JP2017067009A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】均質リーン燃焼が行われる運転領域で気流制御弁の開度が変更される場合において、大きなトルク変動の発生を抑制することができる火花点火式内燃機関の制御装置を提供する。【解決手段】筒内噴射式内燃機関10は、均質リーン燃焼と成層リーン燃焼が可能な内燃機関であり、吸気流速を変更可能な気流制御弁を備える。制御装置は、均質リーン燃焼が行われる運転領域において、気流制御弁の弁開度を変更する場合、弁開度が変更される期間に吸気行程を迎える気筒において、成層リーン燃焼を実行する。その結果、気流制御弁の弁開度変更に伴う吸気流速の変化があっても燃焼が不安定となることが抑制されるので、トルクの変動を抑止することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、タンブル及びスワール等の吸気流動を活用するとともに均質リーン燃焼を行う内燃機関の制御装置に関する。
従来から、タンブル制御弁及びスワール制御弁等の気流制御弁を吸気ポートに設け、筒内に発生する吸気流動を燃焼形態に応じて制御する内燃機関の制御装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。燃焼形態として、主として、均質燃焼を行う形態及び成層燃焼を行う形態等が知られている。均質燃焼は、燃料が気筒内において均質に分散された混合気を燃焼させる燃焼形態である。成層燃焼は、点火プラグの近傍に燃料濃度の濃い混合気を形成し、その混合気を燃焼させる燃焼形態である。その混合気の空燃比が理論空燃比である場合の均質燃焼は、「均質ストイキ燃焼」とも称呼される。更に、筒内の混合気の空燃比がリーン空燃比(理論空燃比よりも大きい空燃比)である場合の均質燃焼及び成層燃焼は、「均質リーン燃焼」及び「成層リーン燃焼」とそれぞれ称呼される。
具体的には、特許文献1に開示された装置(以下、「従来装置」と称呼される場合がある。)は、燃焼形態が均質ストイキ燃焼である場合、機関回転速度及び機関負荷に応じてタンブル制御弁の開度を変更するように構成されている。これにより、機関回転速度及び機関負荷に応じて筒内のタンブル流の流速を変更することができる。その結果、均質ストイキ燃焼時の燃焼安定性並びに燃焼効率を高く保つことができる。
特開2005−180247号公報(請求項4、段落[0016]及び段落[0017]参照)
ところで、均質リーン燃焼を広い運転領域において行う内燃機関が検討されている。均質リーン燃焼にて混合気を燃焼させる場合、均質ストイキ燃焼にて混合気を燃焼させる場合に比べ、少ない燃料噴射量により同等のトルクが発生し、その結果、燃費を向上させることができる。更に、均質リーン燃焼にて混合気を燃焼させる場合、成層リーン燃焼にて混合気を燃焼させた場合に比べ、筒内に極めて高温となる領域が発生し難いので、生成されるNOxの量が少ない。従って、リーン燃焼を行う機会を増加させることができるので、NOx排出量を増加させることなく燃費を向上させることもできる。一方、このように燃費及びエミッションの上で有利である均質リーン燃焼をより広い運転領域(例えば、機関負荷及び機関回転速度によって規定される領域)において行うことを可能とするために、気流制御弁を活用することが検討されている。
具体的には、機関回転速度が低い領域においては、筒内の混合気の撹拌を促進するために気流制御弁を閉じることにより、吸気流動が強められる。その結果、機関回転速度が低い領域においても均質リーン燃焼を行うことができる。一方、機関回転速度が高い領域においては、筒内に流入する空気の流速が高いので筒内の吸気流動は強くなる。このため、気流制御弁が閉じ側に制御されていると、筒内における気流が過度に強すぎ、その結果、点火プラグからの火花により着火した火炎核が成長できずに失火を招く。そこで、機関回転速度が高い領域においては気流制御弁を開き側に制御することによって、吸気流動が弱められる。その結果、機関回転速度が高い領域においても均質リーン燃焼を行うことができる。このように、気流制御弁の開度を変更することにより運転領域に応じた吸気流動を筒内に発生させることができ、それにより均質リーン燃焼が行われる運転領域を拡大することができる。
しかしながら、均質リーン燃焼は、均質ストイキ燃焼に比べて燃焼状態が不安定になり易い。従って、均質リーン燃焼にて混合気を燃焼させて機関を運転している場合に運転領域が変化し、それに伴って気流制御弁の開度を従来装置のように変更すると、吸気流動が安定するまでの期間において吸気流動が大きく変動し、その結果、燃焼が不安定となって発生トルクが大きく変動する虞がある。
本発明は、上述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、均質リーン燃焼が行われる運転領域で気流制御弁の開度が変更される場合において、大きなトルク変動の発生を抑制することができる「火花点火式内燃機関の制御装置(以下、「本発明装置」と称呼する。)」を提供することにある。
本発明装置が適用される内燃機関(10)は、開度を変更することにより筒内の吸気流動を変更する気流制御弁(44)を備える。
更に、本発明装置は開度制御部(70、ステップ106)と、燃焼制御部(70、図6のステップ108乃至ステップ112、図7のステップ108乃至ステップ126)と、を備える。開度制御部は、前記気流制御弁の開度を第1開度及び第2開度の何れか一方に選択的に実現するように構成されている。即ち、開度制御部は、前記気流制御弁の開度を第1開度と第2開度との間で切り替え可能に構成されている。
また、燃焼制御部は、前記筒内の混合気を均質リーン燃焼及び成層リーン燃焼の何れか一方の燃焼形態にて燃焼させるように、前記内燃機関を制御する。
更に、前記燃焼制御部は、前記内燃機関が前記均質リーン燃焼を行う運転領域において運転されている場合に前記均質リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させ(図6のステップ112、図7のステップ126)、且つ、前記開度制御部が前記気流制御弁の開度を前記第1開度から前記第2開度に切り替えるときには同開度が同第1開度から同第2開度に向けて変化し始める時点から同第2開度に到達する時点までの期間である切替え期間に吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の同吸気行程に対する燃焼行程(同吸気行程と同じサイクルの燃焼行程)において、前記均質リーン燃焼に代えて前記成層リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させるように構成されている(図6のステップ108及びステップ110、図7のステップ108及びステップ118)。
成層リーン燃焼においては、点火プラグ近傍に燃料濃度の濃い混合気が形成され、その混合気が着火される。従って、気流制御弁の開度の変更に伴い、筒内の吸気流動が変動した場合においても、点火プラグ近傍には燃料濃度の濃い混合気が形成されることにより、その混合気の着火性が良好となる。その結果、均質リーン燃焼が行われる運転領域で気流制御弁の開度が変更される場合に燃焼を安定させることができるので、大きなトルク変動の発生を抑制することができる。
ところで、気流制御弁が第2開度に到達した後から暫くの期間において、筒内に流入する吸入空気の量が過渡的に変化する。その結果、実際に筒内に流入する吸入空気量が変動することにより、燃焼が不安定となり、トルク変動が発生する虞がある。
そこで、本発明装置の一態様において、前記燃焼制御部は、前記切替え期間の終了時点から前記筒内に流入する吸入空気の量が安定化する時点までの期間である過渡期間に吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の同吸気行程と同じサイクルの燃焼行程においても前記均質リーン燃焼に代えて前記成層リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させるように構成されている(図6のステップ108及びステップ110)。
これにより、筒内に流入する吸入空気の量が安定化するまでの過渡期間においても、点火プラグ近傍に燃料濃度の濃い混合気が形成される成層リーン燃焼が行される。よって、その過渡期間において混合気の着火性が良好となる。その結果、上記態様によれば、過渡期間においても燃焼が安定するのでトルク変動の発生を抑制することができる。
本発明装置の他の一態様において、前記内燃機関は複数の気筒を有する多気筒内燃機関に適用される。前記内燃機関は、前記複数の気筒のそれぞれの筒内圧力を検出する複数の筒内圧センサ(67)を備える。
更に、前記制御装置は、前記筒内圧センサにより検出される前記筒内圧力に基づいて燃焼状態が悪化している燃焼悪化気筒を特定する気筒特定部(図7のステップ116)を更に備える。
また、前記燃焼制御部は、前記気筒特定部によって特定された燃焼悪化気筒であって、前記切替え期間の終了時点から前記筒内の空気量が安定化する時点までの期間である過渡期間に吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の同吸気行程と同じサイクルの燃焼行程においても前記均質リーン燃焼に代えて前記成層リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させるように構成されている(図7のステップ120乃至ステップ124)。
上述したように、気流制御弁が第2開度に到達した後の暫くの期間(過渡期間)において筒内に流入する吸入空気の量が過渡的に変化する。しかも、気流制御弁の開度が変更される前に燃焼状態がそもそも悪い気筒では、この過渡期間において一層燃焼状態が悪化する可能性が高い。これに対し、上記態様によれば、気流制御弁の弁開度を第2開度に切り替える前に燃焼が悪化している気筒を特定することにより、過渡期間に一層燃焼が悪化する気筒を特定することができる。更に、その特定した「一層燃焼が悪化する気筒」においては成層リーン燃焼を行う。よって、その気筒の燃焼は不安定になりにくい。その結果、上記態様によれば、過渡期間において燃焼が安定するのでトルク変動の発生を抑制することができる。
なお、上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
図1は、本発明の第1実施形態に係る内燃機関の制御装置(第1装置)が適用される内燃機関の概略断面図である。 図2は、図1に示した内燃機関の運転領域とタンブル制御弁の動作状態との関係を示した図である。 図3は、タンブル制御弁を切替える際の第1装置による燃焼制御について説明するためのタイムチャートである。 図4は、第1装置の作動を説明するためのタイムチャートである。 図5は、筒内空気量を推定する第1装置のエアモデルを説明するためのグラフである。 図6は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 図7は、本発明の第2実施形態に係る制御装置(第2装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
以下、本発明の各実施形態に係る「内燃機関の制御装置(以下、「本制御装置」と称呼する場合がある。)」について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
(構成)
本発明の第1実施形態に係る制御装置(以下、単に「第1装置」と称呼する。)は、図1に示した内燃機関(以下、「機関」と称呼する。)10に適用される。機関10は、所謂「筒内噴射式−火花点火−ガソリン−多気筒(4気筒)内燃機関」である。また、機関10は、理論空燃比よりも大きな空燃比(リーン空燃比)の混合気を安定的に燃焼させるリーン燃焼運転(均質リーン燃焼及び成層リーン燃焼による運転)が可能な内燃機関である。なお、図1は、特定の気筒の断面のみを図示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
この機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド30と、シリンダブロック部20に空気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダボア(シリンダ)21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これによりクランク軸24が回転する。ピストン22の頂面、シリンダボア21の壁面及びシリンダヘッド30の下面は、燃焼室25を画定している。
シリンダヘッド30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を開閉駆動するインテークカムシャフトを含む吸気弁駆動装置33、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ(点火栓)37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を燃焼室25内に直接噴射する燃料噴射弁(筒内噴射弁、フューエルインジェクタ)39を備えている。第1装置は、燃料噴射弁39から噴射した燃料と空気とを均質に混合させて、その混合気を点火プラグ37を用いて点火して燃焼させる均質リーン燃焼及び燃料噴射弁39から噴射した燃料を用いて燃料濃度が高い部分と低い部分とを有する層状の混合気を形成し、燃料濃度が高い部分が点火プラグ37の近傍に到達しているときに点火プラグ37を用いて点火してその混合気を燃焼させる成層リーン燃焼を行う。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43及びスロットル弁駆動手段を構成するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aを備えている。
更に吸気系統40は、各吸気ポート31に配置され各吸気ポートの開口断面積を可変とするタンブル制御弁(以下、「TCV」と称呼する。)44、TCV駆動手段を構成する図示しない「バルブシャフト及びDCモータを有するTCVアクチュエータ」を備える。全てのTCV44は、1つのバルブシャフトに固定されている。バルブシャフトは吸気ポート31に対して回転自在であって、TCVアクチュエータによって回転駆動される。TCVアクチュエータによりバルブシャフトを回転させることにより、全てのTCV44の弁の開度は、開(第1開度)から閉(第2開度)へ、或いは、閉から開へ同時に切り替えられる。
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、エキゾーストパイプ52の上流から順に、三元触媒であるスタート触媒(S/C)53、NOx吸蔵還元型触媒(NSR)54及び選択還元型触媒(SCR)55が配置されている。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、冷却水温センサ65、筒内圧センサ67及びアクセル開度センサ68を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量を検出し、質量流量Gaを表す信号を出力するようになっている。
スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。
クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10度回転する毎にパルスを出力するようになっている。クランクポジションセンサ64から出力されるパルスは後述する電気制御装置70によって機関回転速度NEを表す信号に変換される。更に、電気制御装置70は、カムポジションセンサ63及びクランクポジションセンサ64からの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角θ)を求める。
冷却水温センサ65は、機関10の冷却水の温度を検出し、その冷却水温度THWを表す信号を出力するようになっている。
筒内圧センサ67は、複数の気筒のそれぞれに一つずつ設けられている。筒内圧センサ67は、対応する(即ち、それぞれが配設された)燃焼室25内のガスの圧力(筒内圧)を検出し、筒内圧P(=Pc)を表す信号を送出するようになっている。各気筒の筒内圧Pは、クランク角が微小角度Δθだけ変化する毎に電気制御装置70によって取得される。更に、その取得された筒内圧Pは、対応する気筒のクランク角θと関連付けられて筒内圧P(θ)の形式にて後述するRAM73に対応する気筒別に格納されて行く。
アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。アクセルペダル81の操作量Accpは機関10の負荷の大きさを表す一つのパラメータである。
電気制御装置70は、CPU71、ROM72、RAM73、バックアップRAM74、及び、ADコンバータを含むインターフェース75等を含む周知のマイクロコンピュータである。
インターフェース75は、上記センサ61〜68と接続され、CPU71にこれらのセンサからの信号を供給するようになっている。更に、インターフェース75は、CPU71の指示に応じて、吸気弁駆動装置33、スロットル弁アクチュエータ43a及びTCV駆動手段等に駆動信号を送出し、各気筒の燃料噴射弁39に噴射指示信号を送出し、各気筒のイグナイタ38に点火信号を送出するようになっている。
(TCVの開度の切り替え)
次に第1装置が実行するTCVの開度の切り替えの概要について説明する。
図2は、機関10の運転領域とTCV44の弁開度との関係を示す図である。運転領域は、機関回転速度と機関が発生するトルク(機関の負荷に相当)との組み合わせによって区分される。図2において“TCV開”と表記された領域は、TCV44が常に開状態に維持される(TCV44の開度が第1開度に常に維持される)領域であり、“TCV閉”と表記された領域は、TCV44が常に閉状態に維持される(TCV44の開度が第2開度に常に維持される)領域である。図2において、黒色の矢印は機関10の動作点が黒色の矢印により示された方向に向かうときにTCV44が閉じられていることを表し、白色の矢印は機関10の動作点が白色の矢印により示された方向に向かうときにTCV44が開かれていることを表す。
図2において、TCV開領域とTCV閉領域との間のハッチングされた領域は、所謂、ヒステリシス領域である。TCV44が閉状態にある状況において、機関10の動作点がTCV閉領域からTCV開領域へとラインL1を横切って移動するとき、ヒステリシス領域ではTCV44は閉じられている。TCV44が開状態にある状況において、機関10の動作点がTCV開領域からTCV閉領域へとラインL2を横切って移動するとき、ヒステリシス領域ではTCV44は開かれている。機関10の動作点が開領域にあってTCV44が開かれている場合にトルクが一定のまま機関回転速度が減少する場合、回転数NE1においてTCV44の開状態から閉状態への切り替えが行われる。機関10の動作点が閉領域にあってTCV44が閉じられている場合にトルクが一定のまま機関回転速度が増加する場合、回転数NE2においてTCV44の閉状態から開状態への切り替えが行われる。機関10の動作点が開領域にあってTCV44が開かれている場合に機関回転速度が一定のままトルクが減少する場合、トルクTQ1においてTCV44の開状態から閉状態への切り替えが行われる。機関10の動作点が閉領域にあってTCV44が閉じられている場合に機関回転速度が一定のままトルクが増加する場合、トルクTQ2においてTCV44の閉状態から開状態への切り替えが行われる。
なお、図2において太い実線により示されるラインL3は、均質ストイキ燃焼を行う領域と均質リーン燃焼を行う領域との間の境界線である。ラインL3は、各機関回転速度において均質リーン燃焼により実現可能な最大トルクを示している。この境界線より低トルク側の領域は、均質リーン燃焼を行う領域であり、この境界線より高トルク側の領域は、均質ストイキ燃焼を行う領域である。なお、均質リーン燃焼を行う場合の混合気の空燃比は、失火限界近くの大きい値であり(即ち、強リーン空燃比であり)、例えば26.5程度の値に設定される。
図2に示した「機関10の運転領域とTCV44の弁開度との関係」から理解されるように、第1装置は、均質リーン燃焼が行われる運転領域において、TCV44の弁開度の切り替えを行う。TCV44の開度の切り替え時には、筒内の吸気流動が大きく変動するから、燃焼が不安定になり易く、従って、トルクの変動が発生し易い。係るトルク変動を抑えるためには、TCV44の弁開度の切り替えに伴って吸気流動が不安定な期間に吸気行程(吸気弁が開弁している吸気行程)の全部又は一部を迎える気筒に対して成層リーン燃焼を実施することが有効である。成層リーン燃焼は均質リーン燃焼に比べて混合気の燃焼は安定し易いので、トルクの変動が抑えられる。そこで、第1装置は、均質リーン運転が行われる運転領域においてTCV44の弁開度の切り替えを行う場合、次に説明する燃焼制御を実行する。
(燃焼制御の概要)
第1装置は、均質リーン燃焼が行われる運転領域において(即ち、均質リーン燃焼を行っている場合に)TCV44の弁開度を切り替えるとき、その開度の「切替え期間」に「吸気弁が開弁している吸気行程(即ち、吸入空気が筒内に流れ込んでいる期間)」の一部又は全部が重なる気筒が、その吸気行程に対する燃焼行程(即ち、その吸気行程と同じ燃焼サイクルにある燃焼行程、換言すると、その吸気行程の直後に発生する燃焼行程)を迎えるとき、均質リーン燃焼に代えて成層リーン燃焼を実施する。係る制御を、第1装置による燃焼制御と称呼する。ここで、「切替え期間」は、TCV44の開度が第1開度及び第2開度の何れか一方から他方に向けて変化し始める時点(図3の時刻t1)から、TCV44の開度が第1開度及び第2開度の何れか他方に到達した時点(図3の時刻t2)までの期間である。
具体的に述べると、第1装置は、点火プラグ37の点火時期、燃料噴射弁39の噴射量及び噴射時期を制御する。第1装置は、燃料噴射弁39から噴射される燃料の量である燃料噴射量を、周知の手法に従い、吸入空気量Ga及び機関回転速度NEに基づいて決定する。更に、第1装置は、燃料噴射弁39から「決定された燃料噴射量の燃料」を噴射させるとともに、その燃料を噴射する時期である燃料噴射時期θinj(=燃料噴射の開始時期)を制御する。但し、第1装置は、均質リーン燃焼を実行する場合には燃料噴射時期θinjを吸気行程中に設定し、成層リーン燃焼を実行する場合には、燃料噴射時期θinjを圧縮行程中に設定する。第1装置は、燃料噴射弁39から燃料が噴射された後にMBT(Minimum advance for Best Torque)にできるだけ近い点火時期にて点火プラグ37から点火用火花を発生させ、混合気を着火・燃焼させる。即ち、第1装置は、均質リーン燃焼を実行する場合には吸気行程中に燃料噴射弁39から燃料を噴射して均質混合気を形成した後、その混合気を点火プラグ37からの火花により着火して燃焼させる。第1装置は、成層リーン燃焼を実行する場合には圧縮行程中に燃料噴射弁39から燃料を噴射して成層混合気を形成した後、その混合気を「燃料濃度の高い部分が点火プラグ37に到達したタイミングにて」点火プラグ37からの火花により着火して燃焼させる。
TCV44の弁開度の変更に伴い、筒内の吸気流動が変動した場合であっても、成層リーン燃焼が行われる場合には、点火プラグ37近傍に燃料濃度の濃い混合気が形成されることにより、その混合気の着火性が良好となる。これにより、たとえ、TCV44の開度の切替え期間において筒内の吸気流動が大きく変動しても、安定した燃焼を行わせることができる。よって、「TCV44の弁開度の変更に起因するトルク変動」を小さくすることができる。
更に、第1装置は、燃焼制御において、「切り替え期間」の後に筒内の空気量が安定するまでの「過渡期間」に吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒が、その吸気行程に対する燃焼行程(即ち、その吸気行程と同じ燃焼サイクルにある燃焼行程、換言すると、その吸気行程の直後に発生する燃焼行程)を迎えるとき、均質リーン燃焼に代えて成層リーン燃焼を実施する。ここで、「過渡期間」は、TCV44の開度が第1開度及び第2開度の何れか他方に到達した時点(図3の時刻t2)から筒内に流入する吸入空気の量(筒内吸入空気量)が安定化した時点(図3の時刻t3)までの期間である。なお、「筒内吸入空気量安定化する」とは、TCV44の弁開度が切り替わることに起因する「筒内に流入する吸入空気の量の変化量(変動量、ばらつき)」が小さくなることである。
成層リーン燃焼では、点火プラグ近傍に燃料濃度の濃い混合気が形成されるので、その混合気の着火性が良好となる。これにより、たとえ、過渡期間において筒内吸入空気量が変動しても、混合気を安定して燃焼させることができる。よって、過渡期間及びその直後の期間におけるトルク変動を小さくすることができる。
(実際の燃焼制御)
次に、第1装置の電気制御装置70が実際に行う燃焼制御について図4のタイムチャートを参照しながら説明する。図4には、均質リーン燃焼を行う運転領域におけるTCV44の弁開度の時間による変化及び筒内の空気量(筒内に流入する吸入空気の量)の時間による変化が示されている。更に、本実施の形態に係る機関10は直列4気筒エンジンであるので、第1番気筒乃至第4番気筒における燃焼サイクルの時間による変化が示されている。なお、点火順序は1、3、4、2番気筒の順により点火される。各気筒の圧縮行程に置かれている黒い三角は、点火プラグ37による点火タイミングを示している。燃焼行程から排気行程にかけて引かれている両矢印線(白抜きの矢印)は、燃料噴射弁39によって燃料噴射が実行されている期間を示している。均質リーン燃焼では、吸気行程(吸気弁が開弁している吸気行程)中に燃料噴射弁39により燃料が噴射され、成層リーン燃焼では、圧縮行程中に燃料が噴射される。
吸気弁32は、吸気TDC(吸気上死点)よりも早いタイミングで開き、BDC(吸気下死点)よりも遅いタイミングで閉じる。このため、吸気行程の区間は180度よりも広く、気筒間で吸気行程の区間に重なりが生じている。しかし、各気筒の吸気行程には、他の気筒の吸気行程と重なっていない区間が存在する。均質リーン燃焼を行う運転領域において、機関10の動作点が前述した図2に示されているラインL1又はラインL2を横切ることによりTCV44の開度切替え要求が生じた場合、電気制御装置70は、TCV44の弁開度の切り替えを1つの気筒が吸気行程を迎え、且つ他の気筒の吸気行程と重なっていない区間で実行する。即ち、TCV44の弁開度の切り替え期間は、1つの気筒のみが吸気行程を迎えている期間である。TCV44の弁開度の切り替えにより筒内の吸気流動が変化する影響は、切替え期間が吸気行程と重なった気筒にのみ及ぶ。ゆえに、切替え期間が他の気筒の吸気行程と重なっていない「ある気筒の吸気期間」に設定されることにより、筒内の吸気流動が変化する影響が「その、ある気筒とは異なる気筒」へ及ぶことを防止することができる。
TCV44の弁開度の切替えに合わせて行う燃焼制御は、燃焼形態を成層リーン燃焼に変更するが、そのためには、燃料噴射時期を圧縮行程に設定する必要がある。なお、図4に示した例においては第1番気筒の吸気行程の前にTCV44の弁開度の切替えを決定している。図4に示した例においては、TCV開度の切替え要求が時刻t0にて発生した後に最初に吸気行程を迎える気筒が第1番気筒である。そこで、電気制御装置70は第1番気筒の吸気行程開始直後の時刻t1にてTCV開度の切り替え動作(開度の変更)を開始する。そして、この例においては、そのTCV開度切り替え動作は第3番気筒の吸気行程が開始する前の時点(時刻t2)までに終了している。
電気制御装置70は、TCV開度切替え動作が吸気行程と重なった第1番気筒の吸気行程に対する燃焼行程(その吸気行程と同じサイクルの燃焼行程、換言すると、その第1番気筒の吸気行程の直後に同気筒の圧縮行程を経て到来する同気筒の燃焼行程)において成層リーン燃焼を行うことができるように、その第1番気筒の吸気行程に続く圧縮行程において燃料噴射を実行し(符号Aを付した両矢印線を参照。)、第1番気筒において成層リーン混合気を形成する。
詳しくは、電気制御装置70は別途推定されている推定筒内空気量と目標とするリーン空燃比とに基づいて燃料噴射量Qを計算し、その燃料噴射量Qの燃料を第1番気筒の圧縮行程において噴射する。
ところで、実際に筒内に流入する吸入空気の量(筒内空気量)はTCV44の弁開度の変化に対して遅れて変化する。このため、TCV44の弁開度が変化してからの暫くの間、筒内空気量が過渡的に変化する。よって、実際に筒内に流入する吸入空気の量に正確に応じた燃料噴射量Qを算出することは難しく、その結果、燃焼が不安定になってしまう虞がある。
一方、実際に筒内に流入する吸入空気の量を「推定した量」である「推定筒内空気量」は、エアモデルを用いて計算される。エアモデルは公知であるのでその詳細な説明は行わず、概要についてのみ説明する。まず、スロットル43をモデル化したスロットルモデルを用いて、スロットル43より下流でTCV44より上流の空間の推定吸気圧が算出される。そして、図5に示したTCV44の弁開度に応じた筒内空気量と吸気圧との関係を示す線形式が用いられることにより、推定筒内空気量が算出される。ただし、TCV44の弁開度の変化に対して実際の筒内空気量の変化には応答遅れがあるため、TCV44の弁開度の切り替え後に算出される推定筒内空気量に対しては、推定筒内空気量の急変を抑えるための処理、例えば、なまし処理が行われる。
上述のように、推定筒内空気量の計算は、筒内の空気量が過渡的に変化する期間においては予測誤差が含まれている。その予測誤差は、TCV44の開度の切り替わる期間から筒内空気量が過渡的に変化している期間に及ぶ。そこで、更に燃焼制御は、推定筒内空気量に含まれる予測誤差によって燃焼が悪化することを防ぐために、TCV44の開度が切り替わる期間のみならず筒内の吸入空気量が過渡的に変化する期間においても成層リーン燃焼を実行する。即ち、TCV44の開度の切替わり開始時点から実際の筒内空気量が安定化する時点までの期間において成層リーン燃焼が実行される。
図4に示した例においては、第3番気筒及び第4番気筒では、TCV44の弁開度の切り替えが終了した時点から筒内の空気量が安定化する時点(時刻t3)までの期間(過渡期間)に吸気行程を迎える。TCV44の弁開度の切替えに起因する筒内の吸気流動の変動が燃焼に影響を及ぼす気筒は第1番気筒であり、切替え終了後の過渡期間における実際の筒内空気量の変動が燃焼に影響を及ぼす気筒は第3番気筒及び第4番気筒である。そこで、電気制御装置70は、第1番気筒のみでなく、第3番気筒及び第4番気筒に対しても成層リーン燃焼を行わせる。
(第1装置の実際の作動)
次に、第1装置の実際の作動について説明する。
第1装置の電気制御装置70が備えるCPU71は、図6のフローチャートにより示した燃焼制御ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、CPU71は所定のタイミングにてステップ100から処理を開始してステップ102に進み、機関10が均質リーン燃焼による運転を行っているか否かを判定する。即ち、CPU71は、機関10の動作点が図2に示した「均質リーン燃焼を行う領域」(即ち、図2に示したラインL3よりも低トルクの領域)にあるか否かを判定する。このとき、機関10の動作点が図2に示した「均質リーン燃焼を行う領域」になければ(即ち、図2に示したL3よりも高トルク領域である場合)、CPU71はステップ102にて「No」と判定してステップ114に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
ステップ102の判定が「Yes」の場合(即ち、機関10の動作点が「均質リーン燃焼を行う領域」にある場合)、CPU71はステップ102からステップ104に進み、TCV44の弁開度の切替え要求が発生しているか否かを判定する。即ち、CPU71は、機関10の動作点が図2に示したラインL1及びラインL2の何れかを横切って移動したか否かを判定する。このとき、機関10の動作点が図2に示したラインL1及びラインL2の何れかを横切って移動していなければ、CPU71はステップ104にて「No」と判定し、ステップ114に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ104の判定が「Yes」の場合(即ち、機関10の動作点が図2に示したラインL1及びラインL2の何れかを横切って移動した場合)、CPU71は、ステップ104からステップ106に進み、先のステップ104にて「Yes」と判定した時点の後に最初に吸気行程を迎える気筒において、その気筒の吸気行程中の区間であって他の気筒と吸気行程が重ならない区間何にTCV44の弁開度の切り替えを実行する。具体的には、CPU71が、TCV駆動手段におけるDCモーターを駆動することによりバルブシャフトを回転させて、TCV44の開度を切り替える。
ステップ106の処理実行後、CPU71はステップ108に進み、成層リーン燃焼が実行されるように、燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を前述したように決定し、その決定した燃料噴射タイミングにて燃料噴射が開始・実行されるように燃料噴射の設定を行う。
ステップ108の処理実行後、CPU71はステップ110に進み、ステップ108の処理実行後、第1所定期間が経過したか否かが判定される。第1所定期間は、切替え期間及び過渡期間を加えた期間に設定されている。このとき、CPU71は、第1所定期間が経過していなければ、ステップ110にて「No」と判定してステップ108に戻り、ステップ108の処理を再度実行する。この結果、吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が第1所定期間に重なる気筒に対して成層リーン燃焼が行われる。
ステップ110の判定が「Yes」の場合(即ち、ステップ108の処理実行後、第1所定期間が経過した場合)、CPU71はステップ112に進み、均質リーン燃焼が実行されるように燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を前述したように決定し、その決定した燃料噴射タイミングにて燃料噴射が開始・実行されるように燃料噴射の設定を行う。
以上の処理により、均質リーン燃焼が行われる運転領域で、TCV44の弁開度が切り替えられる間に吸気行程を迎える気筒の同吸気行程に対する(即ち、当該吸気行程と同じサイクルの)燃焼行程において、均質リーン燃焼に代えて成層リーン燃焼が実行される。これにより、点火プラグ37近傍には、均質リーン燃焼を行う場合に比べて燃料濃度の濃い混合気が形成されるので、筒内の混合気の着火性が向上し、それ故に燃焼が不安定になり難い。その結果、トルク変動の発生を抑制することができる。
更に、TCV44の弁開度が切り替えられた後に、筒内の空気量が安定化するまでの過渡期間に吸気行程を迎える気筒の同吸気行程に対する(即ち、当該吸気行程と同じサイクルの)燃焼行程において前記均質リーン燃焼に代えて前記成層リーン燃焼が行われる。これにより、点火プラグ37近傍には、均質リーン燃焼を行う場合に比べて燃料濃度の濃い混合気が形成されるので、推定筒内空気量が誤差を含むことに起因して燃料噴射量が正確でなかったとしても、筒内の混合気の着火性が向上し、それ故に燃焼が不安定になり難い。その結果、トルク変動の発生を抑制することができる。
なお、第1装置は、直列4気筒エンジンの他にも、単気筒エンジン、直列3気筒エンジン及びV型6気筒エンジン等の多気筒エンジンにも適用することができる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る制御装置(以下、単に「第2装置」と称呼する。)は、TCV44の弁開度の切り替え前に燃焼の悪化している気筒(以下、単に「燃焼悪化気筒」と称呼される場合がある。)であって且つ上述の過渡期間に吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒、の当該吸気行程に対する(即ち、当該吸気行程と同じサイクルの)燃焼行程において、均質リーン燃焼に代えて成層リーン燃焼を行う。
前述した第1装置は、TCV44の開度の変更が終了した時点から実際の筒内空気量が安定化する時点までの期間(過渡期間)に前記吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の当該吸気行程と同じサイクルの燃焼行程において成層リーン燃焼を実施する。これに対し、第2装置は、TCVの切り替え前に燃焼の悪化している気筒に対してのみ成層リーン燃焼を行う。従って、第2装置は、前記過渡期間及びその直後に燃焼悪化が生じる可能性の低い気筒では均質リーン燃焼を実行するので、トルク変動を抑制しつつも均質リーン燃焼を行う機会を増大することができる。
(第2装置に係る燃焼制御)
以下、燃焼制御に関して、第2装置が第1装置と異なる点を中心に説明する。第2装置は、TCV44の弁開度の切り替え前に燃焼悪化気筒を特定する。更に、第2装置は、前記第1所定期間に吸気行程の一部又は全部が重なる「燃焼悪化気筒」の当該吸気行程と同じサイクルの燃焼行程に対して、成層リーン燃焼を実行するように構成される。第2装置は、前記第1所定期間に吸気行程の一部又は全部が重なる気筒が燃焼悪化気筒でなければ、その気筒に対して成層リーン燃焼を行うことなく均質リーン燃焼を行う。そのため、第2装置では、均質リーン燃焼を行う運転領域でTCV44の弁開度が切り替えられる前に燃焼悪化気筒を特定する。
なお、第2装置は、第1装置と同様、均質リーン燃焼が行われる運転領域においてTCV44の弁開度を切り替えるとき、その開度の「切替え期間」に「吸気弁が開弁している吸気行程(即ち、吸入空気が筒内に流れ込んでいる期間)」の一部又は全部が重なる気筒が、その吸気行程と同じサイクルの燃焼行程を迎えるとき、その気筒が燃焼悪化気筒であるか否かに関わらず、均質リーン燃焼に代えて成層リーン燃焼を実施してもよい。
(燃焼悪化気筒の特定方法)
第2装置は、筒内圧センサ67の信号を処理するこにより燃焼悪化気筒を特定する。より具体的に述べると、第2装置は、筒内圧センサ67の信号に基づいてクランク角ごとに燃焼質量割合を計算し、点火時期から燃焼質量割合が所定割合(例えば10%)になるまでの期間の長さを取得する。この期間の長さは、燃焼速度(の高低)を示すパラメータである。更に具体的には、第2装置は、気筒ごとに複数のサイクルにわたって燃焼速度を示す前記パラメータ算出する。そのパラメータにより示される燃焼速度のサイクル間での変動率が高いほど燃焼が悪い気筒であり、燃焼速度の変動率が低いほど燃焼が良い気筒である。即ち、気筒ごとに燃焼速度の変動率を調べることで、燃焼の良い順番に気筒間で優劣をつけることができる。第2装置は、気筒ごとに複数サイクルにわたって燃焼速度の変動率を取得し、その変動率の平均値が所定値以上の気筒を燃焼悪化気筒であると判断する。
(第2装置の実際の作動)
次に、第2装置の実際の作動について説明する。
第2装置の電気制御装置70が備えるCPU71は、図7にフローチャートにより示した燃焼制御ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。ここでは、均質リーン燃焼を行う運転領域において機関10が運転されている場合であってTCV44の開度が切り替えられる以前の時点にて、燃焼悪化気筒が有ると判定された場合について説明する。
まず、CPU71は、前述したステップ100及びステップ102を実行し、ステップ102の判定が「Yes」となった場合、ステップ116に進み、前述した燃焼悪化気筒の特定方法に基づき、燃焼悪化気筒の特定を行う。
ステップ116の処理実行後、CPU71は、前述したステップ104乃至ステップ108の処理を実行する。これらの処理により、CPU71は、TCV44の弁開度を切り替えるとともに、切替え期間に吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の同吸気行程に対する燃焼行程で成層リーン燃焼を実行する。
ステップ108の処理実行後、CPU71は、ステップ118に進み、ステップ106の処理が実行されてから、第2所定期間が経過したか否かを判定する。なお、第2所定期間はTCV44の切り替え期間に相当する期間である。このとき、CPU71は、第2所定期間が経過していなければ、ステップ118にて「No」と判定して、ステップ108に戻り、ステップ108の処理を再度実行する。
ステップ118の判定が「Yes」の場合(即ち、第2所定期間が経過した場合)、CPU71はステップ120に進み、燃焼悪化気筒の有無を判定する。
ステップ120の判定が「Yes」の場合(即ち、燃焼悪化気筒が有りの場合)、CPU71はステップ122に進み、燃焼悪化気筒の燃焼行程で成層リーン燃焼が実行されるように、燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を前述したように決定し、その決定した燃料噴射タイミングにて燃料噴射が開始・実行されるように燃料噴射の設定を行う。
このとき、CPU71は、ステップ108において、成層リーン燃焼を行うように燃料噴射タイミング及び燃料噴射量が設定されていた気筒が、燃焼悪化気筒でない場合には、均質リーン燃焼を行うように燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を前述したように決定し、その決定タイミングにて燃料噴射が行われるように設定する。
ステップ122の処理実行後、CPU71は、ステップ124に進み、ステップ106の処理が実行されてから、第3所定期間が経過したかどうかの判定が行われる。第3所定期間は、切替え期間(第2所定期間)及び過渡期間を加えた期間に設定されている。このとき、CPU71は、第3所定期間が経過していなければ、ステップ124にて「No」と判定して、ステップ122に戻り、ステップ122の処理を再度実行する。
ステップ124の判定が「Yes」の場合(即ち、ステップ106の処理が実行されてから、第3所定期間が経過した場合)、CPU71は、ステップ124からステップ126に進み、総ての気筒に対して均質リーン燃焼が実行されるように燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を前述したように決定し、その決定した燃料噴射タイミングにて燃料噴射が開始・実行されるように燃料噴射の設定を行う。
次に、均質リーン燃焼を行う運転領域において、TCV44の開度が切り替えられる前に燃焼悪化気筒が無いと判定された場合について説明する。
この場合、ステップ120の判定は「No」となる。よって、CPU71は、ステップ120からステップ126に直接進み、総ての気筒における燃焼行程において均質リーン燃焼が行われるように燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を前述したように決定し、その決定した燃料噴射タイミングにて燃料噴射が開始・実行されるように燃料噴射の設定を行う。
従って、TCV44の弁開度が切り替わる前に燃焼悪化気筒を特定することにより、TCV44の弁開度が変更された後に、筒内の空気量が過渡的に変化することに起因して燃焼が不安定となる気筒を特定することができる。更に、特定された燃焼が不安定となる気筒に成層リーン燃焼が実施されることにより、燃焼が不安定になりにくい。その結果、燃焼が安定することにより、トルク変動の発生を抑制するとともに、不要に成層リーン燃焼が行われず、均質リーン燃焼を行う領域を拡大することができる。
なお、第2装置は、燃焼悪化気筒を、筒内圧センサ67の信号からクランク角ごとに燃焼質量割合を計算し、点火時期から燃焼質量割合が所定割合になるまでの期間に基づき特定しているが、燃焼悪化気筒の特定方法はこの方法に限定されるものではない。例えば、燃焼期間が長いほど燃焼が悪い気筒であり、燃焼期間が短いほど燃焼が良い気筒であると判断できる。このため、第2装置は、筒内圧センサ67の信号に基づいて気筒ごとに燃焼期間を計算し、その燃焼期間が所定期間以上である気筒を燃焼悪化気筒であると特定してもよい。
以上、説明したように、本発明の各実施形態及び変形例に係る装置によれば、均質リーン燃焼を行う運転領域で、TCV44の開度を切り替える場合に、燃焼が悪化することを抑制しながら、TCV44の開度を切り替えることができる。その結果、トルク変動を抑制することができる。
なお、本制御装置は、タンブル制御弁を備える内燃機関10に適用されているが、本発明はスワール制御弁を備える内燃機関にも適用することができる。
更に本制御装置は、各気筒のタンブル制御弁が共通のDCモータによって同時に動作する構成となっているが、本発明は各気筒のタンブル制御弁(或いはスワール制御弁)が個々のDCモータによって独立して動作する構成にも適用することができる。
更に本制御装置は、TCV44の弁開度の切替え期間が何れか1つの気筒の吸気行程のみと重なるようにTCV44の弁開度の切り替えを行っている。しかしながら、本制御装置は、TCV44の弁開度の切替え期間が複数の気筒の吸気行程に重なるようにTCV44の弁開度の切り替えを行っても良い。
更に本制御装置は、TCV44の弁開度の切替え開始時点から筒内空気量が安定化する時点までに吸気行程を迎えた気筒に対して成層リーン燃焼を行うが、TCV44の弁開度の切替え開始時点から切替え終了時点までの期間、及び、切替え終了時点から所定の数のサイクルを経過する時点までの期間、において均質リーン燃焼に代えて成層リーン燃焼を行うように構成されてもよい。
更に本制御装置は、筒内噴射弁を備える内燃機関10に適用されているが、本発明はポート噴射弁と筒内噴射弁の両方を備える内燃機関にも適用することができる。この場合、均質リーン燃焼は、ポート噴射弁のみを用いて、或いは、ポート噴射弁と筒内噴射弁とを併用して、吸気行程において燃料を噴射することにより実行されてもよい。
10…内燃機関、25…燃焼室、31…吸気ポート、32…吸気弁、34…排気ポート、35…排気弁、37…点火プラグ、39…燃料噴射弁、67…筒内圧センサ、69…TCV、70…電気制御装置、71…CPU。

Claims (3)

  1. 開度を変更することにより筒内に発生する吸気流動を変更する気流制御弁を有する火花点火式内燃機関に適用され、
    前記気流制御弁の開度を第1開度及び第2開度の何れか一方に選択的に設定する開度制御部と、
    前記筒内の混合気を均質リーン燃焼及び成層リーン燃焼の何れか一方の燃焼形態にて燃焼させるように前記内燃機関を制御する燃焼制御部と、
    を備えた内燃機関の制御装置において、
    前記燃焼制御部は、
    前記内燃機関が前記均質リーン燃焼を行う運転領域において運転されている場合に前記均質リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させ、且つ、
    前記開度制御部が前記気流制御弁の開度を前記第1開度から前記第2開度に切り替えるときには同開度が同第1開度から同第2開度に向けて変化し始める時点から同第2開度に到達する時点までの期間である切替え期間に吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の同吸気行程と同じサイクルの燃焼行程において前記均質リーン燃焼に代えて前記成層リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させるように構成された、
    内燃機関の制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記燃焼制御部は、
    前記切替え期間の終了時点から前記筒内に流入する吸入空気の量が安定化する時点までの期間である過渡期間に前記吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の同吸気行程と同じサイクルの燃焼行程においても前記均質リーン燃焼に代えて前記成層リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させるように構成された、
    内燃機関の制御装置。
  3. 請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
    前記内燃機関は複数の気筒を有する多気筒内燃機関であり、且つ、前記複数の気筒のそれぞれの筒内圧力を検出する複数の筒内圧センサを備え、
    前記制御装置は、
    前記筒内圧センサにより検出される前記筒内圧力に基づいて燃焼状態が悪化している燃焼悪化気筒を特定する気筒特定部を更に備え、
    前記燃焼制御部は、
    前記気筒特定部によって特定された燃焼悪化気筒であって前記切替え期間の終了時点から前記筒内の空気量が安定化する時点までの期間である過渡期間に前記吸気弁が開弁している吸気行程の一部又は全部が重なる気筒の同吸気行程と同じサイクルの燃焼行程においても前記均質リーン燃焼に代えて前記成層リーン燃焼にて前記混合気を燃焼させるように構成された、
    内燃機関の制御装置。
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