JP2017074612A - 拡管機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】拡管機は、軸方向に進退可能なドローバー21に同軸に取り付けられ軸方向の一方向に向かうにつれて径が大きくなるテーパ面17aを有するコーン17と、軸方向に沿ってテーパ面17aと摺動可能な摺接面18aを有するジョー18とを備える。テーパ面17a又は摺接面18aの一方の面に、TiN膜またはTiAlN膜からなる物理気相蒸着膜171が形成され、その物理気相蒸着膜171を形成した面の硬度は150HS以上であり、テーパ面17aの硬度と摺接面18aの硬度との硬度差が50HS以上120HS以下の範囲にある。
【選択図】 図1
Description
この拡管処理については、例えば非特許文献1に記載されている。図1(a)および図1(b)は、非特許文献1に開示された図に基づくものである。その拡管工程では、内外面よりサブマージアーク溶接を施された鋼管1の内側に、拡管機100の拡管ヘッド13を通す。次に、図1(b)に示すように、拡管ヘッド13のコーン17が軸方向に引かれた際に、コーン17およびジョー18の楔作用によってジョー18が径方向に広がり、ジョー18の外側に取り付けたダイ19が鋼管1を押し広げる。
このような拡管処理では、図1(b)に示すように、コーン17とジョー18との接触面である滑り面において摺動することで、ジョー18が径方向に広がる。
これに対し、特許文献1では、コーン17の表層に窒化処理にて0.05〜1.5mm深さの硬化層を形成することが提案されている。また、特許文献2では、ジョー18の硬さがHRC45〜52とし、表面に浸硫窒化処理を施すことが提案されている。また、特許文献3では、コーン17およびジョー18の滑り面における焼き付きを低減させるために、コーン17およびジョー18の滑り面に潤滑油を供給することが提案されている。
ここで、本明細書において、HSは、JIS Z 2246ショア硬さ試験による硬度HSを指す。
本発明は、このような問題点に対してなされたものであり、メンテナンスの間隔をより長くすることが可能な拡管機を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の一態様は、金属製の管の内側に挿入して当該管を拡管するための拡管機であって、軸方向に進退可能な軸体と、上記軸体に同軸に取り付けられ上記軸方向の一方向に向かうにつれて径が大きくなるテーパ面を有するコーンと、上記軸方向に沿って上記テーパ面と摺動可能な摺接面を有する拡径セグメントと、を備え、上記テーパ面又は上記摺接面の一方の面に、TiN膜またはTiAlN膜からなる物理気相蒸着膜が形成されてなり、その物理気相蒸着膜が形成されてなる上記面の硬度は150HS以上であり、上記テーパ面の硬度と上記摺接面の硬度との硬度差が50HS以上120HS以下の範囲にあることを特徴とする。
このように、本発明の一態様では、接触面同士の硬度レベルが高いために摩耗の耐久性が高く、メンテナンスの間隔をより長くすることが可能となる。このことはまた、交換頻度も少なくなり、低コストに繋がる。
<第一実施形態>
(構成)
本実施形態の拡管機の基本構成は、図1で代表される従来の拡管機と同様な構成となっている。すなわち、拡管機100は、図1(a)に示すように、拡管機本体14、アキシャルインフィード15、クロスフィード16を有している。
拡管機本体14は、シリンダ11、ホーン12、および拡管ヘッド13を有している。
クロスフィード16は、ウォーキングビーム式により、紙面に直交する方向に鋼管1の搬送を行う。アキシャルインフィード15は、クロスフィード16によって搬送された鋼管1を、拡管機本体14側に押し込む。
拡管ヘッド13は、図1(b)に示すように、コーン17、ジョー18、及びダイ19を有している。コーン17は、シリンダ11に連結されたドローバー21の先端側に同軸に取り付けられている。ドローバー21が軸体を構成する。ジョー18、及びダイ19が拡径セグメントを構成する。
ジョー18は、周方向に並ぶ複数のセグメントにより構成され、複数のセグメントが組み合わされて管状に配置されている。管状のジョー18の内側に、コーン17が配される。ジョー18の内側は、コーン17の外周に沿った形状に配置されている。そして、ジョー18を構成する各セグメントの内周面はそれぞれ、コーン17の各テーパ面17aと径方向で対向し、相互に軸方向に沿った方向に摺動可能な摺接面18aが形成されている。ここで、テーパ面17a及び摺接面18aを、滑り面と呼ぶ場合もある。
潤滑油供給管20は、コーン17とジョー18の滑り面に潤滑油を供給する。
本実施形態のコーン17のテーパ面17aには、TiN膜またはTiAlN膜からなる物理気相蒸着膜171が形成されている。その物理気相蒸着膜171が形成されたテーパ面17aの硬度は150HS以上である。
また、本実施形態では、ジョーの摺接面18aの硬度を、テーパ面17aの硬度よりも50HS以上120HS以下の範囲だけ小さな硬度に設定する。例えばテーパ面17aの硬度が150Hzであれば、摺接面18aの硬度は、30HS以上100HS以下の範囲の硬度となる。
ジョー18の硬度は、公知の炭素合金鋼などの高強度鋼を使用することで、硬度が70HS以上となるように調整すればよい。
このように構成された拡管機100では、シリンダ11の伸縮によって、コーン17が軸方向に移動することにより、コーン17とジョー18との滑り面(テーパ面17a及び摺接面18a)において互いに乗り上げる(楔作用)。これによって、ジョー18の外周に設けられたダイ19が放射状に同径に広がる。ダイ19の外周面は、鋼管1の内周面に同軸に当接するため、ダイ19が放射状に広がることで、鋼管1が内側から押し広げられ、鋼管1の拡径が行われる。
従来の拡管機では、短期間の使用で、コーン17のテーパ面17aとジョー18の摺接面18aの間で焼き付きが発生する。このとき、コーン17の表面に生じる焼き付きは、コーン17の交換を必要とする。コーン17は高額なため、コーン17の交換は、鋼管の製造コストを大幅に上昇させる。
ここで、硬質皮膜を形成するために、コーン17のテーパ面17aを加熱する必要がある。このような加熱および皮膜形成後の冷却過程での変形を抑止するために、本実施形態では、加熱温度が比較的低い物理気相蒸着法によって、硬質皮膜である物理気相蒸着膜171を形成する。
硬度差が小さいと、軟質側の面だけでなく硬質皮膜にも損傷が生じる場合あるため、硬度差の下限を50HSとした。また、硬度差が大きい場合、軟質側の面の硬度が低く軟質側の磨耗量が大きいと、ダイ19の外周に段差が生じ、鋼管1にその形状が転写されて製品の寸法形状を損なうこととなる。そのため硬度差の上限を120HSとした。
ここで、上記説明では、コーン17のテーパ面17aに物理気相蒸着膜171を形成する場合で説明した。物理気相蒸着膜171を形成する面を、ジョー側の摺接面18aとしても良い。
しかし、軟質側の面が摩耗し製品の寸法形状を損なうようになると、これらの部材を再度製造することになる。この観点からは、大型部材であるコーン17側の摩耗を抑止するためにはコーン17に硬質皮膜処理を施す方が優れている。
コーン17とジョー18の接触面には接触圧が作用する。このとき、局部的な接触となるとその部分の接触圧が大きくなり軟質側面に塑性変形が生じる場合がある。このような塑性変形を防止するためには、軟質側の部材に所定の強度が必要である。このような観点から軟質側の滑り面の硬度を、70HS以上とした。
ここで、図4は、硬質側と軟質側の硬度差それぞれの硬度とそれらの硬度差の関係の位置づけを模式的に示す図である。図4の2つの囲い部である硬度差HSは、硬度差レベル低の方は、軟質側の硬度を40〜60HSまで変化させた場合に硬度差20〜50HSの関係で硬質側の硬度が変化した囲い図である。硬度差レベル高の方は、軟質側の硬度を70〜130HSまで変化させた場合に硬度差50〜120HSの関係で硬質側の硬度が変化した囲い図である。
次に、第二実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、第一実施形態と同様な部材には同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、第一実施形態と同様である。
本実施形態のコーン17は、図5に示すように、コーン本体170と、そのコーン本体170の外周面に着脱可能に取り付けられたライナー172を有する。そして、ライナー172の表面がテーパ面17aを形成する。ライナー172の表面には、物理気相蒸着膜171が形成されている。
各ライナー172は、図6に示すように、コーン本体170に対してボルト30で固定されている。
ここで、図6(b)に示すように、コーン本体170が正十角形状の場合、該正十角形の各辺が1個のセグメント17Aから構成されることで、このコーン本体170は10個のセグメント17Aにより構成される。なお、図3(b)に示すとおり、各セグメント17Aの、コーン17の外周側の各面には、コーン17の軸方向に延びる溝170aが形成されている。溝170aは中央部が最も深くなっており、両端にそれぞれ段差面170bを有する。
ここで、ボルト30は、コーン本体170上にライナー172を着脱可能に固定できる固定具の一例であり、固定具はボルト30に限定されない。
このライナー172は単純な板状部材であり、硬質皮膜処理のための加熱、冷却過程における熱変形の抑止が容易であるため、このライナー172に第一実施形態と同様の硬質皮膜を形成する場合、仕上げ工程が不要となる。この場合であっても、硬質皮膜として物理気相蒸着膜171を使用した方が精度が向上する。
なお、ここではコーン本体170にライナー172を取り付ける場合を例としたが、ジョー18側をライナー172としても同様の効果が得られる。しかし、コーン17の方が厚みが大きいため、ボルト30で取り付けるのが容易である。
その他の作用効果は、上記第一実施形態と同様である。
次に、本発明の実施例について説明する。
本発明例として、図7に示す研究実験用の引き抜き試験機を使用して実験を行った。
この引き抜き試験機による試験は、板試験片51をビード工具50で所定の押し付け力Nで押さえ付けた状態で、引き抜き荷重Fで板試験片51を引き抜く試験である。
試験の押付け圧Nは、面圧20kgf/mm2とした。
ここで本試験では、板試験片51を図1における軟質側のジョー18、ビード工具50を図1における硬質側のコーン17とみなすと、本試験は、拡管機と同様のすべり挙動が評価できる。
本実施例では、板試験片51の硬度を80HSとした。またビード工具50の板試験片51と当接する部分の硬度として、100HS、130HS、200HSのものを用意して引き抜き試験を行った。
VHS = 0.0919HV + 17.305 ・・・(1)
ここで、VHSは換算ショア硬さ、HVはビッカース硬度である。
その試験結果を、図8に示す。
図8から分かるように、硬質側のビードの硬度が100HS(板試験片との硬度差20HS)である場合には、摩擦係数が0.4となり高く、比較的短期間に焼き付きが発生しやすいことが分かる。
一方、ビードの硬度を130HS(板試験片との硬度差50HS)に変化させたところ、摩擦係数は小さくなり、焼き付きは発生しにくくなることが分かった。更に、ビードの硬度を200HS(板試験片との硬度差120HS)に変化させたところ、さらに摩擦係数は小さくなり、更に焼き付きが発生しにくくなることが分かった。スムーズに拡管できるようになった。
このように、コーン17の硬度を150HS以上とし、ジョー18との硬度差を50〜120HSとすることで、焼き付きを抑制できることが確かめられた。
但し、さらに硬度を上げると、コーン17ついては材質が脆くなるので、剥がれて焼き付きを起こす原因となると推定される。
11 シリンダ
12 ホーン
13 拡管ヘッド
14 拡管機本体
15 アキシャルインフィード
16 クロスフィード
17 コーン
17A セグメント
17a テーパ面
18 ジョー(拡径セグメント)
18a 摺接面
19 ダイ
20 潤滑油供給管
21 ドローバー(軸部)
30 ボルト
50 ビード工具
51 板試験片
100 拡管機
170 コーン本体
171 物理気相蒸着膜
172 ライナー
Claims (5)
- 金属製の管の内側に挿入して当該管を拡管するための拡管機であって、
軸方向に進退可能な軸体と、
上記軸体に同軸に取り付けられ上記軸方向の一方向に向かうにつれて径が大きくなるテーパ面を有するコーンと、
上記軸方向に沿って上記テーパ面と摺動可能な摺接面を有する拡径セグメントと、を備え、
上記テーパ面又は上記摺接面の一方の面に、TiN膜またはTiAlN膜からなる物理気相蒸着膜が形成されてなり、その物理気相蒸着膜が形成されてなる上記面の硬度が150HS以上であり、
上記テーパ面の硬度と上記摺接面の硬度との硬度差が50HS以上120HS以下の範囲にあることを特徴とする拡管機。 - 上記物理気相蒸着膜が上記摺接面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の拡管機。
- 上記物理気相蒸着膜が上記テーパ面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の拡管機。
- 上記コーンは、着脱可能なライナーを有し、そのライナーの上記摺接面と対向可能な面が上記テーパ面であることを特徴とする請求項3に記載の拡管機。
- 上記テーパ及び上記摺接面のうち、上記物理気相蒸着膜が形成されていない面の硬度が70HS以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の拡管機。
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