JP2020094138A - 被覆顔料、被覆顔料組成物およびその製造方法 - Google Patents

被覆顔料、被覆顔料組成物およびその製造方法 Download PDF

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Tomoyuki Aotani
朋之 青谷
鈴木 智彦
Tomohiko Suzuki
智彦 鈴木
進典 鶴谷
Nobunori Tsuruya
進典 鶴谷
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Abstract

【課題】本発明は、プラスチックフィルムに対する密着性が優れ、耐水性が良好なインク層を形成できるインクに使用可能な、被覆顔料、および被覆顔料組成物の提供を目的とする。【解決手段】顔料の表面が樹脂(P)で被覆された被覆顔料であって、前記樹脂(P)が、α−オレフィンユニット、および一般式[1]で示すユニットを含む、被覆顔料。なお、樹脂(P)の重量平均分子量は5,000〜50,000が好ましい。また、前記重合ユニット(Y1)は、カルボキシル基、およびアルキレンオキシ基のうち少なくとも1種を有することが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、被覆顔料、およびインクジェット記録用インクに関する。
インクジェット記録用インクは、安全性と環境負荷の少なさから水性インクが主流となっている。水性インクは、商業印刷用途で多いプラスチックフィルムの基材上に印刷すると乾燥性が悪く、インク層の画質が悪かった。そこでプラスチックフィルム上にインク受容層が設けられてきたが、インクの密着性は、溶剤インクと比較して満足できる水準になかった。
そこで、特許文献1には、着色剤、および顔料分散剤としてヒドロキシ基やカルボキシ基を有するオレフィン樹脂を含む分散組成物が開示されている。
特開2014−24945号公報
しかし、従来の分散組成物は、プラスチックフィルムに対する密着性が依然として満足できる水準ではない上、印刷したインク層の耐水性が低い問題があった。
本発明は、プラスチックフィルムに対する密着性が優れ、耐水性が良好なインク層を形成できるインクに使用可能な、被覆顔料、および被覆顔料組成物の提供を目的とする。
本発明の被覆顔料は、顔料の表面が樹脂(P)で被覆された被覆顔料であって、
前記樹脂(P)が、α−オレフィンユニット、および下記一般式[1]で示すユニットを含む。
一般式[1]

(式中、Xは炭素数1〜5の置換もしくは非置換のアルキレン基を表し、Yは重合体ユニットを示す。)
上記の本発明により、プラスチックフィルムに対する密着性が優れ、耐水性が良好なインク層を形成できるインクに使用可能な、被覆顔料、および被覆顔料組成物を提供できる。
まず、本明細書での用語を定義する。「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイルおよびメタクリロイル」である。「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよびメタクリル」である。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸およびメタクリル酸」である。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレート」である。モノマーは、エチレン性不飽和基含有単量体である。また、本明細書に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
本明細書の被覆顔料は、顔料の表面が樹脂(P)で被覆された被覆顔料であって、
前記樹脂(P)が、α−オレフィンユニット、および下記一般式[1]で示すユニットを含む。
一般式[1]

(式中、Xは炭素数1〜5の置換もしくは非置換のアルキレン基を表し、Yは重合体ユニットを示す。)
本明細書の被覆顔料は、顔料(通常は粒子)の表面を樹脂(P)が被覆している。そのため、被覆顔料は、従来の微細化された顔料と分散剤を配合して分散した顔料分散体と比較して、顔料の表面を樹脂で十分に被覆できている。樹脂(P)が含む下記一般式[1]で示すユニット中の重合体ユニットであるYは、立体反発部位として機能するため、被覆顔料粒子が凝集し難い。
また、被覆顔料を含む組成物は、被覆顔料の分散安定性が優れる。加えて、Yは、極性が低く、プラスチックフィルムとの親和性が高いため密着性が良好なインク層を形成できる。また、Yはガラス転移温度(Tg)が高く、当該被覆顔料組成物を含むインクがプラスチックフィルムに定着後に強固な塗膜を形成し、印刷物の耐水性などの耐性が向上する。なお、被覆顔料の作製は、顔料の表面を樹脂(P)で十分被覆できればよく、その方法は限定されないところ、例えば、顔料の微細化工程を樹脂(P)と共に行う方法が挙げられる。
本明細書の被覆顔料は、塗料、印刷インキ(例えば、グラビアインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ、フレキソインキ等)、インクジェット記録用インク等に使用することが好ましく、インクジェット記録用インクがより好ましい。
本明細書で顔料は、無機顔料および有機顔料から適宜選択して使用できる。
無機顔料は、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属錯塩、その他無機顔料等が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
金属酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、ジルコニア、アルミナ等が挙げられる。
その他無機顔料は、例えば、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー等が挙げられる。
有機顔料は、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
有機顔料は、例えば、C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、9、10、14、17、22、23、31、32、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、81:1、81:2、81:3、83、88、90、105、112、119、122、123、144、146、147、148、149、150、155、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、184、185、187、188、190、200、202、206、207、208、209、210、216、220、224、226、242、246、254、255、264、266、269、270、272、279;
C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214;
C.I. Pigment Orange 2、5、13、16、17:1、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、71、73;
C.I.Pigment Green 7、10、36、37、58、59、62、63;
C.I.Pigment Blue 1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66、79、79、80;
C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、32、37、42;
C.I.Pigment Brown 25、28;
C.I.Pigment Black 1、7等が挙げられる。
これらの中でもインクジェット記録用インクで色再現性及び耐光性が向上する面で、C.I.Pigment Red 48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、122,146、147、148、150、170、176、177、184、185、242、254、255、264、266、269、
C.I.Pigment Yellow 12、13、14、17、74、83、108、109、120、150、151、154、155、180、185、213
C.I.Pigment Orange 36,38、43、64
C.I.Pigment Green 7、36、37、58、62、63、
C.I.Pigment Blue 15:1、15:3、15:6、16、22、60、66、
C.I.Pigment Violet 19、23、32、
C.I.Pigment Brown 25、
C.I.Pigment Black 1、7が好ましい。
[樹脂(P)]
本明細書で樹脂(P)は、α−オレフィンユニット、および一般式[1]で示すユニットを含む。樹脂(P)は、例えば、α−オレフィンと酸無水物基含有モノマーとの重合体を主鎖とするグラフト体が挙げられる。樹脂(P)の作製は、例えば、(1)酸無水物基含有モノマーに特定の化合物を反応させて、一般式[1]で示すユニットの側鎖部分を有するモノマーを合成し、次いで前記モノマーとα−オレフィンとを重合する方法。(2)α−オレフィンと酸無水物基含有モノマーを重合して重合体(p)を合成し、次いで前記重合体(p)に特定の化合物を反応させて一般式[1]で示すユニットを合成する方法が挙げられる。これらの中でも合成が容易である面で前記(2)の方法が好ましい。なお、樹脂(P)は、α−オレフィンユニット、および一般式[1]で示すユニットを含めばよく、上記の態様に限定されないことはいうまでもない。
樹脂(P)は、α−オレフィンユニット、および一般式[1]で示すユニット以外のその他ユニットを含有できる。その他ユニットは、モノマーユニットであり、単独ユニット、重合ユニットが挙げられる。その他ユニットの合成に使用できるモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー、その他ビニルモノマーが挙げられる。
α−オレフィンユニットは、炭素数6〜40のα−オレフィンを使用することが好ましい。適度な炭素数のα−オレフィンを使用すると顔料表面をより被覆しやすい。なお、α−オレフィンは炭素数8〜35がより好ましく、炭素数12〜30がさらに好ましい。
α−オレフィンは、例えば、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−テトラトリアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−オクタトリアコンテン等が挙げられる。
α−オレフィンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、もしくはベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有モノマーは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4 −ヒドロキシビニルベンゼン等が挙げられる。
窒素含有モノマーは、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、N ,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N ,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。
その他ビニルモノマーは、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のアルケニルベンゼン;酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
一般式[1]で示すユニットは、例えば、酸無水物基に特定の化合物を反応させて合成することができる。酸無水物基含有モノマーは、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの中でもα−オレフィンとの共重合性が高い無水マレイン酸が好ましい。
前記重合体(p)は、α−オレフィン、酸無水物基含有モノマー、ラジカル重合開始剤、および必要に応じて連鎖移動剤を使用して合成できる。
前記合成は、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられるところ、溶液重合、塊状重合が好ましい。
前記重合体(p)は、例えば、酸無水物基含有モノマーとして無水マレイン酸を使用する場合、α−オレフィンと無水マレイン酸との交互重合体が形成する。なお、α−オレフィンと無水マレイン酸とのモル比を変更することで重合体の配列を任意に調整できる。
樹脂(P)は、α−オレフィン・無水マレイン酸重合体を変性して合成できる。また、樹脂(p)は市販品を使用できる。市販品は、例えば、ダイヤカルナM30(三菱ケミカル社製)、セラマーシリーズ(ベーカーペトロライト社製)等が挙げられる。
α−オレフィン(O)と酸無水物基含有モノマー(A)とのモル比は、O/A=30/70〜99/1が好ましく、40/60〜95/5がより好ましく、45/55〜80/20がさらに好ましい。適度なモル比で合成すると被覆顔料の分散性がより向上する。
ラジカル重合開始剤は、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。過酸化物は、例えば、キュメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジt−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤は、モノマー100質量部に対して、0.001〜5質量部程度を使用することが好ましい。
前記重合体(p)の重量平均分子量は、3,000〜30,000が好ましく、4,000〜25,000がより好ましく、6,000〜20,000がさらに好ましい。重量平均分子量を適度な範囲に調整すると、顔料の表面を被覆し易くなる。
一般式[1]で示すユニット中の側鎖部分(X−S−Y)の形成は、以下の重合体(Q)を使用することが好ましい。重合体(Q)は、付加重合体、ラジカル重合体が制限なく使用できるところ、ラジカル重合体が好ましい。以下、ラジカル重合体の重合体(Q)について説明する。
重合体(Q)は、分子内に1以上の水酸基と1以上のチオール基とを有する化合物(r1)(一般式でいうと、例えば、HO−X−SH)の存在下に、モノマーをラジカル重合して合成できる片末端領域に水酸基を有する重合体である。重合体(Q)が有する片末端領域の水酸基を酸無水物基と反応させて、一般式[1]で示すユニット中の側鎖部分を形成する。つまり、一般式[1]で示すユニット中のXは、前記化合物(r1)に由来し、Yは、モノマーの重合体に由来する。重合体(Q)は、重合体の硫黄原子を起点に重合体ユニットYが結合した形態である。また、「片末端領域」とは、前記硫黄原子に結合したYの末端とは異なる末端に水酸基が存在することを意味する。なお、化合物(r1)に2以上の水酸基を有する化合物を使用する場合重合体(Q)中の片末端領域の水酸基が酸無水物基と反応した後の未反応の水酸基は、反応の自由度が低下して、ほとんど反応しないと推測している。
分子内に少なくとも1つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物は、例えば、メルカプトメタノール、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、1−メルカプト−2−ブタノール、又は2−メルカプト−3−ブタノール等が挙げられる。
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物は、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(別名:1−チオグリセロール)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
これらの中でも、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールが好ましい。
前記モノマーは、既に説明した(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー、その他ビニルモノマーに加え、例えば、カルボキシル基含有モノマー、アルキレンオキシ基含有モノマー等が挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーは、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等が挙げられる。これらの中でも反応性および安価の面でアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
アルキレンオキシ基含有モノマーは、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート等が挙げられる。これらの中でもインクジェット記録用インクの吐出性が向上する面でメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートが好ましい。
これらの中でも、側鎖部分(X−S−Y)のYの一部がアニオンになることで、被覆顔料組成物やインクジェット記録用インクが乾燥する場合、水等の媒体に容易に再溶解、または再分散しやすい面で、カルボキシル基含有モノマーが好ましい。
また、被覆顔料組成物やインクジェット記録用インクの保存安定性及び吐出性がより向上する面でアルキレンオキシ基含有モノマーが好ましい。
すなわち、重合体ユニット(Y)は、カルボキシル基含有ユニットを10〜80質量%含むことが好ましい。換言すると重合体ユニット(Y)の合成に使用するモノマー100質量%中、カルボキシル基含有モノマーを10〜80質量%含むことが好ましい。カルボキシル基含有モノマーを適量使用するとインク(インキ)の再溶解性、または再分散性がより向上する
アルキレンオキシ基含有モノマーの使用量は、重合体ユニット(Y)の合成に使用するモノマー100質量%中、1〜80質量%が好ましく、5〜75質量%がより好ましく、10〜70質量%がさらに好ましい。アルキレンオキシ基含有モノマーを適量使用すると保存安定性及び吐出性がより向上する。
モノマーは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
重合体(Q)は、樹脂(P)の主鎖と同様にラジカル重合で合成することが好ましい。
重合体(Q)は、化合物(r1)を重合体(Q)の合成に使用するモノマー全量100質量部に対して、1〜30質量部を使用してラジカル重合で合成することが好ましい。なお、化合物(r1)の使用量は、3〜25質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。重合温度は、40〜150℃が好ましく、50〜110℃がより好ましい。
重合体(Q)の合成は、溶液重合が好ましい。合成に使用する有機溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
有機溶媒は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
重合体(Q)の重量平均分子量は、500〜20,000が好ましく、500〜10,000がより好ましい。重量平均分子量を適度な範囲に調整すると、被覆顔料を分散し易くなり、インクジェット記録用インクの定着性や耐水性がより向上する。
<樹脂(P)の合成>
樹脂(P)を合成する上記(2)の方法は、重合体(p)の酸無水物基に重合体(Q)の水酸基を反応させてエステルを形成する方法(エステル化)である。
前記反応は、前記酸無水物基1モルに対して、水酸基を0.2〜2モルを使用して行うことが好ましい。前記使用量で反応させると側鎖の形成が容易になり、被覆顔料の分散性がより向上し、組成物の粘度をより適切な範囲に調整しやすい
前記エステル化の反応温度は、70〜210℃が好ましく、80〜180℃がより好ましい。適切な温度でエステル化を行うと適度な反応速度で合成可能であり、着色が少ない樹脂(P)が得やすい。
前記樹脂(P)の酸価は、5〜300mgKOH/gが好ましく、10〜200mgKOH/gがより好ましく、30〜180mgKOH/gがさらに好ましい。適度な範囲の酸価を有すると、例えば、水や水溶性溶剤を使用する際の親和性が向上し、インクジェット記録用インクの定着性や親水性がより向上する。
前記樹脂(P)の重量平均分子量は、5,000〜50,000が好ましく、5,500〜30,000がより好ましく、6,000〜20,000がさらに好ましい。適度な範囲の重量平均分子量は、組成物中で被覆顔料の分散安定性がより向上し、組成物の粘度を適切な範囲に調整しやすい。
[被覆顔料の製造]
本明細書の被覆顔料の製造方法は、水溶性溶剤、水溶性無機塩、顔料、ならびにα−オレフィンユニット、および一般式[1]で示すユニットを有する樹脂(P)を混練機で混合して顔料の表面を樹脂(P)で被覆し、次いで水溶性無機塩および水溶性溶剤を除去することが好ましい。
被覆顔料の製造方法は、まず、顔料、樹脂(P)、水溶性無機塩及び水溶性溶剤を含有する混合物を混練して顔料を微細化しつつ、顔料の表面を樹脂(P)で被覆する。
顔料の微細化方法は、特に限定されず任意の方法を適用できるところ、ソルトミリング処理による摩砕混練工程等が好ましい。
摩砕混練工程は、例えば、混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニューラ型ビーズミル等の混練機を用いることが好ましい。摩砕混練工程は、加熱を行うと効率よく微細化できる。混練機は、ニーダーが好ましい。これにより顔料の表面に対する樹脂(P)の被覆効率が向上する。
水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、水溶性無機塩の硬度の高さを利用して顔料を破砕する。水溶性無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも安価な塩化ナトリウム(食塩)を用いることが好ましい。
水溶性溶剤は、顔料及び水溶性無機塩を湿潤する。水溶性溶剤は、水に溶解(混和)し、水溶性無機塩に溶解しない溶剤である。
水溶性溶剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコール; ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルのエーテル;プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、及びトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール等のアルコール;スルホラン、γ−ブチロラクトン等のラクトン;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン等のラクタム;グリセリン等が挙げられる。
水溶性溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
これらの中でも、高沸点、低揮発性で、高表面張力のグリコール類が好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等がより好ましい。
水溶性溶剤の使用量は、顔料100質量部に対し、5〜1,000質量部が好ましく、50〜500質量部がより好ましい。また、水溶性無機塩の使用量は、顔料100質量部に対し、50〜2,000質量部が好ましく、300〜1,000質量部がより好ましい。これらを適量使用すると微細化と被覆の効率がより向上する。
樹脂(P)の使用量は、顔料100質量部に対し、5〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましい。適量使用すると分散性が良好な被覆顔料が得やすい。
顔料の表面を樹脂(P)で被覆した後、水溶性無機塩および水溶性溶剤を除去する。前記除去は、混練機から混練物を容器等に取り出し、イオン交換水を投入して撹拌を行い、懸濁液を得る。加えるイオン交換水は、例えば、混練物の質量の10〜10,000倍の質量を加えて混合撹拌する。混合撹拌条件は特に限定されない。また、温度25〜90℃で行うことが好ましい。次いで、ろ過等を行い、ろ液を除去することで、水溶性溶剤、水溶性無機塩を除去できる。ろ過後の被覆顔料は、イオン交換水を含むため、水を除去することが好ましい。水の除去は、例えば、乾燥が好ましい。乾燥条件は、例えば、常圧下、80〜120℃の範囲で12〜48時間程度の乾燥を行う方法、減圧下、25〜80℃ の範囲で12〜60時間程度の乾燥を行う方法等が挙げられる。乾燥装置は、例えば、スプレードライ装置等が挙げられる。なお、乾燥と同時または、乾燥後に凝集した被覆顔料を粉砕することができる。
被覆顔料の比表面積は、20m/g〜100m/gが好ましく、25m/g〜80m/gがより好ましく、30m/g〜60m/gがさらに好ましい。なお、前記比表面積は、被覆顔料を100℃で30分間脱気乾燥し、得られた粉体試料の窒素吸脱着等温線をマウンテック社製のMacsorb HM Model−1201を用いて、200℃で15分間真空脱気した後、測定を行い、最後に、1分間再度加熱して、水分を完全に除去することで、比表面積を算出したものである。比表面積は、顔料の質量あたりの表面積であり、その値が大きいほど一次粒径が小さく、一般的には小さいほど好ましいが、その反面二次粒径の形状が複雑になりやすい。
[被覆顔料組成物]
本明細書の被覆顔料組成物は、被覆顔料、塩基性化合物、および水を含み、さらに架橋剤を含むことが好ましい。被覆顔料組成物中で被覆顔料は分散状態で存在する。
被覆顔料組成物の製造方法は、上記材料を適宜配合すれば良いところ、被覆顔料、水、および塩基性化合物を混合して、樹脂(P)を中和し、次いで、架橋剤を加えて樹脂(P)を架橋することが好ましい。詳細には、例えば、以下の工程(1)及び工程(2)を順次行うことが好ましい。これにより保存安定性がより向上する。
工程(1):被覆顔料、塩基性化合物、および水を混合して、樹脂(P)のカルボキシル基を中和する工程。
工程(2):架橋剤を添加して、樹脂(P)を架橋させる工程。
前記工程(1)において、温度、および撹拌時間は適宜選択して決定することができる。中和工程の時間は、0 .5〜10時間が好ましく、1〜5 時間がより好ましい。中和工程の温度は、40〜95℃ が好ましい。
前記工程(2)において、架橋工程の時間は、0 .5〜10時間が好ましく、1〜5 時間がより好ましい。架橋工程の温度は、40〜95℃ が好ましい。
被覆顔料組成物の水の含有量は、30〜85質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。これにより保存安定性がより向上する。水は、種々のイオンを含有する一般の水よりも、イオン交換水(脱イオン水)が好ましい。以下、特に断らない限り、水はイオン交換水を指す。
被覆顔料の含有量は、被覆顔料組成物中、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。これによりインクジェット印刷適性および保存安定性がより向上する。
被覆顔料組成物中の被覆顔料の体積平均粒子径(D50)は、20〜200nmが好ましく、25〜150nmがより好ましく、30〜130nmがさらに好ましく、35〜90nmが特に好ましい。前記範囲を満たすとインクジェットプリンターのノズルの目詰まりが生じ難く、保存安定性もより向上する。体積平均粒子径の測定は、Nanotrac Wave(マイクロトラック・ベル社製)を使用してレーザー回折・散乱法で測定する。
[塩基性化合物]
塩基性化合物は、樹脂(P)のカルボキシル基の中和に使用する。塩基性化合物は、被覆顔料組成物のpHを7〜10程度に調整することが好ましい。
塩基性化合物は、例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機物が挙げられる。
樹脂(P)の中和度は、被覆顔料組成物の保存安定性の観点から、10〜100%反応させることが好ましく、30〜100%反応させることがより好ましく、50〜100%反応させることが特に好ましい。
ここで中和度は、塩基性化合物のモル当量を樹脂(P)のカルボキシ基のモル量で除したものである。下記式によって求めることができる。
{(塩基性化合物の質量(g)/塩基性化合物の当量)/ [(樹脂(P)の酸価(KOHmg/g)×樹脂(P)の質量(g)/(56.1×1000)]}×100
[架橋剤]
本明細書の被覆顔料組成物は、架橋剤を含有できる。これにより被覆顔料組成物から形成する被膜の耐水性がより向上する。架橋剤は、カルボキシル基と反応可能な官能基(以下、架橋性官能基という)を2以上有する化合物である。反応性官能基は、例えば、イソシアネート基、アジリジン基、カルボジイミド基、オキセタン基、オキサゾリン基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、アジリジン基、カルボジイミド基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種がより好ましく、エポキシ基がさらに好ましい。
架橋剤の分子量(式量または、数平均分子量Mn)は、100〜2,000が好ましく、120〜1,500がより好ましく、150〜1,000がさらに好ましい。適度なMnにより架橋性がより向上する。架橋剤の反応性官能基の数は、2〜6が好ましい。適度な反応性官能基数により保存安定性がより向上する。
架橋剤は、下記化合物が挙げられる。
イソシアネート基含有化合物は、例えば、ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられ、
ポリイソシアネートは、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート; 脂環式ジイソシアネート;芳香族トリイソシアネート;それらのウレタン変性体等が挙げられる。イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネートと低分子量ポリオール等とを反応で合成できる。
アジリジン基含有化合物は、例えば、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
カルボジイミド基含有化合物は、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させて合成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。市販品でいうと例えば、日清紡績社のカルボジライトシリーズが挙げられる。
オキセタン基含有化合物は、例えば、4,4'−(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル(OXBP)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(EHO)、1,4−ビス[{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン(XDO)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOE)、1,6−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ヘキサン(HDB)、9,9−ビス[2−メチル−4−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−[2−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等が挙げられる。
オキサゾリン基含有化合物は、 例えば、脂肪族基又は芳香族基に2個以上、好ましくは2〜3個のオキサゾリン基が結合した化合物であり、2, 2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレンビスオキサゾリン、1,3−ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物、該化合物と多塩基性カルボン酸とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物は、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA 型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ基含有化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
架橋剤は、水の存在下で効率よく樹脂(P)のカルボキシル基と反応する観点から、適度に水溶性があることが好ましく、例えば架橋剤を25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が0.1〜50gが好ましく、0.2〜40gがさらに好ましく、0.5〜30gが特に好ましい。
架橋剤の使用量は、前記樹脂(P)のカルボキシル基100モルに対して、10〜150モルに相当する量が好ましく、20〜120モルがより好ましく、30〜100モルがさらに好ましい。
<インクジェット記録用インク>
本明細書のインクジェット記録用インクは、被覆顔料、または被覆顔料組成物を含む。
本明細書のインクジェット記録用インクは、水を溶媒(媒体)として使用するが、インクの乾燥を防止するため、水溶性溶剤を併用することが好ましい。また、被覆顔料の分散安定性が向上するため、印刷後の基材への浸透性、濡れ広がり性が向上する。
水溶性溶剤は、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他水溶性溶剤等が挙げられる。
前記多価アルコール類は、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−へプタンジオールが好ましい。
前記多価アルコールアルキルエーテル類は、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類は、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられる。
前記含窒素複素環化合物は、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
前記アミド類は、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
前記アミン類は、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン
等が挙げられる。
前記含硫黄化合物類は、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
前記その他水溶性溶剤は、糖が好ましい。糖類は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類等が挙げられる。糖は、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等が挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む。また、これらの糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式:HOCH(CHOH)CHOH(ただし、n=2〜5の整数を表す)で表される〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸等が挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、マルチトール、ソルビットが好ましい。
水溶性溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
水溶性溶剤の含有量は、インクジェット記録用インク中、3〜60質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましい。また、水の含有量は、インクジェット記録用インク中、10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。適度な水溶性溶剤の含有量により、ヘッドからのインク吐出安定性が向上する。
インクジェット記録用インクは、バインダー樹脂を含有することが好ましい。これにより、印字した塗膜の耐水性、耐溶剤性、耐擦過性などが向上する。
バインダー樹脂は、例えば(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂の含有量は、インクジェット記録用インクの不揮発分中、2〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。
本明細書のインクジェット記録用インクは、必要に応じて添加剤を含有できる。添加剤は、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。添加剤の含有量は、インクジェット記録用インク中、0.05〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
本明細書のインクジェット記録用インクは、各種のインクジェット用プリンターに使用できる。インクジェット方式は、例えば、荷電制御型、スプレー型等の連続噴射型、ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等のオンデマンド型等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」は、「質量部」であり、「% 」は、「質量%」である。
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソ−社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソ−社製、HLC−8320GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
(酸価)
三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、蒸留水/ジオキサン(質量比:蒸留水/ジオキサン=1/9)混合液50mlを加えて溶解する。上記試料溶液に対して、電位差測定装置(京都電子工業株式会社製、装置名「電位差自動滴定装置 AT−710M」)を用いて、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液(力価a)で滴定を行い、滴定終点までに必要な水酸化カリウム・エタノール溶液の量(b(mL))を測定した。乾燥状態の樹脂の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の消費量(ml)
F:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の力価
<重合体(Q)の製造>
(製造例1)
滴下ロート、ガス導入管、温度計、コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとして、メチルメタクリレート20部、メタクリル酸20部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(EO(エチレンオキシ)23mol付加)60部と、2−メルカプトエタノール5部、メチルエチルケトン(MEK)を55部加え、窒素ガスで反応容器内を置換した。反応容器内を75℃に加熱し、ラジカル重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2部をMEK50部に溶解させた混合物を滴下ロートから5時間かけて均等添加した。その後、還流状態で12時間反応を行った。サンプリングによる不揮発分測定で反応が95%以上進んだことを確認し、室温まで冷却し、重量平均分子量3,000の片末端領域に1つの水酸基を有するビニル重合体(Q−1)の不揮発分50%溶液を得た。
(製造例2〜9)
表1に記載した原料と仕込み量に変更した以外は、製造例1と同様にして合成を行い、重合体(Q−2〜Q−9)の不揮発分50%溶液を得た。それぞれの重量平均分子量、酸価、不揮発分は表1に記載した通りである。
表1中の略称は以下の通りである。
・2−ME : 2−メルカプトエタノール (分子内に水酸基1つ)
・1−TG : 3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(分子内に水酸基2つ)
<重合体(p)の製造>
(製造例10)
滴下ロート、ガス導入管、温度計、コンデンサー、および攪拌機を備えた反応容器に、α−オレフィンとして1−オクテンを53.4部、無水マレイン酸を46.6部仕込み、キシレン10部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸オクチル0.2部をフラスコに仕込み、窒素置換した後、130℃で加熱、撹拌した。次いで、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0部とキシレン20部との混合物を、滴下ロートから2時間かけて滴下した。その後、温度を130℃に維持しつつ、さらに1時間撹拌して反応させた。次いで、キシレンを減圧濃縮して完全に除去し、重量平均分子量は10,000、不揮発分100%のα−オレフィンと酸無水物基を有する重合体(p−1)を得た。
(製造例11〜15)
表2に記載した原料と仕込み量に変更した以外は重合体(p−1)と同様にして合成を行い、重合体(p−2〜p−6)を得た。なお、分子量の調整は、連鎖移動剤およびラジカル重合開始剤の使用量を適宜変更して調整した。それぞれの重量平均分子量、酸価、不揮発分は表2に記載した通りである。
<樹脂(P)の製造)
(製造例16)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器にα−オレフィンと酸無水物基を有する重合体(p−1)を11部、重合体(Q−1)を不揮発分換算で89部、キシレンを20部、触媒としてジアザビシクロウンデセンを0.2部加え、撹拌しながら加熱し、130℃で1時間反応を行った。次いで、温度を110℃に変更して、さらに1時間反応を行った。次いで温度を90℃に変更して、4時間反応を行った。その後、溶剤を減圧濃縮して完全に除去し、α−オレフィンユニット、ならびに一般式[1]ユニットを含む樹脂(P−1)を得た。得られた共重合物の重量平均分子量は14,000であった。
(製造例17〜29)
表3、表4に記載した原料と仕込み量に変更した以外は樹脂(P−1)と同様にして合成を行い、樹脂(P−2)〜(P−14)を得た。それぞれの重量平均分子量、酸価、不揮発分は表3、表4に記載した通りである。
(製造例30)
ビニル重合体(Q)の代わりに、1−ドデカノールを用いた以外は樹脂(P−1)と同様にして合成を行い、樹脂(P−15)を得た。重量平均分子量、酸価、不揮発分は表4に記載した通りである。
(実施例1)
<被覆顔料の製造>
顔料としてC.I.ピグメントレッド122(「FASTOGENSuperMagentaRGT」 DIC社製)35.0部、塩化ナトリウム175.0部、樹脂(P)として(P−1)を不揮発分換算で12.25部、水溶性溶剤としてジエチレングリコール35.0部をステンレス製ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で3時間混練した。この混合物を水1,000部に投入し、約40℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及び水溶性溶剤を除き、減圧下40℃で乾燥して被覆顔料を得た。
<被覆顔料組成物の製造>
得られた被覆顔料を20部、塩基性化合物として水酸化カリウムの10%水溶液を、被覆顔料の製造時に用いた樹脂(P)の酸価から中和度が100%になるように加え、防腐剤としてPROXEL GXL(S)(Lonza製)を0.03部、さらに不揮発分が22%になるようにイオン交換水を加え、70℃のオイルバスで加温しながらディスパーで約1時間撹拌した。次いで出力600Wの超音波ホモジナイザーを使用し、内温が15℃になるように調整しながら10分間処理を行った。
次いで、常温(25℃)で架橋剤としてデナコールEX321(エポキシ基含有化合物、ナガセケムテックス製、不揮発分100%、エポキシ当量140g/eq)を、前記樹脂(P)のカルボキシル基に対してモル比で0.5eqになるように加えた。次いで、1時間撹拌し、不揮発分が22%になるようにイオン交換水で調整し、被覆顔料組成物を得た。
<インクジェット記録用インクの製造>
得られた被覆顔料組成物を33.3部、プロピレングリコールを16.65部、1,2−ヘキサンジオールを16.65部、イオン交換水を33.3部、レベリング剤としてサーフィノールDF110D(エアープロダクツジャパン製)を0.1部混合し、インクジェット記録用インクを製造した。
[実施例2〜16、比較例1〜3]
使用する顔料、樹脂(P)を表5に従って変更した以外は、実施例1と同様にして被覆顔料組成物並びに、被覆顔料組成物を含むインクジェット記録用インクを得た。
表5の略称は以下の通りである。
・PY180(C.I.ピグメントイエロー180、クラリアントジャパン社製、「NOVOPERM Yellow P−HG」)
・PB15:3(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化工業社製、「シアニンブルー A220J」)
・PET(Roland社純正 PET−G−1050)
・OPP(東レ社製 P60)
<比表面積>
得られた被覆顔料を100℃で30分間脱気乾燥し、粉体試料を得た。得られた粉体試料の窒素吸脱着等温線をマウンテック社製のMacsorb HM Model−1201を用いて、200℃で15分間真空脱気した後、測定を行い、最後に、1分間再度加熱して、水分を完全に除去することで、比表面積を算出した。
<粗粒量試験>
得られた被覆顔料組成物に関して、分散体中の粗粒量の評価を下記のように行った。具体的には定量の被覆顔料組成物の25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/B GEヘルスケアライフサイエンス社製)への通過時間で評価した。粗粒が多い場合はフィルターが目詰まりをおこし通過時間が長く観測される。またさらに粗粒が多い場合はフィルターが閉塞し顔料分散体を全量ろ過することができない。一般にインクジェットヘッドへインクを供給する経路に使用されるフィルターは1μmより大きく、またインクジェットインクの顔料濃度は顔料分散体に比べ低いものが一般的であり、本試験方法によりろ過を通過すれば十分といえるが、よりろ過速度が速い方が被覆顔料組成物粒子の再溶解性や解砕性が高く、生産性に優れると言える。
具体的な評価条件を以下に示す。コックを経由して減圧ポンプを付属したサクションベッセルに15mlの目盛のついたファンネルと25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/B GEヘルスケアライフサイエンス社製)をのせた直径25mmフィルターホルダー(ADVANTEC社製)をのせる。サクションベッセル内が減圧されないようにコックを使用して減圧ポンプを稼働する。被覆顔料組成物15gをファンネルにはかり取る。ポンプとサクションベッセルの開圧をスタートとし被覆顔料組成物全量がフィルターを通過する時間を計測する。この時のサクションベッセル内の圧力は0.05MPa〜0.07Mpaである。
◎:30秒以内にろ過ができる(非常に良好)
○:30秒以上、60秒以内にろ過ができる(良好)
△:60秒以上90秒以内にろ過ができる(実用上問題なし)
×:60秒以内にろ過できない(不良)
<印刷試験>
得られたインクジェット記録用インクをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、コート紙(王子製紙製OKトップコート+、米坪104.7g/m)に印刷した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラを評価し、以下の基準で評価した。
○:ドットのつながりや色のムラが全くない(非常に良好)、
△:ドットのつながりや色のムラがわずかにある(実用上問題なし)
×:ドットのつながりや色のムラが全面にある(不良)
(定着性試験)
得られたインクジェット記録用インクを前記インクジェットプリンターのカートリッジに詰めて、光沢PETフィルム(Roland社純正 PET−G−1050)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ社製 P60)にそれぞれ印刷し、印刷物を気温25℃ 湿度50%RH 条件下、一定時間放置後にラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)での光沢PETフィルムに対するインクの定着性(密着性)を評価した。印刷面に対して、試験用布片(金巾3号)にて加重200g、100往復の条件でラビング試験を行い、以下の基準で評価した。
◎:30分放置後に試験を実施しても印刷部分が剥がれない(非常に良好)
○:1時間放置後に試験を実施しても印刷部分が剥がれない(良好)
△:1時間放置後に印刷部分が剥がれても、24時間放置後に印刷部分が剥がれない(実用上問題なし)
×:24時間放置しても印刷部分が剥がれてしまう(不良)
(耐水性試験)
得られたインクジェット記録用インクを前記インクジェットプリンターのカートリッジに詰めて、前記光沢PETフィルムと前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムにそれぞれ印刷した。印刷したサンプルを気温25 ℃湿度50%RH条件下、一定時間放置後にサンプルを水道水に浸漬させて、印刷物のにじみを観察し、以下の基準で評価した。
◎:印刷した直後に浸漬させてもサンプルがにじまない(非常に良好)
〇:印刷した直後に浸漬させるとサンプルがにじむが印刷後10分間ではにじみが発生しない(良好)
△:印刷した直後に浸漬させるとサンプルがにじむが印刷後1 時間ではにじまない(実用上問題なし)
×:印刷後1時間でもにじむ(不良)
表5の結果から、実施例1〜13は、本明細書の被覆顔料を使用しているため、プラスチックフィルムに対する密着性が優れ、耐水性が良好なインク層を形成できるインクに使用可能であることがわかる。樹脂(P)が含む一般式[1]で示すユニット中の重合体ユニットである(Y)は、立体反発部位として機能するため、被覆顔料粒子が凝集し難い。そのため被覆顔料を含む組成物は、被覆顔料の分散安定性が優れることに加えて、Yは、極性が低く、プラスチックフィルムとの親和性が高いため密着性が良好なインク層を形成できる。また、重合体ユニット(Y)にカルボキシ基が含まれると、一般式[1]で示すユニット中の側鎖部分(X−S−Y)がイオンを形成することで、被覆顔料組成物やインクジェット記録用インクが乾燥しても水などの液媒体に容易に再溶解、または再分散することができるため、再溶解性や解砕性に優れ、粗粒量の少ない顔料分散体が得られることが分かった。
また、重合体ユニット(Y)にアルキレンオキシ基が含まれると、インクの印刷性が非常に良好であった。これは、親水性が高いアルキレンオキシ基が水性インク中でくし状に広がるため、立体障害基としての効果が高く、被覆顔料の分散安定性が向上したと考えられる。

Claims (9)

  1. 顔料の表面が樹脂(P)で被覆された被覆顔料であって、
    前記樹脂(P)が、α−オレフィンユニット、および下記一般式[1]で示すユニットを含む、被覆顔料。

    一般式[1]
    (式中、Xは炭素数1〜5の置換もしくは非置換のアルキレン基を表し、Yは重合体ユニットを示す。)
  2. 前記重合体ユニット(Y)が、カルボキシル基、およびアルキレンオキシ基のうち少なくとも1種を有する、請求項1記載の被覆顔料。
  3. 樹脂(P)の重量平均分子量が5,000〜50,000である、請求項1または2記載の被覆顔料。
  4. 前記水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー、カルボキシル基含有ユニットを10〜80質量%含む、請求項1〜3いずれか1項に記載の被覆顔料。
  5. 請求項1〜4いずれか1項に記載の被覆顔料、水、および塩基性化合物を含む、被覆顔料組成物。
  6. 架橋剤を含む、請求項5記載の被覆顔料組成物。
  7. 請求項1〜4いずれか1項に記載の被覆顔料、または請求項5または6記載の被覆顔料組成物を含む、インクジェット記録用インク。
  8. 水溶性有機溶剤、水溶性無機塩、顔料、ならびにα−オレフィンユニット、および下記一般式[1]で示すユニットを有する樹脂(P)を混練機で混合して顔料の表面を樹脂(P)で被覆し、次いで水溶性無機塩および水溶性有機溶剤を除去する、被覆顔料の製造方法。

    一般式[1]
    (式中、Xは炭素数1〜5の置換もしくは非置換のアルキル基を表し、Yは重合体ユニットを示す。)
  9. さらに、請求項8で得られた被覆顔料、水、および塩基性化合物を混合して、樹脂(P)を中和し、次いで、架橋剤を加えて樹脂(P)を架橋する、被覆顔料組成物の製造方法。
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