JP2017024972A - グラファイトプレート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
実施の形態のグラファイトプレートは、表面に一定レベルの表面粗さ(梨地状の粗さ)を有するグラファイト結晶体である。また、その製造方法は、高分子フィルムを1枚または複数枚重ねた状態でグラファイト化するものである。
高分子フィルムを原料としたグラファイトプレートの製造方法を具体的に説明する。原料に以下に示す高分子フィルム3を用い、図1のような3200℃以上の耐熱性を有する耐熱容器1内に保持し、該容器を加熱する。図1は、炉へ入れる耐熱容器1の断面図である。
実施の形態のグラファイトプレート5は、グラファイトの六角網目状の2次元結晶が層状に重なった構造であるため、面方向と厚さ方向の熱伝導率が異なる。
熱は、振動によって伝導されるので、六角網目状構造の共有結合が全て壊れると700W/mK以上の熱伝導率を持たない。また、六角網目状構造の共有結合が全てつながると1500W/mKの熱伝導率になる。よって、グラファイトの六角網目状の2次元結晶が層状に重なった構造である実施の形態のグラファイトプレート5としては、面方向に700W/mK以上1500W/mK以下の熱伝導率を有するものを使用する。
グラファイト結晶の厚さ方向は、ファンデルワ―ルス力によってつながっており、共有結合のように強固ではないため、熱伝導率も小さい。ファンデルワ―ルス力が全て壊れると2W/mK以上の熱伝導率を持たない。また、全てつながると20W/mKの熱伝導率になる。よって、層状に重なった構造である実施の形態のグラファイトプレ―トは、厚さ方向に2W/mK以上、20W/mK以下の熱伝導率を有するものを使用する。
上記の結果、実施の形態のグラファイトプレート5の面方向の熱伝導率は、700W/mK以上、1500W/mK以下であり、厚さ方向の熱伝導率は、2W/mK以上、20W/m以下である。
グラファイトプレート5の密度も結晶構造の壊れ方によって決まり、共有結合とファンデルワールス力もつながった状態での見かけ密度は2.2g/cm3である。共有結合とファンデルワ―ルス力が壊れても結晶が層状に重なった構造が保たれた状態での密度は、1.0g/cm3である。この層状構造が壊れると、密度は1.0g/cm3より小さくなる。よって、グラファイト結晶体である実施の形態のグラファイトプレート5の密度は、1.0g/cm3以上2.2g/cm3以下のものを使用する。
実施の形態のグラファイトプレート5の厚さは、25μm以上2mm以下である。グラファイトプレート5の厚みを、25μm未満にすると、グラファイトプレート5に圧力を均一にかけることができず、表面を制御できない。結果、グラファイトプレート5の表面を梨地状にすることができない。
グラファイトプレート5の原料として用いる高分子フィルムは、ベンゼン環を有する高分子であり、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリフェニレンベンゾイミダゾール、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾールが挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種の高分子フィルムであることが好ましい。なぜなら、最終的に得られるグラファイトプレート5の熱伝導率が高くなるためである。
グラファイトの六角網目状の2次元結晶および層状結晶構造は、与えられる熱処理温度によって決まる。熱処理温度が、2400℃より低いと、グラファイトの六角網目状の2次元結晶ができない、層状に重なった構造もできず、よくない。原子の移動が生じない。
結果、熱処理温度は、2400℃以上必要で、好ましくは2600℃以上、3200℃以下で熱処理することがより好ましい。
グラファイトプレート5の2次元(面方向)の結晶化は、数百nmで起きている現象であり、主に、上記のように、熱処理温度で決まる。
耐熱容器1とブロック2は、ともに3200℃以上に耐え、かつ、不純物を発生しない材質でなければならない。かつ、高分子フィルム3に加圧できる構造を有しなければならないので、100kg/cm2に耐えなければならない。
熱処理時は、熱処理物を酸化させないために、不活性ガスを用いる。ヘリウム、窒素、特にアルゴンが好ましい。ガス圧は炉内に空気が入らないようにするために、常圧より陽圧であればよいが、炉内ガス圧が0.2MPaより高いと、酸素、窒素、水素の離脱ガスが出にくくなる。また、炉内ガス圧が低いと、離脱ガスの放出が急激に起こることで表面が破壊される。
以下に試料を作成し評価した。条件、結果を表1に示す。ただし、実施例4は、原料の積層方法を変更しただけであるので、表1には載せていない。
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン100H、厚さ25μm)を、100mm角に切り、30枚重ねて、図1の耐熱容器1に入れ、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、450℃以上、650℃以下では1度/分で1000℃まで昇温した。その後、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で10度/分で3000℃まで昇温しながら、50kg/cm2の加圧を行い、グラファイトプレート5を製造した。この方法で製造したグラファイトプレート5は、表面粗さ16.3μm、平坦度0.040%であった。熱伝導率は1160W/mKであった。しかし、熱電対6温度は124℃で、評価は「◎」であった。
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン200H 厚さ50μm)を、100mm角に切り、30枚重ねて、図1の耐熱容器1に入れ、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、450℃以上、650℃以下では1度/分で1000℃まで昇温し、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で10度/分で3000℃まで昇温し、80kg/cm2の加圧を行い、グラファイトプレート5を製造した。この方法で製造したグラファイトプレート5は、表面粗さ19.5μm、平坦度0.061%であった。熱伝導率は1030W/mKであった。熱電対6温度は98℃で、評価は「○」であった。
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン300H 厚さ75μm)を、100mm角に切り、30枚重ねて、図1の耐熱容器1に入れ、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、450〜650℃では1度/分で1000℃まで昇温し、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で10度/分で3000℃まで昇温し100kg/cm2の加圧を行い、グラファイトプレート5を製造した。この方法で製造したグラファイトプレート5は、表面粗さ24.7μm、平坦度0.083%であった。熱伝導率は900W/mKであった。熱電対6温度は90℃で、評価は「○」であった。
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン100H 厚さ25μm)を、100mm角に切り、30枚重ねたものを3組準備し、厚さ5mmの4カーボン板を挟んで、図2のように耐熱容器1に入れ、ブロック2で挟んだ。電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、450℃以上、650℃以下では1度/分で1000℃まで昇温し、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で10度/分で3000℃まで昇温し、50kg/cm2の加圧を行い、グラファイトプレート5を製造した。その測定を行い、熱伝導率1120W/mK、表面粗さ16.0μm、平坦度0.045%となり、熱電対6温度は109℃で、評価は「○」であった。
特許文献1の製造方法でポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン100H 厚さ25μm)を、100mm角に切り、30枚重ねて、図1の耐熱容器1に入れ、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、1000℃まで昇温し、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で3000℃まで昇温し、300kg/cm2の加圧を行い、グラファイトプレート5を製造した。この方法で製造したグラファイトプレート5は、表面粗さ1.0μm、平坦度0.005%と、表面は光沢面である。熱伝導率は1360W/mKと実施例1〜3より高い。しかし、熱電対6温度は67℃で、評価は「×」であった。
特許文献2の製造方法でポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン200H 厚さ75μm)を、100mm角に切り、30枚重ねて、図1の耐熱容器1に入れ、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、1000℃まで昇温し、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で3000℃まで無加圧で昇温し、グラファイトプレートを製造した。この方法で製造したグラファイトプレートは、表面粗さ40.0μm、平坦度0.145%と、表面はすりガラス状の非光沢面である。熱伝導率は780W/mKで、熱電対6温度は62℃で、評価は「×」であった。
特許文献2の製造方法でポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン300H 厚さ75μm)を、100mm角に切り、30枚重ねて、図1の耐熱容器1に入れ、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、1000℃まで昇温し、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で3000℃まで無加圧で昇温し、グラファイトプレートを製造した。この方法で製造したグラファイトプレートは、表面粗さ60.5μm、平坦度0.18%と、表面はすりガラス状の非光沢面である。熱伝導率は650W/mKと実施例1〜3より低い。熱電対6温度は59℃で、評価は「×」であった。
特許文献2の製造方法でポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン300H 厚さ75μm)を、100mm角に切り、30枚重ねて、図1の耐熱容器1に入れ、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気で、1000℃まで昇温し、酸素、窒素、水素を離脱させた後、アルゴンガス雰囲気で3000℃まで無加圧で昇温し、グラファイトプレートを製造した。この方法で製造したグラファイトプレートは、表面粗さ73.0μm、平坦度0.195%と、表面はすりガラス状の非光沢面である。熱伝導率は500W/mKと実施例1〜3より低い。熱電対6温度は50℃で、評価は「×」であった。
図3にグラファイトプレート5の表面写真とレーザー形状測定を示す。表面性は、以下の(1)表面粗さと(2)平坦度と(3)接触抵抗とで、その程度を評価する。つまり、規則性のある凹凸である(1)表面粗さと、不規則な凹凸である(2)平坦度と、結果としての熱的特性の(3)接触抵抗とで評価する。表面の熱の接触抵抗(3)を下げるには、(1)(2)の両方の表面性が必要である。
JIS規格のRa(算術平均粗さ)で評価する。
接触熱抵抗軽減による熱伝達の効果を見るため、図5で示した断面構造を用いる。100mm×30mmのグラファイトプレート5の端に熱電対6を貼り付けたものを準備する。熱電対6を貼り付けた反対位置に、300℃に加熱した30mm角の銅ブロック7を置き、5秒後に熱電対6で温度を測定した。接触熱抵抗が小さいと、熱の伝わりが早くなり、熱電対6での測定温度が早く上昇する。評価は、熱電対6の温度が110℃以上を「◎」、90℃以上110℃未満を「○」、70℃以上90℃未満を「△」、70℃未満を「×」とした。
実施例1〜3と比較例1〜4の結果を図6のグラフにまとめた。図6は、縦軸が、平坦度、横軸が表面粗さを示す。表面粗さは、平均的な凹凸であり、平坦度は、一番変化が激しいところの凹凸である。そのため、表面粗さと、平坦度とは、直接の関係がない。
2 ブロック
3 高分子フィルム
4 カーボン板
5 グラファイトプレート
6 熱電対
7 銅ブロック
Claims (6)
- グラファイトプレートの表面粗さ(Ra)が10μm以上、40μm未満であり、
前記グラファイトプレートの表面内の任意の80mmの距離の間で、距離80mmに対する表面凹凸の変化率が、0.01%以上、0.135%以下であるグラファイトプレート。 - 厚さ25μm以上、150μm以下の高分子フィルムを1枚または、複数枚重ねて熱処理して得られる厚さ25μm以上、2mm以下である請求項1に記載のグラファイトプレート。
- 面方向の熱伝導率が、700W/mK以上、1500W/mK以下で、密度が1.0g/cm3以上、2.2g/cm3以下である請求項1又は2に記載のグラファイトプレート。
- 厚さ方向の熱伝導率が、2W/mK以上、20W/mK以下で、密度が1.0g/cm3以上、2.2g/cm3以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のグラファイトプレート。
- 高分子フィルムを不活性ガス中で熱処理するグラファイトプレートの製造方法であり、
前記高分子フィルムに行う熱処理は、前記不活性ガスの雰囲気中で、温度が2400℃以上、3200℃以下であり、温度が2000℃以上で10kg/cm2以上、100kg/cm2以下の加圧をするグラファイトプレートの製造方法。 - 原料とする高分子は、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリフェニレンベンゾイミダゾール、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾール等の縮合系高分子フィルムである請求項5に記載のグラファイトプレートの製造方法。
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