JP2017035716A - 浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法及び装置、連続鋳造用タンディッシュ並びに複層鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法及び装置、連続鋳造用タンディッシュ並びに複層鋳片の連続鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】タンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル内の流量を非接触で測定する流量測定方法及び装置を提供する。また、鋳片の表層と内層の成分組成が異なる複層鋳片を製造するに際し、鋳片の表層と内層の成分組成が異なる溶鋼流量を正確に制御する。【解決手段】連続鋳造のタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル5内溶鋼流と交差する交流磁場を励磁コイル2によって励磁し、溶鋼流の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を1箇所以上の検出器3(検出コイル3a)で検出し、検出した信号に基づき浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出する。2つの浸漬ノズルから異なった成分の溶鋼を供給して複層鋳片を連続鋳造するに際し、上記流量測定装置1によって溶鋼流量制御を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、連続鋳造用タンディッシュに設けた浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法及び装置、連続鋳造用タンディッシュ並びに複層鋳片の連続鋳造方法に関するものである。
表層と内層の成分組成が異なる複層状の鋳片を製造する試みは古くから行われている。例えば、特許文献1に開示された方法があげられる。特許文献1には、長さの異なる二本の浸漬ノズルを鋳型内にある溶融金属のプールに挿入し、それぞれの吐出口を深さが異なる位置に設け、さらに異種の溶融金属間に直流磁場を利用して両金属の混合を防止しながら複層鋳片を製造する方法が開示されている。
なお、非特許文献1には、直流磁場として0.2〜0.3Tの磁場を印加することで、表層/内層の分離が図れることが開示されている。
しかしながら、上記方法では成分組成が異なる二種類の溶鋼を用いるため、二種類の溶鋼を同じタイミングで別々に溶製し、連続鋳造プロセスに搬送し、また、それぞれの溶鋼の中間保持容器として、タンディッシュをそれぞれ準備する必要がある。また、表層溶鋼と内層溶鋼で注入流量が大きく異なるため、1ヒート毎の必要溶鋼量が大きく異なり、通常の製鋼工場で実現するのは困難であった。
特許文献2には、移動する導電性の測定対象体(例えば高温液体金属)の流速を、測定対象面に波立ちがあっても、安定でかつ精度良く測定することができる流速測定方法及び装置が開示されている。移動する導電性の測定対象物体の表面に対し垂直な磁場を励磁し(励磁巻線P)、測定対象物の表面及びその移動方向と平行な方向の磁場を2箇所の範囲で検出し(検出巻線S1,S2)、その検出した磁場信号から測定対象物の流速を算出するに際し、検出巻線S1,S2の検出範囲より外側の2箇所の範囲で、測定対象物の移動方向と平行な方向の磁場を検出し(検出巻線S3,S4)、この検出磁場信号に基づき求めた測定対象物の表面の傾きに係る情報をもとに算出した測定対象物の流速を補正する。
特開昭63−108947号公報 特開平11−211741号公報
E.Takeuchi, M.Zeze, H.Tanaka, H.Harada and S.Mizoguchi: Ironmaking and Steelmaking, 24(1997),257.
一つの取鍋、一つのタンディッシュにて連続鋳造用溶鋼を供給し、鋳片表層部の合金元素濃度が内部と比較して異なる複層状の連続鋳造鋳片を鋳造する連続鋳造方法が提案されている。当該方法で用いるタンディッシュでは、タンディッシュの溶鋼プール内に開口を有するタンディッシュ堰を設け、溶鋼プールを2つのゾーンに分割する。2つの溶鋼プールのうち、取鍋溶鋼注入流から遠い側のプール内に所定の元素を連続的に添加し濃度を調整することで、タンディッシュ堰の両側のプールに異なる成分組成からなる2種類の溶鋼を保持する。各溶鋼プールの底部にそれぞれ浸漬ノズルを配置する。鋳型下方のストランドにおいては、ストランド幅方向全幅にわたって配置された直流磁場発生装置によって、ストランドに直流磁場帯を形成し、鋳造方向のストランドを直流磁場帯の上側と下側に分割する。タンディッシュ底部に設けた2つの浸漬ノズルのうち、追加元素を添加した側の浸漬ノズル(表層溶鋼用浸漬ノズル)からは直流磁場帯の上側溶鋼プールに溶鋼を供給し、取鍋溶鋼注入流側の浸漬ノズル(内層溶鋼用浸漬ノズル)からは直流磁場帯の下側溶鋼プールに溶鋼を供給する。それぞれの浸漬ノズルから供給する溶鋼の成分が異なるので、鋳片の表層と内層の成分組成が異なる複層鋳片を製造することができる。
鋳型当たりで1本の浸漬ノズルを用いる通常の連続鋳造であれば、タンディッシュから浸漬ノズルを経由して鋳型内に注入する溶鋼注入量の調整に際し、鋳型内湯面位置が一定になるように調整することにより、自動的に鋳造量と等しい量の溶鋼を供給することができる。それに対して、鋳型当たりで2本の浸漬ノズルから溶鋼を供給する場合、それぞれの浸漬ノズルからの溶鋼供給量のバランスを調整する必要がある。上記の発明では、直流磁場帯の下側溶鋼プールに供給する溶鋼量は浸漬ノズルのスライディングノズルの開度と溶鋼流量の関係を用いて制御している。
これに対して、2本の浸漬ノズルのうちの少なくとも一方について、当該浸漬ノズルを通じて供給する溶鋼流量実績が計測できれば、流量実績がより正確に目標溶鋼流量に一致するように流量制御が可能になるので好ましい。
本発明は、タンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル内の流量を非接触で測定する、浸漬ノズル内溶鋼流量測定方法及び流量測定装置、並びにそれを用いた連続鋳造用タンディッシュを提供することを目的とする。また、上記浸漬ノズル内溶鋼流量測定方法及び流量測定装置を用いて、鋳片の表層と内層の成分組成が異なる複層鋳片を製造する方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)連続鋳造のタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法であって、浸漬ノズル内溶鋼流と交差する交流磁場を励磁し、前記溶鋼流の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を1箇所以上の箇所で検出し、検出した信号に基づき浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することを特徴とする浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
(2)前記浸漬ノズルとして、タンディッシュの溶鋼側底面から鋳型内の吐出孔に至るまでの方向において一体型の浸漬ノズルを用い、浸漬ノズル内にはガス吹き込みを行わないことを特徴とする上記(1)に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
(3)前記交流磁場の励磁は励磁コイルによって行い、励磁コイルの直径D、励磁する交流磁場の周波数fを下記(1)式、(2)式によって定めることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
D≧W (1)
f≦(2−aH)2/(4πμσH2) (2)
ただし、W:励磁コイル位置における浸漬ノズルのコイル幅方向内径(m)、H:励磁コイル位置における浸漬ノズルの励磁磁場方向内径(m)、μ:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)、a:溶鋼非通過時の浸漬ノズル内励磁磁場方向励磁磁場分布から定まる定数(m-1
(4)前記交流磁場を励磁する励磁コイルと、磁場又は磁場の時間変化を検出する検出器のペアを2組設置し、各組を浸漬ノズルに対して相対して設置し、2組の検出結果に基づいて浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
(5)連続鋳造のタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置であって、
前記浸漬ノズルとして、タンディッシュの溶鋼側底面から鋳型内の吐出孔に至るまでの方向において一体型の浸漬ノズルを用い、
浸漬ノズル内溶鋼流と交差する交流磁場を励磁する励磁コイルと、前記溶鋼流の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を1箇所以上の箇所で検出する検出器と、検出した信号に基づき浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出する演算装置を有することを特徴とする浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置。
(6)前記励磁コイルの直径D、励磁する交流磁場の周波数fを下記(1)式、(2)式によって定めることを特徴とする上記(5)に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置。
D≧W (1)
f≦(2−aH)2/(4πμσH2) (2)
ただし、W:励磁コイル位置における浸漬ノズルのコイル幅方向内径(m)、H:励磁コイル位置における浸漬ノズルの励磁磁場方向内径(m)、μ:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)、a:溶鋼非通過時の浸漬ノズル内励磁磁場方向励磁磁場分布から定まる定数(m-1
(7)前記励磁コイルと検出器のペアを2組設置し、各組を浸漬ノズルに対して相対して設置し、前記演算装置は2組の検出結果に基づいて浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置。
(8)タンディッシュに接続する浸漬ノズルに、上記(5)乃至(7)のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置を設置してなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
(9)タンディッシュには2本の浸漬ノズルが接続され、少なくとも1本の浸漬ノズルに、上記(5)乃至(7)のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置を設置してなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
(10)タンディッシュ内に開口を有するタンディッシュ堰を設け、タンディッシュ堰にて区分された取鍋溶鋼注入側を第1領域、その反対側を第2領域とし、第1領域と第2領域側とにはそれぞれ異なる成分組成の溶鋼を保持し、タンディッシュの第1領域底部に内層溶鋼用浸漬ノズル、第2領域底部に表層溶鋼用浸漬ノズルを配置し、
鋳型幅方向全幅にわたって厚み方向に直流磁場を印加する直流磁場発生装置を配置し、当該直流磁場発生装置によって形成される直流磁場帯をはさんだストランドの上部を上側溶鋼プール、下部を下側溶鋼プールとし、前記表層溶鋼用浸漬ノズルから上側溶鋼プールに溶鋼を供給し、内層溶鋼用浸漬ノズルから下側溶鋼プールに溶鋼を供給し、
表層溶鋼用浸漬ノズルと内層溶鋼用浸漬ノズルの少なくとも一方に上記(5)乃至(7)のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置を設け、
前記2つの浸漬ノズルそれぞれから、それぞれの溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量を鋳型内に供給するに際し、前記溶鋼流量測定装置を設けた側の浸漬ノズルにおいては当該浸漬ノズルが溶鋼を供給する溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量に見合った溶鋼流量となるように調整し、他方の浸漬ノズルにおいては鋳型内湯面レベルが一定となるように溶鋼流量を制御することを特徴とする複層鋳片の連続鋳造方法。
連続鋳造のタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル内溶鋼流と交差する交流磁場を励磁し、溶鋼流の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を1箇所以上の箇所で検出し、検出した信号に基づき浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することにより、浸漬ノズル内の溶鋼流量を非接触で検出することが可能となる。
また、一つの取鍋、一つのタンディッシュにて連続鋳造用溶鋼を供給し、鋳片表層部の合金元素濃度が内部と比較して異なる複層状の連続鋳造鋳片を鋳造するに際し、本発明の溶鋼流量測定を用いることにより、鋳片の表層と内層の成分組成が異なる溶鋼流量を正確に制御し、複層鋳片を製造することができる。
本発明の溶鋼流量測定方法及び装置を示す図であり、(A)はA−A矢視平面断面図、(B)はB−B矢視側面断面図、(C)はC−C矢視図である。 溶鋼流量測定メカニズムを示す図であり、(A)は矢視図、(B)は側面断面図である。 本発明の溶鋼流量測定方法及び装置を示す図である。 浸漬ノズルでの溶鋼流量測定原理を示す図であり、(A)は浸漬ノズル内溶鋼流速分布、(B)は距離xとセンサー信号指標との関係、(C)は溶鋼流量比とセンサー信号指標の積算値との関係を示す図である。 一体型の浸漬ノズルを用いた本発明の溶鋼流量測定装置の断面図である。 浸漬ノズル内の充満流と非充満流の関係を示す図である。 励磁コイルと検出器のペアを2組設置した本発明の溶鋼流量測定装置を示す図である。 複層鋳片を連続鋳造する状況を示す図である。
管内を流れる導電性流体の流量を測定する流量計としては、直流磁場中を導電性流体が移動する際に生じる誘導起電力を管内に電極を設けて測定する電磁流量計が一般的である。ただし、測定対象流体が溶鋼である場合、溶鋼は高温であるため、導電性を兼ね備え、耐溶損性、耐食性を併せ持つ材料はない。その一方で、磁場中を導電性流体が移動する際に生じる誘導電流が形成する誘導磁場によって磁場がゆがむことが『磁場の速度効果』として知られており、特許文献2には、この原理を活用して、連続鋳造プロセスにおいて溶鋼を鋳込む鋳型内溶鋼流の表面の流速等を測定する流速測定方法及び装置に関するものが開示されている。
図2(A)に示すように、磁場B0中で溶鋼流7が速度vで磁場B0を横切るように動くと、その溶鋼中にEv =v×B0なる速度起電力が磁場B0と速度vの両方に垂直な方向に生じる。この速度起電力Evにより、溶鋼中に誘導電流Jvが誘起され、誘導電流に起因する誘導磁場Bvが発生する。本発明は、この原理を用いて、浸漬ノズル内を流れる溶鋼流量を非接触で計測するものである。
図3に示すように、本発明の流速測定方法及び測定装置では、浸漬ノズル5内溶鋼流7に対し、溶鋼流7と交差する交流磁場B0を励磁する。交流磁場B0の励磁は励磁コイル2によって行う。励磁コイルの中心軸51が溶鋼流7と直交するように配置して磁場を励磁すると最も好ましい。以下、励磁コイルの中心軸51が溶鋼流7と直交するように配置された場合を例にとり、溶鋼流内の、励磁コイルの中心軸51上の任意の点における励磁磁場B0を例にとって、作用について説明する。
磁場B0中で溶鋼が速度vで磁場B0を横切るように流れるので、溶鋼中には、速度vと磁場B0の両方に直交する方向に誘導電流Jvが誘起される(図2(A))。誘導電流Jvに起因する誘導磁場Bvは、誘導電流Jvを中心にした同心円状の磁場を形成し、浸漬ノズル5の外側で観察できる。浸漬ノズル5の外側において、誘導磁場Bvの主な方向は溶鋼流7の流動方向の平行方向にあることから、検出器3は、溶鋼流7の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を検出することとする。誘導磁場Bvを検出する検出器3としては、磁場そのもの又は磁場の時間変化を検出する検出器3を用いることができる。好ましくは、検出器3として検出コイル3aを用いることにより、磁場の時間変化を検出することができる。検出コイルの中心軸52と溶鋼流7の方向が平行ないし平行に近い角度とすると好ましい。これにより、溶鋼流7の流動方向と平行な方向の磁場の時間変化を検出することができる。以下、検出器3が検出コイル3aである場合を例にとって説明する。
検出コイル3aの設置位置として好ましくは、励磁コイル2と浸漬ノズル5の間に設置し、検出コイルの中心軸52が浸漬ノズル5の溶鋼流7と平行になるように配置する。検出コイル3aは1個としてもよく、あるいは複数の検出コイル3aを設置した上で検出信号の和信号を採取することとしても良い。
ここで、励磁コイル2に交流の励磁電流を供給し、浸漬ノズル5の溶鋼流7に対し垂直な磁場B0を励磁する。すると、溶鋼流の中に誘導電流Jvが流れる。図2(B)では、溶鋼流中の2箇所の誘導電流(Jv1、Jv2)について例示している。誘導電流Jv1による誘導磁場Bv11とBv12を図示している。誘導電流Jv2による誘導磁場Bv2を図示している。誘導磁場Bv12とBv2は、励磁コイル2の直下の検出コイル3aの位置では溶鋼流7に平行となっており、これらの誘導磁場Bvを、溶鋼流7に平行に配置した検出コイル3aで検出する。この検出した磁場又は磁場の時間変化は溶鋼流7の流速に対応しているので、これから溶鋼流7の流速を測定することができる。実際には図3に示すように、検出コイル3aの出力信号を、ロックインアンプ13等を用いて励磁電流と−90゜ずれた位相の成分を検波し、流速測定の元となる流速元信号とする。ここでは磁場の検出に検出コイル3aを用いており、検出コイル3aで検出する信号は磁場B0の時間変化であることから、励磁コイル2による励磁磁場B0と検出コイル3aの検出電圧とに−90゜の位相差があるため、−90゜ずれた位相成分を検波する。
溶鋼流量測定装置1の回路は図3のように、波形発生器11によって正弦波を発生させ、サーボアンプ12を介して励磁コイル2に励磁電流を供給する。ここでは励磁周波数は3Hzとした。検出コイル3aでの検出信号は、所定帯域幅のバンドパスフィルタにより、不要帯域のノイズ信号をあらかじめ除去した後に、ロックインアンプ13によって、励磁コイル2への励磁電流に対し−90°ずれた位相の成分が検波される。この検波用の基準位相信号が波形発生器11からロックインアンプ13に供給される。そしてロックインアンプ13による検波後の信号が流速測定の元となる流速元信号である。流速元信号は演算装置10としてのコンピュータ14に送られ、浸漬ノズル5内の溶鋼流量が計算される。
浸漬ノズル内の溶鋼通路に充満して通過する溶鋼流に、励磁コイルによる励磁磁場が交差している。浸漬ノズル内の溶鋼流のうち、励磁コイルに近い側から遠い側まで、励磁磁場が浸透する範囲内の各位置における溶鋼流が誘導電流を形成し、各位置における誘導電流が形成した誘導磁場の総和が、検出コイルによって検出される。ここでは、励磁コイル中心軸方向の各位置における現象が、検出コイルによってどのように検出されるかについて、計算に基づいて検証する。
ここでは図2(A)に示すように、励磁コイルの中心軸51方向を「奥行き方向61」と名付ける。そして、奥行き方向61と高さ方向62の両方に直角の方向を、「幅方向60」と名付ける。
図3に示すように、浸漬ノズル内溶鋼流路6の励磁コイル中心軸51方向(奥行き方向61)の深さHが30mm、励磁コイル2の磁場周波数f=3Hzの場合について検討した。検出コイル3aを励磁コイル2と浸漬ノズル5外壁の間に設置し、検出コイルの中心軸52方向を高さ方向62とし、溶鋼流方向に平行に配置するものとした。流路内の奥行き方向61距離xを、励磁コイル2に近い側の側壁面19でx=0、溶鋼流路6の奥行き方向61中心位置をx=H/2=15mmとした。
浸漬ノズル5の溶鋼流路6内を通過する溶鋼流7は、浸漬ノズルの側壁面19付近において境界層を形成し、側壁面19に接する位置(x=0)で流速が0であり、境界層以外の部分では平均流速に近い流速を有する。数値計算によると、図4(A)に示すような流速分布と推定されている。次に、x=0からx=H/2までの各位置の溶鋼流に基づく誘導磁場Bvが、浸漬ノズル外壁付近に設置した検出コイル3aで検出される強度をセンサー信号指標とし、誘導磁場Bvの元となる誘導電流Jvが位置するxの値ごとに計算で求めたセンサー信号指標を縦軸、xを横軸にとって図示すると、図4(B)のようになる。x=0の付近では溶鋼流速分布に起因してセンサー信号指標が右上がりの勾配を有し、境界層よりも中心側においては、xが大きくなるほどセンサー信号指標が低下するが、浸漬ノズル5の深さ中心(x=H/2)の溶鋼流7に起因するセンサー信号指標も十分に大きな値となっており、x=0からx=H/2までの溶鋼流速起因の誘導磁場Bvを十分に検出できることが明らかである。実際の検出では、xの各位置ごとの信号が採取できるのではなく、全信号の積算値が検出される。
次に、浸漬ノズル内の溶鋼流量を種々変化させ、各溶鋼流量におけるx方向の流速分布を算出し、算出した流速分布に応じてセンサー信号指標を計算し、センサー信号指標の積算値を算出した。溶鋼流量(相対比)とセンサー信号指標の積算値との関係については、図4(C)に示すように、原点をとおる直線関係にあることから、センサー信号指標の積算値によって溶鋼流量の測定が可能であることがわかる。
浸漬ノズル5内の溶鋼流7については、溶鋼が浸漬ノズル内に充満して流れている状態(充満流17)になることがある(図5参照)一方、浸漬ノズル内の空間に溶鋼が充満せず、離散的に溶鋼が落下する状態(非充満流18)になることもある(図6参照)。非充満流18の場合、図6に示すように、浸漬ノズル5の上部側が非充満流18、下部の鋳型内メニスカス37よりも高い位置までに充満流17が存在することがあり、充満流17と非充満流18の境界を二次メニスカス16と呼ぶ。鋳型内メニスカス37と二次メニスカス16との高さ差に対応する溶鋼静圧分だけ、非充満流18部分は負圧となっている。
タンディッシュ22からの鋳造開始直前において、浸漬ノズル5内は空気で満たされており、タンディッシュ22から注入された溶鋼は非充満流18を形成する。浸漬ノズル内の空気は注入の進行に従って落下溶鋼とともに二次メニスカス16の滝壺に巻き込まれ、浸漬ノズル内の二次メニスカス16が上昇し始め、それに応じて非充満流18部分の圧力が負圧となる。通常の連続鋳造装置において、タンディッシュ底部47から浸漬ノズル吐出孔48までの間には継ぎ目があり、特に溶鋼流量制御にスライディングノズルを用いる場合は複数の継ぎ目があり、継ぎ目部からは負圧になった浸漬ノズル内に空気あるいは継ぎ目部周囲に吹き付けている不活性ガスが流入する。また、浸漬ノズル5内に非金属介在物が析出してノズル詰まりを起こす事態を防止する目的で浸漬ノズル5内に不活性ガスを吹き込むことがある。継ぎ目からの流入空気あるいは継ぎ目部周囲に吹き付けている不活性ガスや、あるいはノズル内に吹き込む不活性ガスため、二次メニスカス16高さはある高さにとどまり、それ以上は上昇しなくなる。その場合、連続鋳造中は継続して浸漬ノズル内に非充満流18部分が形成されることとなる。
本発明においては、浸漬ノズル5の溶鋼流量測定を行う部分において、溶鋼流7が非充満流18であっても流量測定は不可能ではない。しかし、測定精度を向上させるためには、充満流17の部分において流量測定を行うことが好ましい。本発明では、浸漬ノズル5として、タンディッシュ22の溶鋼側底面(タンディッシュ底部47)から鋳型内の吐出孔48に至るまでの方向において継ぎ目を有しない一体型の浸漬ノズル5を用いると好ましい。これにより、タンディッシュ底部47から鋳型内の吐出孔48に至るまでの間において空気の流入を防止することができるので、浸漬ノズル内に残存するガスは滝壺で溶鋼に巻き込まれて減少し、二次メニスカス16が上昇し、最終的には浸漬ノズル内の高さ方向全域を充満流17領域とすることができ(図5参照)、励磁コイル2で磁場を励磁する位置も充満流17となり、本発明の溶鋼流量測定を十分な精度で行うことが可能となる。この場合には、浸漬ノズル内にはガス吹き込みを行わないことも必要である。またこの場合、溶鋼流量調整のためにストッパー20を用いると好ましい。ここで、浸漬ノズルが異なった組成の部分が接合されたものであっても、接合部が接着されていて接合部からガスが流通しなければ、接合部を有しないものとする。
本発明の溶鋼流量測定においては、浸漬ノズル5の溶鋼流路6断面におけるできるだけ多くの部分の溶鋼流7を流量測定の対象とすることが好ましい。まず、浸漬ノズルの幅方向60(励磁ノズル中心軸51に垂直な水平方向)について検討する。図1(A)に示すように、励磁コイル2位置における浸漬ノズル5の幅方向60内径(上記のように励磁ノズル中心軸に垂直な水平方向)をWとし、励磁コイルの直径をDとしたとき、
D≧W (1)
を満足すると好ましい。励磁コイル2によって励磁された磁場は、少なくとも励磁コイル直径Dよりも広い幅で磁場が形成されるので、(1)式を満たす場合には、浸漬ノズル5のコイル幅方向内径Wの全域にわたって励磁磁場を受けることとなり、幅方向全域の溶鋼流が流速測定の対象となるので好ましい。
次に、浸漬ノズルの励磁磁場方向(奥行き方向61)について検討する。励磁コイル位置における浸漬ノズル5の奥行き方向61内径をHとする。前述と同様、溶鋼流路6内の奥行き方向61距離xを、励磁コイル2に近い側の側壁面19でx=0、励磁コイルから遠い側の側壁面19でx=H、溶鋼流路6の奥行き方向61中心位置をx=H/2とおく(図3参照)。
励磁コイル2の外側における磁力線の分布に起因して、浸漬ノズル5が配置された位置において、励磁された磁場の強さは、励磁コイル2から距離が離れるに従って弱くなる。浸漬ノズル5内に溶鋼が流通していない状態において、磁場の強さを距離xで表すと、近似的に
磁場の強さ∝exp(−ax) (2a)
と表すことができる。aは定数である。定数aの値は、励磁コイル2の内径、外形、ターン数とコイル中心からの距離などによって定まるものであり、磁場解析の結果や磁場測定結果を指数関数で近似することによって求めることができる。
浸漬ノズル5の溶鋼流路6内に溶鋼が存在する状況では、励磁された交流磁場が溶鋼中で減衰し、距離xにおける減衰の程度は、表皮深さδによって
exp(−x/δ) (2b)
で表される。このように減衰した磁場と溶鋼流動に基づいて誘導電流が流れる。誘導電流による誘導磁場はやはり溶鋼中で減衰し、距離xの溶鋼中での減衰程度は同じく
exp(−x/δ) (2c)
で表される。
以上を総合すると、浸漬ノズル5の側壁面19から距離xの位置における溶鋼流7に基いて浸漬ノズル外方で検出できる誘導磁場Bvの大きさは、上記3つのファクターの積に比例するとして以下のように表すことができる。
Bv∝exp(−ax)×exp(−2x/δ)
=exp(−(a+2/δ) x) (3)
ここで表皮深さδは、
δ=√(1/(πσμf)) (4)
で表される。σ:電気伝導度、μ:真空の透磁率、f:励磁磁場の周波数である。
浸漬ノズル5内の溶鋼流量をできるだけ正確に評価するためには、x=H/2、即ち浸漬ノズル5の奥行き方向61中心位置の溶鋼流7による誘導磁場BvCの大きさが、x=0における溶鋼流7による誘導磁場Bv0の大きさの1/e(eは自然対数の底)より大きいと好ましい。そして、そのような条件を確保するためには、上記(3)式、(4)式から、
(a+2/δ)(H/2)≦1 (5)
となり、この式に(4)式のδを代入して周波数fについて解くと、
f≦(2−aH) 2/(4πσμH2) (2)
が得られる。即ち、上記(2)式を満たすように励磁周波数fを選択することにより、励磁コイル2位置における浸漬ノズル5の奥行き方向61内径Hの半分、つまり浸漬ノズル5の奥行き方向61中心位置の溶鋼流7に起因する誘導磁場BvCまで含めて、十分な精度で検出が可能となるので好ましい。
上述のように、上記(2)式を満たすように励磁周波数fを定めることにより、励磁コイル位置における浸漬ノズル5の奥行き方向61中心部までの溶鋼流7に起因する誘導磁場を検出することができる。従って、浸漬ノズル5の溶鋼流路6断面全体の溶鋼流速を検出しようとする場合、図7に示すように、交流磁場を励磁する励磁コイル2と、磁場又は磁場の時間変化を検出する検出器3のペアを2組設置し、各組を浸漬ノズル5に対して相対して設置し、2組の検出結果に基づいて浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することとすると好ましい。浸漬ノズルの溶鋼流路6の断面のうち、半分を一組の溶鋼流量測定装置1aが、残り半分を他の組の溶鋼流量測定装置1bが溶鋼流起因の誘導磁場を検出するので、両者の検出結果を総合することにより、断面全体の溶鋼流量を測定することが可能となる。
もちろん、浸漬ノズル5内の溶鋼流7は溶鋼流路6断面で左右対称に流れていると推定されるので、一組の励磁コイル2と検出器3のペアで浸漬ノズル断面の半分の部分のみに起因する誘導磁場を検出したとしても、浸漬ノズル全体の溶鋼流量を算出することができる。
以上説明した溶鋼流量測定方法を適用することにより、連続鋳造のタンディッシュ22から鋳型23内に溶鋼を供給する浸漬ノズル5内の溶鋼流量測定装置1であって、浸漬ノズル5として、タンディッシュ22の溶鋼側底面から鋳型内の吐出孔48に至るまでの方向において一体型の浸漬ノズル5を用い、浸漬ノズル5内溶鋼流7と交差する交流磁場を励磁する励磁コイル2と、溶鋼流7の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を1箇所以上の箇所で検出する検出器3と、検出した信号に基づき浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出する演算装置10を有することを特徴とする浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置とすることができる。
励磁コイル2、検出コイル3aについては、セラミックス製のボビンにコイルを巻いた空心タイプのものを用いるものの他、フェライト等の磁性体にコイルを巻いた磁心タイプのものを用いてもかまわない。また誘導磁場又は磁場の時間変化を検出する検出器3として、検出コイル3aでなくホール素子等の他の磁気センサを使用してもよい。さらに、演算装置10としてコンピュータ上のソフトウェアで処理する方法の他、ソフトウェアの代わりにハードウェア(例えば適当なアナログ回路等)を用いて処理してもかまわない。また各検出コイルからの信号を検波するのに、ロックインアンプを用いる方法の他、各信号の求めたい位相の成分を検出できれば、ロックインアンプでなくてもよく、例えば代わりに同期検波器などを用いても良い。
タンディッシュ22に接続する浸漬ノズル5に、上記本発明の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置1を設置してなる連続鋳造用タンディッシュは、浸漬ノズル5を通過する溶鋼流量を測定しつつ連続鋳造を行うことができるので好ましい。
次に、一つの取鍋21、一つのタンディッシュ22にて連続鋳造用溶鋼を供給し、鋳片表層部の合金元素濃度が内部と比較して異なる複層状の連続鋳造鋳片を鋳造する連続鋳造方法において、本発明の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置1を適用する発明について、図8に基づいて説明する。
まず、鋳型23内のメニスカス37の下方の所定位置に直流磁場発生装置28を配置し、直流磁場帯34を形成する。直流磁場帯34においては、磁力線が鋳片の厚み方向に向かう直流磁場を印加し、磁束密度は鋳型幅方向にほぼ均一とする。このような直流磁場帯34を形成することにより、直流磁場帯34を通過しようとする溶鋼には電磁ブレーキがかかり、直流磁場帯34上方の上側溶鋼プール35と下方の下側溶鋼プール36とが事実上遮断されることとなる。上側溶鋼プール35で凝固した凝固シェルが鋳片の表層部44を形成し、下側溶鋼プールで凝固した凝固シェル43が鋳片の内層部45を形成する。そして、直流磁場帯34部分における凝固シェル43の厚さDが、鋳片の表層部の厚さに該当する。従って、直流磁場帯34を配置するメニスカスからの高さhは、目標とする表層部の厚さD、鋳型内における凝固係数K、鋳造速度VCに基づいて定めることとなる。
そのうえで、その直流磁場帯34の上下それぞれに溶鋼を供給するために2本の浸漬ノズル(25、26)を設置し、それぞれの溶鋼プールにおいて凝固する溶鋼量だけ、各浸漬ノズルから溶鋼を供給することで、表層と内層の成分組成が異なる鋳片が鋳造できる。直流磁場帯34の磁束密度は、上側溶鋼プール35と下側溶鋼プール36との間の溶鋼の入れ替わりを最小限にすることのできる磁束密度を選択する。直流磁場帯34の磁束密度が0.3T(テスラ)以上であれば、十分に溶鋼の入れ替わりを抑止することができる。
図8に示したように、開口30を有するタンディッシュ堰24によってタンディッシュ22を複数領域に、すなわち、取鍋からの第1溶鋼41を受ける第1領域31と、第1溶鋼41にワイヤー等によって所定元素あるいはその合金を添加し成分調整を行う第2領域32の2つの領域にわける。第1領域31には、取鍋注入流33位置と内層溶鋼用浸漬ノズル25が配置され、第2領域32には表層溶鋼用浸漬ノズル26が配置される。内層溶鋼用浸漬ノズル25からは第1溶鋼41を下側溶鋼プール36へ注入する。表層溶鋼用浸漬ノズル26からは第2溶鋼42を上側溶鋼プール35へ注入する。
このようにすることで、タンディッシュ内の第1領域31では取鍋注入流33から内層溶鋼用浸漬ノズル25への溶鋼流が形成されるのに対し、タンディッシュ堰24で区画した第2領域32に成分添加装置27によって所定の元素あるいは合金をワイヤー等によって連続的に添加して含有成分を調整し、第2溶鋼42をつくる。その結果、1つのタンディッシュ内で2種類の溶鋼:第1溶鋼41、第2溶鋼42を保持することが可能となる。
本発明では、図8に模式的に示すように、鋳型幅全体にわたって形成される直流磁場帯34によってストランドを上側溶鋼プール35と下側溶鋼プール36の2つに分割し、上側溶鋼プール35には表層溶鋼用浸漬ノズル26から第2溶鋼42を注入し、下側溶鋼プール36には内層溶鋼用浸漬ノズル25から第1溶鋼41を注入する。内層溶鋼用浸漬ノズル25から下側溶鋼プール36に供給する溶鋼量をQ1、表層溶鋼用浸漬ノズル26から上側溶鋼プール35に供給する溶鋼量をQ2とする。合計溶鋼量Qは
Q=Q1+Q2
である。
本発明においては、溶鋼量Q1、溶鋼量Q2の一方について、本発明の溶鋼流量測定装置1を用いて溶鋼流量を実測し、溶鋼流量制御を行う。ここではまず、下側溶鋼プール36に供給される第1溶鋼の流量Q1について、本発明の溶鋼流量測定装置1を用いて溶鋼流量制御を行う場合について説明する。
直流磁場帯34の位置において、鋳片の表面側には第1溶鋼プールの溶鋼が凝固した凝固シェル(上側溶鋼プール凝固部分44)が形成されている。直流磁場帯位置における凝固シェル断面積をS2とする。この凝固シェル断面積S2が、鋳造後鋳片の表層部44面積S2となる。鋳片表面積のうちの表層部面積S2以外の部分が内層部45面積S1であり、S1とS2を足した値が鋳片断面積となる。
予め、適用する連続鋳造装置における鋳型内での凝固係数K(mm/min0.5)を確認しておく。メニスカス37から直流磁場帯34までの高さh、鋳造速度VCを定めることにより、直流磁場帯34における凝固シェル厚さdが
d=K√(h/VC
として求まる。求まった直流磁場帯における凝固シェル厚さdを用いて、直流磁場帯における凝固シェル断面積S2が定まり、鋳片断面積との差で前述のS1が定まり、
1=ρ11C
によってG1が定まるので、
1=G1
となるように、内層溶鋼用浸漬ノズル25からの溶鋼注入量Q1を定めればよい。ρ1は第1溶鋼41の密度である。内層溶鋼用浸漬ノズル25に本発明の溶鋼流量測定装置1を設置し、計測した溶鋼流量実績値が上記溶鋼注入量Q1に一致するように流量制御する。
その上で、成分調整された第2溶鋼42を上側溶鋼プール35に供給する表層溶鋼用浸漬ノズル26の流量調整において、湯面レベル計46で計測した鋳型内湯面レベルが一定となるように溶鋼量Q2を制御する。これにより、鋳型内の上側溶鋼プール35では、供給される溶鋼量(Q2)と、凝固シェルとして排出される時間あたり輸送量(G2)がバランスするとともに、下側溶鋼プール36では、供給される溶鋼量(Q1)と凝固シェルとして排出される時間あたり輸送量(G1)がバランスする。そのため、直流磁場帯を通過して混合する溶鋼流が生じないので、図8の上側溶鋼プール35と下側溶鋼プール36の界面を安定的に維持することができる。Q1とQ2のバランスによって決まる上側溶鋼プール35と下側溶鋼プール36の界面を直流磁場帯の範囲内に制御する。
鋳型内への溶鋼供給量制御方法としてあるいは、表層溶鋼用浸漬ノズル26に本発明の溶鋼流量測定装置1を設置し、表層溶鋼用浸漬ノズル26からの溶鋼供給量Q2が上側溶鋼プール凝固量G2となるように溶鋼流量制御を行い、内層溶鋼用浸漬ノズル25の溶鋼流量制御については、鋳型内の湯面レベルが一定になるように制御することとしても良い。
1 溶鋼流量測定装置
2 励磁コイル
3 検出器
3a 検出コイル
5 浸漬ノズル
6 溶鋼流路
7 溶鋼流
10 演算装置
11 波形発生器
12 サーボアンプ
13 ロックインアンプ
14 コンピュータ
16 二次メニスカス
17 充満流
18 非充満流
19 側壁面
20 ストッパー
0 交流磁場
Bv 誘導磁場
21 取鍋
22 タンディッシュ
23 鋳型
24 タンディッシュ堰
25 内層溶鋼用浸漬ノズル
26 表層溶鋼用浸漬ノズル
27 成分添加装置
28 直流磁場発生装置
29 電磁攪拌装置
30 開口
31 第1領域
32 第2領域
33 取鍋注入流
34 直流磁場帯
35 上側溶鋼プール
36 下側溶鋼プール
37 メニスカス(湯面)
40 溶鋼
41 第1溶鋼
42 第2溶鋼
43 凝固シェル
44 上側溶鋼プール凝固部分(表層部)
45 下側溶鋼プール凝固部分(内層部)
46 湯面レベル計
47 タンディッシュ底部
48 吐出孔
51 励磁コイルの中心軸
52 検出コイルの中心軸
60 幅方向
61 奥行き方向
62 高さ方向

Claims (10)

  1. 連続鋳造のタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法であって、浸漬ノズル内溶鋼流と交差する交流磁場を励磁し、前記溶鋼流の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を1箇所以上の箇所で検出し、検出した信号に基づき浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することを特徴とする浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
  2. 前記浸漬ノズルとして、タンディッシュの溶鋼側底面から鋳型内の吐出孔に至るまでの方向において一体型の浸漬ノズルを用い、浸漬ノズル内にはガス吹き込みを行わないことを特徴とする請求項1に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
  3. 前記交流磁場の励磁は励磁コイルによって行い、励磁コイルの直径D、励磁する交流磁場の周波数fを下記(1)式、(2)式によって定めることを特徴とする請求項1又は2に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
    D≧W (1)
    f≦(2−aH)2/(4πμσH2) (2)
    ただし、W:励磁コイル位置における浸漬ノズルのコイル幅方向内径(m)、H:励磁コイル位置における浸漬ノズルの励磁磁場方向内径(m)、μ:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)、a:溶鋼非通過時の浸漬ノズル内励磁磁場方向励磁磁場分布から定まる定数(m-1
  4. 前記交流磁場を励磁する励磁コイルと、磁場又は磁場の時間変化を検出する検出器のペアを2組設置し、各組を浸漬ノズルに対して相対して設置し、2組の検出結果に基づいて浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法。
  5. 連続鋳造のタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置であって、
    前記浸漬ノズルとして、タンディッシュの溶鋼側底面から鋳型内の吐出孔に至るまでの方向において一体型の浸漬ノズルを用い、
    浸漬ノズル内溶鋼流と交差する交流磁場を励磁する励磁コイルと、前記溶鋼流の流動方向と平行な方向の磁場又は磁場の時間変化を1箇所以上の箇所で検出する検出器と、検出した信号に基づき浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出する演算装置を有することを特徴とする浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置。
  6. 前記励磁コイルの直径D、励磁する交流磁場の周波数fを下記(1)式、(2)式によって定めることを特徴とする請求項5に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置。
    D≧W (1)
    f≦(2−aH)2/(4πμσH2) (2)
    ただし、W:励磁コイル位置における浸漬ノズルのコイル幅方向内径(m)、H:励磁コイル位置における浸漬ノズルの励磁磁場方向内径(m)、μ:真空の透磁率(N/A2)、σ:溶鋼の電気伝導度(S/m)、a:溶鋼非通過時の浸漬ノズル内励磁磁場方向励磁磁場分布から定まる定数(m-1
  7. 前記励磁コイルと検出器のペアを2組設置し、各組を浸漬ノズルに対して相対して設置し、前記演算装置は2組の検出結果に基づいて浸漬ノズル内の溶鋼流量を算出することを特徴とする請求項5又は6に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置。
  8. タンディッシュに接続する浸漬ノズルに、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置を設置してなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
  9. タンディッシュには2本の浸漬ノズルが接続され、少なくとも1本の浸漬ノズルに、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置を設置してなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
  10. タンディッシュ内に開口を有するタンディッシュ堰を設け、タンディッシュ堰にて区分された取鍋溶鋼注入側を第1領域、その反対側を第2領域とし、第1領域と第2領域側とにはそれぞれ異なる成分組成の溶鋼を保持し、タンディッシュの第1領域底部に内層溶鋼用浸漬ノズル、第2領域底部に表層溶鋼用浸漬ノズルを配置し、
    鋳型幅方向全幅にわたって厚み方向に直流磁場を印加する直流磁場発生装置を配置し、当該直流磁場発生装置によって形成される直流磁場帯をはさんだストランドの上部を上側溶鋼プール、下部を下側溶鋼プールとし、前記表層溶鋼用浸漬ノズルから上側溶鋼プールに溶鋼を供給し、内層溶鋼用浸漬ノズルから下側溶鋼プールに溶鋼を供給し、
    表層溶鋼用浸漬ノズルと内層溶鋼用浸漬ノズルの少なくとも一方に請求項5乃至7のいずれか1項に記載の浸漬ノズル内の溶鋼流量測定装置を設け、
    前記2つの浸漬ノズルそれぞれから、それぞれの溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量を鋳型内に供給するに際し、前記溶鋼流量測定装置を設けた側の浸漬ノズルにおいては当該浸漬ノズルが溶鋼を供給する溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量に見合った溶鋼流量となるように調整し、他方の浸漬ノズルにおいては鋳型内湯面レベルが一定となるように溶鋼流量を制御することを特徴とする複層鋳片の連続鋳造方法。
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