本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明の形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし本発明は当該形態に限定されるものではない。
図1は第一の形態を説明する図であり、窓2(図2参照)が備えられた建物1の外観斜視図である。建物1はいわゆるオフィスビルであり、南側に面する外壁には室内外を連通する複数の開口部が設けられ、ここに採光システム5に含まれる採光パネル10を具備する窓2が配置されている。
図2は、1つの窓2で室外と区切られた室内側空間Sの一部を模式的に表した図であり、ここに採光システム5が適用されている。図2からわかるように、採光システム5は採光パネル10、及び反射手段25を有して構成されている。以下、それぞれについて説明する。
図3は、採光シート15(図4参照)により採光パネル10が形成され、採光パネル10が適用された窓2を正面から見た図である。窓2は、採光パネル10と、該採光パネル10のうち、少なくともパネル11(図4参照)の外周部に沿ってパネル11を縁取るように配置された枠3を有して構成されている。そして当該窓2が建物1の開口部に配置される。このように枠及びその枠内にパネルが備えられることにより窓が形成されること自体は公知の構成と同様である。従って枠3の形状も公知のものを適用することができる。
ここで当該窓2は、建物に予め配置されている窓に採光シート15を貼付することにより形成することもできる。このときには建物には通常、パネル及びその外周部を縁取る枠を備えているので、このパネルに採光シート15を貼付することで窓2とすることができる。
図4は、図3にIVa−IVaで示した線に沿った鉛直方向における断面図のうち採光パネル10の部分に注目した断面であり、その層構成を模式的に表した図である。図4では見易さのため、繰り返しとなる符号は一部省略している(以降に示す各図において同じ。)。
採光パネル10は、パネル11、及びパネル11に接着層12により貼付された採光シート15を有している。そして採光シート15は、基材層16、光反射層17、接着層20、保護層21、ハードコート層22を備えている。以下、採光パネル10を構成するこれらの構成要素について説明する。なお、図4では採光パネル10が鉛直になるように建物等に取り付けられた姿勢で表されており、図4の紙面左が室外側、紙面右が室内側、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
パネル11は、窓ガラスや樹脂パネル等、通常の建物や乗り物の窓等に用いられる透光性を有する板状の透光パネルである。従って、パネル11を構成する部材としては公知の板ガラスや樹脂パネルを用いることができる。
ここでパネル11は上記のように建物に予め配置されている窓ガラスを用いてもよい。すなわち、建物に備えられた窓に採光シート15を貼付することにより採光パネル10を形成することもできる。
接着層12は、パネル11に採光シート15を接着するための層である。接着層12を構成する材料としては、このような接着が可能であれば特に限定されず、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。粘着剤を例示すれば、例えばアクリル系の粘着剤を挙げることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤がある。ただし、接着層12を構成する材料は、採光パネル10の性質上、透光性、耐候性に優れた材料によることが好ましい。
接着層12の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層12が薄過ぎるとパネル11と採光シート15との密着性が低下する虞がある。また、接着層12が厚過ぎると接着層12の厚さを均一にすることが困難になる。
接着層12には、赤外線、紫外線、及び可視光線の少なくとも1つを吸収する機能を有してもよい。「赤外線、紫外線、及び可視光線の少なくとも1つを吸収する」とは、赤外線、紫外線、および可視光線のいずれかに分類される電磁波のうち所定の波長の電磁波を吸収することを意味する。また、「吸収する」とは、上記所定の波長の電磁波を10%以上吸収することを意味する。
かかる機能を有する層とするためには、赤外線、紫外線、及び可視光の少なくとも1つを吸収できる吸収剤を含有させればよい。
赤外線を吸収する吸収剤としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)またはスズドープ酸化インジウム(ITO)、フタロシアニン化合物などの金属酸化物超微粒子などが挙げられる。これらの吸収剤を添加したり表面に塗布したりすることによって、赤外線を吸収できる。このように採光シートに赤外線を吸収する機能を付加することによって、例えば、特に夏場における室内温度の上昇を抑制して冷房の使用を抑えられる等の効果を奏する。
紫外線を吸収する吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、全てBASFジャパン株式会社製)や、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 1577 ED、BASFジャパン株式会社製)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CHIMASSORB 81、CHIMASSORB 81 FL、全てBASFジャパン株式会社製)、ベンゾエート系紫外線吸収剤(TINUVIN 120、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらの吸収剤を添加したり表面に塗布したりすることによって、紫外線を吸収できる。採光シートに紫外線を吸収する機能を付加することによって、例えば、室内に居る人の皮膚への悪影響や室内にある家具の退色等を抑制する等の効果を奏する。
可視光線を吸収する吸収剤としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられる。ただし、これに限定されず、例えば吸収すべき光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を用いてもよい。着色粒子の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。これらの中では、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から着色した有機微粒子が好ましい。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましい。これらの吸収剤を添加したり表面に塗布したりすることによって、可視光線を吸収できる。採光シートに可視光線を吸収する機能を付加することによって、例えば、室内におけるまぶしさを和らげることができる。
上記のような吸収剤を含有させることによって、採光シートを建物の採光部に配置したときに、より快適な室内環境を提供することができる。当該吸収剤は、赤外線、紫外線、および可視光線のいずれかに分類される電磁波のうち所定の波長の電磁波を吸収できればよく、赤外線のみを吸収するように構成してもよく、紫外線のみを吸収するように構成してもよく、可視光線のみを吸収するように構成してもよく、赤外線、紫外線、および可視光線のうち2種以上の電磁波を吸収できるように構成してもよい。いずれの波長の電磁波を吸収できるように構成するかは、採光シートの設置場所や設置目的に応じて適宜選択可能である。また、吸収する電磁波の波長や吸収率は、上述した吸収剤の種類や量を適宜調整することによって調節できる。
なお、吸収剤を含む層における上記所定の波長の電磁波の吸収率は10%以上であり、90%以下であることが好ましい。吸収率が10%未満であれば吸収剤を含有させる効果を得難く、90%以下とすれば吸収剤を構成する組成物の調整が容易である。
基材層16は、光反射層17を形成するための基材となる層であり、透光性を有するとともに、光反射層17の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層16を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層16の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層16の厚さがこの範囲を外れると、加工性に問題を生じる虞がある。例えば、基材層16が薄過ぎればしわが生じやすくなる。また、基材層16が厚過ぎれば、中間工程において巻き取ることが難しくなる。
光反射層17は、一方の面側から入射した光(後述するように、特に斜め上方から入射した光)を反射させて他方の面側に出射可能な層である。光反射層17は、図4に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を有する。すなわち、図4に表れる断面において、台形である光透過部18、及び、隣り合う光透過部18の間の、断面が台形の凹部内に形成された光反射部19を備えている。本形態では光透過部18より基材層16側で隣り合う光透過部18同士が連結している。そして、光透過部18及び光反射部19は当該断面を有してシート面の一方向(本形態では水平方向)に延び、当該一方向とは異なる方向(本形態では鉛直方向)に複数の光透過部18及び光反射部19が交互に配列されている。
光反射層17のいずれかの部位には、赤外線、紫外線、及び可視光の少なくとも1つを吸収できる吸収剤を含有してもよい。特に、赤外線吸収剤を入れることで、太陽高度の高い夏は光反射層で赤外線を吸収させやすいため涼しく、太陽高度の低い冬は光反射層で赤外線を吸収させ難いため暖かく、過ごしやすい室内環境にすることができる。
光透過部18は光を透過する部位であり、光透過部18の基材層16側の面とその反対側の面(保護層21側の面)とが平行に形成されていることが好ましい。これによって、後に説明するように採光パネル10を窓2に適用した場合に室内側から室外側の景色がさらに見やすくなる。好ましくは光透過部18は光を散乱させることなく透過する。これにより背面側の景色の見易さが向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に光を散乱させる材料を添加することなく形成された部位であることを意味し、光を散乱させる意図のない材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
光透過部18を構成する材料は、基材層16と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が反射されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。
光透過部18と基材層16とを同じ材料で構成する場合には、基材層16と光透過部18とを一体に形成することもできる。また、光透過部18と基材層16とを異なる材料で構成する場合、及び同じ材料で構成する場合であっても、基材層16と光透過部18とを別々に形成し、公知の手段により積層してもよい。
光透過部18の形成方法の具体例は後で説明する。
光透過部18を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
光透過部18はシート面に沿った方向に所定の間隔で配列される。従って、隣り合う光透過部18の間には、台形断面を有する凹部が形成されている。該凹部は、光透過部18の上底側に下底を有し、光透過部18の下底側に上底を有する台形状の断面を有した溝であり、ここに後述する必要な材料が充填されることにより光反射部19が形成される。すなわち、図4に表れる断面において、光透過部18は、基材層16側となる面に下底を有し、これとは反対側の面に該下底より短い上底を有する台形の断面を有する要素である。
光反射部19は、ここに到達した光を反射する部位であり、本形態では、所定の条件で界面に達した光は全反射し、光反射部19内に到達した光は拡散反射するように構成されている。
このような光反射部19とするため、光反射部19内に光透過部18よりも低い屈折率の樹脂を充填することができる。これによれば光透過部18と光反射部19との界面で、屈折率差に基づき光の入射角の条件によって全反射させて反射することができる。屈折率差が大きいほど全反射することができる光は多くなる。具体的な屈折率差は特に限定されることはないが、0より大きく0.16以下を挙げることができる。
さらに、光反射部19には、例えば図5に示したように、顔料を分散させることで光を拡散反射することができる。このような顔料は隠蔽性のあるものが好ましく、例えば白色顔料や銀色顔料が挙げられる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。一方、銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。これによれば全反射することなく光反射部19内に光が達したときにも反射して室内側に光を反射することができる。
光反射部19は隣合う光透過部18の間の凹部に形成されるので、その形状も凹部に沿ったものとなる。従って本形態では光反射部19は基材層16側に短い上底、保護層21側に長い下底を有する略台形断面を有し、その間に斜辺を有している。この斜辺は光透過部18との界面を構成し、共通の斜辺となる。
光反射部19(光透過部18)の断面における斜辺の角度θ1(図4参照)は、シート面法線に対して0度以上20度以下であることが好ましい。θ1が0度未満(これは図4に表れる断面において、光反射部19の基材層16側の幅より保護層21側の幅が短い形状になることを意味する。)になるように光反射部19を形成するとすれば、光反射層17を形成する際に用いる金型の作製が困難になり、また、作製しても離型性に問題が生じる虞がある。一方、θ1が大き過ぎると開口幅(図3に表れる断面において、光反射部19の保護層21側の幅)に対する高さ(光反射層17の厚さ方向の大きさ)のアスペクト比を大きくする事が困難になり、光反射層17によって後述する所望の効果を得ることが難しくなる。
光反射部19が配列されるピッチは特に限定されることはないが、10μm以上200μm以下であることが好ましく、100μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。光反射部19のピッチが狭すぎると、光反射層17によって後述する所望の効果を得ることが難くなり、回折現象により、光透過部18を透過した像が虹状になる不具合が生じる虞がある。また、光反射部19のピッチが広すぎると、光反射部19を形成することが困難になったり、後述するようにして光反射層17を作製する際に金型の離型性や加工性に問題を生じる虞がある。また、光反射部19の開口幅(図4に表れる断面において、保護層21側の幅)は特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。光反射部19の開口幅が狭すぎると、光反射層17によって後述する所望の効果を得ることが難くなる。また、光反射部19の開口幅が広すぎると、光反射部19を形成することが困難になったり、光反射層17を作製する際に金型の離型性や加工性に問題を生じる虞がある。
光反射層17の厚さは特に限定されないが、50μm以上300μm以下であることが好ましい。光反射層17が薄過ぎると後述する所望の効果を得難くなったり、微細な加工(光反射部19の形成など)を施すことが難しくなったりする虞がある。また、光反射層17が厚過ぎると後述するようにして光反射層17を作製する際に、金型が離型し難くなるなど、加工性に問題を生じる虞がある。
本発明において光透過部及び光反射部の形状は図4に示した形態に限定されない。したがって、図4に表れる断面に相当する断面において、光透過部は矩形であってもよく、上記台形の斜辺に相当する部分が曲線状(当該曲線の接線が各部において上記θ1と同じ条件であることが好ましい。)や折れ線状(折れ線を構成する各線が上記θ1と同じ条件であることが好ましい。)となっていてもよい。
接着層20は、保護層21を光反射層17のうち基材層16とは反対側に貼り付けるための層であり、かかる機能を有する各種のものを用いることができる。接着層20に用いられる材料は特に限定されることはないが、上記接着層12と同様のものを用いることができる。また接着層20の好ましい厚さも上記接着層12と同様である。
保護層21は、上記基材層16と対になり、光反射層17を挟むように配置される層であり、基材層16と併せて光反射層17を保護する機能を有する。保護層21はこのような機能を有するものであれば、その材料は特に限定されることはないが、例えば上記した基材層16と同様の材料により構成することができる。
ハードコート層22は、表面保護を目的として、採光パネル10のうちパネル11とは反対側の最表面に設けられる層である。ハードコート層22は透明な樹脂層として形成することができ、擦り傷、表面汚染に対する耐性の観点から、硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成することが好ましい。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。
また、ハードコート層22には、耐汚染性向上の機能を追加してもよい。これは例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物などを添加することにより可能となる。さらにその他の機能として帯電防止性向上、撥水性向上の機能を有するものとしてもよい。帯電防止性向上のために用いることができる材料としては、電子伝導タイプではPEDOT−PSS(PEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)とPSS(poly(styrenesulfonate);スチレンスルホン酸ポリマー)とが共存)などが挙げられ、イオン導電タイプではリチウム塩系材料などが挙げられる。また、撥水性向上のために用いることができる材料としては、フッ素系化合物などが挙げられる。
以上説明した採光パネル10は例えば次のように製造することができる。
採光パネル10は、パネル11に接着層12により採光シート15を貼合することによって製造することができる。そして採光シート15は、例えば次のように作製する。
まず、光反射層17は金型ロールを用いる方法により形成する。すなわち、円筒状であるロールの外周面に光反射層17の光透過部18を転写可能な凹凸が設けられた金型ロールを準備する。そして金型ロールとこれに対向するように配置されたニップロールとの間に、基材層16となる基材を挿入する。このとき基材の一方の面には接着層12が予め形成されていることが好ましい。そして、基材のうち接着層12が配置されていない側の面と金型ロールとの間に光透過部18を構成する硬化前の組成物を供給しながら金型ロール及びニップロールを回転させる。これにより金型ロールの表面に形成された凹凸の凹部内に光透過部18を構成する組成物が充填され、該組成物が金型ロールの凹凸の表面形状に沿ったものとなる。
ここで、光透過部18を構成する組成物としては、上記したものが好ましいが、さらに具体的には次の通りである。すなわち、光硬化型プレポリマーに、反応性希釈モノマー及び光重合開始剤を配合した光硬化型樹脂組成物を用いることができる。これらは公知のものを適宜用いることができる。
金型ロールと基材との間に挟まれ、ここに充填された光透過部18を構成する硬化前の組成物に対し、基材側から光照射装置により光を照射する。これにより、光透過部18を構成する組成物を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロールにより金型ロールから基材層16及び成形された光透過部18を離型する。
次に、隣り合う光透過部18の間に形成された凹部に光反射部19を構成する硬化前の組成物を充填して硬化させることによって、光反射部19を形成することができる。具体的には、光透過部18の凹部に光反射部19を構成する硬化前の組成物を過剰に供給し、その余剰分をブレードにより掻き取ることによりその量を調整するとともに凹部に組成物を充填する。そして凹部内に充填された組成物を適切な方法で硬化させる。
このようにして、基材層16上に光反射層17を形成することができる。
一方、保護層21の一方の面にハードコート層22、他方の面に接着層20を積層した積層体を準備し、この積層体の接着層20が光反射層17に接するように積層する。なお、接着層20が紫外線硬化樹脂、光硬化性樹脂等からなる場合には、積層後に紫外線又は光を照射して硬化させればよい。
以上のように作製した採光シート15を接着層12によりパネル11に貼合することで採光パネル10とする。採光パネル10には、接着層12でなく、上記した各層のいずれかに、赤外線、紫外線、及び可視光の少なくとも1つを吸収できる吸収剤を含有させてもよい。
図2に戻り反射手段25について説明する。反射手段25は採光パネル10が具備される窓2の室内側の室内空間の天井部に設置されるシート状の部材であり、採光パネル10で反射された外光をさらに反射して光を所望の方向に制御して当該所望の部分を明るく照明する手段である。
図6(a)、図6(b)、図7には反射手段25の構造を模式的に表した。図6(a)は反射手段25を図2にVIaで示した方向、すなわち照明される側から見た平面図である。図6(b)は図6(a)にVIb−VIbで示した線に沿った反射手段25の断面図、図7はこの断面図の一部を拡大した図である。
これらの図からわかるように、反射手段25には、光を反射する側に突出する複数の単位反射要素26が配列されている。
単位反射要素26は、所定の断面を有して一方向に延びる要素であり、本形態では三角形断面を有する三角柱状である。この複数の単位反射要素26がシート面方向に沿って並べられるように配列されている。より具体的には、単位反射要素26の三角形断面における1つの頂点が光を反射する側に向けて突出し、該頂点が形成する稜線が水平方向に延びている。そしてこの稜線方向に直交する方向に単位反射要素26が配列されている。
また、単位反射要素26は、光を反射する側に突出した頂点(稜線)を含む1つの辺(面)に反射面26aが形成されている。反射面26aは図7に示したように単位反射要素26を天井に設置した姿勢で水平面に対して角度αで傾斜するとともに、光を反射する材料により形成された反射層が設けられている。
ここで、角度αは光を反射する方向により適宜変更可能であるが、0度より大きく45度以下が好ましい。αが0度以下であると採光した光を適切に反射することができず、αが45度より大きいと採光シートによりほぼ水平に反射させて採光した光を反射させたときに窓側に戻る光が生じるので採光効率が低下する虞がある。また、単位反射要素26は、反射面26aと、反射を想定していないライズ面26bとを有しており、反射面26aはαが0度より大きく、ライズ面26bはαが0より小さくなる。
また反射層を形成する材料は、光を反射することができればよく特に限定されることはないが、例えば金属薄膜を挙げることができ、アルミニウムや銀の薄膜を用いることができる。
その他、単位反射要素26の構成は特に限定されることはないが、その突出高さは0μmより大きく200μmより小さいことが好ましい。また隣り合う単位反射要素26とのピッチは10μmより大きく、200μmより小さいことが好ましい。ピッチが小さすぎると回折現象により、反射した像が虹状になる不具合が生じる虞がある。また、突出高さ、ピッチが大きすぎると、単位反射要素26を形成することが困難になったり、金型の離型性や加工性に問題を生じたりする虞がある。
ここで、反射手段25は、天井に設置された姿勢で、突出した反射面26aが光を反射すべき側(すなわち下方、天井とは反対側)に向けられ、その稜線が延びる方向は採光パネル10のパネル面に対して平行であることが好ましい。従って、複数の単位反射要素26が配列される方向は、採光パネル10から離隔する方向である。
また、反射手段25は、天井の全面に亘って設置されてもよいし、天井の一部に設置されてもよい。
反射手段25は、反射層以外の部位を例えば上記した光透過部18と同様の材料で形成することができる。そして反射層は上記したように金属薄膜等を用いることが可能である。従って、このような反射手段25は例えば押し出し成型や賦型により反射層以外の部分の形状を作製し、蒸着や塗布により反射面に金属膜を製膜して反射層を積層することができる。
なお、反射手段25は天井に設置する観点から難燃であることが好ましい。そのため、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和酸化物を難燃剤として添加してもよい。
図8には、変形例にかかる反射手段125を説明する図を示した。図8(a)は図6(b)と同じ視点、図8(b)は図7と同じ視点による図である。
本例では、反射面として空気との界面を利用し、全反射による反射で光の向きを変える。従って、反射手段125では、光を反射する側とは反対側に突出する複数の単位反射要素126が配列されている。
単位反射要素126は、所定の断面を有して一方向に延びる要素であり、本形態では三角形断面を有する三角柱状である。この三角形断面における1つの頂点が光を反射する側とは反対側(天井側)に突出し、該頂点が形成する稜線が水平方向に延びるように配置されている。従って、隣り合う単位反射要素126の間には、凹部127が形成され、単位反射要素の傾斜面(反射面)126aと凹部127との界面が形成される。ここは単位反射要素126側の屈折率が、凹部127側の屈折率よりも高いように屈折率差が生じている。これにより、当該界面で光が全反射することができる。
なお、屈折率差を調整するため、凹部127に単位反射要素126よりも屈折率差の低い樹脂で埋めることもできる。
このような反射手段125は、図8(b)に示したように天井に設置した姿勢で、単位反射要素126の反射面126aは、水平面に対して角度βで傾斜し、角度βは光を反射する方向により適宜変更可能であるが、0度より大きく20度以下であることが好ましい。20度より大きいと、採光シートにより概ね水平に採光された光が天井の法線に対して概ね90度で入射することになり、単位反射要素126の屈折率が1.50である場合には反射面126aに20度で入射することになり、これを全反射させて下方に向きを変えることは困難であると考えられる。
また、単位反射要素126は、反射面126aと、反射を想定していないライズ面126bとを有しており、反射面126aはβが0度より大きく、ライズ面126bはβが0より小さくなる。
その他、単位反射要素126の構成は特に限定されることはないが、その突出高さは0μmより大きく100μmより小さいことが好ましい。また隣り合う単位反射要素126とのピッチは10μmより大きく、200μmより小さいことが好ましい。ピッチが小さすぎると回折現象により、反射した像が虹状になる不具合が生じる虞がある。また、突出高さ、ピッチが大きすぎると、単位反射要素126を形成することが困難になったり、金型の離型性や加工性に問題を生じたりする虞がある。
また、単位反射要素126は、上記した光透過部18と同様の材料により作製することが可能である。
次に、採光システム5を用いて、採光パネル10により窓2を形成し、反射手段25を天井に設置した1つの例について主要な光路について説明する。図2、図4、図5、図7、及び図8に説明のための光路例を模式的に示した。なお当該光路例は概念的に示したものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。
日光が想定される斜め上方から採光パネル10に照射された外光L21(図2)、外光L41(図4)は、パネル11、接着層12及び基材層16を透過して光反射層17の光反射部19に到達する。光反射部19に到達した外光L41は、光反射部19によって反射される。この外光L41は、光透過部17と光反射部19との屈折率差による全反射に基づく反射である。そして、全反射された外光41は、接着層20、保護層21、及びハードコート層22を透過して室内側に入射する。このとき、室内側に入射する光は天井の反射手段25に向けて反射されている。
一方、図4に示した外光L42は、光透過部18と光反射部19との界面で全反射することなく光反射部19内に侵入した光路例である。このような外光も例えば図5に光路例L51〜光路例L53で示したように、光反射部19に含有された光を反射させる物質で反射し、その少なくとも一部は上方に反射され、室内側に入射する光は天井の反射手段25に向けて反射される。
採光パネル10により天井に向けて反射された外光は、反射手段25に達し、ここで下方に向けて例えば図2の光L22、図7の光L71のように反射される。反射された光は図2に示したように例えば空間Sに設置された机Dに照射される。反射手段25による光の反射は、図7に表れているように、単位反射要素26の反射面26aの反射により行われる。
このように反射手段25に反射した光は、その方向が所定の位置に向かうように指向性を有するように制御され、その結果当該所定の位置が明るく照明される。そしてこの照明は、天井から照らされるので、人の目に直接入らないことから、天井照明と同様の役割を有する。従って、外光を効果的に照明、又は照明の補助として用いることができ、外光の効率的利用、及び省エネルギーを図ることが可能である。従来においては、眩しさを避けるために反射して外光を室内に採り入れる技術はあるが(上記特許文献1)、これを照明として積極的に利用することはできなかった。
反射手段として反射手段125を用いた場合には、採光パネル10により天井に向けて反射された外光が、反射手段125に達し、ここで下方に向けて例えば図8(b)の光L81のように反射される。反射された光は図2の光L22に示したように例えば空間Sに設置された机Dに照射される。反射手段125による光の反射は、図8(b)に表れているように、単位反射要素126と凹部127との界面における全反射により行われる。
一方、室内側から室外を見たとき、観察者の視線は図4に示した光L43による。すなわち、パネル11に対して平行な面である光透過部18の基材層16側の面及びその反対側面を介して室外を観察することができる。この部分では界面における大きな屈折がないので、室外側の景色を鮮明に見ることが可能である。
以上のように、採光システム5によれば、外光を効率良く室内に採り入れてこれを照明又は照明の補助としつつ、室内側から外の景色を比較的鮮明に見ることも可能である。また、採光パネル10では、光反射層17が基材層16及び保護層21により挟まれているので耐久性も向上させることができる。
さらに、本形態において採光システム5のうち採光パネル10に含まれる光反射層17を以下のように構成することができる。図9には光反射層17の一部を拡大した図を示した。上記のように、2つの光反射部19の間には光透過部18が配置される。従って、図9にIXaで示したように光透過部18の対角線に相当する線を定義することができる。より詳しくは、隣り合う光反射部19の向かい合う辺について、下方に配置される光反射部19の辺の室内側端部と、隣接して上方に配置される光反射部19の辺の室外側端部とを結ぶ線IXaを見込み線とし、該見込み線IXaが水平面となす角のうち90度以下の方の角を見込み角θaとする。本形態では当該θaが所定の値をとることが好ましい。
ここでは光反射部19の台形断面における脚部は、図9からわかるように、上方側となる脚部は水平面(採光パネル10の法線)に対してθUを有して傾斜し、下方側となる脚部は同様にθDを有して傾斜しているものする。このときの見込み角θaの好ましい値について主要な光路に基づいて説明する。説明に必要な光路例を以下に示す図面に適宜表した。
図10に1つの光路例である太陽からの光LS1を示した。図10からわかるようにLS1はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS1で採光パネル10に照射される。採光パネル10に入射した光LS1は採光パネル10を透過するうちに光反射層17の光透過部18内を進む。光透過部18内では、該光透過部の屈折率をNP、室外の屈折率をN0とすれば、光LS1は、式(1)で表される太陽光進行角θP1で進む。
太陽光進行角θP1で進行した太陽光が光反射部19に達したとき、上記のように、太陽光を全反射又は拡散反射することができる。これにより太陽光が反射される。
上記のように採光シート10によれば、見込み角θaによらず、効率よく室内に太陽光を取り入れつつも直達光の少なくとも一部をなくすことができる。ただし、より効果的に太陽光を光反射部19に照射させ、太陽光を散乱させて室内側に出射させる観点から見込み角θaを所定の角度範囲に規定することができる。以下に詳しく説明する。
図11に説明図を示した。ここでは、一年のうち最も南中高度が高いときの仰角θSHを考える。すなわち、少なくとも一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHで太陽光が採光パネル10に入射したときに、太陽光からの直接光を全て光反射部19に到達させる観点から見込み角θaを規定することができる。図11からわかるように、仰角θSHで入射した光LSHが必ず光反射部19に達するための限度は、光透過部18内を光LSHが見込み線に沿って進む状況である。すなわち、光透過部18内における太陽光進行角θPHが見込み角θaと同じとなっていればよい。従って、これは、空気の屈折率をN0、光透過部の屈折率をNpとしたとき、屈折率、及び入射角の関係式により下記式(2)で表される。
式(2)から、見込み角θaを下記式(3)を満たすように構成することにより、少なくとも一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHで太陽光が採光パネル10に入射したときに、太陽光からの直接光を全て光反射部19に到達させることができる。
θSHは、所定の場所における南中高度が最も高い位置における仰角であるから、当該所定の場所ではこれ以上角度の大きい仰角は存在しない。従って、これより低い所定の仰角の太陽光までをも同様に光反射部19に全て到達させるためには、式(1)を満たしつつ、さらに式(2)、式(3)のθSHのかわりに当該所定の仰角を考慮すれば同様にθaのとるべき値を得ることができる。
例えば、一年のうち南中高度が最も高い時の仰角θSHと、一年のうち南中高度が最も低い時の仰角θSLとの間の仰角θSM以上の仰角からの直接の太陽光を光反射部に到達させたいときには、式(3)を満たしつつ式(4)を満たすように見込み角θaを形成すればよい。
このように見込み角θaを所定の角度にするための手段は、光反射部のピッチ、光反射部の脚部の角度(図9のθU、θD)、光反射部の厚さ方向(図9の紙面左右方向)の大きさを変更することを挙げることができる。これらを単独、又は複数組み合わせて見込み角θaを所定の角度に調整することが可能である。
このようにθaを小さくすることにより、季節による南中高度の違いだけでなく、一日のうちにおける太陽の高さの移動に伴う仰角の変化に対しても対応することができ、より多くの太陽光を光反射部に到達させて全反射や散乱反射し、室内側に提供することが可能となる。
一方で、θaを小さくすることにより光反射層17が厚くなったり、光透過部19が小さくなったりすることもある。これらにより、室外側の視認性が低下する虞もある。かかる観点から、θaの下限は特に限定されるものではないが、例えば図12に示したように一年のうち最も南中高度が低いときの仰角θSLからの直接の太陽光を全て光反射部19に到達させる観点からθaの下限を決めてもよい。図12に説明のための図を示した。
基本的な考え方は式(2)、式(3)の算出と同様であるから、図12からわかるように、仰角θSLによる太陽光LSLが見込み線に沿うように進むことを考えればよいので、式(5)を得ることができる。
ここで、θPLは、仰角θSLのときの光透過部の太陽光進行角である。従って、式(3)及び式(5)を求めた趣旨から式(6)を得ることができる。
ここでより具体的な例を挙げる。日本国内を考えたとき、札幌、東京、沖縄における一年のうち南中高度が最も高い時の仰角(θSH)、一年のうち南中高度が最も低いときの仰角(θSL)をそれぞれ表1に示した。
表1に基づいて、日本国内におけるθaの範囲を式(7)又は式(8)のように構成してもよい。
式(7)によれば、日本国内の概ね全域において少なくとも夏至における南中高度からの太陽光の全ての直射光を光反射部に到達させることができる。また、式(8)によれば、さらに高い視認性を有しつつ、多くの太陽光を光反射部に到達させることが可能である。
図13は第二の形態を説明する図であり、図4に相当する。これは本形態の採光システムに含まれる採光パネル110が適用された窓のうち、採光パネル110の層構成を示した図である。反射手段については上記第一の形態と同様であるのでここでは説明を省略する。本形態では窓2と同様、採光パネル110及びこの外周部に枠体が取り付けられることにより、窓が形成される。図14には、図13の一部で、光反射層117に注目して拡大した図を示した。
ここで、上記した構成と同様の部分については同じ符号を付して説明を省略する。
採光パネル110は、パネル11、接着層12、及び接着層12によりパネル11に貼付された採光シート115を備えている。そして採光シート115は、基材層16、光反射層117、接着層20、保護層21、及びハードコート層22を備えている。なお、図13、図14では採光パネル110が鉛直になるように建物等に取り付けられた姿勢で表されており、図13、図14の紙面左が室外側、紙面右が室内側、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
光反射層117は、日光等の室外側からの光である外光を反射して室内側に透過させる機能を有する層である。反射層117は、図13、図14に表れているように、複数の光透過部118が配列されている。そして隣り合う光透過部118の間に空隙が形成され、これが光反射部119となる。
各光透過部118は、基材層16の面のうち接着層12とは反対側に設けられ、基材層16から凸となるように突出して形成されている。本形態では光透過部118は図13、図14に表れる断面において台形を有しており、当該断面を維持して紙面奥/手前方向(本形態では水平方向)に延びるように形成され、該延びる方向にとは異なる方向に配列されている。
光透過部118は、台形断面において、下底を形成する第一面118a、上底を形成する第二面118b、第一面118aと第二面118bとを結ぶ面のうち下方に設けられる脚を形成する反射面118c、及び上方に設けられる脚を形成する立ち上げ面118dを備えている。ここで反射面118c及び立ち上げ面118dが光反射部119との界面を形成する。
本形態では第一面118aが室外側に面しており、第二面118bが室内側に面している。第一面118aと第二面118bとは略平行に形成されている。第一面118a、第二面118bはその面がパネル11の面に平行であることが好ましい。
反射面118cは光反射部119との界面で、その屈折率差に基づいて外光を全反射させて室内側に透過させる面であり、パネル11の面の法線となす角がθ11である。θ11の大きさは、外光を全反射させて所望の反射をさせることができれば特に限定されることはないが、外光が日光であり、斜め上方から入射してくることを鑑みるとθ11は0度以上12.1度以下であることが好ましく、θ11は4.5度であることがさらに好ましい。θ11が0度であるとき反射面118cは室内外方向に平行となる。ここで角度θ11の正負は、採光パネル110を図13のように鉛直に設置した姿勢において、室外側から室内側に向けて下がる傾斜を負、室外側から室内側に向けて上がる傾斜を正とする。
当該θ11の範囲は、例えば東京(北緯35.5度)、札幌(北緯43度)、那覇(北緯26度)の南北に緯度の大きく異なる3か所を基準とし、夏至、冬至における太陽の南中高度及び光反射層に用いることができる一般的な材料の屈折率を考慮して求めることができる。より具体的には次の通りである。
東京は北緯35.5度、札幌は北緯43度、那覇は北緯26度であり、各地の夏至の南中高度はそれぞれ78度(東京)、70.5度(札幌)、87.5度(那覇)となる。一方、冬至の南中高度は31度(東京)、23.5度(札幌)、40.5度(那覇)である。従って、当該範囲の最小である23.5度と最大である87.5度との中心は55度である。ここで、一般的な樹脂の屈折率を1.49(アクリル系樹脂)以上1.59(スチレン、ポリカーボネート系樹脂)以下として、スネルの法則に基づいて全反射条件を計算し、生産性も考慮すると、θ11は0度以上12.1度以下であることが好ましく、4.5度であることが更に好ましい。θ11が0度より小さいと金型を製造する際の切削性、金型により光透過部を成型する際の成型性、及び金型離型性が悪くなる。また、θ11が12.1度より大きくなると、夏至における那覇の南中高度87.5度のときに全反射しなくなる。
以上は採光パネルを使用する地域の一例に基づいて算出した結果であるが、このように採光パネルを使用する地域における南中高度が最も高い角度と南中高度が最も低い角度とを考慮して、その地域における適切な角度を設定することができる。
立ち上げ面118dは、反射面118cを形成することにより生じる面である。ただし、立ち上げ面118dは、反射面118cで全反射した外光が立ち上げ面118dで反射しないように傾斜して形成されていることが好ましい。具体的には立ち上げ面118dがパネル11の面の法線となす角をθ12とする。θ12の大きさは、−75.5度以上−26.9度以下であることが好ましく、−53.3度であることがさらに好ましい。当該範囲は上記した条件に基づき、全反射しない角度を好ましい範囲としたものである。
光透過部118のピッチは10μm以上200μm以下であることが好ましい。ピッチが10μmより小さいと製造の困難がある。一方、ピッチが200μmより大きくなると金型を製造する際の切削性、金型により光透過部118を成型する際の成型性、及び金型離型性が悪く、製造上の不具合が生じる可能性がある。また光透過部118の幅(第一面118aの下底幅)は、5μm以上150μm以下であることが好ましい。当該幅が5μmより小さいと製造の困難がある。一方当該幅が150μmより大きくなると金型を製造する際の切削性、金型により光透過部を成型する際の成型性、及び金型離型性が悪く、製造上不具合が生じる可能性がある。
光反射層117の厚さは50μm以上300μm以下であることが好ましい。50μmより薄いと光学的な性能が不十分であったり、光反射層の加工が微細となり精度が低下したりする。一方300μmより厚いと光反射層を成型するに際して金型からの離型性に問題が生じることがある。
ここで光透過部118は基材層16と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。ただし両者間で屈折率差があるとこの界面で光が反射されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。
光透過部118と基材層16とを同じ材料とする場合には、基材層16と光透過部118とを一体に形成することもできる。また、光透過部118と基材層16とが異なる材料である場合、及び同じ材料の場合であっても、基材層16と光反射層117とが別に形成され、なんらかの手段により積層されてもよい。
光反射層117の光透過部118を形成する材料は特に限定されることはないが、上記した光透過部18と同様の材料を用いることができる。
なお、本形態では隣り合う光透過部118の間は空気で満たされている。空気は屈折率が1.0であり、光透過部118の屈折率との関係で十分大きな屈折率差を得ることができる。当該屈折率差が大きいほど反射面118cで全反射することができる外光が多くなるので好ましい。
次に採光パネル110により窓を形成し、これを建物の開口部に配置した場面における主要な光路について説明する。図14に模式的な光路例を示した。
日光が想定される斜め上方から採光パネル100に照射された外光L141は、パネル11、接着層12及び基材層16を透過して光反射層117の光透過部118に入射する。光透過部118に入射した外光L141は反射面118cに達し、その界面で全反射して斜め上方に進む光に反射される。そのあと、外光L141は立ち上げ面118dに達するが、立ち上げ面118dは上記したようにθ12の角度を有しているので、ここでは全反射することなく透過し、接着層20、保護層21、及びハードコート層22を透過して室内側に入射する。このとき、外光L141は斜め上方に反射されているので、光は天井に向かい、反射手段25、125に提供される。
一方、室内側から室外を見たとき、観察者の視線は光L142による。すなわち、パネル11に対して平行な面である光透過部118の第二面118b及び第一面118aを介して室外を観察することができる。この部分では界面における大きな屈折がないので、室外側の景色を鮮明に見ることが可能である。
以上のように、採光パネル110によっても上記採光パネル10と同様に作用することができる。
図15は第三の形態を説明する図であり、図4に相当する。これは採光システムに含まれる採光パネル210が適用された窓のうち、採光パネル210の層構成を示した図である。反射手段については上記第一の形態と同様であるのでここでは説明を省略する。本形態では窓2と同様、採光パネル210及びこの外周部に枠体が取り付けられることにより、窓が形成される。図16には、図15の一部で、光反射層217に注目して拡大した図を示した。
ここで、上記した構成と同様の部分については同じ符号を付して説明を省略する。
採光パネル210は、パネル11、接着層12、及び採光シート215を備え、該採光シート215が保護層21、接着層20、光反射層217、基材層16、及びハードコート層22を備えている。以下に各層について説明する。なお、上記した層と同じ層については同じ符号を付すとともに説明を省略する。
光反射層217は、日光等の室外側からの光である外光を反射して室内側に透過させる機能を有する層である。光反射層217は、図15、図16に表れているように、複数の光透過部218が配列されている。
光透過部218は、接着層20の面のうち保護層21とは反対側に設けられている。本形態では光透過部218は鉛直方向における厚さ方向断面で台形を有しており、当該断面を維持して紙面奥/手前方向(すなわち水平方向)に延びるように形成され、該延びる方向とは異なる方向に配列されている。
光透過部218は、台形断面において、下底を形成する第一面218a、上底を形成する第二面218b、第一面218aと第二面218bとを結ぶ面のうち下方に設けられる脚を形成する反射面218c、及び上方に設けられる脚を形成する立ち上げ面218dを備えている。反射面218c、立ち上げ面218dが光反射部219との界面を形成する。
本形態では第一面218aが室内側に面しており、第二面218bが室外側に面している。第一面218aと第二面218bとは略平行に形成されている。第一面218a、第二面218bはその面がパネル11の面に平行であることが好ましい。
本形態では反射面218cは外光を全反射させて室内側に透過させる面であり、パネル11の面の法線となす角がθ15である。θ15の大きさは、外光を全反射させて所望の反射をさせることができれば特に限定されることはないが、外光が日光であり、斜め上方から入射してくることを鑑みるとθ15は−53.5度以上−2.5度以下であることが好ましく、θ15は−40.5度であることがさらに好ましい。この正負は図14で説明した例と同じである。また、当該範囲も上記θ11と同様の考え方により反射面218cにて全反射する条件から得たものである。
すなわち、このθ15もθ11と同様に採光パネル210が用いられる地域の南中高度に基づいて調整されることが好ましい。
立ち上げ面218dは、反射面218cを形成することにより生じる面である。ただし、立ち上げ面218dは、光透過部218に入射する外光が立ち上げ面218dで反射しないように傾斜して形成されていることが好ましい。具体的には立ち上げ面218dがパネル11の面の法線となす角をθ16とする。θ16の大きさは、2.5度以上66.5度以下であることが好ましく、35度であることがさらに好ましい。当該範囲も立ち上げ面218dにて全反射することなく光透過部218に光が入射する条件から得たものである。
光透過部218のピッチ等は光透過部118と同様である。そして光透過部218のうち、第二面218bが接着層20に接着されている。また、光透過部218を構成する材料等、その他の構成については上記した採光パネル110の光透過部118と同様である。
次に採光パネル210により窓を形成し、これを建物の開口部に配置した場面における主要な光路について説明する。図16に模式的な光路例を示した。
日光が想定される斜め上方から採光パネル210に照射された外光L161は、パネル11、接着層12、保護層21、及び接着層20を透過して光反射層217の光透過部218に入射する。外光L161は光透過部218に入射するに際し、立ち上げ面218dに達するが、立ち上げ面218dは上記したようにθ16の角度を有しているので、ここでは全反射することなく光透過部218内に入射する。光透過部218に入射した外光L161は反射面218cに達し、その界面で全反射して斜め上方に進む光に反射される。そのあと、基材層16、及びハードコート層22を透過して室内側に入射する。このとき、外光L161は斜め上方に反射されているので、光は天井や室内側空間の奥に照射される。
このように採光パネル210によれば、斜め上方から入射された光を入射した角度より上方に反射し、反射手段25、125に光を提供することができる。
一方、室内側から室外を見たとき、観察者の視線は光L162による。すなわち、パネル11に対して平行な面である光透過部218の第二面218b及び第一面218aを介して室外を観察することができる。この部分では界面における大きな屈折がないので、室外側の景色を鮮明に見ることが可能である。