JP2005028381A - 鋳型内湯面レベル検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融金属の連続鋳造において、鋳型内湯面の波立ちが顕在化する鋳造条件のもとでも注湯量の安定化を容易とするような波立ちの検出を抑制することのできる鋳型内湯面レベル検出装置を提供すること。
【解決手段】溶融金属の連続鋳造設備において、鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心として鋳型幅方向の対称位置を測定するように設置された2つの湯面レベル計と、前記2つの湯面レベル計の湯面レベル検出信号を加算平均して出力する加算平均器とで構成され、前記加算平均器の出力を鋳型内湯面レベルとすることを特徴とする鋳型内湯面レベル検出装置。
【選択図】 図1
【解決手段】溶融金属の連続鋳造設備において、鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心として鋳型幅方向の対称位置を測定するように設置された2つの湯面レベル計と、前記2つの湯面レベル計の湯面レベル検出信号を加算平均して出力する加算平均器とで構成され、前記加算平均器の出力を鋳型内湯面レベルとすることを特徴とする鋳型内湯面レベル検出装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属の連続鋳造における鋳型内湯面レベル検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属の連続鋳造においては、鋳型内湯面レベルを一定に制御することが鋳片品質を維持するために要求される。湯面レベルの変動の原因には、ノズルの閉塞に起因する注湯量の変動や鋳片のバルジングなどが考えられる。特に、高速鋳造においては発散的な湯面変動が発生しやすく、従来の鋳型内湯面レベルに基づいた注湯量制御では対処が極めて困難であり、鋳片に表面品質欠陥を生じる、さらにはオーバーフローに至る場合がある。
【0003】
従来、このような鋳型内湯面レベルの変動に対しては湯面レベルの検出装置(以下、湯面レベル計と記す)とスライディングノズルやストッパーといった注湯量制御手段を組み合わせた注湯量制御方法が用いられており、その制御方法については制御理論の適用例の報告が多数ある。
湯面レベル計については、鋳型に埋め込まれた複数の熱電対群から湯面レベルを推定する方法、渦流式距離計を用いる方法、γ線を用いる方法、レーザー変位計を用いる方法などが挙げられる。これらの中でも、渦流式湯面レベル計はメンテナンスの容易さと高応答性ゆえに注湯量制御との組み合わせにおいて広く用いられている。
【0004】
通常、注湯量制御においては上記湯面レベル計が単体で使用され、レベル計の視野範囲における局所的な湯面レベルが検出・制御される。このとき、湯面レベル計の検出値には体積変動成分のほかに湯面波立ちや盛り上がり等の外乱(以下、波立ち外乱と記す)が重畳されており、波立ち外乱が体積変動成分に較べて小さい場合は周波数特性に基づいた信号処理を用いた外乱分離(以下、周波数フィルタリングと記す)が可能となる。そして、抽出された体積変動成分に対してのみ注湯量のフィードバック制御を行い、鋳型内湯面レベルを一定に維持することになる。
【0005】
しかし、高速鋳造や電磁攪拌鋳造では鋳型内溶鋼の乱流化が促進され、波立ちが湯面において顕在化する。そのため、周波数フィルタリングによる波立ち外乱の除去、および、体積変動成分の抽出が極めて困難となる。結果として、検出された波立ち外乱によって注湯量は過剰に変動させられ、鋳型内湯面レベルの変動量を低速鋳造時と同程度に抑制することが難しくなる。
また、高速鋳造においては鋳型内で発生する吐出流の偏流により一様ではない局所的な湯面変動を生ずる場合がある。例えば、ノズル吐出孔の片側が非金属介在物により閉塞して偏流が発生する場合においては、単体の湯面レベル計で検出された局所的な波立ち外乱により注湯量が大きく変動させられ、制御不能となることもある。
【0006】
上記理由から、単体の湯面レベル計を用いた従来方式の注湯量制御においては、波立ち外乱によって注湯量が制御不能に陥ることを防止するために制御ゲインを低下させることがある。しかし、制御ゲインを下げれば体積変動起因の鋳型内湯面レベル変動を十分に抑制できなくなるという問題が生じる。
このように、波立ちが湯面に顕在化する鋳造条件においては鋳型内湯面レベル変動の抑制が困難となり、制御方法の高度化、あるいは湯面レベル検出装置の適正化により高い制御ゲインにおいても注湯量制御を安定化することが求められる。
【0007】
制御方法によって高ゲインかつ安定な注湯量制御を実現するには、高度制御理論に基づいた制御器が必要となる。先行事例としては特許文献1、特許文献2をはじめとするH∞制御、ロバスト制御、特許文献3、特許文献4をはじめとする適応制御などを挙げることができる。
上記事例においては周波数特性に基づいた制御器設計を行っているため、波立ち外乱の周波数における制御ゲインを低下させることは可能である。しかし、種々の操業条件における周波数フィルターを予め設計することは大変な労力を要する。また、波立ち外乱が大きい場合には周波数フィルタリングは有効に機能しないという問題は解決されないままである。
【0008】
一方、湯面レベル検出装置を工夫した注湯量制御の事例には特許文献5を挙げることができる。これは主制御用の1つの湯面レベル計に基づいて注湯量制御を行いながら、鋳型両短辺に設置された2つの湯面レベル計から波立ちの指標値を算出して、その指標値に基づいて注湯量を補正、あるいは、鋳造速度を低下させることで偏流を解消することを目的とするものである。
しかしながら、上記事例においては注湯量制御にフィードバックされる湯面レベルは単体の湯面レベル計で検出されたものである。そのため、従来の単体の湯面レベル計に基づいた注湯量制御と同様に、波立ち外乱によって注湯量が過剰に変動させられることに変わりはない。
【0009】
以上のように、従来の湯面レベル検出装置に基づいた注湯量制御は波立ち外乱が大きくなる高速鋳造、電磁攪拌鋳造において注湯量の安定化と鋳型内湯面変動の抑制の両立が難しいという問題を持つ。そのため、上記鋳造条件においては鋳造速度を低下させる、あるいは、電磁攪拌強度を弱めるなど鋳造条件の変更によって鋳型内溶鋼の乱流化を抑制することで、鋳型内湯面の安定化を図ることになる。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−77268号公報
【特許文献2】
特開平7−60423号公報
【特許文献3】
特開平10−328801号公報
【特許文献4】
特開平9−85497号公報
【特許文献5】
特開平10−216914号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記理由により注湯量制御が不安定化して溶融金属の連続鋳造における高速鋳造化が阻害される、または、所望の強度で電磁攪拌を使用できないという問題を解消する、または、注湯量制御を安定化させるために制御器設計に必要な労力を軽減するためになされたものである。その目的は高速鋳造、電磁攪拌、または、ノズル吐出孔の閉塞により鋳型内湯面の波立ちが顕在化する鋳造条件においても注湯量を安定化し、注湯量制御により体積変動起因の鋳型内湯面レベル変動を十分に抑制することを容易とする鋳型内湯面レベル検出装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、溶融金属の連続鋳造において、鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心として鋳型幅方向の対称位置近傍を測定するように設置された2つの湯面レベル計と、それらの湯面レベル検出信号を加算平均して出力する加算平均器とで構成され、加算平均器の出力を鋳型内湯面レベルとすることによって波立ち外乱の検出を効果的に抑制する鋳型内湯面レベル検出装置を提供する。
本発明方法においては、図1に示すように鋳型中心部に配した浸漬ノズルの中心と鋳型両短辺までの距離がそれぞれ等しい点近傍を測定するように2つの湯面レベル計を設置するのが、特に有効である。そのため、鋳型幅の変更に合わせてノズルと鋳型両短辺の中央近傍を測定するようにそれぞれの湯面レベル計を移動させるのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心とする鋳型幅方向の対称位置近傍を測定するように設置された2個の湯面レベル計の各検出値をH1、H2とすれば、次の(1)式で表される平均湯面レベルHAVEを検出する。特に、可能であるならば2つの湯面レベル計は浸漬ノズルと両短辺の中央近傍を測定するように設置するものとする。
HAVE=1/2(H1+H2)・・・・・・(1)
H1:湯面レベル計1の検出湯面レベル
H2:湯面レベル計2の検出湯面レベル
【0014】
以下、本発明方法においてノズルを中心とする鋳型幅方向の対称位置を測定するように2つの湯面レベル計を設置し、それらの検出湯面レベル信号の平均化操作によって波立ち外乱の検出が抑制されること、特に2つの湯面レベル計が測定する位置をノズルと鋳型両短辺の中央近傍とするのが有効であるとする物理的根拠を説明する。
【0015】
連続鋳造設備の鋳型内湯面における波立ち現象のひとつは、自由表面を持つ容器流れで発生するスロッシングと呼ばれる一種の定在波である。特に、スラブのように縦横比が大きい鋳型においては、幅方向に分布する波立ちが顕著となることがよく知られている。このとき、鋳型幅方向に分布する波立ちの波形は次の(2)式で表される。
【数1】
AN:定数
L:鋳型幅
N:モード(節の数)
g:重力加速度
x:鋳型幅方向の座標(0≦x≦L)
t:時間
【0016】
各モードの波立ちの波形は図2に示すように周期的な分布を持ち、鋳型両短辺が常に腹となる。節の数が奇数ならば鋳型中央を中心に逆位相となり、偶数ならば鋳型中央を中心に同位相となる。節の数が増えれば高周波振動となり、エネルギーは減衰する。そのため、実際には節の数が1つ、ついで2つとなるモードが支配的であり、それぞれを基本波と二倍波と呼ぶ。
【0017】
まず、基本波はノズルを中心とした鋳型幅方向の対称位置で同じ振幅を持ち、位相は正反対となる。そのため、ノズルを中心とする鋳型幅方向の対称位置で検出される波立ちとの加算平均により相殺可能である。これが本発明方法において、ノズルを中心とした鋳型幅方向の対称位置近傍を測定するように2つの湯面レベル計を設置し、それらの加算平均によって波立ち外乱の検出が効果的に抑制される理由である。
【0018】
一方、二倍波はノズルを中心とした鋳型幅方向の対称位置で同じ振幅と位相を持つ。二倍波の検出を抑制するにはその振幅がゼロとなる節、すなわち、ノズルと鋳型両短辺の中央で湯面を検出すればよい。これが本発明方法において、ノズルと鋳型両短辺の中央近傍を測定するように2つの湯面レベル計を設置すると波立ち外乱の検出が特に抑制される理由である。
【0019】
このとき、多くの湯面レベル計は視野範囲での平均的な湯面レベルを検出するため、測定するべき点を視野範囲内に収めるように湯面レベル計を設置する。湯面レベル計で測定する位置の対称性が著しく損なわれる場合は、本発明の湯面レベル検出装置は有効に機能しない。
また、使用する湯面レベル計の応答性が悪ければ波立ち外乱を高精度に検出することができない。そのため、本発明の湯面レベル検出装置を有効に機能させるには95%応答が2秒以下の湯面レベル計を使用する必要がある。
【0020】
上記条件を守って本発明の湯面レベル検出装置を使用するならば、波立ち外乱は効果的に相殺され、湯面全体で均一に表れる体積変動起因の湯面レベル変動が平均湯面レベルHAVEによって高精度に検出される。このことは、高速鋳造や電磁攪拌鋳造によって鋳型内流動の乱流化が促進され、波立ちが顕在化する場合においても成立するものである。
【0021】
さらに、ノズル吐出孔の片側が閉塞されて偏流が生じて、局所的な湯面波立ちが発生する場合においても、本発明方法によって波立ち外乱の検出が効果的に抑制される。これより、単体の湯面レベル計を用いた湯面検出と周波数フィルタリングの組み合わせでは困難な波立ち外乱と体積変動成分の分離が、本発明方法により極めて容易に実現されることが説明される。
【0022】
本発明方法から得られる平均湯面レベルHAVEに基づいて注湯量制御を行えば、体積変動だけを制御するように注湯量が調整され、波立ち外乱による注湯量の過剰な変動が抑制される。結果、高速鋳造においても低速鋳造と同程度に鋳型内湯面変動を抑制することが可能となる。
また、注湯量制御の制御方式については平均湯面レベルHAVEを入力信号とすることで従来構成の制御器をそのまま用いることが可能である。つまり、平均湯面レベルHAVEと湯面レベル目標値の偏差を解消するように制御器と駆動装置によりスライディングノズルのノズル開度、または、ストッパー開度を調整すればよい。
さらに、本発明方法では湯面レベルを適切に検出することから、制御器ゲインを高めることが容易となり、従来構成よりも簡単な制御器によって鋳型内湯面レベル変動を高精度に抑制できることが期待される。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を図示する一実施例に基づいて詳細に説明する。これは、鋼のスラブの連続鋳造に適用した例である。図1に、本発明の湯面レベル検出装置とそれに基づく注湯量制御を実施するための湯面レベル計の配置、および制御ループを示す。鋳型の厚み方向中心付近かつ、鋳型の幅方向におけるノズルと両短辺の中央にそれぞれ渦流式湯面レベル計A5,B6を設置する。注湯量制御に使用される平均湯面レベルHAVEを次の(3)式で検出する。
HAVE=1/2(HA5+HB6)・・・・・・(3)
HA5:渦流式湯面レベル計A5の検出湯面レベル
HB6:渦流式湯面レベル計B6の検出湯面レベル
【0024】
図1において、タンディッシュ1からの溶鋼がスライディングノズル装置2、浸漬ノズル3を通じて、鋳型4内に鋳込まれ、渦流式湯面レベル計A5、B6により鋳型内の溶鋼の湯面レベルHA5、HB6をそれぞれ検出し、それらの検出信号から加算平均器7を介して平均湯面レベルHAVEを算出し、湯面レベルの目標値との偏差を解消するように制御器8および駆動装置9によってスライディングノズル装置2のノズル開度を調整することにより、鋳型内の溶鋼の平均湯面レベルHAVEが一定に維持されるようにしている。
【0025】
前記図1に示した構成の装置を用いる場合について、三次元数値流動解析を用いて検討した。図3には注湯量制御シミュレーターのブロック線図を示す。計算条件は下記の通りである。ここでは制御器ゲインを一定として、湯面レベル検出装置による制御性能の差を比較した。
(計算条件)
鋳型寸法:1500mm×240mm
鋳造速度:2.1mpm
電磁攪拌:なし
浸漬深さ:メニスカス下250mm
ノズル形状:吐出孔下端角度が左右ともに水平0°
吐出孔左側を60%閉塞させて偏流を発生
湯面レベル検出装置:前記(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出、または、
渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出
視野範囲:180mm×180mm
体積変動外乱:湯面レベル振幅5mm、周期7秒のバルジング外乱を付加
制御:PID制御
目標レベル:鋳型上端より105mm下
【0026】
前記(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合における60秒間の渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6を図4に示す。図5には渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合の結果を示す。さらに、図6と図7には各々の湯面レベル検出装置で注湯量制御を行った場合の湯面レベル時系列のパワースペクトラムを示す。
【0027】
図4と図5の横軸は時間、縦軸は湯面レベルである。両者を比較すると、湯面レベル検出装置により湯面レベル変動の大きさが変化することを確認できる。(3)式の平均湯面レベルHAVEにより注湯量制御を行う場合は±5mm程度に変動幅が抑制されている。しかし、渦流式湯面レベル計B6単体で制御を行う場合は±15mm程度に変動幅が拡大する。これは単体の渦流式湯面レベル計で検出される局所的な波立ち外乱が制御器にフィードバックされた結果、注湯量が過剰に変動したためと考えられる。
【0028】
図6と図7の縦軸はパワー、横軸は周波数である。図6ではバルジング外乱の周波数(約0.14Hz)でピークが大きく、その他の周波数のパワーは小さい。これは(3)式の平均湯面レベルHAVEによって波立ち外乱の検出が低減され、体積変動起因の湯面レベル変動が高精度に検出されることを意味する。その結果、波立ち外乱によって注入量が乱れることがないため、単純な制御器でも湯面レベル変動を十分に抑制することができる。
【0029】
一方、図7ではバルジング外乱の周波数のほか、約0.23Hzと約0.70Hzで大きなピークが存在する。ここで0.23Hzは外乱の一巡ループゲインがピークを持つ周波数であり、0.70Hzは波立ちの基本波の周波数である。これは検出された波立ち外乱が制御器によって増幅されたことを表す。このように波立ち外乱が顕在化する場合は注湯量が振動的になり、湯面レベル変動の抑制が極めて困難となる。そのため、単体の湯面レベル計を用いて注湯量制御を行う場合は制御器の周波数設計に細心の注意を払う必要がある。
【0030】
以上より、本発明方法に基づき、ノズルを中心として2つの湯面レベル計を鋳型幅方向の対称位置に設置し、それらの検出湯面レベル信号の平均化操作によって波立ち外乱の検出が効果的に抑制されることが示された。また、結果として波立ちが湯面に顕在化する高速鋳造においても注湯量の安定化が容易となることが示された。同時に、本発明方法が単体の湯面レベル計に較べて簡単な制御器で高ゲインの注湯量制御を可能とすることが示された。
【0031】
ところで、連続鋳造においてはパウダーが溶湯上に被さっていることから、過大な湯面変動はパウダーを溶湯内部に持ち込み、有害な介在物欠陥となる。ノズル近傍の湯面変動によって巻き込まれたパウダーは、ノズルの吐出流に乗って鋳片の内部深くに持ち込まれて、内部欠陥となる可能性がある。また、短辺近傍の湯面変動によってシェルにかみ込まれたパウダーはスリーバの原因となる。
【0032】
このような観点から、上記の実施例で計算された鋳型全体の湯面レベル変動を評価することができる。図8には(3)式の平均湯面レベルHAVEにより注湯量制御を行った場合における鋳型内湯面レベルの標準偏差の等高線図を示す。また、図9には渦流式湯面レベル計B6単体で制御を行った場合の結果を示す。
図8と図9の縦軸は厚み方向、横軸は幅方向の座標を表す。グレースケールの色調は湯面レベル標準偏差を表し、白から黒に向かって値が大きくなる。(3)式の平均湯面レベルHAVEにより注湯量制御を行うほうが全体的な湯面変動量が小さくなることが確認される。特に、ノズルと短辺近傍においてはその傾向が顕著であり、渦流式湯面レベル計B6単体で制御を行う場合は短辺近傍で非常に大きな湯面変動が生じることがわかる。
【0033】
このことから、本発明によって高速鋳造における注湯量制御が安定化して鋳型内湯面全体の変動を効果的に抑制することが可能となり、内部または表面のパウダー系品質欠陥を大幅に低減できること、あるいは、パウダー系品質欠陥による鋳造速度向上の阻害要因を排除できることが期待される。
【0034】
以上の実施例では渦流式湯面レベル計を用いたが、本発明の湯面レベル検出装置に用いる湯面レベル計は、95%応答が2秒以下の応答性を持つのであれば方式を問わず同様の効果を発揮すると期待される。
【0035】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、溶融金属の連続鋳造における鋳型内湯面の波立ち外乱の検出を効果的に抑制することによって、波立ちが湯面に顕在化する鋳造条件においても安定した注湯量制御を容易とする。その結果、高速鋳造においても鋳型全体の湯面変動は十分に抑制され、パウダー系品質欠陥の少ない鋳片を製造することができる。すなわち、本発明は溶融金属の連続鋳造における鋳造速度の高速化に寄与するものであり、鋳片の生産性を著しく高めることのできる工業的価値の高い発明といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の湯面検出手段とそれに基づく注湯量制御を実施するための湯面レベル計の配置、および制御ループの一例を示す概略図である。
【図2】自由表面を持つ容器流れで発生するスロッシングにおける節の数が1つ、または2つの場合の概念図である。横軸を鋳型幅として、縦軸に波立ちの振幅を表す。
【図3】三次元数値流動解析に基づく注湯量制御シミュレーターのブロック線図である。
【図4】(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴である。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図5】渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴である。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図6】(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴のパワースペクトラムである。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図7】渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴のパワースペクトラムである。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図8】(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合における鋳型内湯面レベルの標準偏差の等高線図である。グレースケールの色調は標準偏差を表し、白から黒に向かって値が大きいことを示す。
【図9】渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合における鋳型内湯面レベルの標準偏差の等高線図である。グレースケールの色調は標準偏差を表し、白から黒に向かって値が大きいことを示す。
【符号の説明】
1:タンディッシュ
2:スライディングノズル装置
3:浸漬ノズル
4:鋳型
A5:渦流式湯面レベル計A5
B6:渦流式湯面レベル計B6
7:加算平均器
8:制御器
9:駆動装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属の連続鋳造における鋳型内湯面レベル検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属の連続鋳造においては、鋳型内湯面レベルを一定に制御することが鋳片品質を維持するために要求される。湯面レベルの変動の原因には、ノズルの閉塞に起因する注湯量の変動や鋳片のバルジングなどが考えられる。特に、高速鋳造においては発散的な湯面変動が発生しやすく、従来の鋳型内湯面レベルに基づいた注湯量制御では対処が極めて困難であり、鋳片に表面品質欠陥を生じる、さらにはオーバーフローに至る場合がある。
【0003】
従来、このような鋳型内湯面レベルの変動に対しては湯面レベルの検出装置(以下、湯面レベル計と記す)とスライディングノズルやストッパーといった注湯量制御手段を組み合わせた注湯量制御方法が用いられており、その制御方法については制御理論の適用例の報告が多数ある。
湯面レベル計については、鋳型に埋め込まれた複数の熱電対群から湯面レベルを推定する方法、渦流式距離計を用いる方法、γ線を用いる方法、レーザー変位計を用いる方法などが挙げられる。これらの中でも、渦流式湯面レベル計はメンテナンスの容易さと高応答性ゆえに注湯量制御との組み合わせにおいて広く用いられている。
【0004】
通常、注湯量制御においては上記湯面レベル計が単体で使用され、レベル計の視野範囲における局所的な湯面レベルが検出・制御される。このとき、湯面レベル計の検出値には体積変動成分のほかに湯面波立ちや盛り上がり等の外乱(以下、波立ち外乱と記す)が重畳されており、波立ち外乱が体積変動成分に較べて小さい場合は周波数特性に基づいた信号処理を用いた外乱分離(以下、周波数フィルタリングと記す)が可能となる。そして、抽出された体積変動成分に対してのみ注湯量のフィードバック制御を行い、鋳型内湯面レベルを一定に維持することになる。
【0005】
しかし、高速鋳造や電磁攪拌鋳造では鋳型内溶鋼の乱流化が促進され、波立ちが湯面において顕在化する。そのため、周波数フィルタリングによる波立ち外乱の除去、および、体積変動成分の抽出が極めて困難となる。結果として、検出された波立ち外乱によって注湯量は過剰に変動させられ、鋳型内湯面レベルの変動量を低速鋳造時と同程度に抑制することが難しくなる。
また、高速鋳造においては鋳型内で発生する吐出流の偏流により一様ではない局所的な湯面変動を生ずる場合がある。例えば、ノズル吐出孔の片側が非金属介在物により閉塞して偏流が発生する場合においては、単体の湯面レベル計で検出された局所的な波立ち外乱により注湯量が大きく変動させられ、制御不能となることもある。
【0006】
上記理由から、単体の湯面レベル計を用いた従来方式の注湯量制御においては、波立ち外乱によって注湯量が制御不能に陥ることを防止するために制御ゲインを低下させることがある。しかし、制御ゲインを下げれば体積変動起因の鋳型内湯面レベル変動を十分に抑制できなくなるという問題が生じる。
このように、波立ちが湯面に顕在化する鋳造条件においては鋳型内湯面レベル変動の抑制が困難となり、制御方法の高度化、あるいは湯面レベル検出装置の適正化により高い制御ゲインにおいても注湯量制御を安定化することが求められる。
【0007】
制御方法によって高ゲインかつ安定な注湯量制御を実現するには、高度制御理論に基づいた制御器が必要となる。先行事例としては特許文献1、特許文献2をはじめとするH∞制御、ロバスト制御、特許文献3、特許文献4をはじめとする適応制御などを挙げることができる。
上記事例においては周波数特性に基づいた制御器設計を行っているため、波立ち外乱の周波数における制御ゲインを低下させることは可能である。しかし、種々の操業条件における周波数フィルターを予め設計することは大変な労力を要する。また、波立ち外乱が大きい場合には周波数フィルタリングは有効に機能しないという問題は解決されないままである。
【0008】
一方、湯面レベル検出装置を工夫した注湯量制御の事例には特許文献5を挙げることができる。これは主制御用の1つの湯面レベル計に基づいて注湯量制御を行いながら、鋳型両短辺に設置された2つの湯面レベル計から波立ちの指標値を算出して、その指標値に基づいて注湯量を補正、あるいは、鋳造速度を低下させることで偏流を解消することを目的とするものである。
しかしながら、上記事例においては注湯量制御にフィードバックされる湯面レベルは単体の湯面レベル計で検出されたものである。そのため、従来の単体の湯面レベル計に基づいた注湯量制御と同様に、波立ち外乱によって注湯量が過剰に変動させられることに変わりはない。
【0009】
以上のように、従来の湯面レベル検出装置に基づいた注湯量制御は波立ち外乱が大きくなる高速鋳造、電磁攪拌鋳造において注湯量の安定化と鋳型内湯面変動の抑制の両立が難しいという問題を持つ。そのため、上記鋳造条件においては鋳造速度を低下させる、あるいは、電磁攪拌強度を弱めるなど鋳造条件の変更によって鋳型内溶鋼の乱流化を抑制することで、鋳型内湯面の安定化を図ることになる。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−77268号公報
【特許文献2】
特開平7−60423号公報
【特許文献3】
特開平10−328801号公報
【特許文献4】
特開平9−85497号公報
【特許文献5】
特開平10−216914号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記理由により注湯量制御が不安定化して溶融金属の連続鋳造における高速鋳造化が阻害される、または、所望の強度で電磁攪拌を使用できないという問題を解消する、または、注湯量制御を安定化させるために制御器設計に必要な労力を軽減するためになされたものである。その目的は高速鋳造、電磁攪拌、または、ノズル吐出孔の閉塞により鋳型内湯面の波立ちが顕在化する鋳造条件においても注湯量を安定化し、注湯量制御により体積変動起因の鋳型内湯面レベル変動を十分に抑制することを容易とする鋳型内湯面レベル検出装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、溶融金属の連続鋳造において、鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心として鋳型幅方向の対称位置近傍を測定するように設置された2つの湯面レベル計と、それらの湯面レベル検出信号を加算平均して出力する加算平均器とで構成され、加算平均器の出力を鋳型内湯面レベルとすることによって波立ち外乱の検出を効果的に抑制する鋳型内湯面レベル検出装置を提供する。
本発明方法においては、図1に示すように鋳型中心部に配した浸漬ノズルの中心と鋳型両短辺までの距離がそれぞれ等しい点近傍を測定するように2つの湯面レベル計を設置するのが、特に有効である。そのため、鋳型幅の変更に合わせてノズルと鋳型両短辺の中央近傍を測定するようにそれぞれの湯面レベル計を移動させるのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心とする鋳型幅方向の対称位置近傍を測定するように設置された2個の湯面レベル計の各検出値をH1、H2とすれば、次の(1)式で表される平均湯面レベルHAVEを検出する。特に、可能であるならば2つの湯面レベル計は浸漬ノズルと両短辺の中央近傍を測定するように設置するものとする。
HAVE=1/2(H1+H2)・・・・・・(1)
H1:湯面レベル計1の検出湯面レベル
H2:湯面レベル計2の検出湯面レベル
【0014】
以下、本発明方法においてノズルを中心とする鋳型幅方向の対称位置を測定するように2つの湯面レベル計を設置し、それらの検出湯面レベル信号の平均化操作によって波立ち外乱の検出が抑制されること、特に2つの湯面レベル計が測定する位置をノズルと鋳型両短辺の中央近傍とするのが有効であるとする物理的根拠を説明する。
【0015】
連続鋳造設備の鋳型内湯面における波立ち現象のひとつは、自由表面を持つ容器流れで発生するスロッシングと呼ばれる一種の定在波である。特に、スラブのように縦横比が大きい鋳型においては、幅方向に分布する波立ちが顕著となることがよく知られている。このとき、鋳型幅方向に分布する波立ちの波形は次の(2)式で表される。
【数1】
AN:定数
L:鋳型幅
N:モード(節の数)
g:重力加速度
x:鋳型幅方向の座標(0≦x≦L)
t:時間
【0016】
各モードの波立ちの波形は図2に示すように周期的な分布を持ち、鋳型両短辺が常に腹となる。節の数が奇数ならば鋳型中央を中心に逆位相となり、偶数ならば鋳型中央を中心に同位相となる。節の数が増えれば高周波振動となり、エネルギーは減衰する。そのため、実際には節の数が1つ、ついで2つとなるモードが支配的であり、それぞれを基本波と二倍波と呼ぶ。
【0017】
まず、基本波はノズルを中心とした鋳型幅方向の対称位置で同じ振幅を持ち、位相は正反対となる。そのため、ノズルを中心とする鋳型幅方向の対称位置で検出される波立ちとの加算平均により相殺可能である。これが本発明方法において、ノズルを中心とした鋳型幅方向の対称位置近傍を測定するように2つの湯面レベル計を設置し、それらの加算平均によって波立ち外乱の検出が効果的に抑制される理由である。
【0018】
一方、二倍波はノズルを中心とした鋳型幅方向の対称位置で同じ振幅と位相を持つ。二倍波の検出を抑制するにはその振幅がゼロとなる節、すなわち、ノズルと鋳型両短辺の中央で湯面を検出すればよい。これが本発明方法において、ノズルと鋳型両短辺の中央近傍を測定するように2つの湯面レベル計を設置すると波立ち外乱の検出が特に抑制される理由である。
【0019】
このとき、多くの湯面レベル計は視野範囲での平均的な湯面レベルを検出するため、測定するべき点を視野範囲内に収めるように湯面レベル計を設置する。湯面レベル計で測定する位置の対称性が著しく損なわれる場合は、本発明の湯面レベル検出装置は有効に機能しない。
また、使用する湯面レベル計の応答性が悪ければ波立ち外乱を高精度に検出することができない。そのため、本発明の湯面レベル検出装置を有効に機能させるには95%応答が2秒以下の湯面レベル計を使用する必要がある。
【0020】
上記条件を守って本発明の湯面レベル検出装置を使用するならば、波立ち外乱は効果的に相殺され、湯面全体で均一に表れる体積変動起因の湯面レベル変動が平均湯面レベルHAVEによって高精度に検出される。このことは、高速鋳造や電磁攪拌鋳造によって鋳型内流動の乱流化が促進され、波立ちが顕在化する場合においても成立するものである。
【0021】
さらに、ノズル吐出孔の片側が閉塞されて偏流が生じて、局所的な湯面波立ちが発生する場合においても、本発明方法によって波立ち外乱の検出が効果的に抑制される。これより、単体の湯面レベル計を用いた湯面検出と周波数フィルタリングの組み合わせでは困難な波立ち外乱と体積変動成分の分離が、本発明方法により極めて容易に実現されることが説明される。
【0022】
本発明方法から得られる平均湯面レベルHAVEに基づいて注湯量制御を行えば、体積変動だけを制御するように注湯量が調整され、波立ち外乱による注湯量の過剰な変動が抑制される。結果、高速鋳造においても低速鋳造と同程度に鋳型内湯面変動を抑制することが可能となる。
また、注湯量制御の制御方式については平均湯面レベルHAVEを入力信号とすることで従来構成の制御器をそのまま用いることが可能である。つまり、平均湯面レベルHAVEと湯面レベル目標値の偏差を解消するように制御器と駆動装置によりスライディングノズルのノズル開度、または、ストッパー開度を調整すればよい。
さらに、本発明方法では湯面レベルを適切に検出することから、制御器ゲインを高めることが容易となり、従来構成よりも簡単な制御器によって鋳型内湯面レベル変動を高精度に抑制できることが期待される。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を図示する一実施例に基づいて詳細に説明する。これは、鋼のスラブの連続鋳造に適用した例である。図1に、本発明の湯面レベル検出装置とそれに基づく注湯量制御を実施するための湯面レベル計の配置、および制御ループを示す。鋳型の厚み方向中心付近かつ、鋳型の幅方向におけるノズルと両短辺の中央にそれぞれ渦流式湯面レベル計A5,B6を設置する。注湯量制御に使用される平均湯面レベルHAVEを次の(3)式で検出する。
HAVE=1/2(HA5+HB6)・・・・・・(3)
HA5:渦流式湯面レベル計A5の検出湯面レベル
HB6:渦流式湯面レベル計B6の検出湯面レベル
【0024】
図1において、タンディッシュ1からの溶鋼がスライディングノズル装置2、浸漬ノズル3を通じて、鋳型4内に鋳込まれ、渦流式湯面レベル計A5、B6により鋳型内の溶鋼の湯面レベルHA5、HB6をそれぞれ検出し、それらの検出信号から加算平均器7を介して平均湯面レベルHAVEを算出し、湯面レベルの目標値との偏差を解消するように制御器8および駆動装置9によってスライディングノズル装置2のノズル開度を調整することにより、鋳型内の溶鋼の平均湯面レベルHAVEが一定に維持されるようにしている。
【0025】
前記図1に示した構成の装置を用いる場合について、三次元数値流動解析を用いて検討した。図3には注湯量制御シミュレーターのブロック線図を示す。計算条件は下記の通りである。ここでは制御器ゲインを一定として、湯面レベル検出装置による制御性能の差を比較した。
(計算条件)
鋳型寸法:1500mm×240mm
鋳造速度:2.1mpm
電磁攪拌:なし
浸漬深さ:メニスカス下250mm
ノズル形状:吐出孔下端角度が左右ともに水平0°
吐出孔左側を60%閉塞させて偏流を発生
湯面レベル検出装置:前記(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出、または、
渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出
視野範囲:180mm×180mm
体積変動外乱:湯面レベル振幅5mm、周期7秒のバルジング外乱を付加
制御:PID制御
目標レベル:鋳型上端より105mm下
【0026】
前記(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合における60秒間の渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6を図4に示す。図5には渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合の結果を示す。さらに、図6と図7には各々の湯面レベル検出装置で注湯量制御を行った場合の湯面レベル時系列のパワースペクトラムを示す。
【0027】
図4と図5の横軸は時間、縦軸は湯面レベルである。両者を比較すると、湯面レベル検出装置により湯面レベル変動の大きさが変化することを確認できる。(3)式の平均湯面レベルHAVEにより注湯量制御を行う場合は±5mm程度に変動幅が抑制されている。しかし、渦流式湯面レベル計B6単体で制御を行う場合は±15mm程度に変動幅が拡大する。これは単体の渦流式湯面レベル計で検出される局所的な波立ち外乱が制御器にフィードバックされた結果、注湯量が過剰に変動したためと考えられる。
【0028】
図6と図7の縦軸はパワー、横軸は周波数である。図6ではバルジング外乱の周波数(約0.14Hz)でピークが大きく、その他の周波数のパワーは小さい。これは(3)式の平均湯面レベルHAVEによって波立ち外乱の検出が低減され、体積変動起因の湯面レベル変動が高精度に検出されることを意味する。その結果、波立ち外乱によって注入量が乱れることがないため、単純な制御器でも湯面レベル変動を十分に抑制することができる。
【0029】
一方、図7ではバルジング外乱の周波数のほか、約0.23Hzと約0.70Hzで大きなピークが存在する。ここで0.23Hzは外乱の一巡ループゲインがピークを持つ周波数であり、0.70Hzは波立ちの基本波の周波数である。これは検出された波立ち外乱が制御器によって増幅されたことを表す。このように波立ち外乱が顕在化する場合は注湯量が振動的になり、湯面レベル変動の抑制が極めて困難となる。そのため、単体の湯面レベル計を用いて注湯量制御を行う場合は制御器の周波数設計に細心の注意を払う必要がある。
【0030】
以上より、本発明方法に基づき、ノズルを中心として2つの湯面レベル計を鋳型幅方向の対称位置に設置し、それらの検出湯面レベル信号の平均化操作によって波立ち外乱の検出が効果的に抑制されることが示された。また、結果として波立ちが湯面に顕在化する高速鋳造においても注湯量の安定化が容易となることが示された。同時に、本発明方法が単体の湯面レベル計に較べて簡単な制御器で高ゲインの注湯量制御を可能とすることが示された。
【0031】
ところで、連続鋳造においてはパウダーが溶湯上に被さっていることから、過大な湯面変動はパウダーを溶湯内部に持ち込み、有害な介在物欠陥となる。ノズル近傍の湯面変動によって巻き込まれたパウダーは、ノズルの吐出流に乗って鋳片の内部深くに持ち込まれて、内部欠陥となる可能性がある。また、短辺近傍の湯面変動によってシェルにかみ込まれたパウダーはスリーバの原因となる。
【0032】
このような観点から、上記の実施例で計算された鋳型全体の湯面レベル変動を評価することができる。図8には(3)式の平均湯面レベルHAVEにより注湯量制御を行った場合における鋳型内湯面レベルの標準偏差の等高線図を示す。また、図9には渦流式湯面レベル計B6単体で制御を行った場合の結果を示す。
図8と図9の縦軸は厚み方向、横軸は幅方向の座標を表す。グレースケールの色調は湯面レベル標準偏差を表し、白から黒に向かって値が大きくなる。(3)式の平均湯面レベルHAVEにより注湯量制御を行うほうが全体的な湯面変動量が小さくなることが確認される。特に、ノズルと短辺近傍においてはその傾向が顕著であり、渦流式湯面レベル計B6単体で制御を行う場合は短辺近傍で非常に大きな湯面変動が生じることがわかる。
【0033】
このことから、本発明によって高速鋳造における注湯量制御が安定化して鋳型内湯面全体の変動を効果的に抑制することが可能となり、内部または表面のパウダー系品質欠陥を大幅に低減できること、あるいは、パウダー系品質欠陥による鋳造速度向上の阻害要因を排除できることが期待される。
【0034】
以上の実施例では渦流式湯面レベル計を用いたが、本発明の湯面レベル検出装置に用いる湯面レベル計は、95%応答が2秒以下の応答性を持つのであれば方式を問わず同様の効果を発揮すると期待される。
【0035】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、溶融金属の連続鋳造における鋳型内湯面の波立ち外乱の検出を効果的に抑制することによって、波立ちが湯面に顕在化する鋳造条件においても安定した注湯量制御を容易とする。その結果、高速鋳造においても鋳型全体の湯面変動は十分に抑制され、パウダー系品質欠陥の少ない鋳片を製造することができる。すなわち、本発明は溶融金属の連続鋳造における鋳造速度の高速化に寄与するものであり、鋳片の生産性を著しく高めることのできる工業的価値の高い発明といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の湯面検出手段とそれに基づく注湯量制御を実施するための湯面レベル計の配置、および制御ループの一例を示す概略図である。
【図2】自由表面を持つ容器流れで発生するスロッシングにおける節の数が1つ、または2つの場合の概念図である。横軸を鋳型幅として、縦軸に波立ちの振幅を表す。
【図3】三次元数値流動解析に基づく注湯量制御シミュレーターのブロック線図である。
【図4】(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴である。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図5】渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴である。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図6】(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴のパワースペクトラムである。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図7】渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合に渦流式湯面レベル計A5、B6で検出された湯面レベルHA5、HB6の時間履歴のパワースペクトラムである。黒線はA5、灰色の線はB6に対応する。
【図8】(3)式により平均湯面レベルHAVEを検出し、注湯量制御を行った場合における鋳型内湯面レベルの標準偏差の等高線図である。グレースケールの色調は標準偏差を表し、白から黒に向かって値が大きいことを示す。
【図9】渦流式湯面レベル計B6で湯面レベルHB6を検出し、注湯量制御を行った場合における鋳型内湯面レベルの標準偏差の等高線図である。グレースケールの色調は標準偏差を表し、白から黒に向かって値が大きいことを示す。
【符号の説明】
1:タンディッシュ
2:スライディングノズル装置
3:浸漬ノズル
4:鋳型
A5:渦流式湯面レベル計A5
B6:渦流式湯面レベル計B6
7:加算平均器
8:制御器
9:駆動装置
Claims (2)
- 溶融金属の連続鋳造に用いる鋳型内湯面レベル検出装置において、鋳型中心部に配した浸漬ノズルを中心として鋳型幅方向の対称位置近傍を測定するように設置された2つの湯面レベル計と、前記2つの湯面レベル計の湯面レベル検出信号を加算平均して出力する加算平均器とで構成され、前記加算平均器の出力を鋳型内湯面レベルとすることを特徴とする鋳型内湯面レベル検出装置。
- 鋳型中心部に配した浸漬ノズルの中心と鋳型両短辺までの距離がそれぞれ等しい点近傍を測定するように2つの湯面レベル計を設置することを特徴とする請求項1に記載の鋳型内湯面レベル検出装置。
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- 2003-07-09 JP JP2003194044A patent/JP2005028381A/ja active Pending
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