JP2017025263A - 水系インク - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2には、樹脂微粒子を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該樹脂微粒子が、重量換算平均粒子径が0.05〜2.0μmの範囲にある非球形粒子であるインクジェット記録用インクにより、沈降に対する安定性、ノズル目詰まりに対する信頼性を両立させ、さらに極めて高い記録品位を実現できることが記載されている。
また、ビークルラッピング等に代表されるサイングラフィックでの利用が多いPVCフィルムには、屋外使用と清掃時に適応できる、エタノール等の炭素数4以下の低級アルコールに対する耐アルコール性も求められるが、前記特許文献1及び2に開示されたインクをはじめとした従来のインクでは、これらの特性をすべて満たす技術レベルには達していなかった。
そこで、本発明は、特にPVC等の極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性に優れる水系インク、その製造方法、及びインクジェット記録方法を提供する。
〔1〕着色剤と、ポリエステル樹脂粒子を含有する水系インクであって、
ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが、2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル(A)であり、該ポリエステル(A)の酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、水系インク。
〔2〕次の工程(1)及び(2)を有する水系インクの製造方法。
工程(1):2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下のポリエステルを水性媒体と混合して乳化し、ポリエステル樹脂粒子の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリエステル樹脂粒子の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合し、水系インクを得る工程
〔3〕前記〔1〕に記載の水系インクをインクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上150℃以下に加熱する、インクジェット記録方法。
本発明の水系インクは、着色剤と、ポリエステル樹脂粒子を含有する。当該水系インクは、ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが、2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル(A)であり、該ポリエステルの酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。
このような構成を有する水系インクが、樹脂製記録媒体に対する優れた密着性及び耐アルコール性を有する理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明の水系インクは、着色剤とポリエステル樹脂粒子を含有する。印刷時にインクが記録媒体上に付着すると、ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが樹脂製記録媒体の印刷面上に拡散し、着色剤の定着助剤として作用する。ここで、当該ポリエステルは、2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分を重縮合して得られるものである。ポリエステルの原料モノマーに2価又は3価の脂環式アルコールを用いることで、分子鎖中で極性の高いエステル基が極性の低い脂環部位を介して適度なエステル基間長で存在し、PVC等の極性の高い樹脂製記録媒体の極性基と強く相互作用するため、密着性が向上するものと考えられる。更に、印刷面においては、PVC等の極性の高い樹脂製記録媒体側へ極性の高いエステル基が配向し、大気側に極性の低い脂環部分が配向するため、印刷面を保護するポリエステルの樹脂膜のアルコールの浸透や膨潤が抑制され、耐アルコール性が向上するものと考えられる。
なお、本明細書において、「水系インク」を単に「インク」ということがある。
本発明におけるポリエステル樹脂粒子は、2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル(A)を含む。
ポリエステル(A)は、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、アルコール成分として、2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合することで得られるポリエステルを用いる。
脂環式アルコールとしては2価が好ましい。脂環式アルコールの炭素数は、耐アルコール性を向上させる観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、そして、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性を向上させる観点から、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは20以下である。
脂環式アルコール中に含まれる脂肪族炭化水素環部位の数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2である。
一般式(I)において、環Cy1及び環Cy2は、それぞれ独立に、環構造の環員数3以上12以下の脂肪族炭化水素環であり、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、d及びeはそれぞれ独立に0以上3以下の整数(好ましくは0)であり、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、nは0又は1(好ましくは1)であり、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素数1以上3以下(好ましくは1)のアルカンジイル基であり、a及びbはそれぞれ独立に0又は1(好ましくは0)である。
環Cy1及び環Cy2において、環構造の環員数は、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、それぞれ独立に、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下であり、環構造の環員数は6がより更に好ましい。
脂環式アルコールは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分として、上記以外のジオール、又は3価以上の多価アルコール等が含まれていてもよい。
ジオールとしては、主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオール、芳香族ジオールが挙げられる。
主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
芳香族ジオールとしては、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、好ましくは下記一般式(II)で表される化合物である。
x及びyは、アルキレンオキシドの付加モル数に相当する。更に、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
また、x個のOR11とy個のR12Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性を向上させる観点から、同一であることが好ましい。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。このビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物がより好ましい。
なお、前記アルコール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボン酸成分としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸無水物及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられ、中でも、好ましくはジカルボン酸を含み、より好ましくはジカルボン酸からなる。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、好ましくはテレフタル酸である。
脂肪族ジカルボン酸としては、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、アゼライン酸、コハク酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。これらの中でも、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、好ましくは、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、及びドデセニルコハク酸から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはフマル酸又はアジピン酸、更に好ましくはフマル酸である。
脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
ポリエステル(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステル(A)の軟化点は、樹脂粒子及びインクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは165℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
なお、ポリエステル(A)を2種以上混合して使用する場合は、その軟化点及びガラス転移温度は、各々2種以上のポリエステルの混合物として、実施例記載の方法によって得られた値である。
ポリエステル(A)は、カルボン酸成分とアルコール成分とを、重縮合反応させることによって製造することができる。例えば、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒及び重合禁止剤を用いて、120℃以上250℃以下の温度で重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫等の錫化合物やチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等のエステル化触媒を使用することができる。
エステル化触媒の使用量に制限はないが、カルボン酸成分とアルコール成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
また、必要に応じて重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、4−tert−ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、カルボン酸成分とアルコール成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
また、ポリエステル樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤等を任意成分として含有させてもよい。
本発明において着色剤とは、顔料又は染料をいう。なお、着色剤は、界面活性剤や分散用ポリマーを用いてインク中で安定な微粒子の形態で用いてもよい。
本発明に用いる着色剤としては、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等が挙げられる。これらの中でも、インクの分散安定性、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは、顔料及び疎水性染料から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは顔料である。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、黒色インクに用いる場合、好ましくはカーボンブラックである。
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられ、これらの中でも、好ましくはフタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、より好ましくは銅フタロシアニンである。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
前記の顔料は、1種を単独で又は2種以上の組み合わせを任意の割合で混合して用いることができる。
ポリエステル樹脂粒子に対する着色剤の質量比〔着色剤/ポリエステル樹脂粒子〕は、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、インク中、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、更に好ましくは50/50以下である。
着色剤は、好ましくは、界面活性剤、ポリマー等を用いて、インク中で安定な微粒子にする。すなわち、着色剤は、ポリマー分散剤で分散された着色剤、又は着色剤を含有するポリマー粒子として用いることが好ましく、インクの分散安定性及び画像濃度を向上させる観点、並びに印刷物の表面平滑性を向上させる観点から、着色剤を含有するポリマー粒子として用いることがより好ましい。
水不溶性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられ、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくはビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーである。
アニオン性モノマーの中でも、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
イオン性モノマー成分の量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
疎水性モノマー成分の量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
マクロマー及びノニオン性モノマー成分の量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー中、それぞれ、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離及び精製してもよい。
着色剤を含有するポリマー粒子は、例えば、水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を含有する混合物を分散処理して、着色剤を含有するポリマー粒子の分散体を得たのち、該分散体から前記有機溶媒を除去して、着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液を得る方法で製造することができる。
水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて水不溶性ポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤を用いる場合、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられる。また、該水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
前記水不溶性ポリマーの量に対する着色剤の量の質量比〔着色剤/水不溶性ポリマー〕は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中及び水性媒体中での分散安定性を向上させる観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下である。
本発明の水系インクには、有機溶媒、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加することができる。
有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、環状カーボネート、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
アミドとしては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
アミンとしては、モノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、チオジグリコール等が挙げられる。
これらの中でも、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、及び含窒素複素環化合物から選ばれる少なくとも1種又は2種以上が好ましく、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び2−ピロリドンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
有機溶媒の含有量は、インクの分散安定性を向上させる観点から、インク中で、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
これらの中でも、ノニオン性界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましく、グリコールエーテル、ポリエステル変性シリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、グリコールエーテルが更に好ましく、アセチレングリコール、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
防腐剤及び防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、等が挙げられる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼすことなくpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができ、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明の水系インクは、次の工程(1)及び(2)を経ることにより、好適に製造することができる。
工程(1):2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる、酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下のポリエステル(A)を、水性媒体と混合して乳化し、ポリエステル樹脂粒子の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリエステル樹脂粒子の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合し、水系インクを得る工程
工程(1)において、ポリエステル(A)を、水性媒体と混合して乳化し、ポリエステル樹脂粒子の水性分散液を得る。
水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。
工程(1)においては、ポリエステル(A)を含む樹脂を有機溶媒に溶解させて、水性媒体を徐々に添加して、転相し、乳化する工程(転相乳化法)が好ましい。
なお、転相乳化法においては、ポリエステル(A)を有機溶媒に溶解させた溶液に対して塩基性化合物を加えて中和することが好ましい。
前記塩基性化合物によるポリエステルの中和度(モル%)は、ポリエステル樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは100モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
なお、ポリエステルの中和度(モル%)は、次式によって求めることができる。
中和度={[中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量]/〔[ポリエステルの酸価(mgKOH/g)×ポリエステルの質量(g)]/(56×1000)〕}×100
転相乳化法において、水性媒体の添加は、少なくとも水性媒体へと転相が終了されるまで行う。
水性媒体の添加速度は、ポリエステル樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、転相が終了するまでは、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部/分以上、より好ましくは1質量部/分以上、更に好ましくは3質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下である。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
なお、固形分は樹脂、必要に応じて添加されうる界面活性剤、着色剤等の前記の任意成分等の不揮発性成分の総量である。
工程(2)の着色剤を含有する水性分散液は、好ましくは、上述の水性分散液である。
工程(2)では、着色剤に加えて、前述した任意成分の少なくとも1種を更に混合してもよい。混合には、例えば、各種撹拌装置を用いることができる。
水系インクに含まれるポリエステル(A)の含有量は、インクの粘度を適正に保つ観点、並びに極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、インク中、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
水系インク中には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリエステル樹脂粒子以外の樹脂粒子、例えば、他のポリエステル樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、塩化ビニル系樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を含有してもよい。前記ポリエステル樹脂粒子以外の樹脂粒子の含有量は、水系インク中の全樹脂粒子中、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
水系インクに含まれる水の含有量は、インクの粘度を適正に保つ観点から、インク中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
本発明の水系インクは、インクジェット記録用のインクとして用いることができる。本発明の水系インクは、樹脂記録媒体への密着性や、耐アルコール性に優れるため、商業又は産業用印刷用のインクジェット記録用インクとして好適に用いられる。
本発明の水系インクをインクジェット記録方法に用いる際の好適な態様としては、本発明の水系インクをインクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する。
本発明の水系インクは、オフィス用印刷、並びに、カタログ、チラシ、パッケージ、ラベル等の商業及び産業用印刷のいずれにも使用することができる。商業及び産業用ラベル印刷に適している、PET、PVC、ポリエチレン(以下「PE」ともいう)、ポリプロピレン(以下「PP」ともいう)、ナイロン(以下「NY」ともいう)等の非吸水性又は低吸水性の樹脂製記録媒体へ好適に用いることができることから、商業及び産業用印刷に適している。
なお、本発明において、「非吸水性又は低吸水性」とは、該記録媒体と水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下であることを意味する。
これらの中でも、ポリ塩化ビニル製記録媒体に対して、本発明の水系インクを付着させ画像を形成する方法に好適に用いることができる。
記録媒体は、好ましくは樹脂製フィルムである。フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリ塩化ビニルフィルムである。
これらのフィルムは、必要に応じてコロナ処理等の表面処理を行っていてもよい。
フィルムの市販品としては、例えば、ルミラーT60(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚み125μm、吸水量2.3g/m2)、PVC80B P(リンテック株式会社製、ポリ塩化ビニル、吸水量1.4g/m2)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、ポリプロピレン)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
また、本発明では、水系インクを樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱することが好ましい。水系インク中のポリエステル樹脂粒子に含まれる樹脂が、該樹脂製記録媒体の印刷面にフィルム上に拡散し、塗膜を形成する際に着色剤の定着助剤として作用することができ、樹脂製記録媒体に対する密着性及び耐アルコール性を更に向上させることができる。
該樹脂製記録媒体の加熱温度は、極性を有する樹脂製記録媒体への密着性及び耐アルコール性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
JIS K0070に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕とした。
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計「Q−100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、測定用サンプルを調製した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピーク温度を吸熱の最大ピーク温度とし、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
(1)測定装置:ゼータ電位・粒径測定システム「ELSZ−2」(大塚電子株式会社製)
(2)測定条件:キュムラント解析法。測定する粒子の濃度が約5×10−3質量%になるように水で希釈した分散液を測定用セルに入れ、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力して測定した。
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水性分散液の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−水分(質量%)
以下の測定装置と分析カラムを用い、N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した。試料の分子量(Mw、Mn)は、数種類の単分散ポリスチレン(製品名:「TSKgel標準ポリスチレン」;タイプ名:「A−500」、「A−2500」、「F−1」、「F−10」;いずれも東ソー株式会社製)を標準試料として、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。試料はN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し固形分0.3質量%の溶液とした。
<測定条件>
測定装置:「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「TSK−GEL α−M」×2本(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
流速:1mL/min
30mLのポリプロピレン製容器(内径40mm、高さ30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへ試料約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分を除去した後の試料の質量を固形分として、添加した試料の質量で除して固形分濃度とした。
インクジェットプリンター「IPSiO GX 2500」(株式会社リコー製、ピエゾ方式)に水系インクを充填し、PVCフィルム「透明塩ビRE−137」(株式会社ミマキエンジニアリング製)にA4ベタ画像を印刷した。80℃の乾燥機にて10分乾燥し、室温25℃、相対湿度50%の環境室にて1日静置して試料を調製した。その後、試料の印刷面に長さ5cm、幅15mmのテープ「セロテープCT15」(登録商標)(ニチバン株式会社製)を、1cmの余白を残し4cm貼りつけ、角度90°で10cm/secの速度で該テープを剥がし、試料の塗工面の残存面積を目視により次の5段階で評価した。点数が高いほどPVCへの密着性に優れる。
<評価基準>
剥離なし、または剥離があるが剥離面積5%未満:5点
剥離面積5%以上25%未満:4点
剥離面積25%以上50%未満:3点
剥離面積50%以上75%未満:2点
剥離面積75%以上:1点
インクジェットプリンター「IPSiO GX 2500」(株式会社リコー製、ピエゾ方式)に水系インクを充填し、PVCフィルム「透明塩ビRE−137」(株式会社ミマキエンジニアリング製)にA4ベタ画像を印刷した。80℃の乾燥機にて10分乾燥し、室温25℃、相対湿度50%の環境室にて1日静置して試料を調製した。その後、0〜100質量%の範囲で10質量%ごとに濃度調整したアルコール(エタノール、イソプロパノール)の水性溶液を含浸させた綿棒にて、試料の塗工面にできるだけ荷重がかからないようにしながら、2〜3cmの幅で1秒間に1往復の速度で、塗工面を10回往復してなでるように擦った。塗工面の状態を目視により評価し、擦過前後で塗工面に傷、剥がれ、白濁等の変化が認められなかった最も高いアルコール濃度を耐アルコール性の指標とした。濃度が高いほど耐アルコール性に優れる。
製造例R1(ポリエステルAの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4568g、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン1044g、テレフタル酸2542g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、8時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸242g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で4時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に4時間保持して、ポリエステルAを得た。ポリエステルAの特性を表1−1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5058g、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン612g、テレフタル酸2540g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、7時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸197g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で3時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に4時間保持して、ポリエステルBを得た。ポリエステルBの特性を表1−1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3255g、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン2232g、テレフタル酸2624g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、8時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸324g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で5時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に4時間保持して、ポリエステルCを得た。ポリエステルCの特性を表1−1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン5520g、テレフタル酸2673g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、9時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に5時間保持して、ポリエステルDを得た。ポリエステルDの特性を表1−1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4725g、1,4−シクロヘキサンジオール522g、テレフタル酸2689g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸209g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で3時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に4時間保持して、ポリエステルEを得た。ポリエステルEの特性を表1−1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4673g、1,4−シクロヘキサンジメタノール641g、テレフタル酸2512g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸310g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で4時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に4時間保持して、ポリエステルFを得た。ポリエステルFの特性を表1−2に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン6160g、テレフタル酸2045g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸612g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で4時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に4時間保持して、ポリエステルGを得た。ポリエステルGの特性を表1−2に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4515g、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン1032g、テレフタル酸1999g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、7時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸399g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で5時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に5時間保持して、ポリエステルHを得た。ポリエステルHの特性を表1−2に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4305g、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン984g、テレフタル酸2477g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、9時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸323g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で4時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に2時間保持して、ポリエステルIを得た。ポリエステルIの特性を表1−2に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4253g、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン972g、テレフタル酸2474g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、9時間保持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸338g、4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、210℃で3時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて更に2時間保持して、ポリエステルJを得た。ポリエステルJの特性を表1−2に示す。
製造例D1(ポリエステル樹脂粒子Aの水性分散液の製造)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器(「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製))及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ポリエステルA 200gを入れ、30℃でメチルエチルケトン(MEK)200gと混合し樹脂を溶解させた。次いで、5質量%水酸化ナトリウム水溶液33.9gを添加して30分撹拌し、有機溶媒系スラリーを得た。30℃、撹拌下、20mL/minの速度で脱イオン水497gを滴下した。その後、60℃に昇温し、80kPa〜30kPaに段階的に減圧していきながらメチルエチルケトンを留去し、更に一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網で濾過し、脱イオン水にて固形分濃度を30質量%に調整し、ポリエステル樹脂粒子Aの水性分散液を得た。得られた水性分散液中のポリエステル樹脂粒子Aの特性を表2−1に示す。
製造例D1において、ポリエステルの種類及び5質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を表2−1又は表2−2に示すものへと変更した以外は製造例D1と同様にして、ポリエステル樹脂粒子B〜Jの水性分散液を得た。得られた水性分散液中のポリエステル樹脂粒子の特性を表2−1又は表2−2に示す。
製造例C1(着色剤(顔料)を含有する水不溶性ポリマー粒子C1の水性分散液の製造)
(1)水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)の合成
ベンジルメタクリレート399g(和光純薬工業株式会社製)、メタクリル酸91g(和光純薬工業株式会社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(「M−230G」、新中村化学工業株式会社製、オキシエチレン基の平均付加モル数:23)140g、スチレンマクロモノマー(「AS−6S」、東亞合成株式会社製、固形分:50%)140gを混合し、モノマー混合液(770g)を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン15.75g及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.350g、前記モノマー混合液の10質量%(77g)を入れて混合し、窒素ガス置換を行った。
一方、滴下ロートに、前記モノマー混合液の80%(616g)、前記重合連鎖移動剤2.45g、メチルエチルケトン173.25g、及び重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(「V−65」、和光純薬工業株式会社製)5.6gを混合したものを入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を4.5時間かけて滴下した。その後、前記モノマー混合液の残り10質量%(77g)、前記重合連鎖移動剤0.7g、メチルエチルケトン126g、及び前記重合開始剤1.4gを混合したものを2段目滴下として75℃、1.7時間かけて滴下した。
滴下終了後、前記開始剤2.1gを混合し、80℃まで昇温し、1.5時間撹拌した。この開始剤の混合、昇温及び撹拌操作を更に2回行なうことでポリマー溶液(ポリマーの重量平均分子量:26,000)を得た。
前記(1)の水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)の合成で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー20gを、メチルエチルケトン62.8gに溶解し、その中に、5N水酸化ナトリウム水溶液5.01g、25質量%アンモニア水1.13g、及び脱イオン水236.5gを加え、10〜15℃でディスパー翼を用いて2000r/minで15分間撹拌混合を行なった。
続いてマゼンタ顔料:PV19(「Inkjet Magenta E5B02」、クラリアントジャパン株式会社製)45g、及びマゼンタ顔料:PR122(「6111T」、大日精化工業株式会社製)25gを加え、10〜15℃でディスパー翼を用いて7000r/minで3時間撹拌混合した。得られた分散液を200メッシュ濾過し、マイクロフルイダイザー「M−110K」(Microfluidics社製、高圧ホモジナイザー)を用いて、150MPaの圧力で20パス分散処理した。
得られた分散液を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分を孔径5μmのフィルター(Sartorius Stedim Biotech社製)で濾過して粗大粒子を除いた。さらにこの分散液80gに防腐剤「プロキセルXL2」(アビシア社製)0.2g、及び脱イオン水19.8gを混合し、70℃で1時間の滅菌処理を行なった後、25℃まで冷却し、前記孔径5μmのフィルターで濾過することで、顔料を含有するポリマー粒子(顔料含有アニオン性ポリマー粒子)C1の水性分散液(固形分濃度:20質量%、体積平均粒径:133nm)を得た。
製造例C1において、マゼンタ顔料:PV19(「Inkjet Magenta E5B02」、クラリアントジャパン株式会社製)45g、及びマゼンタ顔料:PR122(「6111T」、大日精化工業株式会社製)25gを、シアン顔料:PB15:3(「TGR−SD」、DIC株式会社製)70gへと変更した以外は製造例C1と同様にして、顔料を含有するポリマー粒子(顔料含有アニオン性ポリマー粒子)C2の水性分散液(固形分濃度:20質量%、体積平均粒径:75nm)を得た。
実施例1〜9、比較例1(水系インク1〜9、11の製造)
100mLスクリュー管に、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)20.0質量部、1,2−ブタンジオール(和光純薬工業株式会社製)10.0質量部、濡れ剤「オルフィンE1010」(日信化学工業株式会社製、(オルフィンは登録商標)、有効成分:アセチレングリコール系界面活性剤)1.0質量部、及び脱イオン水26.6質量部を混合し、マグネチックスターラーを用い、室温で15分間撹拌して、混合溶液を得た。
次に、製造例C1で得られた顔料含有アニオン性ポリマー粒子C1の水性分散液25.7質量部〔顔料分換算4.0質量部(水系インク100質量部中)〕を、マグネチックスターラーで撹拌しながら、前記混合溶液全量を混合し、更に表3−1又は表3−2に示すポリエステル樹脂粒子の水性分散液16.7質量部〔固形分換算5.0質量部(水系インク100質量部中)〕をスポイトで滴下しながら撹拌混合した。最後に孔径1.2μmのフィルター「ミニザルト」(登録商標)(Sartorius Stedim Biotech社製)で濾過し、水系インク1〜9、11を得た。得られた水系インクの評価結果を表3−1又は表3−2に示す。
実施例1において、顔料含有アニオン性ポリマー粒子C1の水性分散液を、顔料含有アニオン性ポリマー粒子C2の水性分散液へ変更した以外は実施例1と同様にして、水系インク10を得た。得られた水系インクの評価結果を表3−2に示す。
Claims (8)
- 着色剤と、ポリエステル樹脂粒子を含有する水系インクであって、
ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが、2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合して得られるポリエステル(A)であり、該ポリエステル(A)の酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、水系インク。 - 前記脂環式アルコールの含有量が、アルコール成分中、5モル%以上100モル%以下である、請求項1に記載の水系インク。
- 前記脂環式アルコールが水素添加ビスフェノールAである、請求項1〜3のいずれかに記載の水系インク。
- 前記ポリエステル(A)の含有量が、ポリエステル樹脂粒子中、60質量%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の水系インク。
- 樹脂製記録媒体への印刷用である、請求項1〜5のいずれかに記載の水系インク。
- 次の工程(1)及び(2)を有する水系インクの製造方法。
工程(1):2価又は3価の脂環式アルコールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる、酸価が5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下のポリエステル(A)を、水性媒体と混合して乳化し、ポリエステル樹脂粒子の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリエステル樹脂粒子の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合し、水系インクを得る工程 - 請求項1〜6のいずれかに記載の水系インクをインクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する、インクジェット記録方法。
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