JP2017036363A - グリース組成物及び転がり軸受 - Google Patents

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絵里 渡部
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Abstract

【課題】食品機械用の転がり軸受に適用できるように安全で、さらにモータなどの消費電力を抑えるために低トルクであるグリース組成物を提供する。
【解決手段】(1)飽和脂肪酸トリグリセライドを基油とし、グリセリン脂肪酸エステルを増ちょう剤としてなるグリース組成物。(2)グリース組成物全量に対して、増ちょう剤の比率が15質量%であるグリース組成物。(3)上記(1)または(2)記載のグリース組成物を封入したことを特徴とする転がり軸受。
【選択図】図1

Description

本発明は、グリース組成物、特に人体に対する安全性が高く、例えば食品機械用として好適で、増ちょう剤にグリセリン脂肪酸エステルを用いたグリース組成物に関する。また、本発明は、前記グリース組成物を封入した転がり軸受に関する。
特許文献1にはグリセリン脂肪酸エステルを含有するグリース組成物が記載されている。また、環境負荷や人体に対する安全性を考慮したグリース組成物として、例えば特許文献2にはグリセリン由来またはプロピレリングリコール由来のグリセリン脂肪酸エステルを基油とし、食品添加物として認定されているステアリン酸カルシウムを増ちょう剤とする食品機械用のグリース組成物が記載されている。
特開2006−169315号公報 特開2009−91502号公報
特許文献1に記載に記載のグリース組成物は、増ちょう剤が一般的な金属石けんであるため、食品機械用のグリース組成物としては環境負荷や人体に対して安全な物質とは言えない。
一方、特許文献2に記載のグリース組成物は全て食品添加物として認められている成分で構成されているため、食品機械用のグリース組成物として環境負荷や人体に対して安全性が高いと言える。しかしながら特許文献2のように全て食品添加物として認められている成分で構成されているグリース組成物の発明は少なく、新しい組成を検討する余地があった。また特許文献2では転がり軸受の性能評価は実施しておらず、転がり軸受への適用可否は不明であった。
また、転がり軸受に適用されるグリース組成物はモータなどの消費電力を抑えるために低トルクであることが望ましい。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであって、食品機械用の転がり軸受に適用でき、さらに低トルクであるグリース組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、下記のグリース組成物及び転がり軸受を提供する。
(1)飽和脂肪酸トリグリセライドを基油とし、グリセリン脂肪酸エステルを増ちょう剤としてなることを特徴とするグリース組成物。
(2)グリース組成物全量に対して、増ちょう剤の比率が15質量%であることを特徴とする(1)に記載のグリース組成物。
(3)上記(1)または(2)記載のグリース組成物を封入したことを特徴とする転がり軸受。
本発明のグリース組成物は、基油及び増ちょう剤がともに食品用であるため、環境負荷が少なく、人体に対する安全性が高い組成である。また本発明のグリース組成物は低トルクとなるように調製している。そのため、安全性が高く、低トルクである。
実施例と比較例の軸受トルクを比較したグラフである。
(グリース組成物)
本発明のグリース組成物は、飽和脂肪酸トリグリセライドを基油とし、グリセリン脂肪酸エステルを増ちょう剤として用いる。
基油は、炭素数6〜12の飽和脂肪酸とグリセリンからなるエステルである飽和脂肪酸トリグリセライドであることが好ましい。基油を構成する飽和脂肪酸の炭素数が5以下では、基油としての耐熱性等が弱くなるおそれがあり、炭素数12を超えると基油の粘度が過大となるおそれがある。飽和脂肪酸は、炭素数が6〜12の範囲であれば、異なる炭素数のものを混合して使用することも可能である。炭素数が6〜12の範囲であれば、低粘度でありながら耐熱性が高く、転がり軸受への適用も可能であり、低トルクなグリースとすることができる。また、炭素数が6〜12の範囲であれば、比較的安価な原材料を使用できる。
基油に炭素数の異なる飽和脂肪酸トリグリセライドを混合して用いる場合は、炭素数8の飽和脂肪酸とグリセリンからなる飽和脂肪酸トリグリセライド(C8飽和脂肪酸トリグリセライド)と、炭素数10の飽和脂肪酸とグリセリンからなる飽和脂肪酸トリグリセライド(C10飽和脂肪酸トリグリセライド)との混合物、もしくは1分子の飽和脂肪酸トリグリセライドの中に、炭素数8の飽和脂肪酸エステル部分と炭素数10の飽和脂肪酸エステル部分とが混在しているものが特に好ましい。また飽和脂肪酸は、直鎖構造であることが好ましい。なお、C8飽和脂肪酸トリグリセライドとC10飽和脂肪酸トリグリセライドとの混合比率は、モル%で、C8飽和脂肪酸トリグリセライド:C10飽和脂肪酸トリグリセライドが60:40〜90:10であることが好ましく、70:30〜80:20であることがより好ましい。上記基油組成とすることで、低トルク性、耐熱性、耐久性などの化学的・及び機械的性能の優れたグリース組成物を得ることが出来る。
基油に用いる飽和脂肪酸トリグリセライドに、本発明の効果を阻害しない範囲で大豆油、菜種油、紅花油、コーン油、綿実油、ごま油、オリーブ油、やし油、パーム油や、他の動植物油を適用混合しても良い。
また、基油として使用する飽和脂肪酸トリグリセライドは、その40℃における動粘度が8〜120mm/sであることが好ましい。動粘度が8mm/s(40℃)未満では耐熱性に劣る可能性が高く、120mm/s(40℃)を超えると基油自体のせん断抵抗が増加して転がり軸受に封入した場合に軌道トルク及び回転トルクの上昇を招くおそれがある。40℃における動粘度は、好ましくは8〜50mm/sであり、より好ましくは10〜35mm/sであり、特に好ましくは10〜20mm/sである。
増ちょう剤のグリセリン脂肪酸エステルは、食品添加物公定書や日本薬局方収載品などの規格に該当する食品添加物や医薬品添加物であることが好ましい。また、増ちょう剤量は、グリース組成物全量の10〜35質量%が好ましい。増ちょう剤量が10%未満ではせん断安定性が悪くなり、転がり軸受や転動装置に適用したときに摺動・転動部分においてせん断作用により軟化し、過度にグリース組成物が漏洩してしまい長期の使用に適さないおそれがある。一方、増ちょう剤量が35質量%を超えると、潤滑に供する基油の割合が少なすぎて、基油が摺動・転動部分に供給されずに潤滑不良になるおそれがある。
本発明のグリース組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常の潤滑グリースに用いられる添加剤を配合することもできる。具体的には、酸化防止剤、錆止め剤、極圧剤、摩擦調整剤、pH調整剤等を使用することができる。
本発明はまた、上記のグリース組成物を封入した転がり軸受に関する。転がり軸受の種類には制限はなく、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、円すいころ軸受などに上記のグリース組成物を封入し、シール部材により封止する。
本発明のグリース潤滑剤は食品添加物として認められている成分で構成されているため、食品機械、医療器械、家電など環境負荷や人体に対する安全性が要求される箇所に対して、好適である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されることはない。
(実施例1)
基油中の飽和脂肪酸エステル部の合計量に対して、C8飽和脂肪酸エステル部が75モル%、C10飽和脂肪酸エステル部が25モル%である飽和中鎖脂肪酸トリグリセライド(40℃動粘度14.8mm/s)85gにグリセリン脂肪酸エステル15gを添加し,グリセリン脂肪酸エステルが溶解する温度で加熱攪拌した。次いで、グリセリン脂肪酸エステルが完全溶解した後、予め水冷したアルミ製バットに流し込み、流水で冷却した。そしてグリース状に固まった潤滑剤組成物を3本ロールミルにかけてグリース組成物を得た。尚、不混和ちょう度は252であった。
(比較例1)
基油中の飽和脂肪酸エステル部の合計量に対して、C8飽和脂肪酸エステル部が75モル%、C10飽和脂肪酸エステル部が25モル%である飽和中鎖脂肪酸トリグリセライド(40℃動粘度14.8mm/s)90gに12−ヒドロキシステアリン酸リチウム10gを添加し,12−ヒドロキシステアリン酸リチウムが溶解する温度で加熱攪拌した。次いで、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムが完全溶解した後、予め水冷したアルミ製バットに流し込み、流水で冷却した。そしてグリース状に固まった潤滑剤組成物を3本ロールミルにかけてグリース組成物を得た。尚、不混和ちょう度は260であった。
(比較例2)
鉱油(40℃動粘度130mm/s)88gに12−ヒドロキシステアリン酸リチウム12gを添加し,12−ヒドロキシステアリン酸リチウムが溶解する温度で加熱攪拌した。次いで、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムが完全溶解した後、予め水冷したアルミ製バットに流し込み、流水で冷却した。そしてグリース状に固まった潤滑剤組成物を3本ロールミルにかけてグリース組成物を得た。尚、不混和ちょう度は275であった。
そして、上記で得たグリース組成物を用いて動トルク測定評価を行なった。日本精工(株)製シールド付き深溝玉軸受(内径8mm、外径22mm)に上記グリース組成物を0.16g封入した試験軸受を製作した。そして、下記条件にて試験軸受を回転させ、軸受トルクが十分安定した後の軸受トルクを求めた。
・内輪回転数:1800min−1
・Fa荷重:29.4N
・温度:室温
グリース組成と試験結果を表1に、試験結果を図1にグラフ化して示すが、軸受トルクは実施例1に対する相対値である。
Figure 2017036363
表1及び図1から、実施例1の軸受トルクが比較例1および比較例2に対して低いことが分かる。

Claims (3)

  1. 飽和脂肪酸トリグリセライドを基油とし、グリセリン脂肪酸エステルを増ちょう剤としてなることを特徴とするグリース組成物。
  2. グリース組成物全量に対して、増ちょう剤の比率が15質量%であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 請求項1または請求項2のグリース組成物を封入したことを特徴とする転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2565829A (en) * 2017-08-24 2019-02-27 Kenwood Ltd Improvements in or relating to kitchen appliances
KR20240026149A (ko) 2021-06-30 2024-02-27 이데미쓰 고산 가부시키가이샤 그리스 조성물

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