以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は空気圧縮機を示す斜視図を、図2は空気圧縮機の水平断面図を、図3は空気圧縮機の操作パネルを示す平面図を、図4は空気圧縮機の電気系統を示すブロック図をそれぞれ示している。
図1に示す空気圧縮機(エアコンプレッサ)10は、建築作業現場等において作業者により容易に持ち運べる可搬型の空気圧縮機である。空気圧縮機10は、圧縮空気の圧力により、釘やネジを木材等に打ち込む空気工具に圧縮空気を供給する圧縮空気供給源として利用される。
図1に示すように、空気圧縮機10は、フレーム等の骨格部と、骨格部に連結された互いに平行な2つの空気タンク(タンク)11a,11bと、を含む基台12を有する。それぞれの空気タンク11a,11bの両端部下面には脚部13が取り付けられており、空気圧縮機10は、4つの脚部13によって所望の設置場所に置かれる。また、基台12の両端部にはハンドル14が設けられており、作業者は、ハンドル14を把持して空気圧縮機10を持ち運ぶことができる。
基台12には、図2に示される電動モータ20と、電動モータ20により駆動されて圧縮空気を生成する圧縮機構30と、が搭載されている。電動モータ20および圧縮機構30は、プラスチック製のカバー15(図1参照)によって覆われている。また、圧縮機構30は、クランクケース40と、互いに対向配置された第1シリンダ50aおよび第2シリンダ50bと、を備えている。
電動モータ20は、筒状のステータ(固定子)21と、ステータ21の径方向内側に回転自在に設けられたロータ(回転子)22と、ロータ22の回転中心に固定された回転軸23と、ロータ22の回転位置を検出するホール素子等よりなる位置センサ24(図4参照)を備えている。電動モータ20はブラシレスモータであり、クランクケース40の外部に配置されている。電動モータ20は、クランクケース40を形成する第1ケース部41aに固定されており、クランクケース40と一体化されている。
回転軸23は、ロータ22を貫通して、ロータ22の軸方向両側に突出されている。ロータ22の軸方向一側に突出された第1突出部23aは、クランクケース40を貫通しており、クランクケース40に設けた軸受により回転自在に支持されている。具体的には、回転軸23の第1突出部23aは、第1ケース部41aと、これと対向するクランクケース40を形成する第2ケース部41bと、を貫通している。そして、第1突出部23aは、第1,第2ケース部41a,41bのそれぞれに設けた軸受により回転自在に支持されている。
クランクケース40を中心として電動モータ20側とは反対側には、電動モータ20の回転を制御する演算部66(図4参照)が搭載された制御基板60が配置されている。制御基板60には、演算部66の他に、FET等のスイッチング素子を有する駆動部61や、電源コード63の一端部が電気的に接続された電源部62等が搭載されている。ここで、電源部62は、電動モータ20に駆動電流を供給するものである。なお、制御基板60には他の複数の電子部品も搭載されるが、これらの電子部品(図4参照)については後述する。
制御基板60は、回転軸23の軸方向から第2ケース部41bと対向するように配置され、一方の空気タンク11bに固定されている。制御基板60とクランクケース40との間には、冷却ファン64が配置されており、冷却ファン64が生成する気流(冷却風)により制御基板60が冷却される。冷却ファン64は、第2ケース部41bから突出された第1突出部23aの端部に固定され、これにより回転軸23と一体回転して冷却風を生成する。
クランクケース40の回転軸23と直交する方向に沿う両側には、第1シリンダ50aおよび第2シリンダ50bが固定されている。第1,第2シリンダ50a,50bは、回転軸23の回転方向に対して互いに180度異なる位置に配置(対向配置)されている。そして、第1シリンダ50aの内部には、第1ピストン51aが往復動自在に収容され、第2シリンダ50bの内部には、第2ピストン51bが往復動自在に収容されている。すなわち、本実施の形態に係る空気圧縮機10は、レシプロ型の空気圧縮機となっている。
回転軸23の回転運動を第1ピストン51aの往復運動に変換するために、第1ピストン51aには、第1コネクティングロッド52aの一端がピン結合され、第1コネクティングロッド52aの他端は、第1突出部23aに装着された偏心カムに回転自在に結合されている。すなわち、第1コネクティングロッド52aは、クランクケース40と第1シリンダ50aとの間に跨がり、第1突出部23aと第1ピストン51aとを連結している。
また、回転軸23の回転運動を第2ピストン51bの往復運動に変換するために、第2ピストン51bには、第2コネクティングロッド52bの一端がピン結合され、第2コネクティングロッド52bの他端は、第1突出部23aに装着された他の偏心カムに回転自在に結合されている。すなわち、第2コネクティングロッド52bは、クランクケース40と第2シリンダ50bとの間に跨がり、第1突出部23aと第2ピストン51bとを連結している。
そして、電動モータ20を駆動することで回転軸23が回転され、回転軸23の回転運動が、一対の偏心カムおよび第1,第2コネクティングロッド52a,52bからなる運動変換機構により、第1,第2ピストン51a,51bの第1,第2シリンダ50a,50b内での往復運動に変換される。
ここで、一対の偏心カムに設けられたそれぞれのカム山(図示せず)は、第1突出部23aの径方向外側でかつ同じ向きに突出している。つまり、図2に示す状態のもとで、それぞれのカム山は図中左側に突出している。これにより、図2に示すように、第1ピストン51aが第1シリンダ50aの上室を圧縮する方向に移動した場合に、第2ピストン51bは第2シリンダ50bの上室を膨張させる方向に移動する。これとは逆に、第2ピストン51bが第2シリンダ50bの上室を圧縮する方向に移動した場合に、第1ピストン51aは第1シリンダ50aの上室を膨張させる方向に移動する。なお、各シリンダ50a,50bの上室とは、各シリンダ50a,50b内における各ピストン52a,52bの各コネクティングロッド52a,52b側とは反対側の空間のことである。
各シリンダ50a,50bのそれぞれに設けられたシリンダヘッド53a,53bの内側には、バッファ室54a,54bがそれぞれ設けられている。また、各シリンダ50a,50bの上室と各バッファ室54a,54bとの間には、それぞれ逆止弁が設けられている。そして、第1ピストン51aが第1シリンダ50aの上室を圧縮する方向に移動して、上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第1シリンダ50aの上室とバッファ室54aとの間にある逆止弁が開かれる。すると、第1ピストン51aによって圧縮された空気は、バッファ室54aと第2シリンダ50bとを連通する第1配管55を介して、第2シリンダ50bの上室に圧送される。なお、本実施の形態における第1配管55は、金属製のパイプとなっている。
その後、第2ピストン51bが第2シリンダ50bの上室を圧縮する方向に移動して、上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第2シリンダ50bの上室とバッファ室54bとの間にある逆止弁が開かれる。すると、第2ピストン51bによって圧縮された空気は、バッファ室54bと他方の空気タンク11aとを連通する第2配管(図示せず)を介して、他方の空気タンク11aに圧送されて貯留される。
なお、一対の空気タンク11a,11bは、第3配管56を介して互いに連通している。これにより、一対の空気タンク11a,11bの内部圧力は同じ圧力に保たれる。なお、本実施の形態における第2配管および第3配管56は、金属製のパイプとなっている。
ここで、図2に示すように、第1シリンダ50aの上室には外気が導入される。すなわち、第1ピストン51aは外気を圧縮し、第2ピストン51bは、第1ピストン51aによって圧縮された外気(空気)をさらに圧縮する。換言すれば、第1ピストン51aは1段目の低圧用のピストンであり、第2ピストン51bは2段目の高圧用のピストンである。また、第1シリンダ50aは1段目の低圧用のシリンダであり、第2シリンダ50bは2段目の高圧用のシリンダである。このように、本実施の形態に係る空気圧縮機10は、空気を2段階で圧縮するものである。具体的には、第1ピストン51aにより1.0[Mpa]前後の圧縮空気を生成し、第2ピストン51bにより4.0〜4.5[MPa]程度の圧縮空気を生成する。
図1に示すように、一対の空気タンク11a,11bの端部の上方側には、圧縮空気の取り出し口であるカプラ16a,16bが設けられている。さらに、各空気タンク11a,11bとカプラ16a,16bとの間には、取り出される圧縮空気の圧力を調節する減圧弁17a,17bがそれぞれ設けられている。これらの減圧弁17a,17bによって調節された圧縮空気の圧力は、各減圧弁17a,17bの近傍にそれぞれ設置された圧力計18a,18bにより計測されて表示される。
また、図2に示すように、他方の空気タンク11aには、一対の空気タンク11a,11b内の圧力が所定圧力よりも高くなると自動的に開く安全弁19aが設けられている。これに対し、一方の空気タンク11bにはドレン装置19bが設けられており、このドレン装置19bが操作されると、各空気タンク11a,11b内の圧縮空気および水分が排出される。
さらに、図1に示すように、カバー15の上面でかつ各減圧弁17a,17bの間には、操作パネル80が設けられている。この操作パネル80には、図3に示すように、作業者により操作される運転スイッチ81aおよびモードスイッチ81bや、空気圧縮機10の操作状態や作動状態等を表示する7つの第1表示部82a〜82g、さらには2つの7セグメントディスプレイから形成されて数字やアルファベット等を表示し得る第2表示部83が設けられている。
ここで、空気圧縮機10の運転中には、各ピストン51a,51bの駆動源である電動モータ20には負荷電流が生じる。よって、負荷電流に伴うジュール熱により電動モータ20の温度が上昇する。また、各ピストン51a,51bの圧縮工程で発生する圧縮熱により各シリンダ50a,50bや、各ピストン51a,52b自身の温度が上昇する。さらには、電動モータ20や各シリンダ50a,50bの温度上昇に伴い、これらと接しているクランクケース40の温度も上昇する。
そのため、図2に示すように、電動モータ20を中心としてクランクケース40側とは反対側には、冷却ファン57が設置されている。これにより、電動モータ20および圧縮機構30等が冷却されて、可動部分の早期摩耗等が抑制されて、空気圧縮機10の長寿命化が図れる。
冷却ファン57は、電動モータ20のロータ22から第1突出部23aが突出する方向とは逆方向に突出された回転軸23の第2突出部23bの端部に固定されている。すなわち、冷却ファン57は回転軸23と一体回転するようになっている。このように、本実施の形態においては、回転軸23の一方の端部に冷却ファン64が設けられ、回転軸23の他方の端部に冷却ファン57が設けられている。
図3に示すように、操作パネル80は、空気圧縮機10のカバー15(図1参照)の上面の形状に倣って略V字形状に形成されたパネル本体80aを備えている。パネル本体80aは、プラスチック等の樹脂材料により板状に形成され、一対の係合爪80bと、各係合爪80bがある側とは反対側に設けられたネジ固定部80cとを備えている。つまり、パネル本体80aは、1本の固定ネジのみによってカバー15に固定される。
パネル本体80aの裏面には、図3および図4に示すように、運転スイッチ81aおよびモードスイッチ81bと、7つの第1表示部82a〜82gと、第2表示部83とが電気的に接続された操作パネル用基板84が固定されている。そして、パネル本体80aの一部は透明とされ、これにより各第1表示部82a〜82gおよび第2表示部83の状態を外部から確認することができる。
なお、運転スイッチ81aは、空気圧縮機10の運転をオン/オフするメインスイッチであり、モードスイッチ81bは、空気圧縮機10の運転モード(通常モード/静音モード等)を切り替える切替スイッチである。ここで、図3における網掛け部分は、発光ダイオード(LED)が配置された部分であり、この網掛け部分が種々の色で点灯または点滅するようになっている。
図4に示すように、操作パネル用基板84には、制御基板60が電気的に接続されている。制御基板60には、電動モータ20に駆動電流を供給する駆動部61が搭載され、この駆動部61には複数のFET(図示せず)が設けられている。駆動部61には電源部62が接続され、この電源部62には電源コード63の一端部が接続されている。電源部62は、仮設電源等の交流電源65からの交流電力を直流電力に変換し、駆動部61やその他の電子部品に最適な電力を供給するようになっている。ここで、交流電源65からの交流電力は、コンセント65aに電源コード63の他端部に設けたプラグ63aを差し込むことで、電源部62に供給される。
制御基板60には、種々の入力信号等に基づいて種々の演算処理を実行する演算部(CPU)66が搭載されている。演算部66は電源部62からの電力により作動して、駆動部61に設けた複数のFETをスイッチング動作させる。これにより、電動モータ20に所定の大きさの駆動電流が供給されて、電動モータ20は所定の回転方向および回転数で回転駆動される。
また、演算部66と駆動部61との間には、モータ電流検出部67が設けられ、モータ電流検出部67は、電動モータ20に流れる駆動電流を検出して、その結果を演算部66に送出(フィードバック)するようになっている。これにより、演算部66は、例えば、電動モータ20に対する外部からの負荷状態を把握し、負荷が大きい場合等において、電動モータ20を焼損等から保護するように制御することができる。
電源部62と演算部66との間には、電源電流検出部68および電圧検出部69が設けられている。電源電流検出部68は、電源部62の電流を検出して、その結果を演算部66に送出するようになっている。また、電圧検出部69は、交流電源65から電源部62に入力された電圧(入力電圧)を検出して、その結果を演算部66に送出するようになっている。このように、演算部66は、仮設電源等の交流電源65から電源部62に入ってくる入力電圧の大きさ等の状態を、常時監視している。
ここで、電圧検出部69は、作業者により電源コード63のプラグ63aを交流電源65のコンセント65aに差し込んで、電源部62に対する外部電力の供給により、自動的に交流電源65から電源部62に入ってくる入力電圧を検出するようになっている。そして、自動的に検出された入力電圧の状態(電圧の大きさ等の情報)は演算部66に送出され、演算部66はこの情報に基づいて、各第1表示部82a〜82gのうちの少なくとも1つを点灯または点滅させて、入力電圧の状態を作業者(外部)に報知(表示)する。つまり、7つの第1表示部82a〜82gのうちの少なくとも1つは、本発明における電圧表示部を構成しており、この電圧表示部は、電圧検出部69により検出された入力電圧の状態を、プラグ63aのコンセント65aへの差し込みにより自動的に表示するようになっている。なお、電圧検出部69では、電源部62に入ってくる電圧の大きさ(大小値)を検出させるに限らず、電圧波形の変化を検出させるようにしても良い。
演算部66には、EEPROM(不揮発性メモリ)70が接続されている。EEPROM70には、空気圧縮機10の運転ログデータ(運転モードの変更履歴や電動モータ20の回転数履歴等)が記録される。そして、空気圧縮機10のメンテナンス時等において、EEPROM70から運転ログデータを読み出すことで、消耗部品の交換等を行うことができる。
また、演算部66には、電動モータ20を形成するロータ22(図2参照)の回転位置を検出する位置センサ24が接続されている。これにより演算部66は、位置センサ24からの検出値(ロータ22の位置信号、つまりフィードバック信号)に応じて、駆動部61を最適なタイミングで動作させて、電動モータ20を効率良く回転駆動させることができる。
さらに、演算部66には、2つの空気タンク11a,11bの内部圧力を検出する圧力センサ71が接続されている。圧力センサ71は、図2には図示されていないが、例えば、第3配管56の途中に設けられる。これにより、第3配管56を介して互いに同じ圧力とされた各空気タンク11a,11b内の圧力を検出することができる。そして、演算部66は、圧力センサ71からの検出値(各空気タンク11a,11b内の圧力信号)の大きさに基づいて、電動モータ20の回転駆動を停止させたり再起動(駆動)させたりする。すなわち、演算部66は、本発明におけるモータ制御部を構成している。
演算部66の内部には、しきい値格納部66aが設けられ、当該しきい値格納部66aには、図8に示すような、圧力センサ71からの検出値と比較される第1圧力設定値P1,第2圧力設定値P2,第3圧力設定値P3および第4圧力設定値P4が予め格納されている。
ここで、第1圧力設定値P1は、例えば4.35[Mpa]とされ、第2圧力設定値P2は、例えば3.50[Mpa]とされる。これらの第1圧力設定値P1および第2圧力設定値P2は、各空気タンク11a,11b内の圧力を「高圧側」とする設定圧範囲(A)を形成する。また、第3圧力設定値P3は、例えば3.20[Mpa]とされ、第4圧力設定値P4は、例えば2.30[Mpa]とされる。これらの第3圧力設定値P3および第4圧力設定値P4は、各空気タンク11a,11b内の圧力を「低圧側」とする設定圧範囲(B)を形成する。すなわち、各圧力設定値P1〜P4の大小関係は、P1>P2>P3>P4となっている。ただし、各圧力設定値P1〜P4の大小関係は、上述に限らず、設定圧範囲(A)と設定圧範囲(B)とがそれぞれ一部重畳するような関係であっても良い。具体的には、P1>P3>P2>P4の関係となるようにしても良い。
そして、演算部66は、電圧検出部69により検出された入力電圧の状態が「正常電圧(第1電圧:例えばAC100〜81Vの範囲)」および「駆動可能電圧(第2電圧:例えばAC80〜71Vの範囲)」であるときに、各空気タンク11a,11b内の圧力を「高圧側」とすべく、各空気タンク11a,11b内の圧力を設定圧範囲(A)に収めるよう電動モータ20を回転駆動させる。つまり、第1圧力設定値P1は、正常電圧時および駆動可能電圧時の電動モータ20を停止させる停止圧力値であって、第2圧力設定値P2は、正常電圧時および駆動可能電圧時の電動モータ20を再起動させる再起動圧力値である。なお、空気圧縮機10が正常に運転できる「正常電圧」は、AC110Vからであっても良い。
これに対し、演算部66は、電圧検出部69により検出された入力電圧の状態が「駆動困難電圧(第3電圧:例えばAC70〜65Vの範囲)」であるときに、各空気タンク11a,11b内の圧力を「低圧側」とすべく、各空気タンク11a,11b内の圧力を設定圧範囲(B)(図8の網掛け部分)に収めるよう電動モータ20を回転駆動させる。つまり、第3圧力設定値P3は、駆動困難電圧(低電圧)時の電動モータ20を停止させる停止圧力値であって、第4圧力設定値P4は、駆動困難電圧(低電圧)時の電動モータ20を再起動させる再起動圧力値である。
これにより、入力電圧の状態が低電圧である「駆動困難電圧」の状態であって、電動モータ20の回転数が通常よりも低下するような場合において、電動モータ20の運転時間が長くなるのを抑えて、空気圧縮機10の冷却性能が低下するのを防止できる。この場合、各空気タンク11a,11b内の圧力が設定圧範囲(B)となって低くなっているが、空気工具をある程度は継続して使用することが可能である。したがって、作業効率が大幅に低下するようなことは無い。
図4に示すように、演算部66の内部には、タイマー部66bが設けられている。このタイマー部66bは、入力電圧が「駆動困難電圧」の状態の時に、電動モータ20の継続した回転駆動に規制を加えるものである。具体的には、上述したように、空気圧縮機10を低電圧の環境で継続して運転すると、空気圧縮機10の寿命低下を招く。そのため、入力電圧が「駆動困難電圧」の状態の時に、タイマー部66bがカウントを開始(作動)して、これにより演算部66は、電動モータ20の駆動時間を所定時間以内(例えば60秒以内)に制限する。すなわち、演算部66は、入力電圧が「駆動困難電圧」の状態の時に、駆動時間制限制御を行う。よって、空気圧縮機10の過熱を防止して、作動不能に陥ったり寿命が低下したりすることが防止される。
そして、演算部66は、上述のような駆動時間制限制御の実行中においては、7つの第1表示部82a〜82gのうちの少なくとも1つを点灯または点滅させて、駆動時間が経過するにしたがって、電圧表示部(第1表示部82a〜82g)の表示内容(報知内容)を変化させる処理を行う。この処理内容については後で詳述する。
なお、図4に示すように、演算部66には、運転スイッチ81aおよびモードスイッチ81bや、7つの第1表示部82a〜82g、さらには第2表示部83が、それぞれ電気的に接続されている。これにより、演算部66は、作業者による運転スイッチ81aおよびモードスイッチ81bの操作に応じて電動モータ20の回転駆動を制御し、空気圧縮機10自身の状態を第1表示部82a〜82gおよび第2表示部83に表示させる。
次に、以上のように形成された空気圧縮機10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
図5は空気圧縮機の制御内容を示す第1のフローチャート図を、図6は空気圧縮機の制御内容を示す第2のフローチャート図を、図7は空気圧縮機の制御内容を示す第3のフローチャート図を、図8は空気圧縮機の制御内容を示すタイミングチャート図をそれぞれ示している。
図5に示すように、まず、作業者が電源コード63のプラグ63aを交流電源65のコンセント65aに差し込むことで、これにより空気圧縮機10の制御がスタートする(ステップS1)。このとき、空気圧縮機10は運転状態にはならず、電動モータ20の回転駆動は停止された状態となっている。
続くステップS2では、演算部66が、交流電源65から電源部62に入力された入力電圧がAC100〜81Vの範囲(正常電圧)にあるか否かを判断する。ステップS2において、入力電圧がAC100〜81Vの範囲である(yes)と判断すると、ステップS3に進む。ステップS3では、7つの第1表示部82a〜82gのうちの第1表示部(LED)82aを緑色に点灯させて、その後、図6に示すステップS10に進む。これにより、作業者は、第1表示部82aを目視することで、空気圧縮機10を運転するのに「十分な大きさの正常電圧」であることを認識することができる。
ステップS2において、入力電圧がAC100〜81Vの範囲(正常電圧)よりも小さい(no)と判断すると、ステップS4に進む。ステップS4では、演算部66が、入力電圧がAC80〜71Vの範囲(駆動可能電圧)にあるか否かを判断する。ここで、駆動可能電圧は、空気圧縮機10の運転効率が正常電圧の時に比べて低下するが、空気圧縮機10を略正常に運転できる電圧のことである。ステップS4において、入力電圧がAC80〜71Vの範囲である(yes)と判断すると、ステップS5に進む。ステップS5では、第1表示部82aを黄色に点灯させて、その後、図6に示すステップS10に進む。これにより、作業者は、第1表示部82aを目視することで、正常電圧よりも低いが空気圧縮機10を運転できる「駆動可能電圧」であることを認識することができる。そして、入力電圧が例えばAC80〜71Vの範囲(駆動可能電圧)であることが空気圧縮機10に表示されれば、作業者は、空気圧縮機10に供給される電圧の降下を防ぐように他の工具の使用を控えたりして空気圧縮機10の運転を継続するようにするための措置をとることができる。
ステップS4において、入力電圧がAC80〜71Vの範囲(駆動可能電圧)よりも小さい(no)と判断すると、ステップS6に進む。ステップS6では、演算部66が、入力電圧がAC70〜65Vの範囲(駆動困難電圧)であるか否かを判断する。ステップS6において、入力電圧がAC70〜65Vの範囲である(yes)と判断すると、ステップS7に進む。ステップS7では、第1表示部82aを赤色でかつ1回/秒の周期で点滅(低速点滅)させて、その後、図6に示すステップS10に進む。これにより、作業者は、第1表示部82aを目視することで、空気圧縮機10を「制限付きで運転できる駆動困難電圧」であることを認識することができる。これに基づいて作業者は、空気圧縮機10を所定時間(短時間)内で使用するか、空気圧縮機10の使用環境を見直す(他の電動工具の使用を中止する等)ことができる。
ステップS6において、入力電圧がAC65Vよりも小さい(no)と判断すると、入力電圧が「駆動不能電圧」であるとしてステップS8に進む。ステップS8では、演算部66が、例えば7つの第1表示部82a〜82gの全てを赤色で高速で点滅させる等して、電動モータ20の運転が不可能である「低電圧エラー表示」をさせる。そして、ステップS9に進んで空気圧縮機10の制御が終了する。ここで、「低電圧エラー表示」としては、上述に限らず、第2表示部83に、入力電圧が駆動不能電圧であることを示すエラーコード(例えば「E1」等)を表示させるようにしても良い。
このように、本実施の形態に係る空気圧縮機10では、演算部66が、第1表示部82aに、電圧検出部69により検出された入力電圧の大きさに応じて予め決められた報知内容、つまり、図5のステップS3,ステップS5およびステップS7に示す報知内容を表示させるようになっている。
図6に示すように、ステップS10では、演算部66が、作業者により運転スイッチ81aがオン操作されたか否かを判断する。ステップS10において、作業者により運転スイッチ81aがオン操作された(yes)と判断すると、ステップS11に進む。一方、ステップS10において、運転スイッチ81aがオン操作されていない(no)と判断すると、ステップS10の処理が繰り返し行われる。
続くステップS11では、演算部66が、入力電圧がAC100〜81Vの範囲(正常電圧)にあるか否かを再度判断する。ステップS11において、入力電圧がAC100〜81Vの範囲である(yes)と判断すると、ステップS12に進む。ステップS12では、第1表示部(LED)82aを緑色に点灯させて、その後、ステップS15に進む。
ステップS11において、入力電圧がAC100〜81Vの範囲(正常電圧)よりも小さい(no)と判断すると、ステップS13に進む。ステップS13では、演算部66が、入力電圧がAC80〜71Vの範囲(駆動可能電圧)にあるか否かを再度判断する。ステップS13において、入力電圧がAC80〜71Vの範囲である(yes)と判断すると、ステップS14に進む。ステップS14では、第1表示部82aを黄色に点灯させて、その後、ステップS15に進む。一方、ステップS13において、入力電圧がAC80〜71Vの範囲(駆動可能電圧)よりも小さい(no)と判断すると、図7に示すステップS18に進む。
ステップS15では、演算部66により、一対の空気タンク11a,11b内の圧力が、図8に示す設定圧範囲(A)の範囲にあるか否かを判断する。ステップS15において、各空気タンク11a,11b内の圧力が設定圧範囲(A)の範囲である(yes)と判断すると、ステップS16に進む。続くステップS16では、演算部66は、電動モータ20の回転駆動を停止させた状態を維持し、その後、ステップS10に戻る。
これに対し、ステップS15において、各空気タンク11a,11b内の圧力が設定圧範囲(A)の範囲に無い(no)と判断すると、ステップS17に進む。続くステップS17では、演算部66は電動モータ20を回転駆動させ、その後、ステップS10に戻る。
ここで、ステップS15ないしステップS17における演算部66の動作について詳述する。図8の実線グラフに示すように、演算部66は、入力電圧が正常電圧(AC100〜71Vの範囲)および駆動可能電圧(AC80〜71Vの範囲)の時に、圧力センサ71の検出値が第1圧力設定値P1まで上昇すると電動モータ20を停止させる。これにより、各空気タンク11a,11b内の圧力が4.35[Mpa]以上になることが無い。そして、作業開始点TP1で空気工具の使用を開始すると、各空気タンク11a,11b内の圧縮空気が徐々に消費され、各空気タンク11a,11b内の圧力が低下していく。その後、圧力センサ71の検出値が第2圧力設定値P2まで低下すると、演算部66は電動モータ20を再起動(駆動)させる。これにより、入力電圧が正常電圧および駆動可能電圧の時には、各空気タンク11a,11b内の圧力が、設定圧範囲(A)の範囲内に収められる。
図7に示すように、ステップS18では、演算部66が、入力電圧がAC70〜65Vの範囲(駆動困難電圧)にあるか否かを再度判断する。ステップS18において、入力電圧がAC70〜65Vの範囲である(yes)と判断すると、ステップS19に進む。一方、ステップS18において、入力電圧がAC65Vよりも小さい(no)と判断すると、入力電圧が「駆動不能電圧」であるとしてステップS20に進む。ステップS20では、演算部66が図5のステップS8と同様の処理を行い、続くステップS21において空気圧縮機10の制御が終了する。
ステップS19では、演算部66が、入力電圧が低電圧である駆動困難電圧(AC70〜65Vの範囲)であることに基づいて、設定圧範囲(A)から設定圧範囲(B)に切り替える処理がなされているか否かを判断する。ステップS19において、既に設定圧範囲(B)に切り替える処理がなされている(yes)と判定すると、ステップS22に進む。一方、ステップS19において、未だ設定圧範囲(B)に切り替える処理がなされていない(no)と判定すると、ステップS23に進む。ステップS23では、演算部66により、設定圧範囲(A)から設定圧範囲(B)に切り替える処理が行われる。その後、図6のステップS15に戻り、各空気タンク11a,11b内の圧力が、設定圧範囲(B)の範囲内に収められるように制御される。
ステップS22では、演算部66により、電動モータ20が回転駆動中(運転中)であるか否かを判断する。ステップS22で電動モータ20運転中である(yes)と判定すると、ステップS24に進む。一方、ステップS22で電動モータ20運転中ではない(no)と判定すると、図6のステップS15に戻る。
ステップS24では、演算部66がタイマー部66bを作動させて、タイマー部66bによるカウントを開始させる。続くステップS25では、演算部66が、タイマー部66bによるカウント値TnがTa(30秒)よりも大きいか否かを判断する。ステップS25において、カウント値TnがTaよりも大きい(yes)と判定すると、ステップS26に進む。一方、ステップS25において、カウント値TnがTa以下である(no)と判定すると、図6のステップS15に戻る。
ステップS26では、今度は、演算部66は、タイマー部66bによるカウント値TnがTb(50秒)よりも大きいか否かを判断する。ステップS26において、カウント値TnがTbよりも大きい(yes)と判定すると、ステップS27に進む。一方、ステップS26において、カウント値TnがTb以下である(no)と判定すると、ステップS28に進む。
ステップS27では、第1表示部82aを赤色でかつ5回/秒の周期で点滅(高速点滅)させて、その後、ステップS29に進む。また、ステップS28では、第1表示部82aを赤色でかつ3回/秒の周期で点滅(中速点滅)させて、その後、ステップS29に進む。
ステップS29では、さらに、演算部66が、タイマー部66bによるカウント値Tnが所定時間Tc(60秒)に到達したか否かを判断する。ステップS29において、カウント値TnがTcに到達した(yes)と判定すると、ステップS30に進む。一方、ステップS29において、カウント値TnがTcに到達していない(no)と判定すると、ステップS26に戻る。そして、ステップS30では、演算部66が、電動モータ20の回転駆動を停止する。これにより、電動モータ20の継続した駆動時間が所定時間(60秒)以内とされ、駆動困難電圧時おける電動モータ20の長時間の回転駆動に起因した、空気圧縮機10全体の過熱が防止される。
このように、ステップS24ないしステップS30において、演算部66は、入力電圧が駆動困難電圧(AC70〜65Vの範囲)の時に、電動モータ20の駆動時間を所定時間(60秒)以内に制限する駆動時間制限制御を行う。そして、演算部66は、駆動時間制限制御が行われると、駆動時間が経過する(30秒経過/50秒経過)に伴い、第1表示部82aの表示内容(報知内容)を変化させ、作業者に空気圧縮機10の残りの運転時間を報知する。ただし、所定時間(60秒)や表示内容を変化させる時間(30秒経過/50秒経過)は、空気圧縮機10の仕様(耐熱性等)に応じて、任意に設定することができる。
ここで、演算部66による駆動時間制限制御の内容について詳述する。図8の破線グラフに示すように、演算部66は、入力電圧が駆動困難電圧(AC70〜65Vの範囲)の時に、圧力センサ71の検出値が第3圧力設定値P3まで上昇すると電動モータ20を停止させる。これにより、各空気タンク11a,11b内の圧力の上昇が抑えられて3.20[Mpa]以上になることが無い。そして、作業開始点TP2で空気工具の使用を開始すると、各空気タンク11a,11b内の圧縮空気が徐々に消費され、各空気タンク11a,11b内の圧力が低下していく。その後、圧力センサ71の検出値が第4圧力設定値P4まで低下すると、演算部66は電動モータ20を再起動(駆動)させる。これにより、入力電圧が駆動困難電圧の時には、各空気タンク11a,11b内の圧力が、設定圧範囲(B)の範囲内に収められる。
ただし、設定圧範囲(B)に設定されている時は、入力電圧が駆動困難電圧(AC70〜65Vの範囲)であるため、電動モータ20の回転駆動に、以下に示すような時間的制限が加えられる。具体的には、図8に示すように、時間t1の時点(作業開始点TP2)で空気工具の使用が開始され、時間t2の時点で各空気タンク11a,11b内の圧力が第4圧力設定値P4まで低下すると、演算部66は電動モータ20を再起動(駆動)させる。
その後、時間t3(ステップS25のTa)までの間が30秒であって、それまでの間は、演算部66により、図5のステップS7での状態が保持されて、第1表示部82aの表示内容は「赤色点滅1回/秒」で、これを作業者に報知し続ける。
その後、時間t3において30秒が経過して時間t4(ステップS26のTbで50秒)が経過するまでの間は、演算部66は、第1表示部82aの表示内容を「赤色点滅3回/秒」として、これを作業者に報知し続ける。
次いで、時間t4において50秒が経過して時間t5(ステップS29のTc(所定時間)で60秒)が経過するまでの間は、演算部66は、第1表示部82aの表示内容を「赤色点滅5回/秒」として、これを作業者に報知し続ける。
なお、演算部66により、第1表示部82aの表示内容(赤色点滅)とともに、残りの電動モータ20の駆動時間を第2表示部83にカウントダウン表示させることもできる。
以上詳述したように、本実施の形態に係る空気圧縮機10によれば、作業者により電源コード63のプラグ63aをコンセント65aに差し込んで、電源部62に外部から電力供給がなされると、電源部62に入力される入力電圧を電圧検出部69が自動的に検出し、かつ電圧検出部69により検出された入力電圧が、正常電圧(AC100〜81Vの範囲)よりも低くかつ駆動困難電圧(AC70〜65Vの範囲)よりも高い駆動可能電圧(AC80〜71Vの範囲)である状態を、第1表示部82aが外部に表示する。したがって、空気圧縮機10の運転前に電源環境を把握してそれを報知することができ、作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
また、本実施の形態における空気圧縮機10によれば、演算部66が、第1表示部82aに、電圧検出部69により検出された入力電圧の大きさに応じて予め決められた報知内容(図5のステップS3,ステップS5,ステップS7を参照)を表示させるので、演算部66の制御ロジックを複雑化させることが無い。
さらに、本実施の形態に係る空気圧縮機10によれば、第1表示部82aの報知内容を、色を異ならせた発光ダイオード(LED)の点灯や速度を異ならせた発光ダイオードの点滅としたので、作業者に対して空気圧縮機10の状態(入力電圧の状態)を、より目立たせることができる。
また、本実施の形態に係る空気圧縮機10によれば、入力電圧が、正常電圧および駆動可能電圧よりも低い駆動困難電圧の時に、各空気タンク11a,11b内の圧力を「低圧側」とすべく、各空気タンク11a,11b内の圧力を設定圧範囲(B)に収めるよう電動モータ20を回転駆動させる。これにより、空気工具をある程度は継続して使用することができ、ひいては作業効率を大幅に低下させずに済む。
さらに、本実施の形態に係る空気圧縮機10によれば、入力電圧が、正常電圧および駆動可能電圧よりも低い駆動困難電圧の時に、電動モータ20の駆動時間を所定時間(60秒)以内に制限する駆動時間制限制御を行うので、空気圧縮機10を継続して駆動させつつ、空気圧縮機10の過熱による焼損等を防止できる。
また、本実施の形態に係る空気圧縮機10によれば、演算部66は、駆動時間制限制御が行われると、駆動時間の経過に伴い第1表示部82aの表示内容を変化させるので、これに基づいて作業者は、空気圧縮機10を所定時間内で使用するか、空気圧縮機10の使用環境を見直すことが可能となる。この場合、演算部66により、第1表示部82a(発光ダイオード)の点滅周期を徐々に速くするので、作業者は、空気圧縮機10の残りの駆動時間をより容易に把握することができる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態に係る空気圧縮機10は、2組のシリンダおよびピストンを備えた多段式の空気圧縮機であったが、シリンダおよびピストンは1組でも3組以上でも良い。