以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両10に備えられるハイブリッド車両用駆動装置12の構成を説明する骨子図である。この図1に示すように、本実施例のハイブリッド車両10(以下、「車両10」という。)に備えられるハイブリッド車両用駆動装置12(以下、「駆動装置12」という。)は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース14(以下、「ケース14」という)内において共通の軸心上に配設された、入力軸16と、その入力軸16に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパ(振動減衰装置)等を介して間接に連結された差動部18と、その差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路に伝達部材(伝動軸)20を介して直列に連結されている自動変速部22と、その自動変速部22に連結された出力軸24とを、直列に備えている。なお、自動変速部22は本発明の変速機に対応する。
本実施例の駆動装置12は、例えばハイブリッド車両(以下、「車両」という。)において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸16に連結された走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン26により発生させられた動力を、出力軸24から図示しない差動歯車装置およびその差動歯車装置と一対の駆動輪との間の図示しない車軸を介して一対の駆動輪へと伝達する。なお、本実施例の駆動装置12において、エンジン26と差動部18とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパ等を介する連結はこの直結に含まれる。また、駆動装置12はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部18は、第1電動機MG1と、前記入力軸16に入力されて前記エンジン26の出力を機械的に分配する機械的機構であってそのエンジン26の出力を第1電動機MG1及び伝達部材20に分配する差動機構としての動力分配装置28と、伝達部材20と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機MG2とを、備えている。本実施例の駆動装置12に備えられた第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、三相コイルが巻回された固定子と永久磁石が備えられた回転子から成る3相交流同期モータから構成されており、何れも電動機及び発電機として機能する所謂モータジェネレータとして機能する。斯かる構成により、差動部18は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を介して運転状態が制御されることにより、入力回転速度(入力軸16の回転速度)と出力回転速度(伝達部材20の回転速度)の差動状態が制御される電気式差動部として機能する。
動力分配装置28は、シングルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。この遊星歯車装置は、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転及び公転可能に支持するキャリアCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素(要素)として備えており、キャリアCA0は入力軸16すなわちエンジン26に連結され、サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は伝達部材20に連結されている。また、エンジン26が連結された入力軸16は、ブレーキB0を介して非回転部材であるケース14に選択的に連結される。また、エンジン26により回転駆動されて作動油を吐出し、エンジン26の停止により油圧制御回路への作動油の供給を停止する、機械式油圧ポンプ30が入力軸16に連結されている。
自動変速部22は、差動部18と図示しない駆動輪との間の動力伝達経路にシングルピニオン型の遊星歯車装置32、遊星歯車装置34を主体として構成され、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。遊星歯車装置32、34は、それぞれサンギヤS1、S2、遊星歯車P1、P2、それら遊星歯車P1、P2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、CA2、遊星歯車P1、P2を介してサンギヤS1、S2と噛み合うリングギヤR1、R2を備えている。
また、自動変速部22では、サンギヤS1がブレーキB1を介してケース14に選択的に連結されるようになっている。また、キャリアCA1とリングギヤR2とが一体的に連結され、第2ブレーキB2を介してケース14に選択的に連結されるようになっていると共に、一方向クラッチF1を介してそのケース14に対する一方向の回転が許容されつつ逆方向の回転が阻止されるようになっている。また、サンギヤS2が第1クラッチC1を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、一体的に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2が第2クラッチC2を介して伝達部材20に選択的に連結されるようになっている。また、リングギヤR1とキャリアCA2とが一体的に連結されると共に出力軸24に連結されている。また、出力軸24には、図3に示すパーキングロック機構40のパーキングギヤ60が固定的に連結されている。
自動変速部22においては、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、自動変速部22は、たとえば第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2の全ての解放によりニュートラル「N」状態とされる。差動部18は、ブレーキB0の係合により第1電動機MG1および第2電動機MG2の両方で一対の駆動輪を駆動可能な状態すなわち両駆動状態となり、車両は自動変速部22が動力伝達可能な状態となると、モータ走行となる。
図2は、パーキングロック機構40を制御するために車両10に設けられた制御系統の要部を説明する図であるとともに、その制御系統に含まれる電子制御装置110の制御機能の要部が機能ブロック線図として示されている。図2において、車両10は、駆動装置12、パーキングロック機構40、シフト操作装置50、などを備え、電気制御により自動変速部22のシフトポジション(シフトレンジ)を切り換えるシフトバイワイヤ(SBW)方式を採用している。
また、車両10には、パーキングロック機構40の作動状態を制御する為の電子制御装置110(ECU110)が備えられている。電子制御装置110は、たとえばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン26の出力制御、変速制御、パーキングロック機構40の作動状態の切換制御すなわちシフトバイワイヤ方式を用いた自動変速部22のシフトポジションの切換制御などを実行する。
電子制御装置110には、車両10が備える各種センサ(例えば路面勾配センサ90、外気温センサ92など)による検出信号に基づく各種実際値(例えば路面の勾配θ(°)、外気温T(℃)など)が、それぞれ供給される。
電子制御装置110には、例えば自動変速部22のシフトポジションを切り換える為の操作装置としてのシフト操作装置50の操作状態を示す操作信号が供給される。シフト操作装置50の操作信号としては、例えばシフトレバー52の操作位置(操作ポジション)Pshに応じたシフトレバー位置信号Ple、パーキングスイッチ(Pスイッチ)44の操作状態を示すPスイッチ信号Pswなどである。また、電子制御装置110には、エンコーダ46からの駆動モータ48のロータの回転変位の相対的位置情報やロータ回転数を示す信号、非接触式センサ54からのマニュアルシャフト72に連結された後述する出力軸57の回転変位の絶対的位置情報やその回転数を示す信号などのパーキングロック機構40における作動状態を表す信号が供給される。
また、電子制御装置110は、上記パーキングロック機構40における作動状態を表す信号に基づいて自動変速部22のシフトポジションを判断し、たとえばパーキングロック機構40がパーキングロック位置(Pポジション)であることを表示する為のパーキングロック表示制御指令信号(Pロック表示制御指令信号)をPスイッチ44へ出力し、Pスイッチ44内のパーキングポジションインジケータランプ58を点灯して、パーキングロック位置にあることを明示する。
また、電子制御装置110は、シフトレバー位置信号PleやPスイッチ信号Pswに基づいてアクチュエータ56を介してパーキングロック機構40の作動を制御して自動変速部22のシフトポジションを電気的に切り換える。
シフト操作装置50は、例えば運転席の近傍に配設され、複数の操作ポジションPshへ操作されるモーメンタリ式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(M位置)へ自動的に復帰する自動復帰式のシフトレバー52を備えている。また、シフト操作装置50は、自動変速部22のシフトポジションをパーキングポジション(Pポジション)以外の非Pポジションからパーキングポジションへ切り換える為のモーメンタリ式の操作子としてのPスイッチ44をシフトレバー52の近傍に別スイッチとして備えている。シフト操作装置50は、少なくともPポジションを選択操作可能な操作スイッチとして機能している。
シフトレバー52は、図2に示すように、車両の前後方向または上下方向すなわち縦方向に配列された3つの操作位置であるR操作位置、N操作位置、D操作位置と、それに平行に配列されたM操作位置、B操作位置とへそれぞれ操作されるようになっており、シフトレバー52のシフト操作位置Pshに応じたシフトレバー位置信号Pleを電子制御装置110へ出力する。
Pスイッチ44は、例えば押釦への操作力を解くと押釦が元の位置へ自動的に復帰する自動復帰式かつモーメンタリ式の押し釦型スイッチであって、ユーザにより押込み操作される毎にPスイッチ信号Pswを電子制御装置110へ出力する。
シフト操作装置50のM操作位置はシフトレバー52の初期位置(ホームポジション)であり、M操作位置以外の操作位置Psh(R,N,D,B操作位置)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー52を解放すればすなわちシフトレバー52に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー52はM操作位置へ戻るようになっている。
ここで、自動変速部22の各シフトポジションについて説明すると、シフトレバー52がR操作位置へシフト操作されることにより選択されるリバースポジション(Rポジション)は、車両10を後進させる駆動力が駆動輪に伝達される後進走行ポジションである。また、シフトレバー52がN操作位置へシフト操作されることにより選択されるニュートラルポジション(Nポジション)は、動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジションである。また、シフトレバー52がD操作位置へシフト操作されることにより選択されるドライブポジション(Dポジション)は、車両10を前進させる駆動力が駆動輪に伝達される前進走行ポジションである。また、シフトポジションが非Pポジションにある状態で、Pスイッチ44の押釦が操作されたときに所定の条件が満たされている場合に選択されるパーキングポジション(Pポジション)は、動力伝達経路が遮断され、且つパーキングロック機構40の作動位置がパーキングロック位置とされる駐車モードである。なお、シフトポジションがRポジション、NポジションおよびDポジションの非Pポジションにあるときには、パーキングロック機構40の作動位置は非パーキングロック位置である。
また、シフトレバー52がB操作位置へシフト操作されることにより選択されるBポジションは、それまでのDポジションでの前進走行よりもエンジンブレーキ効果を発揮させ駆動輪の回転を減速させる減速前進走行ポジション(エンジンブレーキレンジ)である。従って、電子制御装置110は、現在のシフトポジションがDポジション以外のシフトポジションであるときにシフトレバー52がB操作位置へシフト操作されてもそのシフト操作を無効とし、DポジションであるときのみB操作位置へのシフト操作を有効とする。例えば、Pポジションであるときに運転者がB操作位置へシフト操作したとしてもシフトポジションはPポジションのまま継続される。
また、車両10には、たとえば、車両のハイブリッド駆動制御システムを起動させる電源(以下、車両電源という)のオフ(Ready−OFF、レディーオフ)時にオートパーキングロック(オートPロック)制御を行う為の電源制御用コンピュータ120(ECU120)が備えられている。電源制御用コンピュータ120は、電子制御装置110と同様に、たとえばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。
電子制御装置110には、電源制御用コンピュータ120から、Pスイッチ44の操作に拘わらず、車両電源オフ(Ready−OFF、レディーオフ)時にパーキングロック機構40をパーキングロック状態へ切り換えるReady−OFF時オートPロック切換要求信号が供給される。電源制御用コンピュータ120は、たとえばドライバにより操作される自動復帰式かつモーメンタリ式押釦型の電源スイッチ122が押圧操作されると、それからのパワースイッチ操作信号が供給されたとき電子式キーが所持され且つブレーキオン状態Bonであることを条件として、車両電源をオフからオンへ切り換えるが、非走行中に再度操作されたときには車両電源をオンからオフへ切り換える。電源制御用コンピュータ120には、上記の電源スイッチ122におけるスイッチ操作を表すパワースイッチ信号の他に、たとえば車速センサ116により検出された車速Vを表す信号、電子制御装置110からパーキングロック機構40がパーキングロック状態にあるか非パーキングロック状態にあるかを表すPロック状態信号、常用ブレーキの作動を検出するための不図示のフットブレーキペダルが操作されたことを示すブレーキスイッチ124からのブレーキオン状態Bonを表すブレーキ操作信号などが供給される。電源制御用コンピュータ120は、車両電源オフ時にパーキングロック機構40を自動的に非パーキングロック状態からパーキングロック状態へ切り換えるためのオートパーキングロック(オートPロック)制御を開始する所定条件が成立しているか否かを判定する。電源制御用コンピュータ120は、たとえば、パーキングロック機構40が非パーキングロック状態にあるときに、車両の電源状態がオン状態で車速Vが所定車速Vr未満であり、且つ電源スイッチ122の操作により車両電源オフ状態への切換え要求を認識すると、上記所定条件が成立したと判定し、Ready−OFF時オートPロック切換要求信号を電子制御装置110に出力する。
また、車両10には、駆動輪にホイールブレーキ94が備えられており、ホイールブレーキ94には、ドライバにより足踏み操作される不図示のブレーキペダルのブレーキ操作力に応じて車両10を制動する制動力が発生させられる。そして、ホイールブレーキ94は、電子制御装置110から出力されるブレーキ制御信号に従ってそのブレーキ操作力を電気的に制御させられる。ここで、本実施例では、車両電源ON(Ready−ON、レディーオン)時であってアクセルオフ時には、前記ブレーキ操作に拘わらず坂路、たとえば登坂路における車両の移動、たとえば後退を防止するヒルホールド制御が実施されている。ヒルホールド制御時には、坂路途中の車両停止の保持或いは維持のためにブレーキ操作力に対応しない制動液圧が図示しないホイールシリンダへ供給されることにより、車両10はホイールシリンダ94によって制動させられることになる。また、ヒルホールド制御は、Ready−OFF時には実施されない。
図3は、車両10に備えられるパーキングロック機構40およびアクチュエータ56の構成を示す図である。パーキングロック機構40は、シフト操作装置50のシフトレバー52の操作により供給されるシフトレバー位置信号PleやPスイッチ44から出力されるPスイッチ信号Pswに従って作動するアクチュエータ56により、自動変速部22のシフトポジションをPポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジションに電気的に切り換えられるシフトポジション切換機構として機能するとともに、自動変速部22の出力軸24の回転を機械的に固定(ロック)するパーキングロック位置或いは非パーキングロック位置へ切り換え作動させられるパーキングロック機構としても機能する。
図3において、パーキングロック機構40は、車輪(駆動輪)と共に回転する回転歯として出力軸24に固定されたパーキングギヤ60と、パーキングギヤ60に噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ60に噛み合わされることにより出力軸24を回転不能に固定するパーキングロックポール62と、パーキングロックポール62に係合するテーパ部材64に挿し通されてそのテーパ部材64を一端部において支持するパーキングロッド66と、パーキングロッド66に設けられてテーパ部材64をその小径方向へ付勢するスプリング68と、パーキングロッド66の他端部に回動可能に接続されて節度機構により少なくともパーキングポジションに対応する位置決め位置に位置決めされるディテントレバー70と、ディテントレバー70に固設されて一軸心まわりに回転可能に支持されたマニュアルシャフト72と、ディテントレバー70の回転に節度を与えてそのディテントレバー70を各シフトポジションに対応する位置決め位置に固定するディテントスプリング74及びその先端部に設けられた係合部76と、を備えている。マニュアルシャフト72は、その一端部にアクチュエータ56の出力軸57がスプライン嵌合により動力伝達可能に連結されており、減速機構59を介して駆動モータ48の動力が伝達されることにより軸回りに回転駆動させられる。駆動モータ48は、エンコーダ46(図2に示す)を備えている。アクチュエータ56の出力軸57には非接触式センサ54が設けられている。また、パーキングギヤ60は、それがロック状態とされれば駆動輪もロック状態とされる関係にあれば設けられる場所に制限は無いが、例えば出力軸24にそれと同心に固定されている。
ディテントレバー70には、マニュアルバルブ78のスプール弁子80の一端がディテントレバー70に設けられたピン82を介して係合させられており、マニュアルシャフト72の回転すなわちディテントレバー70のマニュアルシャフト72の軸心まわりの回動に伴ってマニュアルバルブ78のスプール弁子80がそのスプール弁子80の軸心方向に摺動させられるようになっている。スプール弁子80を摺動可能に収容するバルブボデー84内には、変速作動等を制御する為のソレノイドバルブ等に関する不図示の油圧制御回路を構成する油路の一部が設けられている。
ディテントレバー70は、マニュアルシャフト72を介して駆動モータ48に作動的に連結されており、パーキングロッド66、ディテントスプリング74、係合部76などと共に駆動モータ48により駆動されてシフトポジションが切り換わる際のシフトポジション位置決め部材として機能する。ディテントレバー70の頂部には、パーキングポジション指令位置Pと、リバースポジション指令位置R、ニュートラルポジション指令位置Nおよびドライブポジション指令位置Dの非パーキングポジション指令位置とにそれぞれ対応して設けられた複数の凹部が形成されており、それらのうちの端に位置する凹部86がパーキングポジション指令位置Pに対応している。駆動モータ48の作動すなわちディテントレバー70の回動に伴って、図3に示すディテントレバー70の頂部に設けられた複数の凹部(谷)のうち何れかにディテントスプリング74の係合部76が係合させられる。係合部76は、その軸心まわりに回転可能にディテントスプリング74に設けられている。ここで、マニュアルシャフト72すなわちディテントレバー70は、係合部76がパーキングポジション指令位置Pに対応する凹部86に係合される回転位置にあるときは、シフトポジションはパーキングポジションであり、係合部76がニュートラルポジション指令位置Nなどの非パーキングポジション指令位置に対応する凹部に係合される回転位置にあるときは、シフトポジションは、たとえばニュートラルポジション、ドライブポジション、リバースポジションなどの非パーキングポジションである。
図3は、シフトポジションが非パーキングポジションであるとき、すなわちパーキングロック機構40がパーキングロックされていない非パーキングロック位置にある状態を示している。パーキングロックポール62は、パーキングロッド66の一端に設けられているテーパ部材64との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。係合部76がパーキングポジション指令位置に対応する凹部86から非パーキングポジション指令位置に対応する凹部に移動させられるときには、矢印A方向にテーパ部材64が移動させられ、パーキングロックポール62がテーパ部材64の小径部と当接し、パーキングロックポール62がパーキングギヤ60と噛み合うことのない位置まで矢印Bの方向へ押し下げられる。これにより、出力軸24及びこれに連結された車両10の駆動輪が機械的に固定されなくなる。そして、その係合部76が係合させられた凹部86以外の凹部に対応する位置に位置決めされたスプール弁子80によりマニュアルバルブ78の油路が切り換えられるようになっている。一方、駆動モータ48の作動により係合部76が非パーキングポジション指令位置に対応する凹部からパーキングポジション指令位置Pに対応する凹部86に移動させられるときには、上述とは逆の作動によりパーキングロックポール62がテーパ部材64の大径部と当接し、パーキングギヤ60とパーキングロックポール62とが噛み合うことで、パーキングロック機構40が図示しないパーキングロック位置とされる。パーキングロック機構40の作動位置がパーキングロック位置にある場合、パーキングロックポール62とパーキングギヤ60とが噛み合わされることで、パーキングギヤ60の回転が阻止され、駆動輪の回転も同様に阻止される。また、マニュアルバルブ78の油路が、係合部76が係合させられた凹部86に対応する位置に位置決めされたスプール弁子80によりパーキングポジションに対応する状態に切り換えられる。
電子制御装置110は、たとえば駆動モータ48の検出回転角度(エンコーダカウント値)がシフト操作装置50で選択されたシフトポジションに対応する目標回転角度と一致する位置で停止するように駆動モータ48を駆動する。
図2に戻り、電子制御装置110の制御機能の要部を説明する。電子制御装置110は、レディーオフスイッチ操作判定(以下、Ready−OFFスイッチ操作判定という)手段すなわちReady−OFFスイッチ操作判定部130、路面勾配検出手段すなわち路面勾配検出部134、路面勾配判定手段すなわち路面勾配判定部136、手動切換操作判定手段すなわち手動切換操作判定部138、レディーオフ実行制御(以下、Ready−OFF実行制御という)手段すなわちReady−OFF実行制御部140、シフト制御手段すなわちシフト制御部142、ヒルホールド制御手段すなわちヒルホールド制御部144、および警告出力手段すなわち警告出力部146を、備えている。
Ready−OFFスイッチ操作判定部130は、ドライバが車両電源をオフにするReady−OFFスイッチを操作してReady−OFF状態を要求したか否かを判定する。具体的には、本実施例ではドライバが車両電源を遮断するために電源スイッチ122をオフ操作してReady−OFF状態を要求したか否かを判定する。
路面勾配検出部134は、車両10が停車する路面勾配を検出する。具体的には、車両10が備える路面勾配センサ90により検出される路面勾配信号に基づき、車両10が停車する路面の勾配θを検出する。
路面勾配判定部136は、路面勾配検出部134で検出された路面の勾配θが予め設定された路面勾配閾値θth以上であるか否かを判定する。たとえば、ドライバが電源スイッチ122をオフ操作してReady−OFF状態となり、オートパーキング制御によってパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック状態へ切り換えられた場合に、路面の勾配θの影響で車両がずり下がる可能性のある路面の勾配θを路面勾配閾値θthが予め実験的に設定されており、路面勾配判定部136は、路面勾配検出部134で検出された路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であるか否かを判定する。
手動切換操作判定部138は、Pスイッチ44によりパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されたことを判定する。具体的には、ドライバがシフトポジションをパーキングポジションに移行させるために、Pスイッチ44を手動操作してパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されたか否かを判定する。ここで、路面の勾配θが予め設定された路面勾配閾値θth以上である場合に、ドライバによりPスイッチ44が操作されずに電源スイッチ122がオフ操作されると、電子制御装置110内の警告出力部146は、ドライバが認識できるようにパーキングスイッチを押すべき旨の警告を出力する。前記警告は、たとえば、警告音を発生させたり、車両10に備えられる図示しない液晶画面に警告文字或いは図形を表示させ、または警告灯を点灯或いは点滅させることによりドライバに認識させる。
Ready−OFF実行制御部140は、ドライバによりPスイッチ44を手動操作してパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されたと手動切換操作判定部138によって判定された場合には、車両電源をオフするReady−OFF制御を実行する。たとえば、Ready−OFF実行制御部140は、ドライバによりReady−OFF状態が要求され、車両10が停車している路面の勾配θが路面勾配閾値θthを下回る場合には、車両電源をオフするReady−OFF制御を実行するが、ドライバによりReady−OFF状態が要求され、車両10が停車している路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であった場合には、ドライバがPスイッチ44を手動操作してパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されたと手動切換操作判定部138によって判定されるまで車両電源を維持した後に車両電源をオフするReady−OFF制御を実行する。
シフト制御部142は、ドライバによる電源スイッチ122のオフ操作に基づいて、所定の条件が満たされている場合には、パーキングロック指令を発生させてシフトポジションをパーキングポジションに切り換える。具体的には、ドライバによりReady−OFF状態が要求され、Ready−OFF実行制御部140によって車両電源をオフするReady−OFF制御が行われると、シフト制御部142は、パーキングロック指令を発生させてパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える。
ヒルホールド制御部144は、ドライバが電源スイッチ122をオフ操作してReady−OFF状態を要求したとしてもReady−OFF実行制御部140によってReady−OFF制御が実行されずにReady−ON状態が維持されている場合には、ヒルホールド制御を継続する。具体的には、アクセルオフ状態であって車両10が停止している路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上の場合に、ドライバによりPスイッチ44が手動操作されずに、車両電源を遮断するために電源スイッチ122がオフ操作されたときには、ヒルホールド制御が実行されて車両の制動状態を維持する。
図4は、電子制御装置110の制御作動の要部、すなわち電源スイッチ122がオフ操作された場合に、路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であるときは、ドライバによりパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されるまで車両電源を維持するための制御作動を説明するフローチャートであり、繰り返し実行される。
Ready−OFFスイッチ操作判定部130に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10では、車両電源を遮断するためにオフ操作されるReady−OFFスイッチすなわち電源スイッチ122が、ドライバにより操作されたか否かが判定される。電源スイッチ122がドライバにより操作されていない場合には、S50において車両電源をオンとするReady−ON制御が継続的に実行される。電源スイッチ122がドライバにより操作された場合には、S20が実行される。
路面勾配検出部134および路面勾配判定部136に対応するS20では、車両10が停止する路面の勾配θが予め設定された路面勾配閾値θth以上であるか否かが判定される。路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上である場合には、S30が実行される。路面の勾配θが路面勾配閾値θthを下回る場合には、S40が実行される。
手動切換操作判定部138に対応するS30では、ドライバがPスイッチ44を手動操作してパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されているか否かが判定される。ドライバがPスイッチ44を手動操作してパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されていない場合には、S50において車両電源をオンとするReady−ON制御が継続される。ドライバがPスイッチ44を手動操作してパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行された場合には、S40が実行される。
Ready−OFF実行制御部140に対応するS40では、車両電源をオフするReady−OFF制御が実行される。ここで、S40でReady−OFF制御が実行されるまで、車両10は車両電源がオン状態のいわゆるReady−ON状態が維持されている。S40が実行されると、本ルーチンは終了させられる。
図5は、従来の車両10の制御装置において、路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であって、ドライバが車両電源をオフにするReady−OFF状態を要求した場合に、アクチュエータ56により自動的にパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える制御が実行された際のタイムチャートの一例を示す図である。t1時点において、たとえばヒルホールド制御により車両が制動されている状態から、ドライバがReady−OFF状態を要求してヒルホールド制御によるブレーキが解放された状態に切り換わる。車速Vはt1時点から時間が経過するに従って上昇していく。t1時点からt2時点までにおいて、電子制御装置110および電源制御用コンピュータ120が予め記憶されているプログラムに従ってオートパーキング制御を実行するための信号処理を行う。t2時点からt3時点までにおいて、たとえば、前記信号処理に基づくアクチュエータ応答指令が電子制御装置110および電源制御用コンピュータ120からアクチュエータ56に出力されて、アクチュエータ56はアクチュエータ応答指令に応答して作動を開始する。t3時点からt4時点までにおいて、アクチュエータ56の作動によりパーキングロック機構40は噛み合わせされてパーキングロック位置へ切り換える。パーキングロック機構40が噛み合わされた際の車速はVt4で表される。
図6は、図2に示す本実施例の電子制御装置110および電源制御用コンピュータ120の制御作動において、路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であって、ドライバが車両電源をオフにするReady−OFF状態を要求した場合に、ドライバによりパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されて、アクチュエータ56により自動的にパーキングロック機構40を前記パーキングロック位置へ切り換える制御が実行された際のタイムチャートを示す図である。t0時点において、ドライバによりパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作、すなわちPスイッチ44が操作される。t1時点において、たとえばヒルホールド制御により車両が制動されている状態から、ドライバがReady−OFF状態を要求してヒルホールド制御によるブレーキが解放された状態に切り換わる。車速Vはt1時点から時間が経過するに従って上昇していく。t0時点からt5時点までにおいて、Pスイッチ44の操作状態を示すパーキングスイッチ信号Pswに基づき、アクチュエータ応答指令が電子制御装置110および電源制御用コンピュータ120からアクチュエータ56に出力されて、アクチュエータ56はアクチュエータ応答指令に応答して作動を開始する。t5時点からt6時点までにおいて、アクチュエータ56の作動によりパーキングロック機構40は噛み合わせされてパーキングロック位置へ切り換える。パーキングロック機構40が噛み合わされた際の車速はVt6で表される。図5および図6で示すように、パーキングロック機構40が噛み合わされた際の車速は、ドライバによりパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されない従来の制御と比べて、Vt4−Vt6分だけ低減されている。なお、図6には、図5に示す従来の車両10の制御装置における制御と比較しやすくするため、図5におけるt2時点、t3時点およびt4時点を合わせて記載している。
本実施例のように、ドライバによりたとえばPスイッチ44が操作されてパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されると、図5および図6に示すように、従来のオートパーキング制御で発生する電子制御装置110および電源制御用コンピュータ120の処理時間が不要となる。これにより、パーキングロック機構40が噛み合いパーキングロック位置へ切り換えられるまでの時間が短縮されて、パーキングロック機構40が噛み合う際の車両速度が低減される。
このように、本実施例によれば、車両電源を遮断するための電源スイッチ122のオフ操作に基づいてパーキングロック機構40の作動位置をパーキングロック位置へ切り換える操作される車両10の制御装置において、車両電源を遮断するために電源スイッチ122がオフ操作された場合に、路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であると路面勾配判定部136により判定されたときは、ドライバによりパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されたと手動切換操作判定部138により判定されるまで車両電源が維持される。つまり、ドライバによりPスイッチ44が操作されてパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行された後に、車両電源が遮断される。このため、従来の制御装置による制御たとえばオートパーキング制御において必要となる、シフトポジションをパーキングポジションに移行させるための制御装置の処理時間が不要になる。これにより、パーキングロック機構40が噛み合ってパーキングロック位置へ切り換えられるまでの時間が短縮されて、パーキングロック機構40が噛み合う際の車両速度が低減されるので、パーキングロック機構40の耐久性が低下することを抑制することができる。
また、本実施例によれば、路面勾配判定部136で路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であると判定されて、かつ、ドライバによりパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されずに、車両電源を遮断するためにオフ操作される電源スイッチ122が操作された場合には、ドライバが認識できるようにPスイッチ44を押すべき旨の警告を出す制御を実行する。これにより、ドライバが車両電源の遮断が実行されない理由を認識することができ、ドライバに煩わしさを与えることを防止することができる。
また、本実施例によれば、路面勾配判定部136で路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上であると判定されて、かつ、ドライバによりパーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作が実行されずに、車両電源を遮断するためにオフ操作される電源スイッチ122が操作された場合には、坂路における車両のずり下がりを防止するヒルホールド制御を実行する。ここで、路面の勾配θが路面勾配閾値θthを下回る場合には、車両電源がオフされると自動的にオートパーキング制御が実施されるが、路面の勾配θが路面勾配閾値θth以上である場合に、同様のオートパーキング制御が実施されるとドライバが誤認していると、ドライバが電源スイッチをオフ操作するとともにブレーキペダルから足を離してしまい車両がずり下がる可能性がある。そこで、ヒルホールド制御を実行することにより、路面勾配閾値θth以上の路面の勾配θにおいて、ドライバにより車両電源を遮断するためにオフ操作される電源スイッチ122が操作されるとともにたとえばブレーキペダルから足が離された場合に、車両のずり下がりを防止することができる。
また、本実施例によれば、外気温度が低いほど、路面勾配閾値θthを低く設定する。外気温度が低いほどアクチュエータ56の応答時間は長くなりパーキングロック機構40の噛合い時の車速が高くなるので、路面勾配閾値θthを低く設定することにより、パーキングロック機構40の噛合い時の車速を低くすることができる。これにより、パーキングロック機構の耐久性を向上させることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の様態にも適用される。たとえば、前述の実施例では、パーキングロック機構40をパーキングロック位置へ切り換える操作はPスイッチ44で実行されていたが、必ずしもこれに限らず、釦式、レバー式、あるいは液晶等の画面操作式による操作であってもよい。
また、前述の実施例では、路面の勾配θが予め設定された路面勾配閾値θth以上である場合に、ドライバによりPスイッチ44が操作されずに電源スイッチ122がオフ操作されると警告を出力する警告出力部146が電子制御装置110に設けられていたが、必ずしも設けられていなくてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。