JP2017081814A - スラグ材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】風砕によって生じた粒状スラグを通常のトラックを用いて輸送する場合、粒状スラグが荷台上で動き走行が安定せず、通常のトラックでは輸送できない、という課題があった。
【解決手段】スラグ材の製造方法であって、溶融状態の製鋼スラグにノズルから空気を吹き付けることによって、前記製鋼スラグをスラグ液滴にして吹き飛ばし、前記ノズルから離れるに従って高くなるように傾斜した斜面に前記スラグ液滴を衝突させて塊状のスラグ材とした後、前記塊状のスラグ材を破砕する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水和膨張を抑制し、運搬容易なスラグ材の製造方法に関する。
脱炭吹錬によって生じる脱炭スラグは、精錬時に使用した生石灰の一部が未反応で残留したフリーライムを含有するので、水と接触すると膨張するという問題がある。そのため、脱炭スラグを路盤材に使用する場合には、水蒸気エージング処理を行いフリーライムを水和させてCa(OH)にしておく必要がある。一方、フリーライムを予め低減できれば、水蒸気エージング処理を行なわずに、脱炭スラグをそのまま路盤材にできる可能性がある。
フリーライムを予め低減する技術として、特許文献1には、溶融スラグ中に酸素を吹き込み、スラグ中に含まれるFeOを酸化してFeとし、そのFeをフリーライムと反応させて2CaO・Feを生成させてフリーライムを低減できることが記載されている。しかしながら、溶融スラグ中に酸素を吹き込む方法は、溶融スラグ中に酸素を吹き込むので、酸素吹き込み用のランスが必要になる。通常、ランスは、鋼鉄製パイプを用いており、ランスから酸素を高温のスラグに吹き込む際にランス自身が酸化して消耗する。また、溶融スラグ中に酸素を吹き込むとスラグ湯面が大きく変動し容器から溢れてしまう。
溶融スラグ中に酸素を吹き込むことなくフリーライムを低減させる技術として、非特許文献1には、風砕法により溶融スラグを球形状の細粒にし、空気中の酸素によってFeOを酸化させる技術が記載されている。スラグ中に含まれるFeOを空気中で酸化させてFeとし、そのFeをフリーライムと反応させて2CaO・Feを生成させてフリーライムを低減できることが記載されている。
また、特許文献2には、溶融スラグを鉛直下方に流下させ、流下した溶融スラグを回転ドラムに衝突させることで溶融スラグを飛翔させてスラグ粒子とし、当該スラグ粒子をステンレススラグ粉が堆積した斜面状の受粒面に着地させることで、スラグ粒子同士が融着することを防止する技術が記載されている。
特開平9−256027号公報 特開2003−104761号公報
風砕による転炉スラグの風化崩壊性の改善について、鉄と鋼(1979)S114
しかしながら、非特許文献1および特許文献2に記載された風砕法で製造されたスラグは、空気を吹き付けられることによって吹き飛ばされて、数mm径の球形状のスラグ材になる。当該スラグ材を通常のトラックに積載して輸送すると、球形状なのでトラックの荷台上でスラグ材が動く。また、スラグ材は、高比重であるので、トラックの荷台上で動くことによってトラックの安定走行を妨げ、通常のトラックでは輸送できない。そのため、球形状のスラグ材は、フレコン等に入れて輸送する必要があり輸送コストが増大する、という課題がある。
本発明は、従来技術が抱える上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、製鋼スラグを風砕して、製鋼スラグに含まれるフリーライムを低減させて水和反応による膨張を抑制するとともに、フレコンに入れることなく、通常のトラックで輸送できるスラグ材の製造方法を提供することである。
このような課題を解決するための本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)溶融状態の製鋼スラグにノズルから空気を吹き付けることによって、前記製鋼スラグをスラグ液滴にして吹き飛ばし、前記ノズルから離れるに従って高くなるように傾斜した斜面に前記スラグ液滴を衝突させて塊状のスラグ材とした後、前記塊状のスラグ材を破砕するスラグ材の製造方法。
(2)前記斜面に設けられた熱電対によって測定される前記塊状のスラグ材の最高温度が700℃以上になるように、前記スラグ液滴を前記斜面に衝突させる(1)に記載のスラグ材の製造方法。
(3)サーモグラフィーを用いて、前記スラグ液滴が前記斜面に衝突し始めてから衝突し終わるまで前記塊状のスラグ材の最高温度を前記ノズルが設けてある側から測定し、前記スラグ液滴が前記斜面に衝突し始めてから衝突し終わるまでの前記最高温度の平均値が1050℃以上になるように、前記スラグ液滴を前記斜面に衝突させる(1)に記載のスラグ材の製造方法。
(4)前記塊状のスラグ材を破砕した後に篩分けし、篩下をスラグ路盤材にする(1)から(3)のいずれか1つに記載のスラグ材の製造方法
(5)前記塊状のスラグ材を破砕した後に篩分けし、篩上を海域利用用スラグにする(1)から(3)のいずれか1つに記載のスラグ材の製造方法。
(6)前記塊状のスラグ材の厚さは、80〜150mmである(1)から(5)のいずれか1つに記載のスラグ材の製造方法。
本発明に係るスラグ材製造方法により製造されたスラグ材は、スラグ中のフリーライムを予め減少でき、水和反応による膨張を抑制できる。さらに、空気を吹き付けることで形成されたスラグ液滴は、凝固されて塊状のスラグ材にされる。このようにして製造されたスラグ材は、球形状ではないので、トラックの荷台上における動きが小さくなり、フレコン等のコンテナを用いなくてもトラックの安定走行を妨げることがない。このため、当該スラグ材は、輸送コストを上昇させることなく、通常のトラックで輸送できるものとなる。
スラグ材製造装置10の側面図である。 スラグ材製造試験装置40の側面図である。 球形状の風砕スラグ材を示す写真である。 塊状化した風砕スラグ材の断面を示す写真である。 ノズル20からの距離と熱電対で測定したスラグ材の最高温度との関係を示すグラフである。 斜面28へのスラグ液滴の到達頻度とスラグ材の平均温度の関係を示すグラフである。 融着スラグおよび半融着スラグを示す写真である。 スラグ液滴径ごとに、全Fe量に対するFeの含有割合(質量%)とノズルからの距離(図6上)と、スラグ中のフリーライムの含有割合(質量%)とノズルからの距離(図6下)との関係を示すグラフである。
図1は、本発明の実施形態に係るスラグ材の製造方法が適用されるスラグ材製造装置10の側面図である。スラグ材製造装置10は、樋14と、ブロアー16と、凝固台26とを有する。製鋼工場において発生した溶融状態の製鋼スラグ24は、スラグ鍋12に装入される。スラグ鍋12は、溶融状態の製鋼スラグ24が装入された状態で搬送され、樋14の上方に設置される。スラグ鍋12は、傾動されて製鋼スラグ24をスラグ鍋12から流出させる。スラグ鍋12は、製鋼スラグ24が流れ始める直前から傾動速度が低下されて、例えば、1t/minの流量で、製鋼スラグ24を流出させる。ここで、製鋼スラグ24は、例えば、転炉を用いた脱炭精錬によって生じたフリーライムを1質量%以上含む脱炭スラグである。なお、脱炭スラグに代えて、脱りん精錬によって生じたフリーライムを1質量%以上含む脱りんスラグを用いてもよい。ここで、フリーライムとは、溶鉄の精錬に使用された生石灰の未反応物や高濃度にCaOを含む晶出物であり、「遊離石灰」、「f−CaO」とも呼ばれる。
ブロアー16は、ブロアー本体18と、ノズル20を有する。ブロアー本体18は、外部の空気を取り込んで、内部の空気の圧力を高める。圧力の高められた空気は、ノズル20から吹き出される。また、ノズル20は、不図示の風速調整弁を含む。風速調整弁は、弁の開度が調整されることでノズル20から吹き出される空気の風速が調整される。
スラグ鍋12から流出された製鋼スラグ24は、樋14を通じてノズル20の前方に流出される。ブロアー16は、ノズル20から製鋼スラグ24に空気を吹き付け、製鋼スラグ24をスラグ液滴にして吹き飛ばす(以後、「製鋼スラグ24に空気を吹き付け、製鋼スラグ24をスラグ液滴にして吹き飛ばす」ことを「風砕」と称する)。製鋼スラグ24に含まれるFeOは、空気に含まれる酸素によってFeに酸化される。酸化によって生成されたFeによって、2CaO・Feが生成されるので、製鋼スラグ24中のフリーライムは減少する。このように製鋼スラグ24のフリーライムを予め減少させることができるので、製鋼スラグ24の水和反応による膨張を抑制できる。
吹き飛ばされたスラグ液滴は、凝固台26に形成された斜面28に衝突して、斜面28に融着する。そして、斜面28に融着したスラグ液滴は、融着後に空気および凝固台26に抜熱されることによって冷却され斜面28上で凝固する。さらに製鋼スラグ24の風砕が継続されることで、スラグ液滴は、斜面28上で凝固したスラグに衝突して、スラグ同士で融着する。そして、スラグ同士が融着した融着物が冷却されて、斜面28上に塊状のスラグ材30が製造される。なお、凝固台26に設けられた斜面28は、ノズル20から離れるに従って高くように傾斜した斜面である。凝固台26の材質は、鋼、コンクリート、および塊状化した風砕スラグであってよく、スラグ材30の荷重に耐えられる材質であればよい。
凝固台26の斜面28には、不図示の熱電対が設けられている。熱電対は、斜面28上の塊状のスラグ材30の温度を測定する。本実施形形態において、熱電対によって測定されたスラグ材30の最高温度が700℃以上となるように、スラグ鍋12から流出される製鋼スラグ24の流量および凝固台26の位置等を調整する。これにより、スラグ同士の融着が促進され、スラグ材30の強度を高めることができる。
なお、熱電対に代えて、ノズル20が設けてある側から斜面28上のスラグ材30の温度を非接触で測定するサーモグラフィーを設けてもよい。サーモグラフィーを用いて、斜面28上の塊状のスラグ材30の最高温度を測定する。サーモグラフィーを設けた場合において、スラグ液滴が斜面28に衝突し始めてから衝突し終わるまで、サーモグラフィーによって測定されるスラグ材30の最高温度の平均値が1050℃以上となるように、スラグ鍋12から流出される製鋼スラグ24の流量および凝固台26の位置等を調整する。これにより、スラグ同士の融着が促進され、スラグ材30の強度を高めることができる。
製鋼スラグ24の風砕は、スラグ材30の厚さが80〜150mmになるまで継続される。スラグ材30は、スクレーパ等を用いて斜面28から剥離されて回収される。回収されたスラグ材30は、破砕機によって破砕されてスラグ破砕物にされる。スラグ破砕物は、予め定められた粒径で分級される。分級は、例えば、篩を用いて行われる。予め定められた粒径が30mmである場合には目開き30mmの篩を用いて篩分けし、当該篩を通過した篩下のスラグ破砕物を粒径の小さいスラグ破砕物とし、篩上に残ったスラグ破砕物を粒径の大きいスラグ破砕物とする。そして、粒径の小さいスラグ破砕物は、例えば、スラグ路盤材とし、粒径の大きいスラグ破砕物は、例えば、海域利用用スラグとする。
なお、予め定められた粒径は、本実施形態におけるスラグ材の製造方法が実施される場所において、スラグ路盤材として用いられる粒径に基づいて25〜40mmの範囲で任意に定めてよい。例えば、スラグ路盤材として用いられる粒径が30mmの場合には、目開き30mmの篩を用いてスラグ破砕物が分級される。
粒径の小さいスラグ破砕物をスラグ路盤材にしても、スラグ中のフリーライムは予め減少されており水和反応による膨張は抑制される。そのため、当該スラグ材は、スラグ路盤材として有用なスラグ材となる。さらに、球形状のスラグ材は、通常のコンクリート用細骨材として同様に扱ってもらえないところ、当該スラグ破砕物は球形状ではないので、通常のコンクリート用細骨材として使用できる。
また、海域利用用として製鋼スラグ材を用いると、製鋼スラグに含まれるCaOやFe成分によるHSやPO 3−の化学的除去効果によって海底の底質浄化および海水の浄化がなされることが報告されている。しかしながら、製鋼スラグ材の粒径が1mm以下では、浮泥等によって表面が完全に覆われて海底の底質浄化能力または海水の浄化能力が消失する。一方、製鋼スラグ材の粒径が10mm以上であれば、浮泥等によって製鋼スラグ材の表面が完全に覆われることがないので、海底の底質浄化能力または海水の浄化能力が消失することを防止できる。上述したように、スラグ路盤材として用いられるスラグ破砕物の最大粒径は25〜40mmの範囲内であるので、海域利用用スラグとしては、小さくとも目開き25mmの篩上に残ったスラグ破砕物が用いられる。このように、粒径が25mm以上のスラグ破砕物を海域利用用スラグにすることで、当該スラグ材は、海域利用用スラグとしても有用なスラグ材となる。
スラグ材30の厚さが80〜150mmとなるまで、風砕が継続される。例えば、スラグ路盤材として用いられる粒径が40mmである場合に、スラグを有効活用することを目的として、40mm以下の粒径のスラグ破砕物をスラグ路盤材にし、40mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグにする。海域利用用スラグの歩留を高くするために、スラグ材30の厚さの下限寸法をスラグ路盤材として用いられる粒径の約2倍程度である80mmにしている。これにより、海域利用用スラグの歩留を50質量%以上にすることができる。なお、海域利用用スラグの歩留とは、全スラグ質量に対して海域利用用スラグに用いることができたスラグ質量の割合(質量%)を示す。
一方、スラグ材30の厚さを厚くしすぎると、スラグ材30が大きくなりすぎて、スラグ材30の破砕回数が多くなる。破砕回数が多くなると、微細な破砕物も増えるので、破砕回数は少ないことが好ましい。このため、スラグ材30の厚さの上限寸法を150mmにしている。
次に、ノズル20から凝固台26までの距離と、スラグ材30の温度との関係について説明する。図2は、スラグ材製造試験装置40の側面図である。図2において、図1と同じ構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。スラグ材製造試験装置40は、凝固台26に代えて、ベースプレート50と、スラグ回収用の鉄板52と、鉄板52に設けられた複数の熱電対42を備える。
スラグ鍋12から流出された製鋼スラグ24は、樋14を通じて、ノズル20の前方に流出される。ブロアー16は、製鋼スラグ24に風速80〜91m/sで空気を吹き付けて風砕する。風砕されたスラグ材の温度をノズル20からの距離ごとに測定すべく、ベースプレート50上に配置した鉄板52に複数の熱電対42を設けた。熱電対42は、ノズル20から5.6m離れた位置に1つ設け、さらに5.6mの位置から約1.7m離れるごとに熱電対を1つずつ設けた。これら熱電対42の先端は、鉄板52上に堆積したスラグ材の温度を測定するために鉄板52の上面から約1cm突出されている。このスラグ材製造試験装置40を用いて、ノズル20から所定距離離れた位置に堆積したスラグ材の温度を測定した。なお、図2において、スラグ材70は、ノズル20から5.6mまでの位置に堆積したスラグ材である。スラグ材72は、5.6mから7.3mまでの位置に堆積したスラグ材であり、スラグ材74は、7.3mから9.1mの位置に堆積したスラグ材であり、スラグ材76は、9.1mから10.8mの位置に堆積したスラグ材であり、スラグ材78は、10.8mから12.4mの位置に堆積したスラグ材であり、スラグ80は、12.4mから14.2mの位置に堆積したスラグ材である。
図3は、球形状の風砕スラグ材を示す写真である。図3に示した写真は、ノズル20からの距離が12.4mの位置で回収された球形状のスラグ材78を示している。図3に示すように、ノズル20から12.4m吹き飛ばされたスラグ液滴は、空気中で冷却されて球形状のスラグ材78になる。すなわち、ノズル20からの距離が12.4mの位置に凝固台26を設けても、スラグ液滴は、斜面28に融着せず、球形状のスラグ材になる。
図4は、塊状化した風砕スラグ材の断面を示す写真である。図4に示した写真は、ノズル20からの距離が5.6mの位置で回収された塊状のスラグ材70の断面を示している。図4に示すように、ノズル20から5.6m吹き飛ばされたスラグ液滴は、凝固する前に鉄板52に落下し、鉄板52と融着し、その後、空気および鉄板52に抜熱されることによって冷却されて凝固する。そして、鉄板52に融着したスラグ材に、さらにスラグ液滴が融着および凝固して、塊状のスラグ材70が形成される。
図5は、ノズル20からの距離と熱電対で測定したスラグ材の最高温度との関係を示すグラフである。図5において、同じノズル距離における3つのプロットは、それぞれ異なる日に同じ条件で測定されたスラグ材の最高温度を示す。図5からわかるように、空気に抜熱されることでスラグ液滴は空気中で冷却されるので、ノズル20から離れるに従いスラグ液滴の温度は低下し、その結果、斜面28のスラグ材の最高温度も低下する。スラグ液滴を斜面28で融着させるには、熱電対で測定される塊状のスラグ材の最高温度を700℃以上にすることが好ましい。得られたスラグ材内部の組織より、スラグ材の最高温度が700℃以上であるということは、斜面28に衝突したときのスラグ液滴は、半溶融状態で斜面28に衝突している。このため、斜面28上でスラグ液滴同士が強固に融着した融着スラグが形成される。一方、スラグ材の最高温度が700℃未満の場合、スラグ液滴は、内部がほとんど凝固した状態で斜面28に衝突する。このため、斜面28上でスラグ液滴同士が強固に融着せず、スラグ同士が部分的に融着した強度の弱い半融着スラグが多く形成される。
また、スラグ材の最高温度が1200℃より高くなると、スラグ液滴は、溶融状態で斜面28に衝突していることになる。このため、斜面28上でスラグ液滴同士が融着せず、斜面28の下や凝固台26の側面から溶融スラグが流れ出る。したがって、スラグ材の最高温度は、1200℃以下にすることが好ましい。これにより、設備内への溶融スラグの流れ込みを防止できる。
斜面28上のスラグ材の最高温度を700℃以上にするには、図5に示した例においては、ノズル20からの距離が10m以内であればよい。このため、ノズル20から凝固台26までの距離は、10m以内であることが好ましい。なお、ノズル20から凝固台26までの距離とは、図1における矢印22で示される距離である。また、ノズル20から凝固台26までの好ましい距離は、製鋼スラグ24の種類またはノズル20から吹き付ける空気の風速等により変化するので、すべての条件において、ノズル20から凝固台26までの距離を10m以内にすることが好ましいとは限らない。
図6は、斜面28へのスラグ液滴の到達頻度とスラグ材の平均温度の関係を示すグラフである。図6において、横軸は、スラグ液滴の到達頻度[g/(cm×s)]であり、縦軸は、スラグ材の平均温度(℃)である。スラグ液滴の到達頻度とは、斜面28を約500cmに区切って1エリアとし、各エリアで凝固したスラグ材の質量を風砕時間および面積で除して算出した値である。スラグ材の平均温度とは、サーモグラフィーを用いてスラグ液滴が斜面28に衝突し始めてから衝突し終わるまで、ノズル側からスラグ材の最高温度を測定し、スラグ液滴が斜面28に衝突し始めてから衝突し終わるまでの最高温度の平均値を算出した値である。
図6において、菱形プロットは、半融着スラグが形成されたことを示し、丸プロットは、融着スラグが形成されたことを示す。図6に示すように、スラグ材の平均温度が1050℃以上であれば、部分的に半融着スラグが形成されるものの、内部が密になった強度の高い融着スラグが形成される。ここで半融着スラグとは、ノズルから空気を吹き付けることによって吹き飛ばされたスラグ液滴が空中を飛んでいるとき、もしくは斜面28に衝突した瞬間に抜熱され、内部がほとんど凝固した状態で斜面28に衝突して形成されるスラグ同士が部分的に融着した強度の弱い塊状のスラグを意味する。
図7は、融着スラグおよび半融着スラグを示す写真である。図7(a)は、融着スラグを示す写真であり、図7(b)は半融着スラグを示す写真である。これらの写真に示すように融着スラグは、内部が密になり高い強度を有する。一方、半融着スラグは、その内部に無数の粒状スラグが確認でき、その周囲には多数の空隙が存在する。このように、半融着スラグは、スラグ同士が強固に融着しておらず、多数の空隙が存在するので、路盤材に必要な強度を有さず、運搬作業等によって容易に破砕され、路盤材として求められる粒度分布を満足しない。しかしながら、路盤材として求められる粒度分布には数mm以下の粒子も含まれるので、塊状のスラグ材の全てが、融着スラグになっている必要はない。このため、塊状のスラグ材の平均温度が1050℃以上であれば、部分的に半融着スラグが形成されるものの融着スラグを形成でき、路盤材用途として必要な強度を有することを確認している。
なお、図6に示すように、スラグ材の平均温度を1200℃以上にすれば半融着スラグは発生せず、内部が密になった強度の高い融着スラグが得られる。このため、塊状のスラグ材の平均温度を1200℃以上にすることが好ましい。
一方、塊状のスラグ材の平均温度が1500℃より高くなると、スラグ液滴は、溶融状態のまま斜面28に衝突していることになる。このため、斜面28上でスラグ同士が融着せず、斜面28の下や凝固台26の側面から溶融スラグが流れ出る。したがって、斜面28上のスラグ材の平均温度は、1500℃以下にすることが好ましい。これにより、設備内への溶融スラグの流れ込みを防止できる。
次に、スラグ液滴径と、FeOの酸化との関係について説明する。図8は、スラグ液滴径ごとに、全Fe量に対するFeの含有割合(質量%)とノズルからの距離(図8上)と、スラグ中のフリーライムの含有割合(質量%)とノズルからの距離(図8下)との関係を示すグラフである。図8に示した例において、製鋼スラグ24は、風砕前に1.3質量%のフリーライムを含んでいる。図8のグラフからスラグ液滴径が2.36mm以下であれば、風砕によってFeOを酸化して、スラグ中に含まれる鉄の90質量%以上をFeにできることがわかる。これにより、製鋼スラグ24に含まれるフリーライムの量は、1.3質量%から0.1質量%以下に低減できる。
一方、スラグ液滴径が2.36mmより大きい場合、風砕してもFeOを十分に酸化できず、スラグ中に含まれる鉄の70〜80質量%しかFeにできない。そのため、製鋼スラグ24に含まれるフリーライムの量は、1.3質量%から0.3質量%にしか低減できない。このため、風砕により形成されるスラグ液滴の径は小さい方が好ましく、2.36mm以下であることがより好ましい。
このように、本実施形態のスラグ材製造方法で製造されたスラグ材は、風砕されることによって、FeOが酸化されて2CaO・Feを生成させ、スラグ中のフリーライムを予め減少できる。また、製造されたスラグ材は、風砕により形成されたスラグ液滴同士が融着して凝固した塊状のスラグ材にされて回収される。このようにして回収された塊状のスラグ材は球形状ではないので、トラックの荷台上における動きは小さくなりトラックの安定走行を妨げない。そのため、当該スラグ材は、フレコン等のコンテナを用いることなく、通常のトラックを用いて輸送できる。
図1に示したスラグ材製造装置10と同じ装置を用いて、スラグ材の製造方法を実施した。なお、本発明例において、凝固台26は、ノズル20から6〜10m離れた位置に設けた。また、斜面28の角度は、30°または45°にした。さらに、斜面28に熱電対を5mごとに1つ以上設置するとともに、ノズル20側から斜面28のスラグ材の温度を非接触で測定するサーモグラフィーも設置した。
製鋼工場において発生した溶融状態の脱炭スラグをスラグ鍋12に装入し、樋14を通じて1t/minの流量でノズル20の前方に脱炭スラグを流出させた。ブロアー16を用いて脱炭スラグに90〜110m/sの風速で空気を吹き付けて、脱炭スラグをスラグ液滴にして吹き飛ばした。なお、本発明例および比較例で使用した脱炭スラグは、風砕される前において全スラグ量に対してフリーライムを1.3質量%含む。
吹き飛ばされたスラグ液滴は、斜面28に衝突して当該斜面28に融着した。斜面28に融着したスラグ液滴は、その後、冷却されて斜面28上で凝固した。さらに脱炭スラグの風砕を約15分継続して、斜面28上に厚さを80〜150mmの範囲内とした塊状のスラグ材を形成させた。その後、凝固台26の手前に落下したスラグおよび凝固台26を飛び越したスラグを取り除いた後、斜面28上に形成された塊状のスラグ材を回収した。スラグ材の回収割合は、スラグ鍋12から流出させて風砕した脱炭スラグ全量に対して約90質量%であった。なお、その他は、凝固台26の手前に落下したスラグが7質量%あり、凝固台26を越えて飛翔したスラグが3質量%あった。回収したスラグ材を破砕して、30mmまたは40mmの目開きの篩を用いて分級した。
温度測定は、熱電対またはサーモグラフィーを用いて行い、1秒に2回以上の頻度で測定した。熱電対を用いて、斜面28上のスラグ材の温度を測定する場合、それぞれの熱電対を用いて、斜面28上のスラグ材の温度を測定しスラグ材の最高温度が300℃以上となった熱電対の最高温度の平均値を算出した。なお、最高温度が300℃以下となった熱電対は、その位置のスラグ材の量が著しく少ないと判断し、当該温度を除外して最高温度の平均温度を算出した。また、サーモグラフィーを用いて、斜面28上のスラグ材の最高温度を測定する場合、スラグ液滴が斜面に衝突し始めてから衝突し終わるまでノズル側からスラグ材の最高温度を測定し、スラグ液滴が斜面に衝突し始めてから衝突し終わるまでの最高温度の平均値を算出した。
熱電対は、斜面28上のスラグ材の温度と、測定時に新たに衝突したスラグ液滴からの温度の両方の影響を受けた温度を測定するが、斜面28に衝突したスラグ液滴自体の温度は測定できない。一方、サーモグラフィーは、斜面28に衝突したスラグ液滴自体の温度を、スラグ液滴が斜面に衝突し始めてから衝突し終わるまで測定できる。吹き飛ばされたスラグ液滴を斜面に衝突させて、融着スラグを形成させる本実施形態に係るスラグ材の製造方法においては、スラグ液滴が斜面28に衝突している間、衝突したスラグ液滴自体の温度を測定できるサーモグラフィーを用いて、強度の高い融着スラグを形成できるか否かの判定することが好ましい。
熱電対は、斜面28に衝突し始めたときのスラグ液滴の温度を測定できるものの、スラグ材の厚みが厚くなるに従い、斜面28に衝突したスラグ液滴の温度を測定できなくなる。しかしながら、スラグ材の厚みが厚くなると、斜面28に堆積したスラグ自体も高温であり新たに衝突したスラグ液滴の冷却も緩やかになる。したがって、斜面28に衝突し始めたときのスラグ材の最高温度を測定し当該温度で融着スラグが形成されるか否かを判定すれば、その後のスラグ材はこれ以上の温度になると考えられるので、確実に融着スラグを形成できるといえる。熱電対を用いた判定方法は、熱電対で測定された最高温度の平均を算出するだけで融着スラグが形成できるか否かを判定できるので、より簡便な判定方法であるといえる。
表1に、各発明例の製造条件、製造されたスラグ材の温度、スラグ材のハンドリング、製造したスラグ路盤材の膨張率、路盤材の強度、強度判定、および、海域利用用スラグの歩留を示す。なお、表1において、「斜面」の列は凝固台26の有無を示す。また、「角度」の列は、斜面28の角度(°)を示し、「距離」の列は、ノズル20から凝固台26までの距離(m)を示す。また、「風速」の列は、ノズル20から吹き出される空気の風速を示し、「分級」の列は、スラグ破砕物を分級するのに用いた篩の目開き寸法(mm)を示す。
温度の「測定方法」の列は、温度測定に用いた機器を示す。「最高温度」の列は、熱電対を用いて測定されたスラグ材の最高温度を示す。「平均温度」の列は、サーモグラフィーを用いて測定されたスラグ材の最高温度の平均値を示す。
ハンドリングの「スラグ形状」の列は、一つのスラグ粒子が球形の場合は「球形状」とし、一つのスラグ粒子が複数の球が接着した場合や再融着により球形部分が全く確認できない場合を「非球形状」とした。「トラック輸送」の列は、重機を用いトラックの荷台に積み込んだ際、荷台の隙間からスラグ材のこぼれ落ちが著しい場合や、トラック走行中にスラグ材が荷台上で転がり動く場合を「×」とし、問題なくトラックの荷台に積み込め、トラック輸送できる場合を「○」とした。
また、品質の「路盤膨張」の列は、JIS A 5015附属書Bの水浸膨張試験に準拠して測定したスラグ材の膨張率を示す。「路盤材強度」の列は、JIS A 1211の修正CBR試験に準拠して測定したスラグ材の強度を示す。「強度判定」の列は、スラグ材の強度判定結果を示しており、修正CBR値が30〜50%を「○」、50%以上を「◎」、スラグ材を突き固める段階でスラグ材が数mm以下の粒度に粉砕され、修正CBR試験が実施できなかった場合を「×」とした。
本発明例1の製造条件は、斜面28の角度が30°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が10m、ブロアー16からの風速が95m/sである。本発明例1の条件で風砕され、熱電対で測定された斜面28に形成されたスラグ材の最高温度は732℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
本発明例1の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.05%と小さくなっていた。このことから風速95m/sの空気を吹き付けることによって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、フリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。斜面28上には部分的に半融着スラグを含む融着スラグが形成され、スラグ形状は非球形状となり、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できた。また、30mm以下のスラグ破砕物の路盤材強度は48%であり、路盤材として必要な強度を有していることが確認された。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたので、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は、65%と高くなった。
本発明例2の製造条件は、斜面28の角度が45°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が8m、ブロアー16からの風速が95m/sである。本発明例2の条件で風砕され、熱電対で測定された斜面28に形成されたスラグ材の最高温度は955℃であった。このスラグ材を破砕して目開き40mmの篩を用いて分級し、40mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、40mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
本発明例2の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.05%と小さくなっていた。このことから、本発明例2の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。斜面28上には融着スラグが形成され、スラグ形状は非球形状となり、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できた。また、40mm以下のスラグ破砕物の路盤材強度は57%であり、路盤材として十分な強度を有していることが確認された。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたので、40mm以上の海域利用用スラグの歩留は、58%と高くなった。
本発明例3の製造条件は、斜面28の角度が30°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が10m、ブロアー16からの風速が110m/sである。本発明例3の条件で風砕され、熱電対で測定された斜面28に形成されたスラグ材の最高温度は740℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
本発明例3の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.03%と小さくなっていた。このことから、本発明例3の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。斜面28上には部分的に半融着スラグを含む融着スラグが形成され、スラグ形状は非球形状となり、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できた。また、30mm以下のスラグ破砕物の路盤材強度は43%であり、路盤材として必要な強度を有していることが確認された。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたので、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は、53%と高くなった。
本発明例4の製造条件は、斜面28の角度が30°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が10m、ブロアー16からの風速が90m/sである。本発明例4の条件で風砕され、熱電対で測定された斜面28に形成されたスラグ材の最高温度は823℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
本発明例4の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.10%と小さくなっていた。このことから、本発明例4の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。斜面28上には融着スラグが形成され、スラグ形状は非球形状となり、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できた。また、30mm以下のスラグ破砕物の路盤材強度は62%であり、路盤材として十分な強度を有していることが確認された。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたので、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は、62%と高くなった。
本発明例5の製造条件は、斜面28の角度が30°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が10m、ブロアー16からの風速が95m/sである。サーモグラフィーで測定されたスラグ材の最高温度の平均値は1071℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
本発明例5の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.05%と小さくなっていた。このことから、本発明例5の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。斜面28上には融着スラグが形成され、スラグ形状は非球形状となり、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できた。また、30mm以下のスラグ破砕物の路盤材強度は52%であり、路盤材として十分な強度を有していることが確認された。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたので、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は、59%と高くなった。
本発明例6の製造条件は、斜面28の角度が45°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が6m、ブロアー16からの風速が90m/sである。サーモグラフィーで測定されたスラグ材の最高温度の平均値は1272℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
本発明例6の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.10%と小さくなっていた。このことから、本発明例6の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。斜面28上には融着スラグが形成され、スラグ形状は非球形状となり、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できた。また、30mm以下のスラグ破砕物の路盤材強度は68%であり、路盤材として十分な強度を有していることが確認された。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたので、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は、51%と高くなった。
本発明例7の製造条件は、斜面28の角度が45°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が8m、ブロアー16からの風速が95m/sである。サーモグラフィーで測定されたスラグ材の最高温度の平均値は1134℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
本発明例7の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.08%と小さくなっていた。このことから、本発明例7の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。斜面28上には融着スラグが形成され、スラグ形状は非球形状となり、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できた。また、30mm以下のスラグ破砕物の路盤材強度は64%であり、路盤材として十分な強度を有していることが確認された。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたので、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は、62%と高くなった。
このように、本実施形態に係るスラグ材の製造方法を用いることで、本発明例1から本発明例7に示すように、斜面28上に強度の高い融着スラグを形成させることができ、これにより、路盤材として求められる強度を満足するスラグ材を製造できることがわかる。また、当該スラグ材は風砕されることによって、予めフリーライムが減少されているので、水和反応による路盤膨張を抑制できる。さらに、当該スラグ材は、球形状ではなく塊状であるので、トラックの荷台上での動きは小さくなり、フレコン等のコンテナを使用しなくてもトラックの安定走行を妨げることがない。このように、本実施形態に係るスラグ材の製造方法で製造されたスラグ材は、路盤材として求められる強度を満足し、路盤膨張を抑制でき、フレコン等のコンテナを用いることなく、通常のトラックを用いて輸送できるものになる。
発明例8の製造条件は、斜面28の角度が30°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が10m、ブロアー16からの風速が95m/sである。参考例2の条件で風砕され、斜面28に形成されたスラグ材の最高温度は531℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
発明例8の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.04%と小さくなっていた。このことから、発明例8の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。また、斜面28に形成されたスラグ材の最高温度が531℃と低かったので、斜面28上では強度の高い融着スラグは形成されず、強度の弱い半融着スラグが形成された。半融着スラグは非球形状であるので、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できたが、修正CBR試験を実施しようとした所、突き固める段階でスラグ材が数mm以下の粒度になり修正CBR試験が実施できなかった。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたが、強度の弱い半融着スラグしか形成されなかったので、破砕後、多くのスラグ破砕物の粒径が30mm以下になり、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は13%と低かった。
発明例9の製造条件は、斜面28の角度が45°であって、ノズル20から凝固台26までの距離が10m、ブロアー16からの風速が95m/sである。サーモグラフィーで測定されたスラグ材の最高温度の平均値は914℃であった。このスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
発明例9の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.03%と小さくなっていた。このことから、発明例9の条件においても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。また、サーモグラフィーで測定されたスラグ材の最高温度の平均値が914℃と低かったので、斜面28上では強度の高い融着スラグは形成されず、半融着スラグが形成された。半融着スラグは非球形状であるので、問題なくトラック荷台へ積み込んで輸送できたが、修正CBR試験を実施しようとした所、突き固める段階でスラグが数mm以下の粒度になり修正CBR試験が実施できなかった。さらに、スラグ材の厚さが80〜150mmになるまで凝固させたが、強度の弱い半融着スラグしか形成されなかったので、破砕後、多くのスラグ破砕物の粒径が30mm以下になり、30mm以上の海域利用用スラグの歩留は8%と低かった。
このように、本実施形態に係るスラグ材の製造方法を用いることで、本発明例8、本発明例9に示すように、斜面28上に非球形状の半融着スラグを形成させることができ、これにより、トラック荷台へ積み込んで、フレコン等のコンテナを用いることなくトラックで輸送できるスラグ材を製造できることがわかる。しかしながら、斜面28上のスラグ材の温度が低くなると、スラグ同士が融着した強度の高い融着スラグが形成されず、強度の弱い半融着スラグが形成される。このような半融着スラグは、路盤材として必要な強度を満足しない。このため、熱電対で測定された斜面28に形成されたスラグ材の最高温度を700℃以上にする、または、サーモグラフィーで測定されたスラグ材の最高温度の平均値を1050℃以上にして、斜面28上に強度の高い融着スラグを形成させることが好ましいことがわかる。
一方、比較例1の製造条件は、凝固台26を設けておらず、ブロアー16からの風速が95m/sである。製造されたスラグ材のうち塊状となったスラグ材を破砕して目開き30mmの篩を用いて分級し、30mmより大きい粒径のスラグ破砕物を海域利用用スラグとし、30mm以下のスラグ破砕物をスラグ路盤材とした。
比較例1の条件で製造されたスラグ路盤材の膨張率は、0.05%と小さくなっていた。このことから、比較例1の条件であっても風砕によって形成されたスラグ液滴径は小さくなっており、空気中でFeOが酸化され、スラグ中に含まれるフリーライムのほとんどが2CaO・Feになったと考えられる。一方、凝固台26が設けられていないので、スラグ液滴は10m以上吹き飛ばされ、スラグ同士で融着して塊状のスラグ材となったスラグは少なく、そのほとんどが球形状になった。このため、重機を用いトラックの荷台に積み込んだ際、荷台の隙間からスラグ材のこぼれ落ちが著しく、トラック走行中にスラグ材が荷台上で転がり動き、フレコン等に入れなくては通常のトラックを用いて輸送できなかった。さらに、スラグ同士で融着して凝固した塊状のスラグ材の量が少なかったので、海域利用用スラグの歩留は10%と低かった。また、修正CBR試験を実施しようとしたが、ほとんどが球形状のスラグ粒子であったので修正CBR試験が実施できなかった。
10 スラグ材製造装置
12 スラグ鍋
14 樋
16 ブロアー
18 ブロアー本体
20 ノズル
22 矢印
24 製鋼スラグ
26 凝固台
28 斜面
30 スラグ材
40 スラグ材製造試験装置
42 熱電対
50 ベースプレート
52 鉄板
70 スラグ材
72 スラグ材
74 スラグ材
76 スラグ材
78 スラグ材
80 スラグ材

Claims (6)

  1. 溶融状態の製鋼スラグにノズルから空気を吹き付けることによって、前記製鋼スラグをスラグ液滴にして吹き飛ばし、前記ノズルから離れるに従って高くなるように傾斜した斜面に前記スラグ液滴を衝突させて塊状のスラグ材とした後、前記塊状のスラグ材を破砕するスラグ材の製造方法。
  2. 前記斜面に設けられた熱電対によって測定される前記塊状のスラグ材の最高温度が700℃以上になるように、前記スラグ液滴を前記斜面に衝突させる請求項1に記載のスラグ材の製造方法。
  3. サーモグラフィーを用いて、前記スラグ液滴が前記斜面に衝突し始めてから衝突し終わるまで前記塊状のスラグ材の最高温度を前記ノズルが設けてある側から測定し、前記スラグ液滴が前記斜面に衝突し始めてから衝突し終わるまでの前記最高温度の平均値が1050℃以上になるように、前記スラグ液滴を前記斜面に衝突させる請求項1に記載のスラグ材の製造方法。
  4. 前記塊状のスラグ材を破砕した後に篩分けし、篩下をスラグ路盤材にする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスラグ材の製造方法。
  5. 前記塊状のスラグ材を破砕した後に篩分けし、篩上を海域利用用スラグにする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスラグ材の製造方法。
  6. 前記塊状のスラグ材の厚さは、80〜150mmである請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスラグ材の製造方法。
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