JP2020169981A - 流量測定方法 - Google Patents

流量測定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020169981A
JP2020169981A JP2020043529A JP2020043529A JP2020169981A JP 2020169981 A JP2020169981 A JP 2020169981A JP 2020043529 A JP2020043529 A JP 2020043529A JP 2020043529 A JP2020043529 A JP 2020043529A JP 2020169981 A JP2020169981 A JP 2020169981A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molten steel
flow rate
electromagnetic
signal
flow
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020043529A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7385124B2 (ja
Inventor
杉橋 敦史
Atsushi Sugibashi
敦史 杉橋
健司 梅津
Kenji Umetsu
健司 梅津
原田 寛
Hiroshi Harada
寛 原田
山本 浩貴
Hirotaka Yamamoto
浩貴 山本
圭太 池田
Keita Ikeda
圭太 池田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Publication of JP2020169981A publication Critical patent/JP2020169981A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7385124B2 publication Critical patent/JP7385124B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Volume Flow (AREA)

Abstract

【課題】精度よく溶鋼流量を測定できる流量測定方法を提供する。【解決手段】流量測定方法は、ノズル24を用いて、タンディッシュから鋳型へ溶鋼を供給するステップと、励磁コイル66を用いて、溶鋼がノズル24内に形成する溶鋼流7に対して交流磁場B0を印加し、溶鋼流7に生じた誘導起電力に基づき、検出コイル63に生じた電圧を検出するステップと、検出した電圧から、ロックインアンプ70を用いて励磁コイル66と同位相の0°位相信号と励磁コイル66から位相が90°ずれた90°位相信号とからなる流量信号を検出するステップと、流量信号と、タンディッシュの重量変化から求めた、タンディッシュから鋳型に供給された溶鋼の重量に対応する重量信号とに基づいて溶鋼の流量を算出するステップとを有し、タンディッシュから鋳型へ供給される溶鋼の流量を2以上の条件で変化させ、電磁流量計1を校正する。【選択図】図3

Description

本発明は、流量測定方法に関する。
表層と内層とで成分組成が異なる複層状の複層鋳片は、表層の成分組成を変えることで、特性の異なる種々の鋳片を低コストで作製できる。複層鋳片は、例えば、タンディッシュに設けられた長さが異なる2本の溶鋼供給ノズルから成分組成の異なる溶鋼を鋳型に供給し、さらに鋳型内に直流磁場を印加して両金属の混合を防止することで、製造される(例えば、特許文献1参照)。複層鋳片を製造するためには、表層となる金属の溶鋼供給量と内層となる金属の溶鋼供給量とが一定の比となるように、溶鋼供給量を制御することが重要であり、特許文献1では、電磁流量計を用いて、溶鋼供給ノズル内の溶鋼の流量(以下、溶鋼流量と称する)を測定し、溶鋼供給量を制御している。
電磁流量計は、流路を流れる測定対象に磁場を印加して誘導起電力を生じさせ、当該誘導起電力を検出することで、測定対象の流量を測定する。
電磁流量計は、流量を算出するためには、ゼロ点信号、すなわち、流路中の測定範囲に測定対象が充満し、かつ、測定対象の流量がゼロのときの磁場(又は電流)の値が必要である。このゼロ点信号は、測定対象と電磁流量計の位置関係などによって変化する。そして、位置関係などが変化したにもかかわらずゼロ点信号を校正しないと、測定誤差が生じる原因となるので、より精度よく溶鋼流量を測定するには、適宜ゼロ点信号を校正する必要がある。そのため、電磁流量計の校正方法が開発されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特許文献2には、測定管に被測定流体が流れている状態において、規定励磁電流を励磁コイルに供給して得られる第1検出信号と、補正値算出用励磁電流を励磁コイルに供給して得られる第2検出信号と、電磁流量計1の出荷前において、測定管を流れる試験用流体の流速は変化させずに励磁電流のみを変化させたときの検出信号の変化量に基づいて取得されるスパン変化量ΔV(流量計特性の補正係数)とに基づいてゼロ点補正値を求めることが開示されている。特許文献2に開示されている電磁流量計は、検出信号に基づいて流量を算出し、この流量をゼロ点補正値で補正して出力する。
特許文献3には、ゼロ点調節モードにおいて、計測パイプ内における透析液の流れを止め、計測パイプ内を透析液が満たされた状態で流量がゼロの状態にし、誘起電圧を検出してゼロ点データを取得することが開示されている。特許文献3に開示されている腹膜透析用電磁流量計は、流量検出データからゼロ点調節モードで更新されたゼロ点データを引いてゼロ点補正を行い、ゼロ点データを都度更新することで、測定対象のパイプと流量計の位置変動による測定誤差を補正する。
本発明では、溶鋼の流量を測定対象としているが、溶鋼は高温であるため、起電力を計測するプローブを溶鋼中に設置することができない。そこで、溶鋼が形成する溶鋼流に発生する誘導電流の作る磁場の強さを、検出コイルを用いて計測することが一般的に知られている(非特許文献1参照)。
特開2017−35716号公報 特開2015−161534号公報 特開2006−343254号公報
材料とプロセスVol.12.No.1,page64-65
特許文献2に開示されている校正方法では、測定管に電磁流量計のセンサーが固定されている中を流体が流れるので、センサーと流体の相対位置は変化しないことが前提となっている。しかしながら、鋳造においては、流量の測定対象となる溶鋼供給ノズルは、複数回の操業毎に、廃棄・交換される。この際、新しい溶鋼供給ノズルを、前の溶鋼供給ノズルと同じ状態でタンディッシュに取り付けることは困難であり、電磁流量計と溶鋼供給ノズルとの相対位置が、複数回の操業毎に異なる状態となる。そのため、鋳造では、出荷前に予め流量計特性の補正係数を求めておき、当該補正係数を用いて実測データを補正することができず、特許文献2に開示されている校正方法を適用できない。さらに、特許文献2に開示されている校正方法では、出荷前の状態で補正係数を求めているので、流量の変化以外の事象に起因して電磁流量計の検出信号に誤差が生じても当該誤差は補正できない。
また、鋳造においては、水道や透析装置の流れを測定する一般的な電磁流量計と異なり、溶鋼供給ノズル内に流量ゼロの溶鋼が充満した状態を形成することは不可能であるため、特許文献3に開示されている方法は、溶鋼供給ノズルと電磁流量計の相対位置の変化に基づく測定誤差を補正できない。よって、特許文献3に開示されている校正方法を鋳造に適用できない。
また、非特許文献1に開示されている高温溶鋼計測用の電磁流量計においても、上述のプローブを用いて被計測流体に発生する起電力から被計測流体の流速を計測する一般的な電磁流量計と同様に、被計測流体(この場合は溶鋼)が静止している時(流速がゼロの時)の計測値を何らかの方法で求めることが、正確な流量計測に必要不可欠である。
そのため、鉄鋼プロセスにおける連続鋳造装置の浸漬ノズルに供給される溶鋼等に対しても用いることができ、電磁流量計を校正したうえで、精度よく溶鋼流量を測定できる流量測定方法が求められている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、より精度よく溶鋼流量を測定できる流量測定方法を提供する。
本発明の流量測定方法は、電磁流量計を用いて、溶鋼の流量を測定する流量測定方法において、ノズルを用いて、第1槽から第2槽へ前記溶鋼を供給する溶鋼供給ステップと、励磁コイルを用いて、前記溶鋼が前記ノズル内に形成する溶鋼流に対して交流磁場を印加する励磁ステップと、前記交流磁場によって前記溶鋼流に生じた誘導起電力に基づき、検出コイルに生じた電圧を検出する検出ステップと、前記検出コイルに生じた電圧から、ロックインアンプを用いて前記励磁コイルと同位相の0°位相信号と前記励磁コイルから位相が90°ずれた90°位相信号とからなる流量信号を検出する流量信号検出ステップと、前記流量信号と、前記第1槽の重量変化又は前記第2槽内の前記溶鋼の量から求めた、前記第1槽から前記第2槽に供給された前記溶鋼の重量に対応する重量信号と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する流量算出ステップと、を有し、前記第1槽から前記第2槽へ供給される前記溶鋼の流量を、2以上の条件で変化させ、前記2以上の条件に対応する前記流量信号と前記重量信号とに基づいて前記電磁流量計を校正する。
本発明によれば、溶鋼流量が異なる少なくとも2以上の条件で取得した流量信号と重量信号とに基づいて電磁流量計を校正するので、実際に溶鋼を充満させかつ溶鋼流量をゼロにすることなく電磁流量計を校正することができ、精度よく溶鋼流量を測定できる。
本発明の第1〜第5実施形態に係る連続複層鋳造装置の一部の断面を示す概略図である。 本発明の第1〜第5実施形態に係る電磁流量計の測定原理を示す概略図である。 本発明の第1〜第5実施形態に係る電磁流量計の全体構成を示す概略図である。 本発明の第1〜第5実施形態に係る演算処理部の構成を示す概略図である。 本発明の第1実施形態に係る複層鋳片を鋳造する工程の概略を示す図であり、グラフAは各ノズルのストッパー開度を示し、グラフBは鋳型内の湯面レベルを示し、グラフCはダミーバーの移動速度を示している。 タンディッシュの内層溶鋼用浸漬ノズルの先端が第1溶鋼に浸漬した状態を説明する図である。 内層溶鋼用浸漬ノズル内に第1溶鋼が充満した状態を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る溶鋼流量と流量信号との関係を示すグラフである。 本発明の第1実施形態に係る複層鋳片を鋳造する工程の変形例の概略を示す図であり、グラフAは各ノズルのストッパー開度を示し、グラフBは鋳型内の湯面レベルを示し、グラフCはダミーバーの移動速度を示している。 本発明の第2実施形態に係る複層鋳片を鋳造する工程の概略を示す図であり、グラフAは各ノズルのストッパー開度を示し、グラフBは鋳型内の湯面レベルを示し、グラフCはダミーバーの移動速度を示している。 本発明の第2実施形態に係る溶鋼流量と流量信号との関係を示すグラフである。 0°位相信号と90°位相信号との2次元座標系空間を表すグラフである。 電磁ブレーキ装置を作動させたときに電磁流量計の計測値への影響を表すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。以下の説明において、同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。以下では、本実施形態の流量測定方法を、鉄鋼プロセスにおける連続複層鋳造装置に用いる場合を念頭に、第1槽としてのタンディッシュと、第2槽としての鋳型と、第1槽から第2槽へ溶鋼を供給するノズルとしての浸漬ノズルとを用い、浸漬ノズル内の溶鋼が形成する溶鋼流の流量を測定する場合を例として説明を行うが、本発明はこの場合に限定されるものではない。
<第1実施形態>
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための第1実施形態について説明する。
(1)本発明の第1実施形態の連続複層鋳造装置の全体構成
図1は、連続複層鋳造装置100の一部の断面を示す図である。図1では、内層と、内層の外側の表層とで成分組成が異なる複層鋳片が鋳造されているときの連続複層鋳造装置100を示している。連続複層鋳造装置100は、取鍋4から第1溶鋼41が注がれ、一時的に第1溶鋼41を貯留するタンディッシュ2と、複層鋳片を成型する鋳型3とを備えている。連続複層鋳造装置100は、図1には図示しないが、鋳型から引き出された複層鋳片を搬送するロールと、固まった鋳片を切断するガス切断機などを備えていてもよい。連続複層鋳造装置100は、鋳型3上にタンディッシュ2が配置されている。図1では、取鍋4の底部に設けられた溶鋼供給ノズル43がタンディッシュ2内に挿入されるように、取鍋4がタンディッシュ2上に配置されている。取鍋4は、第1溶鋼41が充満されており、タンディッシュ2上に配置されている。取鍋4は、溶鋼供給ノズル43のストッパー(図1には不図示)が解放されており、取鍋4内の第1溶鋼41が溶鋼供給ノズル43を介してタンディッシュ2内に注がれている。
タンディッシュ2には、タンディッシュ堰21が設けられており、タンディッシュ堰21によって、内部空間が第1領域22と第2領域23とに区分けされている。タンディッシュ2は、タンディッシュ堰21の下端とタンディッシュの底部との間が開口21aとなっており、第1領域22と第2領域23とが連通している。そのため、第1溶鋼41が、取鍋4から第1領域22に注がれると、開口21aを通って第2領域23にも流れ込むことができ、第2領域23内にも第1溶鋼41を充填できる。第2領域23では、成分添加装置27によって第1溶鋼41にワイヤーなどを投入することで所定元素あるいはその合金を添加し、第1溶鋼41の成分が調整され、第2溶鋼42が生成される。
タンディッシュ2では、第1領域22の底部に内層溶鋼用浸漬ノズル24が設けられ、第2領域23の底部に表層溶鋼用浸漬ノズル25が設けられている。内層溶鋼用浸漬ノズル24及び表層溶鋼用浸漬ノズル25は、先端が鋳型3内に挿入されている。内層溶鋼用浸漬ノズル24は、表層溶鋼用浸漬ノズル25よりも長く、鋳型3のより深い位置まで挿入されている。そのため、内層溶鋼用浸漬ノズル24は第1溶鋼41を下側溶鋼プール35へ注ぎ、表層溶鋼用浸漬ノズル25は第2溶鋼42を上側溶鋼プール36へ注ぐことができる。
このとき、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー(図1には不図示)が開放されて内層溶鋼用浸漬ノズル24を第1溶鋼41が流れていると、タンディッシュ2内の第1領域22では、取鍋4の溶鋼供給ノズル43の先端部から内層溶鋼用浸漬ノズル24への溶鋼流が形成され、第1溶鋼41が第2領域23内に流入することが抑制される。その結果、1つのタンディッシュ内で組成の異なる2種類の溶鋼(第1溶鋼41及び第2溶鋼42)を保持し、鋳型3に組成の異なる2種類の溶鋼を供給することができる。
連続複層鋳造装置100では、タンディッシュ2にロードセル29が取り付けられており、ロードセル29によって、タンディッシュ2内の溶鋼の重量が測定される。また、連続複層鋳造装置100は、内層溶鋼用浸漬ノズル24の近傍に、電磁流量計1が設置されており、内層溶鋼用浸漬ノズル24内を流れる第1溶鋼41が形成する溶鋼流の流量(溶鋼流量)を測定できる。鋳型3には直方体形状の中空部が形成されており、鋳型3内の中空部に注入された第1溶鋼41及び第2溶鋼42が直方体形状に成型される。また、連続複層鋳造装置100は、鋳型3内の溶鋼の液面(湯面ともいう)の高さ、すなわち、湯面レベルを計測する湯面レベル計31を備えている。湯面レベル計31は、測定した湯面レベルから、間接的に鋳型3内の溶鋼の容積を測定することができ、鋳型3の内径等の鋳型3の内容積と、溶鋼の密度の値とから、鋳型3内の溶鋼の重量を測定することができる。
更に、連続複層鋳造装置100は、鋳型3の下部の所定位置に電磁ブレーキ装置37を備え、鋳型3の上部の外側面に電磁攪拌装置38を備えている。電磁ブレーキ装置37は、鋳型3内に直流磁場を印加するためのコイルを有する磁場発生器32を備えている。電磁攪拌装置38は、数Hz程度(例えば、2〜6Hz)の交流磁場を用いて、鋳型3内で溶鋼を一定方向に流動させる。これにより、鋳片の中心偏析を低減させ、高品質なスラブを製造することが可能となる。
次に、このような連続複層鋳造装置100によって、内層と表層とで組成が異なる複層鋳片を鋳造する方法について説明する。まず、鋳型3内の下部にダミーバー(図1には図示せず)を挿入し、鋳型3内に溶鋼を貯留できるようにする。その後、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー(図1には図示せず)を開放して第1溶鋼41を注ぎ、鋳型3内に第1溶鋼41を貯留する。鋳型3内の第1溶鋼41の湯面が第1所定レベルに到達したら、ダミーバーを移動させて、鋳片の引き抜きを開始する。その後、さらに第1溶鋼41の湯面が上昇し、湯面が第2所定レベルに到達したとき、表層溶鋼用浸漬ノズル25のストッパーを開放し、第2溶鋼42を鋳型3内に注ぐ。その後は、第1溶鋼41の供給量と、第2溶鋼42の供給量とが一定の比率となるように制御する。第1溶鋼41の供給量は、電磁流量計1で測定した第1溶鋼41の溶鋼流量に基づいて決定し、第2溶鋼42の供給量は、湯面レベル計31の測定結果に基づいて決定する。
このとき、磁場発生器32によって鋳型3内に磁場を印加し、直流磁場帯34を形成する。直流磁場帯34では、磁力線が鋳片の厚み方向に向かい、磁束密度が鋳型3の幅方向にほぼ均一な直流磁場が印加される。このような直流磁場帯34を形成することにより、直流磁場帯34を通過しようとする溶鋼には電磁ブレーキがかかる。すなわち、第1溶鋼41が上方へ流れようとすると、直流磁場帯34で第1溶鋼41にブレーキがかかり、第1溶鋼41が下側溶鋼プール35から上側溶鋼プール36へ移動することが抑制され、第2溶鋼42が下方へ流れようとすると、直流磁場帯34で第2溶鋼42にブレーキがかかり、第2溶鋼42が上側溶鋼プール36から下側溶鋼プール35へ移動することが抑制される。
その結果、直流磁場帯34上方の上側溶鋼プール36と下方の下側溶鋼プール35とが事実上遮断されることとなり、第1溶鋼41と第2溶鋼42とが鋳型3内で混合することが抑制される。上側溶鋼プール36で凝固した第2溶鋼42の凝固シェル(図1中のドットが濃い部分)が複層鋳片の表層部44を形成し、下側溶鋼プール35で凝固した第1溶鋼41の凝固シェル(図1中の下側溶鋼プール35の斜線部)が複層鋳片の内層部45を形成する。このようにして複層鋳片が作製される。
なお、直流磁場帯34部分における第2溶鋼42の凝固シェルの厚さDが、複層鋳片の表層部の厚さに該当する。従って、直流磁場帯34を形成する位置(湯面からの距離h)は、目標とする表層部の厚さD、鋳型3内における凝固係数K、鋳造速度Vに基づいて定められる。また、直流磁場帯34の磁束密度が0.3T(テスラ)以上であれば、十分に溶鋼の入れ替わりを抑止することができる。
(2)第1実施形態の電磁流量計の全体構成
管内を流れる導電性流体の流量を測定する流量計としては、交流磁場中を導電性流体が移動する際に生じる誘導起電力を管内に電極を設けて測定し、測定した誘導起電力に基づいて導電性流体の流量を算出する電磁流量計が一般的である。本実施形態では、測定対象流体が高温の溶鋼であるので、電極が導電性を兼ね備え、かつ、溶鋼内でも耐えうる耐溶損性、耐食性を併せ持つことが必要であるが、そのような電極を用意することは難しい。そのため、誘導起電力のかわりに、当該誘導起電力により生じる誘導電流に起因する磁場を管(内層溶鋼用浸漬ノズル24)の外部から検出し、検出した磁場に基づいて溶鋼流量を算出するようにしている。
本実施形態の電磁流量計1の原理について、図2を参照してより具体的に説明する。図2では、後述する励磁コイル66の中心軸51に沿った方向をx方向、第1溶鋼41が流れる方向をz方向、x方向及びz方向と直交する方向をy方向としている。図2では、速度vでz方向に第1溶鋼41が流れている(以下、第1溶鋼41の流れを溶鋼流7ともいう)状態で、交流磁場Bがx方向に印加されている。このような交流磁場B中を溶鋼流7が速度vで動くと、第1溶鋼41中にEv=v×Bなる誘導起電力Evが交流磁場B(x方向)と速度v、すなわち、溶鋼流7の方向(z方向)との両方に垂直な方向(y方向)に交流磁場Bが溶鋼流7に誘起する全誘導電流の一部として生じる。この誘導起電力Evの大きさが溶鋼流7の速度vに比例する。本実施形態の電磁流量計は、この誘導起電力Evを同期検波により検出し、検出した誘導起電力Evから溶鋼の流量を算出することで、内層溶鋼用浸漬ノズル24内を流れる第1溶鋼41の溶鋼の流量を非接触で計測するものである。このとき、誘導起電力Evにより第1溶鋼41中に誘導電流Jvが流れ、誘導電流Jvに起因する誘導磁場Bvが発生する。誘導磁場Bvは、誘導電流Jvを中心にした同心円状の磁場である。実際には、誘導起電力Evに基づく誘導磁場Bvを、検出コイルによって電磁誘導を利用して検出し、誘導起電力Evを検出する。
図3に示すように、本実施形態の電磁流量計1は、内層溶鋼用浸漬ノズル24の近傍に設置されており、内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流7と交差する交流磁場Bを励磁する励磁部11と、溶鋼流7の流動方向と平行な方向(z方向)の誘導磁場Bvを検出し、誘導磁場Bvに基づく流量信号を出力する検出部12と、流量信号に基づき内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流量を算出する演算処理部13と、例えば液晶ディスプレイなどでなり、演算処理部13で算出された溶鋼流量を表示できる表示部14を備えている。
励磁部11は、励磁コイル66と、アンプ67と、波形発生器69とを備えている。波形発生器69は、所定の波形の交流電流を生成し、アンプ67に出力する。波形発生器69は、アンプ67に出力した交流電流と同じ交流電流を同期信号としてロックインアンプ70にも出力する。アンプ67は、入力された交流電流を増幅し、励磁コイル66に出力する。アンプ67の増幅度合いを適宜変えることで、励磁コイル66から出力する交流磁場Bの大きさを変えることができる。
励磁コイル66は、円柱形状のコア部64と、コア部64の外周に導線を巻回されてなるコイル部65とを備えている。励磁コイル66は、コイル部65の導線がアンプ67に接続されており、アンプ67から交流電流が供給されると、中心軸51に沿って交流磁場Bを発生させる。励磁コイル66は、中心軸51が内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流7の方向(z方向)と垂直な方向(x方向)と直交するように設置されており、x方向の交流磁場Bを、内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流7に印加する。なお、励磁部11は、励磁コイル66の中心軸51が溶鋼流7の方向と直交するように配置して交流磁場Bを励磁するのが最も望ましいが、交流磁場Bを溶鋼流7に印加することができれば、中心軸51が溶鋼流7の方向とずれていても許容できる。励磁コイル66は、サイズ、形状、コイル部65の導線の太さや巻き数などを、内層溶鋼用浸漬ノズル24のサイズや形状と出力したい交流磁場Bの大きさに応じて適宜設定できる。
検出部12は、励磁コイル66より相対的に小さいサイズの検出コイル63と、ロックインアンプ70とを備えている。検出コイル63は、楕円柱形状のコア部62と、コア部62の外周に導線を巻回されてなるコイル部61とを備えている。検出コイル63は、励磁コイル66と溶鋼流7との間の中心軸51の近傍の位置に、中心軸52が励磁コイル66の中心軸51に垂直かつ内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流7の方向(z方向)に沿って設置され、コイル部61の導線がロックインアンプ70に接続されている。
誘導磁場Bv(図3には不図示)は、y方向に流れる誘導電流を中心とした同心円状の磁場であるので、検出コイル63の近傍では、溶鋼流7の方向(z方向)とほぼ平行となる。よって、検出部12は、上記のように検出コイル63を配置することで、誘導磁場Bvが検出コイル63のコア部62を中心軸52に沿って一端から他端に透過するので、誘導磁場Bvによってコイル部61に生じる磁界を、コイル部61の端子間電圧として検出することができる。コイル部61の端子間電圧の大きさは、誘導磁場Bv、すなわち、励磁コイル66により溶鋼流7に生じた誘導起電力に比例する。なお、検出コイル63は、中心軸52を溶鋼流7の方向(z方向)に沿って、励磁コイル66と内層溶鋼用浸漬ノズル24の間に配置し、励磁コイル66の中心軸51とも垂直にすることで、誘導磁場Bvのうち、溶鋼流7と平行な成分のみを検出できるようにしている。検出コイル63は、サイズ、形状、コイル部65の導線の太さや巻き数などを、出力したい交流磁場の大きさに応じて適宜設定できる。また、検出コイル63は、励磁コイル66と一体に形成してもよい。
ロックインアンプ70は、検出コイル63のコイル部61の導線が接続されており、コイル部61に生じた端子間電圧に基づいて、コイル部61に生じた誘導起電力の大きさを同期検波によって検出する。コイル部61の誘導起電力に基づく端子間電圧が誘導磁場Bvに比例し、誘導磁場Bvが溶鋼流7の速度vに比例するので、検出コイル63のコイル部61の端子間電圧を検出することで、溶鋼流7の速度vを算出し、溶鋼流量を算出できる。本実施形態では、ロックインアンプ70は、励磁コイル66に印加した交流電圧と同位相、同周波数の同期信号が波形発生器69から入力され、検出コイル63のコイル部61の端子間電圧が入力されることで、当該同期信号と同位相(すなわち、励磁コイル66と同位相)の0°位相信号(以下、X成分という)と、同期信号と位相が90°ずれた(すなわち、励磁コイル66と位相が90°ずれた)90°位相信号(以下、Y成分という)との2つの流量信号を同期検波により検出する。
演算処理部13は、ロックインアンプ70で検出したX成分及びY成分に基づいて溶鋼流量を算出すると共に、電磁流量計1を校正する。演算処理部13の構成について図4を参照して説明する。図4に示すように、演算処理部13は、取得部131と、流量算出部132と、校正部133と、記憶部134とを備えている。
取得部131は、ロードセル29(図1参照)からの検出信号又は湯面レベル計31からの検出信号(以下、重量信号という)と、検出部12のロックインアンプ70の検出信号(以下、流量信号という。)とを取得する。なお、ロードセル29からの検出信号は、鋳型3内の溶鋼の重量に直接的に対応するため、重量を示す重量信号と言えることは明らかであるが、一方で、湯面レベル計31からの検出信号は、鋳型3内の溶鋼の容積に基づく信号であり、直接的に重量に対応するものではない。そのため、溶鋼の密度や鋳型3の内径等の値に基づいて、当該容積に基づく検出信号を溶鋼の重量に基づく値に換算することで、鋳型3内の溶鋼の重量に対応する重量信号とするものとする。
取得部131は、流量信号を流量算出部132に出力し、重量信号と流量信号とを校正部133に出力する。
流量算出部132は、取得部131から受け取った流量信号を用いて下記の式(1)により溶鋼流量を算出する。
Figure 2020169981
ここで、Vmは溶鋼流量(kg/sec)、αは比例係数、X及びYは、それぞれ、検出した流量信号R(X、Y)のX成分及びY成分(a.u.)、Xo及びYoは、それぞれ、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に溶鋼が充満し、かつ、溶鋼流量がゼロのときの流量信号のX成分及びY成分の値(以下、ゼロ点(Xo、Yo)とも表記する)、すなわち、溶鋼流量測定の基準となる電磁流量計1のゼロ点の流量信号である。
流量算出部132は、算出した溶鋼流量を、例えば、溶鋼流量制御部(図4には不図示)などに出力して内層溶鋼用浸漬ノズル24を流れる第1溶鋼41の溶鋼流量を制御したり、表示部14に出力させて、作業者に現在の溶鋼流量を確認させたりする。流量算出部132は、算出した溶鋼流量を算出したときの時間などと共に記憶部134に保存してもよい。
校正部133は、後述する手法により、電磁流量計1を校正する。具体的には、式(1)の比例係数αとゼロ点(Xo、Yo)の値とを算出し、流量算出部132が式(1)により溶鋼流量を算出する際に用いる比例係数αとゼロ点(Xo、Yo)の値を、校正部133が算出した値に置き換えて、溶鋼流量を算出するようにするものである。
記憶部134は、例えば、ハードディスクドライブなどの一般的な記憶装置で構成され、ロードセル29からの重量信号やロックインアンプ70からの流量信号、校正部133で算出した比例係数αやゼロ点(Xo、Yo)の値、流量算出部132で算出した溶鋼流量などを記憶する。
(3)第1実施形態の流量測定方法
続いて、第1実施形態の流量測定方法について説明する。ここでは、連続複層鋳造装置100が、タンディッシュ2に設けられた浸漬ノズル(内層溶鋼用浸漬ノズル24及び表層溶鋼用浸漬ノズル25)を交換された後の初回操業時を例に説明する。浸漬ノズル交換後の初回操業時は、内層溶鋼用浸漬ノズル24と電磁流量計1の相対的な位置関係が変わっているため、電磁流量計1の比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)を、現状の内層溶鋼用浸漬ノズル24と電磁流量計1の位置関係に合わせて校正する必要がある。そのため演算処理部13は、初回操業時に、校正部133で、現在未知数となっている比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)を求め、求めた比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)を用いて電磁流量計1を校正させる。なお、本実施形態では、電磁流量計1の演算処理部13の校正部133が校正作業を行うが、別途校正処理装置などを設けて、当該校正処理装置に校正作業を実行させるようにしてもよい。
最初に、校正部133が校正作業をする時期について説明する。複層鋳片製造の操業は、図5のグラフAに示すように、まず、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパーの開度(以下、ストッパー開度、ST開度とも称する。図5のグラフA中では実線で示す。)を一定かつ所定の開度とし、複層鋳片の内層を形成する溶鋼(第1溶鋼41)を鋳型3に注ぐ。そうすることで、図5のグラフBに示すように、内層溶鋼用浸漬ノズル24から注がれた第1溶鋼41によって、鋳型3内の溶鋼量が連続的に増加し、鋳型3内の湯面レベルが徐々に上昇する。その際、内層溶鋼用浸漬ノズル24内にあった空気が第1溶鋼41によって押し出されていく。そして、鋳型3の湯面レベルが上昇し、湯面が内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端に到達すると、内層溶鋼用浸漬ノズル24内にあった空気は完全に押し出され、内層溶鋼用浸漬ノズル24内は第1溶鋼41で充満する。その後も、鋳型3内の第1溶鋼41の量は引き続き増加し、湯面レベルは上昇していく(流量条件1)。
次に、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー開度を時間によって連続的に変化させる。例えば、図5のグラフAに示した例では、連続的にストッパー開度を小さくするように変化させる。そうすることで、図5のグラフBに示すように、鋳型3内の湯面レベルの上昇速度が少しずつ変化する(図5のグラフBの例では湯面レベルの上昇速度が少しずつ小さくなる)が、鋳型3内の溶鋼の量は流量条件1とは異なる速度で連続的に増加する(流量条件2)。
その後、図5のグラフCに示すように、鋳型3内の第1溶鋼41の湯面が第1所定レベルに達した後、ダミーバーを移動させ、鋳型3内で固化した鋳片を鋳型3の下部から引き抜き始める。
最後に、図5のグラフAに示すように、表層溶鋼用浸漬ノズル25のストッパーを開き、表層を形成する溶鋼(第2溶鋼42)を鋳型3に注ぎ、表層溶鋼用浸漬ノズル25のストッパー開度(図5のグラフA中では破線で示す。)を内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー開度に対応させて適宜調整し、第1溶鋼41及び第2溶鋼42の鋳型3への供給量を制御する。その際、内層溶鋼用浸漬ノズル24から供給される第1溶鋼41及び表層溶鋼用浸漬ノズル25から供給される第2溶鋼42と、鋳型3から引き抜かれる溶鋼の量についても適宜調整される。
このような操業過程において、校正部133は、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が第1溶鋼41で満たされた後の時期(図5のグラフB中に校正区間として示す。)に校正作業を行う。すなわち、校正作業は、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に第1溶鋼41が充満した状態で行う必要があるので、図5のグラフBに示すように、流量条件1の初めの部分はできれば避け、第1溶鋼41が充満するのを待って、一定時間経過した後の流量条件1か、流量条件2の範囲で校正作業が行われる。
以上のように、校正動作は、鋳型3内の所定の位置まで溶鋼の湯面レベルを到達させる、いわゆる湯上げと呼ばれる工程の中で実施される。なるべく早く湯上げを行うことで、鋳片の引き抜きを早く開始することができ、生産性の向上につなげることができる。
内層溶鋼用浸漬ノズル24に第1溶鋼41を充満させる動作についてより具体的に説明すると、図6に示すように、まず、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー(図6には不図示)が開放され、第1溶鋼41が内層溶鋼用浸漬ノズル24から鋳型3内に注がれる。図6に示すように、連続複層鋳造装置100は、操業開始時、鋳型3内に第1溶鋼41を貯留できるように、鋳型3内にダミーバー90が挿入されているので、鋳型3内に第1溶鋼41が貯留される。ストッパーの開放前は内層溶鋼用浸漬ノズル24内が空気で満たされていたので、ストッパーの開放直後は、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に第1溶鋼41が充満しておらず、空気も存在する。その後、内層溶鋼用浸漬ノズル24内の空気は、第1溶鋼41に押し出され、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に第1溶鋼41が充満する。
図7は、図6に示した内層溶鋼用浸漬ノズル24の断面を表す模式図である。図7に示すように、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端が第1溶鋼41に浸漬している状態では、タンディッシュ2内では、ストッパー24bが開放され、第1溶鋼41が内層溶鋼用浸漬ノズル24内に流れ込み、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端のキャップ24cが開放され、噴出孔91から第1溶鋼41が鋳型3内に流れ込んでいる。このとき、内層溶鋼用浸漬ノズル24内では、第1溶鋼41が充満した状態で流れている。
図7に示すような、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端が鋳型3内に貯留した第1溶鋼41に浸漬した状態となると、確実に内層溶鋼用浸漬ノズル24内に第1溶鋼41が充満している。そのため、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端が第1溶鋼41に浸漬した後に、校正作業を行うのが望ましい。
なお、電磁流量計1の校正は、鋳型3下部のダミーバー引き抜き開始後でも可能であるが、ダミーバーの引き抜き開始後は、定常状態となる鋳造開始に向けて、目標の溶鋼レベルに溶鋼高さを収斂させていくために、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー開度を細かく調整し、内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流量が細かく変動する状態となっているので、電磁流量計の校正時期としては、校正精度の観点からは好ましくない。従って、第1溶鋼41の引き抜き前に校正作業を行うことが、操業の効率化や歩留りや精度の観点から望ましい。このように、本実施形態では、校正部133は、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端が鋳型3内に貯留した第1溶鋼41に浸漬してから、第1溶鋼41の引き抜きを始める前までの間の期間に、校正作業を行う。なお、内層溶鋼用浸漬ノズル24はスライディングノズルであってもよい。
なお、内層溶鋼用浸漬ノズル24に第1溶鋼41が充満させてから校正作業を行う理由は、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端が溶鋼に浸漬すると、内層溶鋼用浸漬ノズル24先端から鋳型3へ流出する溶鋼流の流れに抵抗が発生し、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に第1溶鋼41が安定的に充満した状態となり、電磁流量計1で計測を行う箇所の近傍での溶鋼流の形状が安定することになるため、電磁流量計1にて誤差が少ない正確な溶鋼流計測を行うことが可能となるためである。
次に、校正作業について説明する。校正部133は、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端が第1溶鋼41に浸漬した後、図5のグラフBの流量条件1と流量条件2の境界となる所定のタイミングで、ストッパー24bの開度を変えて溶鋼流量を連続して変化させつつ、所定期間連続して取得部131から流量信号と、当該流量信号のそれぞれに対応する重量信号とを受け取る。
すなわち、校正部133は、図5のグラフBに流量条件1及び流量条件2として示す、鋳型3内の溶鋼の量が連続的に変化する領域(すなわち、溶鋼を供給する側であるタンディッシュ2の重量が連続的に変化する領域)において、取得部131から連続的に流量信号を受け取り、当該流量信号が検出された各タイミングの、ロードセル29で得られたタンディッシュ2内の溶鋼の単位時間当たりの重量変化(kg/sec)、又は、湯面レベル計31で得られた鋳型3内の溶鋼の単位時間当たりの量の変化(m/sec)を重量変化(kg/sec)に換算したものを、重量信号として、取得部131から連続的に受け取る。
校正部133は、取得部131から受け取った重量信号に基づいて、各流量信号が検出された時点のタンディッシュ2内の溶鋼の単位時間当たりの重量変化(kg/sec)を算出する。タンディッシュ2内の溶鋼の重量変化は、例えば、任意の時点のタンディッシュ2の重量と1サンプリング周期前のタンディッシュ2の重量の差分をサンプリング周期で除算して絶対値をとることにより算出できるが、この方法に限定されない。
ここで、校正作業のために重量信号と流量信号とを取得する期間である校正区間は、内層溶鋼用浸漬ノズル24のみが開放されているので、単位時間当たりのタンディッシュ2の重量変化(kg/sec)は、内層溶鋼用浸漬ノズル24から鋳型3に注がれる単位時間当たりの第1溶鋼41の量、すなわち、内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流量(kg/sec)に等しい。よって、本実施形態では、タンディッシュ2の重量変化を用い、比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)を算出する。なお、重量信号及び流量信号の取得期間と、データの取得数は、適宜決めることができ、少なくとも2以上の条件の流量信号のデータがあれば校正作業を行うことができる。第1実施形態においては、校正区間において、溶鋼流の流量が連続的に変化しているため、それらの連続するデータのそれぞれが、互いに異なる条件となっている。そのため、容易に2以上の条件を選択することができる。
続いて、校正部133は、溶鋼量が連続的に変化する校正区間において得られた、重量信号に対応するタンディッシュ2内の溶鋼の重量変化(TD重量変化)と流量信号のX成分及びY成分との関係を、例えば、最小二乗法などにより、それぞれ直線近似する。すなわち、校正区間では、溶鋼量が連続的に変化しているため、ここでは、溶鋼の流量に関する条件が2以上含まれた重量信号及び流量信号を用いることになり、そうした2以上の条件を用いた直線近似がなされることになる。
図8の上部のグラフは、横軸をタンディッシュ2の重量変化、縦軸を流量信号の値としており、溶鋼量が連続的に変化する校正区間において得られた、X成分の実測値に対応する直線と、Y成分の実測値に対応する直線とを実線で示しており、実測されたX成分及びY成分に基づき直線近似をすることで得られた直線を破線で示している。図8の上部のグラフにおいて、各近似直線と縦軸との交点が、それぞれ、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が溶鋼で充満し溶鋼流量がゼロであるときの流量信号のX成分の値Xo、及び、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が溶鋼で充満し溶鋼流量がゼロであるときの流量信号のY成分の値Yoとなる。そのため、このように連続的に実測されたX成分及びY成分の値に基づき、直線近似することで、電磁流量計1のゼロ点(Xo、Yo)を算出できる。よって、校正部133は、算出した各近似直線を用いて、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が溶鋼で充満し、かつ、溶鋼流量がゼロのときの流量信号のX成分及びY成分を、ゼロ点(Xo、Yo)として算出する。
次に、校正部133は、検出した流量信号R(X、Y)のX成分及びY成分と、算出したゼロ点(Xo、Yo)とを用いて、流量信号のゼロ点からのノルムRa=√((X−Xo)+(Y−Yo))を算出する。そして、校正部133は、タンディッシュ重量変化、すなわち、溶鋼流量とRaとの関係を直線近似する。図8の下部のグラフは、当該直線近似により算出した直線を示すグラフであり、横軸をタンディッシュ2の重量変化(溶鋼流量)、縦軸をRaとしている。図8下部のグラフから、溶鋼流量とロックインアンプ70からのRaとが比例関係にあることがわかる。ここで、Raを用いて式(1)を変形すると、下記式(2)となる。
Vm=αRa …(2)
よって、図8の下部のグラフに示した近似直線の傾きが、1/αに相当することがわかる。このように、溶鋼流量とRaとの関係を直線近似することで、比例係数αを算出することができる。よって、校正部133は、算出した近似直線を用いて、比例係数αを算出する。最後に、校正部133が、算出した比例係数αとゼロ点(Xo、Yo)とを流量算出部132に送出し、電磁流量計1の校正作業は終了する。
その後、流量算出部132は、取得部131から受け取った流量信号R(X、Y)のX成分及びY成分と、校正した比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)とを用いて、式(1)により溶鋼流量を算出する。このようにして、第1実施形態の流量測定方法は、内層溶鋼用浸漬ノズル24内を流れる第1溶鋼41の溶鋼流量を測定する。なお、電磁流量計1の校正作業は、測定対象となる溶鋼が流れる浸漬ノズル(本実施形態の場合、第1溶鋼41が流れる内層溶鋼用浸漬ノズル24)を変えた後の最初の操業時、すなわち、電磁流量計1と溶鋼の流路との相対的位置関係が変わったときのみ行えばよく、2回目以降の操業では、校正作業をせずに溶鋼流量を測定できる。
なお、流量信号の検出のための装置として、励磁コイル66と検出コイル63とを備えているが、誘導磁場Bvが検出できればよく、同じ構成でなくてもよい。さらに、誘導磁場Bvでなくても溶鋼流7の速度vと関係する物理量を、電気信号に変換できる構成の装置であればよい。
(4)作用及び効果
以上の構成において、本発明の第1実施形態の流量測定方法は、内層溶鋼用浸漬ノズル24(ノズル)を用いて、タンディッシュ2(第1槽)から鋳型3(第2槽)へ第1溶鋼41(溶鋼)を供給する溶鋼供給ステップと、励磁コイル66を用いて、第1溶鋼41が内層溶鋼用浸漬ノズル24内に形成する溶鋼流7に対して交流磁場Bを印加する励磁ステップと、交流磁場Bによって溶鋼流7に生じた誘導起電力に基づき、検出コイル63に生じた電圧を検出する検出ステップと、検出コイル63に生じた電圧から、ロックインアンプ70を用いて、励磁コイル66と同位相の0°位相信号と励磁コイル66から位相が90°ずれた90°位相信号とからなる流量信号R(X、Y)を検出する流量信号検出ステップと、流量信号R(X、Y)と、タンディッシュ2の重量変化又は鋳型3内の第1溶鋼41の量から求めた、タンディッシュ2から鋳型3に供給された第1溶鋼41の重量に対応する重量信号と、に基づいて、第1溶鋼41の流量を算出する流量算出ステップと、を有するように構成した。
また、本発明の第1実施形態の流量測定方法は、タンディッシュ2から鋳型3へ供給される第1溶鋼41の流量を、2以上の条件で変化させ、2以上の条件に対応する前記流量信号と前記重量信号とに基づいて電磁流量計1を校正するように構成した。
よって、第1実施形態の流量測定方法は、溶鋼流量が異なる少なくとも2以上の条件で取得した流量信号R(X、Y)のX成分及びY成分に基づいて電磁流量計1を校正するので、溶鋼流量をゼロにすることなく電磁流量計1を校正することができ、精度よく溶鋼流量を測定できる。
さらに、第1実施形態の流量測定方法は、溶鋼流量を連続して変化させつつ、流量信号R(X、Y)のX成分及びY成分と、重量信号とを連続して取得しており、より広い範囲の条件を用いて、電磁流量計1を校正するようにすることで、校正の精度を高めることができる。
なお、第1実施形態においては、図5に示すように、溶鋼流量の流量条件を2段階で切り替える場合を用いて説明を行ったが、本発明はそうした場合に限定されるものではない。例えば、図9のグラフAに示すように、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパーの開度を一定かつ所定の開度とし、複層鋳片の内層を形成する溶鋼(第1溶鋼41)を鋳型3に注ぐが、そのまま、ストッパー開度を変化させないようにしておくこともできる。その場合であっても、図9のグラフBに示すように、湯面レベルの上昇と共に、タンディッシュ2内溶鋼の圧力水頭の変化によって溶鋼流量が変化するので、自然と鋳型3内の湯面レベルの上昇速度が少しずつ変化する。そのため、ストッパー開度を一定にしておいたとしても、溶鋼流量について、2以上の条件が実現できるので、その間に電磁流量計1の校正を行うことが可能となる。この場合も、鋳型3内の第1溶鋼41の湯面が第1所定レベルに達し、ダミーバーを移動させ、鋳型3内で固化した鋳片を鋳型3の下部から引き抜き始める前までに、校正作業を行う。
<第2実施形態>
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態に係る連続複層鋳造装置100は、第1実施形態に係る連続複層鋳造装置100に比べ、取得部131及び校正部133での処理が異なっているので、それらを中心に説明を行う。なお、その他の構成は、実質的に第1実施形態と同じものであるので説明を省略する。
図10に示すように、第2実施形態では、まず、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパーの開度を一定かつ所定の開度(内層溶鋼用浸漬ノズル24開度1)とし、複層鋳片の内層を形成する溶鋼(第1溶鋼41)を鋳型3に注ぐ。そうすることで、図10のグラフBに示すように、内層溶鋼用浸漬ノズル24から注がれた第1溶鋼41によって、鋳型3内の溶鋼量が連続的に増加し、鋳型3内の湯面レベルが徐々に上昇する。その際、内層溶鋼用浸漬ノズル24内にあった空気が第1溶鋼41によって押し出されていく。そして、鋳型3の湯面レベルが上昇し、湯面が内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端に到達すると、内層溶鋼用浸漬ノズル24内にあった空気は完全に押し出され、内層溶鋼用浸漬ノズル24内は第1溶鋼41で充満する。その後も、鋳型3内の第1溶鋼41の量は引き続き増加し、湯面レベルは上昇していく(流量条件1)。
次に、内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー開度を、図10のグラフAに示すように、流量条件1とは異なる一定かつ所定の開度(内層溶鋼用浸漬ノズル24開度2)とする(図10のグラフAの場合ストッパー開度が小さくなっている)。このようにストッパー開度を2段階に変化させることで、図10のグラフBに示すように、鋳型3内の湯面レベルの上昇速度が少しずつ変化する(図10のグラフBの例では湯面レベルの上昇速度が少しずつ小さくなる)が、鋳型3内の溶鋼の量は流量条件1とは異なる速度で連続的に増加する(流量条件2)。
その後、図10のグラフCに示すように、鋳型3内の第1溶鋼41の湯面が第1所定レベルに達した後、ダミーバーを移動させ、鋳型3内で固化した鋳片を鋳型3の下部から引き抜き始める。
最後に、図10のグラフAに示すように、表層溶鋼用浸漬ノズル25のストッパーを開き、表層を形成する溶鋼(第2溶鋼42)を鋳型3に注ぎ、表層溶鋼用浸漬ノズル25のストッパー開度を内層溶鋼用浸漬ノズル24のストッパー開度に対応させて適宜調整し、第1溶鋼41及び第2溶鋼42の鋳型3への供給量を制御する。その際、内層溶鋼用浸漬ノズル24から供給される第1溶鋼41及び表層溶鋼用浸漬ノズル25から供給される第2溶鋼42と、鋳型3から引き抜かれる溶鋼の量についても適宜調整される。
このような操業過程において、校正部133は、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が第1溶鋼41で満たされた後の時期に校正作業を行う。すなわち、校正作業は、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に第1溶鋼41が充満した状態で行う必要があるので、図10のグラフBに示すように、流量条件1の初めの部分はできれば避け、第1溶鋼41が充満するのを待って、一定時間経過した後の流量条件1の範囲と、流量条件2の範囲とを用いて、校正作業が行われる。
校正部133は、内層溶鋼用浸漬ノズル24の先端が第1溶鋼41に浸漬した後、溶鋼流量が異なる、図10のグラフBの流量条件1と流量条件2とで、取得部131から流量信号と、当該流量信号のそれぞれに対応する重量信号を受け取る。
続いて、校正部133は、溶鋼流量について2段階の流量条件(流量条件1及び流量条件2)を含む校正区間において得られた、重量信号に対応するタンディッシュ2内の溶鋼の重量変化(TD重量変化)と、流量信号のX成分及びY成分との関係を、例えば、最小二乗法などにより、それぞれ直線近似する。
図11のグラフは、横軸をタンディッシュ2の重量変化、縦軸を流量信号の値としており、2条件の流量条件(流量条件1及び流量条件2)を含む校正区間において得られた、X成分の実測値に対応する直線と、Y成分の実測値に対応する直線とを実線で示しており、それぞれ、流量条件1と流量条件2とで、異なる直線となる。一方、実測されたX成分に係る直線を直線近似することで得られた直線と、実測されたY成分に係る直線を直線近似することで得られた直線を破線で示している。
図11のグラフにおいて、各近似直線と縦軸との交点が、それぞれ、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が溶鋼で充満し溶鋼流量がゼロであるときの流量信号のX成分の値Xo、及び、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が溶鋼で充満し溶鋼流量がゼロである時の流量信号のY成分の値Yoとなる。そのため、このように、2条件で実測されたX成分及びY成分の値に基づき、直線近似することで、電磁流量計1のゼロ点(Xo、Yo)を算出できる。よって、校正部133は、算出した各近似直線を用いて、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が溶鋼で充満し換算溶鋼流量がゼロであるときの流量信号のX成分及びY成分を、ゼロ点(Xo、Yo)として算出する。
以上のように、第2実施形態においてもゼロ点(Xo、Yo)を求めることができるため、第1実施形態と同様に比例係数αを求め、比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)とを用いることで電磁流量計1を校正することができる。
なお、第2実施形態では、溶鋼流量の条件を2段階に切り替え、2条件で流量信号及び重量信号を取得する例で説明を行ったが、溶鋼流量の条件を2段階に限らず、3段階以上に切り替えて、3以上の条件で取得された流量信号及び重量信号を用いて、電磁流量計1の校正をすることもできる。
また、流量信号のX成分及びY成分を取得する際の2以上の条件については、実際の操業に用いる溶鋼流量が、図10のグラフBに示す流量条件1で生じる溶鋼流量と、流量条件2で生じる溶鋼流量の間に入るように、流量条件1と流量条件2とを調整することが好ましい。すなわち、校正した電磁流量計を、その校正後に用いて溶鋼流の流量を測定する場合には、その測定対象となる流量が、流量信号のX成分及びY成分を取得する際の2以上の条件の、各条件に対応する流量の間の値となるように、校正の際の2以上の条件が設定されるのが好ましい。そうすることで、実際の操業条件と、測定のための仮の条件である流量条件1及び流量条件2との差を小さくすることができ、校正された電磁流量計1を実際の操業に適用する際の誤差を小さくすることができる。
また、交流で駆動されている励磁コイル66の交流周期の1倍〜10倍程度の時間で取得した校正データを一定値の点と見なすことで、2点の校正値を直線近似することで、ゼロ点(Xo、Yo)を求め、校正を実施することもできる。
<変形例>
次に、第1及び第2実施形態の流量測定方法の変形例を説明する。変形例の流量測定方法において、校正部133は、まず、取得部131から重量信号を取得し、溶鋼の重量変化を第1溶鋼流量V1とする。次に、校正部133は、取得部131から、第1溶鋼流量V1時の流量信号R1(X1、Y1)(X成分をX1、Y成分をY1とする)を取得する。ストッパー24bの開度を変え、タンディッシュ2内の溶鋼の重量変化、すなわち、溶鋼流量を変えた後、校正部133は、再度、溶鋼の重量変化を算出し、第2溶鋼流量V2とする。そして校正部133は、取得部131から、第2溶鋼流量V2時の流量信号R2(X2、Y2)(X成分をX2、Y成分をY2とする)を取得する。
0°位相信号(X成分)と90°位相信号(Y成分)との2次元座標系空間であり、横軸を流量信号のX成分、縦軸を流量信号のY成分としたグラフに、第1溶鋼流量がV1のときの流量信号R1(X1、Y1)と、第2溶鋼流量がV2のときの流量信号R2(X2、Y2)とをプロットすると、図12のようになる。図12のグラフ上の点線は、プロットした2点を結ぶ近似直線である。そして、流量信号のX成分とY成分との間の関係は変わらないので、算出したいゼロ点(Xo、Yo)(グラフ上では点Ro(Xo,Yo)と表記している)は点線で示した近似直線上に現れる。なお、図12のグラフ中の点Rb(Xb、Yb)は、内層溶鋼用浸漬ノズル24内が空の状態のときの流量信号Rbを表しており、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に第1溶鋼41がないので、近似直線とは異なる位置に現れている。
ここで、式(1)の右辺の√((X−Xo)+(Y−Yo))の項は、図12に示すグラフでの、任意の流量信号R(X、Y)とゼロ点(Xo、Yo)とのプロット間の距離を算出していることに相当するので、溶鋼流量Vmは、図12のグラフ上でのゼロ点(Xo、Yo)のプロットからの距離に比例する。そのため、図12のグラフ上では、第2溶鋼流量V2と第1溶鋼流量V1との差分は、流量信号R1(X1、Y1)のプロットと流量信号R2(X2、Y2)のプロット間の近似直線上の距離に相当する。よって、第2溶鋼流量V2と第1溶鋼流量V1との差分V2−V1は下記式(3)で表すことができる。
Figure 2020169981
式(3)を用いて第1溶鋼流量V1及びそのときの流量信号R1と、第2溶鋼流量V2及びそのときの流量信号R2とから式(1)の比例係数αを算出できる。その後、算出した比例係数α、第1溶鋼流量V1及びそのときの流量信号R1を式(1)に代入して導出された式と、比例係数α、第2溶鋼流量V2及びそのときの流量信号R2を式(1)に代入して導出された式との連立方程式を解くことで、ゼロ点信号Ro(Xo、Yo)を算出できる。
このように、校正部133は、第1溶鋼流量V1及びそのときの流量信号R1と、第2溶鋼流量V2及びそのときの流量信号R2と式(1)及び(3)とから比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)を算出し、電磁流量計1を校正することができる。
なお、この場合には、流量信号R1と流量信号R2という2条件の値を用いたが、より多数の条件で測定を行い、多く流量信号Rを用いて直線近似することも可能である。その場合には、直線近似の際の誤差をより少なくすることができるため、校正の精度をあげることができる。
以上のように、変形例の流量測定方法は、溶鋼(第1溶鋼41)が浸漬ノズル(内層溶鋼用浸漬ノズル24)内に充満した状態で、溶鋼流量が異なる少なくとも2時点以上で取得した前記流量信号(第1溶鋼流量V1及びそのときの流量信号R1(X1、Y1)と、第2溶鋼流量V2及びそのときの流量信号R2(X2、Y2))に基づいて、電磁流量計1を校正する電磁流量計校正工程を有するので、溶鋼流量をゼロにすることなく電磁流量計を校正でき、より精度よく溶鋼流量を測定できる。
なお、上記の実施形態では、電磁流量計1を内層溶鋼用浸漬ノズル24の近傍に設置して、第1又は第2実施形態に係る流量測定方法により、電磁流量計1を校正してから内層溶鋼用浸漬ノズル24内の溶鋼流量を測定することを説明したが、本発明はこれに限られない。電磁流量計1を表層溶鋼用浸漬ノズル25の近傍に設置して、第1又は第2実施形態に係る流量測定方法により、電磁流量計1を校正してから表層溶鋼用浸漬ノズル25内の溶鋼流量を測定するようにしてもよい。
この場合、上記で説明した操業の工程において、表層溶鋼用浸漬ノズル25のストッパーを解放し、表層溶鋼用浸漬ノズル25の先端が第2溶鋼42に浸漬した後のタイミングで電磁流量計1の校正を行う。このとき、タンディッシュ2の重量変化から内層溶鋼用浸漬ノズル24の第1溶鋼41の溶鋼流量を引いた値を、換算溶鋼流量として、電磁流量計1の校正を行うとよい。
また、上記の実施形態では、連続複層鋳造装置100のタンディッシュ2の浸漬ノズル(内層溶鋼用浸漬ノズル24及び/又は表層溶鋼用浸漬ノズル25)内の溶鋼流量を測定する場合に、第1又は第2実施形態に係る流量測定方法を適用したが、本発明はこれに限られず、例えば単層の鋳片を製造する連続鋳造装置のタンディッシュの浸漬ノズル内の溶鋼流量など他の浸漬ノズル内の溶鋼流量を測定する場合に適用してもよい。
また、上記の実施形態では、内層溶鋼用浸漬ノズル24内に溶鋼が充満し、かつ、溶鋼流量がゼロのときの流量信号のX成分及びY成分の値であるゼロ点(Xo、Yo)を求めることで校正を行っているが、完全に溶鋼流量がゼロの場合を求める必要はなく、式(2)上にある任意の点(Xi、Yi)におけるX成分とY成分とを求め、ゼロ点の代わりとすることによっても、ゼロ点と同様に、式(1)を用いて校正を行うことができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
上述のように、電磁ブレーキ装置37は、磁場発生器32のコイルに電流を流し、鋳型3内に直流磁場を印加することで、直流磁場帯34を通過しようとする溶鋼に電磁ブレーキをかけている。しかしながら、電磁流量計1が、磁場発生器32のコイルからの漏れ磁場の影響を受けてしまい、電磁流量計1の計測値が変化する。
図13に、時間の経過とともに電磁ブレーキ装置37の動作条件をI、II、III、IVと変化させたときに、電磁流量計1で検出された流量信号の値を示す。動作条件I、II、III及びIVは、磁場発生器32のコイルに流れる電流が互いに異なり、電流の大きい順に、動作条件II、I、III,IVである。図13より、磁場発生器32のコイルに流れる電流が大きくなると、流量信号の値がゼロ(電磁ブレーキ装置37が作動していないときの値)から大きく変化することがわかる。したがって、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響を考慮して、溶鋼流量を補正する必要がある。
そこで、第3実施形態では、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響を反映した流量測定方法について説明する。第3実施形態に係る流量測定方法を実行する装置の構成は、第1及び第2実施形態に係る連続複層鋳造装置100と実質的に同一であるため、以下では、第1及び第2実施形態と異なる処理のみを説明する。
以下では、連続複層鋳造装置100に電磁流量計1を取り付けた後の初回操業時を例に挙げて説明する。初回操業時、溶鋼の給湯開始前に、まず、電磁ブレーキ装置37を作動させ、電磁流量計1の検出部12により、電磁ブレーキ装置37の作動によって電磁流量計1の計測値に生じる変化を表す変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)が検出され、検出された変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)のデータは記憶部134に記録される。変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)は、電磁ブレーキ装置37が作動していないときの流量信号の値(ゼロ)からの変化量を表しており、ΔXb及びΔYbは、それぞれ、変化量のX成分(0°位相信号)及びY成分(90°位相信号)を表している。
次に、電磁ブレーキ装置37をOFF状態にして、校正部133により、電磁流量計1が校正される。電磁流量計1の校正は、第1実施形態、第2実施形態、又はそれらの変形例における校正方法が用いられる。
校正後の実際の鋳造時、電磁ブレーキ装置37が作動されると、検出部12により、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響を含んだ流量信号R(X、Y)(実測値)が検出される。流量信号R(X、Y)のX成分、Y成分は、それぞれ、式(4)、式(5)のように表される。
X=Xb+ΔXb …(4)
Y=Yb+ΔYb …(5)
ここで、Xb及びYbは、それぞれ、電磁ブレーキ装置37がOFF状態のとき(電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響がないとき)の流量信号のX成分及びY成分を表す。
流量算出部132は、検出部12から取得部131を介して受け取った流量信号R(X、Y)(実測値)と、校正部133での校正で得られた比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)の値と、記憶部134に記録された変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)とから、式(6)により、溶鋼流量Vmを算出する。式(6)の溶鋼流量Vmは、式(1)の右辺のX、Yを、それぞれ、式(4)のXb(=X−ΔXb)、式(5)のYb(=Y−ΔYb)に置き換えることで求められる。
Figure 2020169981
このように、電磁流量計1による実測値から、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響分を差し引いた値を、電磁流量計1の計測値とし、溶鋼流量を補正することで、より精度よく溶鋼流量を求めることができる。
<第3実施形態の変形例1>
上述の第3実施形態では、電磁ブレーキ装置37をOFF状態にして校正動作をしていたが、電磁ブレーキ装置37を作動させながら校正動作をしてもよい。この場合、校正部133は、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響も反映して、電磁流量計1を校正することができる。校正後の実際の鋳造時、流量算出部132は、検出部12で検出された流量信号R(X、Y)(実測値)と、漏れ磁場の影響も反映された比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)の値とから、式(1)により、溶鋼流量Vmを算出する。
上述のように、校正動作は湯上げ工程で実施されるが、湯上げの過程で鋳型3の周辺に極薄い凝固層(通常は、数mm程度)が形成される。僅かではあるが、磁性金属の発生により、漏れ磁場の状態が変わる可能性がある。よって、電磁ブレーキ装置37を作動させながら電磁流量計1を校正することで、その影響が反映されるため、漏れ磁場の影響を計測した後に校正動作をする場合よりも正確に電磁流量計1を校正することができる。
<第3実施形態の変形例2>
連続複層鋳造装置100の操業中に電磁ブレーキの強さを変更する可能性は低いものの、電磁ブレーキの強さの変更も反映して、溶鋼流量を補正することも可能である。実際の操業では、鋳造を連続的に行う場合に、タンディッシュ2に溶鋼をつぎ足すことがある。そのとき、鋳型3への給湯量を減らして鋳造速度を小さくする必要があるが、溶鋼中の介在物の除去に最適な電磁ブレーキの条件が変化することから、電磁ブレーキを弱くすることがある。
第3実施形態の変形例2では、初回操業時、溶鋼の給湯開始前に、電磁ブレーキ装置37は、磁場発生器32のコイルに流す電流を連続的又は段階的に変化させ、当該コイルに流れる電流に応じて電磁流量計1で検出された変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)のデータが、電流値に対応付けて記憶部134に順次記録される。
その後は、電磁ブレーキ装置37をOFF状態にして、校正部133により校正を行う。校正後の実際の鋳造時、電磁ブレーキ装置37が作動されると、流量算出部132は、式(6)により溶鋼流量Vmを算出する。ここで、磁場発生器32のコイルに流れる電流の変化により電磁ブレーキの強さが変更されると、流量算出部132は、式(6)のΔXb、ΔYbの値を、当該電流値に対応する値に変更して溶鋼流量Vmを算出する。
なお、第3実施形態の変形例2においても、変形例1のように、電磁ブレーキ装置37の作動中に校正動作を行ってもよい。この場合、磁場発生器32のコイルに流れる電流を、第1電流値、第2電流値、第3電流値、…と変化させるたびに校正動作を行い、コイルの電流値ごとに、校正動作で得られた比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)の値が記憶部134に記録される。校正後の実際の鋳造時、流量算出部132は、磁場発生器32のコイルに流れる現在の電流値に対応する比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)と、流量信号R(X、Y)(実測値)から、式(1)により、溶鋼流量Vmを算出する。
このように、連続複層鋳造装置100の操業中に電磁ブレーキの強さを変更する場合であっても、精度よく溶鋼流量を測定することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
上述のように、電磁攪拌装置38は、交流磁場を用いて、鋳型3内で溶鋼を流動させるが、電磁ブレーキ装置37と同様、電磁攪拌装置38による漏れ磁場も、電磁流量計1の計測値に影響を及ぼす。そこで、第4実施形態では、電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響を反映した流量測定方法について説明する。第4実施形態に係る流量測定方法を実行する装置の構成は、第1〜第3実施形態に係る連続複層鋳造装置100と実質的に同一であるため、以下では、第1〜第3実施形態と異なる処理のみを説明する。
以下では、連続複層鋳造装置100に電磁流量計1を取り付けた後の初回操業時を例に挙げて説明する。初回操業時、溶鋼の給湯開始前に、まず、電磁攪拌装置38を作動させ、電磁流量計1の検出部12により、電磁攪拌装置38の作動によって電磁流量計1の計測値に生じる変化を表す変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)が検出される。検出された変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)は、電磁攪拌装置38が作動していないときの流量信号の値(ゼロ)からの変化量を表しており、ΔXs及びΔYsは、それぞれ、変化量のX成分(0°位相信号)及びY成分(90°位相信号)を表している。
電磁攪拌装置38の駆動電流をI=Io・sin(ωt)とする。ここで、Ioは振幅、ωは角周波数、tは時間である。駆動電流Iと変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)の変動周期の位相には、コイルインピーダンスの影響でずれが生じる。この位相ずれのX成分、Y成分を、それぞれ、φ1、φ2とすると、ΔXs、ΔYsは、それぞれ、式(7)、式(8)のように表される。ここで、ΔX及びΔYは、それぞれ、ΔXs及びΔYsの振幅である。
ΔXs=ΔX・sin(ωt+φ1) …(7)
ΔYs=ΔY・sin(ωt+φ2) …(8)
このように、電磁攪拌装置38は、交流磁場を用いているため、電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響を表す変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)も時間的に変化するが、時間的な変化分は、電磁攪拌装置38の駆動電流Iの波形(より具体的には、角周波数ω及び位相φ1、φ2)を検出することで、求めることができる。変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)のデータは駆動電流Iのデータとともに記憶部134に記録される。
次に、電磁攪拌装置38をOFF状態にして、校正部133により、電磁流量計1が校正される。電磁流量計1の校正は、第1実施形態、第2実施形態、又はそれらの変形例における校正方法が用いられる。
校正後の実際の鋳造時、電磁攪拌装置38が作動されると、検出部12により、電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響を含んだ流量信号R(X(t)、Y(t))(実測値)が検出される。流量信号R(X(t)、Y(t))のX成分、Y成分は、それぞれ、式(9)、式(10)のように表される。
X(t)=Xs+ΔXs=Xs+ΔX・sin(ωt+φ1) …(9)
Y(t)=Ys+ΔYs=Ys+ΔY・sin(ωt+φ2) …(10)
ここで、Xs及びYsは、それぞれ、電磁攪拌装置38がOFF状態のとき(電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響がないとき)の流量信号のX成分及びY成分を表す。
流量算出部132は、検出部12から取得部131を介して受け取った流量信号R(X(t)、Y(t))(実測値)と、校正部133での校正で得られた比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)の値と、電磁攪拌装置38の駆動電流Iの波形(より具体的には、角周波数ω及び位相φ1、φ2)と、記憶部134に記録された変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)とから、式(11)により、溶鋼流量Vmを算出する。式(11)の溶鋼流量Vmは、式(1)の右辺のX、Yを、それぞれ、式(9)のXs、式(10)のYsに置き換えることで求められる。
Figure 2020169981
このように、電磁流量計1による実測値から、電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響分を差し引いた値を、電磁流量計1の計測値とし、溶鋼流量を補正することで、より精度よく溶鋼流量を求めることができる。
<第4実施形態の変形例>
上述の第3実施形態の変形例1と同様、電磁攪拌装置38を作動させながら校正動作を行ってもよい。この場合、電磁流量計1の信号は、その中に含まれる、電磁撹拌による交流磁界の影響成分と溶鋼流による流量信号とを分離する必要がある。例えば、電磁撹拌装置38の交流磁界の周期の整数倍の時間で流量信号を記録し、流量信号に時間平均処理を行うことで、電磁撹拌装置38の交流磁界による影響成分をキャンセルすることができ、溶鋼流による電磁流量計1の信号変化のみを知ることができる。このような電磁撹拌装置38の交流磁界の周期の整数倍の時間における流量信号の時間平均(時間平均流量信号)を、異なる2以上の溶鋼流の流量条件で記録し、それぞれの溶鋼流量(=TD重量変化)と流量信号(R)との関係から、電磁撹拌を行わない場合の校正と同様に、溶鋼流量がゼロの場合の比例係数α及び流量信号のゼロ点(Xo、Yo)を求めることができる。
また、ストッパー開度を一定に保持している時の溶鋼流量の変化は、電磁撹拌の駆動周期に対して非常に緩やかなので、電磁撹拌の変動周期の数倍程度の時間が経過するまでの間については、溶鋼流量は一定であるとみなすことができる。そこで、電磁撹拌装置38を作動させている時の流量信号(交流磁場に従って変動している流量信号)から、上記で求めた各溶鋼流ごとの時間平均流量信号を差し引くことで、式(9)、式(10)に記載された変動振幅ΔX、ΔYを求めることができる。さらに、電磁撹拌装置38の駆動電流Iの位相と流量信号との比較により、位相ずれφ1、φ2を求めることができる。
これらの結果を用いることで、第4実施形態と同様に、鋳造中の溶鋼流量Vmを、式(11)に基づいて求めることができる。
また、電磁撹拌による変動ノイズ影響の分離には、上記のような時間平均を用いる方法の他に、Fast Fourier Transform(FFT)等のデジタル信号処理を用いることによって、電磁撹拌と同じ周波数成分を取り除く、周波数フィルタ処理を用いる方法もある。この場合は、流量信号の信号から直接電磁撹拌による変動ノイズを除去することができるので、電磁撹拌装置38を作動させてもその影響を受けることがなく、電磁流量計1の校正を行うことができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
実施形態5は、上述の第3実施形態と第4実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、実施形態5は、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響と、電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響とを反映した流量測定方法を提供する。第5実施形態に係る流量測定方法を実行する装置の構成は、第1〜第4実施形態に係る連続複層鋳造装置100と実質的に同一であるため、以下では、第1〜第4実施形態と異なる処理のみを説明する。
以下では、連続複層鋳造装置100に電磁流量計1を取り付けた後の初回操業時を例に挙げて説明する。初回操業時、溶鋼の給湯開始前に、まず、電磁ブレーキ装置37を作動させ、電磁流量計1の検出部12により、電磁ブレーキ装置37の作動によって電磁流量計1の計測値に生じる変化を表す第1変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)が検出され、検出された第1変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)のデータは記憶部134に記録される(第3実施形態参照)。次に、電磁ブレーキ装置37をOFF状態とし、電磁攪拌装置38を作動させ、電磁流量計1の検出部12により、電磁攪拌装置38の作動によって電磁流量計1の計測値に生じる変化を表す第2変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)が検出される(第4実施形態の式(7)及び式(8)参照)。検出された第2変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)のデータは、電磁攪拌装置38の駆動電流Iのデータとともに記憶部134に記録される。なお、電磁攪拌装置38を作動後に電磁ブレーキ装置37をさせるようにしてもよい。
次に、電磁ブレーキ装置37及び電磁攪拌装置38の双方をOFF状態にして、校正部133により、電磁流量計1が校正される。電磁流量計1の校正は、第1実施形態、第2実施形態、又はそれらの変形例における校正方法が用いられる。
校正後の実際の鋳造時、電磁ブレーキ装置37及び電磁攪拌装置38が作動されると、検出部12により、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場及び電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響を含んだ流量信号R(X(t)、Y(t))(実測値)が検出される。検出された流量信号R(X(t)、Y(t))のX成分、Y成分は、それぞれ、式(12)、式(13)のように表される。
X(t)=Xbs+ΔXb+ΔX・sin(ωt+φ1) …(12)
Y(t)=Ybs+ΔYb+ΔY・sin(ωt+φ2) …(13)
ここで、Xbs及びYbsは、それぞれ、電磁ブレーキ装置37も電磁攪拌装置38もOFF状態のとき(電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場及び電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響がないとき)の流量信号のX成分及びY成分を表す。
流量算出部132は、検出部12から取得部131を介して受け取った流量信号R(X(t)、Y(t))(実測値)と、校正部133での校正で得られた比例係数α及びゼロ点(Xo、Yo)の値と、記憶部134に記録された第1変化信号ΔRb(ΔXb、ΔYb)及び第2変化信号ΔRs(ΔXs、ΔYs)とから、式(14)により、溶鋼流量Vmを算出する。式(14)の溶鋼流量Vmは、式(1)の右辺のX、Yを、それぞれ、式(12)のXbs、式(13)のYbsに置き換えることで求められる。
Figure 2020169981
このように、電磁流量計1による実測値から、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響分と、電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響分とを差し引いた値を、電磁流量計1の計測値とし、溶鋼流量を補正することで、より精度よく溶鋼流量を求めることができる。
<第5実施形態の変形例>
第5実施形態においても、電磁ブレーキ装置37及び電磁攪拌装置38の双方を作動させながら校正動作を行ってもよい。この場合、校正部133は、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響と電磁攪拌装置38による漏れ磁場の影響も反映して、電磁流量計1を校正する。電磁攪拌装置38により、流量信号に重畳される信号は、時間的に変動しているので、第4実施形態と同様に、電磁攪拌装置38によるノイズ成分を分離して、変動振幅ΔX、ΔYと、電磁攪拌装置38の駆動電流Iとの位相ずれφ1、φ2を求めた後、式(14)に基づいて、溶鋼流量を求めることができる。
なお、電磁ブレーキ装置37による漏れ磁場の影響は、空間距離が長くなると小さくなる。よって、図1において、電磁流量計1をより高い位置(タンディッシュ2により近い位置)に取り付けて、電磁流量計1を電磁ブレーキ装置37から離すことで、漏れ磁場の影響を小さくすることが可能である。
1 電磁流量計
2 タンディッシュ
3 鋳型
11 励磁部
12 検出部
13 演算処理部
24 内層溶鋼用浸漬ノズル
25 表層溶鋼用浸漬ノズル
37 電磁ブレーキ装置
38 電磁攪拌装置
63 検出コイル
66 励磁コイル
70 ロックインアンプ
100 連続複層鋳造装置

Claims (12)

  1. 電磁流量計を用いて、溶鋼の流量を測定する流量測定方法において、
    ノズルを用いて、第1槽から第2槽へ前記溶鋼を供給する溶鋼供給ステップと、
    励磁コイルを用いて、前記溶鋼が前記ノズル内に形成する溶鋼流に対して交流磁場を印加する励磁ステップと、
    前記交流磁場によって前記溶鋼流に生じた誘導起電力に基づき、検出コイルに生じた電圧を検出する検出ステップと、
    前記検出コイルに生じた電圧から、ロックインアンプを用いて前記励磁コイルと同位相の0°位相信号と前記励磁コイルから位相が90°ずれた90°位相信号とからなる流量信号を検出する流量信号検出ステップと、
    前記流量信号と、前記第1槽の重量変化又は前記第2槽内の前記溶鋼の量から求めた、前記第1槽から前記第2槽に供給された前記溶鋼の重量に対応する重量信号と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する流量算出ステップと、
    を有し、
    前記第1槽から前記第2槽へ供給される前記溶鋼の流量を、2以上の条件で変化させ、
    前記2以上の条件に対応する前記流量信号と前記重量信号とに基づいて前記電磁流量計を校正する、流量測定方法。
  2. 前記第1槽から前記第2槽へ供給される前記溶鋼の量を連続的に変化させることで、前記2以上の条件を実現する、請求項1に記載の流量測定方法。
  3. 前記第1槽から前記第2槽へ供給される前記溶鋼の量を段階的に2段階以上変化させることで、前記2以上の条件を実現する、請求項1に記載の流量測定方法。
  4. 前記2以上の条件は、前記校正の後に前記電磁流量計を用いる際の前記溶鋼流の流量が、前記2以上の条件の流量の間の値となるように設定される、請求項2又は3に記載の流量測定方法。
  5. 前記電磁流量計を校正する前に、電磁ブレーキ装置を作動させ、前記電磁ブレーキ装置の作動によって前記電磁流量計の計測値に生じる変化を表す変化信号を検出する変化検出ステップを更に有し、
    前記電磁流量計の校正は、前記電磁ブレーキ装置を作動させずに行い、
    前記流量算出ステップは、前記電磁ブレーキ装置を作動させたときに検出された前記流量信号と、前記重量信号と、前記変化信号と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量測定方法。
  6. 前記電磁流量計の校正は、電磁ブレーキ装置を作動させながら行い、
    前記流量算出ステップは、前記電磁ブレーキ装置を作動させたときに検出された前記流量信号と、前記重量信号と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量測定方法。
  7. 前記電磁流量計を校正する前に、電磁攪拌装置を作動させ、前記電磁攪拌装置の作動によって前記電磁流量計の計測値に生じる変化を表す変化信号を検出する変化検出ステップを更に有し、
    前記電磁流量計の校正は、前記電磁攪拌装置を作動させずに行い、
    前記流量算出ステップは、前記電磁攪拌装置を作動させたときに検出された前記流量信号と、前記重量信号と、前記変化信号と、前記電磁攪拌装置の駆動電流の波形と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量測定方法。
  8. 前記電磁流量計の校正は、電磁攪拌装置を作動させながら行い、
    前記流量算出ステップは、前記電磁攪拌装置を作動させたときに検出された前記流量信号と、前記重量信号と、前記電磁攪拌装置の駆動電流の波形と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量測定方法。
  9. 前記電磁流量計の校正は、電磁攪拌装置を作動させながら行い、
    前記流量算出ステップは、前記電磁攪拌装置を作動させたときに検出された前記流量信号から、周波数フィルタを用いて前記電磁撹拌装置の交流磁場の成分を除去した流量信号と、前記重量信号と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量測定方法。
  10. 前記電磁流量計を校正する前に、電磁ブレーキ装置を作動させ、前記電磁ブレーキ装置の作動によって前記電磁流量計の計測値に生じる変化を表す第1変化信号を検出するとともに、電磁攪拌装置を作動させ、前記電磁攪拌装置の作動によって前記電磁流量計の計測値に生じる変化を表す第2変化信号を検出する変化検出ステップを更に有し、
    前記電磁流量計の校正は、前記電磁ブレーキ装置及び前記電磁攪拌装置を作動させずに行い、
    前記流量算出ステップは、前記電磁ブレーキ装置及び前記電磁攪拌装置を作動させたときに検出された前記流量信号と、前記重量信号と、前記第1変化信号と、前記第2変化信号と、前記電磁攪拌装置の駆動電流の波形と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量測定方法。
  11. 前記電磁流量計の校正は、電磁ブレーキ装置及び電磁攪拌装置を作動させながら行い、
    前記流量算出ステップは、前記電磁ブレーキ装置及び前記電磁攪拌装置を作動させたときに検出された前記流量信号と、前記重量信号と、前記電磁攪拌装置の駆動電流の波形と、に基づいて、前記溶鋼の流量を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の流量測定方法。
  12. 表層と内層とで成分組成が異なる複層鋳片を鋳造する工程で、前記溶鋼の流量を測定する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の流量測定方法。


JP2020043529A 2019-04-02 2020-03-12 流量測定方法 Active JP7385124B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019070678 2019-04-02
JP2019070678 2019-04-02

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020169981A true JP2020169981A (ja) 2020-10-15
JP7385124B2 JP7385124B2 (ja) 2023-11-22

Family

ID=72746670

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020043529A Active JP7385124B2 (ja) 2019-04-02 2020-03-12 流量測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7385124B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6524849B2 (ja) 2015-08-11 2019-06-05 日本製鉄株式会社 浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法及び装置、連続鋳造用タンディッシュ並びに複層鋳片の連続鋳造方法
JP6557550B2 (ja) 2015-08-21 2019-08-07 アズビル株式会社 液体用流量計の試験方法、および試験装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP7385124B2 (ja) 2023-11-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2013324153B2 (en) Integrally molded magnetic flowmeter
JP6524849B2 (ja) 浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法及び装置、連続鋳造用タンディッシュ並びに複層鋳片の連続鋳造方法
JP7385124B2 (ja) 流量測定方法
CN101408449A (zh) 精确砂型铸造过程的非侵入式实时液位传感和反馈系统
JP5463440B1 (ja) モールド内湯面計の校正方法および校正治具
JP6862846B2 (ja) 浸漬ノズル内の溶鋼流量測定方法及び装置、連続鋳造用タンディッシュ並びに複層鋳片の連続鋳造方法
JP2013006206A (ja) 連続鋳造用モールドパウダーの溶融層厚み測定方法
JP2007098400A (ja) 連続鋳造装置および流速測定方法
TW201606270A (zh) 渦流式模具準位測量裝置以及模具準位測量方法
JPH0194201A (ja) 溶融スラグ厚さの測定方法及び装置
JP5652093B2 (ja) 移動速度検出器、連続鋳造装置
RU2426622C2 (ru) Способ и устройство для измерения и мониторинга уровня жидкого металла в кристаллизаторе
JP2016022489A (ja) 溶鋼流速測定方法及び溶鋼流速測定装置
JPH08211085A (ja) 流速測定装置
JP2916830B2 (ja) 連続鋳造における溶融金属の流量制御方法
JP2005283438A (ja) 溶融金属の表面流速の測定方法
JPH09108822A (ja) タンディッシュ内溶鋼の加熱方法
JPH07276018A (ja) ノズル内の溶鋼の流動状態検出方法
JPH08262051A (ja) 流速測定方法及び流速測定装置
JP3140171B2 (ja) モールドレベル計
JP2000162227A (ja) 流速測定方法及び装置
JP3546288B2 (ja) 流速測定方法及び装置
KR20240054364A (ko) 유량 측정 시스템
JPH04339551A (ja) 連続鋳造鋳型の湯面レベル異常検知方法
JPH02303663A (ja) 鋳型内溶鋼の湯面レベル制御方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221104

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230821

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230829

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230926

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231010

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231023

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7385124

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151