JP2017043509A - 透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明導電膜ターゲット用原料粉体を製造するための化合物を含有する水溶液媒体の混合物を、短時間で、均一に、乾燥、熱分解、焼成し、連続的にワンポットで、安定した品質で、製造できる装置を提供することを目的とする。
【解決手段】インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミ化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の水溶液媒体の混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を乾燥し、熱分解し、焼成することを特徴とする、透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置である。
【選択図】 図1
【解決手段】インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミ化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の水溶液媒体の混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を乾燥し、熱分解し、焼成することを特徴とする、透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、透明導電膜を形成するために用いられるITO(インジウム錫複合酸化物)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)及びIGZO(インジウムガリウム亜鉛複合酸化物)のスパッタリングターゲット(焼結体)を製造するための原料粉体の連続製造装置に関する。
透明導電膜は、液晶デイスプレイ、有機ELデイスプレイ等の表示デバイスの透明電極、太陽電池用透明導電ガラス、ならびに熱線反射、結露防止等の機能性ガラスなどに広く利用されている。
透明導電膜の形成は、塗料を塗工(スプレー、デイップ)する化学的湿式作製法、CVD法の化学的乾式作製法、真空蒸着法、パルスレーザ堆積法(PLD)、スパッタリングなどの物理的作製法があるが、操作性の簡便さ、および膜質特性の安定性、良好さから、マグネトロンスパッタリング法が広く適用されている。スパッタリング法は、基本的には、真空中で放電によりプラズマを発生させ、そのプラズマ中の陽イオン(放電ガスのArイオン)が負極の被スパッタリング物質(ターゲット)に加速されてその表面を衝撃し、その衝撃によってターゲット物質が飛び出すことを利用するものであり、飛び出したターゲット物質(スパッタ粒子)を陽極側の基板上に堆積させて薄膜を形成する方法であるため、ターゲット物質そのものが成膜物質となるため透明導電膜ターゲットの場合、生産効率、パーテイクルの発生防止等の観点から、可能な限り、均質で高密度な焼結体の製造が求められている。マグネトロンスパッタリング法は、磁場を利用して、成膜速度を向上させる方法である。
透明導電膜形成用酸化物ターゲットは、通常、各成分の酸化物粉末を、所望の組成に配合し、均一に混合した後、加圧成形もしくは鋳込み成形を行い、この成形体を高温度で加熱焼結することによって製造される。例えば、具体的にはITOターゲットの場合、酸化インジウム粉末(In2O3)と酸化スズ粉末(SnO2)を質量比90/10で配合した後、混合、粉砕、造粒(顆粒)、もしくはスラリー化を行う。顆粒粉体は金型プレス成形法、静水圧ラバープレス成形法(CIP)により、スラリーは鋳込み法もしくはスリップキャスト法により、長方形又は正方形の板状または円筒状に成形する。成形体は、酸素雰囲気中1400〜1650℃で焼結し、ITO焼結体が、製造される。しかしながら、ITOは難焼結性の物質であり、これを克服し、均質で高密度の焼結体を得るために、(1)酸化インジウムおよび酸化スズ原料粉末の合成、(2)原料粉末の混合、加工、(3)成形、(4)成形体の加熱焼結 の各工程でいろいろな改善方法が提案されている。
一般に、加熱焼結の反応性は、粉末粒子が微細なほど活性で、反応性は高められるが、一方、2種類以上の粉末を分散、混合する際、粉末粒子間の凝集が強くなり、均一に分散、混合することは困難になる。このため、ITO焼結体の製造においては、焼結の反応性よりも酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末との分散、混合性を重視した原料粉末の合成方法が重要となり、粉末の一次および二次粒子の大きさ、粒度分布、結晶性等の特性制御が種々提案されている。
主原料粉末である酸化インジウム粉末(In2O3)は、金属インジウムを陽極溶解させる電解法(特許文献1、2)、または硝酸インジウム水溶液をアンモニア水もしくは重炭酸アンモニウムで加水分解する中和法(特許文献3)によって水酸化インジウム(In(OH)3)を沈殿させ、洗浄、固液分離、乾燥、焼成を経て合成され、平均粒子径3μm以下、BET比表面積10m2/g以下、結晶子径900Å以上の粉末を得ている。また、更に、一次焼成、解砕、二次焼成の処理を行うことにより一次粒子平均径が0.1〜0.3μm等の酸化インジウム粉末(特許文献4、5)としている。一方、酸化スズ粉末(SnO2)は、金属スズを陽極溶解する電解法(特許文献6)、硝酸アンモニウム水溶液中にスズ金属粒を沈め、硝酸を滴下しながら溶解、加水分解等して、メタスズ酸(H2SnO3)として沈殿析出させ、洗浄、固液分離、乾燥、焼成を行い、酸化スズ粉末を得る方法(特許文献7、8,9,10)が提案され、二次粒子径5〜30μm、BET比表面積2〜10m2/g、嵩密度0.6〜1.2m2/g、結晶子径800Å以上等の粉末を得ている。
電流量(滴下速度)、温度、pH、撹拌等の適正かつ限定した沈殿条件を選択することによって粉末の粒子の大きさ、粒度分布、BET法比表面積、嵩密度、結晶性等を制御し、分散性、混合性、流動性、充填性、成形性等の加工特性を確保しているが、安定した品質の確保、ならびに生産効率の観点からは問題を残す。
これら特性を調整した酸化インジウムおよび酸化スズの粉末を、更に成形体作製における流動性、充填性、均一性を発現させるために、(1)原料粉末を混合し、スラリー化、顆粒化(造粒)の加工処理を行った後、顆粒粉体はプレス成形、スラリーは鋳込み成形し、(2)成形加工を行う。得られた成形体は、粉体の流動性、充填性、均質性が高いほど、空隙の少ない高密度成形体となる。この成形体を、(3)加熱焼結を行い、ITO焼結体とする。焼結の際に、酸化スズ(特に低級酸化スズ、ハロゲン化物)の揮発を抑制するために純酸素富化、加圧酸素の雰囲気下での焼結法(特許文献11、12)が提案されている
水酸化インジウム分散液とメタスズ酸分散液とを直接混合し、より酸化スズの分散性を向上させ、焼結体の酸化スズの偏析を解消するための方法(特許文献13)も提案されている。
しかしながら、これら先行技術文献に記載された方法においては、工程数が著しく多く、装置構造の複雑化、限定された特殊な条件での製造を必要とするために、運転効率の低下、回収率の低下等の生産性及び品質の安定化の点で問題がある。
本発明は、上記問題を解決するため、透明導電膜ターゲット用原料粉体を製造するための化合物を含有する水溶液媒体の混合物を、短時間で、均一に、乾燥、熱分解、焼成し、焼結体の透明導電膜ターゲットを製造する原料として好適な粉体を、連続的にワンポットで、安定した品質で、製造できる装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物の水溶液媒体の混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成することにより、均一に、かつ極めて短時間で、安定した品質の、透明導電膜を形成するためのスパッタリングターゲット用原料粉体を、連続的に製造できることを見出し、本発明に至った。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置、透明導電膜ターゲット用原料粉体の製造方法、および透明導電膜ターゲット用原料粉体に関する。
〔1〕インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物の水溶液媒体の混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成することを特徴とする、透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔2〕液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成するために、液滴状混合物を、500℃以上1200℃以下であり、かつ、5秒以上120秒未満で加熱する、上記〔1〕記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔3〕インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物が、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、および酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である、上記〔1〕または〔2〕記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔4〕混合物に含まれる固形物濃度が、水溶性媒体100質量%に対して、5質量%以上である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置により製造された、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、インジウムスズ複合酸化物、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物、または亜鉛アルミニウム複合酸化物の透明導電膜ターゲット用原料粉体。
〔6〕開口した中空球形状粉体、または湾曲した薄片状粉体である、上記〔5〕記載の透明導電膜ターゲット用の原料粉体。
〔1〕インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物の水溶液媒体の混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成することを特徴とする、透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔2〕液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成するために、液滴状混合物を、500℃以上1200℃以下であり、かつ、5秒以上120秒未満で加熱する、上記〔1〕記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔3〕インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物が、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、および酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である、上記〔1〕または〔2〕記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔4〕混合物に含まれる固形物濃度が、水溶性媒体100質量%に対して、5質量%以上である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置により製造された、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、インジウムスズ複合酸化物、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物、または亜鉛アルミニウム複合酸化物の透明導電膜ターゲット用原料粉体。
〔6〕開口した中空球形状粉体、または湾曲した薄片状粉体である、上記〔5〕記載の透明導電膜ターゲット用の原料粉体。
本発明〔1〕によれば、透明導電膜ターゲット用原料粉体を製造するための化合物を含む水溶性媒体の混合物を、液滴状に霧化することにより、極めて短時間に、水溶性媒体の混合物の乾燥、分解、焼成を連続的に行うことができる。すなわち、ワンポットで、短時間に、均質で、安定した品質の、焼結体の透明導電膜ターゲットの原料となる、混合酸化物粉体もしくは複合酸化物粉体を、効率良く連続的に製造することが可能である。
本発明〔5〕によれば、透明導電膜ターゲットの製造に適した原料粉体が、簡便に得られる。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
〔透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続的製造装置〕
本発明の透明導電膜ターゲット用原料粉体(以下、ターゲット用原料粉体という)の連続製造装置(以下、連続製造装置という)は、インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミ化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の水溶液媒体の混合物(以下、混合物という)を液滴状に霧化し、液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成することを特徴とする。ここで得られるターゲット用原料粉体は、主として、開口した中空球形状粉体、中空セル構造球形状粉体、もしく湾曲した薄片状粉体であり、球形状の平均粉体径が0.2μm以上100μm以下、好ましくは0.5μm以上50μm以下の粉体である。ここで、中空球形状粉体とは、ある厚みの球形状外殻で内部の空間を覆った粉体であり、いわゆる中空セル構造球状粉体(内部の空間が壁により複数個の空洞に仕切られた球形状粉体)も包含する。湾曲した薄片状粉体は、中空球形状粉体が、焼成、回収中に破砕されてできる、と考えられる。図2、3に、中空セル構造球状粉体状の中空球形状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図4、5に、湾曲した薄片状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図2〜5は、いずれも後述する実施例1で作製したものの走査電子顕微鏡写真の一例である。平均粉体径は、ターゲット用原料粉体の走査型電子顕微鏡写真での長径(ターゲット用原料粉体の最も長い径)の平均径である(n=50)。粉体径は、ターゲット用原料粉体の走査型電子顕微鏡写真での長径(ターゲット用原料粉体の最も長い径)である(n=50)。ターゲット用原料粉体が、中空状もしくは薄片状であるため、容易に破砕可能であり、鋳込み成形(スリップキャスト)、プレス成形に適応する粉体の大きさに調整することができる。
本発明の透明導電膜ターゲット用原料粉体(以下、ターゲット用原料粉体という)の連続製造装置(以下、連続製造装置という)は、インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミ化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の水溶液媒体の混合物(以下、混合物という)を液滴状に霧化し、液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成することを特徴とする。ここで得られるターゲット用原料粉体は、主として、開口した中空球形状粉体、中空セル構造球形状粉体、もしく湾曲した薄片状粉体であり、球形状の平均粉体径が0.2μm以上100μm以下、好ましくは0.5μm以上50μm以下の粉体である。ここで、中空球形状粉体とは、ある厚みの球形状外殻で内部の空間を覆った粉体であり、いわゆる中空セル構造球状粉体(内部の空間が壁により複数個の空洞に仕切られた球形状粉体)も包含する。湾曲した薄片状粉体は、中空球形状粉体が、焼成、回収中に破砕されてできる、と考えられる。図2、3に、中空セル構造球状粉体状の中空球形状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図4、5に、湾曲した薄片状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図2〜5は、いずれも後述する実施例1で作製したものの走査電子顕微鏡写真の一例である。平均粉体径は、ターゲット用原料粉体の走査型電子顕微鏡写真での長径(ターゲット用原料粉体の最も長い径)の平均径である(n=50)。粉体径は、ターゲット用原料粉体の走査型電子顕微鏡写真での長径(ターゲット用原料粉体の最も長い径)である(n=50)。ターゲット用原料粉体が、中空状もしくは薄片状であるため、容易に破砕可能であり、鋳込み成形(スリップキャスト)、プレス成形に適応する粉体の大きさに調整することができる。
<混合物の作製(前処理)>
混合物に用いられるインジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、および酸化物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、加熱分解性、不純物(塩素、硫黄化合物、低級酸化物等)の分離、腐食性等から、水溶性の硝酸塩、酢酸塩が好ましい。また、平均一次粉体径が、0.01μm以上1μm以下の水酸化物および酸化物の粉体が、スラリー混合物として好ましく利用できる。0.01μm未満であると凝集が強くなり易く、1μmを越えると粉体の沈降分離が起こり易くなる。更に、本発明において、化合物は、2種以上の化合物が複合化されても良い。
混合物に用いられるインジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、および酸化物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、加熱分解性、不純物(塩素、硫黄化合物、低級酸化物等)の分離、腐食性等から、水溶性の硝酸塩、酢酸塩が好ましい。また、平均一次粉体径が、0.01μm以上1μm以下の水酸化物および酸化物の粉体が、スラリー混合物として好ましく利用できる。0.01μm未満であると凝集が強くなり易く、1μmを越えると粉体の沈降分離が起こり易くなる。更に、本発明において、化合物は、2種以上の化合物が複合化されても良い。
硝酸塩としては、In(NO3)3・3H2O、Ga(NO3)3・nH2O、Zn(NO3)2・6H2O、Al(NO3)3・9H2O等が挙げられる。酢酸塩としては、Ga(CH3COO)3、Al2O(CH3COO)4・nH2O、Al(CH3COO)3、Sn(CH3COO)2、Sn(CH3COO)4、Zn(CH3COO)2・2H2O等が挙げられる。水酸化物としては、In(OH)3、Sn(OH)4、H2SnO3、Ga(OH)3、GaO(OH)、Zn(OH)2、Al(OH)3、α−Al(OH)3(gibbsite)、γ−Al(OH)3(bayerite)、α―AlO(OH)(diaspore)、γ―AlO(OH)(boehmite)等が挙げられる。酸化物としては、In2O3、SnO2、Ga2O3、ZnO、α−Al2O3、γ−Al2O3等が挙げられる。炭酸塩としては、塩基性炭酸亜鉛(2ZnCO3・3Zn(OH)2・H2O)も利用可能である。複合水酸化物および複合酸化物としては、In/Sn(OH)3共沈殿物(表面技術:Vol47、No4(1996)、339)、AlドープZnO等が挙げられる。
水溶性媒体の混合物を効率よく得るための装置としては、特に限定されないが、例えば、攪拌羽を有する攪拌装置、超音波分散装置、ホモミキサー、乳鉢、ボールミル、遠心ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、アトライタータイプの高速ボールミル、ビーズミル、ロールミル等の剪断力、衝撃力を発生させる装置を用いることができる。例えば、ITOターゲット材料においては、一例として撹拌装置を用いて硝酸インジウムを水に溶解した後、酸化第二スズ粉体を添加し、ビーズミル分散装置を用いて分散、粉砕し、水溶液混合物を得ることができる。
得られる混合物は、その固形物濃度が5質量%以上であることが好ましい。固形物濃度が低すぎると、連続製造装置内において、乾燥する際の負荷が大きくなり、ターゲット用材料粉体の生産効率に支障を生じる。ここで、固形物濃度とは、水溶液に溶存する硝酸塩、および水溶液に溶解しない懸濁物として存在する水酸化物もしくは酸化物の合計質量濃度を表す。その測定方法は、得られる混合物の一定量を重量測定した後{A(g)}、その重量測定混合物を直接、乾燥・分解焼成(600℃)し、残存焼成物の重量を測定する{B(g)}。個々の操作で計測された重量AおよびBから固形物濃度を算出(固形物濃度(%)=B/A×100)する。なお、固形物濃度は、60質量%以下であると、水溶液混合物の作製が容易であり、好ましい。
<連続製造装置>
連続製造装置は、水溶液混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を得る霧化装置と、これを加熱により、乾燥し、熱分解し、焼成する加熱装置と、生成物(ターゲット用原料粉体)を回収する回収装置から構成される。
連続製造装置は、水溶液混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を得る霧化装置と、これを加熱により、乾燥し、熱分解し、焼成する加熱装置と、生成物(ターゲット用原料粉体)を回収する回収装置から構成される。
液滴状混合物を発生させる霧化装置は、二流体アトマイザー、遠心アトマイザー、超音波アトマイザー等の通常の霧化装置を使用できるが、針ノズルを用いた二流体アトマイザーが、混合部液滴粒子を直接加熱部へ噴霧できるために好ましい。液滴状混合物の平均液滴径は、好ましくは0.2μm以上100μm以下であり、ノズル径、噴霧ガスである空気量、水溶液媒体の混合物の粘度、装入量等を制御することにより混合物液滴粒子径を調整することができる。
液滴状混合物は、通常、金属もしくはセラミック製の円筒管の加熱装置で加熱され、水分の蒸発乾燥、化合物の脱水熱分解、酸化物の焼成が行われ、ターゲット用原料粉体が得られる。金属円筒管は、セラミックス円筒管より強度、熱衝撃、熱伝導に優れるため使用し易い。特に、ニッケル等を主成分とする合金が耐熱、耐食性から好適である。たとえば、ニッケルを主成分とするときは、10質量%以上95質量%以下のニッケルを含むこと合金が利用できる。
上記装置は、円筒管内部の温度を所定の温度に制御できることが好ましい。加熱方法は、円筒管の外部または内部のいずれかの加熱源を用いる方法でよいが、焼成時の雰囲気制御を考慮すると外部からの加熱が好ましい。加熱温度は、500℃以上1200℃以下であることが好ましい。加熱温度が低すぎると混合物の乾燥、分解が不均一となり易く、加熱温度が高すぎると生成物(原料粉体)の結晶粒が粗大化し易くなる。
加熱時間は、液滴状混合物が微細なため、5秒以上120秒未満であることが好ましい。加熱時間が短すぎると乾燥、焼成が不十分となり、加熱時間が長すぎても粉体の特性は変わらないので、エネルギーの無駄になる。
生成物は、加熱装置外で、空気により希釈冷却し、排気ガスから分離捕集を行う。分離回収蔵置は、例えばフィルター、サイクロン、電気集塵機、振動式バッグフィルター等で捕集する。
図1に、透明導電膜ターゲット用原料粉体の噴霧熱分解方法による連続製造装置の長手方向の断面図の一例を示す。図1は、2ゾーンで加熱を行う例である。図1では、上部のスプレーノズルに、混合物(図1には、スプレー液と記す)とスプレーガスが供給される。スプレーノズルの先端の位置は、適宜選択することができ、例えば、ヒーター直前まで、ヒーター内部まで、にすることができる。キャリアガスは、内部バイパスと外部バイパスから供給することができる。混合物は、スプレーガスにより、液滴状で下方に排出される。液滴状混合物は、2ゾーンのヒーターにより加熱され、乾燥、熱分解、焼成された後、搬送用エアーにより排気配管を通り、サイクロンで回収される。図1では、T/C(T/C1、T/C2)は、熱電対(B型:白金、ロジウム30%―白金、ロジウム6%)であり、SCR(SCR1、SCR2)は、サイリスタである。これらのサイリスタは、ヒーターへの出力を制御する。上述のように、連続製造装置の温度は、2ゾーンで管理されており、T/Cで測定した温度に基づき、サイリスタからヒーターへの出力を制御する例である。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
<混合物の作成>
イオン交換水に、硝酸インジウム(In(NO3)3・3H2O、分子量354.88g、関東化学(株)製1級試薬)を2.20mol/dm3、二酢酸スズ(Sn(CH3COO)2、分子量236.8、関東化学(株)製第1級試薬)を0.225mol/dm3の濃度に溶解した後、混合し、水溶液媒体の混合物を調液した。固形物濃度は、22.8質量%であった。
<混合物の作成>
イオン交換水に、硝酸インジウム(In(NO3)3・3H2O、分子量354.88g、関東化学(株)製1級試薬)を2.20mol/dm3、二酢酸スズ(Sn(CH3COO)2、分子量236.8、関東化学(株)製第1級試薬)を0.225mol/dm3の濃度に溶解した後、混合し、水溶液媒体の混合物を調液した。固形物濃度は、22.8質量%であった。
<連続製造装置の使用>
作製した水溶液媒体の混合物を、針ノズル二流体アトマイザー霧化装置に、定量ポンプ(東京理化(株)製)を用いて10cm3/minで送液し、ノズル空気流量:25Ndm3/minで霧化し、搬送空気を40Ndm3/minで流しながら加熱したステンレス円筒管(SUS310S)で蒸発乾燥、熱分解、焼成を行った。円筒管の加熱温度は、供給側:600℃、回収側:700℃であり、加熱部の滞留時間は30秒であった。得られた酸化スズ/酸化インジウム複合粉体は、走査電子顕微鏡による直接観察から、粉体径:1〜40μm(n=50)の開口した中空球形状粉体で、一部は湾曲した薄片状粉体が見られた。水溶液混合物の調整から開口した中空球形状粉体の作製までの製造時間は3時間であった。図2、3に、実施例1で作製した中空セル構造球状粉体状の中空球形状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図4、5に、実施例1で作製した湾曲した薄片状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図4、5から、湾曲した薄片状粉体は、中空球形状粉体が破砕されてできた、と考えられる。
作製した水溶液媒体の混合物を、針ノズル二流体アトマイザー霧化装置に、定量ポンプ(東京理化(株)製)を用いて10cm3/minで送液し、ノズル空気流量:25Ndm3/minで霧化し、搬送空気を40Ndm3/minで流しながら加熱したステンレス円筒管(SUS310S)で蒸発乾燥、熱分解、焼成を行った。円筒管の加熱温度は、供給側:600℃、回収側:700℃であり、加熱部の滞留時間は30秒であった。得られた酸化スズ/酸化インジウム複合粉体は、走査電子顕微鏡による直接観察から、粉体径:1〜40μm(n=50)の開口した中空球形状粉体で、一部は湾曲した薄片状粉体が見られた。水溶液混合物の調整から開口した中空球形状粉体の作製までの製造時間は3時間であった。図2、3に、実施例1で作製した中空セル構造球状粉体状の中空球形状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図4、5に、実施例1で作製した湾曲した薄片状粉体の走査電子顕微鏡写真の一例を示す。図4、5から、湾曲した薄片状粉体は、中空球形状粉体が破砕されてできた、と考えられる。
〔実施例2〕
<混合物の作成>
金属スズ(Sn原子量118.71)ショット(粒径3mmΦ):30g(0.25mol)をイオン交換水500cm3に投入した後、60℃に昇温した。撹拌しながら、61質量%硝酸(HNO3分子量63.00):75cm3を、2時間かけて添加した。更に、60℃で撹拌を続け、白濁が変化しなくなるまで行った。これに、硝酸インジウム(In(NO3)3・3H2O、分子量354.88、関東化学(株)製1級試薬):887.2g(2.5mol)を溶解し、イオン交換水を2.5mol/dm3まで加えて、水溶液媒体の混合物を作製した。固形物濃度は24質量%であった。
<混合物の作成>
金属スズ(Sn原子量118.71)ショット(粒径3mmΦ):30g(0.25mol)をイオン交換水500cm3に投入した後、60℃に昇温した。撹拌しながら、61質量%硝酸(HNO3分子量63.00):75cm3を、2時間かけて添加した。更に、60℃で撹拌を続け、白濁が変化しなくなるまで行った。これに、硝酸インジウム(In(NO3)3・3H2O、分子量354.88、関東化学(株)製1級試薬):887.2g(2.5mol)を溶解し、イオン交換水を2.5mol/dm3まで加えて、水溶液媒体の混合物を作製した。固形物濃度は24質量%であった。
作製したスラリー状の水溶液媒体の混合物(硝酸インジウム:2.5mol/dm3、メタスズ酸:0.25mol/dm3、固形物濃度:24質量%)を、実施例1と同様の連続製造装置を用い、実施例1と同じ条件で乾燥、分解、焼成処理を行った。加熱部の滞留時間は、20秒であった。得られた酸化インジウム(In2O3)/酸化スズ(SnO2)混合酸化物粉体は、走査電子顕微鏡による直接観察から粉体径が3〜50μmの開口した中空球形状粉体で、良好な流動性を示した。また、水溶液媒体の混合物の調整から中空球形状粉体の作成までの製造時間は、5時間であった。
〔比較例1〕
実施例1で得られた水溶液混合物を、匣鉢に装填し、乾燥器中で、100℃、12時間保持して乾燥した。乾燥粉を大気中、700℃で、4時間焼成して、酸化インジウム粉体と酸化スズ粉体の混合粉体を得た。水溶性混合物から混合粉体までの製造日数までに、2日間を要した。
実施例1で得られた水溶液混合物を、匣鉢に装填し、乾燥器中で、100℃、12時間保持して乾燥した。乾燥粉を大気中、700℃で、4時間焼成して、酸化インジウム粉体と酸化スズ粉体の混合粉体を得た。水溶性混合物から混合粉体までの製造日数までに、2日間を要した。
Claims (6)
- インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物の水溶液媒体の混合物を、液滴状に霧化し、液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成することを特徴とする、透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
- 液滴状混合物を、乾燥し、熱分解し、焼成するために、液滴状混合物を、500℃以上1200℃以下であり、かつ、5秒以上120秒未満で加熱する、請求項1記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
- インジウム化合物、スズ化合物、ガリウム化合物、亜鉛化合物、およびアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物が、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物、および酸化物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
- 混合物に含まれる固形物濃度が、水溶性媒体100質量%に対して、5質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の透明導電膜ターゲット用原料粉体の連続製造装置により製造された、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、インジウムスズ複合酸化物、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物、または亜鉛アルミニウム複合酸化物の透明導電膜ターゲット用原料粉体。
- 開口した中空球形状粉体、または湾曲した薄片状粉体である、請求項5記載の透明導電膜ターゲット用の原料粉体。
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