JP2017128639A - 耐熱性合成樹脂微多孔フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、低熱収縮性及び低流動性を有する耐メルトダウン性に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供する。【解決手段】本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、オレフィン系樹脂を含有し、ゲル分率が30%以上、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erが0.01MPa以上、TMAの最大収縮率が25%以下であることを特徴とし、好ましくは、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成され且つ1分子中に重合性官能基を2個以上有する重合性化合物の重合体を含む皮膜層を含有しているので、低熱収縮性及び低流動性を有し、耐メルトダウン性に優れている。【選択図】 なし
Description
本発明は、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに関する。
従来から携帯用電子機器の電池としてリチウムイオン二次電池が用いられている。このリチウムイオン二次電池は、一般的に正極と、負極と、セパレータとを電解液中に配設することによって構成されている。正極は、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムが塗布されることで形成される。負極は、銅箔の表面にカーボンが塗布されることで形成される。そして、セパレータは、正極と負極とを仕切るように配設され、電極間の電気的な短絡を防止している。
リチウムイオン二次電池の充電時には、正極からリチウムイオンが放出されて負極内に移動する。一方、リチウムイオン二次電池の放電時には、負極からリチウムイオンが放出されて正極内に移動する。したがって、セパレータには、リチウムイオンなどのイオン透過性を有していることが必要とされている。
セパレータとしては、絶縁性に優れ、低コストであることから、プロピレン系樹脂などの合成樹脂を用いた合成樹脂微多孔フィルムが用いられている。
合成樹脂微多孔フィルムは、合成樹脂フィルムを延伸することによって製造されている。延伸法によって製造された合成樹脂微多孔フィルムは、延伸による高い残留応力により、高温下で熱収縮し、その結果、正極と負極とが短絡する可能性が指摘されている。したがって、合成樹脂微多孔フィルムの熱収縮率を低減させることにより、リチウムイオン二次電池の安全性を確保することが試みられている。
特許文献1には、電子線照射により処理され、100℃における熱機械分析(TMA)の値が、0%〜−1%である合成樹脂微多孔フィルムがリチウムイオン二次電池用セパレータとして開示されている。
近年、リチウムイオン二次電池は高容量化に伴い、エネルギーの高い電極を用いられる傾向にある。このような電極は短絡すると急激に発熱し、100℃以上の高温に達することがある。特開2003−22793号公報のセパレータのように、TMAの値を0%〜−1%にするだけでは、電池内が高温になった場合、合成樹脂微多孔フィルムが熱によって融けて電極にしみ込んでしまい、正極と負極との間の短絡を防止することができず、リチウムイオン二次電池の安全性を確保できないことがある。したがって、熱収縮性に優れると共に、異常高温になっても融けにくい性質(低流動性)を有するセパレータが必要とされている。
そこで、本発明は、低熱収縮性及び低流動性を有する耐メルトダウン性に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供する。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、オレフィン系樹脂を含有し、ゲル分率が30質量%以上、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erが0.01MPa以上、TMAの最大収縮率が25%以下であることを特徴とする耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに関する。
本発明によれば、低熱収縮性及び低流動性を有する耐メルトダウン性に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、合成樹脂微多孔フィルムと、表面の少なくとも一部に皮膜層を含有している。
(合成樹脂微多孔フィルム)
合成樹脂微多孔フィルムとしては、オレフィン系樹脂を少なくとも含有し、リチウムイオン二次電池などの従来の二次電池においてセパレータとして用いられている微多孔フィルムであれば、特に制限されずに用いることができる。
合成樹脂微多孔フィルムとしては、オレフィン系樹脂を少なくとも含有し、リチウムイオン二次電池などの従来の二次電池においてセパレータとして用いられている微多孔フィルムであれば、特に制限されずに用いることができる。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムはオレフィン系樹脂を少なくとも含んでいる。オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が好ましく、エチレン系樹脂がより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。プロピレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。プロピレン系樹脂中におけるプロピレン成分の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられ、エチレンが好ましい。
エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどの単独重合体、線状低密度ポリエチレン、及びエチレン−プロピレン共重合体などのエチレン系樹脂を含む重合体が挙げられる。また、エチレン系樹脂微多孔フィルムは、上記エチレン系樹脂を含んでいれば、他のオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。エチレン系樹脂中におけるエチレン成分の含有量は、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは80質量%以上である。
オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、3万〜50万が好ましく、5万〜48万がより好ましい。プロピレン系樹脂の重量平均分子量は、25万〜50万が好ましく、28万〜48万がより好ましい。エチレン系樹脂の重量平均分子量は、3万〜40万が好ましく、5万〜30万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、製膜安定性に優れると共に、微小孔部が均一に形成されるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
オレフィン系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、5.0〜30が好ましく、7.5〜25がより好ましい。プロピレン系樹脂の分子量分布は、7.5〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。エチレン系樹脂の分子量分布は、5.0〜30が好ましく、8.0〜27がより好ましい。分子量分布が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、高い空孔率を有するオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
ここで、オレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、オレフィン系樹脂6〜7mgを採取し、採取したオレフィン系樹脂を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含んでいるo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてオレフィン系樹脂濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転数25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてオレフィン系樹脂をo−DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってオレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量を測定することができる。
オレフィン系樹脂における重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
オレフィン系樹脂の融点は、130〜170℃が好ましく、133〜165℃がより好ましい。プロピレン系樹脂の融点は、160〜170℃が好ましく、160〜165℃がより好ましい。エチレン系樹脂の融点は、130〜140℃が好ましく、133〜138℃がより好ましい。融点が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、開孔性に優れるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル社 装置名「DSC220C」など)を用い、下記手順に従って測定することができる。先ず、オレフィン系樹脂10mgを25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで加熱し、250℃にて3分間に亘って保持する。次に、オレフィン系樹脂を250℃から降温速度10℃/分にて25℃まで冷却して25℃にて3分間に亘って保持する。続いて、オレフィン系樹脂を25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで再加熱し、この再加熱工程における吸熱ピークの頂点の温度を、オレフィン系樹脂の融点とする。
合成樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を含んでいる。微小孔部は、フィルム厚み方向に連通していることが好ましく、これにより耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに優れた透気性を付与することができる。このような耐熱性合成樹脂微多孔フィルムはその厚み方向にリチウムイオンなどのイオンを透過させることが可能となる。
合成樹脂微多孔フィルムの透気度は、50〜600sec/100mLが好ましく、100〜300sec/100mLがより好ましい。透気度が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムによれば、イオン透過性に優れる耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、合成樹脂微多孔フィルムの透気度は、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下でJIS P8117に準拠して、合成樹脂微多孔フィルムの長さ方向に10cm間隔で10箇所測定し、その相加平均値を算出することにより得られた値とする。
合成樹脂微多孔フィルムの空孔率は、30〜70%が好ましく、35〜65%がより好ましい。空孔率が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムによれば、イオン透過性に優れる耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、合成樹脂微多孔フィルムの空孔率は、ピクノメーターを用いて、真体積を測定して求めることができる。具体的には、まず、合成樹脂微多孔フィルムを150mm×150mmの正方形に切り出す。次に、フィルムの厚みを測定した後に、フィルムの質量を電子天秤を用いて秤量する。秤量した後のフィルムを全自動ピクノメーター(Micro−Ultrapyc 1200e,カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)を用いて、次式に従い空孔率を測定する。このときの環境温度は25℃、セルサイズは4.5cm3、ヘリウムガスの圧力設定は17psiである。
空孔率(%)=(見かけの体積−真体積)/見かけの体積×100
見かけの体積:切り出したフィルムの面積と厚みの実測値から求めた体積
真体積:ピクノメーターにより測定した体積
空孔率(%)=(見かけの体積−真体積)/見かけの体積×100
見かけの体積:切り出したフィルムの面積と厚みの実測値から求めた体積
真体積:ピクノメーターにより測定した体積
合成樹脂微多孔フィルムの厚みは、5〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
なお、本発明において、合成樹脂微多孔フィルムの厚みの測定は、次の要領に従って行うことができる。すなわち、合成樹脂微多孔フィルムの任意の10箇所をダイヤルゲージで測定し、その相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの厚みとする。
合成樹脂微多孔フィルムとしては、開孔性および機械特性の点から延伸法によって製造されたオレフィン系樹脂微多孔フィルムがより好ましい。延伸法によって製造されたオレフィン系樹脂微多孔フィルムは、延伸によって発生した残留歪みによって、高温時に特に熱収縮を生じやすい。一方、本発明の皮膜層によれば、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの熱収縮を低減することができ、したがって、本発明による効果を特に発揮できる。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムを延伸法により製造する方法として、具体的には、
(1)オレフィン系樹脂を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルム中にラメラ結晶を発生及び成長させる工程と、オレフィン系樹脂フィルムを延伸してラメラ結晶間を離間させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;
(2)オレフィン系樹脂と充填剤とを含むオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸してオレフィン系樹脂と充填剤との界面を剥離させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;及び
(3)オレフィン系樹脂と抽出可能物(例えば、充填剤や可塑剤など)とを含んでいるオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、オレフィン系樹脂フィルムから抽出可能物を溶剤によって抽出することにより微小孔部を形成する工程と、微小孔部を形成したオレフィン系樹脂フィルムを延伸することによりオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法などが挙げられる。
(1)オレフィン系樹脂を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルム中にラメラ結晶を発生及び成長させる工程と、オレフィン系樹脂フィルムを延伸してラメラ結晶間を離間させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;
(2)オレフィン系樹脂と充填剤とを含むオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸してオレフィン系樹脂と充填剤との界面を剥離させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;及び
(3)オレフィン系樹脂と抽出可能物(例えば、充填剤や可塑剤など)とを含んでいるオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、オレフィン系樹脂フィルムから抽出可能物を溶剤によって抽出することにより微小孔部を形成する工程と、微小孔部を形成したオレフィン系樹脂フィルムを延伸することによりオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法などが挙げられる。
なかでも、溶剤を使用することなく、微小孔部が均一に且つ多数形成されることから、(1)の方法が好ましい。
(皮膜層)
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、架橋構造を有する重合体を含む皮膜層が形成されている。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、架橋構造を有する重合体を含む皮膜層が形成されている。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に皮膜層を形成することによって、低熱収縮性及び高温における低流動性に優れ、耐メルトダウン性を向上した耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを得ることができる。
皮膜層は、高分子架橋構造を有する重合体を含む。皮膜層は、1分子中に重合性官能基を2個以上有する重合性化合物の重合体を含んでいる。このような重合体を含んでいる皮膜層は、高い硬度を有していると共に、適度な弾性及び伸度を有している。したがって、上記重合体を含んでいる皮膜層を用いることによって、低熱収縮性及び低流動性の双方に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
皮膜層は、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されていればよいが、合成樹脂微多孔フィルムの表面全面に形成されていることが好ましく、合成樹脂微多孔フィルムの表面全面とは、及び合成樹脂微多孔フィルムの一方の面から反対面へ連続する微小孔部の壁面を含めた表面である。
また、重合性化合物を用いることにより、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部を閉塞しないように、合成樹脂微多孔フィルム表面に皮膜層を形成することができる。これは、低粘度の重合性化合物をそのまま被覆してもよいし、重合性化合物を溶剤で希釈して粘度を下げてから合成樹脂微多孔フィルムの表面に被覆してもよい。これによって、合成樹脂微多孔フィルム表面全面に薄く被覆することができ、優れた透気性及びイオン透過性が確保された耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
重合性化合物は、1分子中に重合性官能基を2個以上有している。重合性官能基は特に限定されるものでないが、ラジカル重合性官能基が好ましい。ラジカル重合性官能基は、活性エネルギー線の照射によってラジカル重合可能なラジカル重合性不飽和結合を含んでいる官能基である。ラジカル重合性官能基としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基やビニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有する多官能性アクリル系モノマー、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有するビニル系オリゴマー、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能性(メタ)アクリレート変性物、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する樹枝状ポリマー、及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
多官能性アクリル系モノマーは、ラジカル重合性官能基を1分子中に2個以上有していればよいが、ラジカル重合性官能基を1分子中に3個以上有している3官能以上の多官能性アクリル系モノマーが好ましく、ラジカル重合性官能基を1分子中に3〜6個有している3官能〜6官能の多官能性アクリル系モノマーがより好ましい。
多官能性アクリル系モノマーとしては、
1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2官能の多官能性アクリル系モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の多官能性アクリル系モノマー
などを例示することができる。
1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2官能の多官能性アクリル系モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の多官能性アクリル系モノマー
などを例示することができる。
ビニル系オリゴマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリブタジエン系オリゴマーなどを例示することができる。なお、ポリブタジエン系オリゴマーとは、ポリ(1,2−ブタジエン)オリゴマー、ポリ(1,3−ブタジエン)オリゴマーなどのブタジエン骨格を有するオリゴマーを意味する。
ポリブタジエン系オリゴマーは市販されている製品を用いることができる。ポリ(1,2−ブタジエン)オリゴマーとしては、日本曹達社製 商品名「B−1000」、「B−2000」及び「B−3000」などを例示することができる。
多官能性(メタ)アクリレート変性物としては、多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、及び多官能性(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物が好ましく挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物は、好ましくは、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。また、多官能性(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物は、好ましくは、多価アルコールとカプロラクトンとの付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーとは、(メタ)アクリロイル基を配置した枝分子を放射状に組み立てた球状の巨大分子を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーとしては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するデンドリマー、及び1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチポリマーが挙げられる。
デンドリマーとは、(メタ)アクリレートを枝分子とし、(メタ)アクリレートを球状に集積することによって得られる球状高分子を意味する。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチポリマーとは、ABx型の多官能性モノマー(ここでAとBは互いに反応する官能基、Bの数Xは2以上)を重合させて得られる不規則な分岐構造を有する高分岐構造体の表面および内部を(メタ)アクロイル基によって修飾することによって得られる球状高分子を意味する。
ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物とを反応させることにより得られる。
本発明においては、上記した重合性化合物のうち、多官能性アクリル系モノマーが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。これらによれば、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに優れた耐メルトダウン性を付与することができる。
ラジカル重合性化合物として多官能性アクリル系モノマーを用いる場合、ラジカル重合性化合物中における多官能性アクリル系モノマーの含有量は、30質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。多官能性アクリル系モノマーを30質量%以上含んでいる重合性化合物を用いることにより、得られる耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに、透気性を低下させることなく優れた耐メルトダウン性を付与することができる。
なお、本発明においては、重合性化合物としては、上記した重合性化合物のうちの一種のみを用いてもよく、二種以上の重合性化合物を併用しても構わない。
皮膜層は、上述した重合性化合物の重合体を含んでいる。この重合体は、活性エネルギー線の照射によって重合性化合物が重合されてなる重合体であることが好ましい。即ち、上記重合体は、活性エネルギー線の照射による重合性化合物の重合体であることが好ましい。このような重合体を含んでいる皮膜層は高い硬度を有しており、これにより高温下における耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの熱収縮および流動性を低減して、耐メルトダウン性を向上させることができる。
活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば、電子線、プラズマ、紫外線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。なかでも、電子線及び紫外線が好ましく、電子線がより好ましい。
皮膜層中の重合体の一部と合成樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の一部とが化学的に結合していることが好ましい。このような重合体を含んでいる皮膜層を用いることによって、上述した通り、高温下における熱収縮が低減されて優れた耐熱性を有すると共に優れた低流動性を有する耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。化学的な結合としては、特に制限されず、共有結合、イオン結合、及び分子間結合などが挙げられる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルム中における皮膜層の含有量は、合成樹脂微多孔フィルムを構成している樹脂100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、3〜45質量部がより好ましく、5〜40質量部が特に好ましい。皮膜層の含有量を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム表面の微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができる。これにより、透気性を低下させることなく耐熱性及び耐メルトダウン性が向上されている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
皮膜層は、無機粒子を含んでいなくても、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐メルトダウン性を向上させることができる。したがって、皮膜層は、無機粒子を含んでいないことが好ましい。しかしながら、必要に応じて、皮膜層は無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、耐熱性多孔質層に一般的に用いられている無機粒子が挙げられる。無機粒子を構成する材料としては、例えば、Al2O3、SiO2、TiO2、及びMgOなどが挙げられる。
(耐熱性合成樹脂微多孔フィルム)
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、上述した通り、合成樹脂微多孔フィルムと、この合成樹脂微多孔フィルム表面の少なくとも一部に形成された皮膜層とを含んでいる。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、上述した通り、合成樹脂微多孔フィルムと、この合成樹脂微多孔フィルム表面の少なくとも一部に形成された皮膜層とを含んでいる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、ゲル分率は30質量%以上が好ましく、35〜99質量%がより好ましく、40〜90質量%が特に好ましい。ゲル分率が30質量%以上であると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、耐メルトダウン性により優れている。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、ゲル分率は下記の要領で測定される。先ず、耐熱性微多孔フィルムを切断することによって約0.1gの試験片を得る。この試験片の重量[W1(g)]を秤量した後に、試験片を試験管に充填する。次に、試験管に20mLのキシレンを注ぎ、試験片全体をキシレンに浸す。試験管にアルミニウム製のフタを被せて、130℃に加熱した油浴中に試験管を24時間に亘って浸漬する。油浴から取り出した試験管内の内容物を温度が下がる前に速やかにステンレス製メッシュかご(#200)にあけて不溶物をろ過する。なお、メッシュかごの重量[W0(g)]は事前に秤量しておく。メッシュかご及びろ過物を80℃で7時間減圧乾燥した後、メッシュかご及びろ過物の総重量[W2(g)]を秤量する。そして、次式に従いゲル分率を計算する。
ゲル分率(質量%)=100×(W2−W0)/W1
ゲル分率(質量%)=100×(W2−W0)/W1
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erは0.01MPa以上が好ましく、0.1〜10000MPaがより好ましく、0.1〜1000MPaが特に好ましい。動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erが0.01MPa以上であると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、耐メルトダウン性により優れている。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erは下記の要領で測定される。試料片を(幅方向)30mm×(押出方向)35mmのサイズに切り出す。巻長さ方向に沿って試料片を折りたたみ、(幅方向)5mm×(押出方向)35mmのサイズにした。空気中で測定し、測定には動的粘弾性測定装置(DVA−200、アイ・ティー計測制御社製)を用い、下記条件にて貯蔵弾性率の温度分散の測定を行った。
変形様式:引張、つかみ長間:25mm、測定開始温度:40℃、測定終了温度:345℃、測定終了の下限弾性率:10Pa、測定終了の下限動ちから:0.01cN、昇温速度:10℃/min、データ取込間隔:1℃毎、測定周波数:1Hz、歪:0.1%、静/動力比:1、上限伸び率:50%、最小荷重:1cN。
変形様式:引張、つかみ長間:25mm、測定開始温度:40℃、測定終了温度:345℃、測定終了の下限弾性率:10Pa、測定終了の下限動ちから:0.01cN、昇温速度:10℃/min、データ取込間隔:1℃毎、測定周波数:1Hz、歪:0.1%、静/動力比:1、上限伸び率:50%、最小荷重:1cN。
TMA測定における耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの最大熱収縮率は、25%以下であるが、0〜20%以下が好ましく、0〜15%がより好ましい。耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、皮膜層によって高温下における熱収縮が低減されており、優れた耐メルトダウン性を有している。したがって、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの最大熱収縮率を25%以下とすることができる。
なお、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムのTMA測定における最大熱収縮率の測定は、次の通りに行うことができる。先ず、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを切断することにより、平面長方形状の試験片(幅3mm×長さ30mm)を得る。この時、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの長さ方向(押出方向)と試験片の長さ方向とを平行にする。試験片の長さ方向の両端部をつかみ具により把持して、TMA測定装置(例えば、セイコーインスツル社製 商品名「TMA−SS6000」など)に取り付ける。この時、つかみ具間の距離を10mmとし、つかみ具は試験片の熱収縮に伴って移動可能とする。そして、試験片に長さ方向に19.6mN(2gf)の張力を加えた状態で、空気中で試験片を25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度にて加熱し、各温度においてつかみ具間の距離L(mm)を測定し、下記式に基づいて熱収縮率を算出し、その最大値を最大熱収縮率とする。
熱収縮率(%)=100×(10−L)/10
熱収縮率(%)=100×(10−L)/10
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの突き刺し強度は、特に限定されないが、0.6N以上であることが好ましく、0.8N以上であることがより好ましく、1.0〜7.0Nが更に好ましい。突き刺し強度が0.6N以上である耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、機械的強度に優れており、これにより電池の生産性や安全性を向上させることができる。
なお、本発明において、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの突き刺し強度は、JIS Z1707(1998)に準拠して測定することができる。具体的には、直径1.0mm、先端形状が半径0.5mmの半円形である針を50mm/分の速度で耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに突刺し、針が貫通するまでの最大応力を突き刺し強度とする。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの透気度は、特に限定されないが、50〜600sec/100mLが好ましく、100〜300sec/100mLがより好ましい。
なお、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの透気度の測定方法としては、合成樹脂微多孔フィルムの透気度の上述した測定方法と同じ方法が用いられる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの空孔率は、特に限定されないが、30〜70%が好ましく、35〜65%がより好ましい。空孔率が上記範囲内である耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、機械的強度とイオン透過性の双方に優れている。
合成樹脂微多孔フィルムの空孔率の測定方法としては、合成樹脂微多孔フィルムの空孔率の上述した測定方法と同じ方法が用いられる。
(耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの製造方法)
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に皮膜層を形成することによって耐熱性合成樹脂微多孔フィルムが製造される。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に皮膜層を形成することによって耐熱性合成樹脂微多孔フィルムが製造される。
(塗布工程)
先ず、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、1分子中に重合性官能基を2個以上有する重合性化合物を塗布する塗布工程を実施する。
先ず、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、1分子中に重合性官能基を2個以上有する重合性化合物を塗布する塗布工程を実施する。
合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布することによって、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を付着させることができる。この時、重合性化合物をそのまま合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布してもよい。しかしながら、重合性化合物を溶媒中に分散又は溶解させて塗布液を得、この塗布液を合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布することが好ましい。このように重合性化合物を塗布液として用いることによって、微小孔部の閉塞を低減しながら、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を均一に付着させることができる。これにより皮膜層が均一に形成され、透気性を低下させることなく、耐メルトダウン性が向上された耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを製造することが可能となる。
更に、塗布液は合成樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の壁面も円滑に濡らすことができ、これにより合成樹脂微多孔フィルムの表面だけでなく、この表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面にも皮膜層を形成することができる。これにより皮膜層を合成樹脂微多孔フィルムの表面に強固に一体化させることができる。
また、2官能以上のラジカル重合性官能基を有する重合性化合物は合成樹脂微多孔フィルムに対する濡れ性に優れていることから、合成樹脂微多孔フィルムに微小孔部を閉塞させることなく重合性化合物を塗布することができる。これにより、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部に対応する箇所に、厚み方向に貫通する貫通孔を有している皮膜層を形成することができる。したがって、このような皮膜層によれば、透気性を低下させることなく、耐メルトダウン性が向上された耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
塗布液に用いられる溶媒としては、重合性化合物を溶解又は分散させることができれば、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、クロロホルムなどが挙げられる。なかでも、酢酸エチル、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトンが好ましい。これらの溶媒は、塗布液を合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布した後に容易に除去することができる。さらに、上記溶媒は、リチウムイオン二次電池などの二次電池を構成している電解液との反応性が低く、安全性にも優れている。
塗布液中における重合性化合物の含有量は、1〜25質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができ、したがって、透気性を低下させることなく耐メルトダウン性が向上されている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを製造することができる。
合成樹脂微多孔フィルムへの重合性化合物の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、(1)合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布する方法;(2)重合性化合物中に合成樹脂微多孔フィルムを浸漬して、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布する方法;(3)重合性化合物を溶媒中に溶解又は分散させて塗布液を作製し、この塗布液を合成樹脂微多孔フィルムの表面に塗布した後、合成樹脂微多孔フィルムを加熱して溶媒を除去する方法;及び(4)重合性化合物を溶媒中に溶解又は分散させて塗布液を作製し、この塗布液中に合成樹脂微多孔フィルムを浸漬して、塗布液を合成樹脂微多孔フィルム中に塗布した後、合成樹脂微多孔フィルムを加熱して溶媒を除去する方法が挙げられる。なかでも、上記(3)(4)の方法が好ましい。これらの方法によれば、重合性化合物を合成樹脂微多孔フィルムに均一に塗布することができる。
上記(3)及び(4)の方法において、溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱温度は、用いられる溶媒の種類や沸点によって設定することができる。溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱温度は、30〜130℃が好ましく、40〜120℃がより好ましい。加熱温度を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルムの熱変形や微小孔部の閉塞を低減しつつ、塗布された溶媒を効率的に除去することができる。
上記(3)及び(4)の方法において、溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱時間は、特に制限されず、用いられる溶媒の種類や沸点によって設定することができる。溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱時間は、0.02〜60分が好ましく、0.1〜30分がより好ましい。
上述の通り、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物又は塗布液を塗布することによって、合成樹脂微多孔フィルム表面および内部の孔表面に重合性化合物を付着させることができる。
(照射工程)
次に、重合性化合物を塗布した上記合成樹脂微多孔フィルムに、活性エネルギー線を照射する照射工程を実施する。これにより重合性化合物を重合させて、重合性化合物の重合体を含む皮膜層を、合成樹脂微多孔フィルム表面の少なくとも一部、好ましくは表面全面に一体的に形成することができる。
次に、重合性化合物を塗布した上記合成樹脂微多孔フィルムに、活性エネルギー線を照射する照射工程を実施する。これにより重合性化合物を重合させて、重合性化合物の重合体を含む皮膜層を、合成樹脂微多孔フィルム表面の少なくとも一部、好ましくは表面全面に一体的に形成することができる。
活性エネルギー線を照射することで、合成樹脂微多孔フィルム中に含まれている合成樹脂の一部が分解して、合成樹脂微多孔フィルムの耐メルトダウン性が低下する可能性がある。しかしながら、重合性化合物の重合体を含む皮膜層によれば、上述した通り、合成樹脂微多孔フィルムの耐メルトダウン性の低下を補うことができ、これにより耐メルトダウン性に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することが可能となる。
合成樹脂微多孔フィルムにエチレン系樹脂が含有されている場合には、活性エネルギー線の照射によって、エチレン系樹脂同士が架橋して合成樹脂微多孔フィルム全体の機械的強度、耐メルトダウン性が向上し、得られる耐熱性合成樹脂微多孔フィルムも、優れた機械的強度及び耐メルトダウン性を有している。
そして、合成樹脂微多孔フィルムは架橋構造が付与されることによって、電池内部が高温となってエチレン系樹脂の融点以上となった場合にあっても、合成樹脂微多孔フィルムは、その架橋構造によってフィルムの形態を維持し、正負極間の電気的な短絡を効果的に防止する。
しかも、合成樹脂微多孔フィルムにエチレン系樹脂が含有されている場合には、合成樹脂微多孔フィルムの一部が溶融を開始し、電池内の異常昇温の初期段階において微小孔部が閉塞して優れたシャットダウン効果を発揮し、イオンの通過を阻止して二次電池の放電を停止させて電池内の昇温を阻止し、安全性に優れた二次電池を構成することができる。
合成樹脂微多孔フィルムに対する活性エネルギー線の照射線量は、合成樹脂微多孔フィルムがホモポリプロピレンを含む場合は、20〜100kGyが好ましく、30〜80kGyがより好ましく、40〜70kGyが特に好ましい。また、合成樹脂微多孔フィルムがホモポリエチレンを含む場合は、20〜600kGyが好ましく、30〜500kGyがより好ましく、50〜300kGyが特に好ましい。活性エネルギー線の照射線量を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム中の合成樹脂の劣化を低減しながら重合性化合物を重合させることができ、これにより耐メルトダウン性に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば、電子線、プラズマ、紫外線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。なかでも、電子線及び紫外線が好ましく、電子線がより好ましい。
活性エネルギー線として電子線を用いる場合、合成樹脂微多孔フィルムに対する電子線の加速電圧は特に限定されないが、50〜300kVが好ましく、100〜250kVがより好ましい。電子線の加速電圧を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム中の合成樹脂の劣化を低減しながら皮膜層を形成することができる。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、合成樹脂微多孔フィルムに対する紫外線の積算光量は、1000〜5000mJ/cm2が好ましく、1000〜4000mJ/cm2がより好ましく、1500〜3700mJ/cm2が特に好ましい。なお、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、上記塗布液に光重合開始剤が含まれていることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、及びアントラキノンなどが挙げられる。
活性エネルギー線としてプラズマを用いる場合、合成樹脂微多孔フィルムに対するプラズマのエネルギー密度は特に限定されないが、5〜50J/cm2が好ましく、10〜45J/cm2がより好ましく、20〜45J/cm2が特に好ましい。
照射工程において、酸素濃度が10ppm以下の雰囲気下で、重合性化合物を塗布した合成樹脂微多孔フィルムに活性エネルギー線を照射する。照射工程における雰囲気中の酸素濃度は、10ppm以下が好ましいが、0〜8ppmがより好ましく、0〜5ppmが特に好ましい。このような酸素濃度の雰囲気下で照射することにより、照射工程において、合成樹脂微多孔フィルムに含まれている合成樹脂の酸化劣化を低減することができると共に、皮膜層の架橋密度を高くすることができる。これにより、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐メルトダウン性を向上させることができる。
照射工程は、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。これにより、照射工程における雰囲気中の酸素濃度を容易に調整することができる。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、及びこれらの混合ガスなどが挙げられる。
(加熱工程)
次に、活性エネルギー線を照射した合成樹脂微多孔フィルムを、酸素濃度が10ppm以下の雰囲気下で加熱処理する加熱工程を実施する。加熱工程によれば、上述した照射工程において残存した残存ラジカルを基点として重合性化合物の重合を促進させることができると共に、重合性化合物の重合の促進によっても残存した残存ラジカルを失活させることができる。これにより耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの機械的強度及び耐メルトダウン性を向上させることができる。
次に、活性エネルギー線を照射した合成樹脂微多孔フィルムを、酸素濃度が10ppm以下の雰囲気下で加熱処理する加熱工程を実施する。加熱工程によれば、上述した照射工程において残存した残存ラジカルを基点として重合性化合物の重合を促進させることができると共に、重合性化合物の重合の促進によっても残存した残存ラジカルを失活させることができる。これにより耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの機械的強度及び耐メルトダウン性を向上させることができる。
加熱工程において、活性エネルギー線を照射した合成樹脂微多孔フィルムを、好ましくは基材に含まれるオレフィン樹脂の(融点−70)℃〜(融点−10)℃、より好ましくは(融点−50)℃〜(融点−10)℃、特に好ましくは(融点−30)℃〜(融点−10)℃で加熱処理することが好ましい。合成樹脂微多孔フィルムの加熱処理温度を上記範囲内とすることによって、照射工程において残存した残存ラジカルを基点とした重合性化合物の重合を促進させると共に、合成樹脂微多孔フィルム中の合成樹脂の劣化を低減しながら、重合性化合物の重合の促進によっても残存した残存ラジカルを失活させることができる。
加熱工程において、活性エネルギー線を照射した合成樹脂微多孔フィルムの加熱処理時間は、2分〜3時間が好ましく、20分〜3時間がより好ましい。合成樹脂微多孔フィルムの加熱処理時間を上記範囲内とすることによって、照射工程において残存した残存ラジカルを基点とした重合性化合物の重合を促進させると共に、合成樹脂微多孔フィルム中の合成樹脂の劣化を低減しながら、重合性化合物の重合の促進によっても残存した残存ラジカルを失活させることができる。
加熱工程では、酸素濃度が10ppm以下の雰囲気下で、活性エネルギー線を照射した合成樹脂微多孔フィルムに加熱処理を施す。加熱工程における雰囲気中の酸素濃度は、10ppm以下であるが、0〜8ppmが好ましく、0〜5ppmがより好ましい。このような酸素濃度の雰囲気下で加熱工程を実施することにより、加熱工程において、合成樹脂微多孔フィルムに含まれている合成樹脂の酸化劣化を低減することができると共に、皮膜層の架橋密度を高くすることができる。これにより、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐メルトダウン性を向上させることができる。
加熱工程は、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。これにより、加熱工程における雰囲気中の酸素濃度を容易に調整することができる。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、及びこれらの混合ガスなどが挙げられる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に用いられる。非水電解液二次電池としては、リチウムイオン二次電池などが挙げられる。耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは耐メルトダウン性に優れていることから、このような耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを用いることによって、電池内部が、例えば100〜150℃、特に130〜150℃の高温となった場合であっても、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの収縮及び融解流動による電極間の電気的な短絡を低減することができる。
非水電解液二次電池は、上記耐熱性合成樹脂微多孔フィルムをセパレータとして含んでいれば特に制限されず、正極と、負極と、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを含むセパレータと、非水電解液とを含んでいる。耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは正極及び負極の間に配設され、これにより電極間の電気的な短絡を防止することができる。また、非水電解液は、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部内に少なくとも充填され、これにより充放電時に電極間をリチウムイオンが移動することができる。
正極は、特に制限されないが、正極集電体と、この正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層とを含んでいることが好ましい。正極活物質層は、正極活物質と、この正極活物質間に形成された空隙とを含んでいることが好ましい。正極活物質層が空隙を含んでいる場合には、この空隙中にも非水電解液が充填される。正極活物質はリチウムイオンなどを吸蔵放出することが可能な材料であり、正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムなどが挙げられる。正極に用いられる集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、及びステンレス箔などが挙げられる。正極活物質層は、バインダーや導電助剤などをさらに含んでいてもよい。
負極は、特に制限されないが、負極集電体と、この負極集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層とを含んでいることが好ましい。負極活物質層は、負極活物質と、この負極活物質間に形成された空隙とを含んでいることが好ましい。負極活物質層が空隙を含んでいる場合には、この空隙中にも非水電解液が充填される。負極活物質はリチウムイオンなどを吸蔵放出することが可能な材料であり、負極活物質としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック及びケチェンブラックなどが挙げられる。負極に用いられる集電体としては、銅箔、ニッケル箔、及びステンレス箔などが挙げられる。負極活物質層は、バインダーや導電助剤などをさらに含んでいてもよい。
非水電解液とは、水を含まない溶媒に電解質塩を溶解させた電解液である。リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液としては、例えば、非プロトン性有機溶媒に、リチウム塩を溶解した非水電解液が挙げられる。非プロトン性有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、及びエチレンカーボネートなどの環状カーボネートと、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒などが挙げられる。また、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、及びLiN(SO2CF3)2などが挙げられる。
以下に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[実施例1]
(押出工程)
高密度ポリエチレン(重量平均分子量88,000、分子量分布9.7、融点135℃)を押出機に供給して、樹脂温度185℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度を80℃に設定した冷却ロールで引き取り、冷却した高密度ポリエチレンフィルム(厚み23μm)を得た。なお、成膜速度は25m/分、ドロー比は65であった。
(押出工程)
高密度ポリエチレン(重量平均分子量88,000、分子量分布9.7、融点135℃)を押出機に供給して、樹脂温度185℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度を80℃に設定した冷却ロールで引き取り、冷却した高密度ポリエチレンフィルム(厚み23μm)を得た。なお、成膜速度は25m/分、ドロー比は65であった。
(養生工程)
得られた高密度ポリエチレンフィルムを雰囲気温度125℃の熱風炉中に24時間に亘って静置して養生した。
得られた高密度ポリエチレンフィルムを雰囲気温度125℃の熱風炉中に24時間に亘って静置して養生した。
(第1延伸工程)
養生後の高密度ポリエチレンフィルムを押出方向(長さ方向)に300mm、幅方向に160mmの短冊状に裁断した。一軸延伸装置を用いてこの高密度ポリエチレンフィルムを表面温度が23℃となるようにして50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.5倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
養生後の高密度ポリエチレンフィルムを押出方向(長さ方向)に300mm、幅方向に160mmの短冊状に裁断した。一軸延伸装置を用いてこの高密度ポリエチレンフィルムを表面温度が23℃となるようにして50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.5倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(第2延伸工程)
続いて、一軸延伸装置を用いて高密度ポリエチレンフィルムを表面温度が100℃となるようにして42%/分の延伸速度にて延伸倍率1.6倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
続いて、一軸延伸装置を用いて高密度ポリエチレンフィルムを表面温度が100℃となるようにして42%/分の延伸速度にて延伸倍率1.6倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(アニーリング工程)
しかる後、一軸延伸装置に取り付けたまま、高密度ポリエチレンフィルムをその表面温度が110℃となるように10分間に亘って静置して、高密度ポリエチレンフィルムにアニールを施した。これにより、微小孔部を有する高密度ポリエチレン微多孔フィルム(厚み21μm)を得た。なお、アニール時のホモポリプロピレンフィルムの収縮率は10%とした。
しかる後、一軸延伸装置に取り付けたまま、高密度ポリエチレンフィルムをその表面温度が110℃となるように10分間に亘って静置して、高密度ポリエチレンフィルムにアニールを施した。これにより、微小孔部を有する高密度ポリエチレン微多孔フィルム(厚み21μm)を得た。なお、アニール時のホモポリプロピレンフィルムの収縮率は10%とした。
得られた高密度ポリエチレン微多孔フィルムは、透気度が173sec/100mLであり、空孔率が53%であった。
(塗布工程)
溶媒として酢酸エチル90質量%、及び重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、共栄化学社製 商品名「ライトアクリレートTMP−A」)10質量%を含んでいる塗布液を用意した。次に、塗布液を高密度ポリエチレン微多孔フィルム表面に塗工した後、高密度ポリエチレン微多孔フィルムを60℃で2分間加熱することにより溶媒を除去した。これにより高密度ポリエチレン微多孔フィルム表面全面に重合性化合物を付着させた。
溶媒として酢酸エチル90質量%、及び重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、共栄化学社製 商品名「ライトアクリレートTMP−A」)10質量%を含んでいる塗布液を用意した。次に、塗布液を高密度ポリエチレン微多孔フィルム表面に塗工した後、高密度ポリエチレン微多孔フィルムを60℃で2分間加熱することにより溶媒を除去した。これにより高密度ポリエチレン微多孔フィルム表面全面に重合性化合物を付着させた。
(照射工程)
次に、重合性化合物を付着させた高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、酸素濃度10ppm以下に調整したグローブボックス(M Braun社製 「Labmaster130」)中で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)からなる袋に入れて、袋の開口部を気密的に密閉した。密閉した袋中の酸素濃度は10ppm以下となっていた。この密閉された袋中に入れられている高密度ポリエチレン微多孔フィルムに、加速電圧230kVで吸収線量が200kGyとなるように電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。
次に、重合性化合物を付着させた高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、酸素濃度10ppm以下に調整したグローブボックス(M Braun社製 「Labmaster130」)中で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)からなる袋に入れて、袋の開口部を気密的に密閉した。密閉した袋中の酸素濃度は10ppm以下となっていた。この密閉された袋中に入れられている高密度ポリエチレン微多孔フィルムに、加速電圧230kVで吸収線量が200kGyとなるように電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。
(加熱工程)
続いて、密閉された袋(酸素濃度は10ppm以下)中に入れられており且つ重合性化合物の重合体を被覆した高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、110℃のオーブン中で1時間加熱した。これにより、高密度ポリエチレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されている耐熱性高密度ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
続いて、密閉された袋(酸素濃度は10ppm以下)中に入れられており且つ重合性化合物の重合体を被覆した高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、110℃のオーブン中で1時間加熱した。これにより、高密度ポリエチレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されている耐熱性高密度ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[実施例2]
重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、耐熱性高密度ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、耐熱性高密度ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[実施例3]
(押出工程)
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量500,000、分子量分布7.8、融点135℃)を35質量部、流動パラフィンを65質量部のサイドフィーダーを用いて供給し、二軸スクリュー押出機に供給して、樹脂温度165℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度を25℃に設定した冷却ロールで引き取り、冷却した超高分子量ポリエチレンのゲル状シート(厚み950μm)を得た。なお、製膜速度は5m/分、ドロー比は3であった。
(押出工程)
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量500,000、分子量分布7.8、融点135℃)を35質量部、流動パラフィンを65質量部のサイドフィーダーを用いて供給し、二軸スクリュー押出機に供給して、樹脂温度165℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度を25℃に設定した冷却ロールで引き取り、冷却した超高分子量ポリエチレンのゲル状シート(厚み950μm)を得た。なお、製膜速度は5m/分、ドロー比は3であった。
(延伸工程)
超高分子量ポリエチレンのゲル状シートを押出方向(長さ方向)に70mm、幅方向に70mmの正方形に裁断した。このゲル状シートを表面温度が115℃となるようにして二軸延伸装置を用いて延伸倍率5倍に同時二軸延伸した。
超高分子量ポリエチレンのゲル状シートを押出方向(長さ方向)に70mm、幅方向に70mmの正方形に裁断した。このゲル状シートを表面温度が115℃となるようにして二軸延伸装置を用いて延伸倍率5倍に同時二軸延伸した。
(洗浄工程)
次いで延伸シートを20cm×20cmのアルミニウム製フレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレンの洗浄浴に3分間浸漬し、流動パラフィンを除去する。洗浄した膜を室温で空気乾燥させた。
次いで延伸シートを20cm×20cmのアルミニウム製フレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレンの洗浄浴に3分間浸漬し、流動パラフィンを除去する。洗浄した膜を室温で空気乾燥させた。
(アニーリング工程)
次いで乾燥膜を二軸延伸装置に固定し、10分間115℃で熱固定して微多孔膜を得た(厚み20μm)。
次いで乾燥膜を二軸延伸装置に固定し、10分間115℃で熱固定して微多孔膜を得た(厚み20μm)。
得られた超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムは、透気度が156sec/100mLであり、空孔率が49%であった。
(塗布工程)
実施例1と同様にして、超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムの表面全面にTMPTAを付着させた。
実施例1と同様にして、超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムの表面全面にTMPTAを付着させた。
(照射工程)
次に、重合性化合物を付着させた超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムを、実施例1と同様にして、電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。
次に、重合性化合物を付着させた超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムを、実施例1と同様にして、電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。
(加熱工程)
続いて、実施例1と同様にして、超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されている耐熱性超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
続いて、実施例1と同様にして、超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されている耐熱性超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
得られた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの物性を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の高密度ポリエチレン微多孔フィルムを用いた。なお塗布工程以降は実施していない。
[比較例2]
実施例3の超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムを用いた。なお塗布工程以降は実施していない。
[比較例3]
実施例1の高密度ポリエチレン微多孔フィルムを用いた。なお照射工程以降は以下の通りである。
実施例1の高密度ポリエチレン微多孔フィルムを用いた。なお塗布工程以降は実施していない。
[比較例2]
実施例3の超高分子量ポリエチレン微多孔フィルムを用いた。なお塗布工程以降は実施していない。
[比較例3]
実施例1の高密度ポリエチレン微多孔フィルムを用いた。なお照射工程以降は以下の通りである。
(照射工程)
高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、酸素濃度200ppmに調整したグローブボックス(M Braun社製 「Labmaster130」)中で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)からなる袋に入れて、袋の開口部を気密的に密閉した。この密閉された袋中に入れられている高密度ポリエチレン微多孔フィルムに、加速電圧230kVで吸収線量が200kGyとなるように電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。
高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、酸素濃度200ppmに調整したグローブボックス(M Braun社製 「Labmaster130」)中で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)からなる袋に入れて、袋の開口部を気密的に密閉した。この密閉された袋中に入れられている高密度ポリエチレン微多孔フィルムに、加速電圧230kVで吸収線量が200kGyとなるように電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。
(加熱工程)
続いて、高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、110℃のオーブン中で1時間加熱した。この時、オーブン中には空気を循環させ、オーブン中の酸素濃度を2.1×105ppmとした。これにより、高密度ポリエチレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されている耐熱性高密度ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
続いて、高密度ポリエチレン微多孔フィルムを、110℃のオーブン中で1時間加熱した。この時、オーブン中には空気を循環させ、オーブン中の酸素濃度を2.1×105ppmとした。これにより、高密度ポリエチレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されている耐熱性高密度ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[評価]
耐熱性合成樹脂微多孔フィルム及び合成樹脂微多孔フィルムについて、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Er、TMA最大熱収縮率、透気度、空孔率、ゲル分率及び突刺し強度を上述した手順に従って測定した。これらの結果を表1に示した。なお、表1において、「動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Er」は単に「貯蔵弾性率Er」と表記した。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルム及び合成樹脂微多孔フィルムについて、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Er、TMA最大熱収縮率、透気度、空孔率、ゲル分率及び突刺し強度を上述した手順に従って測定した。これらの結果を表1に示した。なお、表1において、「動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Er」は単に「貯蔵弾性率Er」と表記した。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、合成樹脂微多孔フィルム100質量部に対する皮膜層の含有量を表1に示した。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、耐メルトダウン性に優れ、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に用いられる。
Claims (3)
- オレフィン系樹脂を含有し、ゲル分率が30質量%以上、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erが0.01MPa以上、TMAの最大収縮率が25%以下であることを特徴とする耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。
- 上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成され且つ1分子中に重合性官能基を2個以上有する重合性化合物の重合体を含む皮膜層を含有していることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。
- 合成樹脂微多孔フィルムがエチレン系樹脂を含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016007865A JP2017128639A (ja) | 2016-01-19 | 2016-01-19 | 耐熱性合成樹脂微多孔フィルム |
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JP2016007865A JP2017128639A (ja) | 2016-01-19 | 2016-01-19 | 耐熱性合成樹脂微多孔フィルム |
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JP (1) | JP2017128639A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020179101A1 (ja) | 2019-03-04 | 2020-09-10 | 旭化成株式会社 | ポリオレフィン微多孔膜 |
US20210210818A1 (en) * | 2018-07-13 | 2021-07-08 | Lg Chem, Ltd. | Separator for electrochemical device and electrochemical device including the same |
-
2016
- 2016-01-19 JP JP2016007865A patent/JP2017128639A/ja not_active Withdrawn
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US20210210818A1 (en) * | 2018-07-13 | 2021-07-08 | Lg Chem, Ltd. | Separator for electrochemical device and electrochemical device including the same |
US11936065B2 (en) * | 2018-07-13 | 2024-03-19 | Lg Energy Solution, Ltd. | Separator including polyethylene with highly entangled polymer chains, and electrochemical device including the same |
WO2020179101A1 (ja) | 2019-03-04 | 2020-09-10 | 旭化成株式会社 | ポリオレフィン微多孔膜 |
KR20200106880A (ko) | 2019-03-04 | 2020-09-15 | 아사히 가세이 가부시키가이샤 | 폴리올레핀 미다공막 |
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