JP2017070929A - コバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸着容量の大きいコバルト吸着材を用いたコバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法を提供する。【解決手段】立設された筒状容器1に供給されたコバルトを含有する被処理水Wは、散水器3を通過して、チタン酸塩2の充填層5へ到達する。チタン酸塩2は、一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示される。充填層5へ到達した被処理水Wは、チタン酸塩2が放出するアルカリ金属イオンによって、二価カチオンとして溶存していたコバルトを二価の水酸化物(水酸化コバルト)として析出する。析出した水酸化コバルトは、チタン酸塩2の粒子に捕捉され、吸着除去される。【選択図】図1
Description
本発明は、放射能汚染水の処理装置及び処理方法に関し、特に、コバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法に関する。
原子力発電所において、原子炉の運転に伴い発生する主な放射性核種には、燃料の核分裂反応により生成するセシウム等の核分裂生成物の他に、原子炉の機器や配管等の構造材から一次冷却水に溶出した微量の金属が放射化されることにより生成する放射化生成物がある。この放射化生成物としては、54Mn、59Fe、58Co、60Co等がある。
従来、原子力発電所(特に、軽水炉型原子力発電所)には、上記54Mn、59Fe、58Co、60Co等の放射性核種(放射化生成物)を除去することを目的として、イオン交換樹脂を用いた原子炉水浄化装置(CUW)が設けられている。
また、例えば、福島第一原子力発電所には、2011年の東日本大震災後、原子炉建屋への地下水流入に伴い発生した大量の放射能汚染水に含まれる放射性の58Co、60Coを除去することを目的として、キレート樹脂を用いた吸着塔が設けられている。
通常、上述のように、放射能汚染水に含まれるコバルト(58Co、60Co)は、イオン交換樹脂やキレート樹脂等の吸着材を充填した吸着塔に、放射能汚染水を通水することにより吸着除去される。吸着破過後の吸着材は新たな吸着材と交換され、使用済みの吸着材は固体廃棄物として処理される。
放射性物質を吸着する吸着材に関しては、例えば、特許文献1に、M2Ti2O5(M:一価カチオン)で表されるチタン酸塩の粉末にバインダーを加えて所定の大きさの粒状体に成形し、更に焼成することにより生成される機械的強度に優れた放射性物質吸着材やそれを用いた処理装置が提案されている。
上記従来の放射性物質吸着材やそれを用いた放射能汚染水の処理装置は、コバルトを含有する放射能汚染水からコバルトを吸着除去するのに好適に用いることができるが、近年では廃棄物低減の観点から、吸着容量がより大きい、即ち吸着材の交換頻度がより少ないコバルト吸着材の開発が望まれている。
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、吸着容量の大きいコバルト吸着材を用いたコバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、第一に本発明は、チタン酸塩を充填するための立設された筒状容器を備え、前記チタン酸塩は一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示される、コバルトを含有する被処理水の処理装置を提供する(発明1)。
かかる発明(発明1)によれば、コバルトを含有する被処理水を、上記一般式で示されるチタン酸塩を充填した筒状容器に通水すると、チタン酸塩が放出するアルカリ金属イオンが水溶液中の水素イオンとイオン交換することで被処理水はアルカリ性を呈するため、被処理水中に二価カチオンとして溶存していたコバルトが二価の水酸化物(水酸化コバルト:Co(OH)2)として析出し、チタン酸塩に吸着される。チタン酸塩を充填する容器が筒状であること及び、この筒状容器が立設して用いられることにより、コバルトを含有する被処理水とチタン酸塩とを効率よく接触させることができるため、チタン酸塩の持つ吸着能力が高く発揮され、被処理水に含有されるコバルトを効果的に吸着除去することができる。
上記発明(発明1)においては、前記筒状容器にコバルトを含有する被処理水を流れ方向が上方から下方であるように供給する機構をさらに備えることが好ましい(発明2)。
かかる発明(発明2)によれば、上記筒状容器の上部から下部に向かってコバルトを含有する被処理水を通水することができるため、重力の働きにより、少ない動力で必要な処理を行うことができ、コストの大幅な削減が可能となる。
上記発明(発明1,2)においては、前記アルカリ金属がカリウムであることが好ましい(発明3)。
かかる発明(発明3)によれば、二チタン酸カリウム(K2Ti2O5)として、特許文献2に記載のチタン酸カリウムの製造方法で得られる不規則な方向に複数の突起が延びている形状のものを使用することにより、一般的な繊維形状の二チタン酸カリウムを使用する場合に比べて、チタン酸塩粒子の粉体強度(圧縮破壊強度)を向上させることができる。
上記発明(発明1−3)においては、前記筒状容器の内部に少なくとも1つの多孔板が嵌設されていることが好ましい(発明4)。
かかる発明(発明4)によれば、上記筒状容器がこのように多孔板を備えることにより、被処理水を通水した際には、流れ方向への抵抗が生まれるため整流作用により通水流速を均一化することができ(散水器としての機能)、また、通水した後の処理水を排出する際には、チタン酸塩が筒状容器から漏出するのを防止することができる(集水器としての機能)ため、効率的に処理を行うことができる。
上記発明(発明4)においては、前記筒状容器内の上部に嵌設された第一の多孔板と、前記筒状容器内の下部に嵌設された第二の多孔板とを備えることが好ましい(発明5)。
かかる発明(発明5)によれば、上記筒状容器が、第一の多孔板と第二の多孔板との間にチタン酸塩が充填される構造であることにより、第一の多孔板は散水器として、第二の多孔板は集水器として、それぞれ機能するため、より効率的に処理を行うことができる。
上記発明(発明1−5)においては、前記筒状容器又は前記筒状容器内においてチタン酸塩が充填された空間のアスペクト比(高さ/直径)が1〜10であることが好ましい(発明6)。
かかる発明(発明6)によれば、上記筒状容器又は上記筒状容器内においてチタン酸塩が充填された空間のアスペクト比が上記範囲であることにより、大きい吸着容量を達成することができるため、チタン酸塩の交換作業の頻度や費用を低減することができる。筒状容器又は筒状容器内においてチタン酸塩が充填された空間の高さは、破過時間をできるだけ長くし、より大きい吸着容量を達成するためには高ければ高い程よいが、高すぎると筒状容器の転倒防止のための補強にコストがかかり経済的に好ましくない。よって、筒状容器又は筒状容器内においてチタン酸塩が充填された空間の高さとその直径の比の範囲は、1〜10が好適であり、2〜5がより好適である。
上記発明(発明1−6)においては、前記筒状容器の側面の一部又は全体が該筒状容器の内部を目視できる透明な素材からなることが好ましい(発明7)。
上記チタン酸塩の交換時期を適切に判断するためには、コバルトを含有する被処理水を筒状容器に通水した後の処理水中のコバルトを採取して分析する必要があり、運転管理が煩雑になる。かかる発明(発明7)によれば、チタン酸塩に吸着したコバルト水酸化物は青紫色を呈するので、目視により上記チタン酸塩の破過状況をより明確に確認することができるため、上記チタン酸塩の適切な交換時期を容易に判断することができる。
上記発明(発明1−7)においては、前記コバルトを含有する被処理水のpHを4〜7の範囲に調整する機構をさらに有することが好ましい(発明8)。
かかる発明(発明8)によれば、コバルトを含有する被処理水のpHを4〜7の範囲に調整する機構を有することで、上記筒状容器に通水した被処理水から析出した水酸化コバルトが凝集して粗大化し、上記チタン酸イオン粒子の空隙を埋めて筒状容器が閉塞してしまうのを防ぐことができ、また、チタン酸塩のアルカリが多量に消費されて水酸化コバルトが析出しないことにより全くコバルトが吸着除去されないという状態を防ぐことができる。
第二に本発明は、コバルトを含有する被処理水を、立設された筒状容器に充填されているチタン酸塩に接触させることにより該コバルトを吸着する工程を有し、前記チタン酸塩は一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示される、コバルトを含有する被処理水の処理方法を提供する(発明9)。
かかる発明(発明9)によれば、上記一般式で示されるチタン酸塩が充填されている筒状容器にコバルトを含有する被処理水を通水すると、チタン酸塩が放出するアルカリ金属イオンが水溶液中の水素イオンとイオン交換することで被処理水はアルカリ性を呈するため、被処理水中に二価カチオンとして溶存していたコバルトが二価の水酸化物(水酸化コバルト:Co(OH)2)として析出し、チタン酸塩に吸着される。チタン酸塩を筒状容器に充填して用いること及び、この筒状容器を立設して用いることにより、コバルトを含有する被処理水とチタン酸塩とが効率よく接触するので、チタン酸塩の持つ吸着能力が高く発揮され、被処理水に含有されるコバルトを効果的に吸着除去することができる。
本発明のコバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法によれば、チタン酸塩を充填する容器が筒状であること及び、この筒状容器が立設して用いられることにより、コバルトを含有する被処理水とチタン酸塩とを効率よく接触させることができるため、チタン酸塩の持つ吸着能力が高く発揮され、被処理水に含有されるコバルトを効果的に吸着除去することができる。
以下、本発明のコバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
[コバルトを含有する被処理水の処理装置]
図1は、本発明の一実施形態によるコバルトを含有する被処理水の処理装置が備える筒状容器1を示している。
図1は、本発明の一実施形態によるコバルトを含有する被処理水の処理装置が備える筒状容器1を示している。
筒状容器1は、コバルトを含有する被処理水から該コバルトを吸着除去するためのものであって、最上部に入口6が、最下部に出口7がそれぞれ設けられている。本実施形態において、筒状容器1は円筒形状である。筒状容器1の断面が円状であることによって、筒状容器1内に被処理水をより均一に流通させることができる。なお、筒状容器1の断面の形状は特に限定されるものではなく、楕円状や多角状であってもよい。
また、筒状容器1内の上部には散水器3として、格子状構造を有する第一の多孔板が、下部には集水器4として、格子状構造を有する第二の多孔板が、それぞれ嵌設されており、散水器3と集水器4との間の充填層5に、一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示されるチタン酸塩2が吸着材として充填されている。チタン酸塩2を充填した筒状容器1は、立設して用いられる。コバルトを含有する被処理水Wは、pHを4〜7の範囲に調整した後に、流れ方向が筒状容器1の上方から下方であるように入口6から供給される。
本実施形態において、上記アルカリ金属はカリウムである。アルカリ金属がカリウムである二チタン酸カリウム(K2Ti2O5)は、溶融法等の一般的な方法で合成すると繊維形状として得られるが、特許文献2に記載のチタン酸カリウムの製造方法、つまり、チタン源及びカリウム源のメカノケミカルな粉砕で得られる粉砕混合物を焼成する方法を用いることにより、不規則な方向に複数の突起が延びている形状として得ることが可能である。この不規則な方向に複数の突起が延びている形状の二チタン酸カリウムを使用することにより、一般的な繊維形状の二チタン酸カリウムを使用する場合に比べて、二チタン酸カリウム粒子の粉体強度(圧縮破壊強度)を向上させることができる。
散水器3の格子状構造の格子間隔は0.1〜0.5mmである。筒状容器1内に供給された被処理水Wは、散水器3によって流れ方向への抵抗が生まれるため、整流作用により通水速度が均一化される。散水器3の格子状構造の格子間隔が上記範囲であることにより、散水器としての機能がより適切に発揮される。
集水器4の格子状構造の格子間隔は0.1〜0.5mmである。集水器4によって筒状容器1に充填されたチタン酸塩2が捕捉されるため、出口7からのチタン酸塩2の漏出が防止される。集水器4の格子状構造の格子間隔が上記範囲であることにより、散水器としての機能がより適切に発揮される。
多孔板の格子間隔又は細隙間隔は、大きすぎると整流作用が小さくなったりチタン酸塩2が筒状容器1から漏出してしまったりするおそれがあるため、0.5mm以下が好適である。また、小さすぎると被処理水の通水時の圧力損失が大きくなりポンプ動力の負荷が大きくなるおそれがあるため、0.1mm以上が好適である。
筒状容器1のアスペクト比(高さ/直径)又は筒状容器1内においてチタン酸塩2が充填された空間(充填層5)のアスペクト比は1〜10である。筒状容器1又は充填層5のアスペクト比が上記の範囲であることにより、大きい吸着容量を達成することができるため、チタン酸塩2の交換作業の頻度や費用を低減することができる。
筒状容器1は、側面全体が透明なガラスからなる。側面が透明なガラス製であることにより、コバルト水酸化物の吸着により青紫色となったチタン酸塩2の吸着帯が可視化されるので、筒状容器1に通水した後の被処理水中Wのコバルトを採取して分析することなく、目視によりチタン酸塩2の破過状況を明確に確認することができる。従って、吸着材の交換時期を容易に判断することができる。
なお、筒状容器1の側面の形状は、全体が透明な素材でなくてもよい。例えば、側面の一部に長手方向に沿って筒状容器1の上端から下端まで延びる透明な素材による窓部が形成されていてもよいし、側面の一部に長手方向に沿って筒状容器1の上端から下端まで透明な素材による複数の窓部が形成されていてもよい。透明な素材としては、ガラス以外にも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネイド樹脂、ポリスチレン樹脂、透明ABSプラスチック等を用いることが可能である。また、ここでいう透明な素材とは、筒状容器1の内部を目視できれば必ずしも無色透明である必要はなく、半透明や着色透明の素材であってもよい。このように、筒状容器1の側面の形状や素材は用途に合わせて変化させることができる。
チタン酸塩2は、粒径が0.001〜0.15mmのチタン酸塩粉末の一次粒子の造粒体である。チタン酸塩粉末を一次粒子として造粒体を生成することにより、一次粒子が複数個会合することで形成される空隙が多数存在するため、多孔質構造となった造粒体は、被処理水をより浸透させることができる。そのため、チタン酸塩2と析出した水酸化コバルトとの接触効率が向上し、より効果的に被処理水Wに含まれるコバルトの吸着除去を行うことができる。また、上記アルカリ金属がカリウムである場合には、一次粒子としてのチタン酸塩粉末の粒径が0.001〜0.15mmであると、上述の不規則な方向に複数の突起が延びている形状の二チタン酸カリウム(K2Ti2O5)とすることが可能となるため、粉体強度(圧縮破壊強度)を向上させることができる。
上記造粒体は、粒径が0.15〜3mmである。上記造粒体の粒径が上記範囲であることにより、筒状容器1への被処理水の通水時の圧力損失が小さくなるため、汎用ポンプによって通水を行うことが可能となり、コストを低減させることができる。
筒状容器1の前段には、コバルトを含有する被処理水WのpHを4〜7の範囲に調整する機構が設けられている。コバルトを含有する被処理水WのpHを7以下に調整すると、水酸化コバルトが速やかに二価カチオンとなって溶解するため、析出した水酸化コバルトが凝集して粗大化し、チタン酸塩2粒子の空隙を埋めて筒状容器1が閉塞してしまうのを防ぐことができる。また、pHを4以上に調整すると、チタン酸塩2のアルカリが多量に消費されて水酸化コバルトが析出しないことにより全くコバルトが吸着除去されないという状態を防ぐことができる。
[コバルトを含有する被処理水の処理方法]
次に、上述したような本実施形態のコバルトを含有する被処理水の処理装置を用いたコバルトを含有する被処理水の処理方法について説明する。
次に、上述したような本実施形態のコバルトを含有する被処理水の処理装置を用いたコバルトを含有する被処理水の処理方法について説明する。
まず、pHを4〜7の範囲に調整した後のコバルトを含有する被処理水Wを、筒状容器1に、流れ方向が筒状容器1の上方から下方であるように入口6から供給する。チタン酸塩2は、筒状容器1内の上部に嵌設されている散水器3と、下部に嵌設されている集水器4との間の充填層5に充填されている。筒状容器1に供給された被処理水Wは、散水器3を通過してチタン酸塩2の充填層5へ到達する。チタン酸塩2は、一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示される。
充填層5へ到達した被処理水Wは、チタン酸塩2が放出するアルカリ金属イオンが水溶液中の水素イオンとイオン交換することでアルカリ性を呈するため、二価カチオンとして溶存していたコバルトを二価の水酸化物(水酸化コバルト:Co(OH)2)として析出する。また、チタン酸塩2は、イオン交換樹脂に比べてイオン交換速度が小さく、水溶液中へアルカリ金属イオンを長時間持続的に放出することでその濃度を長時間一定に保つことのできる、いわゆるアルカリ徐放材としての機能を有する。これらのことにより、チタン酸塩2のアルカリ金属イオン放出によって析出した水酸化コバルトは、チタン酸塩2の粒子に捕捉されることによって、吸着除去される。なお、チタン酸塩2の徐放性により、一定期間持続的な処理効果を得ることができる。一方、集水器4を通過した処理水W2は、出口7から排出されて次の工程へと移送される。
通常、チタン酸塩は、下記一般式(1)で示される。
M2TinO2n+1 (1)
(式(1)中、Mはアルカリ金属を示す。nは1以上の整数である。)
上記一般式(1)で示されるチタン酸塩は、nの値が大きくなると、チタン酸塩一分子が保有するアルカリ金属の数が減るため、水溶液中でのアルカリ金属イオンの放出量も小さくなる。チタン酸塩が一分子にできるだけ多くのアルカリ金属を保有するためには、n=1の場合のチタン酸塩(M2TiO3)が理想的だが、M2TiO3で示されるチタン酸塩は非常に不安定であり、加熱等により直ちにM2Ti2O5に変性してしまう。よって、熱的にも安定性があるn=2の場合のチタン酸塩、つまり、一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示されるチタン酸塩が水処理用の吸着材として好適である。
M2TinO2n+1 (1)
(式(1)中、Mはアルカリ金属を示す。nは1以上の整数である。)
上記一般式(1)で示されるチタン酸塩は、nの値が大きくなると、チタン酸塩一分子が保有するアルカリ金属の数が減るため、水溶液中でのアルカリ金属イオンの放出量も小さくなる。チタン酸塩が一分子にできるだけ多くのアルカリ金属を保有するためには、n=1の場合のチタン酸塩(M2TiO3)が理想的だが、M2TiO3で示されるチタン酸塩は非常に不安定であり、加熱等により直ちにM2Ti2O5に変性してしまう。よって、熱的にも安定性があるn=2の場合のチタン酸塩、つまり、一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示されるチタン酸塩が水処理用の吸着材として好適である。
筒状容器にチタン酸塩等の吸着材を充填して除去対象物質を含有する被処理水を通水する方法において、この筒状容器は、化学工学分野における押し出し流れ反応器に相当する。ここで、押し出し流れとは、装置内を移動する流体が、流れ方向に流体の混合や拡散がなく、また流れと直角方向に均一な速度を持つ流れのことである。
この押し出し流れ反応器内には、吸着材と除去対象物質との吸着速度、吸着容量及び流体の流速等によって、吸着材の充填層内に吸着帯(物質移動帯)と呼ばれる流れ方向に拡がる吸着分布が形成される。吸着帯は、押し出し流れ反応器の入口方向から通水と共に少しずつ出口方向へと拡がり、やがて吸着帯の出口側が上記反応器の出口に到達すると(破過点)、除去対象物質のリークが始まる。
従って、筒状容器又はその内部に形成される吸着材の充填層の高さは、少なくとも吸着帯より高い(長い)必要があり、破過時間をできるだけ長くし、より大きい吸着容量を達成するためには高ければ高い程よい。但し、筒状容器の高さが高すぎると、転倒防止のための補強にコストがかかり経済面で好ましくない。よって、高さを確保したい場合には、筒状容器を直列に複数個接続するように設計するのが一般的である。
チタン酸塩粉末を一次粒子として造粒体を生成する方法としては、特に限定されないが、例えば、バインダー等を用いることでチタン酸塩粉末を粒状体に成形する方法が挙げられる。
上記バインダーとしては、例えば、ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、アロフェン、ハロイサイト、イモゴライト、カオリナイト等の粘土鉱物;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、コスト面を考慮すると、天然物である粘土鉱物を用いる方が好ましく、さらに、粘土鉱物の中では、粒状体の機械的強度を確保できる点で、アタパルジャイトやセピオライト等の繊維状の粘土鉱物を用いることが好ましい。
また、上記造粒体の成形時には、造粒に必要な塑性を与える可塑剤も同様に添加することが好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記チタン酸塩の造粒体は、チタン酸塩粉末、バインダー及び可塑剤を所定の混合比で混合し、粒状体に成形して乾燥させた後、焼成することで生成する。このようにして生成することにより、造粒体の機械的強度が向上するので、例えば、輸送中等に加えられる振動や衝撃等に起因する破砕や、水溶液中に投入したときの一次粒子の脱落を抑制することができる。
上記バインダーの使用量は、特に限定されないが、チタン酸塩粉末1質量部に対し、0.1〜0.5質量部であることが好ましい。バインダーの使用量が少なすぎると、得られる造粒体の機械的強度が小さくなるため、輸送中等に加えられる振動や衝撃等によって破砕したり、水に投入したときに一次粒子が脱落したりするおそれがある。また、バインダーの使用量が多すぎると、アルカリ金属イオンのイオン交換における活性部位であるチタン酸塩の割合が小さくなる為、アルカリ容量が少なくなり好ましくない。
上記可塑剤の使用量は、特に限定されないが、チタン酸塩粉末1質量部に対し0.01〜0.1質量部であることが好ましい。上記範囲内であれば、チタン酸塩粉末を効果的に成形することができる。
なお、コスト面を考慮すると、可塑剤は水であることが好ましく、さらに、水と接触すると増粘する性質を有し、その粘化作用により粒子同士の結合に寄与する物質と併用することが好ましい。この点を鑑みると、可塑剤として、水とセルロース誘導体やPVA等とを併用することが好ましい。
上記可塑剤として水とセルロース誘導体及び/又はPVAとを併用する場合、上記バインダーにおける水とセルロース誘導体及び/又はPVAとの配合比(質量基準)は、1000:1〜10:1であることが好ましい。上記範囲内であれば、チタン酸塩粉末をより効果的に成形することができる。
バインダーと可塑剤とを用いて、チタン酸塩粉末を造粒体に成形する方法としては、例えば、チタン酸塩粉末とアタパルジャイト等のバインダーを混合し、可塑剤である水とセルロース誘導体等とを混合した粘性流体をチタン酸塩とアタパルジャイトの混合粉末に添加しながら造粒成形する方法、アタパルジャイト等のバインダーとセルロース等の可塑剤を粉末のままチタン酸塩粉末に混合し、水等の液体を添加しながら造粒成形する方法等が挙げられる。
また、造粒成形法の具体例としては、例えば、ドラム型造粒機、皿型造粒機等を使用した転運造粒法;フレキソミックス、バーティカルグラニュレーター等を使用した混合撹拌造粒法;スクリュー型押出造粒機、ロール型押出造粒機、ブレード型押出造粒機、自己成形型押出造粒機等を使用した押出造粒法、打錠型造粒機、ブリンケット型造粒機等を使用した圧縮造粒法;吹き上げる流体(主として空気)中にチタン酸塩粉末とバインダーを浮遊懸濁させた状態に保ちながら水やアルコール等のバインダーを噴霧して造粒する流動層造粒法等が挙げられる。粒状体に成形することを考慮すると、転動造粒法又は混合撹拌造粒法が好ましい。
なお、成形したチタン酸塩の造粒体は、空気雰囲気下、500〜900℃で焼成することが好ましい。焼成することにより、バインダー粉末とチタン酸粉末とが焼結され、粒子強度が向上する。焼成温度は、500℃未満であると未焼結部位が残存して粒子強度が弱くなるおそれがあり、900℃を超えるとチタン酸塩結晶の構造に影響を及ぼして吸着性能が低下してしまうおそれがある。焼成時間は、焼成温度、成形する粒状体の大きさによっても異なるが、通常0.5〜10時間程度である。
以上、本発明について図面を参照にして説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示すコバルトを含有する被処理水の処理装置を用いて処理を行った。筒状容器1として、内径が14.8mmであり、散水器3及び集水器4として、それぞれ格子状構造の格子間隔が0.25mmの多孔板を備える円筒状のガラス製のカラム(以下、単に「ガラスカラム」と称す。)を用いた。流通水の流れ方向は下向である。
図1に示すコバルトを含有する被処理水の処理装置を用いて処理を行った。筒状容器1として、内径が14.8mmであり、散水器3及び集水器4として、それぞれ格子状構造の格子間隔が0.25mmの多孔板を備える円筒状のガラス製のカラム(以下、単に「ガラスカラム」と称す。)を用いた。流通水の流れ方向は下向である。
ガラスカラムに、特許文献1の実施例1と同様にして合成した二チタン酸カリウム(粒径300〜1180μm)を吸着材として、充填層5に層高100mmで充填した。この吸着材を充填したガラスカラムに、入口6から、pH5.7に調整した10mg/Lのコバルトを含有する水溶液を、空間速度(S.V.)10/hrで供給した。なお、供給したコバルトを含有する水溶液には、2011年の東日本大震災後に福島第一原子力発電所で発生した海水を含む放射能汚染水を想定して、10g/LのNaClを共存させた。
ガラスカラムの出口7から排出される処理水を一定間隔で採取し、ICP−MS(ELAN DRC−II,パーキンエルマー社製)にて、該処理水に含まれるコバルトを分析した。
[比較例1]
実施例1と同様の条件で、比較例1として、イミノジ酢酸型キレート樹脂(CR−11,三菱化学社製)を吸着材として用いた。出口7から排出される処理水を一定間隔で採取して、この処理水に含まれるコバルトを分析した。
実施例1と同様の条件で、比較例1として、イミノジ酢酸型キレート樹脂(CR−11,三菱化学社製)を吸着材として用いた。出口7から排出される処理水を一定間隔で採取して、この処理水に含まれるコバルトを分析した。
[比較例2]
実施例1と同様の条件で、比較例2として、H型陽イオン交換樹脂(DOWEX MONOSPHERE 650C(H),ダウケミカル社製)を吸着材として用いた。出口7から排出される処理水を一定間隔で採取して、この処理水に含まれるコバルトの量を分析した。
実施例1と同様の条件で、比較例2として、H型陽イオン交換樹脂(DOWEX MONOSPHERE 650C(H),ダウケミカル社製)を吸着材として用いた。出口7から排出される処理水を一定間隔で採取して、この処理水に含まれるコバルトの量を分析した。
[結果]
吸着材の充填体積に対する通水量の体積比(B.V.)とコバルト濃度の関係を図2に示す。本結果からわかるように、実施例1の二チタン酸カリウム吸着材の破過通水量が最も多く、比較例1のイミノジ酢酸型キレート樹脂の約2倍だった。また、比較例2のH型陽イオン交換樹脂は、NaClが高濃度に共存するとコバルトをほとんど吸着せず、通水直後から破過が始まった。
吸着材の充填体積に対する通水量の体積比(B.V.)とコバルト濃度の関係を図2に示す。本結果からわかるように、実施例1の二チタン酸カリウム吸着材の破過通水量が最も多く、比較例1のイミノジ酢酸型キレート樹脂の約2倍だった。また、比較例2のH型陽イオン交換樹脂は、NaClが高濃度に共存するとコバルトをほとんど吸着せず、通水直後から破過が始まった。
[実施例2]
通水するコバルト水溶液をpH1.0に調整した以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。ガラスカラムの出口7から排出される処理水を一定間隔で採取し、ICP−MS(ELAN DRC−II,パーキンエルマー社製)にて、該処理水に含まれるコバルトを分析した。
通水するコバルト水溶液をpH1.0に調整した以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。ガラスカラムの出口7から排出される処理水を一定間隔で採取し、ICP−MS(ELAN DRC−II,パーキンエルマー社製)にて、該処理水に含まれるコバルトを分析した。
[結果]
吸着材の充填体積に対する通水量の体積比(B.V.)とコバルト濃度の関係を、実施例1の場合と共に図3に示す。本結果から、pH1.0の条件では、通水初期からガラスカラムの出口水が入口水と同じ濃度になり、吸着材がコバルトを全く吸着しないことがわかる。
吸着材の充填体積に対する通水量の体積比(B.V.)とコバルト濃度の関係を、実施例1の場合と共に図3に示す。本結果から、pH1.0の条件では、通水初期からガラスカラムの出口水が入口水と同じ濃度になり、吸着材がコバルトを全く吸着しないことがわかる。
[実施例3]
コバルト吸着帯の可視化状況を確認するために、筒状容器1として、内径が40mmの円筒状のアクリル製のカラム(以下、単に「アクリルカラム」と称す。)を用い、アクリルカラムの充填層5に、吸着材を層高1000mmで充填した以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。アクリルカラムの出口7から排出される処理水を一定間隔で採取し、ICP−MS(ELAN DRC−II,パーキンエルマー社製)にて、該処理水に含まれるコバルトを分析した。
コバルト吸着帯の可視化状況を確認するために、筒状容器1として、内径が40mmの円筒状のアクリル製のカラム(以下、単に「アクリルカラム」と称す。)を用い、アクリルカラムの充填層5に、吸着材を層高1000mmで充填した以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。アクリルカラムの出口7から排出される処理水を一定間隔で採取し、ICP−MS(ELAN DRC−II,パーキンエルマー社製)にて、該処理水に含まれるコバルトを分析した。
[結果]
吸着材の充填体積に対する通水量の体積比(B.V.)が、30、1170、2205である時のアクリルカラムの状態を図4に示す。青紫色に呈色した吸着帯の範囲が通水量の増加と共に大きくなっていることがわかる。
吸着材の充填体積に対する通水量の体積比(B.V.)が、30、1170、2205である時のアクリルカラムの状態を図4に示す。青紫色に呈色した吸着帯の範囲が通水量の増加と共に大きくなっていることがわかる。
以上説明したように、本発明のコバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法によれば、コバルトを含有する被処理水を、一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示されるチタン酸塩を充填した筒状容器に通水すると、チタン酸塩が放出するアルカリ金属イオンが水溶液中の水素イオンとイオン交換することで被処理水はアルカリ性を呈するため、被処理水中に二価カチオンとして溶存していたコバルトが二価の水酸化物(水酸化コバルト:Co(OH)2)として析出し、チタン酸塩に吸着される。チタン酸塩を充填する容器が筒状であること及び、この筒状容器が立設して用いられることにより、コバルトを含有する被処理水とチタン酸塩とを効率よく接触させることができるため、チタン酸塩の持つ吸着能力が高く発揮され、被処理水に含有されるコバルトを効果的に吸着除去することができる。また、チタン酸塩に吸着した水酸化コバルトは青紫色を呈するので、上記筒状容器の側面の一部又は全体が透明な素材からなる場合には、目視によりチタン酸塩の破過状況を明確に確認することができるため、チタン酸塩を充填した筒状容器に通水した後の被処理水中のコバルトを採取して分析することなく、チタン酸塩の交換時期を容易に判断することができる。
本発明は、原子力発電所の炉水浄化系や福島第一原子力発電所における放射能汚染水からコバルトを除去するための処理装置及び処理方法として有用である。
1…筒状容器
2…チタン酸塩
3…散水器(多孔板)
4…集水器(多孔板)
5…充填層
6…入口
7…出口
W…被処理水
W2…処理水
2…チタン酸塩
3…散水器(多孔板)
4…集水器(多孔板)
5…充填層
6…入口
7…出口
W…被処理水
W2…処理水
Claims (9)
- チタン酸塩を充填するための立設された筒状容器を備え、
前記チタン酸塩は一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示される、コバルトを含有する被処理水の処理装置。 - 前記筒状容器にコバルトを含有する被処理水を流れ方向が上方から下方であるように供給する機構をさらに備える請求項1に記載のコバルトを含有する被処理水の処理装置。
- 前記アルカリ金属がカリウムである請求項1又は請求項2に記載のコバルトを含有する被処理水の処理装置。
- 前記筒状容器の内部に少なくとも1つの多孔板が嵌設されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコバルトを含有する被処理水の処理装置。
- 前記筒状容器内の上部に嵌設された第一の多孔板と、前記筒状容器内の下部に嵌設された第二の多孔板とを備える請求項4に記載のコバルトを含有する被処理水の処理装置。
- 前記筒状容器又は前記筒状容器内においてチタン酸塩が充填された空間のアスペクト比(高さ/直径)が1〜10である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコバルトを含有する被処理水の処理装置。
- 前記筒状容器の側面の一部又は全体が該筒状容器の内部を目視できる透明な素材からなる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコバルトを含有する被処理水の処理装置。
- 前記コバルトを含有する被処理水のpHを4〜7の範囲に調整する機構をさらに有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコバルトを含有する被処理水の処理装置。
- コバルトを含有する被処理水を、立設された筒状容器に充填されているチタン酸塩に接触させることにより該コバルトを吸着する工程を有し、
前記チタン酸塩は一般式M2Ti2O5(Mはアルカリ金属)で示される、コバルトを含有する被処理水の処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015200986A JP2017070929A (ja) | 2015-10-09 | 2015-10-09 | コバルトを含有する被処理水の処理装置及び処理方法 |
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JP (1) | JP2017070929A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020230477A1 (ja) | 2019-05-10 | 2020-11-19 | 株式会社荏原製作所 | コバルトイオン吸着材及びその製造方法 |
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2015
- 2015-10-09 JP JP2015200986A patent/JP2017070929A/ja active Pending
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