JP2017082260A - 金属表面処理剤 - Google Patents

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宏 細野
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Masato Washisu
正人 鷲巣
大介 和智
Daisuke Wachi
大介 和智
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Abstract

【課題】電着塗装するにあたり、予めリン酸亜鉛処理等の表面処理を施こさずに、1工程で耐食性に優れた電着塗装を行う浴組成の提供。
【解決手段】特定構造の多価フェノール化合物(A)と、Biイオン(B)と、カチオン性エポキシ樹脂(C)と、硬化剤(D)と、酸化剤(E)とからなる金属表面処理剤。前記金属表面処理剤は前記多価フェノール化合物(A)を50〜2000mg/L含有し、かつ、pHが2〜7であり、この浴中で被電着材を最初無通電で浸漬するとビスマスを含む皮膜が形成され、その後通電すると電着塗装される金属表面処理方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属材料、特に無処理鋼板に対し、単一浸漬工程にて優れた耐食性を有する皮膜を形成することができる金属表面処理剤に関する。
従来、各種金属材料に対し優れた耐食性を付与するための手法としては電着塗装が一般的に用いられる。但し、電着塗装によって得られる電着塗膜のみでは所望の耐食性が得られない場合が多いため、電着塗装の前段には標準的にリン酸亜鉛系化成処理等の化成処理が適用されてきた。
リン酸亜鉛系化成処理は古くから実用化されており、塗膜密着性の向上や塗膜下腐食の抑制により優れた耐食性を発現する。他方で、化成反応の副生成物として通称スラッジと呼ばれる不溶性のリン酸鉄が生じ、通常はこのスラッジを系内に沈殿させ定期的に系外に排出し産業廃棄物として廃棄する。しかしながら、地球環境保全の観点から産業廃棄物の低減は大きな課題であり、廃棄物を生じない化成処理液や表面処理方法が強く望まれている。
一方電着塗装は、アニオン電着塗装とカチオン電着塗装とに大別されるが、鉄系材料を主とする金属構成体である自動車車体、自動車部品、家電製品、建築材料等に対してはカチオン電着塗装が広く適用されている。カチオン電着塗装においては、かつてはクロム化合物や鉛化合物を配合することによって防錆性を確保していた。しかしながら、現在では環境規制、特に欧州におけるELV規制により従来カチオン電着塗料に用いてきたクロム化合物や鉛化合物の仕様が制限されており、クロム化合物や鉛化合物を使わないカチオン電着塗料が主流となっている。
しかし、近年、カチオン電着塗装の前にリン酸亜鉛系化成処理を使用することなく、単一の浸漬工程で処理を行うある電着塗料が提案されている。
具体的には、特許文献1には、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート(B)、フェノール樹脂(C)、金属化合物(D)及び窒素酸化物イオン(E)を含有するカチオン電着塗料組成物であり、1段目に無通電で金属皮膜を形成し、2段目の通電で電着塗膜を形成する方法が開示されている。
特開2011−84723号公報
本発明者らが、特許文献1に開示された方法を検討したところ、その方法によっては金属皮膜が十分に形成せず、耐食性がリン酸亜鉛とカチオン電着塗装との組合せである従来技術と比較して、かなり劣ることが明らかになってきた。
そこで、本発明は、様々な金属材料に対し、この金属材料が予めリン酸亜鉛処理等の表面処理を施していない被処理金属(以下、無処理鋼板ともいう。)であっても、単一浸漬工程にて特に優れた耐食性を付与することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するための手段について鋭意検討した結果、従来技術にはない表面処理用処理剤を完成するに至った。すなわち本発明は下記の通りである。
本発明(1)は、式(1)で示される多価フェノール化合物(A)と、可溶型Bi(B)と、カチオン性エポキシ樹脂(C)と、硬化剤(D)と、酸化剤(E)とからなる金属表面処理剤であって、前記金属表面処理剤は前記多価フェノール化合物(A)を50〜2000mg/L含有し、かつ、pHが2〜7である金属表面処理剤である。
Figure 2017082260
[但し、式(1)のX〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であり、Zは、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基、アミノ基及び式(2)で表される基から選ばれる基である。]
Figure 2017082260
[但し、式(2)のX〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。]
本発明(2)は、前記酸化剤(E)が、3価Biイオンの標準電極電位E=0.3172V(vsSHE)よりも貴な標準電極電位を有する物質を1種又は2種以上含む、前記発明(1)の金属表面処理剤である。
本発明(3)は、前記酸化剤(E)の標準電極電位Eが、0.3172V超1.0V未満(vsSHE)である、前記発明(1)又は(2)の金属表面処理剤である。
本発明(4)は、前記可溶型Bi(B)を、金属Bi含有量として10〜10,000mg/L含有する、前記発明(1)〜(3)のいずれかの金属表面処理剤である。
本発明(5)は、更にZr、Ti及びHfからなる群より選ばれる1種又は2種以上の水溶性金属化合物(F)を、金属元素として合計で10〜10,000mg/L含有する、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの金属表面処理剤である。
本発明(6)は、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの金属表面処理剤に被処理金属を浸漬し、無通電で3〜600秒間浸漬することで前記被処理金属上にBiを主成分とする皮膜を形成させ、その後陰極電解によって前記カチオン性エポキシ樹脂及び前記硬化剤を主成分とする塗膜を前記皮膜上に形成させる工程を含む金属表面処理方法である。ここで、「主成分」とは、全質量を基準として50質量%以上存在することを意味する。
本発明の金属表面処理剤を用いることにより、単一浸漬工程であるにも拘わらず、従来のリン酸亜鉛系化成処理とカチオン電着塗装とを組み合わせた塗装工程と同程度、無処理鋼板に対し優れた耐食性を付与できる。そして従来のリン酸亜鉛系化成処理とカチオン電着塗装とを組み合わせた塗装工程と比較して工程長を短縮することができるという意味で非常に有利な効果を奏し得る。更に本発明によると、クロム化合物や鉛化合物を含むこともできるが、クロム化合物や鉛化合物を使用しないようにすれば、環境に対する影響が非常に少なく、環境に有害な物質を含まない金属表面処理剤を提供することも可能である。
本発明の金属表面処理剤にて被処理金属を処理する場合、1段目に無通電で浸漬させることで被処理金属上にBiを主成分とする皮膜が形成され、その後の2段目の処理において陰極電解(いわゆるカチオン電着)することでカチオン性エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)を主成分とする樹脂が析出し、これを水洗後加熱硬化することで優れた耐食性を有する皮膜を得ることができる。
この時、多価フェノール(A)及び酸化剤(E)を用いることで、1段目のBiを主成分とする皮膜(以下、Bi皮膜ともいう。)を無通電で析出させる工程において、被覆性の高いBi皮膜を形成することができ、耐食性の向上に寄与する。更には、Bi皮膜の被覆性を高めるのみならずBi皮膜の析出性を高める効果も有しており、これは処理時間が限られた処理工程において短時間処理が期待できるという観点からも有利である。
本発明の一形態を説明する。但し、本発明の技術的範囲は当該形態には限定されない。尚、本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明に係る金属表面処理剤は、必須成分として、多価フェノール化合物(A)、可溶型Bi(B)、カチオン性エポキシ樹脂(C)、硬化剤(D)及び酸化剤(E)を、任意成分として水溶性金属化合物(F)を含む。以下に各成分を説明する。
多価フェノール化合物(A)
本発明において用いる多価フェノール化合物(A)は、式(1)で示される化合物である。
Figure 2017082260
[但し、式(1)のX〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であり、Zは、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基、アミノ基及び式(2)で表される基から選ばれる基である。]
Figure 2017082260
[但し、式(2)のX〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。]
多価フェノール化合物(A)は、式(1)に示される通り、ベンゼン環1個につき水酸基を2個以上有する。
多価フェノール化合物(A)は、具体的には、カテコール(1,2−ベンゼンジオール)、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−エチルカテコール、4−エチルカテコール、3−ニトロカテコール、4−ニトロカテコール、カテコール−3,5−ジスルホン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−アミノカテコール、4−アミノカテコール、3−メトキシカテコール、4−スルホカテコール、3,5−ジメチルカテコール、3,4−ジメチルカテコール、4,5−ジメチルカテコール、3,6−ジメチルカテコール、3,4,6−トリメチルカテコール、3,4,5−トリメチルカテコール、3,5−ジニトロカテコール、3,6−ジニトロカテコール、3,5−ジアミノカテコール、4−メチル―5−エチルカテコール、3−メチル−5−ニトロカテコール、3−メチル−4−ニトロカテコール、4−メチル−5−ニトロカテコール、3,5,6−トリメチル−4−メトキシカテコール、3,4−ジメトキシカテコール、4,5−ジメトキシカテコール、3,6−ジメトキシカテコール、レゾルシノール(1,3−ベンゼンジオール)、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、2−エチルレゾルシノール、4−エチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、2−ニトロレゾルシノール、5−ニトロレゾルシノール、2−アミノレゾルシノール、4−アミノレゾルシノール、5−アミノレゾルシノール、2−メトキシレゾルシノール、4−メトキシレゾルシノール、5−メトキシレゾルシノール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、4,5−ジメチルレゾルシノール、2,4−ジメチルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール、5−エチル−4−メチルレゾルシノール、4−エチル−2−メチルレゾルシノール、5−メトキシ−4−メチルレゾルシノール、2−メトキシ−5−メチルレゾルシノール、2−ニトロ−5−メチルレゾルシノール、4−ニトロ−5−メチルレゾルシノール、2,4,5−トリメチルレゾルシノール、2,4,6−トリメチルレゾルシノール、テトラメチルレゾルシノール、2,5−ジメトキシレゾルシノール、ヒドロキノン(1,4−ベンゼンジオール)、メチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、ニトロヒドロキノン、アミノヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ヒドロキノンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジメチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,6−ジエチルヒドロキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチルヒドロキノン、2,5−ジアミノヒドロキノン、2,6−ジアミノヒドロキノン、2,5−ジニトロヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、テトラメチルヒドロキノン、ピロガロール(1,2,3−ベンゼントリオール)、4−メチルピロガロール、5−メチルピロガロール、5−エチルピロガロール、4−ニトロピロガロール、5−ニトロピロガロール、ピロガロール−5−スルホン酸、ピロガロール−4−カルボン酸、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、4,5−ジメチルピロガロール、4,6−ジメチルピロガロール、4,6−ジアミノピロガロール、ヒドロキシキノール、3−メチル−1,2,5−ベンゼントリオール、5−メチル−1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール(ベンゼン−1,3,5−トリオール)、メチルフロログルシノール、フロログルシノールカルボン酸(2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸)、1,2,3,4−テトラヒドロキシベンゼン、1,2,3,5−テトラヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼン、ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。ここで、多価フェノール化合物(A)は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上併用してもよい。
本発明の金属表面処理剤に使用できる多価フェノール化合物(A)は特に限定されるものではないが、その多価フェノール化合物(A)において、式(1)のZが、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基である多価フェノール化合物(A)が好ましい。
また、多価フェノール化合物(A)において、式(1)のZが、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であって、ベンゼン環が水酸基を2個又は3個有する多価フェノール化合物(A)がより好ましい。
更に、多価フェノール化合物(A)において、式(1)のZが、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であって、ベンゼン環が水酸基を2個有する多価フェノール化合物(A)が最も好ましい。
多価フェノール化合物(A)の含有量は、50〜2,000mg/Lでなければならない。多価フェノール化合物(A)の含有量が50mg/L未満の場合には被覆性の高いBi皮膜を形成しないため、耐食性が悪い。また、多価フェノール化合物(A)の含有量が2000mg/L超の場合には、塗膜の硬化性が低下するため、十分な耐食性が得られないことがある。
可溶型Bi(B)
本発明の金属表面処理剤は、可溶型Bi(B)を含有する。ここで、本特許請求の範囲及び本明細書における「可溶型Bi」とは、ビスマスイオン(通常は3価での存在形態と理解される)、ビスマスイオンと他の配位子との錯体等の、溶媒に対して溶解状態にあるビスマスを指す。可溶型Bi(B)の供給源は、具体的には、硝酸ビスマス、リン酸ビスマス、硫酸ビスマス、塩化ビスマス、フッ化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、酢酸ビスマス、蟻酸ビスマス、クエン酸ビスマス、乳酸ビスマス、シュウ酸ビスマス、リンゴ酸ビスマス、酒石酸ビスマス、アスコルビン酸ビスマス、EDTAビスマス、NTAビスマス、HEDTAビスマス、メタンスルホン酸ビスマス、ベンゼンスルホン酸ビスマス、グルコン酸ビスマス、ヘプトグルコン酸ビスマス等が挙げられる。
可溶型Bi(B)の供給源は、可溶性の化合物と難溶性の化合物とが存在する。可溶性の化合物の場合は、純水や工業用水に溶解して用いる。難溶性の化合物の場合は、硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸や、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸等の有機酸(キレート剤)等により溶解させて用いる。
可溶型Bi(B)の含有量(金属Bi含有量)は、特に制限がないが、好ましくは10〜10,000mg/Lである。可溶性Bi(B)が10mg/Lより少ないと十分なBi皮膜量が得られないため耐食性が確保できない。また、可溶性Bi(B)が10,000mg/L超では更なる耐食性の向上は認められずコスト高となる。より好ましくは50〜10,000mg/Lである。
カチオン性エポキシ樹脂(C)
本発明の金属表面処理剤に用いるカチオン性エポキシ樹脂(C)は、一般的な電着塗料で用いられるアミン付加したエポキシ樹脂を用いることができる。尚、本明細書での「エポキシ樹脂」とは、狭義のエポキシ樹脂のみならず、変性エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール型のような、ハードセグメントを有するエポキシ樹脂に対して柔軟性を付与するために、当該エポキシ樹脂をポリオール等で変性させたもの)をも包含する。
エポキシ樹脂の原料としてはビスフェノール型、ノボラック型のエポキシ樹脂等を用いることができる。そして、塗膜の防食性等の観点から、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適であり、エポキシ当量は180〜2,500が好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、jER828(三菱化学社製、エポキシ当量180〜190)、jER1001(三菱化学社製、エポキシ当量450〜500)等が挙げられる。
前記カチオン性エポキシ樹脂(C)の原料としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、これにビスフェノールAや変性剤を用い、これらを重合反応させたものを用いることができる。
前記変性剤は、エポキシ樹脂の可とう性を向上させる等を目的として使用される。変性剤は、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール又はアクリルポリオール等のポリオール樹脂、フェノール等が末端に付加させた水酸基を有する芳香族化合物、及びポリカプロラクトンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はフェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらの変性剤は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上併用してもよい。
本発明の金属表面処理剤に用いるカチオン性エポキシ樹脂(C)は、エポキシ樹脂に、アミノ基を導入してカチオン化したものである。アミノ基を導入するために用いられるアミンは、具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノール、アミノエチルエタノールアミンのケチミン化物又はジエチレントリアミンのジケチミン等の1級アミンをケチミン化によりブロックした2級アミン等が挙げられる。これらアミンは、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上併用してもよい。
硬化剤(D)
本発明の金属表面処理剤に用いる硬化剤(D)は、ブロック化ポリイソシアネートである。ここで、ブロック化ポリイソシアネートとは、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物であり、ほぼ化学理論量で付加された反応生成物をいう。ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン‐4,4’−ジイソシアネート(MDI)、クルードMDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族又は脂環族のポリイソシアネート化合物、又はポリイソシアネート化合物を過剰に用いその過剰のイソシアネート化合物にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ひまし油等の低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物等を挙げることができる。これら硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上併用してもよい。
イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものである。これにより生成するブロック化ポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付温度(通常100〜200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
上記要件を満たすブロック剤としては、具体的には、ε−カプロラクタム、y−ブチロラクタム等のラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノール等の脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。ブロック剤は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上併用してもよい。ブロック剤の解離、硫化反応等を効率よく進め、また、意図する硬化反応物を生成させるために、あらかじめ、変性エポキシ樹脂の骨格にイソシアネート基の一部を付加し、かつ、残りのイソシアネートをブロック剤でブロックしてもよい。
カチオン性樹脂エマルションの作製
本発明のカチオン性エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)は、金属表面処理剤において均一に分散させるため、エマルション化を行う。これは、カチオン性エポキシ樹脂(C)、硬化剤(D)及び必要に応じ硬化触媒や有機溶剤のその他の添加剤を十分に混合した後に、カチオン性エポキシ樹脂(C)のアミノ基をカチオン化させるために酸で中和させ、更に水を加えることによってカチオン性樹脂エマルションとなる。カチオン性エポキシ樹脂(C)と硬化剤(D)の混合比率(固形分の質量比)は、カチオン製エポキシ樹脂(C)/硬化剤(D)の質量比として85/15〜50/50が好適である。
また、エマルション化のため、カチオン性エポキシ樹脂のアミノ基を中和させる酸としては、具体的には、蟻酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はスルファミン酸等の有機酸を挙げることができる。
酸化剤(E)
本発明の金属表面処理剤に用いる酸化剤(E)は、可溶型Biの主な存在形態と理解される3価Biイオンの標準電極電位E=0.3172V(vsSHE)よりも貴な電位を有する物質が好ましい。酸化剤(E)の具体例としては、次亜塩素酸(E=1.63)、亜塩素酸(E=1.674)、塩素酸(E=1.181)、過塩素酸(E=1.201)、次亜ヨウ素酸(E=0.985)、ヨウ素酸(E=1.195)、次亜臭素酸(E=1.604)、臭素酸(E=1.447)、過臭素酸(E=1.853)、過マンガン酸(E=1.695)、3価鉄(E=0.771)、ヒドロキシルアミン(E=0.42)、硝酸(E=0.957)、亜硝酸(E=0.996)、過酸化水素(E=1.763)等が挙げられる。これら物質は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上併用してもよい。
使用する酸化剤(E)として、より好ましくは1.0V(vsSHE)よりも低い電位を持つ物質{標準電極電位E=0.3172V超1.0V未満(vsSHE)}である。
ここで化成反応におけるBi皮膜の析出メカニズムについて考察する。自動車材料等に一般的に使用される鉄鋼、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合金の標準電極電位は、いずれも可溶型Biの大部分を占めると理解される「3価Bi」のそれよりも低い電位であり、貴な金属であるBiと卑な金属である被処理金属材料との間で酸化還元反応が起こる。すなわち、被処理金属材料は酸化反応により溶解し、その酸化反応の際に生じた電子を金属表面処理剤においてイオン化している3価Bi(3価Biイオン)が受け取る。そして、3価Biイオンの還元反応によって、被処理金属材料の表面にBi(金属Bi)が析出して、皮膜を形成するものと考えられる。
ところが、有機樹脂、界面活性剤及び溶剤等の有機物が含まれる水性(水溶性及びエマルションを含む)の金属表面処理剤においては、これら有機物が被処理金属材料の酸化反応を抑制するため、3価Biの酸化力では十分な酸化還元反応が起こらないことが分かった。そこで、3価Biの標準電極電位よりも高い電位をもつ酸化剤(E)を適用すると、被処理金属材料の酸化反応が一層促進され、容易にBiが析出して皮膜を形成させることが可能となった。
尚、標準電極電位で1.0V未満の酸化力を持つ物質は、その酸化力の影響によりBiの還元析出を妨げることがないため、好ましい。
一方、Bi皮膜の析出において、多価フェノール化合物(A)を金属表面処理剤に適用すると、Bi皮膜の被覆性が高まることが分かった。通常、被処理金属材料の表面は、反応性の高い活性サイトと比較的反応性の低いサイトが存在する。その被処理金属材料表面の影響を受け、化成反応は、活性サイトにおいて溶解反応がより起きやすくなり、皮膜形成が不均一になると考えられる。
ここで多価フェノール化合物(A)を適用すると、恐らく、多価フェノール化合物(A)が有するインヒビター作用により被処理金属材料表面の活性サイトを封鎖(被処理金属表面の均質化)することで、被処理金属材料の溶解反応を均一化させる。その結果、被処理金属材料表面に対するBi皮膜の被覆性が向上するものと考えられる。Bi皮膜の被覆性が向上することでより優れた耐食性を発現するとともに、多価フェノール化合物(A)がインヒビター的に被処理金属材料表面の活性サイトを封鎖することも耐食性向上に寄与するものと考えられる。
更に多価フェノール化合物(A)を適用すると、一定時間におけるBiの析出速度が高まる効果も認められた。これは恐らく多価フェノール化合物(A)が適度な還元性を有しているため、Biの還元析出を促したものと推測している。
但し、酸化剤(E)を併用しないと、可溶型Biの主な存在形態と理解される3価Biイオンと多価フェノール化合物(A)の組合せのみでは、十分なBi析出と被覆は起きない。このことは、反応のドライビングフォースとして、はじめに酸化剤(E)による被処理金属材料の溶解反応が必要なことを示しており、これにより被処理金属材料の表面にBiが析出すると理解される。
酸化剤(E)と多価フェノール化合物(A)の関係を考えると、酸化剤(E)の酸化力の強さとして標準電極電位で1.0V(vsSHE)未満であると、酸化剤(E)と多価フェノール化合物(A)との間で酸化還元反応が起きず、Biの析出反応に悪影響を与えるということがないため、好ましい。
水溶性金属化合物(F
本発明の金属表面処理剤には、Zr,Ti及びHfからなる群より選ばれる1種又は2種以上の水溶性金属化合物(F)を含んでもよい。Zr、Ti及びHfからなる群より選ばれる1種又は2種以上の水溶性金属化合物(F)の含有量については、特に制限がないが、金属元素として合計で10〜10,000mg/L含有することが好適である。尚、本特許請求の範囲及び本明細書における「水溶性金属化合物」とは、20℃の水に1重量%以上溶解する金属化合物を意味する。
水溶性金属化合物(F)としてZrを用いる場合には、具体的には、硝酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、フルオロジルコニウム酸及びフルオロジルコニウム錯塩等が挙げられる。
水溶性金属化合物(F)としてTiを用いる場合には、具体的には、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、硝酸チタン、オキシ硝酸チタン、フルオロチタン酸及びフルオロチタン錯塩等が挙げられる。
水溶性金属化合物(F)としてHfを用いる場合には、具体的には、硝酸ハフニウム、酸化ハフニウム、ケイ酸ハフニウム、塩化ハフニウム、フルオロハフニウム及びフルオロハフニウム錯塩等が挙げられる。
その他の成分
本発明の金属表面処理剤には、更に必要に応じて、顔料、顔料分散樹脂、硬化触媒、有機溶剤、界面活性剤等、塗料分野で通常使用される添加剤を適用することもできる。
顔料としてはチタン白、カーボンブラック等の着色顔料、クレー、タルク、バリタ等の体質顔料、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、水酸化ビスマス等の防錆顔料等が挙げられる。また顔料を金属表面処理剤に適用する場合には、水溶性の顔料分散樹脂を用いて顔料を予めペースト状に分散したものを用いる。顔料分散ペーストは、顔料と顔料分散樹脂とを混合し、例えばボールミル等で所望の粒径になるまで粉砕・分散することで得られる。顔料分散ペーストの固形分濃度は50〜70質量%程度が好ましい。
<金属表面処理剤の調製>
カチオン性エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)を含むカチオン性樹脂エマルションと顔料を分散したペーストと水とを用いて、カチオン性樹脂(C){硬化剤(D)やその他添加剤も含まれる}や顔料が所望の濃度になるように混合する。その後、所望の濃度となるように多価フェノール化合物(A)、可溶型Bi(B)、酸化剤(E)、更にその他の水溶性金属化合物(F)を加え、金属表面処理剤を得る。尚この時、多価フェノール化合物(A)、可溶型Bi(B)、酸化剤(E)及び水溶性金属化合物(F)を予め混合しておいたものを用いてもよい。
本発明に係る金属表面処理剤のpHは2.0〜7.0でなければならない。pHは3.0〜6.5がより好ましい。pHの調整は、蟻酸、酢酸、乳酸、硝酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の酸、及びアンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の塩基を用いてpHを調整することができる。ここで、本明細書におけるpHは、25℃の剤について、市販のpHメーターを用いて得られた値である。
本発明に係る金属表面処理剤の温度は15〜45℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。
<金属表面処理方法及び皮膜>
本発明に係る金属表面処理皮膜は、本発明の金属表面処理剤を用い、本発明の処理方法によって得られる。本発明の処理方法は、被処理金属を本発明の金属表面処理剤に浸漬し、無通電で3〜600秒浸漬することで被処理金属材料上にBi皮膜を主成分とする皮膜を形成させる1段目の工程と、その後、陰極電解によってカチオン性エポキシ樹脂(C)と硬化剤(D)を主に含む樹脂膜を、Bi皮膜上に形成させる2段目の工程からなる。
1段目の工程は、無通電、すなわち化成反応でBiを主成分とする皮膜を形成させるものである。前述の通り、Biは一般的な自動車材料である鉄鋼、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合金よりも貴な金属である。可溶型Bi(主として3価Bi)は、これら金属と酸化還元反応によりBi皮膜が析出する。但し、有機樹脂、界面活性剤、溶剤等の有機物が含まれる水性処理剤においては、これら有機物が被処理金属材料の酸化反応を抑制してしまう。よって、可溶型Biの主形態と理解される3価Biの標準電極電位よりも高い電位をもつ酸化剤(E)を適用することにより、被処理金属材料の酸化反応を促進し、その結果、容易にBi皮膜を析出させること可能となる。更に、多価フェノール化合物(A)を併用すると、恐らく多価フェノール化合物(A)のインヒビター的な作用により被処理金属材料の酸化反応が均一化することで、Bi皮膜の被覆性が向上し、その結果優れた耐食性を発現する。
つぎに、被処理金属材料は、1段目の無通電によるBi皮膜の析出工程に続いて、2段目の陰極電解工程(いわゆるカチオン電着工程)に供せられる。この電解条件については一般的なカソード電解条件を用いることができる。例えば、7V/秒の昇圧スピードにて所定の電圧まで昇圧し、所定の電圧に到達したところでその電圧を所定の時間維持する。通常、所定の電圧は100〜350Vであるが、より好ましくは120〜300Vである。また、所定の時間は、60〜600秒であるが、より好ましくは120〜360秒である。電圧と電圧をかける時間を管理することにより、所望の厚さの樹脂膜を得ることができる。
析出した樹脂膜は焼き付けることで硬化し塗膜化する。焼付温度は120〜220℃でるが、より好ましくは140〜200℃の範囲である。焼付時間は5〜80分であるが、好ましくは10〜60分程度である。
得られる硬化塗膜の膜厚は、5〜40μmが好ましく、5〜35μmがより好ましく、7〜30μmが最も好ましい。塗膜が薄すぎると十分な耐食性が得られず、厚すぎると経済的に不利なばかりか電着塗膜の付き廻り性が低下する場合がある。塗膜厚は、素地金属が磁性金属であれば電磁誘導式膜厚計、素地金属が非磁性金属であれば渦電流式膜厚計により測定可能である。
〔実施例〕
以下に実施例を比較例とともに挙げ、本発明の表面処理用処理液、表面処理方法、及び表面処理された金属材料の効果を具体的に説明する。尚、実施例で使用した被処理素材、脱脂剤、及び塗料は市販されている材料の中から任意に選定したものであり、本発明の表面処理用組成物、表面処理用処理液、及び表面処理方法の実際の用途を限定するものではない。
カチオン性エポキシ樹脂(C)の製造
製造例1 カチオン性エポキシ樹脂No.1の製造例
温度計、還流冷却管、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコにエポキシ樹脂jER828(商品名、三菱化学社製 エポキシ当量180):540g、ビスフェノールA:234.8g、変性剤1(注1):213.7g及びジメチルベンジルアミン:0.5g加え、130℃でエポキシ当量が1000になるまで反応させ、ブチルセロソルブを468.0g加えて反応を停止した。尚エポキシ当量の測定は、JIS K7236に定められるエポキシ当量測定によって算出され、その測定には電位差滴定装置を用いることが可能である。尚、本明細書におけるエポキシ当量は、電位差滴定装置(AT−610:京都電子工業社製)を用いて求めた。
次いで、メチルエタノールアミンを58.2g、ジエチレントリアミンケチミン化物を44.3g加えて90℃で4時間反応させることでカチオン性エポキシ樹脂No.1を得た。
製造例2〜4 カチオン性エポキシ樹脂No.2〜No.4の製造例
表1に示す配合とする以外は、製造例1と同様の方法でカチオン性エポキシ樹脂No.2〜No.4を得た。尚、表中の単位は「g」である。
Figure 2017082260
(注1):ポリカプロラクトンジオール
(注2):キシレンホルムアルデヒド樹脂
(注3):ビスフェノールA型PO付加ジグリシジルエーテル
製造例5 硬化剤(D)の製造
反応容器中にコスモネートM−200(商品名、三井化学社製 クルードMDI):678.4gにメチルイソブチルケトン:115.6g加え70℃に昇温した後、ブチルセロソルブ:706.0gをゆっくり滴下し、滴下終了後90℃に昇温した。90℃の条件下で12時間反応させブロック化ポリイソシアネート型硬化剤を得た。赤外吸収スペクトル測定を行ったところ、未反応のイソシアネート基由来の吸収が見られず、イソシアネートが完全にブロック化されたことが確認できた。
製造例6 カチオン性樹脂エマルションNo.1の製造
製造例1で得られたカチオン性エポキシ樹脂No.1を650.0g、製造例5で得られた硬化剤であるブロック化ポリイソシアネート化合物を200.0g混合し、更に酢酸10.5gを配合して均一に撹拌した後、脱イオン水109.5gを強く撹拌しながら約10分間かけて投入して固形分33%のエマルションを得た。
製造例7〜9 カチオン性樹脂エマルションNo.2〜No.4
表2に示す配合とする以外は、製造例6と同様の方法でカチオン性樹脂エマルションNo.2〜No.4を得た。尚、表中の単位は「g」である。
Figure 2017082260
カチオン性樹脂エマルションNo.5
市販の樹脂エマルションとしてBASF社製カチオン性樹脂エマルション「Lugalvan EDC」(不揮発分:34%)を用いた。
製造例10 30%第四級塩化エポキシ樹脂の製造
温度計、還流冷却管及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコにjER828(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量180)を134.9g、ビスフェノールAを80.94g、ジメチルベンジルアミンを0.1g加え、130℃でエポキシ当量が1000になるまで反応を行った。反応終了後にブチルセロソルブ71.7gを加え、更にジメチルアミノエタノール13.16g、90%乳酸を14.79g加えて90℃で1時間反応を行った。反応後、脱イオン水613.36gを強く撹拌しながら約1時間かけて滴下し、固形分30%の第四級塩化エポキシ樹脂を得た。
製造例11 顔料分散ペーストの製造
製造例10で得られた30%の第四級塩化エポキシ樹脂16.6gに対し、精製クレー7.0g、カーボンブラック0.3g、酸化チタン3.0g、ジオクチル錫ジオキサイド1.0g及び脱イオン水を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分50%の顔料分散ペーストを得た。
製造例12 Bi添加剤の製造
酸化ビスマスを55.7g、HEDTAを133.0g、脱イオン水を811.3g混合し、酸化ビスマスが溶解するまで撹拌し、5%Bi水溶液を得た。
金属表面処理剤の作製
実施例1〜60及び比較例1〜9
表3A及び表3Bの組成となるよう、多価フェノール、カチオン性樹脂エマルジョンNo.1〜4(製造例6〜9)及びカチオン性樹脂エマルジョンNo.5、顔料分散ペースト(製造例11)、Bi添加剤(製造例12)、酸化剤及び金属化合物等を適宜添加・混合し、実施例1〜60及び比較例1〜8に係る金属表面処理剤を調製した。加えて、比較例9として、特開2011−84723号公報の実施例16に記載の金属表面処理剤を作製した。
試験板の作製
試験板として、冷延鋼板:SPCC(JIS3141)70×150×0.8mm(以下SPCと略す)を用い、あらかじめその表面を日本パーカライジング社製アルカリ脱脂剤「FC−E2001」を使用して、120秒間スプレー処理することにより脱脂処理した。
脱脂処理後30秒間スプレー水洗したSPCを、それぞれ別に用意した実施例及び比較例に係る金属表面処理剤に、1工程目として120秒間無通電浸漬し、引き続き200V×180秒間(そのうち初めの30秒は7V/秒の昇圧速度で200Vまで昇圧)電着処理し、脱イオン水で水洗後、180℃×20分焼き付けることで、塗膜厚15μmの試験片を得た。
参考例
本発明の参考例として、従来処理技術である2工程処理(リン酸亜鉛処理+電着)を実施した。リン酸亜鉛処理剤には日本パーカライジング社製「PB−L3020」を用い、遊離酸度を0.9pt、促進剤濃度を4.0ptに調整した。前記方法と同様の脱脂処理で清浄化したSPCを、日本パーカライジング社製「PL−X」に30秒間浸漬した後、温度40℃にしたリン酸亜鉛処理剤に120秒間浸漬させることでリン酸亜鉛皮膜を形成させ、脱イオン水による水洗の後、エアブローで水分を除去して乾燥させた。その後、関西ペイント社製電着塗料「GT−100V」を用い、200V×180秒間(そのうち初めの30秒は7V/秒の昇圧速度で200Vまで昇圧)電着処理し、脱イオン水で水洗後、180℃×20分焼き付けることで、塗膜厚15μmの試験片を得た。
耐食性試験方法及び評価方法
塩水噴霧試験(SST)
表面処理した試験板にクロスカットを施し、塩水噴霧試験(JIS−Z2371)を実施し、1000時間後のクロスカット部の片側最大膨れ幅を測定した。以下の判定基準で評価した。
◎:2mm未満
○:2mm以上、3mm未満
△:3mm以上、4mm未満
×:4mm以上
塩水浸漬試験(SDT)
表面処理した試験板にカッターナイフを用いてクロスカットを施し、50℃に加温した5質量%の塩化ナトリウム水溶液に240時間浸漬した。更に過酷な条件下における性能を評価する為、480時間浸漬も実施した。浸漬終了後に水道水で水洗し、布等で水分を除去した後、クロスカット部を粘着テープで剥離し、塗膜の片側最大剥離幅を測定し、以下の判定基準で評価した。
◎:2mm未満
○:2mm以上3mm未満
△:3mm以上5mm未満
×:5mm以上
耐水2次密着試験(ADH)
表面処理した試験板を、40℃の脱イオン水に240時間浸漬した。浸漬終了後、布等で水分を除去した後、カッターナイフを用いて2mm間隔の碁盤目を100個切った。碁盤目部を粘着テープで剥離した後、塗膜の碁盤目剥離個数を以下の判定基準で評価した。
○:0個
△:1個以上、9個以下
×:10個以上
複合サイクル試験(CCT)
表面処理した試験板にクロスカットを施し、JASO−M609−91に則り複合サイクル試験を100サイクル実施した。試験終了後、クロスカット部からの片側最大膨れ幅(又は錆幅)を測定し、以下の判定基準で評価した。
◎:2mm未満
○:2mm以上、5mm未満
△:5mm以上、10mm未満
×:10mm以上
<実施例と比較例間の性能評価の考察>
実施例1〜60はいずれの水準も良好な性能を示したのに対し、比較例1〜9はいずれの水準も良い性能を得るには至らない。比較例1については多価フェノール化合物(A)が無く、また比較例2については多価フェノール化合物(A)濃度が下限濃度未満のため、Bi皮膜の被覆性が十分ではなく耐食性が劣ったものと推測する。比較例3について、アセトンラビングによる耐溶剤性から、塗膜の硬化が不十分であり、その影響により耐食性が劣ったものと推測する。比較例4については可溶型Bi(3価Biイオン)が無く、Bi皮膜の形成が無いため、耐食性が劣ったものと考えられる。比較例5については酸化剤が無く、十分なBi皮膜形成がなされなかったため、耐食性が劣ったものと考えられる。比較例6については、ベンゼン環1個当りに1価の水酸基を有するフェノールを用いたが、Bi皮膜の被覆性の改善には全く寄与しなかったため、十分な耐食性がなかったと考える。比較例7については金属表面処理剤のpHが低すぎ、被処理金属材料のエッチングが過剰となり、Bi皮膜の被覆性が損なわれたため、耐食性が劣ったものと推測する。比較例8については、金属表面処理剤のpHが高すぎるために、十分なBi皮膜量が得られなかったため、耐食性が劣ったものと推測する。比較例9は、特開2011−84723号公報からフェノール樹脂を用いているが、このフェノール樹脂は金属皮膜の被覆性に何ら寄与せず、十分な耐食性が得られなかったと考える。
本発明によれば、環境負荷の少ない処理液を用い、無処理鋼板に対しても優れた耐食性を有する塗装物を提供することができる。
Figure 2017082260
Figure 2017082260
Figure 2017082260
Figure 2017082260

Claims (6)

  1. 式(1)で示される多価フェノール化合物(A)と、可溶型Bi(B)と、カチオン性エポキシ樹脂(C)と、硬化剤(D)と、酸化剤(E)とからなる金属表面処理剤であって、前記金属表面処理剤は前記多価フェノール化合物(A)を50〜2000mg/L含有し、かつ、pHが2〜7である金属表面処理剤。
    Figure 2017082260
    [但し、式(1)のX〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であり、Zは、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基、アミノ基及び式(2)で表される基から選ばれる基である。]
    Figure 2017082260
    [但し、式(2)のX〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基、エチル基、水酸基、スルホン基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びアミノ基から選ばれる基であり、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。]
  2. 前記酸化剤(E)が、3価Biイオンの標準電極電位E=0.3172V(vsSHE)よりも貴な標準電極電位を有する物質を1種又は2種以上含む、請求項1に記載の金属表面処理剤。
  3. 前記酸化剤(E)の標準電極電位Eが、0.3172V超1.0V未満(vsSHE)である、請求項1又は2に記載の金属表面処理剤。
  4. 前記可溶型Bi(B)を、金属Bi含有量として10〜10,000mg/L含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属表面処理剤。
  5. 更にZr、Ti及びHfからなる群より選ばれる1種又は2種以上の水溶性金属化合物(F)を、金属元素として合計で10〜10,000mg/L含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属表面処理剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属表面処理剤に被処理金属材料を浸漬し、無通電で3〜600秒間浸漬することで前記被処理金属材料上にBiを主成分とする皮膜を形成させ、その後陰極電解によって前記カチオン性エポキシ樹脂及び前記硬化剤を主成分とする塗膜を前記皮膜上に形成させる工程を含む金属表面処理方法。
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