモル比で2:1となるように混合した後、焼成炉に入れ、10℃/minで500℃まで、5℃/minで900℃まで加熱し、900℃で10時間保持し、5℃/minで400℃まで冷却し、その後炉扉を開放して室温まで冷却した。焼成炉から取り出した後、ロールミルで粗粉砕し、φ2mmのジルコニアビーズ、ソルミックスA−7とともにポットに充填し、振動ミルによって微粉砕した。粉末とビーズとソルミックスとの重量比は1:2:0.0002であり、粉砕時間は46.06分であった。粉砕後、取り出した粉を常温にて目のサイズが22μmであるふるいにかけ、ふるい下を修飾物質とした。この修飾物質のXRDを常温で測定したところ、空間群C2/C(Li2ZrO3)に同定できた。
・正極活物質の合成
次に、LiとZrとを含む酸化物(修飾物質)である、ふるい下の粉体を、比較例1と同様に作製したコアとなるリチウム複合酸化物と共に、ふるい下の粉体:コアとなるリチウム複合酸化物の重量比が1:99となるように乾式粒子複合化装置内に投入し、粒子を複合化することで、正極活物質を得た。これを比較例4とした。
・LiとWとを含む酸化物(修飾物質)の合成
市販のLi2CO3とWO3とをLi:Wがモル比で2:1となるように混合した後、焼成炉に入れ、10℃/minで500℃まで、5℃/minで900℃まで加熱し、900℃で10時間保持し、5℃/minで400℃まで冷却し、その後炉扉を開放して室温まで冷却した。焼成炉から取り出した後、ロールミルで粗粉砕し、φ2mmのジルコニアビーズ、ソルミックスA−7とともにポットに充填し、振動ミルによって微粉砕した。粉末とビーズとソルミックスとの重量比は1:2:0.0002であり、粉砕時間は46.06分であった。粉砕後、取り出した粉を常温にて目のサイズが22μmであるふるいにかけ、ふるい下を修飾物質とした。この修飾物質のXRDを常温で測定したところ、空間群I41/amd(Li2WO4)に同定できた。
・正極活物質の合成
次に、LiとWとを含む酸化物(修飾物質)である、ふるい下の粉体を、比較例2と同様に作製したコアとなるリチウム複合酸化物と共に、ふるい下の粉体:コアとなるリチウム複合酸化物の重量比が1:99となるように乾式粒子複合化装置内に投入し、粒子を複合化することで、正極活物質を得た。これを比較例5とした。
・LiとZrとを含む酸化物とLiとWとを含む酸化物との混合相(修飾物質)の合成
市販のLi2CO3とZrO2とWO3とをLi:Zr:Wがモル比で6:1:2となるように混合した後、焼成炉に入れ、10℃/minで500℃まで、5℃/minで900℃まで加熱し、900℃で10時間保持し、5℃/minで400℃まで冷却し、その後炉扉を開放して室温まで冷却した。焼成炉から取り出した後、ロールミルで粗粉砕し、φ2mmのジルコニアビーズ、ソルミックスA−7とともにポットに充填し、振動ミルによって微粉砕した。粉末とビーズとソルミックスとの重量比は1:2:0.0002であり、粉砕時間は46.06分であった。粉砕後、取り出した粉を常温にて目のサイズが22μmであるふるいにかけ、ふるい下を修飾物質とした。この修飾物質のXRDを常温で測定したところ、空間群C2/C(Li2ZrO3)と空間群I41/amd(Li2WO4)との混合相に同定できた。
・正極活物質の合成
次に、LiとZrとを含む酸化物とLiとWとを含む酸化物との混合相(修飾物質)である、ふるい下の粉体を、比較例1と同様に作製したコアとなるリチウム複合酸化物と共に、ふるい下の粉体:コアとなるリチウム複合酸化物の重量比が5:95となるように乾式粒子複合化装置内に投入し、粒子を複合化することで、正極活物質を得た。これを比較例6とした。
・LiとZrとWとを含む非晶質酸化物(修飾物質)の合成
市販のLi2CO3とZrO2とWO3とをLi:Zr:Wがモル比で6:1:2となるように混合した後、焼成炉に入れ、10℃/minで500℃まで、5℃/minで900℃まで加熱し、900℃で10時間保持し、炉扉を開放して焼成物を取り出し室温まで急冷した。急冷後、ハンマーミルで粗粉砕し、φ2mmのジルコニアビーズ、ソルミックスA−7とともにポットに充填し、振動ミルによって微粉砕した。粉末とビーズとソルミックスとの重量比は1:5:0.0002であり、粉砕時間は46.06分であった。粉砕後、取り出した粉を常温にて目のサイズが22μmであるふるいにかけ、ふるい下を修飾物質とした。この修飾物質のXRDを常温で測定したところ、ピークは検出されず非晶質と判断できた。
・正極活物質の合成
次に、LiとZrとWとを含む非晶質酸化物(修飾物質)である、ふるい下の粉体を、比較例1と同様に作製したコアとなるリチウム複合酸化物と共に、ふるい下の粉体:コアとなるリチウム複合酸化物の重量比が5:95となるように乾式粒子複合化装置内に投入し、粒子を複合化することで、正極活物質を得た。これを比較例7とした。
こうしてできた実施例及び比較例の各サンプルを用いて下記の条件にて各評価を実施した。
−正極材組成の評価−
被覆層について、EPMAで分析して各金属のモル比を算出した。各正極材中の金属含有量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)で測定し、各金属の組成比(モル比)を算出した。また、酸素含有量はLECO法で測定し、いずれも組成式において「O2」であることを確認した。
LiとZrとWとを含む酸化物(修飾物質)の構造の空間群を497.5−72.0keVのγ−γカスケードを用いた時間分解摂動角相関分光法によって評価した。具体的には、Z.Naturforsch.55a,301−310(2000)の3.Experimentalの方法によった。
まず、活物質中の186Wに対して熱中性子捕獲させ、187W(半減期23.72時間)を生成させた。この187Wはβ崩壊により187Re(半減期555.3ナノ秒)を生成する。この際、同時にγ線も出るが、これはγ1(497.5keV)とγ2(72.0keV)が引き続いて放出されている。γ1が放出されてからγ2が放出されるまでの時間tを計測し、γ2起因の核四極子パラメーターδを計算した。この測定を17〜403K程度の温度範囲内で3点以上行い、核四極子パラメーターδを温度に対してプロットした(図1)。図1に示すグラフにおいて、曲線が下に凸であれば、当該修飾物質は常温ではP213の空間群を持つ。
正極活物質80g、アセチレンブラック15g、10wt%の濃度でPVdF(ポリビリニデンジフルオライド)をNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に溶解させたもの50g、及び、純NMP50gを混合し、アルミニウム箔上に塗布して200℃で乾燥し、線荷重10kN/cmで加圧して正極とした。同様に、黒鉛90g、10wt%の濃度でPVdFをNMPに溶解させたもの100gを混合し、銅箔上に塗布して200℃で乾燥し、線荷重10kN/cmで加圧して負極とした。電解質として0.005wt%のスルホランが添加された、1mol/LのLiPF6を含むエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの1:1混合溶媒を用い、2032型コインセルに充填できるように上述の正極、前述の負極、市販のセパレーターを切り出してアルゴングローブボックス中に入れ、セパレーターに前記電解質を含浸させ、正極および負極にも電解質を滴下して染み込ませた。これらを2032型コインセル部材と組み合わせてかしめ、2032型コインセルを作製した。これを0.2C、3.0〜4.3Vで室温にて充放電を行い、初期放電容量、300サイクル後の放電容量を測定し、(300サイクル後の放電容量)/(初期放電容量)をサイクル効率とした。また、各サンプルについて別に1度だけ充放電したコインセルを用意しておき、このコインセルを0.2C、40℃で1週間4.3Vに保持しておき、その後1度だけ0.2C、3.0〜4.3Vで充放電を行って保存後の放電容量を測定した。そして(保存後の放電容量)/(初期放電容量)を保存率とした。
これらの結果を表1に示す。
Claims (5)
- 組成式:LixNiaCobMncO2
(前記式において、1.01≦x≦1.05、a≧0.5、0<b≦0.25、0<c≦0.35)
で表される粒子Aの表面に、LiとZrとWとを含む酸化物Bを有し、前記酸化物Bの構造の空間群が、常温でP213である部分を有するリチウムイオン電池用正極活物質。 - 前記Aと前記Bとの質量比A:Bが、1:99〜5:95である請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
- 前記Bの組成が、Zr:Wのモル比で1:2〜2:1であり、ZrとWの物質量の合計に対するLiの物質量が1である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質を有するリチウムイオン電池用正極。
- 請求項4に記載のリチウムイオン電池用正極と、負極と、スルホランを含む電解質と、を有するリチウムイオン電池。
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