JP3546288B2 - 流速測定方法及び装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば、連続鋳造プロセスにおいて溶鋼を鋳込む鋳型内溶鋼流の表面の流速等を測定する流速測定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造ラインにおいては、図13のように溶鋼103はタンディッシュ101よりノズル102を通して銅製の鋳型104中に注ぎ込まれ鋳造される。鋳型中に注ぎ込まれた溶鋼は、鋳型壁面に当たり上昇流107と下降流108に分かれる。上昇流は表面で流れ109a、109bを作るが、ここで表面の溶鋼流動の左右のバランスが崩れると、渦が発生し溶鋼表面上に撒いたパウダー105を巻き込む(111)。
また表面の溶鋼流動が過大になると、溶鋼表面のパウダーを削り込む(110)。何れにおいても鋳片中に介在物が捕捉され、製品欠陥の原因となる。この理由から、鋳型内溶鋼流動を安定化させることは極めて重要な課題であり、特に溶鋼表面近傍の流速を連続的に計測することが強く求められている。
【0003】
従来溶鋼の流速は、例えば特開平5−60774号公報に示されたような接触型の計測が主であった。これは図14のようにファインセラミックス製の棒112を溶鋼114に浸漬して、その棒が溶鋼流動により受ける圧力を、受圧センサ113により検出して、流速を測定するものである。この方法では高温の溶鋼にセラミックス製棒を浸漬させるため、長時間の連続測定が不可能であった。
【0004】
これに対し、磁気を用いて非接触で速度を計測できることが知られている。図15の(a)のように均等な磁場Bo 中で導体115が動くと、その導体中にEv =v×Bo なる速度起電力が生じる。この速度起電力Ev により、導体中に誘導電流Jv が誘起され、導体上に誘導磁場Bv が発生して、元の磁場は導体の速度方向に引きずられるようにBo からBへと歪む。このように磁場が導体の運動により歪む効果を以下磁場の速度効果と呼ぶ。
この速度効果による歪みの程度は導体の速度に対応して変化するので、歪み量を測ることで対象導体の速度を知ることができる。なおこの歪みを測定することは、歪みのもとが速度効果による誘導磁場Bv なので、Bv を測定していることに他ならないことは明らかである。なおBv は下式で表せる。
【0005】
【数1】
【0006】
なお、磁場を用いて流速を測定する方法では、図15の(b)のように測定すべき速度起電力による信号磁場Bv の他に、励磁磁場が交流の場合には測定対象中に流れる−dB/dtによる渦電流Je が発生し、その渦電流による渦電流磁場Be が検出される。
いま、測定しようとする鋳型内溶鋼流の流速は、0〜0.3m/sec程度と小さいため、速度起電力による信号磁場Bv も小さく、励磁周波数が数十Hz以上と高い場合には渦電流磁場Be に比べ大幅に小さくなってしまい、Be が変動するとその変動の中にBv が埋もれ、大きな測定誤差を生じてしまうという問題点がある。この渦電流磁場Be は対象の流速と関係なく、流速信号のオフセット分の変動を引き起こす。
【0007】
このような磁気を用いて非接触で速度を計測する装置として特開平2−311766号公報に示されるものがある。これは図16の(a)のように溶鋼の流れ118と平行に1次コイル119、その水平方向両側に2つの2次コイル120a、120bを配置したものである。1次コイルに交流電流を印加して溶鋼面と平行な交流磁場117を溶鋼表面に印加し、2次コイルにより対象面と平行な磁場を検出する。導体が静止しているときには磁場は1次コイルを挟んで対称となり、2つの2次コイルの起電力に差はなく出力は零である。
導体が動いている場合には、図16の(b)のように速度効果により磁場は導体の速度方向に歪み、励磁コイルを挟んで対称でなくなるため、2つの2次コイルに生じる起電力に差が生じ、磁場の歪み量、即ち速度に対応した信号が2つの2次コイルの差分信号として得られる。
【0008】
また磁気による方法では、装置と測定対象物体との距離(以下リフトオフと呼ぶ)により速度感度が変化するが、特開平2−311766号公報に示されたものでは、装置と測定対象物体との距離を、対象面と平行な磁場を検出する2次コイルの片方の出力電圧により測定し、補正を行っていた。
【0009】
また磁気を用いて速度を計測する別の方法として特開平5−297012号公報に示されたものがある。これは図17のように1次コイル151を測定対象152に対して垂直に配置し、1次コイル151に交流電流を印加し、磁界153を生じさせ、1次コイル151を挟んで両側に測定対象152に対して垂直に2次コイル154a、154bを配置し、1次コイル151、2次コイル154a、154bを巻いた鉄心155、156a、156bを備えたものである。そして流速は2次コイル154a、154bに生じた起電力の位相から検出するものであった。
【0010】
また磁気を用いて速度を計測する別の方法として、本発明者らにより提案している特開平8−211084号公報によるものがある。これは図18のように、中心の脚204bを中心として左右対称形のE型の形状をした磁心202に対し、中心の脚204bに励磁用の巻線203bを巻き、両端の脚204a、cに検出用の巻線203a,cをそれぞれが同じ向きの磁束を検出するように巻いたものである。これを移動する導電性の測定対象物体201の上に、脚の開いた面が対象面に向き、かつ各脚が対象面の移動方向に対し平行に並ぶように配置する。
【0011】
そして励磁巻線に交流電流を流し、導体面に垂直な交流磁場を作り、2つの検出巻線の出力差を検出するものである。この時、図19の(a)のように導体201が停止していれば、磁場は中心の脚を中心として左右対象であり、左右の検出巻線の出力は等しく、その差分は零となる。導体が動くと、図19の(b)のようにその流速に対応して磁場が歪み、両端の巻線の位置での磁束に差が出て、その差分信号が変化する。この変化量は対象の流速に対応しており、この変化量から、対象の流速を測定することができる。
またこの方法でも、リフトオフにより速度感度が変化するが、特開平8−211084号公報においては、このリフトオフを、図20のように装置に併設した渦流距離計256を用いて検出し、補正を行っていた。
【0012】
また磁気を用いて流速を計測する別の方法として、本発明者により提案している特願平8−255861号によるものがある。これは図21のように、移動する導電性の測定対象物体の上に、対象面に対しその中心軸が垂直となるように、セラミックス製パイプ2に巻いた励磁巻線Pを配置し、その励磁巻線Pと対象面との間にセラミックス製の丸棒3に同じ向きに2つの検出巻線S1 ,S2 を巻いたものを、その中心軸が対象面および対象の移動方向と平行で、かつ2つの検出巻線S1 ,S2 の中間点が励磁巻線Pの中心軸上にくるように配置したものである。ここで励磁巻線Pに電流を流し、測定対象に磁場を励磁し、検出巻線S1 ,S2 で図15の(a)に示した誘導磁場Bv を検出し流速を測定するものである。
またこの方法では、リフトオフの変化により、渦電流磁場Be に起因するオフセット分が変化し、また流速感度が変化するが、前記特願平8−255861号では、図21のように励磁装置上下に対象面に垂直な磁場成分を検出するように巻いた2つの検出巻線S3 ,S4 の出力電圧をもとにリフトオフを検出し、オフセットの変化、流速感度の変化を補正していた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の特開平2−311766号公報、特開平5−297012号公報、特開平8−211084号公報及び特願平8−255861号のような磁場を励磁し、速度誘導磁場を検出し、検出した磁場から流速を算出するタイプの流速測定方法・装置では、先述のように励磁磁場として交流の磁場を用いた場合、検出装置で、対象より発生する渦電流磁場Be を検出してしまい、流速信号のオフセットが変化してしまう。この変化は対象面が平坦であればリフトオフにより一意に決まるため、特願平8−255861号のように別途リフトオフを検出して補正することができる。
しかし対象面が平坦でなく波立ちがある場合には、図2のように局所的に見ると対象面が傾いており、この傾きにより渦電流磁場Be が傾く。そのため特開平5−297012号公報及び特開平8−211084号公報のような垂直方向の磁場成分を検出する方法でも、特開平2−311766号公報及び特開平8−255861号のような水平方向の磁場成分を検出する方法でも、リフトオフが一定であっても、波の移動や変化に伴って装置下の対象面の傾きが変化するため、検出装置で検出してしまう渦電流磁場Be の大きさが変化して、オフセット分が変化するので、リフトオフを検出して補正しても除去しきれないオフセット変化分が残り、測定誤差を生じてしまうという問題があった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る流速測定方法は、移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁し、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出し、その検出した磁場信号から前記測定対象物の流速を算出する流速測定方法において、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記算出した流速値を抽出し、これを測定流速値とするものである。
【0015】
本発明の請求項2に係る流速測定方法は、前記請求項1に係る流速測定方法において、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしはく極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点において前記算出した流速値から抽出された流速値に対して、前記測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行い、この補正後の値を測定流速値とするものである。
【0016】
本発明の請求項3に係る流速測定方法は、前記請求項1又は2に係る流速測定方法において、請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場とは別に距離測定のため、前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、測定対象面に対する垂直方向の交流の磁場を、測定対象面に対して垂直方向に所定距離を隔てた測定対象面上の2点でそれぞれ検出し、この検出した2つの磁場信号の差分値に基づき前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するものである。
【0017】
本発明の請求項4に係る流速測定方法は、前記請求項3に係る流速測定方法において、請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場を交流の磁場とし、この交流磁場の励磁周波数と、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の励磁周波数とを異なる周波数とするものである。
【0018】
本発明の請求項5に係る流速測定方法は、前記請求項3に係る流速測定方法において、請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場を測定対象面に垂直な交流の磁場とし、この流速検出用交流磁場を、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の代りに用いて前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するものである。
【0019】
本発明の請求項6に係る流速測定装置は、移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁できるように配置された励磁手段と、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出するように配置された1つ以上の磁場検出手段と、前記励磁手段に励磁電流を供給して測定対象面に対し磁場を励磁し、前記1つ以上の磁場検出手段の検出信号に基づき測定対象物の流速を算出する測定手段とを有する流速測定装置において、前記1つ以上の磁場検出手段の検出位置と測定対象面との間の距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段の測定した距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記測定手段の算出した流速値を抽出する信号抽出手段とを備えて、この信号抽出手段が抽出した信号値を測定流速値とするものである。
前記請求項1及び本請求項6の流速測定方法及び装置によって、測定対象面に波立ちがあっても、安定して流速の測定が可能となる。
【0020】
本発明の請求項7に係る流速測定装置は、前記請求項6に係る流速測定装置における前記信号抽出手段が抽出した流速値に対して、この流速値の抽出時点における前記距離測定手段の測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行う補正手段を備え、この補正手段による補正後の値を測定流速値とするものである。
前記請求項2及び本請求項7の流速測定方法及び装置によって、測定対象面に波立ちがあっても、安定で、かつ精度の良い流速の測定が可能となる。
【0021】
本発明の請求項8に係る流速測定装置は、前記請求項6又は7に係る流速測定装置における前記距離測定手段は、前記励磁手段を包含する位置または励磁手段に包含される位置で、かつ前記測定対象面に対し垂直方向の交流の磁場を励磁するように配置された副励磁手段と、前記測定対象面と前記副励磁手段の間の第1の位置と、副励磁手段を中心として前記第1の位置と対称の第2の位置に、それぞれ測定対象面に対し垂直で互いに同じ向きの磁場を検出するように配置された2つの副磁場検出手段と、前記副励磁手段に交流の励磁電流を供給して前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、前記2つの副磁場検出手段の検出信号の差分信号のうち、前記副励磁手段の励磁磁場と同一の周波数成分の信号に基づき前記磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離を算出する副測定手段とからなるものである。
前記請求項3及び本請求項8の流速測定方法及び装置によって、流速測定用の磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離の極大又は極小のタイミングが精度良く検出でき、その結果正しいタイミングにおける流速値の抽出が可能となり、精度の良い流速測定が可能となる。
【0022】
本発明の請求項9に係る流速測定装置は、前記請求項8に係る流速測定装置において、前記測定手段は前記励磁手段に交流の励磁電流を供給して交流磁場を励磁し、前記副測定手段は前記測定手段が励磁手段に供給した励磁電流とは異なる周波数の励磁電流を前記副励磁手段に供給するものである。
前記請求項4及び本請求項9の流速測定方法及び装置によって、流速測定用の磁場検出信号と距離測定用の磁場検出信号との周波数成分が異なり、両信号間の干渉がなく両信号の分離が容易となるので、それぞれ安定して両信号の検出が可能となる。
【0023】
本発明の請求項10に係る流速測定装置は、前記請求項8又は9に係る流速測定装置において、前記励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ前記測定手段は前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、前記副励磁手段は前記励磁手段と兼用とし、前記副測定手段は交流の励磁電流を前記副励磁手段に供給する代りに、前記測定手段が前記励磁手段に供給する励磁電流に重畳させて供給するものである。その結果、請求項8又は9の副励磁手段を除去することができる。
【0024】
本発明の請求項11に係る流速装置は、前記請求項8又は10に係る流速測定装置において、前記励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ前記測定手段は前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、前記副励磁手段は除去し、前記副測定手段は、前記測定手段が前記励磁手段に供給する交流の励磁電流に基づく交流磁場を用いて、前記2つの副磁場検出手段が検出した2信号から前記磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離を算出するものである。
前記請求項5及び本請求項11の流速測定方法及び装置によって、副励磁手段を除去できるとともに、この副励磁手段を励磁するために使用していた励磁電流をも省略することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する前に、まず本発明の流速測定方法および装置の動作原理について説明する。
(1)流速測定原理
ここでは基本となる流速測定装置として、特願平8−255861号のような流速測定装置を用いた場合について説明する。
この装置は、図21のように、励磁装置として移動する導電性の測定対象物体の上に、対象面に対しその中心軸が垂直となるように1つの励磁巻線Pを配置し、磁場検出装置としてその励磁巻線Pと対象面の間に、2つの検出巻線S1 ,S2 を対象面および対象の移動方向にその中心軸が平行となり、かつ2つの検出巻線S1 ,S2 の中間点が励磁巻線Pの中心軸上にくるように配置したものである。
【0026】
ここで励磁巻線Pに交流の励磁電流を供給し、対象面に対し垂直な磁場を励磁する。すると、前述の速度効果による誘導磁場Bv が生じる。この誘導磁場Bv は、図3の(a),(b)のように励磁巻線Pの直下の検出巻線S1 ,S2 の位置では対象面に平行となっており、図3の(a)では、このBv を対象面に平行に配置した2つの検出巻線S1 ,S2 の和信号をとることで検出する。この検出したBv は測定対象の流速に対応しているので、これから測定対象の流速を測定することができる。
実際の測定装置では、検出巻線S1 ,S2 の出力信号をロックインアンプ等を用いて励磁電流と−90°ずれた位相の成分を検波し、流速測定の元となる流速元信号とする(本来は励磁磁場即ち励磁電流と同位相の磁場成分を検波するが、ここでは磁場の検出に検出巻線を用いており、検出巻線で検出する磁場と検出巻線の検出電圧とに−90°の位相差があるため、−90°ずれた位相成分を検波する)。
また前記速度効果による誘導磁場Bv は、前記2つの検出巻線S1 ,S2 を設けなくとも、図3の(b)のように、対象面に平行に配置した1つの検出巻線Sによっても検出することができる。即ち磁場検出手段は、1つ以上設ければよいことになる。
【0027】
(2)波立ちの影響対策
波立ちにより装置下の対象面が傾いていると、先述のようにこの流速元信号のオフセットが変化してしまう。しかし図4のように波の山、谷の部分では対象面の傾きはゼロであり、傾きによるオフセット変化分はゼロであるため、この山、谷部分の信号のみを用いれば対象面の傾き、即ち波立ちの影響を除外して、安定して流速を測定することができる(請求項1、6に対応)。
実際には何らかの方法でリフトオフを検出して、そのリフトオフ信号を時系列的に観測すれば、リフトオフが極小値となったタイミングが波の山の部分に相当し、極大値となったタイミングが波の谷の部分に相当するため、そのタイミングの流速元信号のみを取り出すようにすればよい。
【0028】
さらにリフトオフ極大、極小のタイミングはリフトオフ信号を微分すれば、その微分値がゼロクロスするタイミングを検知することで精度良く求めることができる。即ち微分値が正から負に変わるタイミングが極大のタイミングに相当し、微分値が負から正に変わるタイミングが極小のタイミングに相当する。
なお、こうして求めた、山、谷のタイミングでの流速元信号には、通常の波では山、谷の位置でリフトオフが異なるため、リフトオフにより一意に決まるオフセット変化分と流速感度変化分(対象面が平坦な場合と同じ)が残っており、リフトオフ信号とあらかじめ求めておく、リフトオフ・オフセット特性曲線、リフトオフ・流速感度特性曲線を用いて残りの変化分を補正すれば、対象の流速を求めることができる(請求項2、7に対応)。
【0029】
(3)リフトオフの検出
さらに本発明では、特願平8−255861号と同様、図21のように励磁巻線Pを含む励磁装置と対象面との間、およびそれと励磁装置を中心に対称な位置に、励磁装置と同軸に、対象面に対し垂直方向でそれぞれが同じ向きの磁場を検出するように2つの垂直方向検出巻線S3 ,S4 を配置し、2つの垂直方向の検出巻線の差分信号からリフトオフの検出を行う(請求項3,8に対応)。
ここで図3の(a)のように対象面に対し流速測定用の励磁巻線Pにより垂直に磁場が励磁されているので、この磁場により対象中に流れる渦電流Je によって、対象面に対し垂直な渦電流磁場Be が生じる。
この渦電流磁場Be は対象面との距離によって変化するので、この渦電流磁場Be を検出巻線S3 ,S4 で検出すれば、対象面との距離すなわちリフトオフを検出することができる。
【0030】
先に述べた波立ちの影響除外方法においては、流速測定用の検出装置に対して正確に測定対象面が水平となるタイミング、すなわち検出装置の直下を波の山、谷が通過するタイミングを求めることが重要となるが、ここで述べたようなリフトオフ検出方法を用いれば、リフトオフ検出用のセンサヘッドが流速測定用のセンサヘッドと一体となっているため、別途距離計を併設する場合に比べ、流速検出用の検出装置直下のリフトオフを正確に検出することができ、正確な山、谷の検出が可能となり、正確に波立ちの影響の除外が可能となる。
以上で本発明の流速測定方法及び装置の動作原理の説明を終えたので、次に本発明の実施形態について説明する。
【0031】
実施形態1
図1は本発明の実施形態1に係る流速測定装置の構成図であり、この装置は、図21に示すようなセンサヘッド1と、図1に示す流速測定回路30、リフトオフ測定回路50及び補正回路70とから構成される。
図1のセンサヘッド1は、図21の構成のように、移動する導電性の測定対象物の上に、この対象面に対しその中心軸が垂直となるように、セラミックス製丸パイプ2に巻いた励磁巻線Pを配置し、その励磁巻線Pと対象面との間に、セラミックス製の丸棒3に同じ向きに2つの流速検出用検出巻線S1 ,S2 を巻いたものを、その中心軸が測定対象面および測定対象の移動方向と平行で、かつ2つの検出巻線S1 ,S2 の中間点が励磁巻線Pの中心軸上にくるように配置し、さらに励磁巻線Pを巻いたセラミックス製丸パイプ2に対し、励磁巻線Pと測定対象との間に1つ、およびそれと励磁巻線Pを挟んで対称な位置に1つ、計2つリフトオフ検知用検出巻線S3 ,S4 を巻いたものである。
【0032】
流速測定回路30は、図1のように励磁回路10と、検出回路20からなる。励磁回路10は、励磁巻線Pに励磁電流を流し、測定対象に磁場を励磁するものであり、この回路は発振器11と、定電流アンプ12からなる。まず発振器11より1Hz〜1kHzの正弦波を発生させ、定電流アンプ12により一定の交流電流として、抵抗Rを介して励磁巻線Pに励磁電流を流す。ここでは励磁周波数は70Hzとした。
【0033】
流速検知用検出巻線S1 ,S2 からの出力信号は、検出回路20に入る。この検出回路20は、ブリッジ回路21、バンドパスフィルタ22及びロックインアンプ23よりなる。
ここで2つの検出巻線S1 ,S2 からの信号はまずブリッジ回路21で和信号が検出される。このブリッジ回路21はセンサヘッド周囲に磁性あるいは導電性のもの、あるいは電磁場を発生するものがない状態で、その出力信号がゼロとなるようにあらかじめ調節しておく。このようにすることで、2つの検出巻線S1 ,S2 で検出してしまう不要な励磁磁場信号をキャンセルするようにブリッジ回路21を調整できる。
その調整後の信号は、励磁回路10の励磁電流の周波数を中心周波数とする所定帯域幅のバンドパスフィルタ22により、不要帯域のノイズ信号をあらかじめ除去した後に、ロックインアンプ23によって、励磁回路10の励磁電流に対し−90°ずれた位相の成分が検波される。この−90°ずれた位相成分の検波のための基準位相(ref)信号が、発振器11からロックインアンプ23に供給される。そしてロックインアンプ23による検波後の信号が流速測定の元となる流速元信号である。
【0034】
またリフトオフ検知用検出巻線S3 ,S4 からの出力信号は、リフトオフ測定回路50に入る。このリフトオフ測定回路50は、ブリッジ回路51、バンドパスフィルタ52及びロックインアンプ53よりなる。
ここで2つの検出巻線S3 ,S4 からの信号はまずブリッジ回路51で差分が検出される。このブリッジ回路51はセンサヘッドの周囲に磁性あるいは導電性のもの、あるいは電磁場を発生するものがない状態で、その出力信号がゼロとなるようにあらかじめ調節しておく。
その調節後の信号は、励磁回路10の励磁電流の周波数を中心周波数とする所定帯域幅のバンドパスフィルタ52により、不要帯域のノイズ信号をあらかじめ取り除いた後に、ロックインアンプ53によって、励磁回路10の励磁電流に対し−180°ずれた位相の成分が検波される(本来は励磁磁場即ち励磁電流と−90°ずれた磁場成分を検波するが、ここでは磁場の検出に検出巻線を用いており、磁場と検出巻線の検出電圧とが−90°の位相差があるため、−180°ずれた位相成分を検波する)。このための基準位相信号が発振器11からロックインアンプ53に供給される。そしてロックインアンプ53による検波後の信号がリフトオフ検出の元となるリフトオフ元信号である。
【0035】
その後、流速測定回路30の出力信号である流速元信号と、リフトオフ測定回路50の出力信号であるリフトオフ元信号とは補正回路70に入る。この補正回路70は、A/D変換器71、コンピュータ72及びD/A変換器73よりなる。
補正回路70では、まずA/D変換器71により流速元信号とリフトオフ元信号をA/D変換し、コンピュータ72に取り込む。そして以下の処理はコンピュータ72上でソフトウェアにより行う。そのアルゴリズムを図5を用いて説明する。
【0036】
コンピュータ上では、まずリフトオフ元信号からリフトオフを演算する(図5の81を参照)。ここではあらかじめリフトオフを変えたときのリフトオフ元信号の変化の様子を測定しておき、このリフトオフ・リフトオフ元信号特性曲線(図5の82を参照)をもとにリフトオフ元信号からリフトオフを演算している。次に演算したリフトオフをもとに流速元信号から測定対象面の傾きの影響を除外する(図5の83を参照)。ここでは演算したリフトオフを微分し、そのゼロクロス点から対象面の波の山、谷に相当するタイミングを判定し、流速元信号からこのタイミングの信号値を取出す(図4を参照)。このタイミングに取出された信号が波立ちによる傾きの影響除外後の信号となる。
【0037】
続いて傾きの影響除外後の信号のリフトオフ変動補正を行う(図5の88を参照)。ここではまず、先に演算したリフトオフをもとに、渦電流磁場Be によるオフセット分を演算し、これを傾きの影響除外後の信号から差し引く(図5の84を参照)。ここではあらかじめリフトオフを変えたときの流速元信号に含まれるオフセットの変化の様子を測定しておき、このリフトオフ・オフセット特性曲線(図5の85を参照)をもとにリフトオフからオフセット分を演算している。次にオフセット分を差し引いた信号からリフトオフの変化に伴う流速感度変化分を補正し最終的な流速値を得る(図5の86を参照)。ここではあらかじめリフトオフを変えたときの流速感度(対象の流速が0m/secと、1m/secの時での流速元信号の変化量)の様子を測定しておき、このリフトオフ・流速感度特性曲線(図5の87を参照)をもとに、そのリフトオフでの流速感度を演算し、オフセット分を差し引いた流速元信号をこの演算した流速感度で割って補正を行っている。
【0038】
なお、ここで最終的に得られる流速値は、波の山、谷に相当するタイミングのみの離散的な値のみであるが、他の時刻についてはこのタイミングの値をホールドして流速値とすればよい。
このようにして測定対象面が平坦でなく波立ちがある場合にも、リフトオフ補正後に、高精度でかつ安定した流速値を測定することができる。なお、補正の確認試験結果については後述する。
また実施形態1においては、リフトオフ検出用の励磁磁場としては、流速検出用の励磁磁場(即ち励磁巻線Pに供給される励磁電流に基づく励磁磁場)を利用していることになる(請求項5及び11に対応)。従ってリフトオフ検出用の励磁手段を別途設けるものよりも励磁手段の数が少くてすむ。
【0039】
次に実施形態1以外の他の実施形態について説明する。
本発明の流速測定装置の構成として、実施形態1では、図21のセンサヘッドと図1の3つの回路による構成のものを用いて説明したが、磁場を用いて非接触で流速を測定する流速測定装置であれば、波立ちの影響は、すべて同じ様に生じるため、前記の特開平2−311766号公報、特開平5−297012号公報及び特開平8−211084号公報のような他の装置構成であっても、前述の波立ち補正方法が適用できる。
また実施形態1では、流速検出用とリフトオフ検出用の検出装置として、巻線を用いた例で説明したが、巻線でなくホール素子などの他の磁気センサであっても構わない。さらにセンサヘッドにおいて、励磁装置と、流速検出用検出装置と、リフトオフ検出用の検出装置を、いずれもセラミックス製のボビンに巻線を巻いた空心タイプのものを用いていたが、フェライト等の磁性体に巻線を巻いた磁心タイプのものを用いてもかまわない。
またリフトオフ検出方法としては、ここでは図21のような装置構成で説明したが、リフトオフが検出できればレーザーを用いるなど他の方式によるものでもかまわない。
【0040】
実施形態2
図6と7は、それぞれ本発明の実施形態2に係る流速測定装置の構成図である。
前記実施形態1では、センサヘッド1として、リフトオフ検出用の励磁磁場として流速検出用の励磁磁場を利用した例を用いて説明したが、本実施形態2では、リフトオフ検出用に図6の(a),(b)のように別途リフトオフ検出用励磁巻線Lを流速検出用の励磁巻線Pの上から、もしくは下に巻いてセンサヘッド1Aを構成する(請求項3,8に対応)。
そして図7のように、図1のリフトオフ測定回路50に発振器41と定電流アンプ42を追加したリフトオフ測定回路50Aを構成し、発振器41の出力を定電流化した定電流アンプ42の出力からリフトオフ検出用励磁巻線Lにリフトオフ検出用の励磁電流を供給して励磁している。なお、リフトオフ元信号を求める際にリフトオフ検出用の励磁周波数と同じ周波数で検波を行うため、発振器41の出力を基準位相信号としてロックインアンプ53へ供給している。
ここでリフトオフ検出用の周波数は流速検出用の周波数と同じでも異なっていてもかまわない。
なお2つの周波数を異ならせることにより、両信号間の干渉がなく両信号の分離が容易となるので、それぞれ安定した両信号の検出が可能となる(請求項4,9に対応)。
本実施形態2の構成による流速測定装置によっても、実施形態1の場合と同様に、測定対象面が波立つている場合にも、リフトオフ補正後に、高精度で安定した流速値を測定することができる。
【0041】
実施形態3
図8は本発明の実施形態3に係る流速測定装置の構成図である。
図8のリフトオフ測定回路50Bは、図1のリフトオフ測定回路50に発振器41を追加して構成される。
そして発振器41の出力と流速検出用の発振器11の出力とを加算して、その加算出力を流速検出用の定電流アンプ12に入力することで、2つの発振器の出力を足し合わせた信号を定電流化した励磁電流を流速検出用の励磁巻線Pに供給するようにしている(請求項10に対応)。
なお図7のように発振器41のほかに定電流アンプ42もリフトオフ測定回路50Bに追加し、定電流アンプ42の出力と流速検出用の定電流アンプ12の出力とを加算し、この加算電流を流速検出用の励磁巻線Pに供給するようにしてもよい。
さらにこの2つの場合において、リフトオフ検出用の励磁電流の周波数は、流速検出用の励磁電流の周波数と同じであっても、異なっていてもよい。
また2つの周波数を異ならせることによる効果は、前記実施形態2の場合と同様である。
【0042】
なお、前記各実施形態における測定対象面の傾きの影響の除外方法として、測定対象の波の山、谷双方向のタイミングの信号を取り出す方法について説明したが、山のタイミングのみ、あるいは谷のタイミングのみの信号を取り出してもよい。
さらに前各実施形態におけるリフトオフ補正処理は、コンピュータ上のソフトウェアで処理した例を示したが、ハードウェア(例えばアナログ回路等)を用いて処理するようにしてもよい。
【0043】
次に本発明の流速測定装置による波立ち補正の確認試験を行った結果について説明する。なお試験を行った装置は図1の実施形態1の構成のものを使用した。図9は波立ち模擬用試験装置の構成図を示すものであり、この試験装置は、SUS316製の円板を斜めに回転軸に固定して回転させ、その上に本流速測定装置のセンサヘッド1を配置して、波立ちをシミュレートしたものである。図9の(a)は正面からみた図、(b)は真上からみた図である。
試験手順は、まず流速測定装置を、周囲に磁性、導電性のもの、あるいは電磁場を発生するもののない場所に置き、流速測定装置の流速測定回路30中のブリッジ回路21及びリフトオフ測定回路50中のブリッジ回路51を調節し、続いて停止したSUS円板上に配置する。
次に円板を回転させ、しばらくおいて円板を止め、再び装置をSUS円板上から外し、周囲に磁性、導電性のもの、あるいは電磁場を発生するもののない場所に置いた。
【0044】
図10は図9の試験装置による波立ち補正の確認試験結果例を示す図である。
図10の(a)は円板の回転速度から求めた測定対象の速度を示している。なお、各図の横軸はそれぞれ時間(単位は秒)を示している。
図10の(b)はリフトオフを超音波距離計をもとに測定した値を示しており、(c)は本流速測定装置で演算したリフトオフの値を示しており、両者の波形はほぼ同一である。
図10の(d)は本流速測定装置の波立ち補正前の流速元信号を示しており、(e)は本流速測定装置で演算したリフトオフをもとに波の山、谷のタイミングのみを取り出した波立ちの影響除外後の信号を示している。
図10の(f)がさらに本発明のリフトオフ補正を行った後の本装置の最終出力である流速値である。
このように、波立ち補正前は、波による対象面の傾きの変化により流速値が大きく変化しているが、波立ち補正によりその変化が無くなり、対象の速度に対応した高精度の流速信号が得られ、かつ安定して速度の検出ができたことがわかる。
【0045】
図12は本流速測定装置の波立ち補正の確認試験を行ったもう一つの結果を示す図である。
ここでは低融点合金(ウッドメタル)を溶解し、図11のような長細い容器に入れ、容器の長手方向に本装置センサヘッド1の検出巻線の中心軸が平行となる(即ち本装置の流速検知方向と容器の長手方向が平行となる)ように、低融点合金の上に本装置を配置した。
ここで容器の片端に板を入れて動かし、低融点合金の湯面に波を発生させた。なお本試験では低融点合金の流速は零である。
この試験では、まず本装置を周囲に磁性、導電性のもの、あるいは電磁場を発生するもののない場所に置き、流速測定装置の流速測定回路30中のブリッジ回路21及びリフトオフ測定回路50中のブリッジ回路51を調節し、続いて低融点合金上に本装置のセンサヘッドを配置し、板で波を生成した。
なお、図12にはセンサヘッドを低融点合金上に配置した後の信号の様子のみを示した。
【0046】
図12の(a)はリフトオフを超音波距離計をもとに測定した値を示している。なお各図の横軸はそれぞれ時間(単位は秒)を示している。
図12の(b)は本流速測定装置で演算したリフトオフを示しており、(c)は本流速測定装置の波立ち補正前の流速元信号を示している。
図12の(d)は本装置で演算したリフトオフをもとに波の山、谷のタイミングのみを取り出した波立ちの影響除外後の信号を示しており、(e)がさらに本発明のリフトオフ補正を行った後の本装置の最終出力である流速値である。
このように、波立ち補正前では、波による対象面の傾きの変化により流速値が大きく変化しているが、波立ち補正によりその変化が無くなり、安定した信号が得られていることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁し、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出し、その検出した磁場信号から前記測定対象物の流速を算出する流速測定方法及び装置において、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記算出した流速値を抽出し、これを測定流速値とするようにしたので、測定対象面に波立ちがあっても、安定して流速の測定が可能となる。
【0048】
また本発明によれば、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしはく極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点において前記算出した流速値から抽出された流速値に対して、前記測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行い、この補正後の値を測定流速値とするようにしたので、測定対象面に波立ちがあっても、安定でかつ精度の良い流速の測定が可能となる。
【0049】
また本発明によれば、前記流速検出用の励磁磁場とは別に距離測定のため、前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、測定対象面に対する垂直方向の交流の磁場を、測定対象面に対して垂直方向に所定距離を隔てた測定対象面上の2点でそれぞれ検出し、この検出した2つの磁場信号の差分値に基づき前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するようにしたので、流速測定用の磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離の極大又は極小のタイミングが精度良く検出でき、その結果正しいタイミングにおける流速値の抽出が可能となり、精度の良い流速測定が可能となる。
【0050】
また本発明によれば、前記流速検出用の励磁磁場を交流の磁場とし、この交流磁場の励磁周波数と、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の励磁周波数とを異なる周波数とするようにしたので、流速測定用の磁場検出信号と距離測定用の磁場検出信号との周波数成分が異なり、両信号間の干渉がなく両信号の分離が容易となるので、それぞれ安定して両信号の検出が可能となる。
【0051】
また本発明によれば、前記流速検出用の磁場を形成する励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ流速測定手段には前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、距離測定手段は距離検出用の磁場を形成するための交流の励磁電流を、前記流速測定手段が前記励磁手段に供給する励磁電流に重畳させて供給するようにしたので、距離検出用の磁場を形成する副励磁手段を除去することができる。
【0052】
また本発明によれば、前記流速検出用の励磁磁場を交流の磁場とし、この流速検出用交流磁場を、前記距離測定用の交流磁場としても利用して、前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するようにしたので、距離測定用の磁場を形成する副励磁手段と、この副励磁手段を励磁するために使用していた励磁電流をも省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る流速測定装置の構成図である。
【図2】測定対象面の波立ちの影響の説明図である。
【図3】本発明における流速検出及びリフトオフ検出の原理説明図である。
【図4】本発明における波立ち補正の原理説明図である。
【図5】本発明における波立ち補正のアルゴリズムの説明図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るセンサヘッドの構成図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る流速測定装置の構成図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る流速測定装置の構成図である。
【図9】波立ち模擬用試験装置の構成図である。
【図10】図9の試験装置による波立ち補正の確認試験結果例を示す図である。
【図11】液体金属の波立試験容器を示す図である。
【図12】図11の試験容器による波立ち補正の確認試験結果例を示す図である。
【図13】連続鋳造の説明図である。
【図14】接触式による従来の高温液体金属の流速測定装置の説明図である。
【図15】磁場の速度効果及び渦電流の影響に関する説明図である。
【図16】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置(その1)の説明図である。
【図17】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置(その2)の説明図である。
【図18】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置(その3)の説明図である。
【図19】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置の測定原理説明図である。
【図20】従来の磁気を用いた高温液体金属非接触流速測定装置におけるリフトオフ検出方法の説明図である。
【図21】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置のセンサヘッドの構成図である。
【符号の説明】
1,1A センサヘッド
2 セラミックス製丸パイプ
3 セラミックス製丸棒
S,S1 ,S2 流速検出巻線
S3 ,S4 リフトオフ検出巻線
10 励磁回路
11,41 発振器
12,42 定電流アンプ
20 検出回路
21,51 ブリッジ回路
22,52 バンドパスフィルタ
23,53 ロックインアンプ
30 流速測定回路
50 リフトオフ測定回路
70 補正回路
71 A/D変換器
72 コンピュータ
73 D/A変換器
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば、連続鋳造プロセスにおいて溶鋼を鋳込む鋳型内溶鋼流の表面の流速等を測定する流速測定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造ラインにおいては、図13のように溶鋼103はタンディッシュ101よりノズル102を通して銅製の鋳型104中に注ぎ込まれ鋳造される。鋳型中に注ぎ込まれた溶鋼は、鋳型壁面に当たり上昇流107と下降流108に分かれる。上昇流は表面で流れ109a、109bを作るが、ここで表面の溶鋼流動の左右のバランスが崩れると、渦が発生し溶鋼表面上に撒いたパウダー105を巻き込む(111)。
また表面の溶鋼流動が過大になると、溶鋼表面のパウダーを削り込む(110)。何れにおいても鋳片中に介在物が捕捉され、製品欠陥の原因となる。この理由から、鋳型内溶鋼流動を安定化させることは極めて重要な課題であり、特に溶鋼表面近傍の流速を連続的に計測することが強く求められている。
【0003】
従来溶鋼の流速は、例えば特開平5−60774号公報に示されたような接触型の計測が主であった。これは図14のようにファインセラミックス製の棒112を溶鋼114に浸漬して、その棒が溶鋼流動により受ける圧力を、受圧センサ113により検出して、流速を測定するものである。この方法では高温の溶鋼にセラミックス製棒を浸漬させるため、長時間の連続測定が不可能であった。
【0004】
これに対し、磁気を用いて非接触で速度を計測できることが知られている。図15の(a)のように均等な磁場Bo 中で導体115が動くと、その導体中にEv =v×Bo なる速度起電力が生じる。この速度起電力Ev により、導体中に誘導電流Jv が誘起され、導体上に誘導磁場Bv が発生して、元の磁場は導体の速度方向に引きずられるようにBo からBへと歪む。このように磁場が導体の運動により歪む効果を以下磁場の速度効果と呼ぶ。
この速度効果による歪みの程度は導体の速度に対応して変化するので、歪み量を測ることで対象導体の速度を知ることができる。なおこの歪みを測定することは、歪みのもとが速度効果による誘導磁場Bv なので、Bv を測定していることに他ならないことは明らかである。なおBv は下式で表せる。
【0005】
【数1】
【0006】
なお、磁場を用いて流速を測定する方法では、図15の(b)のように測定すべき速度起電力による信号磁場Bv の他に、励磁磁場が交流の場合には測定対象中に流れる−dB/dtによる渦電流Je が発生し、その渦電流による渦電流磁場Be が検出される。
いま、測定しようとする鋳型内溶鋼流の流速は、0〜0.3m/sec程度と小さいため、速度起電力による信号磁場Bv も小さく、励磁周波数が数十Hz以上と高い場合には渦電流磁場Be に比べ大幅に小さくなってしまい、Be が変動するとその変動の中にBv が埋もれ、大きな測定誤差を生じてしまうという問題点がある。この渦電流磁場Be は対象の流速と関係なく、流速信号のオフセット分の変動を引き起こす。
【0007】
このような磁気を用いて非接触で速度を計測する装置として特開平2−311766号公報に示されるものがある。これは図16の(a)のように溶鋼の流れ118と平行に1次コイル119、その水平方向両側に2つの2次コイル120a、120bを配置したものである。1次コイルに交流電流を印加して溶鋼面と平行な交流磁場117を溶鋼表面に印加し、2次コイルにより対象面と平行な磁場を検出する。導体が静止しているときには磁場は1次コイルを挟んで対称となり、2つの2次コイルの起電力に差はなく出力は零である。
導体が動いている場合には、図16の(b)のように速度効果により磁場は導体の速度方向に歪み、励磁コイルを挟んで対称でなくなるため、2つの2次コイルに生じる起電力に差が生じ、磁場の歪み量、即ち速度に対応した信号が2つの2次コイルの差分信号として得られる。
【0008】
また磁気による方法では、装置と測定対象物体との距離(以下リフトオフと呼ぶ)により速度感度が変化するが、特開平2−311766号公報に示されたものでは、装置と測定対象物体との距離を、対象面と平行な磁場を検出する2次コイルの片方の出力電圧により測定し、補正を行っていた。
【0009】
また磁気を用いて速度を計測する別の方法として特開平5−297012号公報に示されたものがある。これは図17のように1次コイル151を測定対象152に対して垂直に配置し、1次コイル151に交流電流を印加し、磁界153を生じさせ、1次コイル151を挟んで両側に測定対象152に対して垂直に2次コイル154a、154bを配置し、1次コイル151、2次コイル154a、154bを巻いた鉄心155、156a、156bを備えたものである。そして流速は2次コイル154a、154bに生じた起電力の位相から検出するものであった。
【0010】
また磁気を用いて速度を計測する別の方法として、本発明者らにより提案している特開平8−211084号公報によるものがある。これは図18のように、中心の脚204bを中心として左右対称形のE型の形状をした磁心202に対し、中心の脚204bに励磁用の巻線203bを巻き、両端の脚204a、cに検出用の巻線203a,cをそれぞれが同じ向きの磁束を検出するように巻いたものである。これを移動する導電性の測定対象物体201の上に、脚の開いた面が対象面に向き、かつ各脚が対象面の移動方向に対し平行に並ぶように配置する。
【0011】
そして励磁巻線に交流電流を流し、導体面に垂直な交流磁場を作り、2つの検出巻線の出力差を検出するものである。この時、図19の(a)のように導体201が停止していれば、磁場は中心の脚を中心として左右対象であり、左右の検出巻線の出力は等しく、その差分は零となる。導体が動くと、図19の(b)のようにその流速に対応して磁場が歪み、両端の巻線の位置での磁束に差が出て、その差分信号が変化する。この変化量は対象の流速に対応しており、この変化量から、対象の流速を測定することができる。
またこの方法でも、リフトオフにより速度感度が変化するが、特開平8−211084号公報においては、このリフトオフを、図20のように装置に併設した渦流距離計256を用いて検出し、補正を行っていた。
【0012】
また磁気を用いて流速を計測する別の方法として、本発明者により提案している特願平8−255861号によるものがある。これは図21のように、移動する導電性の測定対象物体の上に、対象面に対しその中心軸が垂直となるように、セラミックス製パイプ2に巻いた励磁巻線Pを配置し、その励磁巻線Pと対象面との間にセラミックス製の丸棒3に同じ向きに2つの検出巻線S1 ,S2 を巻いたものを、その中心軸が対象面および対象の移動方向と平行で、かつ2つの検出巻線S1 ,S2 の中間点が励磁巻線Pの中心軸上にくるように配置したものである。ここで励磁巻線Pに電流を流し、測定対象に磁場を励磁し、検出巻線S1 ,S2 で図15の(a)に示した誘導磁場Bv を検出し流速を測定するものである。
またこの方法では、リフトオフの変化により、渦電流磁場Be に起因するオフセット分が変化し、また流速感度が変化するが、前記特願平8−255861号では、図21のように励磁装置上下に対象面に垂直な磁場成分を検出するように巻いた2つの検出巻線S3 ,S4 の出力電圧をもとにリフトオフを検出し、オフセットの変化、流速感度の変化を補正していた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の特開平2−311766号公報、特開平5−297012号公報、特開平8−211084号公報及び特願平8−255861号のような磁場を励磁し、速度誘導磁場を検出し、検出した磁場から流速を算出するタイプの流速測定方法・装置では、先述のように励磁磁場として交流の磁場を用いた場合、検出装置で、対象より発生する渦電流磁場Be を検出してしまい、流速信号のオフセットが変化してしまう。この変化は対象面が平坦であればリフトオフにより一意に決まるため、特願平8−255861号のように別途リフトオフを検出して補正することができる。
しかし対象面が平坦でなく波立ちがある場合には、図2のように局所的に見ると対象面が傾いており、この傾きにより渦電流磁場Be が傾く。そのため特開平5−297012号公報及び特開平8−211084号公報のような垂直方向の磁場成分を検出する方法でも、特開平2−311766号公報及び特開平8−255861号のような水平方向の磁場成分を検出する方法でも、リフトオフが一定であっても、波の移動や変化に伴って装置下の対象面の傾きが変化するため、検出装置で検出してしまう渦電流磁場Be の大きさが変化して、オフセット分が変化するので、リフトオフを検出して補正しても除去しきれないオフセット変化分が残り、測定誤差を生じてしまうという問題があった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る流速測定方法は、移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁し、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出し、その検出した磁場信号から前記測定対象物の流速を算出する流速測定方法において、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記算出した流速値を抽出し、これを測定流速値とするものである。
【0015】
本発明の請求項2に係る流速測定方法は、前記請求項1に係る流速測定方法において、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしはく極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点において前記算出した流速値から抽出された流速値に対して、前記測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行い、この補正後の値を測定流速値とするものである。
【0016】
本発明の請求項3に係る流速測定方法は、前記請求項1又は2に係る流速測定方法において、請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場とは別に距離測定のため、前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、測定対象面に対する垂直方向の交流の磁場を、測定対象面に対して垂直方向に所定距離を隔てた測定対象面上の2点でそれぞれ検出し、この検出した2つの磁場信号の差分値に基づき前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するものである。
【0017】
本発明の請求項4に係る流速測定方法は、前記請求項3に係る流速測定方法において、請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場を交流の磁場とし、この交流磁場の励磁周波数と、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の励磁周波数とを異なる周波数とするものである。
【0018】
本発明の請求項5に係る流速測定方法は、前記請求項3に係る流速測定方法において、請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場を測定対象面に垂直な交流の磁場とし、この流速検出用交流磁場を、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の代りに用いて前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するものである。
【0019】
本発明の請求項6に係る流速測定装置は、移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁できるように配置された励磁手段と、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出するように配置された1つ以上の磁場検出手段と、前記励磁手段に励磁電流を供給して測定対象面に対し磁場を励磁し、前記1つ以上の磁場検出手段の検出信号に基づき測定対象物の流速を算出する測定手段とを有する流速測定装置において、前記1つ以上の磁場検出手段の検出位置と測定対象面との間の距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段の測定した距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記測定手段の算出した流速値を抽出する信号抽出手段とを備えて、この信号抽出手段が抽出した信号値を測定流速値とするものである。
前記請求項1及び本請求項6の流速測定方法及び装置によって、測定対象面に波立ちがあっても、安定して流速の測定が可能となる。
【0020】
本発明の請求項7に係る流速測定装置は、前記請求項6に係る流速測定装置における前記信号抽出手段が抽出した流速値に対して、この流速値の抽出時点における前記距離測定手段の測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行う補正手段を備え、この補正手段による補正後の値を測定流速値とするものである。
前記請求項2及び本請求項7の流速測定方法及び装置によって、測定対象面に波立ちがあっても、安定で、かつ精度の良い流速の測定が可能となる。
【0021】
本発明の請求項8に係る流速測定装置は、前記請求項6又は7に係る流速測定装置における前記距離測定手段は、前記励磁手段を包含する位置または励磁手段に包含される位置で、かつ前記測定対象面に対し垂直方向の交流の磁場を励磁するように配置された副励磁手段と、前記測定対象面と前記副励磁手段の間の第1の位置と、副励磁手段を中心として前記第1の位置と対称の第2の位置に、それぞれ測定対象面に対し垂直で互いに同じ向きの磁場を検出するように配置された2つの副磁場検出手段と、前記副励磁手段に交流の励磁電流を供給して前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、前記2つの副磁場検出手段の検出信号の差分信号のうち、前記副励磁手段の励磁磁場と同一の周波数成分の信号に基づき前記磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離を算出する副測定手段とからなるものである。
前記請求項3及び本請求項8の流速測定方法及び装置によって、流速測定用の磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離の極大又は極小のタイミングが精度良く検出でき、その結果正しいタイミングにおける流速値の抽出が可能となり、精度の良い流速測定が可能となる。
【0022】
本発明の請求項9に係る流速測定装置は、前記請求項8に係る流速測定装置において、前記測定手段は前記励磁手段に交流の励磁電流を供給して交流磁場を励磁し、前記副測定手段は前記測定手段が励磁手段に供給した励磁電流とは異なる周波数の励磁電流を前記副励磁手段に供給するものである。
前記請求項4及び本請求項9の流速測定方法及び装置によって、流速測定用の磁場検出信号と距離測定用の磁場検出信号との周波数成分が異なり、両信号間の干渉がなく両信号の分離が容易となるので、それぞれ安定して両信号の検出が可能となる。
【0023】
本発明の請求項10に係る流速測定装置は、前記請求項8又は9に係る流速測定装置において、前記励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ前記測定手段は前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、前記副励磁手段は前記励磁手段と兼用とし、前記副測定手段は交流の励磁電流を前記副励磁手段に供給する代りに、前記測定手段が前記励磁手段に供給する励磁電流に重畳させて供給するものである。その結果、請求項8又は9の副励磁手段を除去することができる。
【0024】
本発明の請求項11に係る流速装置は、前記請求項8又は10に係る流速測定装置において、前記励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ前記測定手段は前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、前記副励磁手段は除去し、前記副測定手段は、前記測定手段が前記励磁手段に供給する交流の励磁電流に基づく交流磁場を用いて、前記2つの副磁場検出手段が検出した2信号から前記磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離を算出するものである。
前記請求項5及び本請求項11の流速測定方法及び装置によって、副励磁手段を除去できるとともに、この副励磁手段を励磁するために使用していた励磁電流をも省略することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する前に、まず本発明の流速測定方法および装置の動作原理について説明する。
(1)流速測定原理
ここでは基本となる流速測定装置として、特願平8−255861号のような流速測定装置を用いた場合について説明する。
この装置は、図21のように、励磁装置として移動する導電性の測定対象物体の上に、対象面に対しその中心軸が垂直となるように1つの励磁巻線Pを配置し、磁場検出装置としてその励磁巻線Pと対象面の間に、2つの検出巻線S1 ,S2 を対象面および対象の移動方向にその中心軸が平行となり、かつ2つの検出巻線S1 ,S2 の中間点が励磁巻線Pの中心軸上にくるように配置したものである。
【0026】
ここで励磁巻線Pに交流の励磁電流を供給し、対象面に対し垂直な磁場を励磁する。すると、前述の速度効果による誘導磁場Bv が生じる。この誘導磁場Bv は、図3の(a),(b)のように励磁巻線Pの直下の検出巻線S1 ,S2 の位置では対象面に平行となっており、図3の(a)では、このBv を対象面に平行に配置した2つの検出巻線S1 ,S2 の和信号をとることで検出する。この検出したBv は測定対象の流速に対応しているので、これから測定対象の流速を測定することができる。
実際の測定装置では、検出巻線S1 ,S2 の出力信号をロックインアンプ等を用いて励磁電流と−90°ずれた位相の成分を検波し、流速測定の元となる流速元信号とする(本来は励磁磁場即ち励磁電流と同位相の磁場成分を検波するが、ここでは磁場の検出に検出巻線を用いており、検出巻線で検出する磁場と検出巻線の検出電圧とに−90°の位相差があるため、−90°ずれた位相成分を検波する)。
また前記速度効果による誘導磁場Bv は、前記2つの検出巻線S1 ,S2 を設けなくとも、図3の(b)のように、対象面に平行に配置した1つの検出巻線Sによっても検出することができる。即ち磁場検出手段は、1つ以上設ければよいことになる。
【0027】
(2)波立ちの影響対策
波立ちにより装置下の対象面が傾いていると、先述のようにこの流速元信号のオフセットが変化してしまう。しかし図4のように波の山、谷の部分では対象面の傾きはゼロであり、傾きによるオフセット変化分はゼロであるため、この山、谷部分の信号のみを用いれば対象面の傾き、即ち波立ちの影響を除外して、安定して流速を測定することができる(請求項1、6に対応)。
実際には何らかの方法でリフトオフを検出して、そのリフトオフ信号を時系列的に観測すれば、リフトオフが極小値となったタイミングが波の山の部分に相当し、極大値となったタイミングが波の谷の部分に相当するため、そのタイミングの流速元信号のみを取り出すようにすればよい。
【0028】
さらにリフトオフ極大、極小のタイミングはリフトオフ信号を微分すれば、その微分値がゼロクロスするタイミングを検知することで精度良く求めることができる。即ち微分値が正から負に変わるタイミングが極大のタイミングに相当し、微分値が負から正に変わるタイミングが極小のタイミングに相当する。
なお、こうして求めた、山、谷のタイミングでの流速元信号には、通常の波では山、谷の位置でリフトオフが異なるため、リフトオフにより一意に決まるオフセット変化分と流速感度変化分(対象面が平坦な場合と同じ)が残っており、リフトオフ信号とあらかじめ求めておく、リフトオフ・オフセット特性曲線、リフトオフ・流速感度特性曲線を用いて残りの変化分を補正すれば、対象の流速を求めることができる(請求項2、7に対応)。
【0029】
(3)リフトオフの検出
さらに本発明では、特願平8−255861号と同様、図21のように励磁巻線Pを含む励磁装置と対象面との間、およびそれと励磁装置を中心に対称な位置に、励磁装置と同軸に、対象面に対し垂直方向でそれぞれが同じ向きの磁場を検出するように2つの垂直方向検出巻線S3 ,S4 を配置し、2つの垂直方向の検出巻線の差分信号からリフトオフの検出を行う(請求項3,8に対応)。
ここで図3の(a)のように対象面に対し流速測定用の励磁巻線Pにより垂直に磁場が励磁されているので、この磁場により対象中に流れる渦電流Je によって、対象面に対し垂直な渦電流磁場Be が生じる。
この渦電流磁場Be は対象面との距離によって変化するので、この渦電流磁場Be を検出巻線S3 ,S4 で検出すれば、対象面との距離すなわちリフトオフを検出することができる。
【0030】
先に述べた波立ちの影響除外方法においては、流速測定用の検出装置に対して正確に測定対象面が水平となるタイミング、すなわち検出装置の直下を波の山、谷が通過するタイミングを求めることが重要となるが、ここで述べたようなリフトオフ検出方法を用いれば、リフトオフ検出用のセンサヘッドが流速測定用のセンサヘッドと一体となっているため、別途距離計を併設する場合に比べ、流速検出用の検出装置直下のリフトオフを正確に検出することができ、正確な山、谷の検出が可能となり、正確に波立ちの影響の除外が可能となる。
以上で本発明の流速測定方法及び装置の動作原理の説明を終えたので、次に本発明の実施形態について説明する。
【0031】
実施形態1
図1は本発明の実施形態1に係る流速測定装置の構成図であり、この装置は、図21に示すようなセンサヘッド1と、図1に示す流速測定回路30、リフトオフ測定回路50及び補正回路70とから構成される。
図1のセンサヘッド1は、図21の構成のように、移動する導電性の測定対象物の上に、この対象面に対しその中心軸が垂直となるように、セラミックス製丸パイプ2に巻いた励磁巻線Pを配置し、その励磁巻線Pと対象面との間に、セラミックス製の丸棒3に同じ向きに2つの流速検出用検出巻線S1 ,S2 を巻いたものを、その中心軸が測定対象面および測定対象の移動方向と平行で、かつ2つの検出巻線S1 ,S2 の中間点が励磁巻線Pの中心軸上にくるように配置し、さらに励磁巻線Pを巻いたセラミックス製丸パイプ2に対し、励磁巻線Pと測定対象との間に1つ、およびそれと励磁巻線Pを挟んで対称な位置に1つ、計2つリフトオフ検知用検出巻線S3 ,S4 を巻いたものである。
【0032】
流速測定回路30は、図1のように励磁回路10と、検出回路20からなる。励磁回路10は、励磁巻線Pに励磁電流を流し、測定対象に磁場を励磁するものであり、この回路は発振器11と、定電流アンプ12からなる。まず発振器11より1Hz〜1kHzの正弦波を発生させ、定電流アンプ12により一定の交流電流として、抵抗Rを介して励磁巻線Pに励磁電流を流す。ここでは励磁周波数は70Hzとした。
【0033】
流速検知用検出巻線S1 ,S2 からの出力信号は、検出回路20に入る。この検出回路20は、ブリッジ回路21、バンドパスフィルタ22及びロックインアンプ23よりなる。
ここで2つの検出巻線S1 ,S2 からの信号はまずブリッジ回路21で和信号が検出される。このブリッジ回路21はセンサヘッド周囲に磁性あるいは導電性のもの、あるいは電磁場を発生するものがない状態で、その出力信号がゼロとなるようにあらかじめ調節しておく。このようにすることで、2つの検出巻線S1 ,S2 で検出してしまう不要な励磁磁場信号をキャンセルするようにブリッジ回路21を調整できる。
その調整後の信号は、励磁回路10の励磁電流の周波数を中心周波数とする所定帯域幅のバンドパスフィルタ22により、不要帯域のノイズ信号をあらかじめ除去した後に、ロックインアンプ23によって、励磁回路10の励磁電流に対し−90°ずれた位相の成分が検波される。この−90°ずれた位相成分の検波のための基準位相(ref)信号が、発振器11からロックインアンプ23に供給される。そしてロックインアンプ23による検波後の信号が流速測定の元となる流速元信号である。
【0034】
またリフトオフ検知用検出巻線S3 ,S4 からの出力信号は、リフトオフ測定回路50に入る。このリフトオフ測定回路50は、ブリッジ回路51、バンドパスフィルタ52及びロックインアンプ53よりなる。
ここで2つの検出巻線S3 ,S4 からの信号はまずブリッジ回路51で差分が検出される。このブリッジ回路51はセンサヘッドの周囲に磁性あるいは導電性のもの、あるいは電磁場を発生するものがない状態で、その出力信号がゼロとなるようにあらかじめ調節しておく。
その調節後の信号は、励磁回路10の励磁電流の周波数を中心周波数とする所定帯域幅のバンドパスフィルタ52により、不要帯域のノイズ信号をあらかじめ取り除いた後に、ロックインアンプ53によって、励磁回路10の励磁電流に対し−180°ずれた位相の成分が検波される(本来は励磁磁場即ち励磁電流と−90°ずれた磁場成分を検波するが、ここでは磁場の検出に検出巻線を用いており、磁場と検出巻線の検出電圧とが−90°の位相差があるため、−180°ずれた位相成分を検波する)。このための基準位相信号が発振器11からロックインアンプ53に供給される。そしてロックインアンプ53による検波後の信号がリフトオフ検出の元となるリフトオフ元信号である。
【0035】
その後、流速測定回路30の出力信号である流速元信号と、リフトオフ測定回路50の出力信号であるリフトオフ元信号とは補正回路70に入る。この補正回路70は、A/D変換器71、コンピュータ72及びD/A変換器73よりなる。
補正回路70では、まずA/D変換器71により流速元信号とリフトオフ元信号をA/D変換し、コンピュータ72に取り込む。そして以下の処理はコンピュータ72上でソフトウェアにより行う。そのアルゴリズムを図5を用いて説明する。
【0036】
コンピュータ上では、まずリフトオフ元信号からリフトオフを演算する(図5の81を参照)。ここではあらかじめリフトオフを変えたときのリフトオフ元信号の変化の様子を測定しておき、このリフトオフ・リフトオフ元信号特性曲線(図5の82を参照)をもとにリフトオフ元信号からリフトオフを演算している。次に演算したリフトオフをもとに流速元信号から測定対象面の傾きの影響を除外する(図5の83を参照)。ここでは演算したリフトオフを微分し、そのゼロクロス点から対象面の波の山、谷に相当するタイミングを判定し、流速元信号からこのタイミングの信号値を取出す(図4を参照)。このタイミングに取出された信号が波立ちによる傾きの影響除外後の信号となる。
【0037】
続いて傾きの影響除外後の信号のリフトオフ変動補正を行う(図5の88を参照)。ここではまず、先に演算したリフトオフをもとに、渦電流磁場Be によるオフセット分を演算し、これを傾きの影響除外後の信号から差し引く(図5の84を参照)。ここではあらかじめリフトオフを変えたときの流速元信号に含まれるオフセットの変化の様子を測定しておき、このリフトオフ・オフセット特性曲線(図5の85を参照)をもとにリフトオフからオフセット分を演算している。次にオフセット分を差し引いた信号からリフトオフの変化に伴う流速感度変化分を補正し最終的な流速値を得る(図5の86を参照)。ここではあらかじめリフトオフを変えたときの流速感度(対象の流速が0m/secと、1m/secの時での流速元信号の変化量)の様子を測定しておき、このリフトオフ・流速感度特性曲線(図5の87を参照)をもとに、そのリフトオフでの流速感度を演算し、オフセット分を差し引いた流速元信号をこの演算した流速感度で割って補正を行っている。
【0038】
なお、ここで最終的に得られる流速値は、波の山、谷に相当するタイミングのみの離散的な値のみであるが、他の時刻についてはこのタイミングの値をホールドして流速値とすればよい。
このようにして測定対象面が平坦でなく波立ちがある場合にも、リフトオフ補正後に、高精度でかつ安定した流速値を測定することができる。なお、補正の確認試験結果については後述する。
また実施形態1においては、リフトオフ検出用の励磁磁場としては、流速検出用の励磁磁場(即ち励磁巻線Pに供給される励磁電流に基づく励磁磁場)を利用していることになる(請求項5及び11に対応)。従ってリフトオフ検出用の励磁手段を別途設けるものよりも励磁手段の数が少くてすむ。
【0039】
次に実施形態1以外の他の実施形態について説明する。
本発明の流速測定装置の構成として、実施形態1では、図21のセンサヘッドと図1の3つの回路による構成のものを用いて説明したが、磁場を用いて非接触で流速を測定する流速測定装置であれば、波立ちの影響は、すべて同じ様に生じるため、前記の特開平2−311766号公報、特開平5−297012号公報及び特開平8−211084号公報のような他の装置構成であっても、前述の波立ち補正方法が適用できる。
また実施形態1では、流速検出用とリフトオフ検出用の検出装置として、巻線を用いた例で説明したが、巻線でなくホール素子などの他の磁気センサであっても構わない。さらにセンサヘッドにおいて、励磁装置と、流速検出用検出装置と、リフトオフ検出用の検出装置を、いずれもセラミックス製のボビンに巻線を巻いた空心タイプのものを用いていたが、フェライト等の磁性体に巻線を巻いた磁心タイプのものを用いてもかまわない。
またリフトオフ検出方法としては、ここでは図21のような装置構成で説明したが、リフトオフが検出できればレーザーを用いるなど他の方式によるものでもかまわない。
【0040】
実施形態2
図6と7は、それぞれ本発明の実施形態2に係る流速測定装置の構成図である。
前記実施形態1では、センサヘッド1として、リフトオフ検出用の励磁磁場として流速検出用の励磁磁場を利用した例を用いて説明したが、本実施形態2では、リフトオフ検出用に図6の(a),(b)のように別途リフトオフ検出用励磁巻線Lを流速検出用の励磁巻線Pの上から、もしくは下に巻いてセンサヘッド1Aを構成する(請求項3,8に対応)。
そして図7のように、図1のリフトオフ測定回路50に発振器41と定電流アンプ42を追加したリフトオフ測定回路50Aを構成し、発振器41の出力を定電流化した定電流アンプ42の出力からリフトオフ検出用励磁巻線Lにリフトオフ検出用の励磁電流を供給して励磁している。なお、リフトオフ元信号を求める際にリフトオフ検出用の励磁周波数と同じ周波数で検波を行うため、発振器41の出力を基準位相信号としてロックインアンプ53へ供給している。
ここでリフトオフ検出用の周波数は流速検出用の周波数と同じでも異なっていてもかまわない。
なお2つの周波数を異ならせることにより、両信号間の干渉がなく両信号の分離が容易となるので、それぞれ安定した両信号の検出が可能となる(請求項4,9に対応)。
本実施形態2の構成による流速測定装置によっても、実施形態1の場合と同様に、測定対象面が波立つている場合にも、リフトオフ補正後に、高精度で安定した流速値を測定することができる。
【0041】
実施形態3
図8は本発明の実施形態3に係る流速測定装置の構成図である。
図8のリフトオフ測定回路50Bは、図1のリフトオフ測定回路50に発振器41を追加して構成される。
そして発振器41の出力と流速検出用の発振器11の出力とを加算して、その加算出力を流速検出用の定電流アンプ12に入力することで、2つの発振器の出力を足し合わせた信号を定電流化した励磁電流を流速検出用の励磁巻線Pに供給するようにしている(請求項10に対応)。
なお図7のように発振器41のほかに定電流アンプ42もリフトオフ測定回路50Bに追加し、定電流アンプ42の出力と流速検出用の定電流アンプ12の出力とを加算し、この加算電流を流速検出用の励磁巻線Pに供給するようにしてもよい。
さらにこの2つの場合において、リフトオフ検出用の励磁電流の周波数は、流速検出用の励磁電流の周波数と同じであっても、異なっていてもよい。
また2つの周波数を異ならせることによる効果は、前記実施形態2の場合と同様である。
【0042】
なお、前記各実施形態における測定対象面の傾きの影響の除外方法として、測定対象の波の山、谷双方向のタイミングの信号を取り出す方法について説明したが、山のタイミングのみ、あるいは谷のタイミングのみの信号を取り出してもよい。
さらに前各実施形態におけるリフトオフ補正処理は、コンピュータ上のソフトウェアで処理した例を示したが、ハードウェア(例えばアナログ回路等)を用いて処理するようにしてもよい。
【0043】
次に本発明の流速測定装置による波立ち補正の確認試験を行った結果について説明する。なお試験を行った装置は図1の実施形態1の構成のものを使用した。図9は波立ち模擬用試験装置の構成図を示すものであり、この試験装置は、SUS316製の円板を斜めに回転軸に固定して回転させ、その上に本流速測定装置のセンサヘッド1を配置して、波立ちをシミュレートしたものである。図9の(a)は正面からみた図、(b)は真上からみた図である。
試験手順は、まず流速測定装置を、周囲に磁性、導電性のもの、あるいは電磁場を発生するもののない場所に置き、流速測定装置の流速測定回路30中のブリッジ回路21及びリフトオフ測定回路50中のブリッジ回路51を調節し、続いて停止したSUS円板上に配置する。
次に円板を回転させ、しばらくおいて円板を止め、再び装置をSUS円板上から外し、周囲に磁性、導電性のもの、あるいは電磁場を発生するもののない場所に置いた。
【0044】
図10は図9の試験装置による波立ち補正の確認試験結果例を示す図である。
図10の(a)は円板の回転速度から求めた測定対象の速度を示している。なお、各図の横軸はそれぞれ時間(単位は秒)を示している。
図10の(b)はリフトオフを超音波距離計をもとに測定した値を示しており、(c)は本流速測定装置で演算したリフトオフの値を示しており、両者の波形はほぼ同一である。
図10の(d)は本流速測定装置の波立ち補正前の流速元信号を示しており、(e)は本流速測定装置で演算したリフトオフをもとに波の山、谷のタイミングのみを取り出した波立ちの影響除外後の信号を示している。
図10の(f)がさらに本発明のリフトオフ補正を行った後の本装置の最終出力である流速値である。
このように、波立ち補正前は、波による対象面の傾きの変化により流速値が大きく変化しているが、波立ち補正によりその変化が無くなり、対象の速度に対応した高精度の流速信号が得られ、かつ安定して速度の検出ができたことがわかる。
【0045】
図12は本流速測定装置の波立ち補正の確認試験を行ったもう一つの結果を示す図である。
ここでは低融点合金(ウッドメタル)を溶解し、図11のような長細い容器に入れ、容器の長手方向に本装置センサヘッド1の検出巻線の中心軸が平行となる(即ち本装置の流速検知方向と容器の長手方向が平行となる)ように、低融点合金の上に本装置を配置した。
ここで容器の片端に板を入れて動かし、低融点合金の湯面に波を発生させた。なお本試験では低融点合金の流速は零である。
この試験では、まず本装置を周囲に磁性、導電性のもの、あるいは電磁場を発生するもののない場所に置き、流速測定装置の流速測定回路30中のブリッジ回路21及びリフトオフ測定回路50中のブリッジ回路51を調節し、続いて低融点合金上に本装置のセンサヘッドを配置し、板で波を生成した。
なお、図12にはセンサヘッドを低融点合金上に配置した後の信号の様子のみを示した。
【0046】
図12の(a)はリフトオフを超音波距離計をもとに測定した値を示している。なお各図の横軸はそれぞれ時間(単位は秒)を示している。
図12の(b)は本流速測定装置で演算したリフトオフを示しており、(c)は本流速測定装置の波立ち補正前の流速元信号を示している。
図12の(d)は本装置で演算したリフトオフをもとに波の山、谷のタイミングのみを取り出した波立ちの影響除外後の信号を示しており、(e)がさらに本発明のリフトオフ補正を行った後の本装置の最終出力である流速値である。
このように、波立ち補正前では、波による対象面の傾きの変化により流速値が大きく変化しているが、波立ち補正によりその変化が無くなり、安定した信号が得られていることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁し、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出し、その検出した磁場信号から前記測定対象物の流速を算出する流速測定方法及び装置において、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記算出した流速値を抽出し、これを測定流速値とするようにしたので、測定対象面に波立ちがあっても、安定して流速の測定が可能となる。
【0048】
また本発明によれば、前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしはく極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点において前記算出した流速値から抽出された流速値に対して、前記測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行い、この補正後の値を測定流速値とするようにしたので、測定対象面に波立ちがあっても、安定でかつ精度の良い流速の測定が可能となる。
【0049】
また本発明によれば、前記流速検出用の励磁磁場とは別に距離測定のため、前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、測定対象面に対する垂直方向の交流の磁場を、測定対象面に対して垂直方向に所定距離を隔てた測定対象面上の2点でそれぞれ検出し、この検出した2つの磁場信号の差分値に基づき前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するようにしたので、流速測定用の磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離の極大又は極小のタイミングが精度良く検出でき、その結果正しいタイミングにおける流速値の抽出が可能となり、精度の良い流速測定が可能となる。
【0050】
また本発明によれば、前記流速検出用の励磁磁場を交流の磁場とし、この交流磁場の励磁周波数と、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の励磁周波数とを異なる周波数とするようにしたので、流速測定用の磁場検出信号と距離測定用の磁場検出信号との周波数成分が異なり、両信号間の干渉がなく両信号の分離が容易となるので、それぞれ安定して両信号の検出が可能となる。
【0051】
また本発明によれば、前記流速検出用の磁場を形成する励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ流速測定手段には前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、距離測定手段は距離検出用の磁場を形成するための交流の励磁電流を、前記流速測定手段が前記励磁手段に供給する励磁電流に重畳させて供給するようにしたので、距離検出用の磁場を形成する副励磁手段を除去することができる。
【0052】
また本発明によれば、前記流速検出用の励磁磁場を交流の磁場とし、この流速検出用交流磁場を、前記距離測定用の交流磁場としても利用して、前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定するようにしたので、距離測定用の磁場を形成する副励磁手段と、この副励磁手段を励磁するために使用していた励磁電流をも省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る流速測定装置の構成図である。
【図2】測定対象面の波立ちの影響の説明図である。
【図3】本発明における流速検出及びリフトオフ検出の原理説明図である。
【図4】本発明における波立ち補正の原理説明図である。
【図5】本発明における波立ち補正のアルゴリズムの説明図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るセンサヘッドの構成図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る流速測定装置の構成図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る流速測定装置の構成図である。
【図9】波立ち模擬用試験装置の構成図である。
【図10】図9の試験装置による波立ち補正の確認試験結果例を示す図である。
【図11】液体金属の波立試験容器を示す図である。
【図12】図11の試験容器による波立ち補正の確認試験結果例を示す図である。
【図13】連続鋳造の説明図である。
【図14】接触式による従来の高温液体金属の流速測定装置の説明図である。
【図15】磁場の速度効果及び渦電流の影響に関する説明図である。
【図16】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置(その1)の説明図である。
【図17】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置(その2)の説明図である。
【図18】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置(その3)の説明図である。
【図19】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置の測定原理説明図である。
【図20】従来の磁気を用いた高温液体金属非接触流速測定装置におけるリフトオフ検出方法の説明図である。
【図21】従来の磁気を用いた高温液体金属用非接触流速測定装置のセンサヘッドの構成図である。
【符号の説明】
1,1A センサヘッド
2 セラミックス製丸パイプ
3 セラミックス製丸棒
S,S1 ,S2 流速検出巻線
S3 ,S4 リフトオフ検出巻線
10 励磁回路
11,41 発振器
12,42 定電流アンプ
20 検出回路
21,51 ブリッジ回路
22,52 バンドパスフィルタ
23,53 ロックインアンプ
30 流速測定回路
50 リフトオフ測定回路
70 補正回路
71 A/D変換器
72 コンピュータ
73 D/A変換器
Claims (11)
- 移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁し、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出し、その検出した磁場信号から前記測定対象物の流速を算出する流速測定方法において、
前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記算出した流速値を抽出し、これを測定流速値とすることを特徴とする流速測定方法。 - 前記磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定し、この距離が極大となる時点、もしはく極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点において前記算出した流速値から抽出された流速値に対して、前記測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行い、この補正後の値を測定流速値とすることを特徴とする請求項1記載の流速測定方法。
- 請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場とは別に距離測定のため、前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、測定対象面に対する垂直方向の交流の磁場を、測定対象面に対して垂直方向に所定距離を隔てた測定対象面上の2点でそれぞれ検出し、この検出した2つの磁場信号の差分値に基づき前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定することを特徴とする請求項1又は2記載の流速測定方法。
- 請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場を交流の磁場とし、この交流磁場の励磁周波数と、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の励磁周波数とを異なる周波数とすることを特徴とする請求項3記載の流速測定方法。
- 請求項1に記載した流速検出用の励磁磁場を測定対象面に垂直な交流の磁場とし、この流速検出用交流磁場を、請求項3に記載した距離測定用の交流磁場の代りに用いて前記流速検出用の磁場の検出位置と測定対象面との間の距離を測定することを特徴とする請求項3記載の流速測定方法。
- 移動する導電性の測定対象物の表面に磁場を励磁できるように配置された励磁手段と、前記測定対象物の速度誘導磁場を検出するように配置された1つ以上の磁場検出手段と、前記励磁手段に励磁電流を供給して測定対象面に対し磁場を励磁し、前記1つ以上の磁場検出手段の検出信号に基づき測定対象物の流速を算出する測定手段とを有する流速測定装置において、
前記1つ以上の磁場検出手段の検出位置と測定対象面との間の距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段の測定した距離が極大となる時点、もしくは極小となる時点、または極大及び極小の両方の時点における前記測定手段の算出した流速値を抽出する信号抽出手段とを備えて、この信号抽出手段が抽出した信号値を測定流速値とすることを特徴とする流速測定装置。 - 前記信号抽出手段が抽出した流速値に対して、この流速値の抽出時点における前記距離測定手段の測定した距離に基づくオフセット補正及び流速感度補正を行う補正手段を備え、この補正手段による補正後の値を測定流速値とすることを特徴とする請求項6記載の流速測定装置。
- 前記距離測定手段は、
前記励磁手段を包含する位置または励磁手段に包含される位置で、かつ前記測定対象面に対し垂直方向の交流の磁場を励磁するように配置された副励磁手段と、
前記測定対象面と前記副励磁手段の間の第1の位置と、副励磁手段を中心として前記第1の位置と対称の第2の位置に、それぞれ測定対象面に対し垂直で互いに同じ向きの磁場を検出するように配置された2つの副磁場検出手段と、
前記副励磁手段に交流の励磁電流を供給して前記測定対象面に対し垂直な交流の磁場を励磁し、前記2つの副磁場検出手段の検出信号の差分信号のうち、前記副励磁手段の励磁磁場と同一の周波数成分の信号に基づき前記磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離を算出する副測定手段とからなることを特徴とする請求項6又は7記載の流速測定装置。 - 前記測定手段は前記励磁手段に交流の励磁電流を供給して交流磁場を励磁し、前記副測定手段は前記測定手段が励磁手段に供給した励磁電流とは異なる周波数の励磁電流を前記副励磁手段に供給することを特徴とする請求項8記載の流速測定装置。
- 前記励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ前記測定手段は前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、前記副励磁手段は前記励磁手段と兼用とし、前記副測定手段は交流の励磁電流を前記副励磁手段に供給する代りに、前記測定手段が前記励磁手段に供給する励磁電流に重畳させて供給することを特徴とする請求項8又は9記載の流速測定装置。
- 前記励磁手段が測定対象面に励磁する磁場を測定対象面に対し垂直方向とし、かつ前記測定手段は前記励磁手段に供給する励磁電流を交流とし、前記副励磁手段は除去し、前記副測定手段は、前記測定手段が前記励磁手段に供給する交流の励磁電流に基づく交流磁場を用いて、前記2つの副磁場検出手段が検出した2信号から前記磁場検出手段の位置と測定対象面との間の距離を算出することを特徴とする請求項8又は10記載の流速測定装置。
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JPH11201980A JPH11201980A (ja) | 1999-07-30 |
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- 1998-01-13 JP JP00495798A patent/JP3546288B2/ja not_active Expired - Fee Related
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