JP2017068108A - 採光シート、採光ガラス及び建物 - Google Patents

採光シート、採光ガラス及び建物 Download PDF

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喜洋 金井
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茂樹 今村
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Abstract

【課題】剥離が生じ難い構成を有する採光シート提供する。
【解決手段】間隔を有して配置される複数の光透過部、及び隣り合う2つの光透過部の間に形成される光制御部を具備する光制御層と、前記光制御層の一方側又は両方側に配置される基材層と、を有し、基材層は厚さの合計が150μm以上であり、基材層の面うち光制御層が配置される側とは反対側の面には易接着層が設けられていない。
【選択図】図3

Description

本発明は、建物等の内部に日光等の外光を採り入れるための装置である採光シート、採光シートを備える採光ガラス、及び建物に関する。
屋内の照明の照明強度を弱めて二酸化炭素の排出量の削減と消費電力の低減を図る一環として、窓に入射された外光を屋内の天井方向に偏向させて採光効率を向上させる採光シートが提案されている。例えば、特許文献1には、透過部と遮光部を交互に並べた構造の光制御シートを例えば窓ガラスに貼り付けて、太陽光の入射角度の違いにより、夏季は屋内への太陽光の取り込みを減少させ、冬季は太陽光の取り込みを増加させる技術が開示されている。
特開2010−259406号公報
上述した特許文献1のような光制御シートは当該光制御シートの表面に設けられた粘着層を介して、窓ガラスに貼り付けて使用することができる。また、同様の光制御は、ガラス板の片面に、光透過部および光制御部を有する光制御層が、接着層を介して積層された光制御機能付きガラスや、対向する2枚のガラス板の間に、熱硬化封止層(後述する接着層と同じ機能。易接着層とは異なる。)を介して上記光制御層が挟持されている光制御機付き合せガラスによっても行うことができる。
このうち、光機能付き合わせガラスにおいては光制御層(光透過部および光制御部)は、樹脂から構成されることが多く、両側に配置されたガラス板との熱膨張率の違いから光制御層と熱硬化封止層の界面での剥離が発生しやすい。これは、ガラス板に後貼合する光制御機能付きガラスにおいては、応力が分散されるため発生しにくい。
また、ガラスが用いられることことから、ガラスが割れたときの飛散防止性を確保することも重要である。
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、このような剥離が生じ難い採光シート提供することを課題とする。また、当該採光シートを具備する採光ガラス、及び建物を提供する。
以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、間隔を有して配置される複数の光透過部、及び隣り合う2つの光透過部の間に形成される光制御部を具備する光制御層と、光制御層の一方側又は両方側に配置される基材層と、を有し、基材層は厚さの合計が150μm以上であり、基材層の面のうち光制御層が配置される側とは反対側の面には易接着層が設けられていない、採光シートである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の採光シートにおいて、基材層は光制御層の両方側に配置されており、一方の基材層と光制御層との間には接着層が設けられている。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の採光シートにおいて、光制御部には光透過部と異なる屈折率を有する樹脂が充填されている。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の採光シートと、採光シートの両面に接着層を介して配置されたガラス板と、を備える、採光ガラスである。
請求項5に記載の発明は、開口部に請求項4に記載の採光ガラスが設置された建物である。
本発明によれば、層間の剥離が生じ難いものとなる。
採光ガラス10を具備する窓2が配置された建物1の斜視図である。 採光ガラス10が適用された窓2の正面図である。 採光ガラス10の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。 光制御層15の形態例の一つにおける一部を拡大した図である。 光制御層15における光路例を説明する図である。 南中高度が高い場面を説明する図である。 南中高度が低い場面を説明する図である。 採光ガラス50の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。 光制御層55の一部を拡大した図である。 図10(a)は光制御部57’を説明する図、図10(b)は光制御部57”を説明する図である。 光制御層55における光路例を説明する図である。 光制御層55における他の光路例を説明する図である。 採光ガラス110の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし本発明は当該形態に限定されるものではない。
図1は第一の形態を説明する図であり、窓2(図2参照)が備えられた建物1の外観斜視図である。建物1はいわゆるオフィスビルであり、南側に面する外壁には室内外を連通する複数の開口部が設けられ、ここに採光ガラス10を具備する窓2が配置されている。
図2は、採光シート13(図3参照)により採光ガラス10が形成され、採光ガラス10が適用された窓2を正面から見た図である。窓2は、採光ガラス10と、該採光ガラス10のうち、少なくともガラスパネル11、12(図3参照)の外周部に沿ってパネル11を縁取るように配置された枠3を有して構成されている。そして当該窓2が建物1の開口部に配置される。このように枠及びその枠内にパネルが備えられることにより窓が形成されること自体は公知の構成と同様である。従って枠3の形状も公知のものを適用することができる。
ここで当該窓2は、建物に予め配置されている複層ガラス窓のガラスパネル間に採光シート13を配置することにより形成することもできる。このときには建物には通常ガラスパネル及びその外周部を縁取る枠を備えているので、このガラスパネルに採光シート13を貼付することで窓2とすることができる。
図3は、図2にIII−IIIで示した線に沿った鉛直方向における断面図のうち採光ガラス10の部分に注目した断面であり、その層構成を模式的に表した図である。図3では見易さのため、繰り返しとなる符号は一部省略している(以降に示す各図において同じ。)。
採光ガラス10は、ガラスパネル11、12、及びガラスパネル11とガラスパネル12との間に接着層14、19により貼付された採光シート13を有している。そして採光シート13は、第一のガラスパネル11側(室外側)から第二のガラスパネル12側(室内側)に向けて、接着層14、光制御層15、基材層18、接着層19を備えている。以下、採光ガラス10を構成するこれらの構成要素について説明する。なお、図3では採光ガラス10が鉛直になるように建物等に取り付けられた姿勢で表されており、図3の紙面左が室外側、紙面右が室内側、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
ガラスパネル11、12は、窓ガラス等、通常の建物や乗り物の窓等に用いられる透光性を有する板状のガラスでできた透光パネルである。従って、ガラスパネル11、12を構成する部材としては公知の板ガラスを用いることができる。
本形態では2つのガラスパネル11とガラスパネル12とが、採光シート13を挟むようにして、該採光シート13の一方及び他方のそれぞれに配置されている。
ここでガラスパネル11、12は上記のように建物に予め配置されている窓の複層ガラスパネルを用いてもよい。すなわち、建物に備えられた窓の複層ガラスパネルの間にに採光シート13を貼付することにより採光ガラス10を形成することもできる。
接着層14は、第一のパネル11に採光シート13を接着するための層である。接着層14を構成する材料としては、このような接着が可能であれば特に限定されず、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。粘着剤を例示すれば、例えばアクリル系の粘着剤を挙げることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤がある。ただし、接着層14を構成する材料は、採光ガラス10の性質上、透光性、耐候性に優れた材料によることが好ましい。
接着層14の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層14が薄過ぎるとパネル11と採光シート13との密着性が低下する虞がある。また、接着層14が厚過ぎると接着層14の厚さを均一にすることが困難になる。
接着層14には、赤外線、紫外線、及び可視光線の少なくとも1つを吸収する機能を有してもよい。「赤外線、紫外線、及び可視光線の少なくとも1つを吸収する」とは、赤外線、紫外線、および可視光線のいずれかに分類される電磁波のうち所定の波長の電磁波を吸収することを意味する。また、「吸収する」とは、上記所定の波長の電磁波を10%以上吸収することを意味する。
かかる機能を有する層とするためには、赤外線、紫外線、及び可視光の少なくとも1つを吸収できる吸収剤を含有させればよい。
赤外線を吸収する吸収剤としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)またはスズドープ酸化インジウム(ITO)、フタロシアニン化合物などの金属酸化物超微粒子などが挙げられる。これらの吸収剤を添加したり表面に塗布したりすることによって、赤外線を吸収できる。このように採光シートに赤外線を吸収する機能を付加することによって、例えば、特に夏場における室内温度の上昇を抑制して冷房の使用を抑えられる等の効果を奏する。
紫外線を吸収する吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、全てBASFジャパン株式会社製)や、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 1577 ED、BASFジャパン株式会社製)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CHIMASSORB 81、CHIMASSORB 81 FL、全てBASFジャパン株式会社製)、ベンゾエート系紫外線吸収剤(TINUVIN 120、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらの吸収剤を添加したり表面に塗布したりすることによって、紫外線を吸収できる。採光シートに紫外線を吸収する機能を付加することによって、例えば、室内に居る人の皮膚への悪影響や室内にある家具の退色等を抑制する等の効果を奏する。
可視光線を吸収する吸収剤としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられる。ただし、これに限定されず、例えば吸収すべき光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を用いてもよい。着色粒子の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。これらの中では、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から着色した有機微粒子が好ましい。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましい。これらの吸収剤を添加したり表面に塗布したりすることによって、可視光線を吸収できる。採光シートに可視光線を吸収する機能を付加することによって、例えば、室内におけるまぶしさを和らげることができる。
上記のような吸収剤を含有させることによって、採光シートを建物の採光部に配置したときに、より快適な室内環境を提供することができる。当該吸収剤は、赤外線、紫外線、および可視光線のいずれかに分類される電磁波のうち所定の波長の電磁波を吸収できればよく、赤外線のみを吸収するように構成してもよく、紫外線のみを吸収するように構成してもよく、可視光線のみを吸収するように構成してもよく、赤外線、紫外線、および可視光線のうち2種以上の電磁波を吸収できるように構成してもよい。いずれの波長の電磁波を吸収できるように構成するかは、採光シートの設置場所や設置目的に応じて適宜選択可能である。また、吸収する電磁波の波長や吸収率は、上述した吸収剤の種類や量を適宜調整することによって調節できる。
なお、吸収剤を含む層における上記所定の波長の電磁波の吸収率は10%以上であり、90%以下であることが好ましい。吸収率が10%未満であれば吸収剤を含有させる効果を得難く、90%以下とすれば吸収剤を構成する組成物の調整が容易である。
基材層18は、光制御層15を形成するための基材となる層であり、透光性を有するとともに、光制御層15の変形を防止できるように支持する。より具体的には基材層18は引張破断強度150MPa以上を有することが好ましい。かかる観点から、基材層18を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層18の厚さは150μm以上とする。これにより後で示す易接着層が設けられてないことと合わせて、層間の剥離が生じ難いとともに、ガラスパネル11、12が割れた際にも飛散防止性能が高い採光シート13とすることができる。
一方、厚さの上限は1mmである。これ以上厚いと採光シートの作製時において巻取りが難しくなる。より好ましくは300μm以下である。
光制御層15は、一方の面側から入射した光(後述するように、特に斜め上方から入射した光)の向きを変えて(偏向させて)他方の面側に出射する層である。光制御層15は、図3に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を有する。すなわち、図3に表れる断面において、台形である光透過部16、及び、隣り合う光透過部16の間に形成された断面が台形の凹部内に形成された光制御部17を備えている。本形態では光透過部16の基材層18側が連結している。そして、光透過部16及び光制御部17は当該断面を有してシート面の一方向(本形態では水平方向)に延び、当該一方向とは異なる方向(本形態では鉛直方向)に複数の光透過部16及び光制御部17が配列されている。
光制御層15のいずれかの部位には、赤外線、紫外線、及び可視光の少なくとも1つを吸収できる吸収剤を含有してもよい。特に、赤外線吸収剤を入れることで、太陽高度の高い夏は光制御層で赤外線を吸収させやすいため涼しく、太陽高度の低い冬は光制御層で赤外線を吸収させ難いため暖かく、過ごしやすい室内環境にすることができる。
光透過部16は光を透過する部位であり、光透過部16の基材層18側の面とその反対側の面とが平行に形成されていることが好ましい。これによって、後に説明するように採光ガラス10を窓2に適用した場合に室内側から室外側の景色がさらに見やすくなる。好ましくは光透過部16は光を散乱させることなく透過する。これにより背面側の景色の見易さが向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
光透過部16を構成する材料は、基材層18と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。
光透過部16と基材層18とを同じ材料で構成する場合には、基材層18と光透過部16とを一体に形成することもできる。また、光透過部16と基材層18とを異なる材料で構成する場合、及び同じ材料で構成する場合であっても、基材層18と光透過部16とを別々に形成し、公知の手段により積層してもよい。
光透過部16の形成方法の具体例は後で説明する。
光透過部16を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。光透過部の具体的な屈折率としては、1.50〜1.80の範囲内であることが好ましく、特に1.55〜1.65の範囲内であることが好ましい。
光透過部16はシート面に沿った方向に後で説明する間隔で並列される。従って、隣り合う光透過部16の間には、台形断面を有する凹部が形成されている。該凹部は、光透過部16の上底側に下底を有し、光透過部16の下底側に上底を有する台形状の断面を有した溝であり、ここに後述する必要な材料が充填されることにより光制御部17が形成される。すなわち、図3に表れる断面において、光透過部16は、基材層18側となる面(本形態では室内側)に下底を有し、これとは反対側の面(本形態では室外側)に該下底より短い上底を有する台形の断面を有する要素である。
光制御部17は、上述したようにここに到達した光の向きを変える(偏向する)部位であり、本形態では、光透過部16と光制御部17との界面に到達した光を全反射して向きを変えるように構成されている。そのため、光制御部17は光透過部16よりも屈折率が低い材料が充填されている。これによれば、光制御部17と光透過部16との屈折率差、及びその界面に入射する光の角度の関係により、該入射した光が全反射条件を満たせばここでその光を全反射して向きを変えさせることができる。後で詳しく説明するが、向きが変えられた光は例えば天井に照射されるなどしてまぶしさを与える直達光でなくなることができる。光制御部17を形成する材料の屈折率は1.56以下が好ましいが、原材料の汎用性から1.45以上1.56以下の範囲が好ましく、1.47以上1.50以下であることがより好ましい。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマーモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー乃至は(メタ)アクリル酸エステルプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
また、そのときにおける光透過部16と光制御部17との屈折率差は、0.03以上が好ましく、より好ましくは0.05以上0.13以下である。屈折率差が0より大きく0.03より小さい範囲では、全反射時の波長分散(波長により全反射角度が異なることによる分散。)が生じた際に長波長の成分が全反射せず、短波長の成分のみが全反射することがあり、色彩の変化が生じる虞がある。一方、屈折率差が0.13より大きいと、短波長の成分の屈折率が長波長の屈折率の成分の屈折率に対して大きくなる傾向にあり、虹状のムラが顕著に表れる虞がある。
ただし、より多くの光を全反射させる必要がある場合に、大きく屈折率差を取ることを妨げるものではなく、その場合には、光制御部17に空気等の気体を充填して多くの光を全反射させることもできる。
また、光制御部17と光透過部16との界面において光を拡散させて眩しさをさらに軽減する観点からは、光透過部16と光制御部17との界面を微材な凹凸面(マット面)としてもよい。
このように光制御部17は隣合う光透過部16の間の凹部に形成されるので、その形状も凹部に沿ったものとなる。従って本形態では光制御部17は基材層18側(本形態では室内側)に短い上底、それとは反対側(本形態では室外側)に長い下底を有する略台形断面を有し、その間に斜辺を有している。この斜辺は光透過部16との界面を構成し、共通の斜辺となる。
光制御部17(光透過部16)の断面における台形断面における脚部の角度θは、シート面法線に対して0度以上20度以下であることが好ましい。θが0度未満(これは図3に表れる断面において、光制御部17の基材層18側の幅よりパネル11側の幅が短い形状になることを意味する。)になるように光制御部17を形成するとすれば、後述するようにして光制御層15を形成する際に用いる金型の作製が困難になり、また、作製しても離型性に問題が生じる虞がある。一方、θが大き過ぎると開口幅(図3に表れる断面において、光制御部17のパネル11側の幅)に対する高さ(光制御層15の厚さ方向の大きさ)のアスペクト比を大きくする事が困難になり、光制御層15によって後述する所望の効果を得ることが難しくなる。
光制御部17が配列されるピッチは特に限定されることはないが、10μm以上200μm以下であることが好ましく、25μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。光制御部17のピッチが狭すぎると、光制御層15によって後述する所望の効果を得ることが難くなり、回折現象により、光透過部16を透過した像が虹状になる不具合が生じる虞がある。また、光制御部17のピッチが広すぎると、光制御部17を形成することが困難になったり、後述するようにして光制御層15を作製する際に金型の離型性や加工性に問題を生じる虞がある。
また、光制御部17の開口幅Wは特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。光制御部17の開口幅Wが狭すぎると、光制御層15によって後述する所望の効果を得ることが難くなる。また、光制御部17の開口幅が広すぎると、光制御部17を形成することが困難になったり、後述するようにして光制御層15を作製する際に金型の離型性や加工性に問題を生じる虞がある。
光制御部17の厚さDは特に限定されないが、50μm以上300μm以下であることが好ましい。光制御部17が薄過ぎると後述する所望の効果を得難くなったり、微細な加工(光制御部17の形成など)を施すことが難しくなったりする虞がある。また、光制御部17が厚過ぎると後述するようにして光制御層15を作製する際に、金型が離型し難くなるなど、加工性に問題を生じる虞がある。
本発明において光透過部及び光制御部の形状は図3に示した形態に限定されない。したがって、図3に表れる断面に相当する断面において、光透過部は矩形であってもよく、上記台形の斜辺に相当する部分が曲線状(当該曲線の接線が各部において上記θと同じ条件であることが好ましい。)や折れ線状(折れ線を構成する各線が上記θと同じ条件であることが好ましい。)となっていてもよい。後で他の形態としてその一部を説明する。
接着層19は、第二のパネル12に採光シート13を接着するための層である。従って、接着層19は基材層18のうち光制御層15とは反対側の面に配置される。接着層19を構成する層は、上記した接着層14と同じように考えることができる。
以上のような採光シート13において、基材層18は、接着層19との間に易接着層を備えていない。通常基材層となるシートのうち接着剤が積層される側には、当該接着剤を付き易くするための層である易接着層が設けられている。本発明ではこのような易接着層が設けられていないことがひとつの特徴である。これにより、上記した基材層の厚さが150μm以上であることと合わせて、層間の剥離が生じ難いとともに、ガラスパネル11、12が割れた際にも飛散防止性能が高い採光シート13とすることができる。
ここで「易接着層を備えていない」とは、一般的に易接着層は、基材層を形成する母材の表面に、直接薄膜塗布、あるいはDry処理で設けられる薄膜の層を意味するところ、本発明では、基材層を形成する母材と接着層とが直接接触することを妨げるこのような薄膜の層が形成されていないことを意味する。
以上説明した採光ガラス10は例えば次のように製造することができる。
採光ガラス10は、採光シート13のうち接着層14側にガラスパネル11、採光シート13のうち接着層19側にガラスパネル12を貼合することによって製造することができる。そして採光シート13は、例えば次のように作製する。
光透過部16の形状を成型できる溝をその表面に有する金型ロールと、これに対向するように配置されたニップロールとの間に、基材層18となる基材を挿入する。基材の一方の面と金型ロールとの間に光透過部16を構成する組成物を供給しながら金型ロール及びニップロールを回転させる。これにより金型ロールの表面に形成された凹凸の凹部内に光透過部16を構成する組成物が充填され、該組成物が金型ロールの凹凸の表面形状に沿ったものとなる。
ここで、光透過部16を構成する組成物としては、上記したものが好ましいが、さらに具体的には次の通りである。すなわち、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)を配合した光硬化型樹脂組成物を用いることができる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(I1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部16の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金型ロールと基材との間に挟まれ、ここに充填された光透過部16を構成する組成物に対し、基材側から光照射装置により光を照射する。これにより、光透過部16を構成する組成物を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロールにより金型ロールから基材層18及び成形された光透過部16を離型する。
次に、光透過部16の凹部に光制御部17を構成する組成物を充填して硬化させることによって、光制御部17を形成することができる。具体的には、光透過部16の凹部に光制御部17を構成する組成物を過剰に供給し、その余剰分をブレードにより掻き取ることによりその量を調整するとともに凹部に組成物を充填する。そして凹部内に充填された組成物を適切な方法で硬化させる。
このようにして、基材層18上に光制御層15が形成された中間シートを得ることができる。
そして、一方、中間シートのうち、基材層18上に接着層19、光制御層15の上に接着層14を積層し、採光シート13を得る。
以上のように作製した採光シート13を接着層14によりガラスパネル11に貼合し、接着層19によりガラスパネル12に貼合することで採光ガラス10とする。
以上のような採光シート13及びこれを備える採光ガラス10、及び窓2によれば、基材層を150μm以上とし、基材層と接着層との間に易接着層を設けていないことにより、層間の剥離を抑制するとともに、ガラスパネルが割れた際における飛散を防止することが可能となる。
次に、採光ガラス10により窓2を形成し、これを建物1の開口部に配置した場面における主要な光路について説明する。図3に模式的な光路例を示した。なお当該光路例は概念的に示したものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。
日光が想定される斜め上方から採光ガラス10に照射された外光L31は、パネル11、接着層14を透過して光制御層15の光制御部17に到達する。光制御部17に到達した外光L31は、光制御部17によって向きが変えられる。本形態では、当該外光L31の入射角と、光透過部16と光制御部17との屈折率差により、当該界面で全反射により偏向される。そして、全反射された光は、基材層18、接着層19及びガラスパネル12を透過して室内側に入射する。このとき、室内側に入射する光は上方に偏向されているので、外光の直射を防止することが可能であり、さらに室内側空間の広い範囲を外光で照らす。
また、このように採光シート13を備える採光ガラス10では上記偏向の際に光制御部17で外光を積極的に吸収することなく室内側に反射させて採り入れることができるため、効率良く光を採り入れることもできる。
一方、室内側から室外を見たとき、観察者の視線は図3の光L32による。すなわち、パネル11に対して平行な面である光透過部16の基材層18側の面及びその反対側面を介して室外を観察することができる。この部分では界面における大きな屈折がないので、室外側の景色を鮮明に見ることが可能である。
以上のように、採光ガラス10によれば、外光を効率良く室内に採り入れつつ、室内側から外の景色を比較的鮮明に見ることが可能である。
さらに、本形態において次のように光制御層15を構成することができる。図4には光制御層15の一部を拡大した図を示した。上記のように、2つの光制御部17の間には上記のように光透過部16が配置される。従って、図4にIVaで示したように光透過部16の対角線に相当する線を定義することができる。より詳しくは、隣り合う光制御部17の向かい合う辺について、下方に配置される光制御部17の辺の室内側端部と、隣接して上方に配置される光制御部17の辺の室外側端部とを結ぶ線IVaを見込み線とし、該見込み線IVaが水平面となす角のうち90度以下の方の角を見込み角θとする。本形態では当該θが所定の値をとることが好ましい。
また、光制御部17の台形断面における脚部は、図4からわかるように、上方側となる脚部は水平面(採光シート13のシート面の法線)に対してθを有して傾斜し、下方側となる脚部は同様にθを有して傾斜している。
見込み角θの好ましい値について主要な光路に基づいて説明する。説明に必要な光路例を以下に示す図面に適宜表した。
図5に1つの光路例である太陽からの光LS1を示した。図5からわかるようにLS1はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS1で採光ガラス15に照射される。採光ガラス15に入射した光LS1は採光ガラス15を透過するうちに光制御層15の光透過部16内を進む。光透過部16内では、該光透過部の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS1は、式(1)で表される太陽光進行角θP1で進む。
Figure 2017068108
太陽光進行角θP1で進行した太陽光が光透過部16と光制御部17との界面に達したとき、上記のように、太陽光を全反射することができる。これにより太陽光が偏向されて、まぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
上記のように採光シート13によれば、見込み角θによらず、効率よく室内に太陽光を取り入れつつも直達光の少なくとも一部をなくすことができる。ただし、より効果的に太陽光を光制御部17に照射させ、太陽光の向きを変えて室内側に出射させる観点から見込み角θを所定の角度範囲に規定することができる。以下に詳しく説明する。
図6に説明図を示した。ここでは、一年のうち最も南中高度が高いときの仰角θSHを考える。すなわち、少なくとも一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHで太陽光が光制御層15に入射したときに、太陽光からの直接光を全て光制御部17に到達させる観点からθを規定することができる。図6からわかるように、仰角θSHで入射した光LSHが必ず光制御部17に達するための限度は、光透過部16内を光LSHが見込み線に沿って進む状況である。すなわち、光透過部16内における太陽光進行角θPHが見込み角θと同じとなっていればよい。従って、これは、空気の屈折率をN、光透過部の屈折率をNとしたとき、屈折率、及び入射角の関係式により下記式(2)で表される。
Figure 2017068108
式(2)から、見込み角θを下記式(3)を満たすように構成することにより、少なくとも一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHで太陽光が採光フィルム15に入射したときに、太陽光からの直接光を全て光制御部17に到達させることができる。
Figure 2017068108
θSHは、所定の場所における南中高度が最も高い位置における仰角であるから、当該所定の場所ではこれ以上角度の大きい仰角は存在しない。従って、これより低い所定の仰角の太陽光までをも同様に光制御部17に全て到達させるためには、式(1)を満たしつつ、さらに式(2)、式(3)のθSHのかわりに当該所定の仰角を考慮すれば同様にθのとるべき値を得ることができる。
例えば、一年のうち南中高度が最も高い時の仰角θSHと、一年のうち南中高度が最も低い時の仰角θSLとの間の仰角θSM以上の仰角からの直接の太陽光を光制御部に到達させたいときには、式(3)を満たしつつ式(4)を満たすように見込み角θを形成すればよい。
Figure 2017068108
このように見込み角θを所定の角度にするための手段は、光制御部のピッチ、光制御部の脚部の角度(図4のθ、θ)、光制御部の厚さ方向(図4の紙面左右方向)の大きさを変更することを挙げることができる。これらを単独、又は複数組み合わせてθを所定の角度に調整することが可能である。
このようにθを小さくすることにより、季節による南中高度の違いだけでなく、一日のうちにおける太陽の高さの移動に伴う仰角の変化に対しても対応することができ、より多くの太陽光を光制御部に到達させて全反射し、室内側に提供することが可能となる。
一方で、θを小さくすることにより光制御層15が厚くなったり、光透過部が小さくなったりすることもある。これらにより、室外側の視認性が低下する虞もある。かかる観点から、θの下限は特に限定されるものではないが、例えば図7に示したように一年のうち最も南中高度が低いときの仰角θSLからの直接の太陽光を全て光制御部17に到達させる観点からθの下限を決めてもよい。図7に説明のための図を示した。
基本的な考え方は式(2)、式(3)の算出と同様であるから、図7からわかるように、仰角θSLによる太陽光LSLが見込み線に沿うように進むことを考えればよいので、式(5)を得ることができる。
Figure 2017068108
ここで、θPLは、仰角θSLのときの光透過部の太陽光進行角である。従って、式(3)及び式(5)を求めた趣旨から式(6)を得ることができる。
Figure 2017068108
ここでより具体的な例を挙げる。日本国内を考えたとき、札幌、東京、沖縄における一年のうち南中高度が最も高い時の仰角(θSH)、一年のうち南中高度が最も低いときの仰角(θSL)をそれぞれ表1に示した。
Figure 2017068108
表1に基づいて、日本国内におけるθの範囲を式(7)又は式(8)のように構成してもよい。
Figure 2017068108
Figure 2017068108
式(7)によれば、日本国内の概ね全域において少なくとも夏至における南中高度からの太陽光の全ての直射光を光制御部に到達させることができる。また、式(8)によれば、さらに高い視認性を有しつつ、多くの太陽光を光制御部に到達させることが可能である。
図8は、第二の形態を説明する図であり、採光ガラス50の層構成を模式的に表す断面図で図3に相当する。図8において、図3と同様の構成のものには同じ符号を付しており、これらについては説明を省略する。
採光ガラス50は、ガラスパネル11、12、及びガラスパネル11とガラスパネル12に挟まれて配置された採光シート53を備えている。また、採光シート53は、第一のガラスパネル11側から、第二のガラスパネル12側に向けて、接着層14、光制御層55、基材層18、接着層19を備えている。
光制御層55は光透過部56及び光制御部57を有している。光透過部56は、図8に示した断面を有して基材層18の面に沿った一方向(建物1に配置された姿勢で水平方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向とは異なる方向の基材層18の面に沿って(建物1に配置された姿勢で鉛直方向)複数の光透過部56が所定の間隔で配列されている。本形態では隣り合う光透過部56は基材層18側の端部で連結され、一体化されている。
一方、光制御部57は隣り合う光透過部56の間に配置されている。
図9には光制御層55の一部を拡大した図を示した。
光透過部56は、光を透過する部位であり、光制御層55のうち光透過部56が配置された部位における基材層18側の面とその反対側面(接着層14側の面)とは平行に形成されている。好ましくは光透過部56は光を散乱させることなく透過する。これにより背面側の景色の見易さが向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
本形態では光透過部56は図8、図9に表れる断面で2つの光制御部57間において略台形の断面を有しており、室外側が短い上底、室内側が長い下底であり光制御部57との界面を構成する辺が脚部となっている。ただし、脚部は後述する光制御部57の形状に沿った形状となるので、必ずしも一直線ではない。
光透過部56を構成する材料、光制御部57を構成する材料は、上記した光透過部16、光制御部17と同様である。
さらに、本形態では光制御部57は次のような形状を構成を備えている。図9を参照しつつ説明する。
光制御部57は図9に表れる断面において、多角形状を有している。そのうち、採光ガラス50を建物1に配置した姿勢において、上部となる側は2つの辺57a、57bが室内外方向に連続するように配置され下に凸になるように形成されている。すなわち、室外側に辺57a、室内側に辺57bが配置されている。
これら2つの辺57a、57bは、図9に表された姿勢とされたとき、その傾斜角が水平面(採光シート53のシート面の法線)に対してそれぞれ異なる角度θU1及びθU2を具備している。ここで、θU1及びθU2は室外側(太陽側)に向けて上となるように傾斜し、θU1はθU2より大きな角度とされる。これにより、季節や時間により異なる太陽の高度を考慮し、太陽光を光透過部56と光制御部57との界面で全反射して偏向することができる場面を拡大することができる。従って、角度θU1及び角度θU2もかかる観点から決められることが好ましい。詳しくは光路例を示しつつ後で説明する。
一方、辺57a、57bとは反対側となる下部となる側の辺57dは、その傾斜角が水平面(採光シート53のシート面の法線)に対してθD1とされている。θD1は特に限定されることはないが、製造の観点から0度以上30度以下とすることが好ましい。
図10には、変形例に係る光制御部の断面形状を表した。
図10(a)は、上部となる側の辺が下に凸(すなわち凹状)である光制御部57’の例を示した。この例では、最も室外側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート53のシート面の法線)に対して角度θU1、最も室内側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート53のシート面の法線)に対して角度θU2となればよい。
図10(b)は、上部となる側の辺が室外側から3つの辺57’’a、57’’c、57’’bにより形成されて下に凸(すなわち凹状)となる光制御部57’’の例である。この例では、最も室外側となる辺57’’aの傾斜角が水平面(採光シート53のシート面の法線)に対して角度θU1、最も室内側となる辺59’’bの傾斜角が水平面(採光シート53のシート面の法線)に対して角度θU2となり、間に配置される辺59’’cの傾斜角は、水平面(採光シート53のシート面の法線)に対して角度θU3であり、θU2<θU3<θU1であることが好ましい。
ここでは3つの辺3つの辺57’’a、57’’c、57’’bからなる光制御部の例を説明したが、これに限らずさらに多くの辺により形成されていてもよい。
これら図10(a)、図10(b)に記載のような光制御部によっても図9で示した形状の光制御部と同様の効果を奏するものとなる。さらに図10(a)、図10(b)による形状によれば、全反射による波長分散による虹状のムラの発生を抑制することが可能となる。
次に、このように採光ガラス50が建物1に配置された場面における作用、及び上記説明した角度θU1、θU2の好ましい値について、主要な光路に基づいて説明する。説明に必要な光路例を以下に示す図面に適宜表した。
図11に1つの光路例である太陽からの光LS2を示した。図11からわかるようにLS2はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS2で採光ガラス50に照射される。採光ガラス50に入射した光LS2は採光ガラス50を透過するうちに光制御層55の光透過部56内を進む。光透過部56内では、該光透過部の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS2は、式(9)で表される太陽光進行角θP2で進む。
Figure 2017068108
太陽光進行角θP2で進行した太陽光が光透過部56と光制御部57との界面のうち傾斜角がθU2である部位に達したとき、光透過部56と光制御部57との屈折率差、及び太陽光進行角θP2の関係が全反射臨界角以上であれば図11のように界面で全反射する。これにより太陽光が偏向されて、まぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
図12には他の光路例である太陽からの光LS3を示した。図12からわかるようにLS3はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS3で採光ガラス50に照射される。ここで、θS3はθS2よりも大きい角度である。採光ガラス50に入射した光LS3は採光ガラス50を透過するうちに光制御層55の光透過部56内を進む。光透過部56内では、該光透過部の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS3は、式(10)で表される太陽光進行角θP3で進む。
Figure 2017068108
この例では、太陽光進行角θP3で進行した太陽光が光透過部56と光制御部57との界面のうち傾斜角がθU1である部位に達したとき、光透過部56と光制御部57との屈折率差、及び太陽光進行角θP3の関係が全反射臨界角以上であれば図12のように界面で全反射する。これにより太陽光進行角θP3より仰角が小さい角で光透過部56を進み、さらに室内側に配置される傾斜角がθU2である部位に達してここで全反射される。これにより太陽光が偏向されて、まぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
すなわち、この例では光透過部56と光制御部57との界面のうち傾斜角がθU1である部位と傾斜角がθU2である部位とで2回太陽光を全反射して偏向し、まぶしさの原因となる直達光を防止している。
仮に光制御部の当該傾斜角が全部に亘ってθU2であったとすれば、LS3は大きな仰角(太陽光進行角)θP3で光透過部に入射するので、光制御部と光透過部との界面で全反射することができず、透過してしまい、直達光として室内に入射してしまう。
これに対して、光制御部57によれば、このような太陽光LS3をも全反射させて直達光とならないように偏向させることが可能となる。
以上からわかるように、採光シート53によれば、傾斜角θU1、θU2がθU1>θU2の関係を有していれば、光LS2、LS3のように進行角が異なる太陽光の少なくとも一部を全反射で偏向させて室内側に提供することができ、太陽光の室内への入射量を大きく減じることなく、かつ、少なくとも一部の直達光(いわゆる直射日光)をなくすことが可能となる。これにより明るく、快適な室内空間を形成することができる。
さらに、採光シート53には上記したように光透過部56が備えられており、光透過部56が配置される部位の光制御層55の表裏面は平行、平滑に形成されている。これにより、上記他の形態例と同様、室内側から室外側の景色を視認することができる。
ここで、偏向される向きは界面に入射する角度である太陽光進行角θ、及び光制御部の傾斜角であるθU1、θU2に依存する。従って、ここで全反射した光が最終的に水平より上向きとなるようにθU1、θU2が決められることが好ましい。
また、上記のように採光シート50によれば、θU1>θU2であれば、効率よく室内に太陽光を取り入れつつも直達光の少なくとも一部をなくすことができる。ただし、より効果的に太陽光を光制御部57で全反射させ、太陽光を偏向して室内側に出射させる観点から好ましいθU1、θU2を規定することができる。以下に詳しく説明する。
θU1は、上記光路例からもわかるように、太陽の仰角が高い場合に採光シートに入射した太陽光を適切に全反射することができる角度を設定することができる。これには例えば一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHを設定することができる。すなわち、仰角θSHとしたときの光透過部内の太陽光進行角θPHは上記式(2)で表されるので、この角度θPHで進行する光を全反射することができるようにθU1を設定する。ただし、仰角θSHは緯度により異なるので、異なる緯度を跨ぐように広がる所定の領域(例えば国や地域等)におけるθSH1乃至θSH2により(θSH1<θSH2)、θU1の範囲を規定することができる。すなわち、式(11)をθU1の好ましい範囲とすることができる。
Figure 2017068108
ここで日本国内では、表1の通りであることから、θU1は式(12)の範囲にあることが好ましい。
Figure 2017068108
一方、θU2は、上記光路例からもわかるように、太陽の仰角が低い場合に採光シートに入射した太陽光を適切に全反射することができる角度を設定することができる。これには例えば一年のうちで最も南中高度が低いときの仰角θSLを設定することができる。すなわち、仰角θSLとしたときの光透過部内の太陽光進行角θPLは上記式(5)で表されるので、この角度θPLで進行する光を全反射することができるようにθU2を設定する。
ただし、仰角θPLは緯度により異なるので、異なる緯度を跨ぐように広がる所定の領域(例えば国や地域等)におけるθSL1乃至θSL2により(θSL1<θSL2)、θU2の範囲を規定することができる。ここで、θU2は0度より小さくなる(図9とは反対に傾く。)と製造が困難になることから、0度以上であることが好ましい。以上より、式(13)をθU2の好ましい範囲とすることができる。
Figure 2017068108
ここで日本国内では、沖縄におけるθSLは40.5度であることから、θU2は式(14)の範囲にあることが好ましい。
Figure 2017068108
図13は、第三の形態を説明する図であり、採光ガラス110の層構成を説明する断面図で、図3に相当する図である。本形態の採光ガラス110は、採光ガラス10の採光シート13の代わりに、採光シート113を有している。採光シート113は、第一のガラスパネル11側から第二のガラスパネル12側に向けて、接着層14、第二の基材層119、接着層120、光制御層15、第一の基材層118、及び接着層19を備えて構成されている。これからわかるように、採光シート113は、採光シート13の基材層18の代わりに、第一の基材層118、第二の基材層119、及び接着層120を備える点で採光シート13と異なる。そこで、ここでは第一の基材層118、第二の基材層119及び接着層120について説明し、他の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
第一の基材層118は、光制御層15を形成するための基材となる層であり、透光性を有するとともに、光制御層15の変形を防止できるように支持する。より具体的には第一の基材層118は引張破断強度150MPa以上を有することが好ましい。従って第一の基材層118は上記した採光シート13の基材層18と同じ位置に配置されている。第一の基材層118を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
第一の基材層118の厚さは、第二の基材層119との合計で150μm以上となればよい。従って、これを満たす限りのおいて特に限定されない。一方、厚さの上限は第二の基材層119との合計で1mmである。これ以上厚いと採光シートの作製時において巻取りが難しくなる。より好ましくは300μm以下である。
そして、第一の基材層118のうち接着層19側の面に易接着層が形成されていないことは採光シート13と同じである。
第二の基材層119は光制御層15のうち、第一の基材層118とは反対側の面に、接着層120を介して貼りつけられた基材層119である。第二の基材層を構成する材料は第一の基材層118と同じように考えることができる。従って本形態で第二の基材層119は一方の面に接着層14、他方の面に接着層120が形成されている。
第二の基材層119の厚さは、第一の基材層118との合計で150μm以上となればよい。従って、これを満たす限りのおいて特に限定されない。一方、厚さの上限は第一の基材層118との合計で1mmである。これ以上厚いと採光シートの作製時において巻取りが難しくなる。より好ましくは300μm以下である。
そして、第二の基材層119では接着層14側の面、及び接着層120側の面の両方ともに易接着層が形成されていない。
接着層120は上記したように光制御層15と第二の基材層119とを接着するための層である。この層は接着層14、接着層19と同じように考えることができる。
以上のように、本発明では基材層が光制御層の一方側及び他方側の両方に配置されてもよい。そこ際には合計の厚さが150μmである。また、接着層に接する面には易接着層が設けられていない。このような構成であっても上記した採光シート13と同様の効果を奏するものとなる。
実施例では、本発明例の層構成を備える採光ガラス、及び、比較例としての採光ガラスを作製してそれぞれ剥離試験及びガラスの飛散防止性について試験を行った。表2に本発明例1、2、及び比較例1、2の層構成を表した。
Figure 2017068108
本発明例1は採光ガラス10に倣った例であり、表2に示した層構成を備えている。ここで、各層は次のような仕様である。
・第一のガラスパネル:厚さ3mmのフロートガラス
・接着層A:厚さ1.2mmのエチレン酢酸ビニル共重合系接着剤
・光制御層:厚さ180μm
・基材層:厚さ188μmのコスモシャインA4100(東洋紡株式会社社)
・接着層B:厚さ1.2mmのエチレン酢酸ビニル共重合系接着剤
・第二のガラスパネル:厚さ3mmのフロートガラス
本発明例2は採光ガラス110に倣った例であり、表2に示した層構成を備えている。
・第一のガラスパネル:本発明例1に同じ
・接着層A:本発明例1に同じ
・第二の基材層:厚さ50μmのコスモシャインA4100(東洋紡株式会社製)
・接着層C:アクリル系樹脂の粘着剤(商品名:SKダイン2094、綜研化学株式会社、固形分25.0%、酢酸エチルおよびメチルエチルケトンの混合溶媒)を100質量部と、架橋剤(E−5XM、L−45、綜研化学株式会社、固形分5.0%)を0.28質量%と、1,2,3−ベンゾトリアゾールを0.25質量部と希釈剤(トルエン/メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=27.69g/27.69g/4.61g)を32.0質量部と、を混合して接着層用組成物を得た。上記接着層用組成物を離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)上に塗布して乾燥し形成。
・光制御層:本発明例1に同じ
・第一の基材層:厚さ100μmのコスモシャインA4100(東洋紡株式社製)
・接着層B:本発明例1に同じ
・第二のガラスパネル:本発明例1に同じ
比較例1は本発明例1に対して、基材層の厚さを250μmとし接着層B側の面に易接着層が設けられた例である。
比較例2は本発明例1に対して、基材層の厚さを100μmした例である。
以上の各例について剥離試験及び飛散防止性試験を行った。結果を表3に示す。
(剥離試験)
剥離試験は、各採光ガラスを−40℃で30分保持、次いで85℃で30分保持を1サイクルとし、これを100回繰り返すヒートショックサイクル試験(「−40℃〜85℃のヒートショック×100サイクル試験」)を行った。取り出し採光ガラスの接着層と基材層の間に剥離によるエアーの混入が見られた場合を×とした。
(飛散防止試験)
飛散防止試験は、JIS R 3205に準じてショットバッグ試験を行い、合否を判定した。
Figure 2017068108
表3からわかるように、本発明例により、剥離の防止及び割れたガラスの飛散防止が同時に図れる。
2 窓
3 枠
10、50、110 採光ガラス
11 ガラスパネル
12 ガラスパネル
13、53、113 採光シート
14 接着層
15、55 光制御層
16、56 光透過部
17、57 光制御部
18 基材層
118 第一の基材層
119 第二の基材層
120 接着層

Claims (5)

  1. 間隔を有して配置される複数の光透過部、及び隣り合う2つの前記光透過部の間に形成される光制御部を具備する光制御層と、
    前記光制御層の一方側又は両方側に配置される基材層と、を有し、
    前記基材層は厚さの合計が150μm以上であり、前記基材層の面うち前記光制御層が配置される側とは反対側の面には易接着層が設けられていない、採光シート。
  2. 前記基材層は前記光制御層の両方側に配置されており、一方の前記基材層と前記光制御層との間には接着層が設けられている、請求項1に記載の採光シート。
  3. 前記光制御部には前記光透過部と異なる屈折率を有する樹脂が充填されている請求項1又は2に記載の採光シート。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の採光シートと、
    前記採光シートの両面に接着層を介して配置されたガラス板と、を備える、採光ガラス。
  5. 開口部に請求項4に記載の採光ガラスが設置された建物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023181709A1 (ja) * 2022-03-25 2023-09-28 日東電工株式会社 光学積層体

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