図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両10に備えられるハイブリッド車両用駆動装置12の構成を説明する骨子図である。この図1に示すように、本実施例のハイブリッド車両10(以下、「車両10」という。)に備えられるハイブリッド車両用駆動装置12(以下、「駆動装置12」という。)は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース14(以下、「ケース14」という)内において共通の軸心上に配設された入力軸16と、その入力軸16に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパ(振動減衰装置)等を介して間接に連結された差動部18と、その差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路に伝達部材(伝動軸)20を介して直列に連結されている自動変速部22と、その自動変速部22に連結された出力軸24とを、直列に備えている。なお、自動変速部22は本発明の変速機に対応する。
本実施例の駆動装置12は、例えばハイブリッド車両(以下、「車両」という。)において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸16に連結された走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン26により発生させられた動力を、出力軸24から図示しない差動歯車装置およびその差動歯車装置と一対の駆動輪との間の図示しない車軸を介して一対の駆動輪へと伝達する。なお、本実施例の駆動装置12において、エンジン26と差動部18とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパ等を介する連結はこの直結に含まれる。また、駆動装置12はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部18は、第1電動機MG1と、前記入力軸16に入力されて前記エンジン26の出力を機械的に分配する機械的機構であってそのエンジン26の出力を第1電動機MG1及び伝達部材20に分配する差動機構としての動力分配装置28と、伝達部材20と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機MG2とを、備えている。本実施例の駆動装置12に備えられた第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、三相コイルが巻回された固定子と永久磁石が備えられた回転子から成る3相交流同期モータから構成されており、何れも電動機及び発電機として機能する所謂モータジェネレータとして機能する。斯かる構成により、差動部18は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を介して運転状態が制御されることにより、入力回転速度(入力軸16の回転速度)と出力回転速度(伝達部材20の回転速度)の差動状態が制御される電気式差動部として機能する。
動力分配装置28は、シングルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。この遊星歯車装置は、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転及び公転可能に支持するキャリアCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素(要素)として備えており、キャリアCA0は入力軸16すなわちエンジン26に連結され、サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は伝達部材20に連結されている。また、エンジン26が連結された入力軸16は、ブレーキB0を介して非回転部材であるケース14に選択的に連結される。また、エンジン26により回転駆動されて作動油を吐出し、エンジン26の停止により油圧制御回路への作動油の供給を停止する、機械式油圧ポンプ30が入力軸16に連結されている。
自動変速部22は、差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路にシングルピニオン型の遊星歯車装置32、遊星歯車装置34を主体として構成され、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。遊星歯車装置32、34は、それぞれサンギヤS1、S2、遊星歯車P1、P2、それら遊星歯車P1、P2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、CA2、遊星歯車P1、P2を介してサンギヤS1、S2と噛み合うリングギヤR1、R2を備えている。
また、自動変速部22では、サンギヤS1がブレーキB1を介してケース14に選択的に連結されるようになっている。また、キャリアCA1とリングギヤR2とが一体的に連結され、第2ブレーキB2を介してケース14に選択的に連結されるようになっていると共に、一方向クラッチF1を介してそのケース14に対する一方向の回転が許容されつつ逆方向の回転が阻止されるようになっている。また、サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、一体的に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2が第2クラッチC2を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、リングギヤR1とキャリアCA2とが一体的に連結されると共に出力軸24に連結されている。また、図1には図示しないが、出力軸24にはシフト切換機構40のパーキングギヤ60が固定的に連結されている。
自動変速部22においては、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、自動変速部22は、たとえば第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2の全ての解放によりニュートラル「N」状態とされる。差動部18は、ブレーキB0の係合により第1電動機MG1および第2電動機MG2の両方で一対の駆動輪を駆動可能な状態すなわち両駆動状態となり、車両は自動変速部22が動力伝達可能な状態となると、モータ走行となる。
図2は、シフト切換機構40を制御するために車両10に設けられた制御系統の要部を説明する図であるとともに、その制御系統に含まれる電子制御装置110の制御機能の要部が機能ブロック線図として示されている。図2において、車両10は、駆動装置12、シフト切換機構40、シフト操作装置50、手動解除装置36などを備え、電気制御により自動変速部22のシフトポジション(シフトレンジ)を切り換えるシフトバイワイヤ(SBW)方式を採用している。
また、車両10には、シフト切換機構40の作動状態を制御する為の電子制御装置110が備えられている。電子制御装置110は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン26の出力制御、変速制御、シフト切換機構40の作動状態の切換制御すなわちシフトバイワイヤ方式を用いた自動変速部22のシフトポジションの切換制御などを実行する。
電子制御装置110には、例えば自動変速部22のシフトポジションを切り換える為の操作装置としてのシフト操作装置50の操作状態を示す操作信号が供給される。シフト操作装置50の操作信号としては、例えばシフトレバー52の操作位置(操作ポジション)Pshに応じたシフトレバー位置信号Ple、Pスイッチ44の操作状態を示すPスイッチ信号Pswなどである。また、電子制御装置110には、エンコーダ46からの駆動モータ48のロータの回転変位の相対的位置情報やロータ回転数を示す信号、非接触式センサ54からのマニュアルシャフト72に連結された後述する出力軸57の回転変位の絶対的位置情報やその回転数を示す信号などのシフト切換機構40における作動状態を表す信号が供給される。
また、電子制御装置110は、上記シフト切換機構40における作動状態を表す信号に基づいて自動変速部22のシフトポジションを判断し、たとえばシフト切換機構40がパーキングロック位置(Pポジション)であることを表示する為のパーキングロック表示制御指令信号(Pロック表示制御指令信号)をPスイッチ44へ出力し、Pスイッチ44内のPポジションインジケータランプ58を点灯して、パーキングロック位置にあることを明示する。
また、電子制御装置110は、シフトレバー位置信号PleやPスイッチ信号Pswに基づいてアクチュエータ56を介してシフト切換機構40の作動を制御して自動変速部22のシフトポジションを電気的に切り換える。
シフト操作装置50は、例えば運転席の近傍に配設され、複数の操作ポジションPshへ操作されるモーメンタリ式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(初期位置)へ自動的に復帰する自動復帰式の操作子としてのシフトレバー52を備えている。また、シフト操作装置50は、自動変速部22のシフトポジションをパーキングポジション(Pポジション)以外の非Pポジションからパーキングポジションへ切り換える為のモーメンタリ式の操作子としてのPスイッチ44をシフトレバー52の近傍に別スイッチとして備えている。シフト操作装置50は、少なくともPポジションを選択操作可能な操作スイッチとして機能している。
シフトレバー52は、図2に示すように車両の前後方向または上下方向すなわち縦方向に配列された3つの操作位置PshであるR操作位置、N操作位置、D操作位置と、それに平行に配列されたM操作位置、B操作位置とへそれぞれ操作されるようになっており、シフトレバー52のシフト操作位置Pshに応じたシフトレバー位置信号Pleを電子制御装置110へ出力する。
Pスイッチ44は、例えば押釦への操作力を解くと押釦が元の位置へ自動的に復帰する自動復帰式すなわちモーメンタリ式の押しボタン型スイッチであって、ユーザにより押込み操作される毎にPスイッチ信号Pswを電子制御装置110へ出力する。例えば自動変速部22のシフトポジションが非PポジションにあるときにPスイッチ44が押されると、車速VがPロック許可車速Vp以下であるなどの所定の条件が満たされていれば、Pスイッチ信号Pswに基づいてシフトポジションがPポジションとされる。
シフト操作装置50のM操作位置はシフトレバー52の初期位置(ホームポジション)であり、M操作位置以外の操作位置Psh(R,N,D,B操作位置)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー52を解放すればすなわちシフトレバー52に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー52はM操作位置へ戻るようになっている。
ここで、自動変速部22の各シフトポジションについて説明すると、シフトレバー52がR操作位置へシフト操作されることにより選択されるリバースポジション(Rポジション)は、車両10を後進させる駆動力が駆動輪に伝達される後進走行ポジションである。また、シフトレバー52がN操作位置へシフト操作されることにより選択されるニュートラルポジション(Nポジション)は、動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジションである。また、シフトレバー52がD操作位置へシフト操作されることにより選択されるドライブポジション(Dポジション)は、車両10を前進させる駆動力が駆動輪に伝達される前進走行ポジションである。また、シフトポジションが非Pポジションにある状態で、Pスイッチ44の押釦が操作されたときに所定の条件が満たされている場合に選択されるパーキングポジション(Pポジション)は、動力伝達経路が遮断され、且つシフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置とされる駐車モードである。なお、シフトポジションがRポジション、NポジションおよびDポジションの非Pポジションにあるときには、シフト切換機構40の作動位置は非パーキングロック位置である。
また、シフトレバー52がB操作位置へシフト操作されることにより選択されるBポジションは、Dポジションにおいてエンジンブレーキ効果を発揮させ駆動輪の回転を減速させる減速前進走行ポジション(エンジンブレーキレンジ)である。従って、電子制御装置110は、現在のシフトポジションがDポジション以外のシフトポジションであるときにシフトレバー52がB操作位置へシフト操作されてもそのシフト操作を無効とし、DポジションであるときのみB操作位置へのシフト操作を有効とする。例えば、Pポジションであるときに運転者がB操作位置へシフト操作したとしてもシフトポジションはPポジションのまま継続される。
図3は、車両10に備えられるシフト切換機構40、アクチュエータ56および手動解除装置36の構成を示す図である。シフト切換機構40は、シフト操作装置50のシフトレバー52の操作により供給されるシフトレバー位置信号PleやPスイッチ44から出力されるPスイッチ信号Pswに従って作動するアクチュエータ56により、自動変速部22のシフトポジションをPポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジションに電気的に切り換えるとともに、自動変速部22の出力軸24の回転を機械的に固定(ロック)するパーキングロック位置或いは出力軸24の回転を非固定(非ロック)とする非パーキングロック位置へ切り換えるパーキングロック機構(Pロック機構)としても機能する。
図3において、シフト切換機構40は、車輪(駆動輪)と共に回転する回転歯として出力軸24に固定されたパーキングギヤ60と、パーキングギヤ60に噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ60に噛み合わされることにより出力軸24を回転不能に固定するパーキングロックポール62と、パーキングロックポール62に係合するテーパ部材64に挿し通されてそのテーパ部材64を一端部において支持するパーキングロッド66と、パーキングロッド66に設けられてテーパ部材64をその小径方向へ付勢するスプリング68と、パーキングロッド66の他端部に回動可能に接続されて節度機構により少なくともパーキングポジションに対応する位置決め位置に位置決めされるディテントレバー70と、ディテントレバー70に固設されて一軸心まわりに回転可能に支持されたマニュアルシャフト72と、ディテントレバー70の回転に節度を与えてそのディテントレバー70を各シフトポジションに対応する位置決め位置に固定するディテントスプリング74及びその先端部に設けられた係合部76とを、備えている。マニュアルシャフト72は、その一端部にアクチュエータ56の出力軸57がスプライン嵌合により動力伝達可能に連結されており、減速機構59を介して駆動モータ48の動力が伝達されることにより軸回りに回転駆動させられる。駆動モータ48は、エンコーダ46(図2に示す)を備えている。アクチュエータ56の出力軸57には非接触式センサ54が設けられている。また、パーキングギヤ60は、それがロック状態とされれば駆動輪もロック状態とされる関係にあれば設けられる場所に制限は無いが、例えば出力軸24に同心上に固定されている。
ディテントレバー70には、マニュアルバルブ78のスプール弁子80の一端がディテントレバー70に設けられたピン82を介して係合させられており、マニュアルシャフト72の回転すなわちディテントレバー70のマニュアルシャフト72の軸心まわりの回動に伴ってマニュアルバルブ78のスプール弁子80がそのスプール弁子80の軸心方向に摺動させられるようになっている。スプール弁子80を摺動可能に収容するバルブボデー84内には、変速作動等を制御する為のソレノイドバルブ等に関する不図示の油圧制御回路を構成する油路の一部が設けられている。
ディテントレバー70は、マニュアルシャフト72を介して駆動モータ48に作動的に連結されており、パーキングロッド66、ディテントスプリング74、係合部76などと共に駆動モータ48により駆動されてシフトポジションが切り換わる際のシフトポジション位置決め部材として機能する。ディテントレバー70の頂部には、パーキングポジション指令位置Pと、リバースポジション指令位置R、ニュートラルポジション指令位置Nおよびドライブポジション指令位置Dの非パーキングポジション指令位置とにそれぞれ対応して設けられた複数の凹部が形成されており、それらのうちの端に位置する凹部86がパーキングポジション指令位置Pに対応している。駆動モータ48の作動すなわちディテントレバー70の回動に伴って、図3に示すディテントレバー70の頂部に設けられた複数の凹部(谷)のうち何れかにディテントスプリング74の係合部76が係合させられる。係合部76は、その軸心まわりに回転可能にディテントスプリング74に設けられている。ここで、マニュアルシャフト72すなわちディテントレバー70は、係合部76がパーキングポジション指令位置Pに対応する凹部86に係合される回転位置にあるときは、シフトポジションはパーキングポジションであり、係合部76がニュートラルポジション指令位置Nなどの非パーキングポジション指令位置に対応する凹部に係合される回転位置にあるときは、シフトポジションは、たとえばニュートラルポジション、ドライブポジション、リバースポジションなどの非パーキングポジションである。
図3は、シフトポジションが非パーキングポジションであるときすなわちシフト切換機構40がパーキングロックされていない非パーキングロック位置にある状態を示している。パーキングロックポール62は、パーキングロッド66の一端に設けられているテーパ部材64との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。係合部76がパーキングポジション指令位置に対応する凹部86から非パーキングポジション指令位置に対応する凹部に移動させられるときには、矢印A方向にテーパ部材64が移動させられ、パーキングロックポール62がテーパ部材64の小径部と当接し、パーキングロックポール62がパーキングギヤ60と噛み合うことのない位置まで矢印Bの方向へ押し下げられる。これにより、出力軸24及びこれに連結された車両10の駆動輪が機械的に固定されなくなる。そして、その係合部76が係合させられた凹部86以外の凹部に対応する位置に位置決めされたスプール弁子80によりマニュアルバルブ78の油路が切り換えられるようになっている。一方、駆動モータ48の作動により係合部76が非パーキングポジション指令位置に対応する凹部からパーキングポジション指令位置Pに対応する凹部86に移動させられるときには、上述とは逆の作動によりパーキングロックポール62がテーパ部材64の大径部と当接し、パーキングギヤ60とパーキングロックポール62とが噛み合うことで、シフト切換機構40が図示しないパーキングロック位置とされる。シフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置にある場合、パーキングロックポール62とパーキングギヤ60とが噛み合わされることで、パーキングギヤ60の回転が阻止され、駆動輪の回転も同様に阻止される。また、マニュアルバルブ78の油路が、係合部76が係合させられた凹部86に対応する位置に位置決めされたスプール弁子80によりパーキングポジションに対応する状態に切り換えられる。
電子制御装置110は、たとえば駆動モータ48の検出回転角度(エンコーダカウント値)がシフト操作装置50で選択されたシフトポジションに対応する目標回転角度(エンコーダカウント値の目標値)と一致する位置で停止するように駆動モータ48を駆動する。
シフト切換機構40には、シフト切換機構40の作動位置を手動操作力を用いてパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換える手動解除装置36が設けられている。手動解除装置36は、ディテントレバー70に固定されたレバー取付部材38と、レバー取付部材38とケーブル37等を介して機械的に連結されたパーキング解除レバー42(P解除レバー)とを備えている。パーキング解除レバー42は、たとえば操縦席近傍に配置され、自動変速部22のシフトポジションがPポジションであるときにドライバにより操作されて、矢印D方向への操作力がケーブル37およびレバー取付部材38に入力されることで、ディテントレバー70を回転させることができる。これにより、パーキングポジション指令位置Pに対応する凹部86にあった係合部76がニュートラルポジション指令位置Nに対応する凹部に移動させられ、アクチュエータ56を介することなくシフトポジションがPポジションからNポジションに切り換えられて、パーキングロックが解除される。
図2の電子制御装置110の機能ブロック線図は、シフト切換機構40が手動解除装置36によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられた後に、ドライバのパーキング要求に応じてアクチュエータ56を作動させてシフト切換機構40を非パーキングロック位置からパーキングロック位置へ切り換えるための制御機能の要部を示している。電子制御装置110は、シフト制御部112とパーキングロック制御部114(Pロック制御部114)を備え、本発明の車両用パーキングロック機構の制御装置として機能する。パーキングロック制御部114は、シフトポジション切換制御部116、検出位置判定部118、手動P解除判定部120を備えている。
シフト制御部112は、シフト操作装置50によりシフトレバー位置信号PleあるいはPスイッチ信号Pswを取得すると、パーキングロック指令あるいは非パーキングロック指令を発生させて、パーキングロック制御部114へ出力するシフトポジション切換制御指令(指令値)を切り換える。具体的には、シフト制御部112は、Pスイッチ44からのPスイッチ信号Pswを取得した際のパーキングロック制御部114へ出力している指令値が、自動変速部22のシフトポジションをPポジションから非Pポジションへ切り換える為の非パーキングロック指令(非P指令値)であり、且つ車速Vが予め定められたPロック許可車速Vp以下であるなどの所定の条件が満たされている場合には、上記非パーキングロック指令を、自動変速部22のシフトポジションを非PポジションからPポジションへ切り換える為のパーキングロック指令(P指令値)へ切り換える。また、シフト制御部112は、シフトレバー位置信号Pleを取得した際にパーキングロック制御部114へ出力している指令値がパーキングロック指令であり、且つブレーキオン状態Bonであるなどの所定の条件が満たされている場合には、パーキングロック指令をシフトレバー位置信号Pleに対応する非パーキングロック指令へ切り換える。また、シフト制御部112は、Pスイッチ信号Pswを取得した際のパーキングロック制御部114へ出力している指令値がパーキングロック指令である場合には、パーキングロック指令の出力を維持する。また、シフト制御部112は、シフトレバー位置信号Pleを取得した際のパーキングロック制御部114へ出力している指令値がそのシフトレバー位置信号Pleに対応した非パーキングロック指令である場合には、その非パーキングロック指令の出力を維持する。また、シフト制御部112は、シフトレバー位置信号Pleを取得した際のパーキングロック制御部114へ出力している指令値がそのシフトレバー位置信号Pleに対応しない非パーキングロック指令である場合には、その非パーキングロック指令をシフトレバー位置信号Pleに対応した非パーキングロック指令に更新する。
パーキングロック制御部114のシフトポジション切換制御部116は、シフト制御部112から供給される指令値のパーキングロック指令および非パーキングロック指令の一方から他方への変化に基づいてアクチュエータ56を作動させることで自動変速部22のシフトポジションを制御するとともに、シフト切換機構40の作動位置をパーキングロック位置と非パーキングロック位置との間で切り換える。具体的には、シフトポジション切換制御部116は、シフト制御部112より非パーキングロック指令からパーキングロック指令への指令値変化(変化トリガ)を取得すると、自動変速部22のシフトポジションを非PポジションからPポジションへ切り換えて、シフト切換機構40の作動位置を非パーキングロック位置からパーキングロック位置へ切り換える。また、シフトポジション切換制御部116は、パーキングロック指令から非パーキングロック指令への指令値変化(変化トリガ)を取得すると、自動変速部22のシフトポジションをパーキングポジションからシフトレバー位置信号Pleに対応する非パーキングポジションへ切り換えて、シフト切換機構40の作動位置をパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換える。また、シフトポジション切換制御部116は、シフトレバー位置信号Pleに対応した非パーキングロック指令間での指令値変化を取得すると、変化前の非パーキングロック指令に対応する非Pポジションから変化後の非パーキングロック指令に対応する非Pポジションへ切り換える。
パーキングロック制御部114の検出位置判定部118は、非接触式センサ54により検出される検出位置から自動変速部22のシフトポジションがPポジションであるか非Pポジションであるか、すなわちシフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置であるか非パーキングロック位置であるかを判定する。検出位置判定部118は、非接触式センサ54により検出される検出位置すなわちマニュアルシャフト72の回転変位の絶対的位置情報を示す信号に基づいて、マニュアルシャフト72の回転角度を判定して、つまり自動変速部22のシフトポジションが、Pポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジションの何れであるかを判定し、シフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置にあるか非パーキングロック位置にあるかを判定する。検出位置判定部118は、その判定結果を、自動変速部22のシフトポジションの非接触式センサ54(以下、「センサ54」という。)による検出位置を示す検出位置信号として、シフト制御部112に供給する。検出位置信号は、センサ54による検出位置がPポジションにあることを示すP検出位置信号、センサ54による検出位置が非Pポジションにあることを示す非P検出位置信号、あるいは、センサ54による検出位置がPポジションから非Pポジションへの切換中の状態であるか、非PポジションからPポジションへの切換中の状態であることを示す切換中信号である。なお、シフトポジション切換制御部116は、検出位置判定部118の検出位置信号およびアクチュエータ56を駆動するためのアクチュエータ駆動信号に基づいて、自動変速部22のシフトポジションの切換えが正常に行われたか否かを判定する。なお、センサ54は、シフト切換機構40の作動位置を検出する本発明のパーキングロック機構作動位置検出装置に対応する。
パーキングロック制御部114の手動P解除判定部120は、シフト制御部112から出力されている指令値および検出位置判定部118からのセンサ54による検出位置に基づいて、シフト切換機構40の作動位置が手動解除装置36によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置に切り換えられたか否かを判定する手動P解除判定を行う。手動P解除判定部120は、指令値がパーキングロック指令であるときに、センサ54による検出位置がPポジションから非Pポジションへ切り換わり始めると、切り換わり始めてからの経過時間が所定時間経過したか否かを判定する。手動P解除判定部120は、センサ54による検出位置がPポジションから非Pポジションへ切り換わり始めてから所定時間経過時に手動P解除判定を行う。手動P解除判定部120は、指令値がパーキングロック指令であり、且つセンサ54による検出位置が非Pポジションであることに基づいて、すなわちシフト制御部112からパーキングロック指令が出されており、且つセンサ54によりシフト切換機構40の作動位置が非パーキングロック位置であると検出されたことに基づいて、シフト切換機構40が手動解除装置36によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられた、すなわち手動P解除されたと判定する。手動P解除判定部120は、センサ54による検出位置がPポジションである場合、およびセンサ54による検出位置が非Pポジションであり、且つ指令値が非パーキングロック指令である場合には、手動P解除されていないと判定する。手動P解除判定部120は、シフト切換機構40の作動位置が手動解除装置36によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられた、すなわち手動P解除されたと判定した場合には、手動P解除判定信号をシフト制御部112へ出力する。
シフト制御部112は、手動P解除判定部120により手動P解除されたと判定されて、手動P解除判定信号を取得すると、指令値をパーキングロック指令から切換先(指令先)を定めない不定指令へ切り換える。また、シフト制御部112は、シフトポジション切換制御部116へ出力している指令値が不定指令であり、Pスイッチ44からのPスイッチ信号Pswを取得した際に車速VがPロック許可車速Vp以下であるなどの所定の条件が満たされている場合には、上記不定指令をパーキングロック指令へ切り換える。ここで、不定指令は、パーキングロック指令からそれへ切り換えらえることにより生じる指令値変化によってアクチュエータ56の作動を生じさせず、それからパーキングロック指令あるいは非パーキングロック指令へ切り換えられることにより生じる指令値変化によってアクチュエータ56の作動を許容する指令値である。
シフトポジション切換制御部116は、シフト切換機構40の作動位置が手動解除装置36によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられて手動P解除判定部120により手動P解除が行われたと判定されたときに、シフト制御部112からのパーキングロック指令から切換先を定めない不定指令への指令値変化(変化トリガ)に応じて、アクチュエータ56を作動させない。このため、手動解除装置36による手動P解除操作が行われておらず、シフト切換機構40の実際の作動位置がパーキングロック位置にあるにも拘わらず、何らかの故障により手動P解除が行われたと誤判定される手動P解除誤判定時において、上記不定指令により切換先が不明であるためアクチュエータ56の作動によるシフト切換機構40のパーキングロック位置から非パーキングロック位置への切換えが行われない。また、シフト切換機構40の手動解除装置36によるパーキングロック位置から非パーキングロック位置への手動解除操作後において、シフトポジション切換制御部116は、ドライバのPスイッチ44の操作によりシフト制御部112からの不定指令からパーキングロック指令への指令値変化(変化トリガ)を取得すると、切換先が明確であるためアクチュエータ56を作動させることにより、自動変速部22のシフトポジションをNポジションからPポジションへ切り換えて、シフト切換機構40の作動位置を非パーキングロック位置からパーキングロック位置へ切り換える。あるいは、シフトポジション切換制御部116は、シフトレバー52の操作によるシフトレバー位置信号Pleに応じた不定指令から非パーキングロック指令への指令値変化(変化トリガ)を取得すると、切換先が明確であるためアクチュエータ56を作動させることによりそのシフトレバー位置信号Pleに応じた非Pポジションに切り換えて、シフト切換機構40の作動位置を非パーキングロック位置へ切り換える。
図4は、電子制御装置110の、手動P解除されたとの判定に基づいて指令値がパーキングロック指令から不定指令へ切り換えられる制御作動の要部を説明するフローチャートである。図5は、電子制御装置110の制御作動であって、手動P解除操作後のPスイッチ44の操作によって、シフト切換機構40の作動位置の非パーキングロック位置からパーキングロック位置への切換えが行われることを説明するタイムチャートである。なお、図5中の実位置は、シフト切換機構40の実際の作動位置であり、センサ54による検出位置と一致する。手動P解除判定部120の機能に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する。)S1において、センサ54による検出位置がパーキングポジションであるか否か、すなわちシフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置(パーキングロック状態)にあるか否かが判定される(t2時点)。S1の判定が肯定される場合には、本フローチャートは終了させられる。S1の判定が否定される場合には、手動P解除判定部120の機能に対応するS2において、シフト制御部112から出力される指令値がパーキングロック指令であるか否かが判定される(t2時点)。S2の判定が否定される場合には、本フローチャートは終了させられる。S2の判定が肯定される場合には、手動P解除判定部120の機能に対応するS3において、センサ54による検出位置がPポジションから非Pポジションへ切り換わり始めた図5のt1時点から所定時間経過時に、シフト切換機構40が手動解除装置36によりパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられたか否か、すなわち手動P解除が行われたか否かが判定される。S3の判定が肯定される場合、すなわち手動P解除が行われたと判定される場合には、シフト制御部112の機能に対応するS4において、指令値がパーキングロック指令から不定指令へ切り換えられる(t2時点)。S4実行後、本フローチャートは終了させられる。シフト切換機構40の作動位置の手動解除装置36によるパーキングロック位置から非パーキングロック位置への切換後すなわち手動P解除操作後において、Pスイッチ44の操作に基づくシフト制御部112による不定指令からパーキングロック指令への切換えにより生じる指令値変化(t3時点)に応じて、シフト切換機構40はシフトポジション切換制御部116によりアクチュエータ56を介して非パーキングロック位置からパーキングロック位置へ切り換えられる。S3の判定が否定される場合、すなわち手動P解除が行われていないと判定される場合には、本フローチャートは終了させられる。
図6は、電子制御装置110の他の制御作動であって、手動解除装置36による手動P解除操作が行われておらず、シフト切換機構40の作動位置が実際にはパーキングロック位置にあるにも拘わらず、手動P解除が行われたと誤判定される手動P解除誤判定時において、シフト切換機構40のパーキングロック位置から非パーキングロック位置への切換えが行なわれないことを説明するタイムチャートである。なお、図6の実位置は、自動変速部22の実際のシフトポジションすなわちシフト切換機構40の実際の作動位置であり、実線で示されている。また、実位置との比較のため、センサ54による誤検出位置が破線で併せて示されている。図6のt0時点において、シフト切換機構40の実際の作動位置がパーキングロック位置にあるにも拘わらず、センサ54による誤検出位置がPポジションから非Pポジションへ変化している。ここで、t0時点におけるセンサ54による誤検出位置のPポジションから非Pポジションへの変化は、センサ54等の故障に起因して検出位置判定部118において非Pポジションと誤って判定されてしまうか、あるいは検出位置判定部118において判定されたセンサ54による検出位置が所謂RAM化けなど、故障によってPポジションから非Pポジションに変化してしまうことなどにより生じる。このように、センサ54の故障やRAM化けなどにより、非Pポジションへ切り換わったセンサ54による誤検出位置に基づいて、S1の判定が否定される(t1’時点)と、S2において、シフト制御部112から出力される指令値がパーキングロック指令であるか否かが判定される。S2の判定が肯定される(t1’時点)と、S3において、センサ54による誤検出位置がPポジションから非Pポジションへ切り換わったt0時点から所定時間経過時に、手動P解除が行われたか否かが判定される。手動P解除が行われたと誤って判定され、S3の判定が肯定される場合には、S4において、指令値がパーキングロック指令から不定指令へ切り換えられる。S4実行後、本フローチャートは終了させられる。シフト切換機構40の作動位置が実際にはパーキングロック位置にあるにも拘わらず、手動P解除が行われたと誤判定されており、手動P解除誤判定が生じている(t1’時点)が、S4において指令値がパーキングロック指令から切換先が定まらない不定指令へ切り換えられる。このため、図10の手動P解除誤判定時において指令値がパーキングロック指令から非パーキングロック指令へ切換えられる場合とは異なり、アクチュエータ56が作動させられない。これにより、ドライバの意図しないシフト切換機構40の作動位置のパーキングロック位置から非パーキングロック位置への切換え(P解除)が生じない(t1’時点)。手動P解除誤判定後において、P解除操作としてのシフトレバー52の操作によりシフトレバー位置信号Pleに応じた不定指令から非パーキングロック指令への指令値変化が生じると(t2’時点)、シフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられる。
上述のように、本実施例の電子制御装置110によれば、シフト切換機構40の作動位置を検出するセンサ54を含み、パーキングロック制御部114の手動P解除判定部120は、パーキングロック指令が出されているときに、センサ54によりシフト切換機構40の非パーキングロック位置が検出されたことに基づいて、手動解除装置36によりシフト切換機構40が手動P解除されたと判定し、パーキングロック制御部114のシフトポジション切換制御部116は、不定指令からパーキングロック指令への指令値変化に基づいてアクチュエータ56を作動させることでシフト切換機構40をパーキングロック位置へ切り換えるものであり、シフト制御部112は、手動P解除判定部120により手動P解除が行われたと判定された場合に、パーキングロック指令を不定指令に変更する。このため、シフト切換機構40の作動位置の手動解除装置36によるパーキングロック位置から非パーキングロック位置への切換後において、ドライバのPスイッチ44の操作によるシフト制御部112の指令値の不定指令からパーキングロック指令への指令値変化(変化トリガ)に基づいて、シフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置へ切り換えられる。これにより、手動P解除操作後において、ドライバの意図に応じてシフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置に切り換えられる。また、手動解除装置36による手動P解除操作が行われておらず、シフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置にあるにも拘わらず、手動P解除が行われたと誤判定される手動P解除誤判定時において、シフト制御部112の指令値はパーキングロック指令から不定指令へ変更させられるため、パーキングロック制御部114のシフトポジション切換制御部116はアクチュエータ56を作動させない。これにより、手動P解除誤判定時において、ドライバの意図しないシフト切換機構40の作動位置のパーキングロック位置から非パーキングロック位置への切換えが防止される。
また、本実施例の電子制御装置110によれば、シフトポジション切換制御部116は、シフト制御部112からの不定指令から非パーキングロック指令への指令値変化(変化トリガ)に基づいてアクチュエータ56を作動させることによりシフト切換機構40を非パーキングロック位置へ切り換える。このため、手動P解除誤判定後において、ドライバによるシフトレバー52の操作に基づいて、シフト切換機構40の作動位置がパーキングロック位置から非パーキングロック位置へ切り換えられる。
以上、本発明を表及び図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
たとえば、前述の実施例1の電子制御装置110が適用された車両10は、差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路に伝達部材(伝動軸)20を介して直列に連結されている自動変速部22を備えているが、これに限定されるものではなく、たとえば、駆動源と駆動輪との間の動力伝達経路に差動部を有さずに有段式の自動変速機を備え、その自動変速機の出力軸にシフト切換機構40のパーキングギヤ60が固定されていてもよい。
また、前述の実施例1の電子制御装置110は、シフト制御部112およびパーキングロック制御部114を備えていたが、これに限定されるものではなく、たとえば、シフト制御部112の機能を有するシフト制御用コンピュータとパーキングロック制御部114の機能を有するパーキングロック制御用コンピュータを備えるように構成されてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。