JP2017052937A - ポリエステル系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】難燃性と溶融熱安定性に優れ、レーザー印字性にも優れるポリエステル系樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の蛍光X線分析法によって測定されるNa元素濃度が5ppm以上であリ、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル系樹脂組成物に関するものであり、詳しくは、難燃性と溶融熱安定性に優れ、レーザー印字性にも優れたポリエステル系樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、電気電子機器部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に広く用いられている。
電気電子機器部品等は、近年の著しい部品の小型化薄肉化の進展に伴い、薄肉での高度の難燃性が求められており、UL−94で規定する垂直燃焼ランクV−0を達成することが要望されている。熱可塑性樹脂を難燃化するには難燃剤が配合される。
本出願人は、特許文献1にて、熱可塑性ポリエステル樹脂に、臭素系難燃剤を特定量含有し、遊離の臭素量が特定量以下であり、樹脂組成物のイエローインデックスが23以下であるポリエステル樹脂組成物の発明を提案した。この発明では、臭素系難燃剤として、具体的には、ペンタブロモベンジルポリアクリレート等の臭素化ベンジルポリ(メタ)アクリレート、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、臭素化イミド化合物が好ましく、特には臭素化ポリスチレンが好ましいことが開示されている(特許文献1[0022]参照)。
しかしながら、ここで好ましい難燃剤とされる臭素化ポリアクリレート系難燃剤を熱可塑性ポリエステル樹脂に配合してコンパウンディングすると、熱可塑性ポリエステル樹脂が、分解してしまうことがあったり溶融熱安定性が悪くなりやすいことが見いだされた。
また、機器部品には、通常、製造会社名、銘柄名、品番または製造ロットナンバー等を明示するための印字が施されるが、最近は、印字速度の速いレーザーマーキングが多用されている。特に部品の小型化などから、より鮮明な印字特性が要求され、且つ印字速度の向上による生産性向上の観点から、レーザー印字性に優れることも求められている。
したがって、熱可塑性ポリエステル樹脂に臭素化ポリアクリレート系難燃剤を適用する場合、難燃性は勿論、溶融熱安定性に優れ、さらにレーザー印字性にも優れることが必要となる。
特開2013−57009号公報
本発明の目的(課題)は、難燃性、溶融熱安定性に優れ、さらにレーザー印字性にも優れるポリエステル系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、臭素化ポリアクリレート系難燃剤中には、その製造過程でNaが混入することがあり、そのNaの量が、熱可塑性ポリエステル樹脂の熱安定性に大きく関係し、且つレーザー印字性に影響すること、適正なNa元素濃度にした上でホスフェート系安定剤を配合することで上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の通りである。
[1]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の蛍光X線分析法によって測定されるNa元素濃度が5ppm以上であリ、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
[2]臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)のNa元素濃度が5〜7000ppmである上記[1]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[3]臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)のICP発光分光分析により測定されるMgイオン濃度が5〜2000ppmであり、Alイオン濃度が5〜3000ppmである上記[1]又は[2]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[4]臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)がペンタブロモベンジルポリアクリレートである上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[5]臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)が臭化ナトリウムを含有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[6]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物の原子吸光分析法によって測定されるNa元素濃度が1ppm以上であり、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、難燃性と溶融熱安定性に優れ、レーザー印字性にも優れる。
本発明の第1の態様のポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の蛍光X線分析法によって測定されるNa元素濃度が5ppm以上であリ、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とする。
また、本発明の第2の態様のポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物の原子吸光分析法によって測定されるNa元素濃度が1ppm以上であり、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、また、「ppm」とは質量ppmを意味する。
[熱可塑性ポリエステル樹脂(A)]
本発明の樹脂組成物の主成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れであってもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等をエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール等、及びそれらの混合物等が挙げられる。なお、少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
中でも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートである。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4−ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、0.3〜2dl/gであるものが好ましい。固有粘度が0.3dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化したりする場合がある。固有粘度は、成形性及び機械的特性の点からして、より好ましくは0.4dl/g以上、さらには0.5dl/g以上、特には0.6dl/g以上が好ましく、また、より好ましくは1.5dl/g以下、さらには1.2dl/g以下、特には0.8dl/g以下が好ましい。
なお、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、通常3eq/ton、好ましくは5eq/ton、より好ましくは10eq/tonである。
なお、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mlに樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
中でも、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むものであることが好ましく、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)中の50質量%以上がポリブチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法が好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物などを挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタンアルコラート、テトラフェニルチタネートなどのチタンフェノラートなどを挙げることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「変性ポリブチレンテレフタレート樹脂」ということもある。)であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール)を共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いる場合は、共重合体中のテトラメチレングリコール成分の割合は3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるダイマー酸成分の割合は、カルボン酸基として0.5〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合は、全カルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の割合は、カルボン酸基として1〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%がより好ましく、3〜15モル%がさらに好ましい。
変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるものが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、40eq/ton以下であることがより好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としては、ポリブチレンテレフタレートホモポリマーと前記変性ポリブチレンテレフタレート樹脂とを含むものも好ましい。変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を特定量含有することにより、ウエルド強度が向上しやすくなり好ましい。
ポリブチレンテレフタレートホモポリマーと変性ポリブチレンテレフタレート樹脂とを含有する場合の含有量は、ポリブチレンテレフタレートホモポリマーと変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の合計100質量%に対して、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂が、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%である。
さらに、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とを含有することも好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とを含有する場合の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂の合計100質量%に対して、ポリエチレンテレフタレート樹脂が、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜45質量%であり、さらに好ましくは15〜40質量%である。
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位を主たる構成単位とする樹脂であり、オキシエチレンオキシテレフタロイル単位以外の構成繰り返し単位を含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造されるが、他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の如き三官能、もしくはピロメリット酸の如き四官能のエステル形性能を有する酸、又はグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の如き三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコールを1.0モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下を共重合せしめたものであってもよい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、好ましくは0.3〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.3〜1.2dl/g、特に好ましくは0.4〜0.8dl/gである。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基の濃度は、3〜50eq/ton、中でも5〜40eq/ton、更には10〜30eq/tonであることが好ましい。
なお、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求める値である。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
[臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、難燃剤として臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を含有する。臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)としては、臭素原子を含有するアクリレートモノマー、特にベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、又は2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1〜5個、中でも4〜5個付加したものであることが好ましい。
臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロモベンジルアクリレート、テトラブロモベンジルアクリレート、トリブロモベンジルアクリレート、又はそれらの混合物等が挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には、例えばアクリル酸や、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸や、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
共重合させるために使用される他のビニル系モノマーは、通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下で用いることが好ましい。
また、他のビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロモキシレンジアクリレート、テトラブロモキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン等を使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)としては、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、高臭素含有量であること、電気絶縁特性(耐トラッキング特性)が点で好ましい。
本発明では、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)として、蛍光X線分析法によって測定されるNa元素濃度が5ppm以上であるものを使用する。Na元素濃度が5ppmより少ないものでは、ポリエステル樹脂組成物より得られる成形体のレーザー印字性が悪くなる。
Na元素濃度の下限は、好ましくは10ppmであり、より好ましくは30ppmであり、さらに好ましくは50ppmであり、中でも100ppm、特には500ppmが好ましい。その上限としては、好ましくは7000ppmであり、より好ましくは6000ppmであり、さらに好ましくは5000ppm、中でも4000ppm、特には3000ppm、最も好ましくは2000ppmである。
ここで、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)中のNa元素濃度は、蛍光X線分析法により測定される。なお、Na元素濃度が低濃度で、仮に蛍光X線分析法にて非検出となった場合は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法ICP発光分光分析により改めて測定を行う。
臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)中のNa元素濃度の調整は、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を水又はメタノール等の溶剤で洗浄することで可能である。Na元素濃度をより低濃度にするには水で洗浄することが好ましい。
臭素系難燃剤として、ペンタブロモベンジルポリアクリレート(以下、PBBPAともいう。)を例に本発明に用いる臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の好ましい製造方法を説明すると、本発明で使用されるPBBPAは、好ましくは以下の工程1〜4からなる方法で製造される。
工程1:C−CH+Br → CBr−CH
工程2:C−CH+Br → CBr−CHBr
工程3:CBr−CHBr + CH=CH−COOH
→CH=CH−COOCH−CBr
工程4:CH=CH−COOCH−CBr →重合→PBBPA
この製造方法によれば、臭素濃度の高いPBBPAを高収率で得ることができる。上記工程3において、HBr、NaOH、無水炭酸Na等を添加することが行われ、そのため得られるPBBPAにはNaがNaBr等の形で存在する。Na元素濃度を5ppm近くまで減少させるには、水洗浄することが好ましく、好ましくは40〜100℃、より好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは85〜100℃の温水で洗浄することが好ましい。水洗浄後は、乾燥してNa元素濃度が5ppm以上のPBBPAを得ることができる。
また、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法であるICP発光分光分析により測定されるMgイオン濃度が5〜2000ppmであることが好ましい。また、Alイオン濃度が5〜3000ppmであることが好ましい。Mgイオン濃度がこのような範囲にあることでPBT樹脂組成物の滞留熱安定性が良好となり。また、Alイオン濃度が上記範囲にあることで成形加工性の点から良好となる。
臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5.5以下であるものが好ましい。Mw/Mnが5.5以下であるものを用いることで、難燃性に優れ、成形時のガス発生量が少なく金型汚染が低減されやすく、また溶融熱安定性やレーザー印字性にも優れた樹脂組成物となりやすい。その理由は、未だ十分には解明できてはいないが、Mw/Mnが5.5以下という狭い分子量分布であることで、ガス発生原因となりやすい低分子量成分が少ないことに起因しているものと考えられる。Mw/Mnは、より好ましくは5.0以下であり、さらに好ましくは4.5以下であり、また、より好ましくは3.0以上である。
また、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の質量平均分子量(Mw)は、大きい方が発生する腐食性ガスは少なくなるため好ましい。具体的には、10000以上が好ましく、15000以上がより好ましく、20000以上がさらに好ましい。質量平均分子量(Mw)に上限はないが、大きすぎると溶融分散が十分にできないことが考えられるので、ある程度は小さい方が好ましく、具体的には200000以下が好ましく、100000以下であればより好ましく、50000以下であればさらに好ましい。
数平均分子量(Mn)も考え方は上記した質量平均分子量(Mw)と同様に、大きい方が発生する腐食性ガスは少ないと考えられるので好ましい。具体的にはで3000以上が好ましく、4500以上であればより好ましく、6000以上であればさらに好ましい。数平均分子量(Mn)に上限はないが、これも質量平均分子量(Mw)と同様に大きすぎると溶融分散が十分にできないことが考えられるので、ある程度は小さい方が好ましく、具体的には30000以下が好ましく、20000以下であればより好ましく、10000以下であればさらに好ましい。
また、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の分子量分布は、シングルピークであることが好ましい。さらに、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の分子量分布がシングルピークであって、且つその最大ピーク位置は分子量20000〜50000の範囲にあることがより好ましい。
臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の分子量分布Mw/Mnを5.5以下に、また、さらに好ましくはシングルピークに調整するには、各種の公知の方法で可能であるが、原料臭素化アクリレート単量体をジクミルパーオキサイド等の重合開始剤にて重合する際の攪拌速度を調整する方法とか、アルキルリチウム重合開始剤を用いてアニオン重合する方法、あるいはアルキルマグネシウムブロミド等のグリニヤール試薬を重合開始剤として重合する方法等が挙げられる。
また、市販されているものの中から、条件を満たすものを適宜選択して使用することでも可能である。
臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、3〜60質量部であり、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、さらには10質量部以上が好ましく、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらには30質量部以下が好ましい。含有量が3質量部を下回ると難燃性が低下傾向となり、またレーザー印字性が悪くなる。逆に、60質量部を超えると発生ガスが多く、金型汚染ならびに成形品においても接点汚染等の原因となり、またポリエステル組成物製造時に樹脂の溶融熱安定が不要となり、粘度保持性が低下してしまう。
[ホスフェート系安定剤(C)]
本発明の樹脂組成物は安定剤として、ホスフェート系安定剤(C)を含有する。
ポリエステル系樹脂用の安定剤としては、リン系安定剤、、フェノール系安定剤、硫黄系安定剤等、種々の安定剤があるが、同じリン系安定剤でもホスファイト系安定剤等では効果は不十分であり、本発明ではホスフェート系安定剤(C)を含有する。
ホスフェート系安定剤(C)としては、下記一般式(1)で表される有機ホスフェート化合物又はその金属塩が好ましい。
O=P(OH)(OR3−n ・・・(1)
(一般式(1)中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。nは0〜2の整数を表す。なお、nが0のとき、3つのRは同一でも異なっていてもよく、nが1のとき、2つのRは同一でも異なっていてもよい。)
金属塩としては、Zn塩、Al塩、Mg塩、Ca塩等が好ましく、Zn塩又はAl塩が好ましく、Zn塩が好ましい。
上記一般式(1)において、Rはアルキル基又はアリール基を表すが、Rは、炭素数が1以上、好ましくは2以上であり、通常30以下、好ましくは25以下のアルキル基、又は、炭素数が6以上、通常30以下のアリール基であることがより好ましいが、Rは、アリール基よりもアルキル基が好ましい。なお、Rが2以上存在する場合、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)で示される有機ホスフェート化合物として、より好ましくは、Rが炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
また、これらの金属塩も同様に挙げられ、特にZn塩、Al塩が好ましい。
これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社製の商品名「アデカスタブAX−71」として市販されている。また、オクタデシルアシッドホスフェートの亜鉛塩も好ましく、城北化学工業社製の商品名「JP−518Zn」として市販されている。
なお、ホスフェート系安定剤(C)は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
ホスフェート系安定剤(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1.5量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.05〜0.8質量部である。
[アンチモン化合物]
本発明の樹脂組成物は、難燃助剤であるアンチモン化合物を含有することが好ましい。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、三酸化アンチモンが好ましい。
アンチモン化合物の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは0.7〜18質量部、さらに好ましくは1〜15質量部、特には2〜13質量部、最も好ましくは3〜10質量部である。
本発明の樹脂組成物中の臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)由来の臭素原子と、アンチモン化合物由来のアンチモン原子の質量濃度は、両者の合計で通常3〜25質量%であり、4〜22質量%であることが好ましく、5〜16質量%であることがより好ましく、6〜15質量%であることがさらに好ましい。3質量%未満であると難燃性が低下する傾向があり、25質量%を超えると機械的強度や耐トラッキング特性が低下する場合がある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。
[フェノール系安定剤]
本発明の樹脂組成物は、ホスフェート系安定剤に加えて、フェノール系安定剤も含有することが好ましい。フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)が好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製(商品名、以下同じ)「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−412S」等が挙げられる。
なお、ヒンダードフェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
フェノール系安定剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部であることが好ましい。含有量が0.01質量部未満であると、熱安定性が低下する傾向にあり、1質量部を超えると、発生ガス量が増大する場合がある。より好ましい含有量は、0.05〜0.8質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.6質量部である。
本発明においては、ホスフェート系安定剤(C)とフェノール系安定剤を併用することが、滞留熱安定性と耐熱性の観点から好ましい。
[離型剤]
本発明の樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することも好ましい。離型剤としては、熱可塑性ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。また、側鎖に水酸基、カルボキシル基、無水酸基、エポキシ基などを導入した変性ポリオレフィン系化合物も特に好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素原子数11〜28、好ましくは炭素原子数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.1〜1.5質量部、更に好ましくは0.3〜1.0質量部である。
[滑剤]
本発明の樹脂組成物は、滑剤を含有することも好ましい。滑剤としては、パラフィン油、固形パラフィン等のパラフィン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸の金属塩、ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、メチロールアミド、オレイルアミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド等、カルナウバワックス、モンタンワックス等のワックス類などが挙げられる。この中でもステアリン酸カルシウムが特に好ましい。
滑剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。
[その他含有成分]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、上記した以外の種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)以外の難燃剤、アンチモン化合物以外の難燃助剤、紫外線吸収剤、充填材、帯電防止剤、防曇剤、染顔料、蛍光造白剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)以外の難燃剤としては、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
また、本発明のポリエステル系樹脂組成物には、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を著しく損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えばポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン系樹脂(ABS樹脂等を含む)、ポリフェニレンサルファイドエチレン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。また、耐衝撃性改良の点から各種のエラストマーを含有することも好ましい。
[樹脂組成物の製造]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、公知の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)と臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)及びホスフェート系安定剤(C)、さらに必要により配合する各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
なお、充填材としてガラス繊維等の繊維状のものを用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
本発明の第2の態様のポリエステル系樹脂組成物は、前述したように、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物の原子吸光分析法によって測定されるNa元素濃度が1ppm以上であり、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とする。
ポリエステル系樹脂組成物のNa元素濃度が1ppmより少ないものでは、ポリエステル樹脂組成物より得られる成形体のレーザー印字性が悪くなる。
組成物中のNa元素濃度の上限は限定されるものではないが、1500ppmであるのが好ましく、より好ましくは1000ppm、更に好ましくは800ppm、中でも500ppm、特には300ppm、最も好ましくは100ppmである。
Na濃度が高すぎると、ポリエステル組成物製造時に樹脂の溶融熱安定が不良となり、粘度保持性が低下してしまう傾向がある。これは一般にポリエステル樹脂はアルカリ金属の存在下で加水分解が促進される現象に起因すると推測される。
ポリエステル系樹脂組成物中のNa元素濃度は、原子吸光分析法により測定される。
本発明の樹脂組成物から樹脂成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性ポリエステル樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサ−ト成形、IMC(インモ−ルドコ−ティング成形)成形法、押出成形法、シ−ト成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。また、ホットランナ−方式を用いた成形法を選択することもできる。特には射出成形が好ましい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、難燃性と溶融熱安定性に優れ、レーザー印字性にも優れるので、各種の用途に広く採用することができ、電気機器、電子機器あるいはそれ等の部品として特に好適であり、リレー、スイッチ、コネクター、遮断器、電磁開閉器、ターミナルスイッチ、センサー、アクチュエーター、マイクロスイッチ、マイクロセンサーおよびマイクロアクチュエーター等の有接点電気電子機器部品や電気電子機器の筐体等を好ましく挙げることができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
なお、上記表1におけるペンタブロモベンジルポリアクリレートPBBPA1〜3は、前記した工程1〜4により製造されたPBBPAを、90℃のメタノールで2時間洗浄したもの(PBBPA1)、90℃の温水で3時間洗浄したもの(PBBPA2)、90℃の温水で2時間洗浄したもの(PBBPA3)である。
PBBPA1〜3のNa元素濃度は蛍光X線分析法で測定した。
また、Mgイオン濃度とAlイオン濃度はICP発光分光分析法により測定した。
PBBPAの洗浄の際に使った水は、いずれも、市販の超純水製造装置日本ミリポア株式会社製「Simpsicity UV」を使って用意した(以下の実施例で水洗浄に使用した水も同様である。)。
(実施例1〜4、比較例1〜5)
上記表1に記載した各成分を、以下の表2に記載した量(いずれも質量部)でブレンドし、2軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)を用い、バレル設定温度を260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で混練してストランド状に押し出し、水槽で急冷しペレタイザーでペレット化してペレットを得た。なお、ステアリン酸カルシウムは、得られたペレットに、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1質量部の量比でドライブレンドして、外添加させて、樹脂組成物のペレットを得た。
[溶融熱安定性の評価]
(1)樹脂の固有粘度とペレットの固有粘度の測定
仕込み前の原料ポリブチレンフタレート樹脂(表2に記載の質量比の混合物)の30℃における固有粘度IVを測定した(「仕込みIV」という)。固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値(単位:dl/g)である。
次いで、上記で得られた樹脂組成物ペレットの固有粘度IVを測定した(「ペレットIV」という)。
仕込みIVに対するペレットIVの百分率([ペレットIV/仕込みIV]×100)を求め、固有粘度保持率(単位:%)とした。固有粘度保持率の値が高いものほど、樹脂の分解が少ないといえる。
(2)ペレットのMVR
得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で6時間以上乾燥した後、ISO1133に準拠して、測定温度250℃、荷重2.16kgfの条件でMVR(メルトボリュームレイト、単位:cm/10min)を測定した。MVRの値が高いものほど、樹脂の分解が進んでいるといえる。
[レーザー印字性]
得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で100mm×100mm×2mm厚みの平板状成形品を射出成形した。
SUNX社製「レーザーマーカー LP−Z130」を用い、レーザー発振方式はファイバー方式にて、レーザーパワー:100、印字パルス周期:50μs、線幅:0.07mm、塗り潰し間隔:0.035mm、重ね印字回数:1回の条件で、上記平板状成形品に20mm×20mmの正方形を塗りつぶすようにレーザーマーキングを施した。レーザーマーキングに際し、そのスキャンスピードは5,000mm/secにて行った。
レーザー印字性の判定は、レーザー印字処理を施した試験片を目視にて観察し、次の判断基準に基づき○、△、×のランクに分けた。
○:鮮明な印字が成されており、容易に認識が可能。
△:印字の認識は可能。
×:全く印字が成されてない、若しくは印字の認識が困難である。
[難燃性]
得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で12.5mm×125mm×0.75mm厚みの燃焼試験片を射出成形した。難燃性及の評価は、以下のようにして行った。
難燃性(UL94):
アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片(厚み:0.75mm)を用いて難燃性を試験し、V−0、V−1及びV−2、不適合に分類した。
[銀板腐食]
得られた樹脂組成物ペレット50gを内容積120mlの蓋付のガラス製広口瓶に入れ、樹脂組成物ペレットの上に銀板(10mm×0.2mmt)を載置し、160℃オーブンで250時間保管し、銀板表面の変色程度を目視観察し、変色の程度を以下の3段階で評価した。
レベル1:変色無あるいは殆ど変色していない。
レベル2:変色しているが、程度は小さい。
レベル3:明らかに変色している。
[組成物中のNa元素濃度]
樹脂組成物を500mg秤量し、硫酸/硝酸で湿式分解し、続いて硫酸/過酸化水素水で湿式分解した後に、カートリッジフィルターでろ過し、原子吸光分析法にて測定した。
以上の評価結果を纏めて以下の表2に示す。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、難燃性と溶融熱安定性に優れ、レーザー印字性にも優れので、各種の用途に広く採用することができ、電気機器、電子機器あるいはそれ等の絶縁性部品として特に好適に使用できる。

Claims (6)

  1. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)の蛍光X線分析法によって測定されるNa元素濃度が5ppm以上であリ、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
  2. 臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)のNa元素濃度が5〜7000ppmである請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  3. 臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)のICP発光分光分析により測定されるMgイオン濃度が5〜2000ppmであり、Alイオン濃度が5〜3000ppmである請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  4. 臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)がペンタブロモベンジルポリアクリレートである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
  5. 臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)が臭化ナトリウムを含有する請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
  6. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、臭素化ポリアクリレート系難燃剤(B)を3〜60質量部含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物の原子吸光分析法によって測定されるNa元素濃度が1ppm以上であり、ホスフェート系安定剤(C)を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
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