JP2017082068A - 水性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた水性ボールペン - Google Patents

水性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた水性ボールペン Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題については、ボールとチップ本体との潤滑性を高め、滑らかな筆感を得ることができ、書き味が良好で、かつ、ボールペンチップ内に発生する金属塩等を抑制することで経時安定性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。【解決手段】本発明の解決手段については、水、着色剤、アミノ酸誘導体、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を含んでなる水性ボールペン用インキ組成物であり、前記アミノ酸誘導体の構造内にケトン構造を有することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物を用いる。【選択図】 なし

Description

本発明は水性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては、書き味が良好で、かつ、ボールペンチップ内の析出物を抑制することで経時安定性に優れた水性ボールペン用インキ組成物に関するものである。
従来より、ステンレス鋼材からなるチップ本体を用いたボールペンチップを装着したボールペンはよく知れている。こうしたステンレス鋼材からなるチップ本体を用いた水性ボールペンの場合には、ステンレス鋼材に含まれるマンガンやクロム等のマンガンイオンやクロムイオンが、インキ組成物中で反応することによって生じる金属塩等の析出物を防止するため、インキ組成物中にベンゾチアジアゾール化合物等の腐食防止剤や金属封鎖剤等を含有することが提案されている。
このような水性ボールペン用インキ組成物それを用いた水性ボールペンとしては、特開平8−41409号「水性ボールペン用インキ組成物」にベンゾチアジアゾール化合物を用いた水性ボールペン用インキ組成物が開示されている。
ところで、特公平6−6689号「ペン体に直接供給する水性ボールペン用インク」に書き味を向上させるため、潤滑剤としてリン酸エステル系界面活性剤を含有した水性ボールペン用インキ組成物が開示されている。
「特開平8−41409号公報」 「特開平6−57194号公報」 「特開2008−238457号公報」 「特開2008−273105号公報」
しかしながら、特許文献1では、ベンゾチアジアゾール化合物を含有した水性ボールペン用インキが提案されているが、潤滑性が劣り、書き味が悪く、カスレ等も発生する問題を抱えていた。
また、特許文献2のように、書き味を向上させるため、潤滑剤として、リン酸エステル系界面活性剤を含有すると、リン酸エステル系界面活性剤とチップ内のマンガンイオンやクロムイオン等の金属イオンとが反応して金属塩が発生する。更にまた、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸としては書き味が向上するが、特に脂肪酸やリン酸エステル系界面活性剤は、親油性が強くなりやすく、溶解性が悪いため、リン酸エステル系界面活性剤とチップ内の金属イオンとが反応して生じた金属塩が溶解しきれず析出物が発生してしまいやすい傾向があった。
そのため、上記の課題を解決するため、特許文献3では、カルボキシメチルポリエチレンイミンを含有した水性ボールペンや、特許文献4では、アミノポリホスホン酸を含有した水性ボールペンによって、書き味が良好であり、経時安定性に優れた水性ボールペンとする技術が開示されていた。
本発明の目的は、書き味が良好で、かつ、チップ本体内の金属塩による析出物を抑制することで経時安定性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.水、着色剤、アミノ酸誘導体、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を含んでなる水性ボールペン用インキ組成物であり、前記アミノ酸誘導体の構造内にケトン構造を有することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。
2.前記アミノ酸誘導体のインキ組成物全質量に対する含有量が、0.001〜3.0質量%であること特徴とする第1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
3.前記アミノ酸誘導体がアミノ基にケトン構造を有すること特徴とする第1項または第2項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
4.前記アミノ酸誘導体のアミノ基が3級アミンの構造を有すること特徴とする第3項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
5.前記アミノ酸誘導体のインキ組成物全質量に対する含有量をX質量%、前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸のインキ組成物全質量に対する総含有量をY質量%とした場合、1≦Y/X≦1000の関係であることを特徴とする第1項ない第4項のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
6. 前記着色剤がフタロシアニン系顔料であること特徴とする第1項ない第5項のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したステンレス綱材からなるボールペンチップを装着してなり、前記インキ収容筒内に第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物を収容してなることを特徴とする水性ボールペン。
8. 前記ボール材が超硬合金であることを特徴とする第7項に記載の水性ボールペン。
」である。
本発明は、ボールとチップ本体との潤滑性を高め、ボールの回転をスムーズにすることで、書き味が良好で、かつ、チップ本体内の金属塩による析出物を抑制することで経時安定性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することができた。
本発明の特徴は、構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体と、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を含んでなる水性ボールペン用インキ組成物とすることである。
本発明に用いるリン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸は、ボールとチップ本体との潤滑性を高め、ボールの回転をスムーズにすることで、書き味を向上し、ボール座の摩耗抑制をするために用いる。しかし、水性ボールペン用インキ組成物中にリン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を含んでなることで、チップ本体より溶出するマンガンイオンやクロムイオン等の金属イオンがリン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸と反応して金属塩が発生してしまい、インキ組成物中に不溶な金属塩の析出物が発生してしまうという問題があった。
そのため、本発明では、前記アミノ酸誘導体の構造内にケトン構造(R−C=O)を有するアミノ酸誘導体を用いる必要がある。前記アミノ酸誘導体の性質としては、配位のしやすさが、金属イオン>金属であるため、インキ中で前記アミノ酸誘導体が金属イオンに優先的に配位する。その結果,リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸と金属イオンの反応を阻害し,析出物を抑制することが可能となる。
さらに、前記アミノ酸誘導体の構造内にケトン構造(R−C=O)を有するアミノ酸誘導体の中でも、アミノ基にケトン構造(R−C=O)を有するアミノ酸誘導体を用いると、チップ本体より溶出する金属イオンに配位した際に錯体の外側にケトン構造(R−C=O)が位置することになる。そのため、錯体の外側に親水性の強い構造が存在することにより錯体全体としても水性インキ組成中への溶解安定性が向上しやくなるため、水性インキ組成物中に不溶な金属塩の析出を抑制する効果がより得られやすい。
また,前記アミノ酸誘導体が金属イオンに優先的に配位した結果,リン酸エステル系界面活性剤や脂肪酸が、より金属材のチップ本体やボールに配位するようになる。そのためボールとチップ本体との潤滑性を高め、ボールの回転をスムーズにすることで、書き味を向上し、ボール座の摩耗抑制することができる。前記アミノ酸誘導体とリン酸エステル系界面活性剤や脂肪酸を用いることで、経時安定性に優れるだけでなく、より潤滑性を向上することで、書き味を向上し、ボール座の摩耗抑制をすることができる。
さらに、前記アミノ基にケトン構造を有するアミノ酸誘導体のアミノ基は、1級アミン、2級アミン、3級アミンなどの構造を有するものが挙げられるが、3級アミンの構造を有することが好ましい。これは、アミノ酸のアミノ基が1級もしくは2級アミンの場合、親水性に劣る傾向があるため、水性インキ組成中への溶解安定にカルボキシル基が使われてしまい、本発明で望む金属塩の析出抑制効果が得られにくいためである。そのため、アミノ酸誘導体のアミノ基がケトン構造を有する3級アミンであることが好ましい。
前記構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体としては、金属塩による析出物の発生の抑制と、ボールペンチップやボールの腐食の抑制を考慮して、ラウロイルメチルアラニンNa、ラウロイルメチルアラニンTEAなどのラウロイルメチルアラニンのアルカリ金属塩、ラウロイルメチルアラニンのアミン塩などや、ラウロイルメチルβ-アラニンタウリンTEAなどのラウロイルメチルアラニンのアミン塩などが挙げられる。その中でも、ラウロイルメチルアラニンNa、ラウロイルメチルアラニンTEAなどのラウロイルメチルアラニンのアルカリ金属塩、ラウロイルメチルアラニンのアミン塩を用いることが好ましいが、より金属塩による析出物の発生の抑制と、ボールペンチップやボールの腐食の抑制を考慮すれば、ラウロイルメチルアラニンNaなどのラウロイルメチルアラニンのアルカリ金属塩を用いることが好ましい。具体的には、ソルフィルトAS−L(ラウロイルメチルアラニンNa)、ソルフィルトAT−L(ラウロイルメチルアラニンTEA) 、ソルフィルトAY−L(ラウロイルメチルβ-アラニンタウリンTEA)(日油(株))などが挙げられる。
また、前記構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.001質量%より少ないと、金属塩の析出物を抑制する効果が弱くなるおそれがあり、3.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になるため、インキ組成物全量に対し、0.001〜3.0質量%とする。より考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.001〜1.0質量%が好ましく、最も好ましくは、0.01〜0.5質量%が好ましい。
本発明で用いるリン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸の中でも、ボールとチップ本体との潤滑性を高め、ボールの回転をスムーズにすることで、書き味を向上し、ボール座の摩耗抑制をしやすくすることを考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。
その中でも、潤滑性を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましく、より考慮すれば、HLB値が6〜13であるリン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。これは、HLB値が13以下であると、親油性が増して、ボールの潤滑性が向上し、書き味が向上し、HLB値が低いほど親油性が増すため、潤滑性は良好となるが、HLB値が6未満であると、親油性が強すぎて、経時安定性に影響が出てしまうためである。特にHLB値が6〜13であるリン酸エステル系界面活性剤を用いた場合には、親油性が強い金属塩を形成しやすいが、本願発明のように、構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体を用いた場合では、金属塩の析出を抑制する効果があるため、ボールとチップ本体との潤滑性を高め、ボールの回転をスムーズにすることで、書き味が良好で、かつ、チップ本体内の金属塩による析出物を抑制することで経時安定性に優れた水性ボールペン用インキ組成物とすることが可能である。さらに、より潤滑性や経時安定性を考慮すれば、HLB値が7〜12であるリン酸エステル系界面活性剤が好ましく、より考慮すれば、HLB値が10〜12であるリン酸エステル系界面活性剤が好ましい。
本発明では、構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体と、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を含んでなる場合には、中和剤を用いることが好ましい。これにより、前記アミノ酸誘導体のカルボキシル基の水素イオンを乖離させ、金属イオンを包み込む効果を促進できる。さらに、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸、構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体を含んでなるため、インキは酸性が強くなり、具体的には、pH値が7未満で酸性領域であると、前記アミノ酸誘導体による影響でインキ粘度が増粘しやすくなり、さらに各インキ成分の安定性にも影響しやすいためである。そのため中和剤を添加することでpH値を調整することが好ましい。
また、pH値については、7.0〜10.0が好ましい。これは、pH値が7未満で酸性領域であると、上記のようにインキ粘度が増粘しやすくなり、さらに着色剤や界面活性剤などのインキ成分に対する安定性への影響や、金属製のボールペンチップやボールの腐食に影響が発生するためで、pH値が10を超えて強アルカリ側に寄っても、同様にインキ成分に対する安定性への影響が発生してしまうためである。より考慮すれば、pH値が7.0〜9.0がより好ましい。
中和剤の含有量については、前記アミノ酸誘導体と前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸とのインキ組成物全質量に対する総含有量をA質量%、前記中和剤のインキ組成物全質量に対する含有量をB質量%とした場合、チップ本体内の金属塩の析出物の発生を抑制する効果を奏するためには、0.01≦B/A≦10の関係とする必要がある。さらに、B/A<0.01だと、前記アミノ酸誘導体と前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸の中和が不十分で、インキは酸性が強くなってしまい、インキ経時安定性への影響や、金属製のボールペンチップやボールの腐食の影響が発生や、B/A>10だと、インキはアルカリ性が強くなってしまい、インキ経時安定性への影響が発生するためである。よりインキ経時を考慮すれば、1≦B/A≦5の関係が好ましく、最も好ましくは、1.5≦B/A≦3の関係が好ましい。
また、pH値については、7.0〜10.0が好ましい。これは、pH値が7未満で酸性領域であると、着色剤や界面活性剤などのインキ成分に対する安定性への影響や、金属製のボールペンチップやボールの腐食に影響が発生するためで、pH値が10を超えて強アルカリ側に寄っても、同様にインキ成分に対する安定性への影響が発生してしまうためである。より考慮すれば、pH値が7.0〜9.0がより好ましい。
リン酸エステル系界面活性剤については、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられ、前記リン酸エステル系界面活性剤のアルキル基は、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、オクチルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルアルコール系等が挙げられる。この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に影響が出やすいため、リン酸エステル系界面活性剤のアルキル基は、直鎖アルコール系のラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルアルコール系、長鎖アルコール系(アルキル基の炭素数10〜15)を用いることが好ましい。より潤滑性とインキ経時安定性を考慮すれば、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系を用いることが好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
尚、HLBは、一般式として、HLB=7+11.7log (Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)から求めることができる。
また、脂肪酸については、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。脂肪酸は、炭素数が10〜30である方が好ましい。炭素数が高い方が、ボールの潤滑性が向上するので、書き味が向上するが、特に炭素数が10以上の脂肪酸を用いることが好ましい。また、炭素数が30を越える場合には、水に溶解安定しづらいため、経時安定性を考慮すれば、炭素数が30以下の脂肪酸を用いる方が好ましい。より好ましくは、炭素数が15〜25である。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
前記リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬(株)の中から、ラウリルアルコール系としては、プライサーフA208B:HLB値6、プライサーフ210B:HLB値9、プライサーフ213B:HLB値12、トリデシルアルコール系としては、プライサーフ212C:HLB値9、プライサーフ215C:HLB値11、オクチルアルコール系としては、プライサーフA208F:HLB値8、長鎖アルコール系としては、プライサーフ208N(アルキル基の炭素数12と13の混合物):HLB値7などが挙げられる。また、前記脂肪酸の具体例としては、OSソープ、NSソープ、FR−14、FR−25(花王(株))等が挙げられる。これ等のリン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸の総含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られず、書き味が悪く、筆跡にカスレ等が発生するおそれがあり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になるおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%が好ましいが、さらに筆感をより高め、良好なインキ経時を得るために、前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸の総含有量は、インキ組成物全量に対し、0.5〜3.0質量%が最も好ましい。
さらに、前記アミノ酸誘導体のインキ組成物全質量に対する含有量をX質量%、前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸のインキ組成物全質量に対する総含有量をY質量%とした場合、1≦Y/X≦1000の関係とすることが好ましい。これは、Y/X<1だと、前記アミノ酸誘導体の有効濃度が余剰となり、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸よりも強い界面活性効果を示しやすく、その結果、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸による潤滑効果を得られにくくなりやすい。また、Y/X>1000だと、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸と反応して発生する金属塩を抑制しづらくなるためである。より考慮すれば、1≦Y/X≦10の関係が好ましく、最も好ましくは、1≦Y/X≦5の関係が好ましい。
本発明で用いる中和剤として、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンや、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、アミルアミン等の有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。その中でも、前記アミノ酸誘導体やリン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を中和安定することを考慮すれば、有機アミンを用いることが好ましく、より考慮すれば、アルカノールアミンを用いることが好ましく、より弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが最も好ましい。これらの中和剤は単独又は2種以上混合して使用してもかまわない。
また、中和剤の含有量については、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、前記アミノ酸誘導体と前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸の中和が不十分なるおそれがあり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になるおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%が好ましい、より考慮すれば、1.0〜3.0質量%がより好ましい。
また、本発明では、pH値の安定性を考慮することや、ボ−ルペンチップのチップ本体やボール材に金属材料を用いる場合は、金属腐食を抑制しやすくするには、ベンゾトリアゾールを含んでなることが好ましい。特にタングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボールは、その結合材として、コバルト、ニッケル等を用いており、金属腐食の影響が出やすいため、ベンゾトリアゾールを含んでなることが、好ましい。
本発明で用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、各種水溶性の造塩タイプ染料等が採用可能である。顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、着色樹脂粒子体として顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包または固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。更に、顔料を透明、半透明の樹脂等で覆った着色樹脂粒子などや、また着色樹脂粒子や無色樹脂粒子を、顔料もしくは染料で着色したもの等も用いることもできる。これらの染料および顔料は、単独または2種以上組み合わせて使用してもかまわない。含有量は、インキ組成物全量に対し、1質量%〜20質量%が好ましい。
着色剤の中でも、フタロシアニン系顔料を用いる場合は、金属親和性が高い構造であるため、金属イオンの不純物などを多く含み、前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸による金属塩の析出物によるインキ経時安定性に影響が発生しやすい。具体的には、フタロシアニン系顔料を製造する工程では、金属イオン混入が起こりやすいため,本発明による効果が顕著に出やすく、効果的である。
また、本発明には、インキ粘度調整剤や顔料分散剤として樹脂などを用いても良く、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂、キサンタンガム、架橋型アクリル酸重合体、サクシノグリカン、ガーガム、ダイユータンガム等や、アルカリ膨潤会合型増粘剤、ノニオン会合型増粘剤などの会合型増粘剤などの剪断減粘性付与剤等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。 これらのインキ粘度調整剤や顔料分散剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
また、樹脂の添加量は、インキ組成物全量に対して、0.1質量%未満だと、所望のインキ粘度が得られにくく、30質量%を越えると書き出し性能が劣ってしまう可能性があるため、0.1質量%〜30質量%が好ましく、より考慮すれば、0.1質量%〜5質量%が好ましい。
その他として、潤滑性の向上を考慮し、シリコ−ン系等の界面活性剤、尿素、ソルビット等の保湿剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤を添加することができる。また、定着剤も適宜添加可能で、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を添加することができる。これらは単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
また、書き味、インキ漏れ抑制を向上するために、有機樹脂粒子やシリカなどの無機粒子を用いても良い。特に、有機樹脂粒子を用いることが好ましく、有機樹脂粒子としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂粒子や、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ナイロン樹脂などの化学構造中に窒素原子を含む含窒素樹脂粒子や、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、セルロース樹脂粒子などが挙げられる。さらに、有機樹脂粒子の中でも、書き味、インキ漏れ抑制、インキ経時安定性を考慮すれば、オレフィン系樹脂粒子、含窒素樹脂粒子を用いることが好ましい。
前記有機樹脂粒子の形状については、球状、もしくは異形の形状のものなどが使用できるが、摩擦抵抗を低減することを考慮すれば、球状樹脂粒子が好ましい。ここでいう球状樹脂粒子とは、真球状に限定されるものではなく、略球状の樹脂粒子や、略楕円球状の樹脂粒子などでも良い。
また、ボ−ルペンチップの材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、ボール座の摩耗、経時安定性を考慮するとステンレス綱材のチップ本体とすることが好ましい。
また、ボールペンチップのボールは、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボールは、その結合材として、コバルト、ニッケル等を用いている。前記チップ本体やボールの金属材料を用いる場合はリン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸との親和性が高く、より滑らかな書き味を得られやすいために好ましい。一方で、従来の金属イオン封鎖剤などを併用する場合は、これら超硬合金ボールの金属材料を溶出させやすい課題があった。そのため炭化硅素等の非金属系のセラミックボールを使用することが好適であった。これらの非金属系のセラミックボールはリン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸との親和性が金属材のボールに対して弱いため、書き味が劣りやすかった。前記構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体は、従来の金属イオン封鎖剤などと比べて、コバルト、ニッケル等の金属に対して、経時的に腐食しづらいため、腐食によるボールの回転抵抗を生じることもなく、良好な書き味が得られ、超硬合金ボールに対しても好適に用いられる。
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
水 57.1質量部
水溶性有機溶剤(グリセリン) 11.0質量部
中和剤(トリエタノールアミン) 3.0質量部
リン酸エステル系界面活性剤(トリデシルアルコール系、HLB値11) 1.0質量部
構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体
(ラウロイルメチルアラニンNa、有効成分30%) 1.0質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
顔料分散体(銅フタロシアニン系顔料) 26.0質量部
剪断減粘性付与剤(キサンタンガム) 0.4質量部
実施例1は、まず水、水溶性有機溶剤、中和剤、リン酸エステル系界面活性剤、構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体、防錆剤、顔料分散体をマグネットホットスターラーで40℃加温撹拌してベースインキを作成する。
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌した。その後、濾紙を用い濾過を行って、実施例1の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
尚、実施例1のインキ粘度は、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE−42ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度1.92sec−1(回転数0.5rpm)の条件にてインキ粘度を測定したところ、2500mPa・sであった。
また、実施例1のpH値は、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃にて測定したところ、pH値=8.5であった。
実施例2〜9
各成分とボール材を表に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で水性ボールペン用インキ組成物を作成した。
Figure 2017082068
Figure 2017082068
比較例1〜8
各成分を表に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で水性ボールペン用インキ組成物を作成した。
Figure 2017082068
試験および評価
インキ収容筒の先端部に、ステンレス綱材からなるチップ本体のボール抱持室に、ボール径がφ0.7mmの超硬合金ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを装着し、インキ収容筒内に実施例1〜9および比較例1〜8において作製した水性インキ組成物及びグリース状のインキ追従体を直に充填したレフィルを、(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:Juice)に装着して、本発明の水性ボールペンを作製し、以下の試験及び評価を行った。尚、書き味・筆記試験、筆記試験用紙としてコピー用紙(PPC用紙)を用いて、下記のような項目で評価した。
チップ本体の経時試験:ボールペン用レフィルを50℃・湿度0%の環境下、3ヶ月間放置後に、チップ本体内のインキを顕微鏡観察や筆記試験を行った。
析出物がなく、良好のもの ・・・◎
析出物が微少に発生したが、実用上問題のないもの ・・・○
析出物が発生し、実用上影響がでるもの ・・・△
析出物が存在し、カスレや筆記不良などの原因になるもの ・・・×
書き味:ボールペン用レフィルを50℃・湿度0%の環境下、3ヶ月間放置後に、手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
やや劣るものを ・・・△
重く、劣るもの ・・・×
ボールの腐食試験:ボールペン用レフィルを50℃・湿度0%の環境下、3ヶ月間放置後に、ボールの腐食状態を顕微鏡や筆記試験を観察した。
ボールの腐食がないもの ・・・○
ボールの腐食があり、筆跡にカスレがあるもの ・・・△
ボールの腐食があり、筆跡にカスレが多く、実用性に乏しいもの・・・×
実施例1〜9では、書き味、チップ本体の経時試験、ボールの腐食試験ともに良好な性能が得られた。
比較例1、7、8では、アミノ酸誘導体を含有しなかったため、チップ本体内に析出物が発生し、筆記不良になってしまった。
比較例2、6では、リン酸エステル系界面活性剤や脂肪酸を含有しなかったため、書き味が、やや劣ってしまった。
比較例3〜6では、構造内にケトン構造を有するアミノ酸誘導体以外のものを含有したため、ボールの腐食がひどく、筆跡にカスレがひどかった。さらに、ボールの回転も悪く、書き味が、やや劣ってしまった。
尚、図示はしていないが、ボールペンチップ内にステンレス鋼材からなるボールを押圧するコイルスプリングを配設する場合には、チップ本体と同様に、HLB値が6〜13であるリン酸エステル系界面活性剤とコイルスプリングの金属イオンとの反応により金属塩が発生するおそれがあるため、本発明の効果は顕著である。
さらに、顔料のような粒径の大きいものを含有したインキ組成物では、ボールとチップ本体の間で回転阻害による書き味の劣化の可能性や、ボール径が0.5mm以下のボールを用いたボールペンは、ボールとボール座の接触面積が小さく、単位面積に掛かる荷重が高くなることによる書き味の劣化の可能性があるので本発明の効果は顕著である。
本発明は水性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては、水、着色剤、アミノ酸誘導体、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を含んでなる水性ボールペン用インキ組成物であり、前記アミノ酸誘導体の構造内にケトン構造を有することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物を用いることで、書き味が良好で、さらにチップ本体内の金属塩による析出物を抑制することで経時安定性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することができる。そのため、キャップ式、ノック式等、ボールペンとして広く利用することができる。

Claims (8)

  1. 水、着色剤、アミノ酸誘導体、リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸を含んでなる水性ボールペン用インキ組成物であり、前記アミノ酸誘導体の構造内にケトン構造を有することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。
  2. 前記アミノ酸誘導体のインキ組成物全質量に対する含有量が、0.001〜3.0質量%であること特徴とする請求項1に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
  3. 前記アミノ酸誘導体がアミノ基にケトン構造を有すること特徴とする請求項1または2に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
  4. 前記アミノ酸誘導体のアミノ基が3級アミンの構造を有すること特徴とする請求項3に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
  5. 前記アミノ酸誘導体のインキ組成物全質量に対する含有量をX質量%、前記リン酸エステル系界面活性剤および/または脂肪酸のインキ組成物全質量に対する総含有量をY質量%とした場合、1≦Y/X≦1000の関係であることを特徴とする請求項1ない4のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
  6. 前記着色剤がフタロシアニン系顔料であること特徴とする請求項1ない5のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
  7. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したステンレス綱材からなるボールペンチップを装着してなり、前記インキ収容筒内に請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物を収容してなることを特徴とする水性ボールペン。
  8. 前記ボール材が超硬合金であることを特徴とする請求項7に記載の水性ボールペン。
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