JP2017052004A - 接合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム材を一方の被接合部材とし、アルミニウム材又は他の金属材を他方の被接合部材とした接合体であって、前記一方の被接合部材と他方の被接合部材の少なくともいずれか一方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量比が5〜35%となる温度において両被接合部材が接合され、前記質量比となる液相を生成したアルミニウム材において、液相に相変化しなかった固相と液相に相変化して凝固した固相との孔食電位差が50mV以下であることを特徴とする接合体、ならびに、当該接合体の製造方法。
【選択図】図1
Description
溶接法は、接合部を電気又は炎により加熱して溶融、合金化して接合を成すものである。接合部の隙間が大きい場合や接合強度が必要な場合は、溶加材を接合時に同時に溶融させ隙間を充填する。いずれも、接合部分が溶融するため確実な接合がなされる。一方で、接合部を溶融して接合するため、接合部近傍の形状が大きく変形し、また金属組織が局所的に大きく変化することとなる。また、接合部のみを局所的に加熱していく必要があるため、同時に多点を接合するのは困難である。
従来のアルミニウム材の接合方法では、摩擦攪拌接合や拡散接合などの固相接合法を除き接合部分で構造部材又は被接合部材の溶融が必要とされていた。そのため、接合部分近傍で、形状変化が伴うのが当然であった。従って、従来の接合方法においては、接合後の寸法変化又は強度変化を想定して、部材の設計、組立を行う必要があった。
A.被接合部材の組み合わせ
本発明では、アルミニウム材を一方の被接合部材とし、アルミニウム材又は他の金属材を他方の被接合部材とする。ここで、アルミニウム材とは、アルミニウム合金材又は純アルミニウム材をいう。本発明における被接合部材の組み合わせには、同一組成のアルミニウム合金材同士の接合体、組成の異なるアルミニウム合金材同士の接合体、アルミニウム合金材と純アルミニウムとの接合体、アルミニウム合金材と他の金属材との接合体、或いは、純アルミニウム材と他の金属材との接合体が挙げられる。なお、他の金属材としては、Cu、Fe、Ti等が用いられる。
本発明では、一方の被接合部材と他方の被接合部材の少なくともいずれか一方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する液相の質量比(以下、液相率という。)が5〜35%となる温度で接合する必要がある。液相率が5%未満では発生する液相の量が少なく、良好な接合が得られない。液相率が35%を超えると発生する液相の量が多く、アルミニウム材が形状を維持できず大きく変形してしまう。液相率は10〜20%がより好ましい。
液相が生じた後から接合に至るまでの金属組織の挙動を説明する。図3に示すように、液相を生成するアルミニウム材Aと、これと接合するアルミニウム材Bとを用いた逆T字型接合試験片を接合し、図に示す観察面を顕微鏡で観察した。前述のように、接合においてアルミニウム部材Aの表面に生成するごく僅かな液相は、フラックス等の作用により酸化皮膜が破壊された相手のアルミニウム部材Bとの隙間を埋める。次に、両部材の接合界面付近にある液相がアルミニウム部材B内へと移動していき、それに伴い接合界面に接しているアルミニウム部材Aの固相α相の結晶粒がアルミニウム部材B内に向かって成長していく。一方、アルミニウム部材Bの結晶粒もアルミニウム部材A側へと成長していく。
アルミニウム部材の表層には酸化皮膜が形成されており、これによって接合が阻害される。従って、接合においては酸化皮膜を破壊する必要がある。
酸化皮膜を破壊するには、接合部にフラックスを塗布する方法が挙げられる。フラックスは、フッ化物系フラックスや塩化物系フラックスが用いられる。これらフラックスは、液相が溶融する前に又は接合温度に至る前に溶融し、酸化皮膜と反応して酸化皮膜を破壊する。この方法では、酸化皮膜の形成を抑制するために、窒素ガスやアルゴンガスなどの非酸化性雰囲気中で接合する。特にフッ化物系のフラックスを用いる場合は、酸素濃度を250ppm以下に抑え、露点を−25℃以下に抑えた非酸化性ガス雰囲気中で接合するのが好ましい。フラックスを用いる場合、アルミニウム材中にMgが0.5mass%(以下、単に「%」と記す)を超えて含有されると、フラックスとMgが反応してフラックスの酸化皮膜破壊作用が損なわれる。
液相率が5〜35%である時間は、30〜3600秒とするのが好ましい。30秒未満では、液相が接合部に十分に充填されない場合があり、3600秒を超えると被接合部材の形状変化を確実に抑制できない場合がある。
また、液相を生成するアルミニウム部材の固相線温度と液相線温度の差を10℃以上とするのが好ましい。10℃未満では、固体と液体が共存する温度範囲が狭くなり、発生する液相量の制御が困難となる場合がある。
上記の条件を満たすことで必要な接合特性を得ることできるが、中空部があり、比較的脆弱な構造体を形成する場合においては、接合部の圧力が高すぎると構造を維持できない場合がある。特に液相率が大きい場合は比較的小さな圧力に留めたほうが良好な形状を維持できる。接合部の圧力をP(KPa)液相率をV(%)とした場合、P≦460−121Vの条件を満たせば、非常に安定した接合が得られる。
接合部の圧力と同様、に接合部の表面形態も接合性に影響を与え、接合前の被接合部材の面が平滑なほうがより安定した接合が得られる。具体的には、両被接合部材の接合面の表面の凹凸から求められる算術平均うねりWa1とWa2の和が、Wa1+Wa2≦10(μm)を満足することで一層安定した接合が得られる。
本発明の接合方法での加熱は、通常は炉中にて行う。炉の形状に、特に制限はなく、例えば1室構造のバッチ炉、自動車用熱交換器の製造などに用いられる連続炉などで行えばよい。なお、炉中の雰囲気に制限はないが、前述の通り非酸化性雰囲気中で行うことがより好ましい。
本発明では、上記5から35%の液相率となる液相を生成したアルミニウム材において、液相に相変化しなかった固相と液相に相変化して凝固した固相との孔食電位差(絶対値)を50mV以下とする。液相に相変化しなかった固相とは、接合中に溶融しなかった固相である。液相に相変化して凝固した固相とは、接合中に液相となり接合界面や液相とならない固相界面に留まって凝固した固相である。孔食電位差は優先溶解速度を表す指標であり、孔食電位差が大きい程、孔食電位の卑な相の溶解速度が大きい。上記孔食電位差の絶対値が50mVを超えると、孔食電位の卑な相の優先溶解速度が速くなる。その結果、接合体の寿命が短くなる。
なお、このような孔食電位の差は、アルミニウム材の組成の差異によって生じる。例えばAl−Si合金の液相となって凝縮した相では、冷却中のSiの析出・成長が促進されるため、元の合金に比べて固溶Si量が減少し、孔食電位が低くなる。一方、Al−Si−Cu合金では、液相となって凝縮した相のCuが濃縮するために、元の合金に比べ孔食電位が高くなる。
本発明においては、接合された接合体は液相を生成したアルミニウム材の固相線未満の温度に保持される。このような熱処理によって、接合中において液相に相変化しなかった固相と、接合中において液相に相変化して凝固した固相との不均一な多相組織を均一な組織とすることができる。不均一な多相組織とは、前記相変化しなかった相と相変化した相の組織中において、構成成分の固溶量や金属間化合物の分布が異なっている状態をいう。そして、このような不均一な多相組織を上記の熱処理を施すことにより、構成成分の拡散や金属間化合物の析出によって均一な組織とするものである。このような不均一な多相組織の均一化によって、接合後の両固相における孔食電位差を50mV以下にすることができる。熱処理温度が固相線以上では、アルミニウム材に液相が再び生成してしまうため、熱処理温度は液相線温度以下とする。なお、両方の被接合部材が液相を生成するアルミニウム材の場合には、低い方の固相線未満の温度に保持される。
表1に接合に用いたAl−Si合金の組成を示す(Siを、1.5〜4.0%含有する)。表1には、580〜635℃の各温度での平衡液相率も示した。なお、平衡液相率は、Thermo−Calcによる計算値である。表1に示す合金鋳塊を調製した後、熱間圧延及び冷間圧延により厚さ1mmの圧延板を得た。この圧延板を切り出し、端面をフライスにより平滑にしたものを組み合わせて、図5に示す接合試験片を作製した。試験片の上板と中板には、表1に示す組成のアルミニウム合金板を用い、下板には純アルミニウム板(A1070)を用いた。上板と中板のアルミニウム合金板は同一組成である。これら例は、同一組成のアルミニウム合金材同士の接合である。この接合試験片の接合面には、フッ化物系の非腐食性フラックスを塗布した。図5(a)に示すように、下板に中板と上板を順次重ね、重ね合わせたものの上下に板厚1mmのステンレス板の治具を配するようにした。次いで、図5(b)に示すように、上下のステンレス板と側面に2本のステンレス線を架け渡して端部をそれぞれ縛り、下板、中板及び上板からなる試験片を固定して試料とした。なお、図5(a)に記載の数字は、部材の寸法(単位:mm)を表わす。
接合率(%)={(L1+L2)/2L0}×100 (2)
ここで、L1は接合部1において接合されている部分の長さ、L2は接合部2において接合されている部分の長さ、L10は接合部1と接合部2において、それぞれ接合されるべき長さである。
変形率(%)=[{(a1+a2)/2a}−1]×100 (3)
比較例21〜24では、液相率が高過ぎたため、大きな変形が発生して総合判定が不合格であった。
表3に示す組成のアルミニウム合金を用いて、実施例1〜8、10〜12、14〜18及び比較例20〜24と同様に接合率と変形率を試験した。なお、これら実施例25、27〜32、34〜37及び比較例38〜46においては、図5に示す接合試験片の上板に表3の合金を用い、中板と下板には純アルミニウム(A1070)を用いて、液相が生成されるアルミニウム合金材と液相が生成されない純アルミニウム材の接合を行なった。
比較例39、41、43、45、46では、生成する液相が過剰であったため被接合部材が形状を維持できず、大きく変形してしまった。特に、比較例41では完全に形状が崩れてしまい、接合率を測定することも不可能であった。
表3に示す組成のアルミニウム合金を用いて、実施例25〜37及び比較例38〜46と同様にして図5に示す接合試験片を組立てた。そして、接合面にフッ化物系のフラックスを塗布し、窒素雰囲気中で所定の接合温度にて保持時間3分の加熱により接合を実施した。但し、実施例52、53及び比較例66では、フラックスを塗布せず真空中で加熱を実施した。
(1)自然電位
測定前処理として、60℃の5%NaOH水溶液中に試料を30秒浸漬し、水洗後に25℃の30%HNO3水溶液中に60秒浸漬、水洗を行った。その後、5%NaCl水溶液にCH3COOHを添加してpH3にした溶液中において、アノード分極曲線測定を行い、液相に相変化しなかった固相(表5では単に「固相」と表わす)と、液相に相変化して凝固した固相(表5では「液相凝固相」と表わす)との孔食電位をそれぞれ測定した。
JIS H8601に準じるCASS試験を、200h実施した。試験後、30%HNO3水溶液中に10分間浸漬し腐食生成物を除去した後、焦点深度法によって腐食深さ測定した。腐食深さが200μm以下を合格とし、それを超える場合を不合格とした。更に、優先腐食の有無を断面観察により行ない、優先腐食が無い場合を合格とし、有る場合を不合格とした。
更に、ロウ付法と同等の信頼性を有する同時多点接合を、置きロウ、ロウペーストやロウをクラッドしたブレージングシートを用いることなく行うことができる。また、加圧や接合面の清浄化処理のための特殊な工程も必要ない。そのため、接合性能を損なうことなく材料や製造のコストダウンが可能となる。
更に、接合後にアルミニウム材の固相線未満の温度に接合体を保持することで、接合後のアルミニウム材組織を均一な組織とすることができ、液相となって凝縮した固相と液相が生成しなかった固相のいずれかの優先的な溶解を抑制し、接合体としての寿命を長くできる。
a1・・試験片の天井部上側の接合後における湾曲長さ
a2・・試験片の天井部下側の接合後における湾曲長さ
c1・・Si濃度
c2・・Si濃度
T・・温度
T1・・Teを超えた温度
T2・・T1より更に高い温度
T3・・Ts2を超えた温度
Te・・固相線温度
Ts2・・固相線温度
Claims (1)
- アルミニウム材を一方の被接合部材とし、アルミニウム材又は他の金属材を他方の被接合部材とした接合体であって、前記一方の被接合部材と他方の被接合部材の少なくともいずれか一方のアルミニウム材の全質量に対する当該アルミニウム材内に生成する接合時における液相の質量比が5%以上30%未満であり、前記質量比となる液相を生成したアルミニウム材において、液相に相変化しなかった固相と液相に相変化して凝固した固相との孔食電位差が50mV以下であることを特徴とする接合体。
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JPS62199276A (ja) * | 1986-02-26 | 1987-09-02 | Nippon Light Metal Co Ltd | 無機質繊維強化アルミニウム複合材の接合方法 |
JPS63297535A (ja) * | 1987-05-28 | 1988-12-05 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 耐食性アルミニウム合金複合板およびその製造方法 |
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