JP2017033913A - 正極活物質及びその製造方法、並びに蓄電素子 - Google Patents

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紘也 阿部
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Toshihiro Suzuki
敏大 鈴木
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Abstract

【課題】正極比容量が大きく、高速充放電性能に優れ、繰り返し使用にも耐え得る正極活物質の提供。【解決手段】アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質であって、格子面間隔が1nm以上であり、波長532nmのレーザ光を用いたラマンスペクトルにおける1,360cm−1付近のピークと1,580cm−1付近のピークとの強度比(I1,360/I1,580)が0.2以下である炭素質材料を含む正極活物質である。【選択図】なし

Description

本発明は、正極活物質及びその製造方法、並びに蓄電素子に関する。
近年、蓄電素子として、リチウムコバルト複合酸化物等の正極と、炭素の負極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる非水電解液とを有するリチウムイオン蓄電素子が多く使用されている。前記蓄電素子は、携帯機器から電気自動車まで様々な用途で使用されている。
前記蓄電素子としては、正極を構成する正極活物質に導電性高分子、炭素質材料等の材料を用い、非水電解液中のアニオンが正極活物質へ挿入乃至脱離し、非水電解液中のリチウムイオンが炭素質材料からなる負極活物質へ挿入乃至脱離して充放電が行われる蓄電素子(以下、このタイプの蓄電素子を「デュアルイオン蓄電素子」と称することがある)が存在する(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記デュアルイオン蓄電素子に用いられる正極活物質は、正極比容量が小さく、高速充放電性能が低く、更に繰り返し使用をすると容量が低下するという問題があった。
本発明は、正極比容量が大きく、高速充放電性能に優れ、繰り返し使用にも耐え得る正極活物質を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の正極活物質は、アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質であって、格子面間隔が1nm以上であり、波長532nmのレーザ光を用いたラマンスペクトルにおける、1,360cm−1付近のピークと1,580cm−1付近のピークとの強度比(I1,360/I1,580)が0.2以下である炭素質材料を含む。
本発明によると、正極比容量が大きく、高速充放電性能に優れ、繰り返し使用にも耐え得る正極活物質を提供することができる。
図1は、本発明の蓄電素子の一例を示す概略図である。 図2は、実施例1の正極活物質の粉末X線解析測定の結果を示すグラフである。 図3は、実施例1の正極活物質のラマンスペクトルを示すグラフである。 図4は、比較例1の正極活物質の粉末X線解析測定の結果を示すグラフである。 図5は、比較例1の正極活物質のラマンスペクトルを示すグラフである。
(正極活物質)
本発明の正極活物質は、アニオンを挿入乃至脱離可能であり、炭素質材料を含んでなる。
前記課題を解決するため本発明者らが、正極にアニオンを蓄えるタイプの蓄電素子において、正極活物質として黒鉛を用いた場合に、蓄電素子の寿命が短くなる原因について鋭意検討した結果、アニオンの直径が黒鉛の格子面間隔より大きいことが原因であることを知見した。即ち、前記黒鉛の格子面間隔が約0.3nmであるのに対し、前記アニオンの直径が0.5nm程度であることから、正極活物質に黒鉛を用いると、狭い格子面間隔にアニオンを挿入することとなり、以下の3点の問題が発生する。
(1)アニオン挿入に必要なエネルギー、即ち、インターカレーション開始電圧が高くなり(4.6V(vs Li/Li)以上必要)、電解液の酸化分解が起こり、蓄電素子の寿命が低下する。
(2)アニオン挿入後に正極活物質である黒鉛が膨張し、黒鉛の結晶構造が破壊され、正極活物質から正極間への導電パスが正常に機能せず、蓄電素子の寿命が低下する。
(3)格子面間隔内のイオン移動抵抗(固体内拡散抵抗)が上昇してしまい、高速充放電性能が低下する。
そこで、前記知見に基づき本発明者らが更に鋭意検討を進めた結果、格子面間隔がアニオンの直径より充分大きく、かつ結晶性が充分に高い炭素質材料を用いることにより、正極比容量が大きく、高速充放電性能に優れ、繰り返し使用にも耐え得る正極活物質となることを知見した。即ち、格子面間隔がアニオンの直径より充分大きく、結晶性が高いことで、以下の3点の有利な効果が得られる。
(1)アニオンを挿入しても、正極活物質が膨張しないため、結晶が破壊されず、蓄電素子の寿命が向上する。
(2)固体拡散抵抗が低下し、高速充放電性能が良好になる。
(3)アニオンが挿入されやすくなるためインターカレーション開始電圧が下げられる(4.6V(vs Li/Li)以下)ため、低電圧でも容量を稼ぐことができ、更に電解液分解の抑制もできる。
したがって、本発明の正極活物質は、アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質であって、格子面間隔が1nm以上であり、波長532nmのレーザ光を用いたラマンスペクトルにおける、1,360cm−1付近のピークと1,580cm−1付近のピークとの強度比(I1,360/I1,580)が0.2以下である炭素質材料を含むことを特徴とする。
<炭素質材料>
前記炭素質材料としては、例えば、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物などが挙げられる。これらの中でも、黒鉛が好ましい。
前記炭素質材料の窒素吸着によるBET比表面積としては、1m/g以上100m/g以下が好ましく、レーザ回折又はレーザ散乱法により求めた体積基準の粒径(メジアン径)としては、0.1μm以上100μmが好ましい。
なお、前記BET比表面積は、例えば、自動比表面積/細孔分布測定装置(TriStar3000、株式会社島津製作所製)を用いて求めることができる。また、前記メジアン径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー2000、マルバーン社製)などを用いて測定することができる。
前記炭素質材料の格子面間隔としては、1nm以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記炭素質材料の格子面間隔が1nm以上であれば、一般的なアニオンが約0.5nmであるため、前記格子面間隔がアニオンの直径の2倍以上となり、アニオン−炭素間及びアニオン−アニオン間の相互作用が弱くなる。このことから、アニオンが前記正極活物質内にインターカレーションした際に無理やり押し広げることがなくなり、以下の3つの効果が得られる。
(1)アニオン挿入に必要なエネルギー、即ち、インターカレーション開始電圧が低くなり、低い電圧でも大きな容量が得られるようになる。さらに電位が高いことによって生じる電解液の酸化分解が発生しにくくなり、蓄電素子の寿命が向上する。
(2)アニオン挿入時の前記正極活物質の膨張がなくなり、前記正極活物質の結晶構造が破壊されなくなり、繰り返し充放電にともなう比容量減少が抑制され、蓄電素子の寿命が向上する。
(3)正極活物質内におけるアニオン移動抵抗が小さくなり、高速充放電性能が向上する。
本発明における炭素質材料の格子面間隔は、10nm未満の範囲に関しては粉末X線回折法(XRD)で求めることができ、10nm以上の範囲に関しては走査型電子顕微鏡により撮影された画像を解析することによって求めることができる。
CuKα線を用いた粉末X線結晶解析において、前記炭素質材料の(002)面由来のピーク値が、2θ≦9°の範囲にあれば、前記炭素質材料の格子面間隔が1nm以上であることを指す。走査型電子顕微鏡において、100,000倍以上300,000倍以下の倍率で前記炭素質材料を観察した場合、画像上では10nmが0.1mm以上0.3mm以下として観察される。したがって、この画像を解析することにより格子面間隔を求めることができる。
前記炭素質材料は、波長532nmのレーザ光を用いたラマンスペクトルにおける、1,360cm−1付近のピークと1,580cm−1付近のピークとの強度比(I1,360/I1,580、以下、R値と称することがある)が0.2以下である。前記R値が0.2以下であると、前記炭素質材料の結晶中に乱れ若しくは欠陥が少ないため、後述する蓄電素子の寿命及び出力性能を向上することができる。
なお、前記1,360cm−1付近のピークとは、1,360±100cm−1の領域にピークの先端があることを指し、前記1,580cm−1付近のピークとは、1,580±100cm−1の領域にピークの先端があることを指す。前記1,360cm−1付近のピークはDバンドとも言われ、黒鉛構造の乱れ若しくは欠陥に起因する。前記1,580cm−1付近のピークはGバンドとも言われ、黒鉛に共通して現れる。
(正極活物質の製造方法)
本発明の正極活物質の製造方法は、焼成工程を含み、膨張化工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
<膨張化工程>
前記膨張化工程は、黒鉛を含む材料を膨張化処理して、炭素質材料前駆体を得る工程である。
前記膨張化処理とは、黒鉛の格子面の間にイオン又は分子を挿入し、急熱することにより前記イオン又は分子を燃焼し、ガス化させ、黒鉛の格子面間隔を広げる処理のことを指す。前記膨張化処理としては、例えば、Hummers法、Staudenmeirer法などが挙げられる。
<焼成工程>
前記焼成工程は、前記炭素質材料前駆体を真空下及び不活性雰囲気下のいずれかで、2,000℃以上で5分間以上80分間以下焼成して前記炭素質材料を得る工程である。
前記焼成工程により、格子面間隔が1nm以上であり、波長532nmのレーザ光を用いたラマンスペクトルにおける、1,360cm−1付近のピークと1,580cm−1付近のピークとの強度比(I1,360/I1,580)が0.2以下である前記炭素質材料が得られる。
前記焼成工程では、前記炭素質材料前駆体を焼成することにより結晶性を高め、前記炭素質材料の格子面間隔を制御することができる。
前記焼成は、真空下又は不活性雰囲気下で行う。前記不活性雰囲気下とは、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下などのことである。
焼成温度としては、2,000℃以上であることが好ましい。焼成時間としては、5分間以上80分間以下であることが好ましい。前記焼成時間が5分間以上80分間以下であると、前記膨張化処理した黒鉛の結晶性が高まり、格子面間隔を適度に制御することができるため、後述する蓄電素子の寿命及び出力性能を向上することができる。前記焼成時間が80分間を超えると、格子面間隔が通常の黒鉛と同様の程度まで狭くなり、アニオンを挿入すると結晶破壊がおき、蓄電素子の寿命が短くなることがある。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥工程、洗浄工程などが挙げられる。
(蓄電素子)
本発明の蓄電素子は、前記正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解液とを有し、セパレータを有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
<正極>
前記正極としては、前記正極活物質を含んでいれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正極集電体上に前記正極活物質を含有する正極材層を備えた正極などが挙げられる。
前記正極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
<<正極材層>>
前記正極材層は、前記正極活物質を少なくとも含み、更に必要に応じてバインダ、導電材などを含んでなる。
−バインダ−
前記バインダとしては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダ、アクリル系バインダ、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−増粘剤−
前記増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEO)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−導電剤−
前記導電剤としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属材料、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正極材層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上300μm以下が好ましく、40μm以上200μm以下がより好ましい。前記平均厚みが、20μm以上であることにより、十分なエネルギー密度が得られ、300μm以下であることにより、良好な負荷特性が得られる。
<<正極集電体>>
前記正極集電体の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタルなどが挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、アルミニウムが特に好ましい。
前記正極集電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極集電体の大きさとしては、蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
[正極の作製方法]
前記正極は、前記正極活物質に、必要に応じて前記バインダ、前記増粘剤、前記導電剤、溶媒等を加えてスラリー状とした正極材組成物を、前記正極集電体上に塗布し、乾燥して正極材層を形成することによって作製することができる。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系溶媒、有機系溶媒などが挙げられる。前記水系溶媒としては、例えば、水、アルコールなどが挙げられる。前記有機系溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、トルエンなどが挙げられる。
なお、前記正極活物質をそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としたりすることもできる。
<負極>
前記負極としては、負極活物質を含んでいれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、負極集電体上に前記負極活物質を含有する負極材層を備えた負極などが挙げられる。
前記負極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
<<負極材層>>
前記負極材層は、前記負極活物質を少なくとも含み、更に必要に応じてバインダ、導電剤などを含んでなる。
−負極活物質−
前記負極活物質としては、カチオンを挿入乃至脱離可能な物質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属又はそれを吸蔵、放出可能な金属酸化物;アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属と合金化可能な金属と該金属を含む合金、複合合金化合物;高比表面積の炭素質材料等のイオンの物理吸着による非反応性電極などが挙げられる。これらの中でも、エネルギー密度の点から、金属リチウム及びリチウムイオンの少なくともいずれかを挿入乃至脱離可能な物質が好ましく、サイクル特性の面では非反応性電極がより好ましい。
前記負極活物質としては、具体的には、炭素を含有する材料、酸化アンチモン錫、一酸化珪素等のリチウムを吸蔵、放出可能な金属酸化物;アルミニウム、錫、珪素、亜鉛等のリチウムと合金化可能な金属又は金属合金;リチウムと合金化可能な金属と該金属を含む合金とリチウムとの複合合金化合物;チッ化コバルトリチウム等のチッ化金属リチウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安全性とコストの点から、炭素質材料が好ましい。
前記炭素を含有する材料としては、例えば、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト);様々な熱分解条件での有機物の熱分解物などが挙げられる。これらの中でも、人造グラファイト、天然グラファイト、前記記載のソフトカーボン又はハードカーボンが特に好ましい。
本発明に好ましいハードカーボンとしては、例えば、不活性雰囲気下で熱処理された時に(002)面の平均面間隔d002が3.50Åを超える結晶構造を形成するカーボンが挙げられる。具体的なハードカーボンの原料としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックなどが挙げられる。
−バインダ−
前記バインダとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダ、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−導電剤−
前記導電剤としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属材料;カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記負極材層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上450μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。前記平均厚みが、10μm以上であることにより、サイクル特性が良好なものとなり、450μm以下であることにより、十分なエネルギー密度が得られる。
<<負極集電体>>
前記負極集電体の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、銅が特に好ましい。
前記負極集電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極集電体の大きさとしては、蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
[負極の作製方法]
前記負極は、前記負極活物質に、必要に応じて前記バインダ、前記導電剤、溶媒等を加えてスラリー状とした負極材組成物を、前記負極集電体上に塗布し、乾燥して負極材層を形成することによって作製することができる。前記溶媒としては、前記正極の作製方法と同様の溶媒を用いることができる。
また、前記負極活物質に前記バインダ、前記導電剤等を加えたものをそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としたり、蒸着、スパッタ、メッキ等の手法で前記負極集電体上に前記負極活物質の薄膜を形成することもできる。
<非水電解液>
前記非水電解液は、非水溶媒、及び電解質塩を含有する電解液である。
<<非水溶媒>>
前記非水溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶媒が好ましい。
前記非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネートと、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒が用いられ、低粘度な溶媒が好ましい。
前記鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、メチルプロピオネート(MP)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ジメチルカーボネート(DMC)が好ましい。
前記環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が好ましく、エチレンカーボネート(EC)がより好ましい。
前記非プロトン性有機溶媒としては、電解質塩溶解性、イオン移動度、及びサイクル特性向上の点から、前記環状カーボネートと前記鎖状カーボネートとの混合溶媒が好ましい。混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積比1:1であることが好ましい。
前記非水溶媒としては、必要に応じて、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒などを用いることができる。
前記環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどが挙げられる。
前記鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(酢酸メチル(MA)、酢酸エチル等)、ギ酸アルキルエステル(ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル等)などが挙げられる。
前記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソランなどが挙げられる。
前記鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
−電解質塩−
前記電解質塩としては、ハロゲン原子を含み、非水溶媒に溶解し、高いイオン伝導度を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記のカチオンと、下記のアニオンとを組み合わせたものなどが挙げられる。
前記カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、スピロ系4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。
前記アニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、ClO 、BF 、PF 、SbF 、AsF 、CFSO 、(CFSO、(CSOなどが挙げられる。これらの中でも、ClO 、BF 、及びPF が好ましい。
前記ハロゲン原子を含む電解質塩の中でも、蓄電素子容量を向上させる点から、マグネシウム塩、及びリチウム塩が好ましく、リチウム塩がより好ましい。
前記リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、塩化リチウム(LiCl)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(CSO)、リチウムビスファーフルオロエチルスルホニルイミド(LiN(CFSO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素電極中へのアニオンの吸蔵量の大きさの点から、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)が好ましい。
前記マグネシウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、塩化マグネシウム(MgCl)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)などが挙げられる。
前記電解質塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蓄電素子の容量と出力の両立の点から、前記非水溶媒中に、0.5mol/L以上が好ましく、0.5mol/L以上6mol/L以下がより好ましく、2.5mol/L以上4mol/L以下が更に好ましい。
<セパレータ>
前記セパレータは、前記正極と前記負極の短絡を防ぐために前記正極と前記負極の間に設けられる。
前記セパレータの材質、形状、大きさ、及び構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記セパレータの材質としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、ポリプロピレンメルトフロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、セロハン、ポリエチレンなどが挙げられる。
これらの中でも、非水電解液保持の観点から、気孔率が50%以上のものが好ましい。
前記セパレータの形状としては、微多孔(マイクロポア)を有する薄膜タイプよりも、不織布タイプの方が気孔率の高い点から好ましい。
前記セパレータの平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上100μm以下が好ましい。前記平均厚みが、20μm以上であると、電解液の保持量が適正であり、100μm以下であると、エネルギー密度が良好に維持できる。
更に好ましくは、負極側でのアルカリ金属、アルカリ土類金属の析出による正負短絡を防止するため負極側に30μm以下の微多孔膜(マイクロポア膜)を配し、正極側に厚みとしては20μm以上100μm以下の気孔率50%以上の不織布を用いることが好ましい。
前記セパレータの形状としては、例えば、シート状、などが挙げられる。
前記セパレータの大きさとしては、蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外装缶、電極取り出し線などが挙げられる。
[蓄電素子の製造方法]
本発明の蓄電素子は、前記正極、前記負極、及び前記非水電解液と、必要に応じて用いられる前記セパレータとを、適切な形状に組み立てることにより製造される。更に、必要に応じて外装缶等の他の構成部材を用いることも可能である。前記蓄電素子を組み立てる方法としては、特に制限はなく、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の蓄電素子における充放電時の最高電圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0V以上6.0V以下が好ましい。前記充放電時の最高電圧が1.0V未満であると、アニオンの蓄積不十分になり、容量が下がることがあり、前記充放電時の最高電圧が6.0Vを超えると、非水溶媒や電解質塩の分解おこり、繰り返しサイクル特性の劣化が生じる可能性がある。
<形状>
本発明の蓄電素子の形状については、特に制限はなく、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。
ここで、図1は、本発明の蓄電素子の一例を示す概略図である。この蓄電素子10は、外装缶4内に、アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質を含む正極1と、金属リチウム及びリチウムイオンの少なくともいずれかを吸蔵乃至放出可能な負極活物質を含む負極2と、正極1と負極2の間にセパレータ3とを収容してなり、これら正極1、負極2、及びセパレータ3は、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる非水電解液(不図示)に浸っている。なお、5は負極引き出し線、6は正極引き出し線である。
<用途>
本発明の蓄電素子としては、非水電解液二次電池、非水電解液キャパシタなどが挙げられる。
前記蓄電素子の用途としては、特に制限はなく、各種用途に用いることができ、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ、電動自転車、電動工具等の電源、バックアップ電源などが挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<正極活物質の作製>
黒鉛として炭素粉末(KS−6、TIMCAL社製)を用いた。この黒鉛は、自動比表面積/細孔分布測定装置(TriStar3000、株式会社島津製作所製)により窒素を吸着させて測定したBET比表面積は、2.0m/g、レーザ回折粒度分布計(SALD−2200、株式会社島津製作所製)により測定した体積基準の粒径(メジアン径)は3.4μm、タップ密度630kg/mであった。
前記黒鉛をHummers法により膨張化処理を行った。前記黒鉛5gに対して、96質量%濃硫酸115mL、硝酸ナトリウム2.5g、過マンガン酸カリウム15gを加え、35±2℃で48時間撹拌後、ガラスフィルターでろ過して酸処理黒鉛を得た。更に、前記酸処理黒鉛を水洗及び乾燥させ、850℃に設定した窒素雰囲気下の縦型電気炉に投入し、炭素質材料前駆体を得た。
前記炭素質材料前駆体を、2,000℃で80分間高温焼成を行い、実施例1の正極活物質としての前記炭素質材料を得た。
<粉末X線回折測定>
得られた実施例1の正極活物質における炭素質材料について、粉末X線回折測定を行った。
得られた実施例1の正極活物質を、めのう乳鉢によりすり潰し試料粉体を作製し、試料ホルダーに均一に塗布した。その後、粉末X線回折装置内に試料ホルダーをセットし、以下の条件で前記炭素質材料の測定を行った。
<<粉末X線回折装置における測定条件>>
・CuKα線
・Scanning Mode:2θ/θ
・Scanning Type:continuous
・X−Ray:50kV/120mA
・発散スリット:1deg.
・散乱スリット:1deg.
・受光スリット:0.15mm
・Start:6°
・Stop:50°
・Step:0.01°
測定結果を、図2に示した。(002)面のピークは、2θ=8.5°であり、格子面間隔は、1.0nmであった。
<ラマンスペクトル測定>
得られた実施例1の正極活物質における炭素質材料について、ラマンスペクトル測定を行った。
得られた実施例1の正極活物質を、ラマンスペクトル測定装置に入れ、波長532nmのレーザ光を用いて測定を行った。
ラマンスペクトルの測定結果を図3に示した。実施例1の正極活物質のR値(I1,360/I1,580)は、0.16であった。
<正極の作製>
実施例1の正極活物質2.7g、及び導電材としてのアセチレンブラック0.2gに水を加えて混練し、更に増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース2質量%水溶液5gを加えて混練し、正極材層組成物(スラリー)を作製した。得られたスラリーをアルミニウム箔に塗工し、120℃で4時間真空乾燥させ、正極を形成した。得られた正極を直径16mmの丸型に打ち抜き加工して正極の電極とした。このとき、直径16mmのアルミニウム箔に塗工された正極材層中の黒鉛の質量は、20mgであった。
<負極の作製>
負極活物質として炭素粉末(MAGD、日立化成工業株式会社製)を用いた。この炭素粉末は、窒素吸着によるBET比表面積4.5m/g、レーザ回折粒度分布計(SALD−2200、株式会社島津製作所製)により測定した体積基準の粒径(メジアン径)は20μm、タップ密度630kg/mであった。
前記炭素粉末3g、及び導電材(アセチレンブラック)0.15gに水を加えて混練し、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース3質量%水溶液を4g加えて混練し、負極材層組成物(スラリー)を作製した。前記負極材組成物を銅箔に塗工して、120℃で4時間真空乾燥させて、負極とした。得られた負極を直径16mmの丸型に打ち抜き加工して負極の電極とした。このとき、直径16mmの銅箔に塗工された負極中の炭素粉末の質量は、5.2mgであった。
<非水電解液の作製>
エチレンカーボネートと、ジメチルカーボネートとを質量比1:1で混合した溶液に、LiPFを1mol/Lになるように溶解させた液を、0.01mL調製した。
<セパレータ>
平均厚み50μm、空孔率60%のポリエチレン製多孔質膜をセパレータとした。
<蓄電素子の作製>
図1に示すように、コイン型蓄電素子作製用の缶(2032型、宝泉株式会社製)に前記正極、前記セパレータ、前記負極、及び前記非水電解液を入れ、缶をかしめ装置(宝泉株式会社製)でかしめて、蓄電素子を作製した。
(実施例2)
実施例1において、非水電解液に溶解させるリチウム塩をLiBFに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の蓄電素子を作製した。
実施例1と同様に測定した、実施例2の正極活物質の粉末X線回折法における(002)面のピークは、2θ=8.5°であり、格子面距離は1.0nmであった。実施例2の正極活物質のラマンスペクトルから算出したR値(I1,360/I1,580)は、0.16であった。
(実施例3)
実施例1において、非水電解液に溶解させるリチウム塩をLiClOに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の蓄電素子を作製した。
実施例1と同様に測定した、実施例3の正極活物質の粉末X線回折法における(002)面のピークは、2θ=8.5°であり、格子面距離は1.0nmであった。実施例3の正極活物質のラマンスペクトルから算出したR値(I1,360/I1,580)は、0.16であった。
(実施例4)
実施例1において、正極活物質作製時の高温焼成時間を70分間にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の蓄電素子を作製した。
実施例1と同様に測定した、実施例4の正極活物質の粉末X線回折法における(002)面のピークは、2θ=8.1°であり、格子面間隔は1.1nmであった。実施例4の正極活物質のラマンスペクトルから算出したR値(I1,360/I1,580)は、0.17であった。
(実施例5)
実施例1において、正極活物質作製時の高温焼成時間を40分間にした以外は、実施例
1と同様にして、実施例5の蓄電素子を作製した。
実施例1と同様に測定した、実施例5の正極活物質の粉末X線回折法における(002)面のピークは、2θ=8.1°であり、格子面距離は1.1nmであった。実施例5の正極活物質のラマンスペクトルから算出したR値(I1,360/I1,580)は、0.17であった。
(実施例6)
実施例1において、正極活物質作製時の高温焼成条件を2,000℃で5分間にした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の蓄電素子を作製した。
実施例1と同様に測定したが、実施例6の正極活物質の粉末X線回折法における(002)面のピークは存在しなかったため、10nm以上であると考え、走査型電子顕微鏡を用いて格子面距離を測定した。下記測定条件により撮影した画像5視野において、1視野につき10点の任意の格子面距離を測定したところ、格子面距離は80nm以上100nm以下であった。実施例6の正極活物質のラマンスペクトルから算出したR値(I1,360/I1,580)は0.17であった。
<<走査型電子顕微鏡における測定条件>>
・観察倍率:100,000倍
・検出器−試料間距離:15mm
・プローブ電流:1.3nA
・加速電圧:20kV
(比較例1)
実施例1において、正極活物質として、膨張化処理及び高温焼成をしていない黒鉛(KS−6、TIMCAL社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の蓄電素子を作製した。
実施例1と同様に測定した、比較例1の正極活物質の粉末X線回折測定結果を図4に、ラマンスペクトルを図5に示した。
実施例1と同様に測定した、比較例1の正極活物質の粉末X線回折法における(002)面のピークは、2θ=26.4°であり、格子面間隔は0.336nmであった。比較例1の正極活物質のラマンスペクトルから算出したR値(I1,360/I1,580)は、0.08であった。
(比較例2)
実施例1において、膨張黒鉛作製時の高温焼成条件を1,900℃で80分間にした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の蓄電素子を作製した。
実施例1と同様に測定した、比較例2の正極活物質の粉末X線回折法における(002)面のピークは、2θ=6.8°であり、格子面距離は1.3nmであった。比較例2の正極活物質のラマンスペクトルから算出したR値(I1,360/I1,580)は0.29であった。
得られた実施例1〜6、及び比較例1〜2の蓄電素子について、それぞれ以下のようにして正極重量あたりの放電容量(正極比容量)、高速充放電時の容量維持率、10,000サイクル後の容量維持率を測定した。得られた結果を、それぞれ表1に記載した。
<正極の単位質量あたりの放電容量(正極比容量)>
得られた実施例1〜6、及び比較例2の蓄電素子を室温(25℃)において1mA/cmの定電流で充電終止電圧4.2Vまで充電した。1回目の充電の後、1mA/cmの定電流で3.0Vまで放電して初期充放電を行った。そして、初期充放電後の蓄電素子について、1mA/cmの定電流で充電終止電圧4.2Vまで定電流充電を行い、次に1mA/cmの定電流で3.0Vまで放電する定電流放電を1サイクルとし、この充放電サイクルを2回行い、正極の単位質量当たりの放電容量を測定した。なお、測定は、充放電測定装置(TOSCAT3001、東洋システム株式会社製)を用いて計測した。
得られた比較例1の蓄電素子は、充電終止電圧を5.0Vまで充電した以外は、実施例1〜6、及び比較例2と同様にして、測定を行った。
<高速充放電時の容量維持率>
得られた実施例1〜6、及び比較例2の蓄電素子を25℃の恒温槽中に保持し、充放電試験を実施した。
基準電流値を2mAとし、充電及び放電を基準電流値の10倍(10C)で行い、高速放電時の特性を確認した。充電はカットオフ電圧4.2Vで定電流、放電はカットオフ電圧3.0Vとし、充電と放電、放電と充電の間には5分間の休止を入れた。
表1に基準電流値での10回目の放電容量と、それに対する基準電流値の10倍での10回目の放電容量の維持率を示した。なお、放電容量の測定は、充放電測定装置(TOSCAT3001、東洋システム株式会社製)を用いた。
比較例1の蓄電素子は、実施例1〜6、及び比較例2において充電のカットオフ電圧を5.0Vにした以外は、実施例1〜6、及び比較例2と同様にして、測定を行った。結果を表1に示す。
<10,000サイクル後の容量維持率>
得られた実施例1〜6、及び比較例2の蓄電素子を室温(25℃)において1mA/cmの定電流で充電終止電圧4.2Vまで充電した。1回目の充電の後、1mA/cmの定電流で3.0Vまで放電して初期充放電を行った。そして、初期充放電後の蓄電素子について、1mA/cmの定電流で充電終止電圧4.2Vまで定電流充電を行い、次に1mA/cmの定電流で3.0Vまで放電する定電流放電を1サイクルとした。このサイクルを10,000回行った。1サイクル目の放電容量及び10,000サイクル目の放電容量から容量維持率(10,000サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)を算出した。なお、放電容量の測定は、充放電測定装置(TOSCAT3001、東洋システム株式会社製)を用いた。
得られた比較例1の蓄電素子について、充電終止電圧を5.0Vまで充電した以外は、実施例1〜6、及び比較例2と同様にして、測定を行った。
実施例1〜6、及び比較例1〜2の測定の結果から、正極比容量が140mAh/g、高速充放電時の容量維持率が80%以上、及び10,000サイクル後の容量維持率が90%以上であることを全て満たせば、判定を「○」とし、満たさなかったものの判定を「×」とした。
表1の結果から、実施例1〜6においては、前記炭素質材料の格子面間隔が1nm以上であり、かつ前記R値(I1,360/I1,580)が0.2以下であるため、いずれの蓄電素子も正極比容量が大きく、高速充放電時の容量維持率が高くなり、更に10,000サイクル後の容量維持率も高いことが確認できる。
比較例1においては、格子面間隔が狭い黒鉛であるため、アニオンのインターカレーション開始電圧が高く、カットオフ電圧を5.0Vまで高くしなければ充電できなかった。また、前記炭素質材料の格子面間隔が狭いことにより、前記正極活物質内のアニオン移動抵抗が高くなるため、高速充放電時の容量維持率が低いことが確認できる。更に、電位が高いことにより電解液の酸化分解が発生しやすくなり、10,000サイクル後の容量維持率が低いことが確認できる。
比較例2においては、前記炭素質材料の格子面間隔が広いため、アニオンのインターカレーション開始電圧が低くなるとともに前記正極活物質の膨張が抑制されるが、前記R値(I1,360/I1,580)が大きいため、結晶性が低くなる。このため、充放電可能な有効表面積が小さくなり、正極比容量が小さくなったと考えられる。また、結晶性が低いため、電気抵抗が高くなることにより、高速充放電時の容量維持率が低くなるとともに、過充電及び過放電が発生しやすくなり10,000サイクル後の容量維持率が低くなったと考えられる。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質であって、格子面間隔が1nm以上であり、波長532nmのレーザ光を用いたラマンスペクトルにおける1,360cm−1付近のピークと1,580cm−1付近のピークとの強度比(I1,360/I1,580)が0.2以下である炭素質材料を含むことを特徴とする正極活物質である。
<2> 前記炭素質材料が、黒鉛である前記<1>に記載の正極活物質である。
<3> 前記アニオンが、PF 、BF 、及びClO から選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の正極活物質である。
<4> 炭素質材料前駆体を、真空下及び不活性雰囲気下のいずれかで、2,000℃以上で5分間以上80分間以下焼成して前記<1>から<3>のいずれかに記載の炭素質材料を得る工程を含むことを特徴とする正極活物質の製造方法である。
<5> 黒鉛を含む材料を膨張化処理して前記炭素質材料前駆体を得る工程を更に含む前記<4>に記載の正極活物質の製造方法である。
<6> 正極と、負極と、非水電解液とを有してなる蓄電素子であって、前記正極が、前記<1>から<3>のいずれかに記載の正極活物質を含むことを特徴とする蓄電素子である。
<7> 前記負極が、金属リチウム及びリチウムイオンの少なくともいずれかを挿入乃至脱離可能な負極活物質を含む前記<6>に記載の蓄電素子である。
<8> 前記負極活物質が、黒鉛を含有する前記<7>に記載の蓄電素子である。
<9> 前記炭素質材料が、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、及びハードカーボンのいずれかである前記<8>に記載の蓄電素子である。
<10> 前記非水電解液が、非プロトン性有機溶媒を含有する前記<6>から<9>のいずれかに記載の蓄電素子である。
<11> 前記非プロトン性有機溶媒が、カーボネート系有機溶媒である前記<10>に記載の蓄電素子である。
<12> 前記カーボネート系有機溶媒が、鎖状カーボネート及び環状カーボネートの少なくともいずれかを含む前記<11>に記載の蓄電素子である。
<13> 前記鎖状カーボネートが、ジメチルカーボネート、及びエチレンカーボネートの少なくともいずれかを含む前記<12>に記載の蓄電素子である。
<14> 前記非水電解液が、ジメチルカーボネートとエチレンカーボネートの体積比を1:1にした混合物からなる前記<10>から<13>のいずれかに記載の蓄電素子である。
<15> 前記非水電解液が、前記非プロトン性有機溶媒にリチウム塩を溶解してなる前記<10>から<14>のいずれかに記載の蓄電素子である。
<16> 前記リチウム塩が、LiPFである前記<15>に記載の蓄電素子である。
<17> 前記リチウム塩の濃度が、0.5mol/L以上6mol/L以下である前記<15>から<16>のいずれかに記載の蓄電素子である。
<18> 前記正極と前記負極との間にセパレータを有する前記<6>から<17>のいずれかに記載の蓄電素子である。
<19> 前記セパレータの平均厚みが、20μm以上100μm以下である前記<18>に記載の蓄電素子である。
<20> 前記セパレータが多孔質膜である前記<18>から<19>のいずれかに記載の蓄電素子である。
前記<1>から<3>のいずれかに記載の正極活物質、前記<4>から<5>のいずれかに記載の正極活物質の製造方法、前記<6>から<20>のいずれかに記載の蓄電素子によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
特開平8−162158号公報
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 外装缶
5 負極引き出し線
6 正極引き出し線
10 蓄電素子

Claims (13)

  1. アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質であって、
    格子面間隔が1nm以上であり、
    波長532nmのレーザ光を用いたラマンスペクトルにおける1,360cm−1付近のピークと1,580cm−1付近のピークとの強度比(I1,360/I1,580)が0.2以下である炭素質材料を含むことを特徴とする正極活物質。
  2. 前記炭素質材料が、黒鉛である請求項1に記載の正極活物質。
  3. 前記アニオンが、PF 、BF 、及びClO から選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の正極活物質。
  4. 炭素質材料前駆体を、真空下及び不活性雰囲気下のいずれかで、2,000℃以上で5分間以上80分間以下焼成して請求項1から3のいずれかに記載の炭素質材料を得る工程を含むことを特徴とする正極活物質の製造方法。
  5. 黒鉛を含む材料を膨張化処理して前記炭素質材料前駆体を得る工程を更に含む請求項4に記載の正極活物質の製造方法。
  6. 正極と、負極と、非水電解液とを有してなる蓄電素子であって、
    前記正極が、請求項1から3のいずれかに記載の正極活物質を含むことを特徴とする蓄電素子。
  7. 前記負極が、金属リチウム及びリチウムイオンの少なくともいずれかを挿入乃至脱離可能な負極活物質を含む請求項6に記載の蓄電素子。
  8. 前記負極活物質が、黒鉛を含有する請求項7に記載の蓄電素子。
  9. 前記非水電解液が、非プロトン性有機溶媒を含有する請求項6から8のいずれかに記載の蓄電素子。
  10. 前記非プロトン性有機溶媒が、ジメチルカーボネート、及びエチレンカーボネートの少なくともいずれかを含む請求項9に記載の蓄電素子。
  11. 前記非水電解液が、前記非プロトン性有機溶媒にリチウム塩を溶解してなる請求項9から10のいずれかに記載の蓄電素子。
  12. 前記リチウム塩が、LiPFである請求項11に記載の蓄電素子。
  13. 前記リチウム塩の濃度が、0.5mol/L以上6mol/L以下である請求項11から12のいずれかに記載の蓄電素子。

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