図1には、ハイブリッド車両用動力伝達装置8を説明する骨子図が記載されている。この図1に示すように、本実施例のハイブリッド車両用動力伝達装置8(以下、「動力伝達装置8」という。)は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース14(以下、「ケース14」という)内において共通の軸心上に配設された入力軸16と、その入力軸16に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパ(振動減衰装置)等を介して間接に連結された差動部18と、その差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路に伝達部材(伝動軸)20を介して直列に連結されている自動変速部22と、その自動変速部22に連結された出力軸24とを、直列に備えている。また、後述するように、自動変速部22には、電動アクチュエータ46と、電動アクチュエータ46によりパーキングロック位置と非パーキングロック位置とに切換可能なパーキングロック機構37と、ドライバの手動操作力によりパーキングロック機構37のパーキングロック位置を非パーキングロック位置へ切り換えるパーキングロック解除機構84、とを備えるパーキングロック装置40が設けられている。
本実施例の動力伝達装置8は、例えばハイブリッド車両(以下、「車両」という。)において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸16に連結された走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン26により発生させられた動力を差動部18および差動部18に直列に配置された自動変速部22により出力軸24へ伝達し、出力軸24から図示しない差動歯車装置およびその差動歯車装置と一対の駆動輪との間の図示しない車軸を介して一対の駆動輪へと伝達する。なお、本実施例の動力伝達装置8において、エンジン26と差動部18とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパ等を介する連結はこの直結に含まれる。また、動力伝達装置8はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部18は、第1電動機MG1と、前記入力軸16に入力されて前記エンジン26の出力を機械的に分配する機械的機構であってそのエンジン26の出力を第1電動機MG1及び伝達部材20に分配する差動機構としての動力分配装置28と、伝達部材20と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機MG2とを、備えている。本実施例の差動部18に備えられた第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、三相コイルが巻回された固定子と永久磁石が備えられた回転子から成る3相交流同期モータから構成されており、何れも発動機及び発電機として機能する所謂モータジェネレータとして機能し、本発明の駆動源としても機能する。斯かる構成により、差動部18は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を介して運転状態が制御されることにより、入力回転速度(入力軸16の回転速度)と出力回転速度(伝達部材20の回転速度)の差動状態が制御される電気式無段変速部として機能する。
動力分配装置28は、シングルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。この遊星歯車装置は、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転及び公転可能に支持するキャリアCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素(要素)として備えており、キャリアCA0は入力軸16すなわちエンジン26に連結され、サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は伝達部材20に連結されている。また、エンジン26が連結された入力軸16は、ブレーキB0を介して非回転部材であるケース14に選択的に連結される。また、エンジン26により回転駆動されて作動油を吐出し、エンジン26の停止により油圧制御回路への作動油の供給を停止する、機械式油圧ポンプ30が入力軸16に連結されている。
自動変速部22は、差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路にシングルピニオン型の遊星歯車装置32、遊星歯車装置34を主体として構成され、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。遊星歯車装置32、34は、それぞれサンギヤS1、S2、遊星歯車P1、P2、それら遊星歯車P1、P2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、CA2、遊星歯車P1、P2を介してサンギヤS1、S2と噛み合うリングギヤR1、R2を備えている。
また、自動変速部22では、サンギヤS1がブレーキB1を介してケース14に選択的に連結されるようになっている。また、キャリアCA1とリングギヤR2とが一体的に連結され、第2ブレーキB2を介してケース14に選択的に連結されるようになっていると共に、一方向クラッチF1を介してそのケース14に対する一方向の回転が許容されつつ逆方向の回転が阻止されるようになっている。また、サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、一体的に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2が第2クラッチC2を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、リングギヤR1とキャリアCA2とが一体的に連結されると共に出力軸24に連結されている。また、図1には図示しないが、出力軸24にはパーキングロック機構37のパーキングギヤ38が固定的に連結されている。
図2は、自動変速部22の変速段毎に用いられる油圧式摩擦係合装置の係合作動の組み合わせおよび第1電動機MG1および第2電動機MG2の両駆動状態を成立させるブレーキB0の係合作動を説明する係合表である。この図2に示されるように、自動変速部22においては、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段R(後進変速段)が成立させられる。自動変速部22は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の係合作動により機械的に変速段が決定される機械式変速部として機能する。自動変速部22は、たとえば第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2の全ての解放により、ニュートラル「N」状態とされて動力遮断状態とされる。差動部18は、ブレーキB0の係合により第1電動機MG1および第2電動機MG2の両方で一対の駆動輪を駆動可能な状態すなわち両駆動状態となり、車両は自動変速部22が動力伝達可能な状態となると、モータ走行となる。また、差動部18は、第1電動機MG1および第2電動機MG2が非作動とされると、ニュートラル「N」状態とされて動力伝達遮断状態とされる。
図3は、動力伝達装置8に備えられるパーキングロック装置40をケース14内において出力軸24の軸方向に視た断面図である。図4は、パーキングロック装置40のIV−IV視断面を示す断面図である。パーキングロック装置40のパーキングロック機構37は、動力伝達装置8に備えられ、シフト操作に応じて作動する電動アクチュエータ46により自動変速部22の出力軸24をロック状態と非ロック状態との間で切替える。パーキングロック機構37は、パーキングロック部39と、ロック機構部55とから構成され、ケース14内に設けられている。電動アクチュエータ46は、電動モータ48を含んでいる。電動モータ48は、ステータ41と、ロータ43と、ロータ43と一体的に回転するロータ軸47とを備えている。ロータ軸47は、ケース14に形成された穴49に挿入させられている。なお、図4において、パーキングギヤ38およびパーキングロックポール54の一部が点線で示されている。
パーキングロック部39は、図示しない駆動輪と作動的に連結されている出力軸24に固定されたパーキングギヤ38と、パーキングギヤ38と噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ38の回転をロックするパーキングロックポール54と、トーションスプリング51とを備えている。パーキングロックポール54は、パーキングギヤ38の谷部と係合する凸部53を有し、出力軸24の回転軸線と平行な中心線を有するピン57によりケース14に回動可能に設けられている。トーションスプリング51は、ケース14に固定されたブラケット59の凸部が挿入されたコイル部61と、そのコイル部61の巻き始め端側でありブラケット59の穴に係合された一方のアーム部63と、コイル部61の巻き終わり端側でありパーキングロックポール54に当接する他方のアーム部65とを有し、復元力によりパーキングロックポール54をパーキングギヤ38から離隔する方向へ付勢している。
ロック機構部55は、パーキングロックポール54と当接するテーパカム56に挿し通されてテーパカム56を一端部において支持するパーキングロッド58と、パーキングロッド58に設けられたコンプレッションスプリング60と、パーキングロッド58の他端部に回動可能に接続されて節度機構によりパーキングロック位置と非パーキングロック位置とに位置決めされるディテントレバー62と、ディテントレバー62の回転に節度を与えつつパーキングロック位置と非パーキングロック位置とのいずれかにディテントレバー62を保持するディテントスプリング66と、テーパカム56を案内するカムガイド69と、パーキングスリーブ80とを備えている。制御軸64は、電動モータ48のロータ軸47とケース14の穴49内で動力伝達可能に連結されている。ディテントレバー62は、制御軸64が挿通されるボス部70を備えており、電動モータ48によりボス部70周りすなわち制御軸64の回動軸線周りに回動させられる。ディテントレバー62は、ボス部70周りに第1レバー部71および第2レバー部73と、係合凹溝76とを有している。第2レバー部73と係合凹溝76とはボス部70を挟んでデョテントレバー62の長手方向の両端部にあたり、第1レバー部71は、ボス部70の車両下側に長手方向に対して略垂直に突出するように形成されている。パーキングロッド58は、その一端部が挿通させられることによりテーパカム56を支持する長手状の支持部75と、支持部75に連続して制御軸64方向に折れ曲がり、第1レバー部71に回動可能に連結される連結部77を有しており、ディテントレバー62の回動により支持部75がその軸心方向すなわち出力軸24の軸心方向に略平行な方向に移動可能に設けられている。また、パーキングロッド58は、テーパカム56の大径部の端面に当接して、テーパカム56をパーキングロックポール54の先端部下面に押し付けるように付勢するコンプレッションスプリング60を備えている。ディテントレバー62の係合凹溝76は、パーキングロック位置に対応するパーキング凹溝72と非パーキングロック位置に対応する非パーキング凹溝74とから構成される。ディテントスプリング66は、板バネであり、その基端部がケース14に固定され、その先端部に回転可能に支持された係合ローラ78をディテントレバー62のパーキング凹溝72または非パーキング凹溝74の溝底に係合するように付勢した状態で備えている。ディテントレバー62の第2レバー部73には、制御軸64の回動軸線まわりの周方向に円弧状の長穴81が、板厚方向に貫通されて形成されている。カムガイド69は、パーキングロッド58の軸方向の移動によりテーパカム56が出入り可能に、パーキングロッド58を周方向に取り囲むように筒状にケース14内に設けられている。パーキングスリーブ80は、ブラケット59に一体に設けられ、パーキングロッド58の軸方向の移動によりテーパカム56の外周面が摺動可能な凹湾曲面83を有している。
図3および図4では、パーキングロック機構37が非パーキングロック位置にある場合を表している。パーキングロックポール54は、パーキングロッド58の一端部に支持されているテーパカム56との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。例えば、図4の左方向にテーパカム56が移動させられ、パーキングロックポール54の先端部下面がテーパカム56の大径部から離れて小径部と当接する場合、パーキングロックポール54の先端部がトーションスプリング51により図3の鉛直下方に移動されるに伴って、パーキングロックポール54の凸部53とパーキングギヤ38との係合が外れ、パーキングロック機構37がパーキングロック位置から非パーキングロック位置に切換えられる(図3および図4)。一方、テーパカム56がその外周面が凹湾曲面83に摺動しつつ図4の右方向に移動させられてパーキングロックポール54の先端部下面を押圧すると、パーキングロックポール54の先端部がトーションスプリング51の付勢力に抗して図3の鉛直上方に移動されるに伴って、パーキングギヤ38にパーキングロックポール54の凸部53が係合されて、パーキングロック機構37が非パーキングロック位置から図示しないパーキングロック位置に切換えられる。パーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置にある場合、パーキングロックポール54によりパーキングギヤ38の回転が阻止され、出力軸24に作動的に連結された駆動輪の回転も同様に阻止される。
また、パーキングロッド58の支持部75の長手方向への移動は、制御軸64の回転位置すなわちディテントレバー62の回動位置に応じて調節される。ディテントレバー62は、制御軸64を介して電動モータ48のロータ軸47に作動的に連結されており、電動アクチュエータ46により制御軸64の一回動軸線まわりに回動されて、パーキングロック機構37のパーキングロック位置と非パーキングロック位置とを切り換える。ここで、パーキング凹溝72にディテントスプリング66の係合ローラ78が係合される制御軸64の回転位置すなわちディテントレバー62の回動位置が、パーキングロック機構37のパーキングロック位置、すなわちパーキングギヤ38とパーキングロックポール54の凸部53との係合位置に対応する。一方、非パーキング凹溝74に係合ローラ78が係合される制御軸64の回転位置すなわちディテントレバー62の回動位置は、パーキングロック機構37の非パーキングロック位置、すなわちパーキングギヤ38とパーキングロックポール54の凸部53との係合が外れる位置に対応する。
動力伝達装置8の自動変速部22には、たとえば電動モータ48の故障などにより、パーキングロック機構37をパーキングロック位置と非パーキングロック位置とに切替えができない場合などにおいて手動で操作される、パーキングロック機構37と機械的に連結され、パーキングロック機構37をパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り替えるパーキングロック解除機構84が備えられている。
図3および図4に示されるように、パーキングロック解除機構84は、金属素線をより合わせたケーブル本体を外装材により被覆した長手状の操作ケーブル86と、操作ケーブル86のケース14外部側の端部に設けられ、ドライバにより手動で操作される環状の把手88と、操作ケーブル86のケース14内部側の端部に取り付けられた制御軸64の回動軸線に平行な方向に長手状のピン90と、操作ケーブル86のケース14外部に配置された外側ストッパ92と、操作ケーブル86のケース14内部に配置された内側ストッパ94、とを備えている。操作ケーブル86は、制御軸64の回動軸線方向および支持部75の長手方向に垂直な方向であってケース14に対してその長手方向に移動可能に挿通させられている。また、操作ケーブル86の長手方向の移動範囲は、外側ストッパ92がケース14の外壁面に当接する下位置と内側ストッパ94がケース14の内壁面に当接する図4に示す上位置との間に規制されている。ピン90は、ディテントレバー62の第2レバー部73に形成された長穴81に挿通させられており、ピン90よりも外径の大きいリング部材が第2レバー部73を操作ケーブル86の端部との間で板厚方向に挟んだ状態で取り付けられて、ピン90が長穴81から抜け止めされている。このようにパーキングロック機構37に機械的に連結されたパーキングロック解除機構84において、操作ケーブル86を通じて伝達される手動操作力によりピン90は下位置から図4に示される上位置に移動させられる。
ピン90が下位置にある場合には、制御軸64が電動アクチュエータ46により上記パーキングロック位置と上記非パーキングロック位置との間で回動させられても、ピン90はディテントレバー62の回動に干渉しない。手動の操作力により把手88がケース14から離隔する方向に移動されると、操作ケーブル86を介して伝達された操作力が第2レバー部73に形成された長穴81の上端部内面に当接したピン90を介してディテントレバー62に伝達され、ピン90が上位置まで移動されるに伴い、ディテントレバー62が上記非パーキングロック位置に対応する回動位置まで回動させられる。これにより、図4に示されるように、パーキングロック機構37のパーキングロック位置が非パーキングロック位置に手動で切換えられる。
図5は、動力伝達装置8に好適に適用されるハイブリッド制御用コンピュータ96(HV−ECU96)およびシフト用コンピュータ98(SBW−ECU98)を説明する図である。ハイブリッド制御用コンピュータ96およびシフト用コンピュータ98は、CPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。ハイブリッド制御用コンピュータ96には、シフト操作装置においてパーキング位置(P位置)以外の非パーキング位置(N位置、D位置、R位置等)のいずれかへ切り換えるためのシフトレバーの操作位置(操作ポジション)を表すシフトレバー位置信号R/N/Dが、シフトレバーセンサ102から供給される。また、ハイブリッド制御用コンピュータ96には、Pスイッチ100のスイッチ操作に応じたPスイッチ信号Pが、供給される。ここで、P位置では、少なくとも自動変速部22の動力伝達経路が遮断され、且つパーキングロック機構37の切換位置が電動アクチュエータ46によってパーキングロック位置とされる。電動アクチュエータ46には、電動モータ48の相対角変位を計測する相対角センサとしてのエンコーダ104と、制御軸64に連結されてその絶対角を計測する絶対角センサとしてのシフトセンサ106が備えられている。シフトセンサ106は、非接触のホール式絶対角センサである。パーキングロック機構37がパーキングロック位置と非パーキングロック位置とのいずれの切換位置にあるかは、エンコーダ104により検出される電動モータ48の相対角変位と、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度とにより判定される。すなわち、エンコーダ104およびシフトセンサ106は、パーキングロック機構37の切換位置を検出する切換位置検出装置として機能する。シフト用コンピュータ98は、パーキングロック装置40に備えられ、ハイブリッド制御用コンピュータ96の指示により電動アクチュエータ46を駆動して、パーキングロック位置と非パーキングロック位置とに切換可能なパーキングロック機構37の作動を制御するパーキングロック装置の制御装置として機能する。シフト用コンピュータ98は、シフト位置指令信号としてのシフトレバー位置信号R/N/Dをハイブリッド制御用コンピュータ96より取得すると、パーキング位置である場合には、電動モータ48の回転角度(モータ角度)をエンコーダ104から取得しつつ、制御軸64を非パーキングロック位置(NotP位置)に対応する回動位置に回動させて、パーキングロック機構37を非パーキングロック位置に切り換える。また、シフト用コンピュータ98は、シフト位置指令信号としてのPスイッチ信号Pをハイブリッド制御用コンピュータ96より取得すると、電動モータ48を回転駆動させてパーキングロック位置(P位置)に対応する回転位置に制御軸64を回転駆動させることによりパーキングロック機構37をパーキングロック位置に切換える。また、パーキングロック解除機構84によりディテントレバー62の第2レバー部73へ入力される手動の操作力により、ディテントレバー62はパーキングロック位置に対応する回動位置から非パーキングロック位置(NotP位置)に対応する回動位置へ回動させられて、パーキングロック機構37の切換位置が手動でパーキングロック位置(P位置)から非パーキングロック位置(NotP位置)に切換えられる。第2レバー部73は、ディテントレバー62の一部であるとともに、手動パーキング解除レバー(手動P解除レバー)として機能する。
図6は、ハイブリッド制御用コンピュータ96、電動機制御用コンピュータ108、エンジン制御用コンピュータ110およびシフト用コンピュータ98のそれぞれの入出力信号の関係を説明する図である。図6において、ハイブリッド制御用コンピュータ96には、前述のシフトレバー位置信号R/N/D、Pスイッチ信号Pなどの他に、例えばアクセル開度センサにより検出された運転者による車両に対する要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Acc(%)を表す信号、エンジン回転速度センサにより検出されたエンジン26の回転速度であるエンジン回転速度Ne(rpm)を表す信号、吸入空気量センサにより検出されたエンジン26の吸入空気量Qを表す信号、スロットル開度センサにより検出された電子スロットル弁の開度であるスロットル開度θth(%)を表す信号、車速センサにより検出された車速Vを表す信号、出力軸回転速度センサにより検出された出力軸24の回転速度である出力軸回転速度Noutを表す信号、第1電動機回転速度センサにより検出された第1電動機回転速度NMG1およびその回転方向を表す信号、第2電動機回転速度センサにより検出された第2電動機回転速度NMG2およびその回転方向を表す信号、蓄電装置電圧センサにより検出される蓄電装置の電圧から判定される蓄電装置の充電残量(SOC)を表す信号、伝達部材回転速度センサにより検出された伝達部材20の回転速度N20を表す信号などがそれぞれ供給される。
また、ハイブリッド制御用コンピュータ96は、電動機制御用コンピュータ108(MG−ECU108)へ第1電動機MG1の出力トルクを制御するMG1トルク指令信号および第2電動機MG2の出力トルクを制御するMG2出力トルク指令信号を供給する。電動機制御用コンピュータ108は、インバータを用いて第1電動機MG1の電流量および第2電動機MG2の電流量を制御する。また、ハイブリッド制御用コンピュータ96は、エンジン制御用コンピュータ110(エンジンECU110)へエンジン出力トルク指令信号を供給する。エンジン制御用コンピュータ110は、たとえばエンジン26の吸気管に備えられた電子スロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータにスロットルアクチュエータ駆動信号を出力することによりスロットル開度θthを制御するとともに、エンジン26の点火時期を制御する点火信号を出力する。また、ハイブリッド制御用コンピュータ96は、シフト(シフトバイワイヤ:SBW)用コンピュータ98へシフト位置指令信号を供給する。また、シフト用コンピュータ98には、シフトセンサ106から制御軸64の回転角度が供給される。シフト用コンピュータ98は、上記シフト位置指令信号に基づき、電動アクチュエータ46にアクチュエータ駆動信号を供給する。また、ハイブリッド制御用コンピュータ96は、動力伝達装置8の油圧制御回路に油圧式摩擦係合装置を制御する油圧指令信号PbB0、PbC1、PbC2、PbB1、PbB2を供給する。
また、ハイブリッド制御用コンピュータ96は、自動変速部22の変速を行う変速制御手段として機能する。例えば、ハイブリッド制御用コンピュータ96は、車速Vと自動変速部22の出力トルクTOUT(或いはアクセル開度Acc等)とを変数とする2次元座標において、アップシフト線(実線)及びダウンシフト線(一点鎖線)を有する予め記憶された関係(変速線図、変速マップ)から、実際の車速V及びアクセル開度Acc等に対応する自動変速部22の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部22の変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部22の自動変速制御を実行する。
また、ハイブリッド制御用コンピュータ96は、エンジン26を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン26と第2電動機MG2との駆動力の配分や第1電動機MG1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部18の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機MG2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力(要求エンジン出力)PERを算出し、その目標エンジン出力PERが得られるエンジン回転数NEとエンジン26の出力トルク(エンジントルク)TEとなるようにエンジン26を制御すると共に第1電動機MG1および第2電動機MG2の出力乃至発電を制御する。
図7は、シフト用コンピュータ98の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。シフト用コンピュータ98は、シフトセンサ信号値判定部116、P壁当て制御実施部118、ディテントレバー回動角判定部120、手動P解除正常判定部122(異常判定禁止部122)、第1センサ異常判定部124および第2センサ異常判定部126を備えている。また、シフトセンサ信号値判定部116、P壁当て制御実施部118およびディテントレバー回動角判定部120は、操作判定部114を構成している。操作判定部114は、パーキングロック解除機構84の操作によってパーキングロック機構37が非パーキングロック位置(nP位置)へ切り換えられたか否かを判定する。
第2センサ異常判定部126は、電動モータ48へ指令したアクチュエータ駆動信号のパーキングロック機構37の切換位置と、シフトセンサ106により検出された制御軸64の回転角度から判定されるパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値とが不一致である場合にはシフトセンサ異常(故障)であると判定し、電動モータ48へ指令したアクチュエータ駆動信号のパーキングロック機構37の切換位置と、シフトセンサ信号値が示すパーキングロック機構37の切換位置とが一致する場合にはシフトセンサ異常ではないと判定する。たとえば、第2センサ異常判定部126は、電動アクチュエータ46へ指令したパーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置であり、シフトセンサ信号値が示すパーキングロック機構37の切換位置が非パーキングロック位置であり、両者が不一致である場合には、シフトセンサ106が異常であると判定する。
ところで、たとえば、車両の電源状態がイグニッションON前においてパーキングロック機構37がパーキングロック解除機構84によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられた場合には、イグニッションONされたとき、電動モータ48へ指令したアクチュエータ駆動信号のパーキングロック機構37の切換位置はパーキングロック位置であるにもかかわらず、シフトセンサ信号値が示すパーキングロック機構37の切換位置は非パーキングロック位置であることから、シフトセンサ106は正常に機能しているにもかかわらず、第2センサ異常判定部126によりシフトセンサ異常と判定される。そのため、シフト用コンピュータ98は、パーキングロック解除機構84を介して手動の操作力によりパーキングロック機構37がパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切換えられる際に、シフトセンサ異常と誤って判定されることを防止する。
シフトセンサ信号値判定部116は、車両の電源状態がイグニッションOFFの非走行モードからイグニッションONの走行モードへ切換えられると、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度から判定されるパーキングロック機構37の切換位置が、パーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切換わったか否かを判定する。先ず、シフトセンサ信号値判定部116は、記憶された前回のイグニッションOFF時のパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値を参照し、前回イグニッションOFF時のパーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置であったかを確認する。前回イグニッションOFF時のパーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置である場合には、シフトセンサ信号値判定部116は、イグニッションON時のパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値が非パーキングロック位置であるかを判定する。ここで、シフトセンサ信号値は、パーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置あるいは非パーキングロック位置のいずれにあるかを示し、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度が所定の閾値よりも大きいか否かに基づいてその切換位置がいずれにあるかが判定される。制御軸64の回転角度が所定の閾値以下の場合、制御軸64の回転角度が非パーキングロック位置に相当するnP相当の回転角度であるとして、シフト用コンピュータ98によりパーキングロック機構37の切換位置が非パーキングロック位置と判定される。また、制御軸64の回転角度が所定の閾値よりも大きい場合、制御軸64の回転角度がパーキングロック位置に相当するP相当の回転角度であるとして、シフト用コンピュータ98によりパーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置と判定される。なお、前回イグニッションOFF時のパーキングロック機構37の切換位置は、シフトセンサ106により検出されたイグニッションOFF時の制御軸64の回転角度から判定され、シフトセンサ信号値としてシフト用コンピュータ98に記憶されている。シフトセンサ信号値判定部116は、前回イグニッションOFF時のパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値がパーキングロック位置であり、且つイグニッションON時のパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値が非パーキングロック位置である場合には、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度から判定されるパーキングロック機構37の切換位置が、前回イグニッションOFF時のパーキングロック位置からイグニッションON時の非パーキングロック位置へ切換わったと判定する。
シフトセンサ信号値判定部116により、パーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値がパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切換ったと判定された時点では、パーキングロック機構37がパーキングロック解除機構84によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切換えられたか、あるいは、パーキングロック解除機構84の操作は行われておらず、パーキングロック機構37の実際の切換位置がパーキングロック位置にあるにもかかわらずシフトセンサ106の異常(故障)によりシフトセンサ値が非パーキングロック位置と誤って判定されているかは、判明していない。以下のP壁当て制御実施部118およびディテントレバー回動角判定部120におけるパーキングロック機構37の電動アクチュエータ46によるパーキングロック位置への切換えにおいて、パーキングロック解除機構84が操作され、パーキングロック機構37が非パーキングロック位置へ切り換えられたか否かが判定される。
P壁当て制御実施部118は、パーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値がパーキングロック位置から非パーキングロック位置に切り換わったとシフトセンサ信号値判定部116により判定されると、P壁当て制御を実行することにより、電動アクチュエータ46によるパーキングロック機構37のパーキングロック位置への切換えを行う。P壁当て制御実施部118は、電動モータ48を駆動することによりパーキング凹溝72の非パーキング凹溝74とは反対側の内壁面(P壁)に係合ローラ78を押し当ててディテントレバー62をその回転が停止するまで回転させる。P壁当て制御開始時点でのパーキングロック機構37の実際の切換位置が非パーキングロック位置にある場合には、P壁当て制御によりディテントレバー62は、係合ローラ78が非パーキング凹溝74に係合する非パーキングロック位置に対応する回動位置から、係合ローラ78がパーキング凹溝72に係合するパーキングロック位置に対応する回動位置を経て、係合ローラ78が上記P壁に押し当てられる回動位置まで回動させられる。そのため、P壁当て制御実施時のエンコーダ104により計測されるディテントレバー62の相対角変位は、ディテントレバー62の非パーキングロック位置に対応する回動角度(nP角)とパーキングロック位置に対応する回動角度(P角)との差以上の値となる。
ディテントレバー回動角判定部120は、P壁当て制御実施時においてエンコーダ104によりエンコーダ変位角信号として計測される電動モータ48の相対角変位すなわちディテントレバー62の回動角の相対角変位が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、上記所定の閾値は、イグニッションON時のパーキングロック機構37の実際の切換位置が、非パーキングロック位置にあるかパーキングロック位置にあるかを判定するための判定値であり、ディテントレバー62の非パーキングロック位置に対応する回動角度とパーキングロック位置に対応する回動角度との差(nP角−P角)として予め設定されている。ディテントレバー回動角判定部120は、ディテントレバー62の相対角変位が上記所定の閾値以上の場合には、イグニッションON時のパーキングロック機構37の実際の切換位置が非パーキングロック位置であり、パーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値が、イグニッションOFF時のパーキングロック位置からイグニッションON時の非パーキングロック位置へ切り換わった場合において、パーキングロック解除機構84の操作によってパーキングロック機構37が非パーキングロック位置に切り換えられたと判定する。一方、ディテントレバー回動角判定部120は、ディテントレバー62の相対角変位が上記所定の閾値よりも小さい場合には、イグニッションON時のパーキングロック機構37の実際の切換位置がパーキングロック位置であり、パーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値が、イグニッションOFF時のパーキングロック位置からイグニッションON時の非パーキングロック位置へ切り換わった場合において、パーキングロック解除機構84が操作されなかったと判定する。
手動P解除正常判定部122(異常判定禁止部)は、パーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値がイグニッションOFF時のパーキングロック位置からイグニッションON時の非パーキングロック位置へ切り換わったとシフトセンサ信号値判定部116により判定されたときに、パーキングロック解除機構84の操作によってパーキングロック機構37が非パーキングロック位置に切り換えられたとディテントレバー回動角判定部120により判定された場合には、パーキングロック解除機構84の操作履歴(手動P解除履歴)を記憶するとともに、シフトセンサ106が正常に機能していると判定して、第2センサ異常判定部126によるシフトセンサ106の異常判定を禁止する。すなわち、手動P解除正常判定部122は、電動アクチュエータ46へ指令したパーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置であり、シフトセンサ106により検出された制御軸64の回転角度から判定されるパーキングロック機構37の切換位置が非パーキングロック位置であり、両者が不一致であることに基づく、シフトセンサ106の異常判定を禁止する異常判定禁止部として機能する。
第1センサ異常判定部124は、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度から判定され、パーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値がイグニションOFF時のパーキングロック位置からイグニッションON時の非パーキングロック位置へ切換えられたとシフトセンサ信号値判定部116により判定されたときに、電動アクチュエータ46によりパーキングロック機構37のパーキングロック位置への切換えが行われた際のディテントレバー62の回動角の相対角変位が前記所定の閾値未満であり、パーキングロック解除機構84が操作されなかったとディテントレバー回動角判定部120により判定された場合には、シフトセンサ106に異常があると判定する。第1センサ異常判定部124は、シフトセンサ異常のフラグをOFFからONに切換える。このシフトセンサ異常フラグのOFFからONへの切換わりにより、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度に基づくパーキングロック機構37の切換位置の判定が不能であるとされ、エンコーダ104により検出される電動モータ48の相対角変位による判定へ切換えられる。
図8は、シフト用コンピュータ98の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図9は、車両の電源状態がイグニッションOFF時にパーキングロック解除機構84が操作されてパーキングロック機構37の切換位置がパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切換えられた場合のシフト用コンピュータ98の制御作動の一例を説明するタイムチャートである。
図9において、車両の電源状態がイグニッションOFFからONに切換えられると(図9のt1時点)、シフトセンサ信号値判定部116の機能に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する。)S1において、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角から判定され、前回イグニッションOFF時のパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値がパーキングロック位置(P位置)であるか否かが判定される。S1の判定が肯定される場合には、シフトセンサ信号値判定部116の機能に対応するS2において、イグニッションON時のパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値が非パーキングロック位置であるか否かが判定される。S1あるいはS2の判定が否定される場合には、本フローチャートは終了させられる。図9において、記憶された前回イグニッションOFF時のパーキングロック機構37の切換位置を示すシフトセンサ信号値がパーキングロック位置(P位置)である。また、イグニッションOFFからONへの切換わり時(図9のt1時点)において、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度(マニュアルシャフト角)は所定の閾値以下であり、非パーキングロック位置(nP位置)相当の回転角度であることからシフトセンサ信号値は、非パーキングロック位置(nP位置)である。シフトセンサ信号値が前回イグニッションOFF時のパーキングロック位置から、イグニッションON時の非パーキングロック位置へ切り換わったS1およびS2の判定が肯定される場合には、パーキングロック解除機構84が操作されたか否かが判定される。先ず、P壁当て制御実施部118の機能に対応するS3において、P壁当て制御が実施されて、電動モータ48の駆動によりパーキングロック機構37の切換位置のパーキングロック位置への切換えが実行される。次に、ディテントレバー回動角判定部120の機能に対応するS4において、P壁当て制御実施時のエンコーダ104により検出されるディテントレバー62の回動角の相対角変位が、前記所定の閾値以上であるか否かが判定される。パーキングロック解除機構84が操作されたか否かを判定するためのP壁当て制御が開始されると(図9のt2時点)、電動アクチュエータ46の駆動によりディテントレバー62が、パーキングロック位置に対応する回動位置へ回動され、ディテントスプリング66の係合ローラ78がディテントレバー62のP壁に押し当てられるまで回動させられる。その際、イグニッションON前にパーキングロック解除機構84の解除操作により、パーキングロック機構37が非パーキングロック位置に切り換えられているため、エンコーダ104により検出されるディテントレバー62の相対角変位(エンコーダ変位角信号)がt2時点の0から大きくなり、所定の閾値以上となるt3時点において、イグニッションON時のパーキングロック機構37の実際の切換位置が非パーキングロック位置であり、イグニッションON前にパーキングロック解除機構84が操作されたと判定され、判定が終了される。なお、操作判定終了t3時点において、シフトセンサ106により検出される制御軸64の回転角度が所定の閾値よりも大きくなり、パーキングロック位置(P位置)相当の回転角度であるとしてシフトセンサ信号値が非パーキングロック位置からパーキングロック位置へ切換えられる。このようにS4の判定が肯定される場合には、手動P解除正常判定部122の機能に対応するS5において、パーキングロック解除機構84の操作履歴(手動Pロック解除履歴)が記憶されるとともに、第2センサ異常判定部126によるシフトセンサ106の異常判定が禁止される。S5実行後、本フローチャートは終了させられる。S4の判定が否定される場合には、第1センサ異常判定部124の機能に対応するS6において、シフトセンサ106に異常があると判定され、シフトセンサ異常フラグがOFFからONに切換えられる。S6実行後、本フローチャートは終了させられる。
上述のように、本実施例のシフト用コンピュータ98によれば、電動アクチュエータ46へ指令したパーキングロック機構37の切換位置とシフトセンサにより検出された制御軸64の回転角度から判定されるパーキングロック機構37の切換位置との不一致に基づくシフトセンサ106の異常判定を行う第2センサ異常判定部126と、シフトセンサ信号値判定部116、P壁当て制御実施部118およびディテントレバー回動角判定部120を含み、パーキングロック解除機構84が操作されたか否かを判定する操作判定部114と、操作判定部114によりパーキングロック解除機構84の操作によってパーキングロック機構37が非パーキングロック位置(nP位置)へ切り換えられたと判定された場合には、第2センサ異常判定部126によるシフトセンサ106の異常判定を禁止する手動P解除正常判定部122とを、含む。このため、イグニッションOFF時にパーキングロック解除機構84の操作によりパーキングロック機構37がパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切換えられる場合に、シフトセンサ106が正常に機能しているにもかかわらず、シフトセンサ106の異常と誤って判定されることが防止される。
また、本実施例のシフト用コンピュータ98によれば、電動アクチュエータ46には、絶対角センサとしてのシフトセンサ106と相対角センサとしてのエンコーダ104とが備えられ、シフトセンサ106にて検出される制御軸64の回転角度から判定されるシフトセンサ信号値が示すパーキングロック機構37の切換位置が、イグニッションOFF時のパーキングロック位置から、イグニッションON時の非パーキングロック位置へと切り換わったとシフトセンサ信号値判定部116により判定された場合に、電動アクチュエータ46によりパーキングロック機構37のパーキングロック位置への切換えがP壁当て制御実施部118により行われたときの、エンコーダ104によるディテントレバー62の相対角変位が所定の閾値以上の場合に、パーキングロック解除機構84の操作によってパーキングロック機構37が非パーキングロック位置に切り換えられたとディテントレバー回動角判定部120により判定される。このため、パーキングロック解除機構84が操作されたか否かの操作判定をエンコーダ104で実行できるため、パーキングロック解除機構84が操作されたか否かの操作判定のための専用の部品を追加しなくてもよい。
また、本実施例のシフト用コンピュータ98によれば、電動アクチュエータ46によりパーキングロック機構37のパーキングロック位置への切換えが行われたときのエンコーダ104により検出されるディテントレバー62の相対角変位が前記所定の閾値未満の場合に、第1センサ異常判定部124は、シフトセンサ106の異常判定をする。このため、エンコーダ104により検出されるディテントレバー62の相対角変位が前記所定の閾値未満であり、パーキングロック解除機構84の操作がされなかったと判定され、パーキングロック機構37の切換位置が実際にはパーキングロック位置にあるにもかかわらず、シフトセンサ106により検出される切換位置が非パーキングロック位置である場合に、シフトセンサ106の異常と判定される。
以上、本発明を表及び図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
たとえば、前述の実施例のシフト用コンピュータ98によれば、相対角センサとしてのエンコーダ104により検出されるP壁当て制御実施時のディテントレバー62の相対角変位が前記所定の閾値以上である場合には、パーキングロック解除機構84の操作がされたと判定して、電動アクチュエータ46に備えられた絶対角センサとしてのシフトセンサ106の異常判定を禁止するものであったが、これに限定されるものではなく、たとえば、エンコーダ104に代えて、パーキングロック解除機構84に接点スイッチが設けられて、接点スイッチによりパーキングロック解除機構84が操作されたか否かが判定されてもよい。
また、前述の実施例の動力伝達装置8を備えた車両によれば、第1電動機MG1および第2電動機MG2の2つの電動機を有する差動部18と自動変速部22とを備えるものであったが、シフト操作に応じたシフト用コンピュータ98からの電動アクチュエータ46への指令によりパーキングロック機構37の切換位置が切換えられ、パーキングロック解除機構84により非パーキングロック位置へ切換えられるものであれば、これに限定されるものではない。たとえば、駆動源として1つの電動機を含み、動力伝達機構として自動変速機を備える車両であっても、パーキングロック解除機構84の操作がされたと判定された場合には、電動アクチュエータ46へ指令した切換位置とシフトセンサ106により検出された制御軸64の回転角度から判定される切換位置との不一致に基づくシフトセンサ106の異常判定を禁止すればよい。
また、前述の実施例のシフト用コンピュータ98によれば、パーキングロック解除機構84の操作がされたと判定された場合には、電動アクチュエータ46に備えられたシフトセンサ106の異常判定を禁止するものであったが、これに限定されるものではなく、たとえば、電動アクチュエータ46へ指令したパーキングロック機構37の切換位置と、エンコーダ104により検出されるディテントレバー62の相対角変位に基づくパーキングロック機構37の切換位置とが不一致である場合に、たとえば接点スイッチによりパーキングロック解除機構84が操作されたと判定された場合には、相対角センサとしてのエンコーダ104の異常判定を禁止するようにしてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。