JP2017065111A - 付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フィラメント断面において、内側層と外側層の2層を備え、前記内側層を構成する樹脂組成物と前記外側層を構成する樹脂組成物のメルトフローレート(ASTMD1238、融点における1.2kgの負荷下)の差が10(g/10分)以下であることを特徴とする付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメントを提案する。
【選択図】 なし
Description
従来、熱溶融方式の付加製造技術に用いるフィラメントとしては、例えばポリ乳酸やABSなどをマトリックス樹脂とした複合樹脂材料からなるものが使用されていた。
そこで、本発明者は、芯鞘構造を為すように内側層と外側層を備えたフィラメントを提案し、従来の材料設計では為されなかった付加製造技術により成形される造形品の機能向上と成形性の向上を両立せんとするものである。このような内側層と外側層を備えたフィラメントであれば、例えば内側層はより強度が高い材料構成とする一方、外側層は融着性に優れた材料構成としたり、或いは、内側層は安価な材料で構成し、外側層は高価な材料で構成したりするなど、材料設計の自由度が大幅に広がり、より高性能で且つ安価な製品を提供できる可能性が広がると考えられる。
しかも、前記内側層を構成する樹脂組成物と前記外側層を構成する樹脂組成物のメルトフローレートの差を30(g/10分)以下に規定することにより、内側層と外側層とが剥離せず好適に一体化することができる。
但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態の一例に係る付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント(「本フィラメント」と称する)は、フィラメント断面において、芯部を構成する内側層と、その外側を囲む外側層の2層を備えることを特徴とするものである。
また、本フィラメントの断面形状は任意形状であればよく、円状であっても、矩形状であっても、その他の形状でもよい。本フィラメントの断面形状が円状である場合、内側層と外側層は同心円状に形成されるのが好ましい。
上記内側層を構成する樹脂組成物(「内側層形成樹脂組成物」と称する)と上記外側層を構成する樹脂組成物(「外側層形成樹脂組成物」と称する)のメルトフローレート(「MFR」と称する。ASTMD1238、融点における1.2kgの負荷下)の差が30(g/10分)以下であるのが好ましい。
内側層形成樹脂組成物と外側層形成樹脂組成物のMFRの差が30(g/10分)以下であれば、内側層形成樹脂組成物と外側層形成樹脂組成物をノズルから同時に、例えば同心円状に押し出してフィラメント状に好適に成形することができ、しかも内側層と外側層とが剥離するのを防ぐことができる。
かかる観点から、内側層形成樹脂組成物と外側層形成樹脂組成物のMFR(ASTMD1238、融点における1.2kgの負荷下)の差は30(g/10分)以下であるのが好ましく、中でも20(g/10分)以下、その中でも10(g/10分)以下であるのがさらに好ましい。
内側層形成樹脂組成物と外側層形成樹脂組成物のMFRの平均値が2(g/10分)以上であれば、硬すぎて成形困難になる可能性がない一方、50(g/10分)以下であれば、逆に柔らか過ぎて成形困難になる可能性がないから好ましい。
よって、このような付加製造技術による成形性の観点から、内側層形成樹脂組成物と外側層形成樹脂組成物のMFRの平均値は2〜50(g/10分)、好ましくは3〜40(g/10分)、さらに5〜30(g/10分)であるのがさらに好ましい。
内側層形成樹脂組成物と外側層形成樹脂組成物のMFRの平均値の下限値が上記の範囲内であれば、ノズル先端から突出されるフィラメントが柔らかくなり、より複雑な構造の造形が可能であるから好ましい。他方、上限値が、上記の範囲内であれば、逆に過剰にMFRが高くならず、積層したフィラメントの形状が設計通り保たれるので好ましい。
よって、積層ピッチの点からは、内側層形成樹脂組成物と外側層形成樹脂組成物のMFRの平均値は2〜50(g/10分)、好ましくは3〜40(g/10分)、さらに5〜30(g/10分)であるのがさらに好ましい。
かかる観点から、各層形成樹脂組成物のマトリックス樹脂の分子量に関して言えば、例えば内側層及び上記外側層を構成する樹脂組成物の主成分樹脂がいずれも、粘度平均分子量18000〜28000であるポリカーボネート系樹脂である例や、重量平均分子量100000〜180000であるポリ乳酸である例を挙げることができる。
上記外側層は、マトリックス樹脂と共に、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、難燃材、無機フィラー及び有機フィラーからなる群のうちのいずれか一種又は二種以上を含有することができる。
外側層のマトリックス樹脂の主成分樹脂としては、例えばポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらのうちの一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
この際、主成分樹脂とは、外側層のマトリックス樹脂のうちの50質量%以上、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂を意味する。
外側層の顔料としては、例えばSiO2、TiO2、Al2O3、Cr2O3、ZrO2、Al2O3・SiO2、3Al2O3・2SiO2、ケイ酸ジルコニアなどを挙げることができ、これらのうちの一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
顔料の含有量が5質量%以上であれば、材料に充分量顔料が充填されることにより、充分な隠蔽性が得られるので好ましい。他方、60質量%以下であると、逆に添加剤の過剰な充填を防ぐことが出来る分、材料の熱融着性、流動性が保たれるので好ましい。
外側層の紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾオキサジン系化合物、2−シアノアクリル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物などを挙げることができ、これらのうちの一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
紫外線吸収剤の含有量が0.01質量%以上であれば、材料に充分量紫外線吸収剤が充填されることにより、充分な耐候性が得られるので好ましい。他方、50質量%以下であると、逆に添加剤の過剰な充填を防ぐことが出来る分、材料の熱融着性、流動性が保たれるので好ましい。
外側層の難燃材としては、例えばリン系化合物、リン・ハロゲン混合系化合物、塩素系化合物、ブロム系化合物、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、アンチモン、グアニジン系化合物、ジルコニウム系化合物、ホウ酸亜鉛、シリコーン系化合物、窒素系化合物、低融点ガラス系化合物、ナノコンポジット系化合物などを挙げることができ、これらのうちの一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
難燃剤の含有量が3質量%以上であれば、材料に充分量難燃剤が充填されることにより、充分な難燃性が得られるので好ましい。他方、20質量%以下であると、逆に添加剤の過剰な充填を防ぐことが出来る分、材料の流動性が保たれるので好ましい。
外側層の無機フィラーとしては、例えばガラスビーズ、ヒドロキシアパタイト、タルクなどを挙げることができ、これらのうちの一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
無機フィラーの含有量が5質量%以上であれば、材料に充分量無機フィラーが充填されることにより、充分な力学物性が得られるので好ましい。他方、60質量%以下であると、逆に無機フィラーの過剰な充填を防ぐことが出来る分、材料の熱融着性、流動性が保たれるので好ましい。
外側層の有機フィラーとしては、例えばカーボンナノチューブ、セルロースナノファイバーなどを挙げることができ、これらのうちの一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
有機フィラーの含有量が5質量%以上であれば、材料に充分量有機フィラーが充填されることにより、充分な力学物性が得られるので好ましい。他方、60質量%以下であると、逆に有機フィラーの過剰な充填を防ぐことが出来る分、材料の熱融着性、流動性が保たれるので好ましい。
上記内側層は、マトリックス樹脂と共に、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、難燃材、無機フィラー及び有機フィラーからなる群のうちのいずれか一種又は二種以上を含有することができる。
内側層のマトリックス樹脂の主成分樹脂としては、外側層のマトリックス樹脂の主成分樹脂と同様の樹脂を使用することができる。
また、内側層のマトリックス樹脂の主成分樹脂と、外側層のマトリックス樹脂の主成分樹脂とは、押出成形性や両者の剥離防止の観点から、同じ樹脂であるのが好ましい。
但し、内側層のマトリックス樹脂の主成分樹脂には、リサイクルした樹脂を使用することも可能である。リサイクル樹脂を使用することで、製造コストを低くすることができる。
内側層の顔料としては、外側層と同様の顔料を使用することができる。
この際、内側層における顔料の含有量は、本フィラメントを用いて形成される造形品の意匠性向上と製造コストのバランスの観点から、ゼロ、すなわち含まなくてもよいし、又は、外側層における顔料の含有量の5〜60質量%、中でも10質量%以上或いは40質量%以下、その中でも特に15質量%以上或いは25質量%以下であるがより一層好ましい。
内側層の紫外線吸収剤としては、外側層と同様の紫外線吸収剤を使用することができる。
この際、内側層における紫外線吸収剤の含有量は、本フィラメントを用いて形成される造形品の耐候性の向上と製造コストのバランスの観点から、ゼロ、すなわち含まなくてもよいし、又、外側層における紫外線吸収剤の含有量の0.01〜50質量%、中でも0.1質量%以上或いは30質量%以下、その中でも特に0.2質量%以上或いは5質量%以下であるがより一層好ましい。
内側層の難燃材としては、外側層と同様の難燃材を使用することができる。
この際、内側層における難燃材の含有量は、本フィラメントを用いて形成される造形品の難燃性の向上と、フィラメント間の融着性向上の観点から、本フィラメント全体が含有する難燃材の3〜20質量%を占めるのが好ましく、中でも4質量%以上或いは17質量%以下、その中でも特に5質量%以上或いは15質量%以下の割合で占めるのがより一層好ましい。
内側層の無機フィラーとしては、外側層と同様の無機フィラーを使用することができる。
この際、内側層における無機フィラーの含有量は、本フィラメントを用いて形成される造形品の力学特性向上と、フィラメント間の融着性向上の観点から、本フィラメント全体が含有する無機フィラーの5〜60質量%を占めるのが好ましく、中でも10質量%以上或いは55質量%以下、その中でも特に15質量%以上或いは50質量%以下の割合で占めるのがより一層好ましい。
内側層の有機フィラーとしては、外側層と同様の有機フィラーを使用することができる。
この際、内側層における有機フィラーの含有量は、本フィラメントを用いて形成される造形品の力学特性向上と、フィラメント間の融着性向上の観点から、本フィラメント全体が含有する有機フィラーの5〜60質量%を占めるのが好ましく、中でも10質量%以上或いは55質量%以下、その中でも特に15質量%以上或いは50質量%以下の割合で占めるのがより一層好ましい。
ここで、内側層及び外側層の好適な組成例を紹介する。
一例として、外側層は、マトリックス樹脂と共に、マトリックス樹脂100質量部に対して15〜25質量部の顔料、0.2〜5質量部の紫外線吸収剤、5〜40質量部の無機フィラーからなり、
他方の内側層は、マトリックス樹脂と共に、マトリックス樹脂100質量部に対して5〜15質量部の難燃材、15〜50質量部の無機フィラーからなる例を挙げることができる。
他方の内側層は、マトリックス樹脂と共に、マトリックス樹脂100質量部に対して5〜15質量部の難燃材、15〜50質量部の有機フィラーからなる例を挙げることができる。
他方の内側層は、マトリックス樹脂と共に、マトリックス樹脂100質量部に対して5〜15質量部の難燃材、15〜35質量部の無機フィラー及び15〜35質量部の有機フィラーからなる例を挙げることができる。
さらにまた、上記内側層及び外側層ともに、前記熱可塑性樹脂と共に有機フィラー又は無機フィラーを含有し、且つ、上記外側層における有機フィラー又は無機フィラーそれぞれの含有量は、上記内側層における有機フィラー又は無機フィラーそれぞれの含有量の1〜10倍である例を挙げることができる。
内側層の断面積は、目的に応じて、本フィラメントの全断面積の5〜95%であるのが好ましい。
内側層の断面積は、内側層への添加剤充填による物性向上、または内側層への添加剤未充填によるコスト削減の観点から、外側層の断面積よりも大きいことが好ましい。
他方、外側層の厚さは0.05mm〜0.5mmであるのが好ましく、中でも0.07mm以上或いは0.3mm以下、その中でも0.1mm以上或いは0.2mm以下であるのがさらに好ましい。
本フィラメントの製造方法の一例について説明する。但し、本フィラメントの製造方法が次に説明する製造方法に限定されるものではない。
成形温度すなわち上記押出機のシリンダー温度は、マトリックス樹脂の融点付近で、且つ溶融した芯材および鞘材が各々混合しない範囲内で成形するのが好ましい。
上記範囲内で成形することにより、マトリックス樹脂中に添加剤が充分に高分散されるとともに、溶融した芯材および鞘材が各々混合せず、内側層と外側層のそれぞれに要求される機能を発揮することができる。
本フィラメントは、付加製造技術(Additive Manufacturing Technology1)所謂3Dプリンタ、特に熱溶融方式の付加製造技術の成形材料として好適に用いることできる。
また、本フィラメントを集束して用いることも出来る。
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
Claims (8)
- フィラメント断面において、芯部を構成する内側層と、その外側を囲む外側層の2層を備え、前記内側層を構成する樹脂組成物と前記外側層を構成する樹脂組成物のメルトフローレート(ASTMD1238、融点における1.2kgの負荷下)の差が30(g/10分)以下であることを特徴とする付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。
- 上記内側層の断面積は、上記外側層の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。
- 上記内側層は、熱可塑性樹脂と共に、顔料、紫外線吸収剤、難燃材、有機フィラー及び無機フィラーからなる群のうちのいずれか一種又は二種以上を含有し、
上記外側層は、熱可塑性樹脂と共に、顔料、紫外線吸収剤、難燃材、有機フィラー及び無機フィラーからなる群のうちのいずれか一種又は二種以上を含有し、且つ、
上記内側層における顔料、紫外線吸収剤それぞれの含有量は、上記外側層における顔料、紫外線吸収剤それぞれの含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1又は2に記載の付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。 - 上記内側層は、熱可塑性樹脂と共に、顔料、紫外線吸収剤、難燃材、有機フィラー及び無機フィラーからなる群のうちのいずれか一種又は二種以上を含有し、
上記外側層は、熱可塑性樹脂と共に、顔料、紫外線吸収剤、難燃材、有機フィラー及び無機フィラーからなる群のうちのいずれか一種又は二種以上を含有し、且つ、
上記外側層における難燃材、有機フィラー、無機フィラーそれぞれの含有量は、上記内側層における難燃材、有機フィラー、無機フィラーそれぞれの含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1又は2に記載の付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。 - 直径が0.5mm以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。
- 上記内側層を構成する樹脂組成物と上記外側層を構成する樹脂組成物のメルトフローレート(ASTMD1238、融点における1.2kgの負荷下)の平均値が2〜50(g/10分)であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載された付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。
- 上記内側層及び上記外側層を構成する樹脂組成物の主成分樹脂がいずれも、粘度平均分子量18000〜28000であるポリカーボネート系樹脂であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載された付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。
- 熱溶融方式の付加製造技術に用いることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の付加製造技術用熱可塑性樹脂フィラメント。
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