以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の駆動系統>
図1は、本発明の一実施形態に係る動力分割式無段変速機4が搭載された車両1の要部の構成を示すスケルトン図である。
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。エンジン2の出力は、トルクコンバータ3および動力分割式無段変速機4を介して、車両1の駆動輪(たとえば、左右の前輪)に伝達される。
エンジン2は、E/G出力軸21を備えている。E/G出力軸21は、エンジン2が発生する動力により回転される。
トルクコンバータ3は、ポンプインペラ31、タービンランナ32およびロックアップクラッチ33を備えている。ポンプインペラ31には、E/G出力軸21が連結されており、ポンプインペラ31は、E/G出力軸21と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。タービンランナ32は、ポンプインペラ31と同一の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。ロックアップクラッチ33は、ポンプインペラ31とタービンランナ32とを直結/分離するために設けられている。ロックアップクラッチ33が係合されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが直結され、ロックアップクラッチ33が解放されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが分離される。
ロックアップクラッチ33が解放された状態において、E/G出力軸21が回転されると、ポンプインペラ31が回転する。ポンプインペラ31が回転すると、ポンプインペラ31からタービンランナ32に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ32で受けられて、タービンランナ32が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ32には、E/G出力軸21の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップクラッチ33が係合された状態では、E/G出力軸21が回転されると、E/G出力軸21、ポンプインペラ31およびタービンランナ32が一体となって回転する。
動力分割式無段変速機4は、トルクコンバータ3から入力される動力をデファレンシャルギヤ6に伝達する。動力分割式無段変速機4は、インプット軸41、アウトプット軸42、無段変速機構43、逆転ギヤ機構44、遊星歯車機構45、スプリットドライブギヤ46およびスプリットドリブンギヤ47を備えている。
インプット軸41は、トルクコンバータ3のタービンランナ32に連結され、タービンランナ32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸42は、インプット軸41と平行に設けられている。アウトプット軸42には、出力ギヤ48が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ48は、デファレンシャルギヤ6(デファレンシャルギヤ6の入力ギヤ)と噛合している。
無段変速機構43は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構43は、プライマリ軸51と、プライマリ軸51と平行に設けられたセカンダリ軸52と、プライマリ軸51に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ53と、セカンダリ軸52に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ54と、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とに巻き掛けられたベルト55とを備えている。
プライマリプーリ53は、プライマリ軸51に固定された固定シーブ61と、固定シーブ61にベルト55を挟んで対向配置され、プライマリ軸51にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(プライマリシーブ)62とを備えている。可動シーブ62に対して固定シーブ61と反対側には、プライマリ軸51に固定されたシリンダ(図示せず)が設けられ、可動シーブ62とシリンダとの間に、ピストン室(油室)が形成されている。
セカンダリプーリ54は、セカンダリ軸52に固定された固定シーブ65と、固定シーブ65にベルト55を挟んで対向配置され、セカンダリ軸52にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(セカンダリシーブ)66とを備えている。可動シーブ66に対して固定シーブ65と反対側には、セカンダリ軸52に固定されたシリンダ(図示せず)が設けられ、可動シーブ66とシリンダとの間に、ピストン室(油室)が形成されている。
無段変速機構43では、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各ピストン室に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各溝幅が変更されることにより、無段変速機構43での変速比であるベルト変速比が連続的に無段階で変更される。
具体的には、ベルト変速比が下げられるときには、プライマリプーリ53のピストン室に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ53の可動シーブ62が固定シーブ61側に移動し、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ53に対するベルト55の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が小さくなり、ベルト変速比が下がる。
ベルト変速比が上げられるときには、プライマリプーリ53のピストン室に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト55に対するセカンダリプーリ54の推力がベルト55に対するプライマリプーリ53の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が大きくなり、ベルト変速比が上がる。
一方、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の推力は、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54とベルト55との間で滑りが生じない大きさを必要とする。そのため、インプット軸41に入力されるトルクの大きさに応じた推力が得られるよう、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各ピストン室に供給される油圧が制御される。
逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸51に伝達する構成である。具体的には、逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に相対回転不能に支持される第1ギヤ71と、第1ギヤ71よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸51に相対回転不能に支持されて、第1ギヤ71と噛合する第2ギヤ72とを含む。
遊星歯車機構45は、サンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83を備えている。サンギヤ81は、セカンダリ軸52に相対回転不能に支持されている。キャリア82は、アウトプット軸42に相対回転可能に外嵌されている。キャリア82は、複数個のピニオンギヤ84を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ84は、円周上に配置され、サンギヤ81と噛合している。リングギヤ83は、複数個のピニオンギヤ84を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ84にセカンダリ軸52の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ83には、アウトプット軸42が接続され、リングギヤ83は、アウトプット軸42と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
スプリットドライブギヤ46は、インプット軸41に相対回転可能に外嵌されている。
スプリットドリブンギヤ47は、遊星歯車機構45のキャリア82と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ47は、スプリットドライブギヤ46よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ46よりも少ない歯数を有している。
また、動力分割式無段変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
クラッチC1は、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
クラッチC2は、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
ブレーキB1は、遊星歯車機構45のキャリア82を制動する係合状態と、キャリア82の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
<変速モード>
図2は、車両1の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。図2において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。図3は、遊星歯車機構45のサンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。
動力分割式無段変速機4は、車両1を後進させるための前進(ドライブ)レンジにおける変速モードとして、ベルトモードおよびスプリットモードを有している。
ベルトモードでは、図2に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51およびプライマリプーリ53を回転させる。プライマリプーリ53の回転は、ベルト55を介して、セカンダリプーリ54に伝達され、セカンダリプーリ54およびセカンダリ軸52を回転させる。遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結されているので、セカンダリ軸52と一体となって、サンギヤ81、リングギヤ83およびアウトプット軸42が回転する。したがって、ベルトモードでは、図3に示されるように、動力分割式無段変速機4の全体での変速比であるユニット変速比がベルト変速比と一致する。
スプリットモードでは、図2に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とが直結され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリーになり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、遊星歯車機構45のサンギヤ81に伝達される。一方、インプット軸41に入力される動力は、スプリットドライブギヤ46からスプリットドリブンギヤ47を介して遊星歯車機構45のキャリア82に増速されて伝達される。
スプリットドライブギヤ46とスプリットドリブンギヤ47とのギヤ比であるスプリット変速比は、一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸41に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構45のキャリア82の回転が一定速度に保持される。そのため、ベルト変速比が上げられると、遊星歯車機構45のサンギヤ81の回転数が下がるので、図3に破線で示されるように、遊星歯車機構45のリングギヤ83(アウトプット軸42)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、ベルト変速比が大きいほど、ユニット変速比が小さくなる。
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が前進方向に回転する。
車両1を後進させるための後進(リバース)レンジでは、図2に示されるように、クラッチC1,C2が係合され、ブレーキB1が解放される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82が制動される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、セカンダリ軸52と一体に、遊星歯車機構45のサンギヤ81を回転させる。遊星歯車機構45のキャリア82が制動されているので、サンギヤ81が回転すると、遊星歯車機構45のリングギヤ83がサンギヤ81と逆方向に回転する。このリングギヤ83の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ83の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ83と一体に、アウトプット軸42が回転する。アウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が後進方向に回転する。
<油圧回路>
図4は、動力分割式無段変速機4の油圧回路HCの構成を示す回路図である。
動力分割式無段変速機4の油圧回路HCには、プライマリシーブ62およびセカンダリシーブ66にそれぞれ油圧を供給するための各種のバルブが含まれる。すなわち、油圧回路HCには、SLPソレノイドバルブ91、プライマリ調圧バルブ92、SLSソレノイドバルブ93、セカンダリ調圧バルブ94およびフェイルセーフバルブ95が含まれる。
また、動力分割式無段変速機4の油圧回路HCには、クラッチC1,C2およびブレーキB1にそれぞれ係合のための油圧であるC1圧、C2圧およびB1圧を供給するための各種のバルブが含まれる。すなわち、油圧回路HCには、マニュアルバルブ101、リレーバルブ102、SL1ソレノイドバルブ103、SL2ソレノイドバルブ104、カットバルブ105およびフェイルセーフバルブ106が含まれる。
<シーブ圧回路>
図5は、図4に示される油圧回路HCの一部を拡大して示す回路図である。
SLPソレノイドバルブ91は、ノーマルオープンタイプ(常開式)のソレノイドバルブである。SLPソレノイドバルブ91の入力ポートには、Pc圧(クラッチモジュレータ圧)が入力される。SLPソレノイドバルブ91では、電磁コイルへの通電が制御されることにより、入力ポートに入力されるPc圧が調圧され、その調圧された油圧であるSLP圧が出力ポートから出力される。
なお、Pc圧は、クラッチモジュレータバルブ(図示せず)から出力される油圧である。クラッチモジュレータバルブは、PL圧(ライン圧)が一定圧以下であるときには、そのPL圧と同圧のPc圧を出力し、PL圧が当該一定圧よりも高いときには、当該一定圧に減圧されたPc圧を出力する。
プライマリ調圧バルブ92は、プライマリシーブ62に供給される油圧であるPin圧(プライマリシーブ圧)を制御するための圧力制御弁である。プライマリ調圧バルブ92は、第1スプール111および第2スプール112を備えている。第1スプール111および第2スプール112は、略円筒状の周壁を有するスリーブ113内に収容され、スリーブ113の中心線方向に並べられて、それぞれ中心線方向に移動可能に設けられている。
第1スプール111には、略円柱状のランド部114,115,116,117が中心線方向に間隔を空けて形成されている。第2スプール112には、ランド部118,119が中心線方向に間隔を空けて形成されている。第1スプール111のランド部116,117および第2スプール112のランド部118は、同じ直径を有している。第1スプール111のランド部114の直径は、ランド部115の直径よりも小さく、ランド部115の直径は、ランド部116〜118の直径よりも小さい。第2スプール112のランド部119の直径は、ランド部116〜118の直径よりも小さい。
また、スリーブ113内には、第2スプール112側(下側)の端部に、第2スプール112を第1スプール111側(上側)に付勢するスプリング120が設けられている。
スリーブ113の周壁には、入力ポート121、信号ポート122,123,124、動作調整用ポート125、出力ポート126およびドレンポート127,128,129が形成されている。
入力ポート121は、第1スプール111が最上に位置する状態で、ランド部116,117間と連通し、第1スプール111が最下に位置する状態で、ランド部116により閉鎖される。入力ポート121には、PL圧が入力される。
信号ポート122は、第2スプール112の位置にかかわらず、第2スプール112のランド部119とスリーブ113の下端との間と連通する。また、信号ポート122は、SLPソレノイドバルブ91の出力ポートと連通している。
信号ポート123は、第2スプール112の位置にかかわらず、ランド部118,119間と連通している。
信号ポート124は、第1スプール111の位置にかかわらず、フェイルセーフバルブ95の出力ポート165との間と連通している。
動作調整用ポート125は、第1スプール111の位置にかかわらず、ランド部115,116間と連通している。動作調整用ポート125には、出力ポート126から出力されるPin圧がフィードバック入力される。
出力ポート126は、第1スプール111の位置にかかわらず、ランド部116,117間と連通している。また、出力ポート126は、プライマリプーリ53(図1参照)のピストン室と連通している。
ドレンポート127は、第1スプール111が最上に位置する状態で、ランド部117により閉鎖され、第1スプール111が最下に位置する状態で、ランド部116,117間と連通する。
ドレンポート128は、第1スプール111が最上に位置する状態で、ランド部114,115間と連通し、第1スプール111が最下に位置する状態で、ランド部114により閉鎖される。
ドレンポート129は、第1スプール111および第2スプール112の位置にかかわらず、第1スプール111のランド部117と第2スプール112のランド部118との間と連通している。
SLSソレノイドバルブ93は、ノーマルオープンタイプ(常開式)のソレノイドバルブである。SLSソレノイドバルブ93の入力ポートには、Pc圧が入力される。SLSソレノイドバルブ93では、電磁コイルへの通電が制御されることにより、入力ポートに入力されるPc圧が調圧され、その調圧された油圧であるSLS圧が出力ポートから出力される。
セカンダリ調圧バルブ94は、Pd圧を制御するための圧力制御弁である。セカンダリ調圧バルブ94は、スプール131を備えている。スプール131は、略円筒状の周壁を有するスリーブ132内に収容され、スリーブ132の中心線方向に移動可能に設けられている。
スプール131には、略円柱状のランド部133,134,135が中心線方向に間隔を空けて形成されている。ランド部134,135は、同じ直径を有し、ランド部133は、ランド部134,135よりも小さい直径を有している。
また、スリーブ132内には、中心線方向の一端側(下側)の端部に、スプール131を他端側(上側)に付勢するスプリング136が設けられている。
スリーブ132の周壁には、入力ポート141、信号ポート142、動作調整用ポート143、出力ポート144およびドレンポート145,146が形成されている。
入力ポート141は、スプール131が最上に位置する状態で、ランド部134,135間と連通し、スプール131が最下に位置する状態で、ランド部134により閉鎖される。入力ポート141には、PL圧が入力される。
信号ポート142は、スプール131の位置にかかわらず、ランド部135とスリーブ132の下端との間と連通している。また、信号ポート142は、SLSソレノイドバルブ93の出力ポートと連通している。
動作調整用ポート143は、スプール131の位置にかかわらず、ランド部133,134間と連通している。動作調整用ポート143には、出力ポート144から出力されるPd圧がフィードバック入力される。
出力ポート144は、スプール131の位置にかかわらず、ランド部134,135間と連通している。また、出力ポート144は、セカンダリプーリ54(図1参照)のピストン室と連通している。
ドレンポート145は、スプール131が最上に位置する状態で、ランド部135により閉鎖され、スプール131が最下に位置する状態で、ランド部134,135間と連通する。
ドレンポート146は、スプール131の位置にかかわらず、ランド部133とスリーブ132の上端との間と連通している。
フェイルセーフバルブ95は、SLPソレノイドバルブ91およびSLSソレノイドバルブ93に通電不能なフェイル時に、プライマリ調圧バルブ92の信号ポート123にPd圧を信号圧として入力するための弁である。フェイルセーフバルブ95は、スプール151を備えている。スプール151は、略円筒状の周壁を有するスリーブ152内に収容され、スリーブ152の中心線方向に移動可能に設けられている。
スプール151には、略円柱状のランド部153,154,155,156が中心線方向に間隔を空けて形成されている。ランド部154,155,156は、同じ直径を有し、ランド部153は、ランド部154,155,156よりも小さい直径を有している。
また、スリーブ152内には、中心線方向の一端側(下側)の端部に、スプール151を他端側(上側)に付勢するスプリング157が設けられている。
スリーブ152の周壁には、入力ポート161,162、信号ポート163、出力ポート164,165およびドレンポート166,167,168が形成されている。
入力ポート161は、スプール151が最上の通常位置に位置する状態で、ランド部156により閉鎖され、スプール151が最下のフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部155,156間と連通する。また、入力ポート161は、セカンダリ調圧バルブ94の出力ポート144と連通している。
入力ポート162は、スプール151が通常位置に位置する状態で、ランド部155により閉鎖され、スプール151がフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部154,155間と連通する。入力ポート162には、Pc圧が入力される。
信号ポート163は、スプール151の位置にかかわらず、ランド部153とスリーブ152の上端との間と連通している。また、信号ポート163は、SLPソレノイドバルブ91の出力ポートと連通している。
出力ポート164は、スプール151の位置にかかわらず、ランド部155,156間と連通している。また、出力ポート164は、プライマリ調圧バルブ92の信号ポート123と連通している。
出力ポート165は、スプール151の位置にかかわらず、ランド部154,155間と連通している。また、出力ポート165は、プライマリ調圧バルブ92の信号ポート124と連通している。
ドレンポート166は、スプール151が通常位置に位置する状態で、ランド部154,155間と連通し、スプール151がフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部153,154間と連通する。
ドレンポート167は、スプール151の位置にかかわらず、ランド部153,154間と連通している。
ドレンポート168は、スプール151が最上に位置する状態で、ランド部155,156間と連通し、スプール151が最下に位置する状態で、ランド部155により閉鎖される。
<シーブ圧回路動作>
各部が正常に動作可能な通常時(正常時)には、動力分割式無段変速機4のベルト変速比(ユニット変速比)を制御するため、Pin圧およびPd圧の目標値に基づいて、SLPソレノイドバルブ91およびSLSソレノイドバルブ93への通電が制御される。これにより、SLPソレノイドバルブ91からPin圧の目標値に応じたSLP圧が出力され、SLSソレノイドバルブ93からPd圧の目標値に応じたSLS圧が出力される。
SLPソレノイドバルブ91から出力されるSLP圧は、プライマリ調圧バルブ92の信号ポート122に入力される。この信号ポート122に入力されるSLP圧が大きいほど、入力ポート121の開口面積が大きくなり、プライマリ調圧バルブ92の出力ポート126から出力されるPin圧が大きくなる。
SLSソレノイドバルブ93から出力されるSLS圧は、セカンダリ調圧バルブ94の信号ポート142に入力される。この信号ポート142に入力されるSLS圧が大きいほど、入力ポート141の開口面積が大きくなり、セカンダリ調圧バルブ94の出力ポート144から出力されるPd圧が大きくなる。
SLPソレノイドバルブ91およびSLSソレノイドバルブ93に通電不能な故障(フェイル)が発生すると、SLPソレノイドバルブ91およびSLSソレノイドバルブ93がノーマルオープンタイプであるため、SLPソレノイドバルブ91およびSLSソレノイドバルブ93からそれぞれ最大圧のSLP圧およびSLS圧が出力される。
最大圧のSLS圧がセカンダリ調圧バルブ94の信号ポート142に入力されることにより、セカンダリ調圧バルブ94の出力ポート144からは、入力ポート141に入力されるPL圧に応じたPd圧が出力される。
また、最大圧のSLP圧がフェイルセーフバルブ95の信号ポート163に入力されることにより、フェイルセーフバルブ95のスプール151がフェイルセーフ位置に移動する。これにより、フェイルセーフが開始される。スプール151がフェイルセーフ位置に移動すると、入力ポート161がランド部155,156間と連通し、入力ポート161にPd圧が入力され、Pd圧に応じた油圧が出力ポート164から出力される。また、入力ポート162がランド部154,155間と連通し、入力ポート162にPc圧が入力され、Pc圧に応じた油圧が出力ポート165から出力される。
フェイルセーフバルブ95の出力ポート164,165から出力される油圧(信号圧)は、それぞれプライマリ調圧バルブ92の信号ポート123,124に入力される。一方、プライマリ調圧バルブ92の信号ポート122には、SLPソレノイドバルブ91から出力されるSLP圧が入力されている。これにより、プライマリ調圧バルブ92の第1スプール111および第2スプール112は、信号ポート122,123,124にそれぞれ入力される油圧に応じた位置に移動し、プライマリ調圧バルブ92の出力ポート126からは、第1スプール111の位置に応じたPin圧が出力される。
油圧回路HCでは、たとえば、プライマリ調圧バルブ92の信号ポート124に入力される油圧が信号ポート122に入力されるSLP圧とほぼ一致し、信号ポート122に入力されるSLP圧が第2スプール112に与える軸方向荷重と信号ポート124に入力される油圧が第1スプール111に与える軸方向荷重とが相殺されるように、各部の設計がなされている。そのため、プライマリ調圧バルブ92の第1スプール111および第2スプール112は、フェイルセーフバルブ95の出力ポート164から信号ポート123に入力される油圧、つまりPd圧に応じた油圧により移動する。これにより、プライマリ調圧バルブ92の出力ポート126から出力されるPin圧は、Pd圧に応じた油圧により調圧され、Pd圧にほぼ比例して変化する。
このように、フェイルセーフ時には、セカンダリ調圧バルブ94の出力ポート144から、入力ポート141に入力されるPL圧に応じたPd圧が出力される。また、プライマリ調圧バルブ92の信号ポート123には、Pd圧に応じた油圧が入力され、プライマリ調圧バルブ92では、その信号ポート123に入力される油圧(信号圧)によって、入力ポート121に入力される油圧がPin圧に調圧されて、Pin圧が出力ポート126から出力される。
よって、Pd圧の最小値(エンジン2のアイドル回転で発生可能なPd圧)から最大値までの間で、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54にそれぞれ供給されるPin圧およびPd圧により得られる変速比が1程度となるように、各部を設計することにより、セカンダリ調圧バルブ94の入力ポート141に入力されるPL圧を抑制せずに、フェイルセーフ時に1程度の変速比を構成することができる。
その結果、フェイルの発生時に、ベルト55に過大な引張応力が作用することを抑制でき、ベルト55の寿命を延ばすことができる。また、動力分割式無段変速機4を搭載した車両1がフェイル状態で停車しても、変速比が1程度であるので、車両1を再発進させることができる。さらには、プライマリシーブ62およびセカンダリシーブ66に十分な油圧を供給でき、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の推力を通常時と同様に維持できるので、プライマリプーリ53に入力されるトルク、たとえば、エンジン2の出力トルクに制限を設けなくても、推力不足によるベルト55の滑りの発生を抑制することができる。
<係合圧回路>
図6は、図4に示される油圧回路HCの一部(クラッチC1,C2およびブレーキB1に油圧を供給するための部分)を拡大して示す回路図である。
マニュアルバルブ101は、シフトレバーの位置に対応して油圧を出力するバルブである。マニュアルバルブ101は、スプール211を備えている。スプール211は、略円筒状の周壁を有するスリーブ212内に収容され、スリーブ212の中心線方向に移動可能に設けられている。
スプール211は、車両1の車室内に配設されたシフトレバー(図示せず)の手動操作に伴って、シフトレバーのポジション(Dポジション(前進レンジに対応する位置)、Rポジション(後進レンジに対応する位置)など)に応じた位置に変位する。
スリーブ212の周壁には、入力ポート213、D圧出力ポート214およびR圧出力ポート215が形成されている。
入力ポート213には、Pc圧が入力される。
D圧出力ポート214は、シフトレバーがDポジションに位置する状態で、スプール211の位置によりスプール211の周囲に形成される内部油路216を介して入力ポート213と連通する。このとき、入力ポート213に入力されるPc圧がD圧出力ポート214からD圧として出力される。
R圧出力ポート215は、シフトレバーがRポジションに位置する状態で、スプール211の位置によりスプール211の周囲に形成される内部油路217を介して、入力ポート213と連通する。このとき、入力ポート213に入力されるPc圧がR圧出力ポート215からR圧として出力される。
リレーバルブ102は、マニュアルバルブ101から選択的に出力されるD圧およびR圧をSL1ソレノイドバルブ103に供給し、SL1ソレノイドバルブ103から出力されるSL1圧の出力先をクラッチC1とブレーキB1とに切り替えるためのバルブである。リレーバルブ102は、スプール221を備えている。スプール221は、略円筒状の周壁を有するスリーブ222内に収容され、スリーブ222の中心線方向に移動可能に設けられている。
スプール221には、略円柱状のランド部223,224,225,226が中心線方向に間隔を空けて形成されている。ランド部223,224,225,226は、同じ直径を有している。
また、スリーブ222内には、中心線方向の一端側(下側)の端部に、スプール221を他端側(上側)に付勢するスプリング227が設けられている。
スリーブ222の周壁には、D圧入力ポート231、R圧入力ポート232、SL1圧入力ポート233、信号ポート234,235、出力ポート236,237,238およびドレンポート239,240が形成されている。
D圧入力ポート231は、スプール221が最下の前進位置に位置する状態で、ランド部225,226間と連通し、スプール221が最上の後進位置に位置する状態で、ランド部226により閉鎖される。また、D圧入力ポート231は、マニュアルバルブ101のD圧出力ポート214と連通している。
R圧入力ポート232は、スプール221が前進位置に位置する状態で、ランド部225により閉鎖され、スプール221が後進位置に位置する状態で、ランド部225,226間と連通する。また、R圧入力ポート232は、マニュアルバルブ101のR圧出力ポート215と連通している。
SL1圧入力ポート233は、スプール221が前進位置に位置する状態で、ランド部223,224間と連通し、スプール221が後進位置する状態で、ランド部224,225間と連通する。
信号ポート234は、スプール221の位置にかかわらず、ランド部223とスリーブ222の上端との間と連通する。また、信号ポート234は、マニュアルバルブ101のD圧出力ポート214と連通している。
信号ポート235は、スプール221の位置にかかわらず、ランド部226とスリーブ222の下端との間と連通している。また、信号ポート235は、マニュアルバルブ101のR圧出力ポート215と連通している。
出力ポート236は、スプール221の位置にかかわらず、ランド部223,224間と連通している。
出力ポート237は、スプール221の位置にかかわらず、ランド部224,225間と連通している。
出力ポート238は、スプール221の位置にかかわらず、ランド部225,226間と連通している。
ドレンポート239は、スプール221が後進位置に位置する状態で、ランド部223,224間と連通し、スプール221が前進位置に位置する状態で、ランド部223により閉鎖される。
ドレンポート240は、スプール221が前進位置に位置する状態で、ランド部224,225間と連通し、スプール221が後進位置に位置する状態で、ランド部225により閉鎖される。
SL1ソレノイドバルブ103は、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブである。SL1ソレノイドバルブ103の入力ポートは、リレーバルブ102の出力ポート238と連通している。SL1ソレノイドバルブ103では、電磁コイルへの通電が制御されることにより、入力ポートに入力される油圧(D圧またはR圧)が調圧され、その調圧された油圧であるSL1圧が出力ポートから出力される。SL1ソレノイドバルブ103の出力ポートは、リレーバルブ102のSL1圧入力ポート233と連通している。
SL2ソレノイドバルブ104は、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブである。SL2ソレノイドバルブ104の入力ポートは、マニュアルバルブ101のD圧出力ポート214と連通している。SL2ソレノイドバルブ104では、電磁コイルへの通電が制御されることにより、入力ポートに入力されるD圧が調圧され、その調圧された油圧であるSL2圧が出力ポートから出力される。SL2ソレノイドバルブ104の出力ポートは、カットバルブ105のSL2圧入力ポート262と連通している。
カットバルブ105は、クラッチC1へのC1圧の供給を許可/禁止するためのバルブである。カットバルブ105は、第1スプール251および第2スプール252を備えている。第1スプール251および第2スプール252は、略円筒状の周壁を有するスリーブ253内に収容され、スリーブ253の中心線方向に並べられて、それぞれ中心線方向に移動可能に設けられている。
第1スプール251には、略円柱状のランド部254,255,256が中心線方向に間隔を空けて形成されている。第2スプール252は、略円柱状をなしている。第1スプール251のランド部255,256および第2スプール252は、同じ直径を有している。第1スプール251のランド部254の直径は、ランド部255,256の直径よりも小さい。
また、スリーブ253内には、第1スプール251側(上側)の端部に、第1スプール251を第2スプール252側(下側)に付勢するスプリング257が設けられている。
スリーブ253の周壁には、入力ポート261、信号ポート262,263、動作調整用ポート264、出力ポート265およびドレンポート266,267が形成されている。
入力ポート261は、第1スプール251が最下の許可位置に位置する状態で、ランド部255,256間と連通し、第1スプール251が最上の禁止位置に位置する状態で、ランド部256により閉鎖される。また、入力ポート261は、リレーバルブ102の出力ポート236と連通している。
信号ポート262は、第1スプール251および第2スプール252の位置にかかわらず、第1スプール251のランド部256と第2スプール252との間と連通する。また、信号ポート262は、SL2ソレノイドバルブ104の出力ポートと連通している。
信号ポート263は、第2スプール252の位置にかかわらず、第2スプール252とスリーブ253の下端との間と連通している。また、信号ポート263は、フェイルセーフバルブ95の出力ポート165(図5参照)と連通している。
動作調整用ポート264は、第2スプール252の位置にかかわらず、第1スプール251のランド部254とスリーブ253の上端との間と連通している。また、動作調整用ポート264は、マニュアルバルブ101のD圧出力ポート214と連通している。
出力ポート265は、第1スプール251の位置にかかわらず、第1スプール251のランド部255,256間と連通している。
ドレンポート266は、第1スプール251の位置にかかわらず、第1スプール251のランド部254,255間と連通する。
ドレンポート267は、第1スプール251が許可位置に位置する状態で、第1スプール251のランド部254,255間と連通し、第1スプール251が禁止位置に位置する状態で、第1スプール251のランド部255,256間と連通する。
フェイルセーフバルブ106は、通常時には、SL1ソレノイドバルブ103から出力されるSL1圧をブレーキB1に供給し、フェイル時には、クラッチC2にD圧をC2圧として供給するか、または、ブレーキB1にR圧をB1圧として供給するためのバルブである。フェイルセーフバルブ106は、スプール271を備えている。スプール271は、略円筒状の周壁を有するスリーブ272内に収容され、スリーブ272の中心線方向に移動可能に設けられている。
スプール271には、略円柱状のランド部273,274,275,276,277が中心線方向に間隔を空けて形成されている。ランド部273,274,275,276は、同じ直径を有し、ランド部277は、ランド部273,274,275,276よりも小さい直径を有している。
また、スリーブ272内には、中心線方向の一端側(上側)の端部に、スプール271を他端側(下側)に付勢するスプリング278が設けられている。
スリーブ272の周壁には、入力ポート281,282,283、信号ポート284、動作調整用ポート285、出力ポート286,287,288およびドレンポート289,290,291が形成されている。
入力ポート281は、スプール271が最下の通常位置に位置する状態で、ランド部275,276間と連通し、スプール271が最上のフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部276により閉鎖される。また、入力ポート281は、リレーバルブ102の出力ポート237と連通している。
入力ポート282は、スプール271が通常位置に位置する状態で、ランド部273,274間と連通し、スプール271がフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部274,275間と連通する。また、入力ポート282は、マニュアルバルブ101のD圧出力ポート214と連通している。
入力ポート283は、スプール271が通常位置に位置する状態で、ランド部275により閉鎖され、スプール271がフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部275,276間と連通する。また、入力ポート283は、マニュアルバルブ101のR圧出力ポート215と連通している。
信号ポート284は、スプール271の位置にかかわらず、ランド部277とスリーブ272の下端との間と連通している。また、信号ポート284は、SLPソレノイドバルブ91(図4参照)の出力ポートと連通している。
動作調整用ポート285は、スプール271の位置にかかわらず、ランド部273とスリーブ272の上端との間と連通している。
出力ポート286は、スプール271の位置にかかわらず、ランド部274,275間と連通している。また、出力ポート286は、SL2ソレノイドバルブ104のドレンポートと連通している。
出力ポート287は、スプール271の位置にかかわらず、ランド部275,276間と連通している。また、出力ポート287は、ブレーキB1のピストン室と連通している。
出力ポート288は、スプール271の位置にかかわらず、ランド部273,274間と連通している。また、出力ポート288は、動作調整用ポート285とスリーブ272の外部を介して連通している。
ドレンポート289は、スプール271が通常位置に位置する状態で、ランド部273,274間と連通し、スプール271がフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部273により閉鎖される。
ドレンポート290は、スプール271が通常位置に位置する状態で、ランド部274,275間と連通し、スプール271がフェイルセーフ位置に位置する状態で、ランド部275により閉鎖される。
ドレンポート291は、スプール271の位置にかかわらず、ランド部276,277間と連通している。
<係合圧回路動作>
各部が正常に動作可能な通常時(正常時)において、シフトレバーがDポジションに位置する状態では、マニュアルバルブ101の入力ポート213とD圧出力ポート214とが連通し、入力ポート213に入力されるPc圧がD圧出力ポート214からD圧として出力される。
マニュアルバルブ101から出力されるD圧は、リレーバルブ102のD圧入力ポート231および信号ポート234、SL2ソレノイドバルブ104の入力ポート、カットバルブ105の動作調整用ポート264、ならびに、フェイルセーフバルブ106の入力ポート282に入力される。
リレーバルブ102の信号ポート234にD圧が入力されることにより、リレーバルブ102のスプール221が前進位置に移動する。スプール221が前進位置に位置する状態では、リレーバルブ102のD圧入力ポート231と出力ポート238とがスリーブ222内で連通する。そのため、D圧入力ポート231に入力されるD圧は、出力ポート238から出力されて、SL1ソレノイドバルブ103の入力ポートに入力される。
また、スプール221が前進位置に位置する状態では、リレーバルブ102のSL1圧入力ポート233と出力ポート236とが連通する。そのため、リレーバルブ102では、SL1ソレノイドバルブ103からSL1圧入力ポート233に入力されるSL1圧を出力ポート236から出力させることができる。そして、カットバルブ105の第1スプール251が許可位置に位置し、カットバルブ105の入力ポート261と出力ポート265とが連通している場合には、リレーバルブ102の出力ポート236から出力されるSL1圧をカットバルブ105の入力ポート261に受け入れて、そのSL1圧をカットバルブ105の出力ポート265からC1圧として出力することができる。
一方、SL2ソレノイドバルブ104の入力ポートにD圧が入力されるので、SL2ソレノイドバルブ104の出力ポートからSL2圧を出力することができ、SL2圧をC2圧としてクラッチC2に供給することができる。
したがって、SL1ソレノイドバルブ103およびSL2ソレノイドバルブ104への通電を制御して、SL1圧およびSL2圧を制御することにより、クラッチC1,C2を掛け替えることができる。そして、そのクラッチC1,C2の掛け替えにより、動力分割式無段変速機4の変速モードをベルトモードとスプリットモードとに切り替えることができる。
図7Aは、ベルトモードにおけるカットバルブ105の状態を示す図である。
ベルトモードでは、クラッチC1が解放され、クラッチC2が係合される。クラッチC2が係合している状態では、SL2ソレノイドバルブ104が通電状態であり、SL2ソレノイドバルブ104からSL2圧が出力され、そのSL2圧がC2圧としてクラッチC2に供給されている。SL2ソレノイドバルブ104から出力されるSL2圧は、カットバルブ105の信号ポート262にも入力されている。SL2圧の最大圧は、SL2ソレノイドバルブ104の入力ポートに入力されるD圧である。このD圧に相当するSL2圧がカットバルブ105の信号ポート262に入力されることにより、カットバルブ105の第1スプール251が禁止位置に位置する。
すなわち、カットバルブ105の第1スプール251のランド部256の直径がランド部254の直径よりも大きいので、ランド部256の受圧面積は、ランド部254の受圧面積よりも大きい。そのため、カットバルブ105の動作調整用ポート264にD圧が入力されているが、D圧に相当するSL2圧がカットバルブ105の信号ポート262に入力されることにより、カットバルブ105の第1スプール251に禁止位置側に向かう力が作用し、第1スプール251が禁止位置に位置する。
カットバルブ105の第1スプール251が禁止位置に位置する状態では、第1スプール251のランド部256により入力ポート261が閉鎖されるので、たとえSL1ソレノイドバルブ103からSL1圧が出力されても、そのSL1圧がカットバルブ105の入力ポート261に受け入れられない。よって、クラッチC1に係合のためのC1圧が供給されることを抑制でき、クラッチC1,C2の同時係合を抑制することができる。
図7Bは、スプリットモードにおけるカットバルブ105の状態を示す図である。
スプリットモードでは、クラッチC1が係合され、クラッチC2が解放される。クラッチC2が完全に解放されている状態では、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態であり、SL2ソレノイドバルブ104からSL2圧が出力されない(SL2圧が0である)。そのため、カットバルブ105の信号ポート262にSL2圧が入力されておらず、カットバルブ105の第1スプール251が許可位置に位置する。
図7Cは、フェイルセーフ時におけるカットバルブ105の状態を示す図である。
SL2ソレノイドバルブ104からSL2圧が出力されないフェイル(たとえば、SL2ソレノイドバルブ104に通電不能なフェイルなど)が発生した場合、フェイルセーフのために、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)により、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態にされる。SLPソレノイドバルブ91がノーマルオープンタイプであるため、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態になると、SLPソレノイドバルブ91から最大圧のSLP圧、つまりPc圧が出力される。
SLPソレノイドバルブ91から最大圧のSLP圧が出力され、その最大圧のSLP圧がフェイルセーフバルブ95の信号ポート163に入力されることにより、フェイルセーフバルブ95のスプール151が通常位置からフェイルセーフ位置に移動する。スプール151がフェイルセーフ位置に移動すると、入力ポート162が開放され、入力ポート162と出力ポート165とがスリーブ152内で連通する。そのため、Pc圧が入力ポート162に入力され、そのPc圧が出力ポート238から出力されて、カットバルブ105の信号ポート263に入力される。Pc圧が信号ポート263に入力されることにより、カットバルブ105の第2スプール252に禁止位置側に向かう力が作用し、第1スプール251および第2スプール252が移動し、第1スプール251が禁止位置に位置する。
また、SLPソレノイドバルブ91から最大圧のSLP圧が出力されると、その最大圧のSLP圧がフェイルセーフバルブ106の信号ポート284に入力される。このとき、マニュアルバルブ101から出力されるD圧がPc圧に相当し、そのD圧がフェイルセーフバルブ106の動作調整用ポート285に入力されている。そのため、信号ポート284にPc圧に相当するSLP圧が入力されても、フェイルセーフバルブ106のスプール271は、通常位置から移動しない。そこで、この場合には、たとえば、車室内のメータパネルに設けられた表示器などに、シフトレバーをDポジションから他のポジションにシフトさせることを促す表示がなされる。シフトレバーがDポジションから他のポジションにシフトされると、フェイルセーフバルブ106へのD圧の供給が停止するので、信号ポート234に入力されるSLP圧により、フェイルセーフバルブ106のスプール271が通常位置からフェイルセーフ位置に移動する。スプール271がフェイルセーフ位置に移動すると、入力ポート282と出力ポート286とがスリーブ272内で連通する。そのため、マニュアルバルブ101から出力されるD圧が入力ポート282に入力され、そのD圧が出力ポート286から出力される。
出力ポート286から出力されるD圧は、SL2ソレノイドバルブ104のドレンポートに入力される。SL2ソレノイドバルブ104の非通電状態では、SL2ソレノイドバルブ104の出力ポートとドレンポートとが連通する。そのため、SL2ソレノイドバルブ104のドレンポートに入力されるD圧は、SL2ソレノイドバルブ104の出力ポートから出力され、クラッチC2にC2圧として供給される。
よって、フェイルの発生時に、クラッチC2を係合させることができ、ベルトモードでの車両1の前進走行を可能にすることができる。
なお、D圧をC2圧としてクラッチC2に供給する構成は、たとえば、フェイルセーフバルブ106の出力ポート286をクラッチC2に接続し、SL2ソレノイドバルブ104の出力ポートとフェイルセーフバルブ106のドレンポート290とを連通させることによっても達成できる。
図8は、ベルトモード、スプリットモードおよびベルトモードとスプリットモードとの切り替えの過渡時におけるカットバルブ105の状態ならびにC1圧およびC2圧の大きさを示す図である。
カットバルブ105では、動作調整用ポート264がマニュアルバルブ101のD圧出力ポート214と連通しており、シフトレバーがDポジションに位置する状態では、動作調整用ポート264にD圧が供給される。そのため、カットバルブ105の第1スプール251は、信号ポート262に入力されるSL2圧と動作調整用ポート264に入力されるD圧との差圧により動作する。
クラッチC1,C2の掛け替え時(ベルトモードとスプリットモードとの切り替えの過渡時)には、クラッチC1,C2の両方にそれぞれC1圧およびC2圧が瞬間的に同時に供給されて、一方のクラッチC1,C2が大きく滑ることによるエンジン2の吹き上がりを防止する必要がある。そのため、クラッチC1,C2の掛け替え時には、C2圧が最大圧よりも少し低い所定圧に下げられて、カットバルブ105の入力ポート261が少し開放された状態が作られる。動作調整用ポート264にD圧が供給されていることにより、その所定圧をD圧の大小に応じて変化させることができ、カットバルブ105の設計の自由度およびクラッチC1,C2の掛け替えの制御(係合制御)に自由度を持たせることができる。
なお、動作調整用ポート264にD圧が供給されない構成を採用することも可能である。
図9Aは、通常時におけるフェイルセーフバルブ106の状態を示す図である。
各部が正常に動作可能な通常時(正常時)において、シフトレバーがRポジションに位置する状態では、マニュアルバルブ101の入力ポート213とR圧出力ポート215とが連通し、入力ポート213に入力されるPc圧がR圧出力ポート215からR圧として出力される。
マニュアルバルブ101から出力されるR圧は、リレーバルブ102のR圧入力ポート232および信号ポート235に入力される。
リレーバルブ102の信号ポート235にR圧が入力されることにより、リレーバルブ102のスプール221が後進位置に移動する。スプール221が後進位置に位置する状態では、リレーバルブ102のR圧入力ポート232と出力ポート238とがスリーブ222内で連通する。そのため、R圧入力ポート232に入力されるR圧は、出力ポート238から出力されて、SL1ソレノイドバルブ103の入力ポートに入力される。
また、スプール221が後進位置に位置する状態では、リレーバルブ102のSL1圧入力ポート233と出力ポート237とが連通する。そのため、リレーバルブ102では、SL1ソレノイドバルブ103からSL1圧入力ポート233に入力されるSL1圧を出力ポート237から出力させることができる。
フェイルセーフバルブ106のスプール271が通常位置に位置する状態では、入力ポート281が開放され、その入力ポート281と出力ポート287とがスリーブ272内で連通している。そのため、リレーバルブ102の出力ポート237から出力されるSL1圧は、フェイルセーフバルブ106の入力ポート281に入力され、出力ポート287からB1圧として出力される。
したがって、SL1ソレノイドバルブ103への通電を制御して、SL1圧を制御することにより、ブレーキB1に係合のために供給されるB1圧を制御することができる。
図9Bは、フェイルセーフ時におけるフェイルセーフバルブ106の状態を示す図である。
SL1ソレノイドバルブ103からSL1圧が出力されないフェイル(たとえば、SL1ソレノイドバルブ103に通電不能なフェイルなど)が発生した場合、フェイルセーフのために、ECUにより、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態にされる。SLPソレノイドバルブ91がノーマルオープンタイプであるため、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態になると、SLPソレノイドバルブ91から最大圧のSLP圧、つまりPc圧が出力される。
SLPソレノイドバルブ91から最大圧のSLP圧が出力されると、その最大圧のSLP圧がフェイルセーフバルブ106の信号ポート284に入力される。これにより、フェイルセーフバルブ106のスプール271が通常位置からフェイルセーフ位置に移動する。スプール271がフェイルセーフ位置に移動すると、入力ポート283が開放され、入力ポート283と出力ポート287とがスリーブ272内で連通する。そのため、マニュアルバルブ101から出力されるR圧が入力ポート283に入力され、そのR圧が出力ポート287から出力される。
よって、フェイルの発生時に、SL2ソレノイドバルブ104の出力ポートから出力されるR圧をB1圧としてブレーキB1に供給して、ブレーキB1を係合させることができ、車両1の後進走行を可能にすることができる。
<フェイルセーフ>
図10は、油圧回路HCの種々の状態を一覧で示す図である。
前述の構成により、油圧回路HCが採用された動力分割式無段変速機4では、種々の故障に対する対処(フェイルセーフ)が可能である。
ベルトモードにおいて、SL1ソレノイドバルブ103が非通電状態でSL1圧を出力せず、SL2ソレノイドバルブ104が通電状態でSL2圧を出力する状態では、クラッチC1が開放され、クラッチC2が係合されるので、動力分割式無段変速機4の状態(ユニット状態)が正常である。この状態では、カットバルブ105の第1スプール251が禁止位置に位置し、クラッチC1へのC1圧(SL1圧)の供給が遮断される。
ベルトモードにおいて、SL1ソレノイドバルブ103が非通電状態でSL1圧を出力せず、SL2ソレノイドバルブ104が通電状態でSL2圧を出力しない状態に陥ると、クラッチC1,C2の両方が開放されるので、ユニット状態が異常なニュートラル状態になる。この状態に陥った場合、ECUにより、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態にされる。その結果、前述したように、クラッチC2が係合されて、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。
ベルトモードにおいて、SL1ソレノイドバルブ103が非通電状態でSL1圧を出力し、SL2ソレノイドバルブ104が通電状態でSL2圧を出力する状態に陥ると、SL2圧によりカットバルブ105の第1スプール251が禁止位置に位置し、クラッチC1へのC1圧(SL1圧)の供給が遮断される。これにより、ベルトモードが構成され、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能である。
スプリットモードにおいて、SL1ソレノイドバルブ103が通電状態でSL1圧を出力し、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態でSL2圧を出力しない状態では、クラッチC1が係合され、クラッチC2が開放されるので、動力分割式無段変速機4の状態(ユニット状態)が正常である。この状態では、カットバルブ105の第1スプール251が許可位置に位置し、クラッチC1へのC1圧(SL1圧)の供給が許可される。
スプリットモードにおいて、SL1ソレノイドバルブ103が通電状態でSL1圧を出力し、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態でSL2圧を出力する状態に陥ると、SL2圧によりカットバルブ105の第1スプール251が禁止位置に位置し、クラッチC1へのC1圧(SL1圧)の供給が遮断される。これにより、スプリットモードからベルトモードに強制的に移行し、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。この場合、スプリットモードからベルトモードに突然移行するが、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態でSL2圧を出力する故障は、ほぼ発生し得ないので、実用上の問題はないと考えられる。
スプリットモードにおいて、SL1ソレノイドバルブ103が通電状態でSL1圧を出力せず、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態でSL2圧を出力しない状態に陥ると、クラッチC1,C2の両方が開放されるので、ユニット状態が異常なニュートラル状態になる。この状態に陥った場合、ECUにより、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態にされる。その結果、前述したように、クラッチC2が係合されて、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。
スプリットモードにおいて、SL1ソレノイドバルブ103が非通電状態でSL1圧を出力せず、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態でSL2圧を出力しない状態に陥った場合にも、クラッチC1,C2の両方が開放されるので、ユニット状態が異常なニュートラル状態になる。この状態に陥った場合、ECUにより、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態にされる。その結果、前述したように、クラッチC2が係合されて、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。
ベルトモードからスプリットモードへの切り替えのために、SL1ソレノイドバルブ103が非通電状態から通電状態に切り替えられて、SL1ソレノイドバルブ103から出力されるSL1圧が上昇し、SL2ソレノイドバルブ104が通電状態から非通電状態に切り替えられて、SL2ソレノイドバルブ104から出力されるSL2圧が低下すると、ベルトモードからスプリットモードに正常に切り替わる。
ベルトモードからスプリットモードへの切り替えのために、SL2ソレノイドバルブ104が通電状態から非通電状態に切り替えられても、SL2ソレノイドバルブ104から出力されるSL2圧が低下しない異常が発生した場合、SL2圧によりカットバルブ105の第1スプール251が禁止位置に位置し続けるので、クラッチC1へのC1圧(SL1圧)の供給が遮断される。これにより、ベルトモードからスプリットモードに移行せず、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能である。
ベルトモードからスプリットモードへの切り替えのために、SL1ソレノイドバルブ103が非通電状態から通電状態に切り替えられても、SL1ソレノイドバルブ103からSL1圧が出力されない異常が発生した場合、ECUにより、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態にされる。その結果、前述したように、クラッチC2が係合されて、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。
スプリットモードからベルトモードへの切り替えのために、SL1ソレノイドバルブ103が通電状態から非通電状態に切り替えられて、SL1ソレノイドバルブ103から出力されるSL1圧が低下し、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態から通電状態に切り替えられて、SL2ソレノイドバルブ104から出力されるSL2圧が上昇すると、スプリットモードからベルトモードに正常に切り替わる。
スプリットモードからベルトモードへの切り替えのために、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態から通電状態に切り替えられても、SL2ソレノイドバルブ104からSL2圧が出力されない異常が発生した場合、ECUにより、SLPソレノイドバルブ91が非通電状態にされる。その結果、前述したように、クラッチC2が係合されて、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。
スプリットモードからベルトモードへの切り替えのために、SL1ソレノイドバルブ103が通電状態から非通電状態に切り替えられても、SL1ソレノイドバルブ103から出力されるSL1圧が低下しない異常が発生した場合には、SL2ソレノイドバルブ104が非通電状態から通電状態に切り替えられて、SL2ソレノイドバルブ104から出力されるSL2圧が上昇することにより、カットバルブ105の第1スプール251が許可位置から禁止位置に移動する。その結果、クラッチC1へのC1圧(SL1圧)の供給が遮断される。これにより、ベルトモードからスプリットモードに移行せず、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能である。
<作用効果>
以上のように、油圧回路HCが採用された動力分割式無段変速機4では、種々の故障に対するフェイルセーフが可能である。
そして、クラッチC1の係合のためのSL1圧(C1圧)を出力するSL1ソレノイドバルブ103およびクラッチC2の係合のためのSL2圧(C2圧)を出力するSL2ソレノイドバルブ104の両方がノーマルクローズタイプであるので、SL1ソレノイドバルブ103およびSL2ソレノイドバルブ104が非通電状態になった場合、動力分割式無段変速機4は、クラッチC1およびクラッチC2の両方が係合されないニュートラル状態となる。そのため、クラッチC1,C2の掛け替えによる変速比の急上昇を抑制でき、エンジン回転数がレブリミットを超過するオーバーレブや強力なエンジンブレーキによる車両1の急減速を生じることを抑制できる。
また、カットバルブ105が設けられており、カットバルブ105にSL2圧が入力されている状態では、カットバルブ105の第1スプール251が禁止位置に位置し、クラッチC1に対するSL1圧の出力が遮断される。そのため、クラッチC1とクラッチC2との同時係合が継続することを抑制でき、その同時係合の継続によるインターロックを抑制することができる。
また、フェイルセーフバルブ106が設けられている。フェイルセーフバルブ106には、R圧およびSL1ソレノイドバルブ103から出力されるSL1圧が入力される。また、フェイルセーフバルブ106のスプール271は、フェイルセーフバルブ106に入力されるR圧をブレーキB1に出力可能なフェイルセーフ位置と、フェイルセーフバルブ106に入力されるSL1圧をブレーキB1に出力可能な通常位置とに変位可能に設けられている。そのため、SL1ソレノイドバルブ103に通電できない故障が発生した場合、フェイルセーフバルブ106に第1スプール251をフェイルセーフ位置に位置させる信号圧、つまりSLPソレノイドバルブ91からの最大圧のSLP圧が入力されることにより、フェイルセーフバルブ106からブレーキB1にR圧が供給される。その結果、ブレーキB1を係合させて、後進レンジを構成することができ、車両のリンプホーム機能による後進走行を可能にすることができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもでき、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。