JP2017035059A - 焼成食品の製造方法、焼成食品及び焼成食品生地 - Google Patents

焼成食品の製造方法、焼成食品及び焼成食品生地 Download PDF

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Abstract

【課題】一定品質の焼成食品を簡便かつ安定的に製造することのできる焼成食品の製造方法、焼成食品及び焼成食品生地の提供。
【解決手段】小麦粉及び対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を混合して懸濁液とし、対小麦粉当たり5〜30重量%以下の味噌、醤油及び粉末だしからなる群より選択される少なくとも1つがさらに添加される該懸濁液を、100〜130℃の温度で、30分間〜2時間加熱して添加用生地を調製する工程と、前記添加用生地を用いて最終生地を調製する工程と、を含む焼成食品の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、焼成食品の製造方法、焼成食品及び焼成食品生地に関する。
近年、パン製法の一つとして、湯種製パン法が普及している。湯種製パン法で用いられる“湯種”には、小麦粉と熱湯とを混捏して調製された湯種と、小麦粉に温水を添加し加温しながら混捏して調製された湯捏種と、が含まれる。湯種製パン法では、湯種を調製し、必要に応じて混捏後の湯種のあら熱を除去した後、湯種に小麦粉、イースト、食塩、糖類、水等の原料を加えて混捏することでパン類生地を作成し、発酵後、焼成を行う。湯種の調製時に、一時的に小麦粉中の澱粉が膨潤し、糊化温度以上にさらされるため、小麦澱粉の一部が膨潤、糊化して、水を吸水している状態となっている。このため、この製法で得られたパンは、柔らかく、もちもちとした食感を有し、保存中のパンの老化が遅く、独特の風味を示す。
湯種製パン法に関する技術として、いくつか提案がされている。
特許文献1には、全量100重量部の小麦粉のうち10〜30重量部を1.0〜2.5倍の水により糊化した後、残部の小麦粉を添加・混合することを特徴とするパンの製造法が記載されている。
特許文献2には、小麦粉に対して熱水を加えて混捏して中間生地を調製する工程と、この中間生地を−5℃以上15℃以下の範囲で2時間以上保存する工程と、保存後の中間生地に小麦粉を加えて混捏する工程、とを備えるパン類の製造方法が記載されている。
特許文献3には、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と40〜65℃の温水とを該温水の温度以上の捏上温度になるまで、又は55〜70℃の捏上温度になるまで、加温しながら混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、この湯捏種を用いてパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備え、このパン類生地からパン類を製造する方法が記載されている。
特許文献4には、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と40〜65℃の温水とを該温水の温度以上の捏上温度になるまで、又は55〜70℃の捏上温度になるまで、加温しながら混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、この湯捏種を用いてパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備え、このパン類生地からパン類を製造する方法が記載されている。
特許文献5には、少なくとも小麦粉と水とを加えて攪拌する過程で上記原料に水蒸気を吹き込むことを特徴とする湯捏種の製造方法が記載されている。
特開昭59−156236号公報 特開2000−262205号公報 特開2003−9758号公報 特開2004−105195号公報 特開2004−123号公報
しかしながら、特許文献1−5に記載の方法では、小麦粉と熱湯又は温水とを短時間で混捏するため、湯種の調製過程における温度コントロールが非常に難しく、一定品質の湯種を調製すること、ひいては一定品質のパンを安定的に製造することが困難であった。また、湯種の調製過程において、小麦粉中のグルテンの一部変性、澱粉の一部糊化等によって湯種がゲル化し、製パン生地の製パン性が低下する場合があった。また、湯種に使用する熱湯又は温水の量が、小麦粉量に対して十分でない場合、湯種中の澱粉の均一かつ十分な膨潤及び糊化が進行せず、一定品質の湯種を調製するのが困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、一定品質の焼成食品を簡便かつ安定的に製造することのできる焼成食品の製造方法、焼成食品及び焼成食品生地を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る焼成食品の製造方法は、
(a)小麦粉及び対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を混合して懸濁液とし、該懸濁液を100℃以上の温度で30分間以上加熱して添加用生地を調製する工程と、
(b)前記添加用生地を用いて最終生地を調製する工程と、
を含む。
例えば、前記工程(a)において、前記懸濁液に、対小麦粉当たり5重量%以上30重量%以下の味噌、醤油及び粉末だしからなる群より選択される少なくとも1つがさらに添加される。
例えば、前記工程(a)において、加熱温度は100〜130℃である。
例えば、前記工程(a)において、加熱時間は30分間〜2時間である。
例えば、前記工程(b)において、前記添加用生地は、前記最終生地中の小麦粉100重量部に対して、前記添加用生地中の小麦粉2〜10重量部の量で配合される。
例えば、前記工程(b)において、前記添加用生地は、前記最終生地中の小麦粉100重量部に対して、前記添加用生地中の小麦粉3〜8重量部の量で配合される。
例えば、前記工程(a)において、水は、対小麦粉当たり400〜800重量%の量で混合される。
例えば、前記工程(a)において、調製された前記添加用生地は、低温中で保存される。
例えば、前記工程(a)において、調製された前記添加用生地は、−3〜10℃で12〜72時間保存される。
例えば、前記最終生地は、低アミロース小麦品種由来の小麦粉を含む。
本発明の第2の観点に係る焼成食品は、
本発明の第1の観点に係る焼成食品の製造方法によって製造される。
本発明の第3の観点に係る焼成食品生地は、小麦粉及び対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を混合した懸濁液を、100℃以上の温度で30分間以上加熱することで得られた添加用生地を含む。
本発明によれば、一定品質の焼成食品を簡便かつ安定的に製造することのできる焼成食品の製造方法、焼成食品及び焼成食品生地を提供することができる。
実施例Aの製パン実験の製パン配合及び結果を示す図である。 実施例Bの製パン実験の製パン配合及び結果を示す図である。 実施例Cの製パン実験の製パン配合及び結果を示す図である。
(1.焼成食品の製造方法)
まず、本発明による焼成食品の製造方法について詳細に説明する。
本発明による焼成食品の製造方法は、
(a)小麦粉及び対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を混合して懸濁液とし、該懸濁液を100℃以上の温度で30分間以上加熱して添加用生地を調製する工程と、
(b)添加用生地を用いて最終生地を調製する工程と、
を含む。
本明細書において、工程(a)で調製される「添加用生地」を、「炊き種生地」と称する場合がある。
本明細書において、「焼成食品」には、焼成することにより製造されるパン類、例えば、食パン、菓子パン、ロールパン、フランスパン等の他、ドーナツ(発酵ドーナツを含む)、蒸しパン等も包含される。本明細書における「焼成食品」は、少なくとも小麦粉と水とを使用して得られる生地を加熱して得られるものをすべて包含し、特に限定はされない。
工程(a)及び(b)において用いられる小麦粉(添加用生地に用いられる小麦粉も含む)は、小麦を加工して得られる小麦粉であれば特に制限なく用いることができ、国産小麦由来の小麦粉及び外国産の小麦由来の小麦粉のいずれも用いることができる。より柔らかく老化の遅いパンを得るために、低アミロース小麦品種由来の小麦粉を用いてもよい。ここで、低アミロース小麦品種は、例えば、Wx−B1タンパク質を欠失しており、アミロース含量がやや低い小麦品種・系統であり、ハルユタカ、春のあけぼの、はるひので、春よ恋、はるきらり、キタノカオリ、ゆめちから、きたほなみ、ホクシン、つるきち等の品種を例示することができる。
工程(a)は、小麦粉に、対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を加え、100℃以上の温度で30分間以上加熱して添加用生地を調製する工程である。このように、小麦粉に十分量の水を加え高温で長時間加熱することで、添加用生地においては、小麦粉中の大部分(又はすべて)の澱粉が糊化し、一部は糖化している状態であると考えられる。添加用生地においてはグルテンが完全変性しているため、最終生地のグルテンネットワークには関与しないと考えられる。一方、従来の湯種においては、糊化の程度が低く、糊化されずに残った生デンプンが最終生地のグルテンネットワークに関与することが知られている。
前記工程(a)において、水は、(懸濁液中)対小麦粉当たり400〜1000重量%の量で混合される。水の量が対小麦粉当たり400重量%より少ないと、添加用生地中の小麦粉澱粉の糊化及び糖化が十分に進行しないとともに、均一な添加用生地が得られない場合がある。水の添加量は、好ましくは対小麦粉当たり400〜800重量%、さらに好ましくは対小麦粉当たり500〜800重量%であり、この範囲内では、添加用生地中の小麦粉澱粉を確実に完全糊化及び一部糖化させ、かつ、添加用生地の組成を全体的に均質化することができる。
前記工程(a)において、加熱温度は100℃以上である。加熱温度が100℃より低いと、添加用生地独特の良風味が減弱する場合がある。加熱温度は、添加用生地独特の良風味を最大限に引き出す観点から、好ましくは100〜130℃である。
前記工程(a)において、加熱時間は30分間以上である。加熱時間が30分間より短いと、添加用生地中のグルテンの変性、澱粉の糊化及び糖化が不十分となる場合がある。加熱時間は、添加用生地中のグルテンの変性、澱粉の糊化、糖化を十分に進行させ、かつ、添加用生地独特の良風味を最大限に引き出す観点から、好ましくは30分間〜2時間、さらに好ましくは40〜60分間である。
前記工程(a)における「加熱」の方法は、添加用生地の調製に適したすべての加熱方法を含むものであり、例えば、家庭用炊飯器による加熱、オートクレーブによる加熱、加熱器(家庭用ガスコンロ、IHヒーター等を含む)による加熱などの方法が例示される。
工程(a)において、小麦粉及び水の他、原材料として、必要に応じて、塩、砂糖、脱脂粉乳、米粉等の副材料が加えられるが、アミノ酸を含有する食品をさらに加えてもよい。アミノ酸を含有する食品としては、例えば、味噌、醤油、粉末だし、みりん等が例示される。味噌としては、例えば、赤味噌、白味噌、米味噌、豆味噌、麦味噌等のあらゆる種類の味噌を用いることができ、醤油としては、例えば、こいくち醤油、うすくち醤油、たまり醤油、さいしこみ醤油、しろ醤油等のあらゆる種類の醤油を用いることができ、粉末だしとしては、例えば、市販の粉末だし調味料、かつお節を粉末状にしたもの等を用いることができる。このようなアミノ酸を含有する食品を加えた添加用生地を用いることで、風味に優れた焼成食品を得ることができ、また、保存後の風味、食感にも優れた焼成食品を得ることができる。また、アミノ酸を含有する食品として、味噌、醤油、粉末だし、みりん等を単独で用いてもよく、2又は3種以上を組み合わせて用いてもよい。アミノ酸を含有する食品は、例えば、(添加用生地中)対小麦粉当たり5重量%以上30重量%以下の量で添加用生地に加えられる。なお、アミノ酸を含有しており、焼成食品の風味に悪影響を与えない食品であれば適宜用いることができる。
本発明による焼成食品の製造方法は、工程(b)として、工程(a)で得られた添加用生地を用いて最終生地を調製する工程を含む。
工程(b)で得られる「最終生地」とは、本明細書において、工程(a)で得られた添加用生地を用いて調製することで得られる生地であり、焼成食品製造過程において、「最終生地」を最終発酵させ、焼成する、揚げる、蒸す等して焼成食品を完成させることができる。
前記工程(b)において、工程(a)で調製された添加用生地は、所望の特性(例えば、柔らかくソフトな口当たりである等)を有する焼成食品を得ることができるように、最終生地に任意の量で配合させることができるが、添加用生地独特の良風味を最大限に引き出し、かつ、良好な腰持ち及び粘着性を保ち焼成食品の機械耐性を一定以上に高める観点から、最終生地中の小麦粉100重量部に対して、好ましくは、前記添加用生地中の小麦粉2〜10重量部の量(添加用生地で使用する小麦粉量が、最終生地で使用する全小麦粉量の内2〜10重量%である)で配合され、より好ましくは、前記添加用生地中の小麦粉3〜8重量部の量(添加用生地で使用する小麦粉量が、最終生地で使用する全小麦粉量の内3〜8重量%である)で配合される。
前記工程(b)において、調製直後の添加用生地を用いて最終生地を調製してもよく、又は、調製後一定時間経過後の添加用生地を用いて最終生地を調製してもよく、又は、調製された添加用生地を均一に撹拌後に低温中で保存してから最終生地の調製に用いてもよい。添加用生地を低温中で保存することで、生地全体における均一な水和が進行し、添加用生地の組成を全体的に均質化するができるとともに、添加用生地中の過剰な澱粉の糊化及び糖化を防止でき、さらには焼成食品の製造工程における最適捏上温度への温度調整を容易にすることができる。なお、低温中での保存条件については、焼成食品の製造効率の観点から、好ましくは−3〜10℃で12〜72時間である。なお、調製後の添加用生地を例えばジャッケット付冷却装置等で急激に冷却してから低温中で保存してもよく、調製後の添加用生地を例えば冷蔵庫等に入れて徐冷してもよい。
工程(b)において、添加用生地を用いて最終生地を調製する方法については、特に限定されず、例えば、直捏法、中種法、再捏法、冷凍生地製パン法、冷蔵生地製パン法等の方法を例示することができる。以下、本発明の代表的な実施形態に係る直捏法(ストレート法)及び中種法によるパン類の製造方法について説明するが、本発明は以下説明する実施形態に何ら限定されるものではない。
まず、本発明の代表的な一実施形態である直捏法(ストレート法)によるパン類の製法について説明する。本製法は、少なくとも全小麦粉量のうちの一部の小麦粉と水とを混合して懸濁液を作成し、加熱して添加用生地(炊き種生地)を作成する炊き種生地作成工程(1−1)と、炊き種生地作成工程後に、炊き種生地を混合して均質化し炊き種生地を低温でねかせて熟成させる生地熟成工程(1−2)と、炊き種生地及び少なくとも残量の小麦粉、全量のイースト及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程(1−3)と、パン類生地を発酵し、分割して丸めを行ない、ベンチタイムをとって、ガス抜きや成形を行なってから最終発酵をとるパン類生地発酵工程(1−4)と、このパン類生地を焼成する焼成工程(1−5)と、を包含する。以下、各工程について詳しく説明する。
(1−1)炊き種生地作成工程
この炊き種生地作成工程では、少なくとも全小麦粉量のうちの一部の小麦粉と水とを混合し懸濁液を作成後、100℃以上で、30分間以上加熱して炊き種生地を作成する。小麦粉の他に、味噌、醤油、粉末だし、みりん、食塩、砂糖、脱脂粉乳、米粉等を任意に適宜量、添加してもよい。これにより、風味、物性等の異なる炊き種生地の作成が可能である。
(1−2)熟成工程
作成された炊き種生地は、混合し均一化した後、その後低温でねかせて熟成させる。炊き種生地を、好ましくは−3〜10℃で24〜72時間ねかせて熟成させる。
(1−3)パン類生地作成工程
次に、炊き種生地と、少なくとも残量の小麦粉、全量のイースト及び水からなる原料と、を混捏してパン類生地を作成する。このとき、炊き種生地、残量の小麦粉、全量のイースト、水等からなる原料を一緒にミキサーに投入して一度に混捏することができる。このパン類生地を作成するにあたり、炊き種生地に使用された小麦粉及び水以外で使用する小麦粉及び水の量は、生地に添加する炊き種生地中の小麦粉及び水の量を基本的に全体使用量から差し引いた残りの量である。また、イーストの量は常法のストレート法における量を添加することが可能である。また、このパン類生地を作成するときには、これ以外に、イーストフード、酸化剤、生地改良剤、乳化剤、糖類、塩、脱脂粉乳、油脂、乳製品等を適宜使用することが可能である。
(1−4)パン類生地発酵工程
得られた上記のパン類生地を一定時間発酵する。発酵条件(一次発酵)は、通常のストレート法の発酵条件(時間、温度、湿度)が適当である。一次発酵終了後、生地の分割、丸めを行ない、その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや成形を行なってから最終発酵を行う。
(1−5)焼成工程
次に、最終発酵後のパン類生地を焼成する。焼成後のパン類においては、従来の湯種パンに比べ、炊き種生地中のグルテンが完全に変性し、小麦澱粉の完全糊化、部分的糖化が均一に促進されるため、湯種パンでの湯種添加量に比べ炊き種生地の添加量を低減させつつ同様以上の効果を発揮できる。より具体的には、得られるパン類の体積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりした柔らかさを実現できるとともに保存経時の老化を飛躍的に抑制できる。また、炊き種生地中の均一な澱粉の完全糊化、部分的糖化が進行しているため、パンのモチモチ感、さっくり感等がより良好となり、炊き種生地独特の良好なご飯の様な風味を呈する。また、簡便に一定品質の安定した炊き種生地を作成することが可能であるため、これを用いて製造するパン類の上記品質の安定性が飛躍的に向上する。
次に、本発明の代表的な一実施形態である中種法によるパン類の製法について説明する。本製法は、少なくとも全小麦粉量の一部の小麦粉と水を混合し懸濁液を作成した後、加熱処理して添加用生地(炊き種生地)を作成する炊き種生地作成工程(2−1)と、炊き種生地作成工程後に、炊き種生地を混合して均一化し、低温でねかせて熟成させる生地熟成工程(2−2)と、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉、全量のイースト又は常法において中種に通常添加する標準量のイースト、イーストフード及び水を混捏して中種生地を作成する中種生地作成工程(2−3)と、この中種を発酵させる中種生地発酵工程(2−4)と、炊き種生地、発酵した中種生地、少なくとも残量の小麦粉及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程(2−5)と、作成したパン類生地を発酵し、分割して丸めを行ない、ベンチタイムをとって、ガス抜きや成形後最終発酵をとるパン類生地発酵工程(2−6)と、このパン類生地を焼成する焼成工程(2−7)と、から構成される。以下の各工程について詳細に説明する。
(2−1)炊き種生地作成工程、(2−2)熟成工程
上述の直捏法(ストレート法)によるパン類の製法と同様の条件で調製される。
(2−3)中種生地作成工程
少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉、全量のイースト又は常法において中種に通常添加する標準量のイースト、イーストフード及び水からなる原料を混捏して中種を作成する。この工程で使用する小麦粉量については、パン類生地を構成する全小麦粉量のうち30重量%以上、より好ましくは50重量%〜80重量%の小麦粉を使用する。
(2−4)中種生地発酵工程
上記のようにして中種生地を作成した後、該生地を発酵させる。通常の中種生地の発酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができる。
(2−5)パン類生地作成工程
次に、炊き種生地、発酵終了後の中種生地と、少なくとも残量の小麦粉及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成する。
(2−6)パン類生地発酵工程
このパン類生地を所定時間発酵する。発酵は、常法の中種法の発酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができる。ここでは、フロアタイムの間発酵後、生地を分割して丸めを行ない、その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや成形を行なってから最終発酵を行う。
(2−7)焼成工程
次に、最終発酵後の上記パン類生地を焼成する。焼成後のパン類においては、従来の湯種パンに比べ、炊き種生地中のグルテンが完全に変性し、小麦澱粉の完全糊化、一部糖化が均一に促進されるため、湯種パンでの湯種添加量に比べ炊き種生地の添加量を低減させつつ同様以上の効果を発揮できる。より具体的には、加熱によりグルテンが完全変性し、炊き種生地中のグルテンがグルテンネットワーク形成に関与しないため、得られるパン類の比容積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりした柔らかさを実現できるとともに保存経時の老化を飛躍的に抑制できる。また、炊き種生地中の澱粉の糊化、糖化を伴う低分子化が均一に完全に進行しているため、パンのモチモチ感、さっくり感等がより良好となり、炊き種生地独特の良好な風味を呈する。また、簡便に一定品質の安定した炊き種生地を作成することができるため、これを用いて製造するパン類の上記品質の安定性が飛躍的に向上する。さらに、炊き種生地と予め作成した中種と、残量の小麦粉及び水等からなる原料を混捏することにより、炊き種生地を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、粘着性も少なく適度な特性の生地の調製が可能になる。これにより、パン類生地は、通常の中種法生地と同様の機械耐性を有し、得られたパンは比容積が大きく、腰持ちが良くなる。したがって、総合的に優れた高品質のパンを、大量機械製パンにおいても安定的に生産することが可能である。
上記に添加用生地(炊き種生地)を用いた製パン法の代表例について説明した。炊き種生地の効果は、炊き種生地をそのまま保存する場合に、より顕著に現れるが、この炊き種生地に、さらに小麦粉や、その他のパン生地構成材料を添加し混合したパン生地を当然利用することもできる。得られた炊き種生地をそのまま保存するか、あるいは、炊き種生地に他の材料を混ぜてパン生地とした後に熟成のため保存するかは、必要に応じて選択できる。例えば、炊き種生地に、さらに他の材料を加えて直捏法における本捏工程後の生地とした後に、熟成保存工程に移行させることもできる。また、炊き種生地に、他の材料を加えて中種法における本捏工程後の生地とした後に、熟成保存工程に移行させることもできる。また、中種法においては、炊き種生地に他の材料を加えて中種生地とした後に、熟成保存工程に移行させることもできる。
(2.焼成食品生地)
本発明による焼成食品生地は、小麦粉及び対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を混合した懸濁液を、100℃以上の温度で30分間以上加熱することで得られた添加用生地を含む。用いられる小麦粉、加水量、加熱温度、加熱時間、添加用生地等の詳細については、各々、前述同様である。
(3.焼成食品)
本発明による焼成食品は、本発明による焼成食品の製造方法によって製造される。本発明による焼成食品には、本発明による焼成食品生地を用いて製造される焼成食品であれば特に限定されず包含される。焼成食品の種類、焼成食品の製造方法、焼成食品生地等については、前述同様である。
以上説明したように、本発明の焼成食品の製造方法では、添加用生地の調製において、小麦粉に水を加え高温で長時間加熱するため、温度コントロールが容易であり、また、小麦粉に十分量の水を加えて加熱するため、小麦粉と水とが良好に混和され、多量の水が澱粉に吸収されて澱粉の均一かつ十分な膨潤及び糊化が進行し、生地のゲル化は生じにくい。このため、簡便に一定品質の焼成食品生地を安定的に得ることができ、ひいては一定品質の焼成食品を安定的に製造することが可能である。
また、本発明の焼成食品の製造方法によれば、最終生地への添加用生地の添加量が、湯種製法に比して非常に少量であるため、例えばパン類を製造する場合、最終生地の製パン性(ハンドリング等)を著しく向上させることが可能になり、また、最終生地の組成を全体的に均質化することができる。このため、食感、風味、外観、体積等の点で非常に優れた、高品質の焼成食品を安定的に製造することができる。
また、本発明の焼成食品の製造方法によれば、従来の湯種を用いた焼成食品に比べ柔らかく、もっちり感及びさっくり感の両方の特性を有し、かつ、経時的な老化が遅い焼成食品を得ることができる。また、本発明の焼成食品の製造方法によって得られた焼成食品は、例えば炊いたご飯のような、従来法では得られなかった独特の良風味を呈し、格段に優れた風味を有する。これは、添加用生地において小麦粉中の大部分(又はすべて)の澱粉が糊化し、一部は糖化している状態であり、グルテンが完全変性していることに起因すると予想される。特に、添加用生地中の澱粉が糊化し多量の水を吸収しているため、老化の進行が極めて緩やかであり、室温で保存した後でも焼成食品の柔らかさが維持される。
また、国産の低アミロース小麦品種を本発明の焼成食品の製造方法に用いることで、従来の外国産小麦粉(市販小麦粉)を用いた場合に比べ、格段に良好な品質の焼成食品を製造することが可能となる。これにより、国産小麦を用いた焼成食品(パン類等)の需要拡大や品質良好な焼成食品(パン類等)の安定生産への多大な寄与が期待できる。
また、本発明の焼成食品の製造方法によれば、添加用生地の調製において、大がかりな加熱装置は不要であるため、設備投資を行う必要がなく、低コストかつ簡便に焼成食品生地及び焼成食品を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、図1−3において、配合における各原料の数値は、小麦粉100重量部に対する値として示される。
(実施例A)
本実施例では、ストレート法によって山型食パンを製造した。下述の炊き種生地調製、生地熟成保存、本捏、発酵、焼成工程の条件下で、製パン実験を行った。なお、比較例として、従来法による2種の湯種生地を用いた同条件下での製パン実験も行った。
1)炊き種生地及び湯種生地(比較例)の調製条件
製パン実施例1−2で用いる炊き種生地1−2及び比較例1−2で用いる湯種生地1−2を、以下の通り調製した。
・炊き種生地1:炊飯器の釜に小麦粉(市販外麦強力粉)100部、水500部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後、調製した生地(懸濁液)の入った炊飯器をおかゆモードに設定し、100〜102℃で50分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
・炊き種生地2:炊飯器の釜に小麦粉(市販外麦強力粉)100部、水800部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後、調製した生地(懸濁液)の入った炊飯器をおかゆモードに設定し、100〜102℃で50分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
・湯種生地1:小麦粉100部をミキサーボールに入れ、98℃に加温しておいた熱水100部を小麦粉を混捏しながら徐々に添加し、5分間混捏し湯種生地を調製した。
・湯種生地2:小麦粉100部をミキサーボールに入れ、50℃に加温しておいた温水100部を小麦粉を混捏しながら徐々に添加し、混捏と同時にミキサーボールを85度前後の熱水で加熱し、5分間混捏後の生地温度が63℃前後になるようにして湯種生地を調製した。
2)生地熟成保存条件
上記の炊き種生地1−2及び湯種生地1−2(比較例)を、いずれも5℃の冷蔵庫で15時間保存することで生地熟成を行った。
3)本捏生地調製条件
熟成保存後の炊き種生地1−2及び湯種生地1−2(比較例)を用いて、表1の配合で、小型のピン型ミキサーによって最適時間ミキシングを行い、本捏生地を調製した。
なお、製パン実施例1では、炊き種生地1は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地1中の小麦粉8重量部の量で配合されている。
また、製パン実施例2では、炊き種生地2は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地2中の小麦粉8重量部の量で配合されている。
また、比較例1では、湯種生地1は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、湯種生地1中の小麦粉20重量部の量で配合されている。
また、比較例2では、湯種生地2は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、湯種生地2中の小麦粉20重量部の量で配合されている。
・本捏生地ミキシング条件・捏上温度
表1の全原料をミキサーボールに入れ、以下の条件でミキシングを行った。ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った。
捏上温度:27℃
4)発酵、焼成条件
次いで、以下の条件で、常法により発酵、焼成して山型食パンを製造した。
第一発酵時間:30℃、70分
分割、丸目:生地量100gずつ手分割、丸目
ベンチタイム:30℃、15分
成形:モルダーにて成形し、パン型に入れる
最終発酵:38℃、湿度85%、60分
焼成:180℃、25分
製パン評価については、5人のパネラーによる製パン時生地状態、外観、内相、食感、風味、見た目の体積により行った。なお、外観、内相、食感、風味、見た目の体積の評価は、1時間常温で冷却したパンについて行った。保存後のパンの老化の評価として、ポリエチレン袋中で20℃で保存したパンについて、食感、風味の評価(2日後)とクラム部分の硬さ(2日後)の評価を行った。パンの硬さは、山型食パンを2cmにスライスし、中央部の合計3枚のパン片のクラムの中央を3cm×3cmにカットし、そのカットクラムを半分の厚さまで1mm/sのスピードで圧縮した時の最大応力によって評価した。パン3枚の数値の平均値をデータとして示した。
結果を図1に示す。製パン実施例1−2の製パン性は、同量の湯種生地を用いた比較例1−2の生地に比べて総合的に良好な結果を示し、生地の分割、成形時の状態、パンの外観、内相、食感、風味の総合的評価が高く、良好な体積を示した。また、保存後の老化の評価においても、比較例1−2に比べて製パン実施例1−2のパンは明らかに食感、風味が良好でモチモチでさっくりした食感を維持しており、硬さのデータについても同等かそれ以上のソフトさを有するという結果を示した。
以上の結果から、本実施例の製パン法では、炊き種生地の少量の添加によって、製パン性を低下させることなく、従来の湯種法によるパンよりも高品質のパンを容易に製造できることが明らかになった。また、本実施例によるパンは、保存中の老化も非常に遅く、炊き種生地の独特のご飯のような良好な風味とモチモチ、さっくり、しっとり食感が、保存中、長い時間にわたって維持されることがわかった。
(実施例B)
本実施例では、ノータイム法によってバターロールを製造した。下記の炊き種生地調製、生地熟成保存、本捏、発酵、焼成工程の条件下で製パン実験を行った。なお、比較例として、従来法による2種の湯種生地を用いた同条件下での製パン実験も行った。
1)炊き種生地及び湯種生地(比較例)の調製条件
製パン実施例3−6で用いる炊き種生地3−6を以下の通り調製した。なお、比較例3では実施例Aと同様の湯種生地1を用い、比較例4では実施例Aと同様の湯種生地2を用いた。
・炊き種生地3:炊飯器の釜に小麦粉100部、水600部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後、調製した生地(懸濁液)の入った炊飯器をおかゆモードに設定し、100〜102℃で40分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
・炊き種生地4:ステンレス容器に小麦粉100部、水600部、味噌(調合みそ味噌蔵めぐり、赤出し、合資会社八丁味噌製)20部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後調製した生地(懸濁液)をオートクレーブ用の密閉ガラス容器に入れ、オートクレーブで120℃、40分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
・炊き種生地5:ステンレス容器に小麦粉100部、水600部、醤油(こいくちしょうゆ(本醸造)(しぼりたて丸大豆本醸造生しょうゆ)、キッコーマン食品株式会社販売)30部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後調製した生地(懸濁液)をオートクレーブ用の密閉ガラス容器に入れ、オートクレーブで120℃、40分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
・炊き種生地6:ステンレス容器に小麦粉100部、水600部、粉末だし(品名:風味調味料(ほんだし、こんぶだし、和風だしの素)、味の素株式会社販売)10部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後調製した生地(懸濁液)をオートクレーブ用の密閉ガラス容器に入れ、オートクレーブで120℃、40分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
2)生地熟成保存条件
上記の炊き種生地3−6及び湯種生地1−2(比較例)を、いずれも0℃の冷蔵庫で24時間保存することで生地熟成を行った。
3)本捏生地調製条件
熟成保存後の炊き種生地3−6及び湯種生地1−2(比較例)を用いて、図2の配合で、小型のピン型ミキサーによってミキシングを行い、本捏生地を調製した。
なお、製パン実施例3では、炊き種生地3は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地3中の小麦粉3重量部の量で配合されている。
また、製パン実施例4では、炊き種生地4は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地4中の小麦粉3重量部の量で配合されている。
なお、製パン実施例5では、炊き種生地5は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地5中の小麦粉3重量部の量で配合されている。
また、製パン実施例6では、炊き種生地6は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地6中の小麦粉3重量部の量で配合されている。
また、比較例3では、湯種生地1は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、湯種生地1中の小麦粉3重量部の量で配合されている。
また、比較例4では、湯種生地2は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、湯種生地2中の小麦粉3重量部の量で配合されている。
・生地ミキシング条件・捏上温度
図2の全原料をミキサーボールに入れ、ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った。
捏上温度:27℃
4)発酵、焼成条件
次いで、以下の条件で、常法により発酵、焼成してバターロールを製造した。
分割、丸目:ミキシング終了後即生地量40gずつ手分割、丸目
ベンチタイム:30℃、20分
成形:バターロール形状に手成形
最終発酵:38℃、湿度85%、50分
焼成:200℃、10分
製パン評価は、5人のパネラーによって実施例Aと同様に行った。また、保存後のパンの老化の評価として、ポリエチレン袋中で20℃で2日間保存したパンについて、食感、風味と硬さの評価を行った。硬さの評価は直径5mmの円形プランジャーを1mm/sのスピードでバターロールの上部の山の部分に1cmまで押しつけた時の最大応力によって行った。3つのパンの測定結果の平均値をデータとした。
結果を図2に示す。製パン実施例3−6の製パン性は、従来の湯種生地を用いた比較例3−4の生地に比べ非常に良好な結果を示し、生地の分割、成形時の状態、総合的にパンの外観、内相、食感、風味の評価が高く、大きなパン体積を示した。また、保存後の老化の評価においても、比較例3−4に比べて製パン実施例3−6のバターロールは、明らかに食感、風味が良好でモッチリ、さっくり、しっとり食感を維持しており、保存中の老化が遅く、ソフトさ、モチモチ食感が維持されていることがわかった。また、製パン実施例3−6のいずれのバターロールも、炊き種生地の独特のご飯の様な良好な風味を呈し、比較例3−4に比べ明らかに優れた風味を呈した。特に、味噌を添加して製造した製パン実施例4のバターロール及び粉末だしを添加して製造した製パン実施例6のバターロールは、特にその風味が良好で、良好な炊き込みご飯風の風味を呈した。また、味噌、醤油、粉末だしを各々添加して製造した製パン実施例4−6では、保存2日後の食感に優れており、味噌、粉末だしを各々添加して製造した製パン実施例4、6では、さらに保存2日後の風味においても優れていた。
以上の結果から、本実施例の製パン法は、バターロールのようなリッチな配合のパンにおいても適用可能であり、炊き種生地の少量の添加によって、製パン性を低下させることなく、従来の湯種法によるバターロールよりも高品質のバターロールを製造できることが明らかになった。また、本実施例によるバターロールは、保存中の老化も非常に遅く、炊き種生地の独特のご飯のような良好な風味とモチモチ、しっとり食感が、保存中、長い時間にわたって維持されることがわかった。
(実施例C)
本実施例では、小麦粉としてやや低アミロースの国産小麦粉を用いたストレート法によって、発酵ドーナツを製造した。下記の炊き種生地調製、生地熟成保存、本捏、発酵、揚げ工程の条件下で製パン実験を行った。なお、比較例として、従来法の2種の湯種生地(市販強力粉を使用)を用いた同条件下での製パン実験も行った。
1)炊き種生地及び湯種生地(比較例)の調製条件
製パン実施例7−9で用いる炊き種生地7−9を以下の通り調製した。なお、比較例5では実施例Aと同様の湯種生地1を用い、比較例6では実施例Aと同様の湯種生地2を用いた。
・炊き種生地7:炊飯器の釜にキタノカオリ小麦粉100部、水500部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後、調製した生地(懸濁液)の入った炊飯器をおかゆモードに設定し、100〜102℃で50分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
・炊き種生地8:炊飯器の釜にキタノカオリ小麦粉100部、水500部、醤油(こいくちしょうゆ(本醸造)(しぼりたて丸大豆本醸造生しょうゆ)、キッコーマン食品株式会社販売)30部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後、調製した生地(懸濁液)の入った炊飯器をおかゆモードに設定し、100〜102℃で50分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
・炊き種生地9:ステンレス容器にキタノカオリ小麦粉100部、水500部、粉末だし(品名:風味調味料(ほんだし、こんぶだし、和風だしの素)、味の素株式会社販売)20部を添加し、泡立て器を用いて均一に混合し懸濁液を作成した。その後、調製した生地(懸濁液)をオートクレーブ用の密閉ガラス容器に入れ、オートクレーブで120℃、40分加熱し、炊き種生地を調製した。得られた炊き種生地は、十分混合し均一にした。
2)生地熟成保存条件
上記の炊き種生地7−9及び湯種生地1−2(比較例)を、いずれも10℃の冷蔵庫で24時間保存することで生地熟成を行った。
3)本捏生地調製条件
熟成保存後の炊き種生地7−9及び湯種生地1−2(比較例)を用いて、図3の配合で、小型のピン型ミキサーによってミキシングを行い、本捏生地を調製した。
なお、製パン実施例7では、炊き種生地7は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地7中の小麦粉5重量部の量で配合されている。
また、製パン実施例8では、炊き種生地8は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地8中の小麦粉5重量部の量で配合されている。
なお、製パン実施例9では、炊き種生地9は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、炊き種生地9中の小麦粉5重量部の量で配合されている。
また、比較例5では、湯種生地1は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、湯種生地1中の小麦粉20重量部の量で配合されている。
また、比較例6では、湯種生地2は、最終生地(本捏生地)中の小麦粉100重量部に対して、湯種生地2中の小麦粉20重量部の量で配合されている。
・生地ミキシング条件・捏上温度
図3の全原料をミキサーボールに入れ、ミキシング時のピンミキサーの電力量の変化を指標に電力量ピークを少し過ぎるまで高速でミキシングを行った。
捏上温度:27℃
4)発酵、焼成条件
次いで、以下の条件で、常法により発酵、焼成して発酵ドーナツを製造した。
第一発酵時間:30℃、30分
分割、丸目:生地量50gずつ手分割、丸目
ベンチタイム:30℃、10分
成形:円盤状に手成形
最終発酵:35℃、湿度75%、25分
(最終発酵終了後、ホイロから出し生地表面を常温で5分程度乾燥させる。)
揚げ:170℃の大豆白絞油で片面80秒ずつ両面を揚げる。
製パン評価は、実施例Aと同様に行った。
結果を図3に示す。小麦粉としてやや低アミロースの国産小麦粉(キタノカオリ小麦粉)を炊き種生地に使用し、その他の小麦粉は国産小麦粉(ゆめちから小麦粉、きたほなみ小麦粉)を用いて製造した製パン実施例7−9の製パン性は、従来の湯種生地を用いた比較例5−6の生地に比べ良好な結果を示し、生地の分割、成形時の状態、パンの外観、内相、食感、風味の評価が高く、良好な見た目の体積を示した。また、製パン実施例7−9の発酵ドーナツは、非常に良好なモチモチ、さっくり、しっとり食感と炊き種独特の風味を呈し、これは、やや低アミロースの国産小麦粉の特性が品質に良い影響を与えたものと考えられた。保存後の老化の評価においても、比較例5−6に比べて製パン実施例7−9の発酵ドーナツは、明らかに食感、風味が良好でモチモチ、しっとり食感を維持しており、硬さの結果についても比較例5−6と同様にソフトであり、保存中のパンの老化の進行が抑制されることがわかった。これについても、やや低アミロースの国産小麦粉の特性が良く発揮されている結果であると推察された。また、醤油を添加して製造した製パン実施例8では、製パン性に特に優れており、さらに保存1日後の風味においても優れていた。
以上の結果から、やや低アミロースの国産小麦粉を用いた本実施例の製パン法により、製パン性を低下させることなく、従来の湯種法による発酵ドーナツよりも高品質の発酵ドーナツを製造できることが明らかになった。また、本試験例による発酵ドーナツは、炊き種生地及びやや低アミロースの国産小麦粉の使用の相乗効果により、従来の湯種法による発酵ドーナツ以上の品質を有し、炊き種生地特有の良風味とモチモチ、さっくり、しっとり食感がさらに向上し、その特性は、保存中、長い時間にわたって維持されることがわかった。
現在、日本国内ではパン適性の高い、優れたパン用小麦品種が続々と育成され、それらの普及も着実に進んでおり、国内のパン用小麦の生産量も近年急激に増加している。これらの育成品種のほとんどが、Wx−B1タンパク質を欠失しているアミロース含量がやや低い小麦品種である。本実施例の結果から、これらの小麦粉を用いて本実施例の方法で発酵ドーナツを製造した場合、これらの小麦品種の良い特性が引き出され、従来の湯種法による発酵ドーナツよりもはるかに優れた品質の発酵ドーナツを製造できることが示された。現在、ドーナツは、大手コンビニ業界も参入を決めて大々的に販売を開始しており、今後販売量が急拡大する可能性が期待できる。そのため、本実施例の方法によって高品質の発酵ドーナツを生産することにより、国内のパン用小麦の需要拡大に多大な貢献をすることが期待できる。

Claims (12)

  1. (a)小麦粉及び対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を混合して懸濁液とし、該懸濁液を100℃以上の温度で30分間以上加熱して添加用生地を調製する工程と、
    (b)前記添加用生地を用いて最終生地を調製する工程と、
    を含む焼成食品の製造方法。
  2. 前記工程(a)において、前記懸濁液に、対小麦粉当たり5重量%以上30重量%以下の味噌、醤油及び粉末だしからなる群より選択される少なくとも1つがさらに添加される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記工程(a)において、加熱温度は100〜130℃である、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記工程(a)において、加熱時間は30分間〜2時間である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記工程(b)において、前記添加用生地は、前記最終生地中の小麦粉100重量部に対して、前記添加用生地中の小麦粉2〜10重量部の量で配合される、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記工程(b)において、前記添加用生地は、前記最終生地中の小麦粉100重量部に対して、前記添加用生地中の小麦粉3〜8重量部の量で配合される、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記工程(a)において、水は、対小麦粉当たり400〜800重量%の量で混合される、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記工程(a)において、調製された前記添加用生地は、低温中で保存される、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記工程(a)において、調製された前記添加用生地は、−3〜10℃で12〜72時間保存される、
    ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記最終生地は、低アミロース小麦品種由来の小麦粉を含む、
    ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された焼成食品。
  12. 小麦粉及び対小麦粉当たり400〜1000重量%の水を混合した懸濁液を、100℃以上の温度で30分間以上加熱することで得られた添加用生地を含む焼成食品生地。
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