JP2017078153A - オレフィン系樹脂微多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 - Google Patents

オレフィン系樹脂微多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 Download PDF

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友季 金岡
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Abstract

【課題】 本発明は、圧力に対して耐性のある耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供する。【解決手段】本発明の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を有するオレフィン系樹脂微多孔フィルムを含み、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率が5%以下であり、空隙率が40〜60%であり、25〜180℃まで昇温速度5℃/分で加熱したときの最大熱収縮率が25%以下であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、オレフィン系樹脂微多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池に関する。
従来から携帯用電子機器の電源としてリチウムイオン二次電池が用いられている。このリチウムイオン二次電池は、一般的に正極と、負極と、セパレータとを電解液中に配設することによって構成されている。正極は、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムが塗布されてなる。負極は、銅箔の表面にカーボンが塗布されてなる。そして、セパレータは、正極と負極とを仕切るように配設され、正極と負極との短絡を防止している。
リチウムイオン二次電池の充電時には、正極からリチウムイオンが放出されて負極内に進入する。一方、リチウムイオン二次電池の放電時には、負極からリチウムイオンが放出されて正極に移動する。このような充放電がリチウムイオン二次電池では繰り返される。従って、リチウムイオン二次電池に用いられているセパレータには、リチウムイオンが良好に透過できることが必要とされる。
リチウムイオン二次電池のセパレータとしては、オレフィン系樹脂微多孔フィルムが用いられている(例えば、特許文献1)。
セパレータが電池内に組み込まれた時、セパレータには高い圧力がかかる。特に円筒型電池や角型電池では20MPa程度の圧力がかかる。さらに、充放電の繰り返しにより、電極は膨張収縮を行うため、電極が膨張した際にはさらに高い圧力が加わることが想定される。
国際公開第2006/106783号
しかしながら、従来のオレフィン系樹脂微多孔フィルムでは、圧力に耐えることができず、微多孔が変形するという問題点を有する。オレフィン系樹脂微多孔フィルムの孔径が変形すると、セパレータ内部に保持される電解液量が減少し、充放電中に液枯れが生じ、電池の寿命が短くなるという問題点を生じる。
また、オレフィン系樹脂微多孔フィルムが電池内の圧力に耐えられず厚みが薄くなると、充放電中に発生した針状結晶のリチウムデンドライトによりオレフィン系樹脂微多孔フィルムが破れ、正極と負極とが短絡する恐れがある。更に、異物が含まれていた際、オレフィン系樹脂微多孔フィルムが薄くなることで、異物に起因した短絡のリスクが高くなる。
本発明は、圧力に対して耐性のあるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供する。さらに、本発明は、上記オレフィン系樹脂微多孔フィルムを用いた非水電解二次電池用セパレータ及び非水電解二次電池を提供する。
本発明の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を有するオレフィン系樹脂微多孔フィルムを含み、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率が5%以下であり、空隙率が40〜60%であり、25〜180℃まで昇温速度5℃/分で加熱したときの最大熱収縮率が25%以下であることを特徴とする。
本発明において、オレフィン系樹脂微多孔フィルム及び耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの物性は、厚み方向に圧力を加えていることが明記されていない限り、オレフィン系樹脂微多孔フィルム及び耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムに厚み方向に圧力を加えていない状態における、オレフィン系樹脂微多孔フィルム及び耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの物性をいう。
本発明によれば、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。このオレフィン系樹脂微多孔フィルムによれば、充放電を繰り返しても電解液を十分に保持することができ、液枯れに起因した放電容量の低下が抑制され且つ優れた機械的強度を維持し、デンドライト及び異物による短絡が防止されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明によれば、耐熱性に優れたオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。このオレフィン系樹脂微多孔フィルムによれば、電池内が高温になった場合にあっても、収縮による変形度合いが少なく、正極と負極との短絡を効果的に防止することができる。
本発明の方法における押出工程及び冷却工程に用いられる製造装置の一例を示した模式側面図である。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムは微小孔部を有する。オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を有するオレフィン系樹脂延伸フィルムを含むことが好ましい。オレフィン系樹脂延伸フィルムは、オレフィン系樹脂フィルムを延伸することによって微小孔部が形成されてなる延伸フィルムである。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムはオレフィン系樹脂を含んでいる。オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。オレフィン系樹脂微多孔フィルムが後述する延伸法によって製造される場合には、ホモポリプロピレンが好ましい。プロピレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられ、エチレンが好ましい。
オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3万〜50万が好ましく、5万〜48万がより好ましい。プロピレン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、25万〜50万が好ましく、28万〜48万がより好ましい。エチレン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3万〜25万が好ましく、5万〜20万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、成膜安定性に優れていると共に、微小孔部が均一に形成され、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
オレフィン系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、特に限定されないが、5〜30が好ましく、7.5〜25がより好ましい。プロピレン系樹脂の分子量分布は、特に限定されないが、7.5〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。エチレン系樹脂の分子量分布は、特に限定されないが、5.0〜30が好ましく、8.0〜25がより好ましい。分子量分布が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、高い表面開口率を有し、イオン透過性に優れていると共に、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
ここで、オレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、オレフィン系樹脂6〜7mgを採取し、採取したオレフィン系樹脂を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてオレフィン系樹脂濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転数25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてオレフィン系樹脂をo−DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってオレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量を測定することができる。
オレフィン系樹脂における重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
オレフィン系樹脂の融点は、特に限定されないが、130〜170℃が好ましく、133〜165℃がより好ましい。プロピレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、160〜170℃が好ましく、160〜165℃がより好ましい。エチレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、130〜140℃が好ましく、133〜139℃がより好ましい。融点が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、成膜安定性に優れていると共に、高温下においても、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少が低減されたオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル社 装置名「DSC220C」など)を用い、下記手順に従って測定することができる。先ず、オレフィン系樹脂10mgを25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで加熱し、250℃にて3分間に亘って保持する。次に、オレフィン系樹脂を250℃から降温速度10℃/分にて25℃まで冷却して25℃にて3分間に亘って保持する。続いて、オレフィン系樹脂を25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで再加熱し、この再加熱工程における吸熱ピークの頂点の温度を、オレフィン系樹脂の融点とする。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、オレフィン系樹脂フィルムを延伸(好ましくは一軸延伸)することによって形成された微小孔部を含んでいる。この微小孔部はフィルム厚み方向に貫通している。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムの空隙率は、40〜60%が好ましく、45〜55%がより好ましい。空隙率を40%以上とすることにより、オレフィン系樹脂微多孔フィルムがその微小孔部内部に多量の電解液を保持することが可能となり、これによりリチウムイオン二次電池の充放電に伴ってオレフィン系樹脂微多孔フィルム中に電解液が不足する部分が発生することを低減することができる。オレフィン系樹脂微多孔フィルムの空隙率を60%以下とすることにより、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
なお、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの空隙率は下記の要領で測定することができる。先ず、オレフィン系樹脂微多孔フィルムを切断することにより縦10cm×横10cmの正方形状(面積100cm2)の試験片を得る。次に、試験片の重量W(g)及び厚みT(cm)を測定し、下記式(I)により見掛け密度ρ(g/cm3)を算出する。なお、試験片の厚みは、ダイヤルゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ製 シグナルABSデジマチックインジケータ)を用いて、試験片の厚みを15箇所測定し、その相加平均値とする。また、試験片の重量は、天秤(例えば、メトラートレド社製 製品名「AB204−S」)などを用いて測定することができる。そして、この見掛け密度ρ(g/cm3)及びオレフィン系樹脂自体の密度ρ0(g/cm3)を用いて下記式(II)に基づいてオレフィン系樹脂微多孔フィルムの空隙率P(%)を算出することができる。
見掛け密度ρ(g/cm3)=W/(100×T) (I)
空隙率P[%]=100×[(ρ0−ρ)/ρ0] (II)
オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の開口端の平均長径は、100nm〜500nmが好ましく、200nm〜500nmがより好ましく、250〜350nmが特に好ましい。開口端の平均長径が上記範囲内である微小孔部によれば、毛細管現象によって電解液をオレフィン系樹脂微多孔フィルム内に十分に取り込むことができると共に、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の開口端の最大長径は、100nm〜1μmが好ましく、100nm〜800nmがより好ましく、500〜800nmが特に好ましい。開口端の最大長径が上記範囲内である微小孔部によれば、毛細管現象によって電解液をオレフィン系樹脂微多孔フィルム内に十分に取り込むことができると共に、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
なお、オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の開口端の最大長径及び平均長径は次のようにして測定される。先ず、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面をカーボンコーティングする。次に、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面における任意の10個所を走査型電子顕微鏡を用いて倍率1万にて撮影する。なお、撮影範囲は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面において縦9.6μm×横12.8μmの平面長方形の範囲とする。
得られた写真に現れている各微小孔部の開口端の長径を測定する。なお、微小孔部の開口端の長径とは、この微小孔部の開口端を包囲し得る最小径の真円の直径とする。撮影範囲と、撮影範囲でない部分とに跨がって存在している微小孔部については、測定対象から除外する。そして、写真に現れている微小孔部における開口端の長径のうち最大の長径を、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの微小孔部の開口端の最大長径とする。写真に現れている各微小孔部における開口端の長径の相加平均値を、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの微小孔部の開口端の平均長径とする。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面開口率は、25〜55%が好ましく、30〜50%がより好ましい。表面開口率を25%以上とすることにより、毛細管現象によって電解液をオレフィン系樹脂微多孔フィルム内に十分に取り込むことができる。表面開口率を55%以下とすることにより、過剰な微小孔部の形成によるオレフィン系樹脂微多孔フィルムの機械的強度の低下を抑制することができ、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
なお、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面開口率は下記の要領で測定することができる。先ず、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面の任意の部分において、縦9.6μm×横12.8μmの平面長方形状の測定部分を定め、この測定部分を倍率1万倍にて写真撮影する。
次いで、測定部分内に形成された各微小孔部を、長辺と短辺の何れか一方が延伸方向に平行となる長方形で囲む。この長方形は、長辺及び短辺が共に最小寸法となるように調整する。上記長方形の面積を各微小孔部の開口面積とする。各微小孔部の開口面積を合計して微小孔部の総開口面積S(μm2)を算出する。この微小孔部の総開口面積S(μm2)を122.88μm2(9.6μm×12.8μm)で除して100を乗じた値を表面開口率(%)とする。なお、測定部分と、測定部分でない部分とに跨がって存在している微小孔部については、微小孔部のうち、測定部分内に存在している部分のみを測定対象とする。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムの孔密度は、15個/μm2以上が好ましく、16個/μm2以上がより好ましく、17個/μm2以上が特に好ましい。孔密度を15個/μm2以上とすることにより、電解液を均一に吸収することができ、圧力が加わった場合にあっても、部分的な液枯れを防止することができるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの孔密度は、下記の要領で測定する。先ず、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面の任意の部分において、縦9.6μm×横12.8μmの平面長方形状の測定部分を定め、この測定部分を倍率1万倍にて写真撮影する。そして、測定部分において微小孔部の個数を測定し、この個数を122.88μm2(9.6μm×12.8μm)で除すことによって孔密度を算出することができる。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムの厚みは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの厚みの測定は、次の要領に従って行うことができる。すなわち、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの任意の10箇所をダイヤルゲージを用いて測定し、その相加平均値をオレフィン系樹脂微多孔フィルムの厚みとする。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムの透気度は、50〜600sec/100mLが好ましく、70〜300sec/100mLがより好ましく、100〜150sec/100mLが特に好ましい。透気度が上記範囲内であるオレフィン系樹脂微多孔フィルムは、厚み方向に貫通している微小孔部が多く形成されており、このような微小孔部は多量の電解液を吸い取って内部まで保持することができ、圧力が加わった場合にあっても、電解液の液枯れを防止することができる。
なお、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの透気度は、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下でJIS P8117に準拠して測定された値とする。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部には皮膜層が形成されていることが好ましい。この皮膜層は、重合性化合物の重合体を含んでいることが好ましく、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有する重合性化合物の重合体を含んでいることがより好ましい。
このような重合体を含んでいる皮膜層は、高い硬度を有していると共に、適度な弾性及び伸度を有している。したがって、上記重合体を含んでいる皮膜層を用いることによって、耐熱性に優れていると共に、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させた耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
皮膜層は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されていればよいが、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面全面に形成されていることが好ましく、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面、及びオレフィン系樹脂微多孔フィルム表面から連続する微小孔部の壁面にも形成されていることがより好ましい。
また、重合性化合物を用いることにより、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの微小孔部を閉塞しないように、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に皮膜層を形成することができる。これによって、優れた透気性及びイオン透過性が確保されている耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
重合性化合物は、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有していることが好ましい。ラジカル重合性官能基は、活性エネルギー線の照射によってラジカル重合可能なラジカル重合性不飽和結合を含んでいる官能基である。ラジカル重合性官能基としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基やビニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物としては、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有する多官能性アクリル系モノマー、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有するビニル系オリゴマー、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能性(メタ)アクリレート変性物、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する樹枝状ポリマー、及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
多官能性アクリル系モノマーは、ラジカル重合性官能基を1分子中に2個以上有していればよいが、ラジカル重合性官能基を1分子中に3個以上有している3官能以上の多官能性アクリル系モノマーが好ましく、ラジカル重合性官能基を1分子中に3〜6個有している3官能〜6官能の多官能性アクリル系モノマーがより好ましい。
多官能性アクリル系モノマーとしては、
1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の2官能の多官能性アクリル系モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能性アクリル系モノマー;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の多官能性アクリル系モノマー;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の多官能性アクリル系モノマー;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の多官能性アクリル系モノマー;
等を例示することができる。
ビニル系オリゴマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリブタジエン系オリゴマー等を例示することができる。なお、ポリブタジエン系オリゴマーとは、ブタジエン骨格を有するオリゴマーを意味する。ポリブタジエン系オリゴマーは、単量体成分として、ブタジエン成分を含む重合体が挙げられる。ポリブタジエン系オリゴマーの単量体成分としては、1,2−ブタジエン成分、及び1,3−ブタジエン成分が挙げられる。なかでも、1,2−ブタジエン成分が好ましい。
ビニル系オリゴマーとしては、主鎖の両末端に水素原子を有するものであってもよく、また、末端の水素原子が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ヒロドキシエチル基などのヒドロキシアルキル基によって置換されたものであっても構わない。また、ビニル系オリゴマーとしては、分子鎖の側鎖又は末端に、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基などラジカル重合性官能基を有するものであっても構わない。
ポリブタジエン系オリゴマーとしては、
ポリ(1,2−ブタジエン)オリゴマー、ポリ(1,3−ブタジエン)オリゴマー等のポリブタジエンオリゴマー;
ブタジエン骨格に含まれる炭素−炭素二重結合の少なくとも一部がエポキシ化されることによって、分子内にエポキシ基が導入されたエポキシ化ポリブタジエンオリゴマー;
ブタジエン骨格を有し、且つ主鎖の側鎖又は末端に(メタ)アクリロイル基を有しているポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー;
等を例示することができる。
ポリブタジエン系オリゴマーは市販されている製品を用いることができる。ポリ(1,2−ブタジエン)オリゴマーとしては、日本曹達社製 商品名「B−1000」、「B−2000」及び「B−3000」等を例示することができる。主鎖の両末端にヒドロキシ基を有するポリブタジエンオリゴマーとしては、日本曹達社製 商品名「G−1000」、「G−2000」及び「G−3000」等を例示することができる。エポキシ化ポリブタジエンオリゴマーとしては、日本曹達社製 商品名「JP−100」及び「JP−200」等を例示することができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、日本曹達社製 商品名「TE−2000」、「EA−3000」及び「EMA−3000」等を例示することができる。
多官能性(メタ)アクリレート変性物は、ラジカル重合性官能基を1分子中に2個以上有していればよいが、ラジカル重合性官能基を1分子中に3個以上有している3官能以上の多官能性(メタ)アクリレート変性物が好ましく、ラジカル重合性官能基を1分子中に3〜6個有している3官能〜6官能の多官能性(メタ)アクリレート変性物がより好ましい。
多官能性(メタ)アクリレート変性物としては、多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、及び多官能性(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物が好ましく挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物は、好ましくは、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。また、多官能性(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物は、好ましくは、多価アルコールとカプロラクトンとの付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。
アルキレンオキサイド変性物及びカプロラクトン変性物における多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸などが挙げられる。
アルキレンオキサイド変性物におけるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、イソプロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドなどが挙げられる。
カプロラクトン変性物におけるカプロラクトンとしては、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、及びγ−カプロラクトンなどが挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物において、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、ラジカル重合性官能基当たり、1モル以上であればよい。アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、ラジカル重合性官能基当たり、1モル以上で且つ4モル以下が好ましく、1モル以上で且つ3モル以下がより好ましい。
3官能の多官能性(メタ)アクリレート変性物としては、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物などのトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物;
グリセリルトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、グリセリルトリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、グリセリルトリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、グリセリルトリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びグリセリルトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物などのグリセリルトリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、並びにグリセリルトリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物などのペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、並びにペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物;並びに、
トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのエチレンオキサイド変性物、トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのプロピレンオキサイド変性物、トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのイソプロピレンオキサイド変性物、トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのブチレンオキサイド変性物、及びトリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物などのトリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのアルキレンオキサイド変性物、並びにトリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性物、などが挙げられる。
4官能の多官能性(メタ)アクリレート変性物として、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物などのペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、並びにペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物;並びに
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物などのジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、並びにジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、などが挙げられる。
5官能以上の多官能性(メタ)アクリレート変性物として、具体的には、
ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのブチレンオキサイド変性物、及びジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性物などのジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、並びにジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、などが挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレート変性物として、市販されている商品を用いることもできる。
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物としては、サートマー社製の商品名「SR454」、「SR499」及び「SR502」、大阪有機化学社製の商品名「ビスコート#360」、並びにMiwon社製の商品名「Miramer M3130」、「Miramer M3160」及び「Miramer M3190」などが挙げられる。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物としては、サートマー社製の商品名「SR492」及び「CD501」、並びにMiwon社製の商品名「Miramer M360」などが挙げられる。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物としては、日本化薬社製の商品名「TPA−330」などが挙げられる。
グリセリルトリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物としては、新中村化学社製の商品名「A−GYL−3E」及び「A−GYL−9E」などが挙げられる。グリセリルトリ(メタ)アクリレートのプロピレンオキサイド変性物としては、サートマー社製の商品名「SR9020」及び「CD9021」などが挙げられる。グリセリルトリ(メタ)アクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物としては、日本化薬社製の商品名「GPO−303」などが挙げられる。
トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性物としては、新中村化学社製の商品名「A−9300−1CL」、「A−9300−3CL」などが挙げられる。
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物としては、Miwon社製の商品名「Miramer M4004」などが挙げられる。ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物としては、新中村化学社製の商品名「AD−TMP−4E」などが挙げられる。
ジペンタエリスリトールポリアクリレートのエチレンオキサイド変性物としては、新中村化学社製の商品名「A−DPH−12E」などが挙げられる。ジペンタエリスリトールポリアクリレートのイソプロピレンオキサイド変性物としては、新中村化学社製の商品名「A−DPH−6P」などが挙げられる。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーとは、(メタ)アクリロイル基を配置した枝分子を放射状に組み立てた球状の巨大分子を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーとしては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するデンドリマー、及び1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチポリマーが挙げられる。
デンドリマーとは、(メタ)アクリレートを枝分子とし、(メタ)アクリレートを球状に集積することによって得られる球状高分子を意味する。
デンドリマーは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有していればよいが、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有している3官能以上のデンドリマーが好ましく、1分子中に5〜20個の(メタ)アクリロイル基を有している多官能デンドリマーがより好ましい。
デンドリマーの重量平均分子量は、1000〜50000が好ましく、1500〜25000がより好ましい。デンドリマーの重量平均分子量を上記範囲内とすることによって、デンドリマー分子内の結合密度とデンドリマー分子同士の結合密度とが「密」と「粗」となり、これにより高い硬度を有していると共に、適度な弾性及び伸度を有している皮膜層を形成することができる。
なお、デンドリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンにより換算された値とする。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーとして、市販されている商品を用いることもできる。1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するデンドリマーとして、サートマー社製の商品名「CN2302」、「CN2303」及び「CN2304」、大阪有機化学社製の商品名「V1000」、「SUBARU−501」、及び「SIRIUS−501」、並びに新中村化学社製の商品名「A−HBR−5」などが挙げられる。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチポリマーとは、ABx型の多官能性モノマー(ここでAとBは互いに反応する官能基、Bの数Xは2以上)を重合させて得られる不規則な分岐構造を有する高分岐構造体の表面および内部を(メタ)アクロイル基によって修飾することによって得られる球状高分子を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。
ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物とを反応させることにより得られる。
ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、例えば、(1)ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを更に反応させて得られるウレタンアクリレート、及び(2)ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる末端ヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマーに、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを更に反応させて得られるウレタンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられる。
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
ポリオール化合物としては、例えば、アルキレン型、ポリカーボネート型、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、及びポリエーテルジオールなどが挙げられる。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、市販されている商品を用いることもできる。例えば、新中村化学社製の商品名「UA−122P」、共栄社化学社製の商品名「UF−8001G」、サートマー社製の商品名「CN977」、「CN999」、「CN963」、「CN985」、「CN970」、「CN133」、「CN975」及び「CN997」、ダイセルオルネクス社製の商品名「IRR214−K」、並びに日本化薬社製の商品名「UX−5000」、「UX−5102D−M20」、「UX−5005」、及び「DPHA−40H」などが挙げられる。また、重合性化合物として、サートマー社製 商品名「CN113」などの脂肪族特殊オリゴマーを用いることもできる。
本発明においては、上記した重合性化合物のうち、多官能性アクリル系モノマーが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。これらによれば、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムに機械的強度を低下させることなく、優れた耐熱性を付与することができる。
重合性化合物として多官能性アクリル系モノマーを用いる場合、重合性化合物中における多官能性アクリル系モノマーの含有量は、30質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。多官能性アクリル系モノマーを30質量%以上含んでいる重合性化合物を用いることにより、得られる耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムに、透気性を低下させることなく優れた耐熱性を付与することができる。
なお、本発明においては、重合性化合物としては、上記した重合性化合物のうちの一種のみを用いてもよく、二種以上の重合性化合物を併用しても構わない。
皮膜層は、上述した重合性化合物の重合体を含んでいることが好ましい。この重合体は、活性エネルギー線の照射によって重合性化合物が重合されてなる重合体であることが好ましい。即ち、上記重合体は、活性エネルギー線の照射による重合性化合物の重合体であることが好ましい。このような重合体を含んでいる皮膜層は高い硬度を有しており、これにより高温下における耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの熱収縮を低減して、耐熱性を向上させることができる。
活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば、電子線、プラズマ、紫外線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。なかでも、電子線及び紫外線が好ましい。
皮膜層中の重合体の一部とオレフィン系樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂との一部とが化学的に結合していることが好ましい。このような重合体を含んでいる皮膜層を用いることによって、上述した通り、高温下における熱収縮が低減され、優れた耐熱性を有する耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。化学的な結合としては、特に制限されず、共有結合、イオン結合、及び分子間結合などが挙げられる。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルム中における皮膜層の含有量は、オレフィン系樹脂微多孔フィルム100質量部に対して、5〜80質量部が好ましく、5〜60質量部がより好ましく、10〜40質量部が特に好ましい。皮膜層の含有量を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面の微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができる。これにより、透気性を低下させることなく耐熱性が向上されている耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
皮膜層の厚みは、特に制限されないが、1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。皮膜層の厚みを上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができる。これにより、透気性を低下させることなく耐熱性が向上されている耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
皮膜層は、無機粒子を含んでいなくても、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの耐熱性を向上させることができる。したがって、皮膜層は、無機粒子を含んでいないことが好ましい。しかしながら、必要に応じて、皮膜層は無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、耐熱性多孔質層に一般的に用いられている無機粒子が挙げられる。無機粒子を構成する材料としては、例えば、Al23、SiO2、TiO2、及びMgOなどが挙げられる。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率は、5%以下であり、4%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。厚み変化率が5%以下であると、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有する。したがって、厚み方向に高い圧力が加わっても、電解液を十分に保持することができると共に、デンドライト及び異物による正極と負極の短絡を効果的に防止することができる。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率は、下記の要領で測定される。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムから平面正方形状(一辺:6cm)の試験片を切り出す。試験片に厚み方向に圧力を加えていない状態で試験片の任意の位置10箇所においてダイヤルゲージを用いて厚みを測定し、それらの厚みの相加平均値を初期厚みT0とする。次に、試験片の両面に、平面正方形状(一辺:6cm)のステンレス板を重ね合わせた後、それぞれのステンレス板上に、平面正方形状(一辺:6cm)のゴム板を重ね合わせて積層体を作製する。一対のプレス板を用いて積層体をその厚み方向に挟み、試験片にその厚み方向に35MPaの圧力を2分間加える。次に、試験片に加えている35MPaの圧力を除去する。圧力を除去した直後の試験片の任意の位置10箇所においてダイヤルゲージを用いて厚みを測定し、それらの厚みの相加平均値を圧縮厚みT1とする。下記式に基づいて、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率を算出する。
厚み変化率(%)=100×│T0−T1│/T0
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを25℃から180℃まで5℃/分の昇温速度にて加熱した際の、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの最大熱収縮率は、25%以下であるが、5〜25%が好ましく、8〜23%がより好ましい。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、皮膜層によって高温下における熱収縮が低減されており、優れた耐熱性を有している。
なお、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの最大熱収縮率の測定は、次の通りに行うことができる。先ず、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを切断することにより、平面長方形状の試験片(幅3mm×長さ30mm)を得る。この時、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの長さ方向(押出方向)と試験片の長さ方向とを平行にする。試験片の長さ方向の両端部をつかみ具により把持して、TMA測定装置(例えば、セイコーインスツル社製 商品名「TMA−SS6000」など)に取り付ける。この時、つかみ具間の距離を10mmとし、つかみ具は試験片の熱収縮に伴って移動可能とする。そして、試験片に長さ方向に19.6mN(2gf)の張力を加えた状態で、試験片を25℃から180℃まで5℃/分の昇温速度にて加熱し、各温度においてつかみ具間の距離L(mm)を測定し、下記式に基づいて熱収縮率を算出し、その最大値を最大熱収縮率とする。
熱収縮率(%)=100×(10−L)/10
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの空隙率は、40〜60%であるが、45〜55%が好ましい。空隙率を40%以上とすることにより、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムがその微小孔部内部に多量の電解液を保持することが可能となり、これによりリチウムイオン二次電池の充放電に伴ってオレフィン系樹脂微多孔フィルム中に電解液が不足する部分が発生することを低減することができる。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの空隙率を60%以下とすることにより、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
なお、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの空隙率は、下記の要領で測定される。空隙率の測定はピクノメーターを用いて測定した。先ず、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを切断することにより、平面長方形状の試験片(幅16cm×長さ20cm)を8枚作製する。各試験片の厚み及び重量を測定する。試験片をマイクロセルに入れ、このマイクロセルをピクノメーターのサンプルチャンバーにセットして試験片の空隙率を測定した。なお、測定環境温度は25℃±1℃に調整した。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の開口端の平均長径は、100nm〜500nmが好ましく、200nm〜500nmがより好ましく、250〜350nmが特に好ましい。開口端の平均長径が上記範囲内である微小孔部によれば、毛細管現象によって電解液を耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルム内に十分に取り込むことができると共に、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させた耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の開口端の最大長径は、100nm〜1μmが好ましく、100nm〜800nmがより好ましく、500〜800nmが特に好ましい。開口端の最大長径が上記範囲内である微小孔部によれば、毛細管現象によって電解液を耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルム内に十分に取り込むことができると共に、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させたオレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
なお、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の開口端の最大長径及び平均長径は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の開口端の最大長径及び平均長径の測定方法と同様の要領で測定される。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面開口率は、25〜55%が好ましく、30〜50%がより好ましい。表面開口率を25%以上とすることにより、毛細管現象によって電解液を耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルム内に十分に取り込むことができる。表面開口率を55%以下とすることにより、過剰な微小孔部の形成による耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの機械的強度の低下を抑制することができ、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させた耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムとすることができる。
なお、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面開口率は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面開口率の測定方法と同様の要領で測定される。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの孔密度は、15個/μm2以上が好ましく、16個/μm2以上がより好ましく、17個/μm2以上が特に好ましい。孔密度を15個/μm2以上とすることにより、電解液を均一に吸収することができ、圧力が加わった場合にあっても、部分的な液枯れを防止することができる耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの孔密度は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの孔密度の測定方法と同様の要領で測定される。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの厚みは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
なお、本発明において、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの厚みの測定は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの厚みの測定方法と同様の要領で測定される。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの透気度は、50〜600sec/100mLが好ましく、70〜300sec/100mLがより好ましく、100〜150sec/100mLが特に好ましい。透気度が上記範囲内である耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、厚み方向に貫通している微小孔部が多く形成されており、このような微小孔部は多量の電解液を吸い取って内部まで保持することができ、圧力が加わった場合にあっても、電解液の液枯れを防止することができる。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおいて、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの透気度の変化率は、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。透気度の変化率が10%以下であると、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有する。したがって、厚み方向に高い圧力が加わっても、電解液を十分に保持することができると共に、デンドライト及び異物による正極と負極の短絡を効果的に防止することができる。
なお、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの透気度は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの透気度の測定方法と同様の要領で測定される。
また、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおいて、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの透気度の変化率は、下記の要領で測定される。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムから平面正方形状(一辺:6cm)の試験片を切り出す。試験片に厚み方向に圧力を加えていない状態において、試験片の透気度を温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下でJIS P8117に準拠して測定する。測定された透気度を初期透気度P0とする。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率を測定するときと同様の要領で、試験片にその厚み方向に35MPaの圧力を2分間加える。次に、試験片に加えている35MPaの圧力を除去し、圧力を除去した直後の試験片の透気度を上記と同様の要領で測定する。測定された透気度を圧縮透気度P1とする。下記式に基づいて、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムにおいて、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの透気度の変化率を算出する。
透気度の変化率(%)=100×│P0−P1│/P0
次に、本発明の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの製造方法の一例について説明する。図1に、本発明の方法における押出工程及び冷却工程に用いられる製造装置の一例を示す。図1の製造装置では、押出機1の前端にTダイ2が取り付けられている。Tダイ2の下方には、第1冷却ロール3と、第2冷却ロール4とが配設されている。第1冷却ロール3は、オレフィン系樹脂フィルムAの搬送方向における最上流側に配設されている。そして、第2冷却ロール4は、第1冷却ロール3のフィルム搬送方向における下流側に所定間隔を存して配設されている。
Tダイ2は、下向きに開口している押出口2aを有している。Tダイ2は、押出機1から供給される溶融状態のオレフィン系樹脂を押出口2aからオレフィン系樹脂フィルムAに成形しながら第1冷却ロール3の外周面に向かって押し出すように構成されている。第1冷却ロール3は、所定の周速度で回転することにより、第1冷却ロール3の外周面にオレフィン系樹脂フィルムAを引き取りながら密着させて、オレフィン系樹脂フィルムAを冷却固化させるように構成されている。そして、第2冷却ロール4は、所定の周速度で回転することにより、第1冷却ロール3から送り出されたオレフィン系樹脂フィルムAを、第2冷却ロール4の外周面に引き取りながら密着させて、オレフィン系樹脂フィルムAを冷却させるように構成されている。なお、Tダイ2から押し出されたオレフィン系樹脂フィルムAを第1冷却ロール3に密着させるために、エアナイフ(図示せず)から空気流を吹き出し、この空気流の風圧によってオレフィン系樹脂フィルムAを第1冷却ロール3に押圧したり、ニップロール(図示せず)を第1冷却ロール3に当接した状態で配設して、ニップロールによりオレフィン系樹脂フィルムAを第1冷却ロール3に押圧したりしてもよい。
(押出工程)
本発明の方法では、先ず、オレフィン系樹脂を押出機1にて溶融混練し、押出機1の先端に取り付けたTダイ2から押出すことにより、オレフィン系樹脂フィルムAを得る押出工程を実施する。
オレフィン系樹脂を押出機1にて溶融混練する際のオレフィン系樹脂の温度は、(Tm+20)℃〜(Tm+100)℃が好ましく、(Tm+25)℃〜(Tm+80)℃がより好ましく、(Tm+25)℃〜(Tm+50)℃が特に好ましい。溶融混練時のオレフィン系樹脂の温度を上記範囲内とすることにより、オレフィン系樹脂の配向性を向上させて、ラメラの生成を促進させることができる。なお、「Tm」とは、オレフィン系樹脂の融点(℃)を意味する。
オレフィン系樹脂を押出機1からフィルム状に押出す際におけるドロー比は、50〜300が好ましく、65〜250がより好ましく、70〜250が特に好ましい。ドロー比を50以上とすることにより、オレフィン系樹脂に加わる張力を向上させることができる。これによりオレフィン系樹脂を十分に配向させてラメラの生成を促進させることが可能となる。また、ドロー比を300以下とすることによって、オレフィン系樹脂フィルムの成膜安定性を向上させることができる。これにより均一な厚みや幅を有するオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得ることが可能となる。
なお、ドロー比とは、TダイのリップのクリアランスをTダイから押出されたオレフィン系樹脂フィルムの厚みで除した値をいう。Tダイのリップのクリアランスの測定は、JIS B7524に準拠したすきまゲージ(例えば、株式会社永井ゲージ製作所製 JISすきまゲージ)を用いてTダイのリップのクリアランスを10箇所以上測定し、その相加平均値を求めることにより行うことができる。又、Tダイから押出されたオレフィン系樹脂フィルムの厚みは、ダイヤルゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ製 シグナルABSデジマチックインジケータ)を用いてTダイから押出されたオレフィン系樹脂フィルムの厚みを10箇所以上測定し、その相加平均値を求めることにより行うことができる。
オレフィン系樹脂フィルムの成膜速度は、10〜300m/分が好ましく、15〜250m/分がより好ましく、15〜30m/分が特に好ましい。オレフィン系樹脂フィルムの成膜速度を10m/分以上とすることによって、オレフィン系樹脂に加わる張力を向上させることができる。これによりオレフィン系樹脂分子を十分に配向させてラメラの生成を促進させることが可能となる。また、オレフィン系樹脂フィルムの成膜速度を300m/分以下とすることによって、オレフィン系樹脂フィルムの成膜安定性を向上させることができる。これにより均一な厚みや幅を有するオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得ることが可能となる。
(冷却工程)
次に、Tダイ2から押し出されたオレフィン系樹脂フィルムAを、オレフィン系樹脂フィルムAの搬送方向に所定間隔を存して配列された複数の冷却ロール3,4に順次供給して搬送させることにより、オレフィン系樹脂フィルムAを冷却する冷却工程を実施する。
第1冷却ロール3の表面温度は、(Tm−20)℃〜(Tm−120)℃であるが、(Tm−25)℃〜(Tm−100)℃が好ましく、(Tm−30)〜(Tm−90)℃がより好ましい。第1冷却ロール3の表面温度を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂フィルムA中にラメラを十分に生成させることができる。
図1において、2本の冷却ロール3,4を用いているが、冷却ロールの数は2本以上であってもよく、2〜5本が好ましく、2本がより好ましい。
オレフィン系樹脂フィルムAの搬送方向に相互に隣接する冷却ロール間において、下流側の冷却ロールの表面温度は、上流側の冷却ロールの表面温度よりも10℃以上低く設定されている。下流側の冷却ロールの表面温度[Tu(℃)]と上流側の冷却ロールの表面温度[Td(℃)]との差(Td−Tu)は、10℃以上であるが、20℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、50〜90℃が特に好ましい。このように搬送方向における下流側に向かって冷却ロールの表面温度を低くすることで、オレフィン系樹脂フィルムAを徐冷することができ、これによりオレフィン系樹脂フィルムA中にラメラを高度に生成させることができる。
図1に示すように、2本の冷却ロール3,4を用いる場合、第2冷却ロール4は、第1冷却ロール3のフィルム搬送方向における下流側に隣接して設置され、上流側の冷却ロールとして第1冷却ロール3が用いられ、下流側の冷却ロールとして第2冷却ロール4が用いられる。
第2冷却ロール4の表面温度は、(Tm−140)℃〜(Tm−110)℃が好ましく、(Tm−140)℃〜(Tm−120)℃が好ましい。第2冷却ロール4の表面温度を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂フィルムA中にラメラを十分に生成させることができる。
冷却工程では、オレフィン系樹脂フィルムAを各冷却ロール表面に載せて搬送させながら冷却する。オレフィン系樹脂フィルムAと各冷却ロールとの接触時間は、0.01〜2秒が好ましい。接触時間を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂フィルムAの表面温度を各冷却ロールと同じ表面温度にすることができる。
(養生工程)
次に、上述した冷却工程により得られたオレフィン系樹脂フィルムを養生する。このオレフィン系樹脂の養生工程は、冷却工程においてオレフィン系樹脂フィルム中に生成させたラメラを成長させるために行う。このことにより、オレフィン系樹脂フィルムの押出方向に結晶化部分(ラメラ)と非結晶部分とが交互に配列してなる積層ラメラ構造を形成させることができる。特に、養生温度を比較的低い温度とすることによって、結晶化部分(ラメラ)を、フィルム厚み方向にも高度に成長させることができる。したがって、このようなオレフィン系樹脂フィルムを、後述する延伸工程において延伸させることにより、フィルムの厚み方向に貫通している微小孔部を形成させることができる。
オレフィン系樹脂フィルムの養生温度は、(Tm−30)℃〜(Tm−5)℃が好ましく、(Tm−25)℃〜(Tm−10)℃がより好ましい。オレフィン系樹脂フィルムの養生温度を(Tm−30)℃の温度以上とすることによって、オレフィン系樹脂フィルムの結晶化を充分に促進させることができる。また、オレフィン系樹脂フィルムの養生温度を(Tm−5)℃の温度以下にすることによって、オレフィン系樹脂の分子配向の緩和によるラメラ構造の崩壊を低減することができる。
なお、オレフィン系樹脂フィルムの養生温度とは、オレフィン系樹脂フィルムの表面温度である。しかしながら、オレフィン系樹脂フィルムの表面温度を測定できないような場合、例えば、オレフィン系樹脂フィルムをロール状に巻き取った状態で養生させる場合には、オレフィン系樹脂フィルムの養生温度とは、雰囲気温度とする。例えば、熱風炉などの加熱装置内部でオレフィン系樹脂フィルムをロール状に巻き取った状態で養生を行う場合には、加熱装置内部の温度を養生温度とする。
オレフィン系樹脂フィルムの養生は、オレフィン系樹脂フィルムを走行させながら行ってもよく、オレフィン系樹脂フィルムをロール状に巻き取った状態で行ってもよい。
オレフィン系樹脂フィルムを走行させながら養生を行う場合、オレフィン系樹脂フィルムの養生時間は、1分以上が好ましく、5分〜60分がより好ましい。
オレフィン系樹脂フィルムをロール状に巻き取った状態で養生させる場合、養生時間は、1時間以上が好ましく、15時間以上がより好ましい。このような養生時間でロール状に巻き取った状態のオレフィン系樹脂フィルムを養生させることにより、全体的にオレフィン系樹脂フィルムの温度を上述した養生温度にして十分に養生を行うことができる。これによりオレフィン系樹脂フィルム中にラメラを十分に成長させることができる。また、オレフィン系樹脂フィルムの熱劣化を低減する観点から、養生時間は、35時間以下が好ましく、30時間以下がより好ましい。
なお、オレフィン系樹脂フィルムをロール状に巻き取った状態で養生させた場合、養生工程後のオレフィン系樹脂フィルムロールからオレフィン系樹脂フィルムを巻き出して、後述する延伸工程及びアニーリング工程を実施すればよい。
(延伸工程)
次に、養生工程後の未延伸のオレフィン系樹脂フィルムを延伸する延伸工程を行う。未延伸のオレフィン系樹脂フィルムの延伸は一軸延伸であることが好ましい。この延伸工程は、第1延伸工程と、この第1延伸工程に続く第2延伸工程とを含むことが好ましい。
(第1延伸工程)
第1延伸工程では、養生工程後のオレフィン系樹脂フィルムに、その表面温度が−20℃以上100℃未満にて延伸倍率1.03〜1.5倍に一軸延伸を施すことが好ましい。第1延伸工程では、オレフィン系樹脂フィルムを好ましくは押出方向にのみ一軸延伸する。第1延伸工程において、オレフィン系樹脂フィルム中のラメラは殆ど溶融しておらず、延伸によってラメラ同士を離間させることによって、ラメラ間の非結晶部において効率的に微細な亀裂を独立して生じさせ、この亀裂を起点として多数の微小孔部を確実に形成させる。
第1延伸工程において、オレフィン系樹脂フィルムの表面温度は、−20℃以上100℃未満が好ましく、0〜80℃がより好ましく、10〜40℃が特に好ましい。オレフィン系樹脂フィルムの表面温度を−20℃以上とすることにより、延伸時におけるオレフィン系樹脂フィルムの破断を低減することができる。また、オレフィン系樹脂フィルムの表面温度を100℃未満とすることにより、ラメラ間の非結晶部において亀裂を発生させることができる。
第1延伸工程において、オレフィン系樹脂フィルムの延伸倍率は、1.03〜1.5倍が好ましく、1.05〜1.3倍がより好ましい。延伸倍率を1.03倍以上とすることにより、ラメラ間の非結晶部において微小孔部を形成することができる。また、延伸倍率を1.5倍以下とすることにより、微小孔部を均一に形成することができる。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂フィルムの延伸倍率とは、延伸後のオレフィン系樹脂フィルムの長さを延伸前のオレフィン系樹脂フィルムの長さで除した値をいう。
オレフィン系樹脂フィルムの第1延伸工程における延伸速度は、20%/分以上が好ましく、20〜500%/分がより好ましく、20〜70%/分が特に好ましい。延伸速度を20%/分以上とすることにより、ラメラ間の非結晶部において微小孔部を均一に形成することができる。延伸速度を500%/分以下とすることにより、第1延伸工程におけるオレフィン系樹脂フィルムの破断を抑制することができる。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂フィルムの延伸速度とは、単位時間当たりのオレフィン系樹脂フィルムの延伸方向における寸法の変化割合をいう。
上記第1延伸工程におけるオレフィン系樹脂フィルムの延伸方法としては、オレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸することができれば、特に限定されず、例えば、オレフィン系樹脂フィルムを周速度が異なる複数のロールを用いた延伸装置を用いて所定温度にて一軸延伸する方法などが挙げられる。
(第2延伸工程)
第2延伸工程では、第1延伸工程後のオレフィン系樹脂フィルムに、その表面温度が好ましくは100〜150℃にて、好ましくは延伸倍率1.2〜2.2倍に一軸延伸処理を施すことにより、オレフィン系樹脂延伸フィルムを得る。第2延伸工程においても、オレフィン系樹脂フィルムを好ましくは押出方向にのみ一軸延伸する。このような第2延伸工程における延伸処理を行うことによって、第1延伸工程にてオレフィン系樹脂フィルムに形成された多数の微小孔部を成長させることができる。
第2延伸工程において、オレフィン系樹脂フィルムの表面温度は、100〜150℃が好ましく、110〜140℃がより好ましい。オレフィン系樹脂フィルムの表面温度を100℃以上とすることによって、第1延伸工程においてオレフィン系樹脂フィルムに形成された微小孔部を高度に成長させることができる。また、オレフィン系樹脂フィルムの表面温度を150℃以下とすることによって、第1延伸工程においてオレフィン系樹脂フィルムに形成された微小孔部の閉塞を低減することができる。
第2延伸工程において、オレフィン系樹脂フィルムの延伸倍率は、1.2〜2.2倍が好ましく、1.5〜2倍がより好ましい。オレフィン系樹脂フィルムの延伸倍率を1.2倍以上とすることによって、第1延伸工程時にオレフィン系樹脂フィルムに形成された微小孔部を成長させることができる。これにより優れた透気性を有するオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。また、オレフィン系樹脂フィルムの延伸倍率を2.2倍以下とすることによって、第1延伸工程においてオレフィン系樹脂フィルムに形成された微小孔部の閉塞を抑制することが可能となる。
第2延伸工程において、オレフィン系樹脂フィルムの延伸速度は、500%/分以下が好ましく、400%/分以下がより好ましく、15〜60%/分が特に好ましい。オレフィン系樹脂フィルムの延伸速度を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂フィルムに微小孔部を均一に形成することができる。
上記第2延伸工程におけるオレフィン系樹脂フィルムの延伸方法としては、オレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸することができれば、特に限定されず、例えば、オレフィン系樹脂フィルムを周速度が異なる複数のロールを用いた延伸装置を用いて所定温度にて一軸延伸する方法などが挙げられる。
(アニーリング工程)
次に、延伸工程後、好ましくは第2延伸工程後のオレフィン系樹脂延伸フィルムにアニール処理を施すアニーリング工程を行ってオレフィン系樹脂微多孔フィルムを製造する。このアニーリング工程は、上述した延伸工程においてオレフィン系樹脂延伸フィルムに生じた残存歪みを緩和して、得られるオレフィン系樹脂微多孔フィルムに加熱による熱収縮が生じるのを抑えるために行われる。
アニーリング工程におけるオレフィン系樹脂延伸フィルムの表面温度は、110〜175℃が好ましく、130〜170℃がより好ましい。さらに、アニーリング工程におけるオレフィン系樹脂延伸フィルムの表面温度は、第2延伸工程時のオレフィン系樹脂フィルムの表面温度以上とすることが好ましい。オレフィン系樹脂延伸フィルムの表面温度を110℃以上とすることによって、オレフィン系樹脂延伸フィルム中に残存した歪みを十分に緩和することができる。また、オレフィン系樹脂延伸フィルムの表面温度を175℃以下とすることによって、延伸工程で形成された微小孔部の閉塞を抑制することができる。
アニーリング工程におけるオレフィン系樹脂延伸フィルムの収縮率は、25%以下が好ましい。オレフィン系樹脂延伸フィルムの収縮率を25%以下とすることによって、オレフィン系樹脂延伸フィルムのたるみの発生を低減して、オレフィン系樹脂延伸フィルムを均一にアニールすることができる。
なお、オレフィン系樹脂フィルムの収縮率とは、アニーリング工程時における延伸方向におけるオレフィン系樹脂延伸フィルムの収縮長さを、第2延伸工程後の延伸方向におけるオレフィン系樹脂延伸フィルムの長さで除して100を乗じた値をいう。
上記では、オレフィン系樹脂微多孔フィルムを所謂、乾式法によって製造する方法を説明したが、上記方法に限定されず、所謂、オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、湿式法によって製造されてもよい。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムを湿式法で製造する方法としては、具体的には、
(1)オレフィン系樹脂に製膜溶剤を添加した後、オレフィン系樹脂を押出機などの公知の混練装置を用いて溶融混練してオレフィン系樹脂溶液を製造し、オレフィン系樹脂溶液をフィルム状に成形して冷却しゲル状フィルムを形成するフィルム形成工程と、ゲル状フィルム中の製膜用溶剤を除去して微小孔部を形成する洗浄工程と、洗浄工程で得られたフィルムを乾燥させてオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る乾燥工程とを有する方法などが挙げられる。
フィルム形成工程と洗浄工程との間に、フィルム形成工程で製造されたゲル状フィルムを延伸する延伸工程を有していてもよい。延伸工程を行うことによって、得られる耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの機械的強度が向上すると共に、フィルム内部に微小孔部を十分に形成することができ、イオン透過性に優れた耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを得ることができる。なお、延伸は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよいが、フィルム強度に異方性がなく、優れたイオン透過性を有する耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを得ることができることから、二軸延伸が好ましい。なお、二軸延伸は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸又は多段階延伸の何れであってもよいが、同時二軸延伸が好ましい。
製膜溶剤としては、特に限定されず、例えば、ノナン、デカン、デカリン、流動パラフィンなどのパラフィン油などの脂肪族又は環状炭化水素、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステルが挙げられる。
フィルム形成工程において、フィルムの冷却は、少なくともゲル化温度まで50℃/分以上の冷却速度で行うことが好ましい。このようにフィルムを冷却することによって、オレフィン系樹脂と製膜溶剤とをミクロに相分離させた構造を形成することができる。なお、フィルムの冷却は、25℃以下まで行うことが好ましい。
洗浄工程において、ゲル状フィルム中の製膜用溶剤を洗浄溶媒を用いて除去し、フィルム内部に微小孔部を形成する。ゲル状フィルムにおいて、オレフィン系樹脂は、製膜溶剤と相分離していることから、洗浄溶媒を除去することによってフィルム内部に微小孔部を形成することができる。洗浄溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサンなどの飽和炭化水素、塩化メチレンなどが挙げられる。
乾燥工程において、洗浄工程で得られたフィルムを乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、フィルムを加熱乾燥する方法、フィルムに乾燥風を吹き付ける方法などが挙げられる。
乾燥工程を経て得られたオレフィン系樹脂微多孔フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、少なくとも一軸方向に延伸してもよい。オレフィン系樹脂微多孔フィルムの延伸は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムを加熱しながら、テンター延伸法などの公知の延伸方法を用いて延伸すればよい。
(塗布工程)
次に、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に皮膜層を形成する。先ず、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有する重合性化合物を塗布する塗布工程を実施する。
オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布することによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を付着させることができる。この時、重合性化合物をそのままオレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に塗布してもよい。しかしながら、重合性化合物を溶媒中に分散又は溶解させて塗布液を得、この塗布液をオレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に塗布することが好ましい。このように重合性化合物を塗布液として用いることによって、微小孔部の閉塞を低減しながら、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を均一に付着させることができる。これにより皮膜層が均一に形成され、透気性を低下させることなく、耐熱性が向上された耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを製造することが可能となる。
更に、塗布液はオレフィン系樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の壁面にも円滑に流動することができ、これによりオレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面だけでなく、この表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面にも皮膜層を形成することができる。これにより皮膜層をオレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面に強固に一体化させることができる。
また、2官能以上のラジカル重合性官能基を有する重合性化合物はオレフィン系樹脂微多孔フィルムに対する馴染み性に優れていることから、オレフィン系樹脂微多孔フィルムに微小孔部を閉塞させることなく重合性化合物を塗布することができる。これにより、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの微小孔部に対応する箇所に、厚み方向に貫通する貫通孔を有している皮膜層を形成することができる。したがって、このような皮膜層によれば、透気性を低下させることなく、耐熱性が向上された耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
塗布液に用いられる溶媒としては、重合性化合物を溶解又は分散させることができれば、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、クロロホルムなどが挙げられる。なかでも、酢酸エチル、エタノール、メタノール、アセトンが好ましい。これらの溶媒は、塗布液をオレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に塗布した後に円滑に除去することができる。さらに、上記溶媒は、リチウムイオン二次電池などの二次電池を構成している電解液との反応性が低く、安全性にも優れている。
塗布液中における重合性化合物の含有量は、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができ、したがって、透気性を低下させることなく耐熱性が向上されている耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを製造することができる。
オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面への重合性化合物の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、(1)オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布する方法;(2)重合性化合物中にオレフィン系樹脂微多孔フィルムを浸漬して、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布する方法;(3)重合性化合物を溶媒中に溶解又は分散させて塗布液を作製し、この塗布液をオレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面に塗布した後、オレフィン系樹脂微多孔フィルムを加熱して溶媒を除去する方法;及び(4)重合性化合物を溶媒中に溶解又は分散させて塗布液を作製し、この塗布液中にオレフィン系樹脂微多孔フィルムを浸漬して、塗布液をオレフィン系樹脂微多孔フィルム中に塗布した後、オレフィン系樹脂微多孔フィルムを加熱して溶媒を除去する方法が挙げられる。なかでも、上記(3)(4)の方法が好ましい。これらの方法によれば、重合性化合物をオレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に均一に塗布することができる。
上記(3)及び(4)の方法において、溶媒を除去するためのオレフィン系樹脂微多孔フィルムの加熱温度は、用いられる溶媒の種類や沸点によって設定することができる。溶媒を除去するためのオレフィン系樹脂微多孔フィルムの加熱温度は、50〜140℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。加熱温度を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの熱収縮や微小孔部の閉塞を低減しつつ、塗布された溶媒を効率的に除去することができる。
上記(3)及び(4)の方法において、溶媒を除去するためのオレフィン系樹脂微多孔フィルムの加熱時間は、特に制限されず、用いられる溶媒の種類や沸点によって設定することができる。溶媒を除去するためのオレフィン系樹脂微多孔フィルムの加熱時間は、0.02〜60分が好ましく、0.1〜30分がより好ましい。
上述の通り、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物又は塗布液を塗布することによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を付着させることができる。
(照射工程)
本発明の方法では、次に、重合性化合物を塗布した上記オレフィン系樹脂微多孔フィルムに、活性エネルギー線を照射する照射工程を実施する。これにより重合性化合物を重合させて、重合性化合物の重合体を含む皮膜層を、オレフィン系樹脂微多孔フィルム表面の少なくとも一部、好ましくは表面全面に一体的に形成することができる。
活性エネルギー線を照射することで、オレフィン系樹脂微多孔フィルム中に含まれているオレフィン系樹脂の一部が分解して、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの引き裂き強度などの機械的強度が低下する可能性がある。しかしながら、重合性化合物の重合体を含む皮膜層によれば、上述した通り、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの機械的強度の低下を補うことができ、これにより機械的強度及び耐熱性の双方に優れている耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することが可能となる。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムに対する活性エネルギー線の照射線量は、オレフィン系樹脂微多孔フィルムがプロピレン系樹脂を含む場合は、20〜100kGyが好ましく、30〜80kGyがより好ましく、40〜70kGyが特に好ましい。また、オレフィン系樹脂微多孔フィルムがエチレン系樹脂を含む場合は、40〜300kGyが好ましく、60〜200kGyがより好ましく、80〜200kGyが特に好ましい。活性エネルギー線の照射線量を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の劣化を低減しながら重合性化合物を重合させることができ、これにより機械的強度及び耐熱性の双方に優れている耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば、電子線、プラズマ、紫外線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。なかでも、電子線及び紫外線が好ましい。
活性エネルギー線として電子線を用いる場合、オレフィン系樹脂微多孔フィルムに対する電子線の加速電圧は特に限定されないが、50〜300kVが好ましく、100〜250kVがより好ましい。電子線の加速電圧を上記範囲内とすることによって、オレフィン系樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の劣化を低減しながら皮膜層を形成することができる。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、オレフィン系樹脂微多孔フィルムに対する紫外線の積算光量は、1000〜5000mJ/cm2が好ましく、1000〜4000mJ/cm2がより好ましく、1500〜3700mJ/cm2が特に好ましい。なお、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、上記塗布液に光重合開始剤が含まれていることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、及びアントラキノンなどが挙げられる。
活性エネルギー線としてプラズマを用いる場合、オレフィン系樹脂微多孔フィルムに対するプラズマのエネルギー密度は特に限定されないが、5〜50J/cm2が好ましく、10〜45J/cm2がより好ましく、20〜45J/cm2が特に好ましい。
照射工程において、酸素濃度が300ppm以下の雰囲気下で、重合性化合物を塗布したオレフィン系樹脂微多孔フィルムに活性エネルギー線を照射することが好ましい。照射工程における雰囲気中の酸素濃度は、300ppm以下が好ましいが、100〜0ppmがより好ましく、10〜0ppmが特に好ましい。このような酸素濃度の雰囲気下で照射工程を実施することにより、重合性化合物の重合反応を円滑に進行させることができ、皮膜層の機械的強度を向上させることができる。そして、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少を低減させた耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを製造することができる。
照射工程は、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。これにより、照射工程における雰囲気中の酸素濃度を容易に調整することができる。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、及びこれらの混合ガスなどが挙げられる。
上記製造方法によれば、上述した通り、フィルムの厚み方向に貫通している微小孔部をオレフィン系樹脂フィルム中に形成することができる。したがって、得られる耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、空隙率が高く、三次元的に均一に形成された微小孔部を含んでいる。このような耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、厚み方向に圧力が加えられても厚みの変化率が小さい。したがって、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、円筒型や角型などの二次電池のように、電池内においてセパレータに高い圧力がかかる二次電池に組み込まれても、圧力に起因した厚み方向の変化率が低減されている。そのため、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、電解液を常時、十分に保持することができると共に、常に優れた機械的強度を維持し、デンドライトによる正極と負極の短絡を効果的に防止する。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、電池の充放電に伴う電極の膨張収縮により微多孔フィルムに高い圧力がかかっても変形することはなく、長期間に亘って安定した電池性能を維持することができるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
(加熱工程)
照射工程後に、上記活性エネルギー線を照射したオレフィン系樹脂微多孔フィルムを、酸素濃度が10ppm以下の雰囲気下で加熱処理する加熱工程を行ってもよい。
加熱工程では、活性エネルギー線を照射したオレフィン系樹脂微多孔フィルムを、酸素濃度が10ppm以下の雰囲気下で加熱処理する。加熱工程によれば、上述した照射工程において残存した残存ラジカルを基点として重合性化合物の重合を促進させることができると共に、重合性化合物の重合の促進によっても残存した残存ラジカルを失活させることができる。これにより、皮膜層の機械的強度を向上させることができる。そして、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少をより低減させた耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを製造することができる。
加熱工程において、活性エネルギー線を照射したオレフィン系樹脂微多孔フィルムを、好ましくは90〜150℃、より好ましくは110〜150℃、特に好ましくは115〜150℃で加熱処理することが好ましい。オレフィン系樹脂微多孔フィルムの加熱処理温度を上記範囲内とすることによって、照射工程において残存した残存ラジカルを基点とした重合性化合物の重合を促進させると共に、オレフィン系樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の劣化を低減しながら、重合性化合物の重合の促進によっても残存した残存ラジカルを失活させることができる。
加熱工程において、活性エネルギー線を照射したオレフィン系樹脂微多孔フィルムの加熱処理時間は、2分〜3時間が好ましく、20分〜3時間がより好ましい。オレフィン系樹脂微多孔フィルムの加熱処理時間を上記範囲内とすることによって、照射工程において残存した残存ラジカルを基点とした重合性化合物の重合を促進させると共に、オレフィン系樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の劣化を低減しながら、重合性化合物の重合の促進によっても残存した残存ラジカルを失活させることができる。
加熱工程では、酸素濃度が10ppm以下の雰囲気下で、活性エネルギー線を照射したオレフィン系樹脂微多孔フィルムに加熱処理を施すことが好ましい。加熱工程における雰囲気中の酸素濃度は、10ppm以下が好ましく、8〜0ppmがより好ましく、5〜0ppmが特に好ましい。このような酸素濃度の雰囲気下で加熱工程を実施することにより、加熱工程において、オレフィン系樹脂微多孔フィルムに含まれているオレフィン系樹脂の酸化劣化を低減することができると共に、皮膜層の架橋密度を高くすることができる。これにより、皮膜層の機械的強度を向上させることができる。そして、厚み方向の圧力に対して優れた耐性を有し、圧力に起因した厚みの減少をより低減させた耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを製造することができる。
加熱工程は、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。これにより、加熱工程における雰囲気中の酸素濃度を容易に調整することができる。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、及びこれらの混合ガスなどが挙げられる。
耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に用いられる。非水電解液二次電池としては、リチウムイオン二次電池などが挙げられる。
非水電解液二次電池は、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムをセパレータとして含んでいれば特に制限されず、正極と、負極と、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムを含むセパレータと、非水電解液とを含んでいる。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは正極及び負極の間に配設され、これにより電極間の電気的な短絡を防止することができる。また、非水電解液は、耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの微小孔部内に少なくとも充填され、これにより充放電時に電極間をリチウムイオンが移動することができる。
正極は、特に制限されないが、正極集電体と、この正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層とを含んでいることが好ましい。正極活物質層は、正極活物質と、この正極活物質間に形成された空隙とを含んでいることが好ましい。正極活物質層が空隙を含んでいる場合には、この空隙中にも非水電解液が充填される。正極活物質はリチウムイオンなどを吸蔵放出することが可能な材料であり、正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムなどが挙げられる。正極に用いられる集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、及びステンレス箔などが挙げられる。正極活物質層は、バインダーや導電助剤などをさらに含んでいてもよい。
負極は、特に制限されないが、負極集電体と、この負極集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層とを含んでいることが好ましい。負極活物質層は、負極活物質と、この負極活物質間に形成された空隙とを含んでいることが好ましい。負極活物質層が空隙を含んでいる場合には、この空隙中にも非水電解液が充填される。負極活物質はリチウムイオンなどを吸蔵放出することが可能な材料であり、負極活物質としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック及びケチェンブラックなどが挙げられる。負極に用いられる集電体としては、銅箔、ニッケル箔、及びステンレス箔などが挙げられる。負極活物質層は、バインダーや導電助剤などをさらに含んでいてもよい。
非水電解液とは、水を含まない溶媒に電解質塩を溶解させた電解液である。リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液としては、例えば、非プロトン性有機溶媒に、リチウム塩を溶解した非水電解液が挙げられる。非プロトン性有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、及びエチレンカーボネートなどの環状カーボネートと、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒などが挙げられる。また、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、及びLiN(SO2CF32などが挙げられる。
[実施例1〜4]
(押出工程)
図1に示した製造装置を用いてホモポリプロピレンフィルムAを得た。先ず、ホモポリプロピレン(重量平均分子量413000、分子量分布9.3、融点163℃)を押出機1に供給して樹脂温度200℃にて溶融混練し、押出機1の先端に取り付けられたTダイ2からフィルム状に押出した。なお、押出量は9kg/時間、成膜速度は22m/分、ドロー比は83であった。
(冷却工程)
Tダイ2から押し出されたホモポリプロピレンフィルムAを第1冷却ロール3の外周面に供給し、第1冷却ロール3の回転に従って巻き付けるように引き取った後、ホモポリプロピレンフィルムAを第1冷却ロール3の下方円弧長に亘って密着させた状態で、ホモポリプロピレンフィルムAをフィルム搬送方向における下流側に送り出すことにより、ホモポリプロピレンフィルムAを連続的に搬送した。なお、第1冷却ロール3の表面温度は予め90℃に調整した。
次に、第1冷却ロール3から送り出されたホモポリプロピレンフィルムAを第2冷却ロール4に供給し、第2冷却ロール4の回転に従って巻き付けるように引き取った後、ホモポリプロピレンフィルムAを第2冷却ロール4の上方円弧長に亘って密着させた状態で、ホモポリプロピレンフィルムAをフィルム搬送方向における下流側に送り出すことにより、プロピレン系樹脂フィルムAを連続的に搬送した。なお、第2冷却ロール4の表面温度は予め25℃に調整した。
第2冷却ロール4から送り出されたホモポリプロピレンフィルムAの表面温度は25℃であった。冷却後の長尺状のホモポリプロピレンフィルムAは、表1の「オレフィン系樹脂フィルムの厚み」の欄に示した厚みを有しており、幅が200mmであった。
(養生工程)
得られた長尺状のホモポリプロピレンフィルムA(長さ50m)を外径が3インチの円筒状の芯体にロール状に巻取って、ホモポリプロピレンフィルムロールを得た。ホモポリプロピレンフィルムロールを、このロールを設置する場所の雰囲気温度が145℃である熱風炉中に24時間に亘って放置して養生した。このとき、ロールの表面から内部まで全体的にホモポリプロピレンフィルムAの温度が熱風炉内部の温度と同じ温度になっていた。
(第1延伸工程)
次に、ホモポリプロピレンフィルムAをロールから連続的に巻き出し、ホモポリプロピレンフィルムAの表面温度を20℃とした上で、第1延伸ロール及び第2延伸ロールに順次掛け渡し、第2延伸ロールの周速度を第1延伸ロールの周速度よりも大きくなるように回転させることにより、ホモポリプロピレンフィルムAを50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.2倍に搬送方向(押出方向)にのみ一軸延伸した。
(第2延伸工程)
次に、第2延伸ロールから送り出されたホモポリプロピレンフィルムAを、加熱炉内に供給し、ホモポリプロピレンフィルムAの表面温度を120℃とした上で、加熱炉内に設置された7本の延伸ロールのそれぞれに上下に且つ搬送方向に向かってジグザクに掛け渡し、延伸ロールのそれぞれの周速度をホモポリプロピレンフィルムAの搬送方向に向かって順次大きくなるように回転させることにより、ホモポリプロピレンフィルムAを、42%/分の延伸速度にて延伸倍率2.0倍に搬送方向にのみ一軸延伸し、これによりホモポリプロピレン延伸フィルムを得た。
(アニーリング工程)
次に、ホモポリプロピレン延伸フィルムを、熱風炉内に上下に配置された第1ロール及び第2ロールに順次供給し、ホモポリプロピレン延伸フィルムの表面温度が155℃となるように且つホモポリプロピレン延伸フィルムに張力が加わらないようにして4分間に亘って熱風炉内を搬送することによりホモポリプロピレン延伸フィルムにアニーリングを施してホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。なお、アニーリング工程におけるホモポリプロピレン延伸フィルムの収縮率は5%とした。ホモポリプロピレン微多孔フィルムの厚みを表1の「オレフィン系樹脂微多孔フィルムの厚み」の欄に示した。
(塗布工程)
酢酸エチル95質量部に、重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)5質量部を溶解させて塗布液を作製した。この塗布液をホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面に塗布した。
しかる後、ホモポリプロピレン微多孔フィルムを80℃にて2分間に亘って加熱することによって酢酸エチルを蒸発させて除去した。
(照射工程)
ホモポリプロピレン微多孔フィルムに、窒素雰囲気下(酸素濃度:10ppm以下)において、加速電圧110kV及び表1に示した照射線量で電子線を照射した。これにより、重合性化合物を重合させて、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面全面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層を一体的に形成させ、耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。また、ホモポリプロピレン微多孔フィルムに含まれているホモポリプロピレンの一部と、皮膜層に含まれている重合体の一部とは、化学的に結合していた。耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムは、表1に示す厚みを有していた。
[実施例5]
(押出工程)
ホモポリエチレン(PE、重量平均分子量143000、分子量分布20.5、融点136℃、融解熱量225mJ/mg)を押出機に供給して、樹脂温度180℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度が30℃となるまで冷却してホモポリエチレンフィルム(厚み25μm)を得た。なお、押出量は6kg/時間、成膜速度は16m/分、ドロー比は90であった。
(養生工程)
得られたホモポリエチレンフィルムを雰囲気温度125℃の熱風炉中に24時間に亘って静置して養生した。
(第1延伸工程)
養生後のホモポリエチレンフィルムを押出方向(長さ方向)に300mm、幅方向に160mmの短冊状に裁断した。このホモポリエチレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が23℃となるようにして50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.20倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(第2延伸工程)
続いて、ホモポリエチレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が100℃となるようにして42%/分の延伸速度にて延伸倍率2倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(アニーリング工程)
しかる後、ホモポリエチレンフィルムをその表面温度が120℃となるように且つホモポリエチレンフィルムに張力が加わらないようにして10分間に亘って静置して、ホモポリエチレンフィルムにアニールを施した。これにより、微小孔部を有するホモポリエチレン微多孔フィルム(厚み20μm)を得た。なお、アニール時のホモポリエチレンフィルムの収縮率は25%とした。
得られたホモポリエチレン微多孔フィルムは、透気度が150sec/100mLであり、表面開口率が38%であり、微小孔部の開口端の最大長径が500nmであり、微小孔部の開口端の平均長径が330nmであり、孔密度が35個/μm2であった。
照射工程において電子線の吸収線量が200kGyとなるように調整したこと以外は、実施例1と同様の要領で塗布工程及び照射工程を行って耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[実施例6]
溶媒として酢酸エチル90質量%及び重合性化合物としてペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、ダイセル・アルネクス社製 商品名「EBECRYL 180」)10質量%を含んでいる塗布液を作製し、この塗布液100質量部に光重合開始剤としてベンゾフェノン5質量部を添加した。塗布工程において、上記塗布液を用いたこと、照射工程において、積算光量が3000mJ/cm2となるように紫外線を照射して重合性化合物を重合させたこと以外は、実施例1と同様の要領で耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。
[比較例1]
ポリプロピレン系樹脂を二軸押出機に投入し、設定温度300℃で溶融混練した後に押出し、120℃のキャスティングロールで冷却固化させてポリプロピレン系樹脂フィルムを作製した。ポリプロピレン系樹脂フィルムを縦延伸機を用いて縦方向に4倍延伸した後、横延伸機にて105℃で横方向に2倍延伸した後、ポリプロピレン系樹脂フィルムに125℃でアニーリング処理を施すことによってポリプロピレン系樹脂微多孔フィルムを得た。
アルミナ(平均粒径:0.3μm)40質量部及びポリビニルアルコール0.6質量部を水59.4質量部に分散させて分散液を作製した。得られた分散液を上記ポリプロピレン系樹脂微多孔フィルムの表面にグラビアコーターを用いて塗布した後、ポリプロピレン系樹脂微多孔フィルムを60℃にて乾燥させて耐熱性ポリプロピレン系樹脂微多孔フィルムを得た。
[比較例2]
ポリエチレン系樹脂を二軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混練した後に押出し、120℃のキャスティングロールで冷却固化させてポリエチレン系樹脂フィルムを作製した。ポリエチレン系樹脂フィルムに同時二軸延伸を施した。このときの延伸条件はシートの流れ方向(MD)に6.8倍、流れ方向に直交する方向(TD)に6.8倍、設定温度は110℃であった。しかる後、ポリエチレン系樹脂フィルムに112℃にてアニーリング処理を施すことによってポリエチレン系樹脂微多孔フィルムを得た。
アルミナ(平均粒形1.0μm)40質量部及びポリビニルアルコール0.6質量部を水59.4質量部に分散させた分散液を作製した。得られた分散液をポリエチレン系樹脂微多孔フィルムの表面にグラビアコーターを用いて塗布した後、ポリエチレン系樹脂微多孔フィルムを70℃にて乾燥させて耐熱性ポリエチレン系樹脂微多孔フィルムを得た。
[評価]
実施例及び比較例の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムについて、空隙率を上述した方法に従って測定した。
実施例及び比較例の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムについて、25〜180℃まで昇温速度5℃/分で加熱したときの最大熱収縮率を上述した方法に従って測定した。なお、表1においては、単に「最大熱収縮率」と表記した。
実施例及び比較例の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムについて、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率を、上述した方法に従って測定した。なお、表1においては、単に「厚み変化率」と表記した。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの初期厚みT0及び圧縮厚みT1を表1に示した。
実施例及び比較例の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムについて、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの透気度の変化率を、上述した方法に従って測定した。なお、表1においては、単に「透気度の変化率」と表記した。耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムの初期透気度P0及び圧縮透気度P1を表1に示した。
上記結果を表1に示す。
Figure 2017078153
本発明の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に用いられる。
1 押出機
2 Tダイ
2a 押出口
3 第1冷却ロール
4 第2冷却ロール
A プロピレン系樹脂フィルム

Claims (6)

  1. 微小孔部を有するオレフィン系樹脂微多孔フィルムを含み、35MPaの圧力を厚み方向に作用させたときの厚み変化率が5%以下であり、空隙率が40〜60%であり、25〜180℃まで昇温速度5℃/分で加熱したときの最大熱収縮率が25%以下であることを特徴とする耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルム。
  2. 厚み変化率が4%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルム。
  3. オレフィン系樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された皮膜層を更に含み、
    上記皮膜層は、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有する重合性化合物の重合体を含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐熱性オレフィン系樹脂微多孔フィルム。
  4. オレフィン系樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を有するオレフィン系樹脂延伸フィルムを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のオレフィン系樹脂微多孔フィルム。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載のオレフィン系樹脂微多孔フィルムを含んでいることを特徴とする非水電解液二次電池用セパレータ。
  6. 負極と、正極と、請求項5に記載の非水電解液二次電池用セパレータと、非水電解液とを含んでいることを特徴とする非水電解液二次電池。
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