図1には、ハイブリッド車両用動力伝達装置8を説明する骨子図が記載されている。この図1に示すように、本実施例のハイブリッド車両用動力伝達装置8(以下、「動力伝達装置8」という。)は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース14(以下、「ケース14」という)内において共通の軸心上に配設された入力軸16と、その入力軸16に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパ(振動減衰装置)等を介して間接に連結された差動部18と、その差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路に伝達部材(伝動軸)20を介して直列に連結されている自動変速部22と、その自動変速部22に連結された出力軸24とを、直列に備えている。また、後述するように、自動変速部22には、その出力軸24をロック状態と非ロック状態とに切替えるパーキングロック機構37と、ドライバの操作力によりパーキングロック機構37をロック状態から非ロック状態に切替える手動解除機構84、とが設けられている。
本実施例の動力伝達装置8は、例えばハイブリッド車両(以下、「車両」という。)において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸16に連結された走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン26により発生させられた動力を差動部18および差動部18に直列に配置された自動変速部22により出力軸24へ伝達し、出力軸24から図示しない差動歯車装置およびその差動歯車装置と一対の駆動輪との間の図示しない車軸を介して一対の駆動輪へと伝達する。なお、本実施例の動力伝達装置8において、エンジン26と差動部18とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパ等を介する連結はこの直結に含まれる。また、動力伝達装置8はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部18は、第1電動機MG1と、前記入力軸16に入力されて前記エンジン26の出力を機械的に分配する機械的機構であってそのエンジン26の出力を第1電動機MG1及び伝達部材20に分配する差動機構としての動力分配装置28と、伝達部材20と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機MG2とを、備えている。本実施例の差動部18に備えられた第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、三相コイルが巻回された固定子と永久磁石が備えられた回転子から成る3相交流同期モータから構成されており、何れも発動機及び発電機として機能する所謂モータジェネレータとして機能し、本発明の駆動源としても機能する。斯かる構成により、差動部18は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を介して運転状態が制御されることにより、入力回転速度(入力軸16の回転速度)と出力回転速度(伝達部材20の回転速度)の差動状態が制御される電気式無段変速部として機能する。
動力分配装置28は、シングルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。この遊星歯車装置は、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転及び公転可能に支持するキャリアCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素(要素)として備えており、キャリアCA0は入力軸16すなわちエンジン26に連結され、サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は伝達部材20に連結されている。また、エンジン26が連結された入力軸16は、ブレーキB0を介して非回転部材であるケース14に選択的に連結される。また、エンジン26により回転駆動されて作動油を吐出し、エンジン26の停止により油圧制御回路への作動油の供給を停止する、機械式油圧ポンプ30が入力軸16に連結されている。
自動変速部22は、差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路にシングルピニオン型の遊星歯車装置32、遊星歯車装置34を主体として構成され、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。遊星歯車装置32、34は、それぞれサンギヤS1、S2、遊星歯車P1、P2、それら遊星歯車P1、P2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、CA2、遊星歯車P1、P2を介してサンギヤS1、S2と噛み合うリングギヤR1、R2を備えている。
また、自動変速部22では、サンギヤS1がブレーキB1を介してケース14に選択的に連結されるようになっている。また、キャリアCA1とリングギヤR2とが一体的に連結され、第2ブレーキB2を介してケース14に選択的に連結されるようになっていると共に、一方向クラッチF1を介してそのケース14に対する一方向の回転が許容されつつ逆方向の回転が阻止されるようになっている。また、サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、一体的に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2が第2クラッチC2を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、リングギヤR1とキャリアCA2とが一体的に連結されると共に出力軸24に連結されている。また、図1には図示しないが、出力軸24にはパーキングロック機構37のパーキングギヤ38が固定的に連結されている。
図2は、自動変速部22の変速段毎に用いられる油圧式摩擦係合装置の係合作動の組み合わせおよび第1電動機MG1および第2電動機MG2の両駆動状態を成立させるブレーキB0の係合作動を説明する係合表である。この図2に示されるように、自動変速部22においては、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段(後進変速段)Rが成立させられる。自動変速部22は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の係合作動により機械的に変速段が決定される機械式変速部として機能する。差動部18および自動変速部22は、本発明の動力伝達機構として機能する。自動変速部22は、たとえば第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2の全ての解放により、ニュートラル「N」状態とされて動力伝達遮断状態とされる。差動部18は、ブレーキB0の係合により第1電動機MG1および第2電動機MG2の両方で一対の駆動輪を駆動可能な状態すなわち両駆動状態となり、車両は自動変速部22が動力伝達可能な状態となると、モータ走行となる。また、差動部18は、第1電動機MG1および第2電動機MG2が非作動とされると、ニュートラル「N」状態とされて動力伝達遮断状態とされる。
図3は、動力伝達装置8に好適に適用されるハイブリッド制御用コンピュータ42(HV−ECU42)およびシフト用コンピュータ40(SBW−ECU40)を説明する図である。ハイブリッド制御用コンピュータ42およびシフト用コンピュータ40は、CPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータをそれぞれ含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。ハイブリッド制御用コンピュータ42には、シフト操作装置のシフト位置に応じてシフトレバーセンサ44から出力されたシフトレバー位置信号R/N/D、および、自動変速部22をパーキングレンジ(Pレンジ)とパーキングレンジ以外の非パーキングレンジ(非Pレンジ)との間で切り替えるためのPスイッチ45(P−SW45)のスイッチ操作を表すPスイッチ信号Pが、供給される。電動アクチュエータ46は、電動モータ48と、電動モータ48の相対角変位を計測するエンコーダ50と、シフトセンサ52とを備えている。シフト用コンピュータ40は、ハイブリッド制御用コンピュータ42の指示により自動変速部22の出力軸24をロック状態と非ロック状態との間で切替えるパーキングロック機構37の作動を制御する。シフト用コンピュータ40は、シフトレバー位置信号R/N/Dに応じて、電動モータ48の回転角度(モータ角度)をエンコーダ50から取得しつつ、制御軸64を非パーキング位置(NotP位置)に対応する回動位置に回動させて図示しないマニュアルバルブを切り替えることにより、動力伝達装置8のシフトポジションを切替える。また、シフト用コンピュータ40は、Pスイッチ信号Pの入力を検知すると、電動モータ48を回転駆動させてパーキング位置(P位置)に対応する回動位置に制御軸64を回転駆動させることによりパーキングロック機構37を作動させる。また、制御軸64には制御軸64の絶対角を計測するシフトセンサ52が連結されており、パーキングロック機構37がロック状態にあるか非ロック状態にあるかが検出される。動力伝達装置8には、パーキングロック機構37をロック状態から非ロック状態に手動で切替える手動解除機構84が備えられている。後述するディテントレバー62の第2レバー部73への手動解除機構84を介して入力された手動の操作力により、ディテントレバー62はパーキング位置に対応する回動位置から非パーキング位置(NotP位置)に対応する回動位置へ回動させられる。上記第2レバー部73は、手動パーキング解除レバー(手動P解除レバー)として機能している。これにより、たとえば電動モータ48が故障しても、パーキングロック機構37が手動でパーキングロック状態から非パーキングロック状態に切替えられる。
図4は、動力伝達装置8に備えられるパーキングロック機構37をケース14内において出力軸24の軸方向に視た断面図である。図5は、パーキングロック機構37のV−V視断面を示す断面図である。パーキングロック機構37は、動力伝達装置8に備えられ、Pスイッチ45のスイッチ操作に従って作動する電動アクチュエータ46により自動変速部22の出力軸24をロック状態と非ロック状態との間で切替える。パーキングロック機構37は、パーキングロック部39と、ロック機構部55とから構成され、ケース14内に設けられている。電動アクチュエータ46は、電動モータ48を含んでいる。電動モータ48は、ステータ41と、ロータ43と、ロータ43と一体的に回転するロータ軸47とを備えている。ロータ軸47は、ケース14に形成された穴49に挿入させられている。なお、図5において、パーキングギヤ38およびパーキングロックポール54の一部が点線で示されている。
パーキングロック部39は、図示しない駆動輪と作動的に連結されている出力軸24に固定されたパーキングギヤ38と、パーキングギヤ38と噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ38の回転をロックするパーキングロックポール54と、トーションスプリング51とを備えている。パーキングロックポール54は、パーキングギヤ38の谷部と係合する凸部53を有し、出力軸24の回転軸線と平行な中心線を有するピン57によりケース14に回動可能に設けられている。トーションスプリング51は、ケース14に固定されたブラケット59の凸部が挿入されたコイル部61と、そのコイル部61の巻き始め端側でありブラケット59の穴に係合された一方のアーム部63と、コイル部61の巻き終わり端側でありパーキングロックポール54に当接する他方のアーム部65とを有し、復元力によりパーキングロックポール54をパーキングギヤ38から離隔する方向へ付勢している。
ロック機構部55は、パーキングロックポール54と当接するテーパカム56に挿し通されてテーパカム56を一端部において支持するパーキングロッド58と、パーキングロッド58に設けられたコンプレッションスプリング60と、パーキングロッド58の他端部に回動可能に接続されて節度機構によりパーキング位置と非パーキング位置とに位置決めされるディテントレバー62と、ディテントレバー62の回転に節度を与えつつパーキング位置と非パーキング位置とのいずれかにディテントレバー62を保持するディテントスプリング66と、テーパカム56を案内するカムガイド69と、パーキングスリーブ80とを備えている。制御軸64は、電動モータ48のロータ軸47とケース14の穴49内で動力伝達可能に連結されている。ディテントレバー62は、制御軸64が挿通されるボス部70を備えており、電動モータ48によりボス部70周りすなわち制御軸64の回動軸線周りに回動させられる。ディテントレバー62は、ボス部70周りに第1レバー部71および第2レバー部73と、係合凹溝76とを有している。第2レバー部73と係合凹溝76とはボス部70を挟んでデョテントレバー62の長手方向の両端部にあたり、第1レバー部71は、ボス部70の車両下側に長手方向に対して略垂直に突出するように形成されている。パーキングロッド58は、その一端部が挿通させられることによりテーパカム56を支持する長手状の支持部75と、支持部75に連続して制御軸64方向に折れ曲がり、第1レバー部71に回動可能に連結される連結部77を有しており、ディテントレバー62の回動により支持部75がその軸心方向すなわち出力軸24の軸心方向に略平行な方向に移動可能に設けられている。また、パーキングロッド58は、テーパカム56の大径部の端面に当接して、テーパカム56をパーキングロックポール54の先端部下面に押し付けるように付勢するコンプレッションスプリング60を備えている。ディテントレバー62の係合凹溝76は、パーキング位置に対応するパーキング凹溝72と非パーキング位置に対応する非パーキング凹溝74とから構成される。ディテントスプリング66は、板バネであり、その基端部がケース14に固定され、その先端部に回転可能に支持された係合ローラ78をディテントレバー62のパーキング凹溝72または非パーキング凹溝74の溝底に係合するように付勢した状態で備えている。ディテントレバー62の第2レバー部73には、制御軸64の回動軸線まわりの周方向に円弧状の長穴81が、板厚方向に貫通されて形成されている。カムガイド69は、パーキングロッド58の軸方向の移動によりテーパカム56が出入り可能に、パーキングロッド58を周方向に取り囲むように筒状にケース14内に設けられている。パーキングスリーブ80は、ブラケット59に一体に設けられ、パーキングロッド58の軸方向の移動によりテーパカム56の外周面が摺動可能な凹湾曲面83を有している。
図4および図5では、パーキングロック機構37が非ロック状態にある場合を表している。パーキングロックポール54は、パーキングロッド58の一端部に支持されているテーパカム56との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。例えば、図5の左方向にテーパカム56が移動させられ、パーキングロックポール54の先端部下面がテーパカム56の大径部から離れて小径部と当接する場合、パーキングロックポール54の先端部がトーションスプリング51により図4の鉛直下方に移動されるに伴って、パーキングロックポール54の凸部53とパーキングギヤ38との係合が外れ、パーキングロック機構37のパーキングロック状態が解除される(図4および図5)。一方、テーパカム56がその外周面が凹湾曲面83に摺動しつつ図5の右方向に移動させられてパーキングロックポール54の先端部下面を押圧すると、パーキングロックポール54の先端部がトーションスプリング51の付勢力に抗して図4の鉛直上方に移動されるに伴って、パーキングギヤ38にパーキングロックポール54の凸部53が係合されて、パーキングロック機構37が図示しないパーキングロック状態とされる。パーキングロック機構37がパーキングロック状態にある場合、パーキングロックポール54によりパーキングギヤ38の回転が阻止され、出力軸24に作動的に連結された駆動輪の回転も同様に阻止される。
また、パーキングロッド58の支持部75の長手方向への移動は、制御軸64の回転位置すなわちディテントレバー62の回動位置に応じて調節される。ディテントレバー62は、制御軸64を介して電動モータ48のロータ軸47に作動的に連結されており、電動アクチュエータ46により制御軸64の一回動軸線まわりに駆動されて、自動変速部22の出力軸24のロック状態と非ロック状態とを切り替える。ここで、パーキング凹溝72にディテントスプリング66の係合ローラ78が係合される制御軸64の回転位置がパーキングロック機構37のロック位置、すなわちパーキングギヤ38とパーキングロックポール54の凸部53との係合位置に対応する。一方、非パーキング凹溝74に係合ローラ78が係合される制御軸64の回転位置は、パーキングロック機構37の非ロック位置、すなわちパーキングギヤ38とパーキングロックポール54の凸部53との係合が外れる位置に対応する。
動力伝達装置8の自動変速部22には、たとえば電動モータ48の故障などにより、電動アクチュエータ46によりパーキングロック機構37をロック状態から非ロック状態に切替えができない場合などにおいて、ドライバの操作力により手動でパーキングロック機構37をロック状態から非ロック状態へ切替える手動解除機構84が備えられている。
図4および図5に示されるように、手動解除機構84は、金属素線をより合わせたケーブル本体を外装材により被覆した長手状の操作ケーブル86と、操作ケーブル86のケース14外部側の端部に設けられ、ドライバにより手動で操作される環状の把手88と、操作ケーブル86のケース14内部側の端部に取り付けられた制御軸64の回動軸線に平行な方向に長手状のピン90と、操作ケーブル86のケース14外部に配置された外側ストッパ92と、操作ケーブル86のケース14内部に配置された内側ストッパ94、とを備えている。操作ケーブル86は、制御軸64の回動軸線方向および支持部75の長手方向に垂直な方向であってケース14に対してその長手方向に移動可能に挿通させられている。また、操作ケーブル86の長手方向の移動範囲は、外側ストッパ92がケース14の外壁面に当接する下位置と内側ストッパ94がケース14の内壁面に当接する図5に示す上位置との間に規制されている。ピン90は、ディテントレバー62の第2レバー部73に形成された長穴81に挿通させられており、ピン90よりも外径の大きいリング部材が第2レバー部73を操作ケーブル86の端部との間で板厚方向に挟んだ状態で取り付けられて、ピン90が長穴81から抜け止めされている。このように構成された手動解除機構84において、操作ケーブル86を通じて伝達される手動操作力によりピン90は下位置から図5に示される上位置に移動させられる。
ピン90が下位置にある場合には、制御軸64が電動アクチュエータ46により上記パーキング位置と上記非パーキング位置との間で回動させられても、ピン90はディテントレバー62の回動に干渉しない。手動の操作力により把手88がケース14から離隔する方向に移動されると、操作ケーブル86を介して伝達された操作力が第2レバー部73に形成された長穴81の上端部内面に当接したピン90を介してディテントレバー62に伝達され、ピン90が上位置まで移動されるに伴い、ディテントレバー62が上記非パーキング位置に回動させられる。これにより、図5に示されるように、パーキングロック機構37が非パーキングロック状態に手動で切替えられる。
図6は、ハイブリッド制御用コンピュータ42、電動機制御用コンピュータ98、エンジン制御用コンピュータ100およびシフト用コンピュータ40のそれぞれの入出力信号の関係を説明する図である。図6において、ハイブリッド制御用コンピュータ42には、前述のシフトレバー位置信号R/N/D、Pスイッチ信号Pなどの他に、例えばアクセル開度センサにより検出された運転者による車両に対する要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Acc(%)を表す信号、エンジン回転速度センサにより検出されたエンジン26の回転速度であるエンジン回転速度Ne(rpm)を表す信号、吸入空気量センサにより検出されたエンジン26の吸入空気量Qを表す信号、スロットル開度センサにより検出された電子スロットル弁の開度であるスロットル開度θth(%)を表す信号、車速センサにより検出された車速Vを表す信号、出力軸回転速度センサにより検出された出力軸24の回転速度である出力軸回転速度Noutを表す信号、第1電動機回転速度センサにより検出された第1電動機回転速度NMG1およびその回転方向を表す信号、第2電動機回転速度センサにより検出された第2電動機回転速度NMG2およびその回転方向を表す信号、蓄電装置電圧センサにより検出される蓄電装置の電圧から判定される蓄電装置の充電残量(SOC)を表す信号、伝達部材回転速度センサにより検出された伝達部材20の回転速度N20を表す信号などがそれぞれ供給される。
また、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、電動機制御用コンピュータ98(MG−ECU98)へ第1電動機MG1の出力トルクを制御するMG1トルク指令信号および第2電動機MG2の出力トルクを制御するMG2出力トルク指令信号を供給する。電動機制御用コンピュータ98は、インバータ108を用いて第1電動機MG1の電流量および第2電動機MG2の電流量を制御する。また、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、エンジン制御用コンピュータ100(エンジンECU100)へエンジン出力トルク指令信号を供給する。エンジン制御用コンピュータ100は、たとえばエンジン26の吸気管に備えられた電子スロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータにスロットルアクチュエータ駆動信号を出力することによりスロットル開度θthを制御するとともに、エンジン26の点火時期を制御する点火信号を出力する。また、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、シフト(シフトバイワイヤ:SBW)用コンピュータ40へシフトレンジ指令信号すなわち、シフトレバー位置信号R/N/DおよびPスイッチ信号Pを供給する。シフト用コンピュータ40は、電動アクチュエータ46にアクチュエータ駆動信号を供給する。また、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、動力伝達装置8の油圧制御回路に油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御する油圧指令信号PbB0、PbC1、PbC2、PbB1、PbB2を供給する。
また、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、自動変速部22の変速を行う変速制御手段として機能する。例えば、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUT(或いはアクセル開度Acc等)とを変数とする2次元座標において、アップシフト線(実線)及びダウンシフト線(一点鎖線)を有する予め記憶された関係(変速線図、変速マップ)から、実際の車速V及びアクセル開度Acc等に対応する自動変速部22の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部22の変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部22の自動変速制御を実行する。
また、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、エンジン26を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン26と第2電動機MG2との駆動力の配分や第1電動機MG1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部18の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機MG2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力(要求エンジン出力)PERを算出し、その目標エンジン出力PERが得られるエンジン回転数NEとエンジン26の出力トルク(エンジントルク)TEとなるようにエンジン26を制御すると共に第1電動機MG1および第2電動機MG2の出力乃至発電を制御する。
図1には、ハイブリッド制御用コンピュータ42の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図が記載されている。ハイブリッド制御用コンピュータ42は、解除状態判定部102、駆動源作動禁止部104および動力伝達遮断制御部106を備え、本発明の車両用動力伝達装置の制御装置としても機能する。
解除状態判定部102は、パーキングロック機構37が、手動解除機構84によりロック状態から手動により解除された解除状態であるか否かを判定する。解除状態判定部102は、シフト用コンピュータ40から、Pスイッチ信号Pに応じた前記アクチュエータ駆動信号としてのSBW−ECU指示値、エンコーダ50により計測される電動モータ48の相対角変位、およびシフトセンサ52により検出された制御軸64の回動角度に基づくシフトセンサ信号値を取得する。ここで、シフトセンサ信号値は、パーキングロック機構37がパーキング位置にあるか非パーキング位置にあるかの判定値であり、制御軸64の回動角度が所定の閾値よりも大きいか否かに基づいてシフト用コンピュータ40により判定される。制御軸64の回動角度が所定の閾値以下の場合、P相当の角度であるとしてシフトセンサ信号値はパーキング位置と判定され、制御軸64の回動角度が所定の閾値よりも大きい場合、非P相当の角度であるとしてシフトセンサ信号値は非パーキング位置と判定される。解除状態判定部102は、SBW−ECU指示値がパーキングロック機構37をパーキング位置とする電動アクチュエータ46へのアクチュエータ駆動信号であり、且つシフトセンサ信号値が非パーキング位置であり、両者が不一致である場合には、パーキングロック機構37がドライバの手動操作力により手動解除機構84を介して解除された解除状態であると判定し、手動P解除状態フラグをOFFからONに切替える。一方、解除状態判定部102は、SBW−ECU指示値がパーキングロック機構37を非パーキング位置とする電動アクチュエータ46への指令であり、且つシフトセンサ信号値が非パーキング位置であり、両者が一致する場合には、パーキングロック機構37が、シフト用コンピュータ40を介して解除された状態であり、手動解除機構84による解除状態ではないと判定する。また、解除状態判定部102は、手動P解除状態フラグがOFFからONに切り替わった際に、アクセル操作によって車両が走行可能な電源状態であるReady−ONの電源状態である場合には、エンジン26の始動を禁止するエンジン運転禁止フラグをOFFからONに切り替える。
駆動源作動禁止部104は、パーキングロック機構37のロック状態から非ロック状態への解除が手動解除機構84によるものと判定される解除状態判定時に、駆動源としてのエンジン26、第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動を禁止する。駆動源作動禁止部104は、解除状態判定部102による解除状態判定時にエンジン運転禁止フラグのON信号を取得すると、エンジン制御用コンピュータ100を介してエンジン26の点火および燃料噴射を制限して、エンジン26の始動を禁止する。また、駆動源作動禁止部104は、インバータ108をシャットダウンすることにより、第1電動機MG1および第2電動機MG2への電流を規制し、第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動を禁止する。
動力伝達遮断制御部106は、解除状態判定部102による解除状態判定時に自動変速部22にて動力伝達装置8を動力伝達遮断状態とする。具体的には、動力伝達遮断制御部106は、解除状態判定時すなわち手動P解除状態フラグがOFFからONに切換わる時点で、自動変速部22をニュートラル状態にする。動力伝達遮断制御部106は、解除状態判定時の以前に第1速ギヤ段が成立されている場合には係合していた第1クラッチC1を解放させる。
ハイブリッド制御用コンピュータ42は、パーキングロック機構37が、手動解除機構84による解除状態ではない解除状態非判定時に、通常制御を実施する。すなわち、動力伝達遮断制御部106は、自動変速部22を動力伝達状態に維持する。具体的には、動力伝達遮断制御部106は、車両のシフト位置が走行可能なドライブ位置に切り替えられた際の解除状態非判定時において、それ以前に係合していた第1クラッチC1の係合を維持し、自動変速部22の第1速ギヤ段を成立させるとともに、ブレーキB0を解放させ、走行可能な状態とする。これにより、差動部18の変速によって車両の走行が可能となる。また、動力伝達遮断制御部106は、車両のシフト位置がニュートラル位置に切り替られた際の解除状態非判定時において、それ以前に係合していた第1クラッチC1の係合を維持し、自動変速部22の第1速ギヤ段を成立させるとともに、第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動を非作動にして、差動部18をニュートラル状態とする。これにより、手動解除機構84を介さずにパーキングロック機構37がロック状態から非ロック状態に切り替えられるとともに、車両のシフト位置がパーキング位置からニュートラル位置に切替えられた際の解除状態非判定時において、動力伝達遮断制御部106により動力伝達が差動部18にて遮断されることから、シフト位置のニュートラル位置から走行可能なたとえばドライブ位置への切替わり時における車両の発進応答性が確保される。
また、ハイブリッド制御用コンピュータ42は、パーキングロック機構37のロック状態を手動解除機構84による手動で解除後に、SBW−ECU指示値とエンコーダ50により計測される電動モータ48の相対角変位およびシフトセンサ信号値とを比較して、パーキングロック機構37のロック状態がシフト用コンピュータ40を介して電気的に解除されたか否かを判定する。ハイブリッド制御用コンピュータ42は上記判定が肯定される場合には、解除状態判定時での制御から前記通常制御へ復帰する。
図7は、ハイブリッド制御用コンピュータ42のパーキングロック機構37のロック状態から非ロック状態への解除が行われた際の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図8は、車両がReady−ONの電源状態にあるときに、パーキングロック機構37のロック状態から非ロック状態への解除が、手動解除機構84を介して手動の操作力により為された際のハイブリッド制御用コンピュータ42の制御作動の一例を説明するタイムチャートである。
図7において、パーキングロック機構37の手動でのロック解除が開始されると(図8のt1時点)、解除状態判定部102の機能に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する。)S1において、パーキングロック機構37が、手動解除機構84による解除状態であるか否かが判定される。手動解除機構84の操作ケーブル86への手動の操作力により、制御軸64の回動角度が所定の閾値よりも大きくなり(図8のt2時点)、シフトセンサ信号値がパーキング位置から非パーキング位置へと切替えられると、SBW−ECU指示値がパーキング位置であり、シフトセンサ信号値の非パーキング位置とt2時点で不一致であるため、パーキングロック機構37の解除状態が、手動解除機構84による解除状態であると判定され、手動P解除状態フラグがOFFからONに切替えられる。また、手動P解除状態フラグがOFFからONに切替えられるt2時点で、車両の電源状態がReady−ONであるため、エンジン運転禁止フラグがOFFからONに切替えられる。なお、エンコーダ50により計測される電動モータ48の相対角変位を示すエンコーダ変位角信号は、制御軸64の回動角と同様に大きくなっている。このような状態では、S1の判定が肯定されるので、駆動源作動禁止部104および動力伝達遮断制御部106の機能に対応するS2において、エンジン26、第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動が禁止されるとともに、動力伝達装置8の動力伝達が自動変速部22にて遮断される(図8のt2時点)。これにより、エンジン始動が禁止されるとともに、インバータ108がシャットダウンされて第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動が禁止される。また、第1クラッチC1に係合圧を供給する油圧アクチュエータへの油圧指令信号PbC1が係合から解放(図8における「0」に相当)に切替えられて、自動変速部22がニュートラル状態にされる。S2実行後、本フローチャートが終了させられる。しかし、パーキングロック機構37の解除状態が手動解除機構84による解除状態ではない解除状態非判定時には、S1の判定が否定されるので、動力伝達遮断制御部106の機能に対応するS3において、前記通常制御が実行される。S3実行後、本フローチャートが終了させられる。
上述のように、本実施例のハイブリッド制御用コンピュータ42によれば、手動解除機構84によりパーキングロック機構37が解除された解除状態を判定する解除状態判定部102と、解除状態判定部102による解除状態判定時に動力伝達装置8を動力伝達遮断状態とする動力伝達遮断制御部106と、解除状態判定部102による解除状態判定時に駆動源の作動を禁止する駆動源作動禁止部104とを、含む。このため、パーキングロック機構37が、ドライバの操作力での手動解除機構84による解除状態である解除状態判定時に動力伝達遮断制御部106により動力伝達装置8の自動変速部22の動力伝達が遮断されるので、車両を外力により移動可能となり、車両の外力での移動時での駆動輪から動力が伝達されることによる動力伝達装置8の耐久性の低下を抑制することができる。また、解除状態判定時に前記駆動源の作動が禁止されるので、駆動源の作動による駆動輪への不要な駆動力の伝達を抑制できるとともに、外力での移動時において電池容量の低下などにより駆動源が不意に始動することによる車両振動や音の発生を抑制できる。
また、本実施例のハイブリッド制御用コンピュータ42によれば、動力伝達装置8は直列に配置された差動部18および自動変速部22を備え、動力伝達遮断制御部106は解除状態判定部102による解除状態判定時には自動変速部22にて動力伝達装置8を動力伝達遮断状態とし、解除状態判定部102による解除状態非判定時は差動部18にて動力伝達装置8を動力伝達遮断状態とする。このため、手動解除機構84によりパーキングロック機構37がロック状態から解除された解除状態判定時には、自動変速部22が動力伝達遮断状態とされることにより、被牽引時などの車両の外力での移動時での駆動輪から動力が伝達されても差動部18が回転させられることがないので、回転部材が減り、動力伝達装置8の耐久性を向上することができるとともに、エンジン26の作動による駆動輪への不要な駆動力の伝達が抑制される。また、変速制御による各油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータへの係合圧の供給に伴うエネルギ消費(燃費悪化)が抑制される。また、手動解除機構84を介さずにパーキングロック機構37がロック状態から非ロック状態に切替えられるとともに、車両のシフト位置がパーキング位置からニュートラル位置に切替えられた際の解除状態非判定時において、差動部18にて動力伝達遮断状態とされることにより、シフト位置がニュートラル位置から走行可能なたとえばドライブ位置に切替えられる際の発進応答性を高めることができる。
また、本実施例のハイブリッド制御用コンピュータ42によれば、解除状態判定時に駆動源作動禁止部104は駆動源としてエンジン26の作動を禁止する。このため、解除状態判定時において、エンジン26の作動による駆動輪への不要な駆動力の伝達を抑制できる。また、車両の外力での移動時での、たとえば電池容量の低下などによる発電の要求でエンジン26が始動することによる車両振動や音の発生が抑制される。
また、本実施例のハイブリッド車両用コンピュータ42によれば、解除状態判定時に駆動源作動禁止部104は第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動を禁止する。このため、解除状態判定時において、第1電動機MG1および第2電動機MG2の作動による駆動輪への不要な駆動力の伝達が抑制され、動力伝達装置8の耐久性の低下が抑制される。また、電動機の作動による必要以上の電力の消費が抑制される。
以上、本発明を表及び図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
たとえば、前述の実施例の動力伝達装置8を備えた車両によれば、第1電動機MG1および第2電動機MG2の2つの電動機を有する差動部18と自動変速部22とを備えるものであったが、これに限定されるものではない。たとえば、駆動源として1つの電動機を含み、動力伝達機構として自動変速機を備える車両であってもよく、解除状態判定時に自動変速機の動力伝達が遮断されるとともに駆動源の作動が禁止されることにより、車両を外力により移動可能な状態とすることができ、上記電動機を含めた駆動源の作動による駆動輪への不要な駆動力の伝達が抑制される。
また、前述の実施例のハイブリッド制御用コンピュータ42によれば、動力伝達遮断制御部106は、解除状態判定時には自動変速部22にて動力伝達装置8を動力遮断状態とするものであったがこれに限定されるものではなく、たとえば、動力伝達遮断制御部106は、動力伝達装置8の動力伝達遮断状態のニュートラル位置から走行可能なドライブ位置への切替わり時の発進応答性および油圧式摩擦係合装置への係合圧の供給に伴うエネルギ消費を考慮して、車両がReady−ONの電源状態にあるときの車速Vや走行モードに応じて、動力伝達装置8の自動変速部22での動力伝達遮断状態と差動部18での動力伝達遮断状態とを選択するように構成してもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。