JP2017022068A - 有機el素子の製造方法、有機el素子の製造装置、電気光学装置および電子機器 - Google Patents

有機el素子の製造方法、有機el素子の製造装置、電気光学装置および電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な有機EL素子の製造方法を提供する。【解決手段】有機EL素子130の製造方法は、基体101において、正孔注入層131と発光層133とを含む機能層136を備え、正孔注入層131を液相プロセスにより形成する第1工程と、発光層133を液相プロセスにより形成する第2工程と、を有し、第1工程において、正孔注入層131の形成に用いるインクを暗所で塗布し、第2工程において、発光層133の形成に用いるインクを暗所で塗布する。【選択図】図2

Description

本発明は、有機EL素子の製造方法、有機EL素子の製造装置、電気光学装置および電子機器に関する。
従来から、有機EL(Electro−Luminescence;エレクトロルミネッセンス)素子は、有機発光層を含む機能層を備えており、酸素と水分と光エネルギーとが与えられると、機能層における発光機能が低下したり失われたりすることが知られている。
そのため、例えば、特許文献1では、機能層に用いられる有機材料を遮光状態で保存することによって、光エネルギーによる有機材料の劣化を抑制できる有機材料の保存方法が提案されている。
また、例えば、特許文献2では、窒素雰囲気下において、発光層用塗膜を成膜した後、光エネルギーが照射されないように、大気雰囲気下の暗所に保持し、その後、所定の酸素濃度および水分濃度の雰囲気下において、発光層用塗膜を焼成することにより有機膜を形成して、素子寿命の長い有機EL素子の製造方法が開示されている。
特開2005−135733号公報 特開2011−181498号公報
しかしながら、特許文献1に記載の有機材料の保存方法では、遮光性の容器に密閉する保存状態において、酸素が供給されないように、窒素などの不活性ガス雰囲気下で保存する必要がある。
また、特許文献2に記載の有機EL素子の製造方法では、正孔輸送層や発光層を構成する有機膜を形成する際に、有機化合物を含む溶液の塗布を窒素雰囲気下で行うために、窒素充填機構が必要となる。
その結果、製造工程が複雑になったり、大掛かりな装置が必要になったり、インフラコストが増大するおそれがあった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例]本適用例に係る有機EL素子の製造方法は、基体において、正孔注入層と発光層とを含む機能層を備えた有機EL素子の製造方法であって、前記正孔注入層を液相プロセスにより形成する第1工程と、前記発光層を液相プロセスにより形成する第2工程と、を有し、前記第1工程において、前記正孔注入層の形成に用いる第1の機能液を暗所で塗布し、前記第2工程において、前記発光層の形成に用いる第2の機能液を暗所で塗布することを特徴とする。
この方法によれば、正孔注入層を大気中で成膜する場合においても、光エネルギーが、正孔注入層の形成に用いるインクに与える影響を抑制することができる。その結果、有機EL素子の素子特性、例えば、発光特性や素子寿命の劣化を低減できる。そのため、窒素充填機構が不要となり、簡易な有機EL素子の製造方法を実現できる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、正孔輸送層を形成する第3工程を有し、前記第3工程において、前記正孔輸送層の形成に用いる第3の機能液を暗所で塗布することを特徴とする。
この方法によれば、第3の機能液の塗布を暗所で行うことによって、正孔輸送層を大気中で成膜する場合においても、光エネルギーが第3の機能液に与える影響を低減できる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記第1工程を大気下で行うことを特徴とする。
この方法によれば、第1工程を減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気下で行う場合に比べて、簡易な有機EL素子の製造方法を実現することができる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記第1工程において、塗布した前記第1の機能液の乾燥を暗所で行うことを特徴とする。
この方法によれば、正孔注入層の形成に用いるインクの塗布だけでなく、乾燥を暗所で行うことによって、光エネルギーが、第1の機能液に与える影響を低減できる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記第2工程において、塗布した前記第2の機能液の乾燥を暗所で行うことを特徴とする。
この方法によれば、第2の機能液の塗布だけでなく、乾燥を暗所で行うことによって、光エネルギーが、第2の機能液に与える影響を低減できる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記第1工程において、塗布した前記第1の機能液を乾燥して得られた薄膜の焼成を、暗所で行うことを特徴とする。
この方法によれば、正孔注入層を形成するインクの塗布および乾燥だけでなく、焼成を暗所で行うことによって、光エネルギーが、正孔注入層を形成するインクに与える影響を低減できる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記第2工程において、塗布した前記第2の機能液を乾燥して得られた薄膜の焼成を、暗所で行うことを特徴とする。
この方法によれば、発光層を形成するインクの塗布および乾燥だけでなく、焼成を暗所で行うことによって、光エネルギーが、発光層を形成するインクに与える影響を低減できる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記機能層は、電子輸送層、電子注入層のうちの少なくとも1つの層を有することを特徴とする。
この方法によれば、機能層が、発光層に効率的に電子を注入することができる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記液相プロセスは、インクジェット法であることを特徴とする。
この方法によれば、機能層を形成する領域に、機能層を形成する材料を含む所定量のインクを精度よく塗布することができる。そのため、機能層を所望の層厚に形成することができる。
上記適用例に係る有機EL素子の製造方法において、前記電子輸送層、前記電子注入層、陰極のうちの少なくとも1つの層は、真空蒸着法で形成されることを特徴とする。
この方法によれば、スパッタリング法と比較して、発光層にダメージを与え難い。そのため、有機EL素子の素子特性を向上させることができる。
[適用例]本適用例に係る有機EL素子の製造装置は、正孔注入層および発光層を形成する有機EL素子の製造装置であって、
前記第1の機能液の塗布および前記第2の機能液の塗布を暗所で行う塗布機構を有していることを特徴とする。
この構成によれば、正孔注入層を形成するインクの塗布および発光層を形成するインクの塗布を暗所で行うことによって、光エネルギーが、正孔注入層を形成するインクおよび発光層を形成するインクに与える影響を低減できる。
[適用例]本適用例に係る電気光学装置は、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法を用いて製造された有機EL素子を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、優れた電気光学特性を有する電気光学装置を提供できる。
[適用例]本適用例に係る電子機器は、請求項12に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、優れた電気光学特性を有する電子機器を提供できる。
電気光学装置としての有機EL装置の構成を示す概略平面図。 有機EL素子の構造を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示すフローチャート。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造装置の構成を示す概略斜視図。 インクジェットヘッドの構成を示す概略斜視図。 インクパックの構成を示す概略斜視図。 実施例および比較例の有機EL素子の製造方法における雰囲気と素子特性との関係を示す表。 電子機器の一例であるノート型のパーソナルコンピューターを示す概略図。 電子機器の一例である薄型テレビ(TV)を示す概略図。
以下に本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさにして、説明を分かりやすくするため、各構成要素の尺度を実際とは異なる尺度で記載している場合がある。
(第1実施形態)
<電気光学装置>
本実施形態の有機EL素子の製造方法を用いて製造された有機EL素子を備える電気光学装置について、図1および図2を参照して説明する。図1は、電気光学装置としての有機EL装置の構成を示す概略平面図であり、図2は、有機EL素子の構造を示す概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態の電気光学装置としての有機EL装置100は、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光(発光色)が得られるサブ画素110R,110G,110Bが配置された素子基板101を有している。素子基板101は、ガラスなどからなる透明な基板である。
各サブ画素110R,110G,110Bは略矩形状であり、素子基板101の表示領域Eにおいてマトリックス状に配置されている。ここで、略矩形状とは、正方形、長方形に加えて、角部が丸くなった四角形、対向する2辺部が円弧状となった四角形を含むものである。以降、サブ画素110R,110G,110Bを総称してサブ画素110と呼ぶこともある。
同じ発光色のサブ画素110が、図面上において垂直方向(列方向あるいはサブ画素110の長手方向)に配列し、異なる発光色のサブ画素110が図面上において水平方向(行方向あるいはサブ画素110の短手方向)にR,G,Bの順で配列している。
すなわち、異なる発光色のサブ画素110R,110G,110Bが、いわゆるストライプ方式で配置されている。なお、サブ画素110R,110G,110Bの平面形状と配置は、これに限定されるものではない。
サブ画素110Rには、赤(R)の発光が得られる有機EL素子が設けられており、同じく、サブ画素110Gには、緑(G)の発光が得られる有機EL素子が設けられており、サブ画素110Bには、青(B)の発光が得られる有機EL素子が設けられている。
このような有機EL装置100は、異なる発光色が得られる3つのサブ画素110R,110G,110Bを1つの表示画素単位として、それぞれのサブ画素110R,110G,110Bは電気的に制御される。これによりフルカラー表示が可能となっている。
各サブ画素110R,110G,110Bには、図2に示す有機EL素子130が設けられている。図2に示すように、有機EL素子130は、基体としての素子基板101と、絶縁膜102と、画素電極103と、対向電極104と、機能層136と、を有している。
絶縁膜102は、素子基板101と画素電極103との電気的な短絡を防ぐために、素子基板101上に形成されており、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンあるいは酸窒化シリコンなどを用いて形成される。
画素電極103は、陽極として機能するものであり、サブ画素110R,110G,110Bごとに設けられ、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜を用いて形成されている。
対向電極104は、陰極として機能するものであり、サブ画素110R,110G,110Bに共通した共通電極として設けられ、例えば、Al(アルミニウム)やAg(銀)とMg(マグネシウム)の合金などを用いて形成されている。
陽極としての画素電極103側から発光層133にキャリアとしての正孔が注入され、陰極としての対向電極104側から発光層133にキャリアとしての電子が注入される。
発光層133において、注入された正孔と電子とにより、励起子(エキシトン)が形成され、励起子(エキシトン)が消滅する際に、言い換えれば、正孔と電子とが再結合する際に、エネルギーの一部が蛍光や燐光となって放出される。励起子(エキシトン)とは、正孔と電子とがクーロン力にて互いに束縛された状態のことをいう。
機能層136は、画素電極103と対向電極104との間に設けられており、画素電極103側から、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133、電子輸送層134、電子注入層135が順に積層されたものである。
特に、発光層133は発光色に応じて構成材料が選ばれるが、ここでは、発光色に関わらず総称して発光層133と呼ぶ。
なお、機能層136の構成は、これに限定されるものではなく、これらの層以外に、電荷(キャリア;正孔や電子)の移動を制御する中間層などを備えていてもよい。
有機EL装置100において、光反射性を有するように対向電極104を構成すれば、発光層133からの発光を素子基板101側から取り出すボトムエミッション方式とすることができる。
また、画素電極103と素子基板101との間に反射層を設ける、または光反射性を有するように画素電極103を構成し、光透過性を有するように対向電極104を構成すれば、発光層133からの発光を対向電極104側から取り出すトップエミッション方式とすることもできる。
本実施形態では、有機EL装置100がボトムエミッション方式であるとして、以降の説明を行う。また、本実施形態の有機EL装置100は、サブ画素110R,110G,110Bごとの有機EL素子130をそれぞれ独立して駆動することができる画素回路を素子基板101に備えたアクティブ駆動型である。画素回路は、公知の構成を採用することができるので、図2では画素回路の図示を省略している。
有機EL装置100は、サブ画素110R,110G,110Bごとの有機EL素子130における画素電極103の外縁と重なると共に、画素電極103上に開口部105aを構成する隔壁105を備えている。
有機EL素子130は、機能層136を構成する正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133が液相プロセスにより形成されたものである。ここで、液相プロセスとは、それぞれの層を構成する成分と溶媒とを含んだ溶液、言い換えれば、機能層136を形成するために用いる材料(機能層形成用組成物)を隔壁105で囲まれた開口部105aに塗布して乾燥、焼成することにより、それぞれの層を形成する方法である。
それぞれの層を所望の膜厚で形成するためには、機能層形成用組成物を、量と位置とに関して精度よく、開口部105aに塗布する必要があり、本実施形態では、液相プロセスとして、インクジェット法(液滴吐出法)を採用している。
<有機EL素子の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法について、図面を参照して具体的に説明する。図3は、有機EL素子の製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図10は、有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
なお、前述したように、有機EL素子130を駆動制御する画素回路や画素電極103の形成方法は、公知の方法を採用することができるので、ここでは、隔壁105を形成する工程以降について説明する。
本実施形態の有機EL素子130の製造方法は、隔壁105を形成する工程(ステップS1)と、表面処理をする工程(ステップS2)と、正孔注入層131を形成する工程(ステップS3)と、正孔輸送層132を形成する工程(ステップS4)と、発光層133を形成する工程(ステップS5)と、封止する工程(ステップS6)と、を備えている。
なお、本実施形態では、正孔注入層131を形成する工程が、本発明における第1工程に相当し、正孔輸送層132を形成する工程が、本発明における第3工程に相当し、発光層133を形成する工程が、本発明における第2工程に相当している。
(1)ステップS1 隔壁を形成する工程
まず、図4に示すように、画素電極103が形成された素子基板101に、例えば、機能層形成用組成物(以下、インクという)に対して撥液性を示す撥液材料を含む感光性樹脂材料を、1μm〜2μmの厚みで塗布して乾燥することにより、感光性樹脂層(図示せず)を形成する。
塗布方法としては、転写法、スリットコート法などが挙げられる。撥液材料としては、フッ素化合物やシロキサン系化合物が挙げられる。感光性樹脂材料としては、ネガ型の多官能アクリル樹脂を挙げることができる。
次に、できあがった感光性樹脂層をサブ画素110の形状に対応した露光用マスクを用いて露光、現像して、画素電極103の外縁と重なると共に、画素電極103上に開口部105aを構成する隔壁105を形成する。
(2)ステップS2 表面処理をする工程
隔壁105が形成された素子基板101に表面処理を施す。表面処理をする工程は、次工程で機能層136(図2参照)を構成する正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133をインクジェット法で形成する際に、隔壁105で囲まれた開口部105aにおいて、インクがむらなく濡れ拡がるように、画素電極103の表面の隔壁残渣などの不要物を取り除く目的で行われる。
表面処理をする方法として、本実施形態ではエキシマUV(紫外線)処理を実施した。なお、表面処理をする方法は、エキシマUV処理に限定されず、画素電極103の表面を清浄化できればよく、例えば、溶媒による洗浄、乾燥工程を行ってもよい。また、画素電極103の表面が清浄な状態であれば、表面処理をする工程を実施しなくてもよい。
本実施形態では、撥液材料を含む感光性樹脂材料を用いて隔壁105を形成したが、これに限定されるものではない。例えば、撥液材料を含まない感光性樹脂材料を用いて隔壁105を形成した後に、フッ素系の処理ガスを用いたプラズマ処理を施して隔壁105の表面に撥液性を与え、その後、酸素を処理ガスとするプラズマ処理を施して画素電極103の表面を親液化する表面処理を行ってもよい。
(3)ステップS3 正孔注入層を形成する工程
図5に示すように、正孔注入層131を形成するために用いる正孔注入層形成材料を含む第1の機能液としてのインク60を開口部105aに塗布する(塗布工程)。このとき、インク60の塗布工程を暗所で行う。ここで、暗所とは、照度が1ルクス以下の環境のことをいう。インク60を塗布する工程が暗所で行われることから、光エネルギーがインク60に与える影響を低減できるので、塗布工程を行う雰囲気は、窒素充填機構などの装置を必要としない大気下で実施する。
インク60の塗布方法は、インク60をインクジェットヘッド50のノズル51から液滴Dとして吐出するインクジェット法を用いる。
インクジェットヘッド50から吐出される液滴Dの吐出量は、pl(ピコリットル)単位で制御可能であって、所定量を液滴Dの吐出量で除した数の液滴Dが開口部105aに吐出される。
吐出されたインク60は、隔壁105との界面張力により開口部105aにおいて盛り上がるが、溢れてしまうことはない。言い換えれば、開口部105aから溢れ出ない程度の所定量となるように、インク60における後述する正孔注入層形成材料の濃度が予め調整されている。
次に、インク60が塗布された素子基板101を減圧下に放置し、インク60から溶媒を蒸発させて乾燥する(減圧乾燥工程)。この減圧乾燥工程は、イエロールーム内で実施する。
ここで、イエロールームとは、クリーンルーム内で、特に感光性物質が扱われるフォトリソグラフィー工程のレジストの感光を防ぐために、波長500nm以下の紫外線を遮断して、黄色の蛍光灯(波長592nm)で照らされたエリアのことである。
次に、図6に示すように、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、例えば、180℃で、30分間加熱する焼成処理を施すことにより、正孔注入層131が完成する(焼成工程)。この焼成工程は、イエロールーム内で実施する。
ここで、不活性ガス雰囲気下とは、酸素濃度と水分濃度とがそれぞれ1ppm以下となるように乾燥された窒素が充填された環境のことをいう。
正孔注入層131は、正孔注入層形成材料の選択や機能層136における他の層との関係で、必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ40nm〜100nmの膜厚で形成される。
(4)ステップS4 正孔輸送層を形成する工程
図7に示すように、正孔輸送層132を形成するために用いる正孔輸送層形成材料を含む第3の機能液としてのインク70を用いて正孔輸送層132を形成する。正孔輸送層132の形成方法も、インクジェット法を用いて行う。すなわち、所定量のインク70をインクジェットヘッド50のノズル51から液滴Dとして開口部105aに吐出する(塗布工程)。この塗布工程は、イエロールーム内で実施する。
次に、インク70が塗布された素子基板101を減圧下に放置し、インク70から溶媒を蒸発させて乾燥する(減圧乾燥工程)。この減圧乾燥工程は、イエロールーム内で実施する。
次に、図8に示すように、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、例えば、220℃で、30分間加熱する焼成処理を施すことにより、正孔輸送層132が完成する(焼成工程)。この焼成工程は、イエロールーム内で実施する。
正孔輸送層132は、正孔輸送層形成材料の選択や機能層136における他の層との関係で、必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ10nm〜30nmの膜厚で形成される。
また、機能層136における他の層との関係で、正孔注入層131と正孔輸送層132とを合体させた正孔注入輸送層としてもよい。
(5)ステップS5 発光層を形成する工程
図9に示すように、発光層133を形成するための材料を含む第2の機能液としてのインク80を用いて発光層133を形成する。発光層133の形成方法も、正孔注入層131と同様に、インクジェット法を用いて行う。
すなわち、所定量のインク80をインクジェットヘッド50のノズル51から液滴Dとして開口部105aに吐出する(塗布工程)。このとき、インク80の塗布工程を暗所で行う。インク80を塗布する工程が暗所で行われることから、光エネルギーがインク80に与える影響を低減できるので、塗布工程を行う雰囲気は、窒素充填機構などの装置を必要としない大気下で実施する。
次に、インク80が塗布された素子基板101を減圧下に放置し、インク80から溶媒を蒸発させて乾燥する(減圧乾燥工程)。この減圧乾燥工程は、イエロールーム内で実施する。
次に、図10に示すように、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、例えば、160℃で、10分間加熱する焼成処理を施すことにより、発光層133が完成する(焼成工程)。この焼成工程は、イエロールーム内で実施する。
発光層133は、発光層形成材料の選択や機能層136における他の層との関係で、必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ40nm〜70nmの膜厚で形成される。
次に、発光層133と隔壁105とを覆って電子輸送層134を形成する(図2参照)。電子輸送層134を構成する電子輸送材料としては、特に限定されないが、真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成できるように、例えば、BALq、1,3,5−トリ(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(OXD−1)、BCP(Bathocuproine)、2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、4,4’−bis(1,1−bisジフェニルエテニル)ビフェニル(DPVBi)、2,5−bis(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)、4,4’−bis(1,1−bis(4−メチルフェニル)エテニル)ビフェニル(DTVBi)、2,5−bis(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール(BBD)などを挙げることができる。
また、電子輸送層134を構成する電子輸送材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フェナンソロリン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ヒドロキシキノリン誘導体などを挙げることができる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子輸送層134は、上記電子輸送材料の選択や機能層136における他の層との関係で、必ずしもこれに限定されるものではないが、およそ20nm〜40nmの膜厚で形成される。これにより、対向電極104から注入された電子を好適に発光層133に輸送することができる。また、機能層136における他の層との関係で、電子輸送層134を省略することもできる。
次に、電子輸送層134を覆って電子注入層135を形成する(図2参照)。電子注入層135を構成する電子注入材料としては、特に限定されないが、真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成できるように、例えば、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を挙げることができる。
アルカリ金属化合物としては、例えば、LiF、Li2CO3、LiCl、NaF、Na2CO3、NaCl、CsF、Cs2CO3、CsClなどのアルカリ金属塩が挙げられる。また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、CaF2、CaCO3、SrF2、SrCO3、BaF2、BaCO3などのアルカリ土類金属塩が挙げられる。これらのアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物うちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層135の膜厚は、特に限定されないが、1nm以上、10nm以下程度であるのが好ましく、1nm以上、5nm以下程度であるのがより好ましい。これによって、対向電極104から電子輸送層134に電子を効率よく注入できる。
次に、電子注入層135を覆って対向電極104を形成する(図2参照)。対向電極104の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましく、かつ、真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成できるものが好ましい。
対向電極104の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb、Au、または、これらを含む合金などが用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体など)用いることができる。
特に、本実施形態のように、有機EL装置100をボトムエミッション方式とする場合には、対向電極104に光反射性が求められるため、対向電極104の構成材料として、例えば、Al、Ag、AlAg、AlNdなどの金属または合金が好ましく用いられる。このような金属または合金を対向電極104の構成材料として用いることにより、対向電極104の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
ボトムエミッション方式における対向電極104の膜厚は、特に限定されないが、50nm以上、1000nm以下程度であるのが好ましく、100nm以上、500nm以下程度であるのがより好ましい。
有機EL装置100をトップエミッション方式とする場合、対向電極104の構成材料としては、Mg、Al、Ag、Auなどの金属、またはMgAg、MgAl、MgAu、AlAgなどの合金を用いるのが好ましい。このような金属または合金を用いることにより、対向電極104の光透過性を維持しつつ、対向電極104の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
トップエミッション方式における対向電極104の膜厚は、特に限定されないが、1nm以上、50nm以下程度であるのが好ましく、5nm以上、20nm以下程度であるのがより好ましい。
(6)ステップS6 封止する工程
上記製造方法により形成された有機EL素子130は、例えば、外部から水分や酸素などが浸入すると、機能層136における発光機能が阻害され、部分的に発光輝度が低下したり、発光しなくなったりする暗点(ダークスポット)が発生したりするおそれがある。また、発光寿命が短くなるおそれがある。
そこで、有機EL素子130を水分や酸素などの浸入から保護するために、封止層(図示せず)によって覆うことが好ましい。封止層としては、例えば、水分や酸素などの透過性が低い、酸窒化シリコン(SiON)などの無機絶縁材料を用いることができる。
また、例えば、透明なガラスなどの封止基板を、有機EL素子130が形成された素子基板101に接着剤を介して貼り付けることにより、有機EL素子130を封着してもよい。こうすることによって、発光寿命において高い信頼性を有する有機EL装置100を提供することができる。
以上により、有機EL素子130が完成する。
<構成材料>
次に、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133について、液相プロセスで用いることが可能なそれぞれの構成材料(形成材料)について説明する。
[正孔注入輸送材料(HIL材料、HTL材料)]
正孔注入層(HIL)131や正孔輸送層(HTL)132の形成に好適な正孔注入輸送材料としては、特に限定されないが、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン(TFB)などのポリアリールアミンのようなアリールアミン骨格を有する芳香族アミン系化合物、フルオレン−ビチオフェン共重合体のようなフルオレン骨格や、フルオレン−アリールアミン共重合体のようなアリールアミン骨格およびフルオレン骨格の双方を有するポリフルオレン誘導体(PF)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系、ポリ[bis(4―フェニル)(2,4,6―トリメチルフェニル)アミン])(PTTA)、ポリ[N,N’−bis(4−ブチルフェニル)−N,N’−bis(フェニル)−ベンジジン]などが挙げられる。
このようなp型の高分子材料は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、綜研化学製導電性ポリマーベラゾール(商標)など、ポリアニリンとして日産化学製エルソース(商標)が挙げられる。
p型の低分子材料としては、例えば、1,1−bis(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−bis(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン(TAPC)のようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−bis(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−bis(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−bis(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−bis(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、トリフェニルアミン−テトラマー(TPTE)、1,3,5−トリス−[4−(ジフェニルアミノ)ベンゼン(TDAPB)、トリス−(4−カルバゾール−9−イル−フェニル)−アミン(スピローTAD)、トリス−p−トリルアミン(HTM1)、1,1−bis[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(HTM2)、N4,N4’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)bis(N4,N4’,N4’−トリフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン)(TPT1)のようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)、PDA−Si(Mol.Cryst.Liq.Cryst.Vol.462.pp.249−256,2007)、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(DPPD)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、VB−TCA(Adv.Mater.2007,19,300−304)のようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OxZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)、4,4’,4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)のようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−bis(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物などが挙げられる。
なお、PDA−Siは、高分子化を図るために、カチオン重合性化合物;キシレンビスオキセタン(東亞合成 アロンオキセタンOXT−121)、ラジカル重合開始剤;脂肪族系ジアシルパーオキサイド(パーロイルL、日本油脂株式会社)が添加されて用いられる。
PEDOT/PSSの好ましい溶媒としては、水が挙げられる。他のp型の高分子材料や低分子材料の溶媒としては、トルエン、キシレン、3−フェノキシトルエン(3−PT)などの芳香族溶媒が挙げられる。
[発光材料]
次に、蛍光または燐光が得られる発光材料(EML材料)について、発光色ごとに具体例を挙げて説明する。
(赤色発光材料)
まず、赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、ペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−(1−シアノビニレンフェニレン)]、ポリ[{9,9−ジヘキシル−2,7−bis(1−シアノビニレン)フルオレニレン}オルト−co−{2,5−bis(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン}]、ポリ[{2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−(1−シアノビニレンフェニレン)}−co−{2,5−bis(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン}]などが挙げられる。
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格などを持つものも挙げられる。
さらに具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、bis[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(Btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ファク−トリス(2−フェニル)−bis(2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(Bt2Ir(acac))、bis(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)などが挙げられる。
また、赤色の発光層133中には、前述した赤色発光材料の他に、赤色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料を含んでいてもよい。
ホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。
このようなホスト材料を用いる場合、例えば、ゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
このようなホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して、前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、ナフタセン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体のようなアセン誘導体(アセン系材料)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)などのキノリノラト系金属錯体(BAql)、トリフェニルアミンの4量体などのトリアリールアミン誘導体(TDAPB)、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体(SimCP、UGH3)、ジカルバゾール誘導体(CBP、mCP、CDBP、DCB)、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−bis(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、リン誘導体(PO6)などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前述したような赤色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、赤色の発光層133中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01wt%〜10wt%であるのが好ましく、0.1wt%〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
(緑色発光材料)
緑色発光材料としては、特に限定されず、例えば、各種緑色蛍光材料および緑色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、9,10−bis[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−co−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−co−(1,4−ベンゾ−{2,1’,3}−チアジアゾール)](F8BT)などが挙げられる。
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属錯体が挙げられ、具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、bis(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)(Ppy2Ir(acac))、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムなどが挙げられる。
また、緑色の発光層133中には、前述した緑色発光材料の他に、緑色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料が含まれていてもよい。
このようなホスト材料としては、前述した赤色の発光層133で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
(青色発光材料)
青色発光材料としては、例えば、各種青色蛍光材料および青色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、ジスチリルジアミン系化合物などのジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−bis(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−co−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(エチルニルベンゼン)]、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ジフェニル)−N,N’−ジ(パラ−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノ−ベンゼン]]などが挙げられる。
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属錯体が挙げられ、さらに具体的には、bis[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム(FIrpic)、トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C2’)(Ir(pmb)3)、bis(2,4−ジフルオロフェニルピリジネート)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾール)イリジウム(FIrN4)、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C2’]イリジウム、bis[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、bis(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)などが挙げられる。
また、青色の発光層133中には、前述した青色発光材料の他に、青色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料が含まれていてもよい。
このようなホスト材料としては、前述した赤色の発光層133で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
本実施形態において、低分子とは、分子量が1000未満のモノマー、あるいは重量平均分子量が1000未満の、基本骨格が繰り返された構造を有するポリマーまたはオリゴマーを指し、高分子とは、重量平均分子量が1000以上の、基本骨格が繰り返された構造を有するポリマーまたはオリゴマーを指す。
これらの発光層形成材料の好ましい溶媒としては、トルエン、キシレン、3−フェノキシトルエン(3−PT)などの芳香族溶媒が挙げられる。
<有機EL素子の製造装置>
有機EL素子の製造装置について、図面を参照して説明する。図11は、有機EL素子の製造装置の構成を示す概略斜視図である。
図11に示すように、有機EL素子の製造装置10は、遮蔽部11と、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)ユニット12と、ステージ22と、インクカートリッジ23と、配管24と、キャリッジ25と、基台26と、制御部27と、X方向ガイド軸28と、Y方向ガイド軸29と、X軸駆動モーター30と、クリーニング機構32と、Y軸駆動モーター31,33などを備えている。
製造装置10は、金属などの遮光性を有する材料で形成された遮蔽部11によって装置全体が覆われており、遮蔽部11の内側が、外部からの光に照射され難い構造になっている。
そのため、製造装置10を用いることによって、素子基板101に正孔注入層131を形成するインク60の塗布および発光層133を形成するインク80の塗布を実施する際に、これらのインクが光エネルギーを得ることの少ない暗所で塗布を行うことができる。つまり、遮蔽部11が、本発明の塗布機構の一例を示すものである。
遮蔽部11の天井部分には、HEPAユニット12が設けられており、遮蔽部11の内側に清浄化した空気を送っている。HEPAユニット12により、インク60、インク70、インク80(以下、まとめてインクということがある)を素子基板101の表面に塗布する際に、異物などが素子基板101の表面に付着しないようにクリーン度が確保されている。
キャリッジ25には、ノズル面58a(図12参照)がステージ22と対向するように、インクジェットヘッド50が取り付けられており、インクが充填されたインクパック40を内包するインクカートリッジ23から配管24を通じてインクジェットヘッド50にインクが供給される。ステージ22に素子基板101を搭載して、インクジェットヘッド50のノズル51(図12参照)からインクを液滴として吐出する。
なお、キャリッジ25に搭載されるインクジェットヘッド50は、1つに限定されるものではなく、吐出されるインクの種類に対応して、複数のインクジェットヘッド50が搭載されていてもよい。その場合には、インクパック40を含むインクカートリッジ23は、インクの種類ごとに設けられることになる。
基台26の下部には、制御部27が設けられている。制御部27は、インクジェットヘッド50に吐出電圧を供給し、吐出電圧に応じてインクジェットヘッド50から吐出されるインクの液滴の量(吐出量ともいう)を可変している。
基台26の上部には、X方向ガイド軸28とY方向ガイド軸29とが設けられている。X方向ガイド軸28は、インクジェットヘッド50が取り付けられたキャリッジ25を副走査方向(X方向)に駆動するものである。X軸駆動モーター30は、X方向ガイド軸28を回転させるモーターであり、例えば、ステッピングモーターなどが挙げられる。
Y方向ガイド軸29は、ステージ22を副走査方向(X方向)に対して直交する主走査方向(Y方向)に駆動するものである。Y軸駆動モーター31は、Y方向ガイド軸29を回転させるモーターであり、X軸駆動モーター30と同様に、例えば、ステッピングモーターなどが挙げられる。
X方向ガイド軸28およびX軸駆動モーター30、Y方向ガイド軸29およびY軸駆動モーター31は、インクジェットヘッド50に対して、ステージ22を対向させて主走査方向(Y方向)および副走査方向(X方向)に相対的に移動させる移動手段である。
X軸駆動モーター30は、制御部27からX方向の駆動パルス信号が供給されて、X方向ガイド軸28を回転させ、X方向ガイド軸28に係合したキャリッジ25をX方向に移動させる。
Y軸駆動モーター31は、制御部27からY方向の駆動パルス信号が供給されて、Y方向ガイド軸29を回転させ、ステージ22をY方向に移動させる。
クリーニング機構32は、インクジェットヘッド50を臨む位置に移動し、インクジェットヘッド50のノズル面58a(図12参照)に密着して不要なインクを吸引するキャッピング、インクなどが付着したノズル面58aを拭き取るワイピング、インクジェットヘッド50の全ノズル51(図12参照)からインクの塗布を行う予備塗布、あるいは不要となったインクを受けて排出させる回復処理を行う。
クリーニング機構32は、インクジェットヘッド50をクリーニング(回復処理)するための機構である。クリーニング機構32には、Y軸駆動モーター33が備えられている。
Y軸駆動モーター33も、Y軸駆動モーター31と同様に、クリーニング機構32をY方向移動させる移動手段であり、例えば、ステッピングモーターなどが挙げられる。
また、Y軸駆動モーター33は、制御部27からY方向の駆動パルス信号が供給されて、Y方向ガイド軸29を回転させ、クリーニング機構32をY方向に移動させる。
<インクジェットヘッド>
インクジェットヘッドについて、図面を参照して説明する。図12は、インクジェットヘッドの構成を示す概略斜視図である。
図12に示すように、インクジェットヘッド50は、いわゆる2連のものであり、導入部53と、ヘッド基板55と、ヘッド本体56などを備えている。
導入部53は、2連の接続針54を有している。接続針54は、前述したインクカートリッジ23に配管24を経由して接続され、接続針54を経由してインクがヘッド内流路(図示せず)に供給される。
ヘッド基板55は、導入部53に積層されており、フレキシブルフラットケーブル(図示せず)を介してヘッド駆動回路部(図示せず)に接続される2連のコネクター59を備えている。
ヘッド本体56は、加圧部57と、ノズルプレート58と、を備えている。
加圧部57は、ヘッド基板55上に配置され、内部にインクのヘッド内流路が形成されており、ピエゾ素子などのアクチュエーターを備えたキャビティを有している。
ノズルプレート58は、ノズル面58aに相互に平行に形成されている2つのノズル列52,52を有している。
2つのノズル列52,52は、それぞれ複数(180個)のノズル51が、略等間隔に並べられており、互いに半ノズルピッチずれた状態で、ノズルプレート58に配設されている。本実施形態におけるノズルピッチは、およそ140μmである。よって、ノズル列52に直交する方向から見ると、360個のノズル51が、およそ70μmのノズルピッチで配列した状態となっている。
インクジェットヘッド50は、ヘッド駆動回路部から電気信号としての駆動波形がアクチュエーターに印加されると、加圧部57のノズル51ごとに設けられたキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ作用で、キャビティに充填されたインクが加圧され、キャビティに連通するノズル51からインクを液滴として吐出することができる。
インクジェットヘッド50について、アクチュエーターはピエゾ素子に限らず、インクを加熱してノズル51から液滴として塗布させる、例えば、ヒーターなどの電気熱変換素子、キャビティを構成する振動板を静電気で変形させる電気機械変換素子であってもよい。
<インクパック>
次に、インクパックについて、図面を参照して説明する。図13は、インクパックの構成を示す概略斜視図である。
図13に示すように、インクパック40は、液体収容袋41と、連通部45と、を備えている。
液体収容袋41は、同じ大きさの長方形状で可撓性を有する2枚のフィルム部材42,43を重ね合わせて、その4辺の縁を熱溶着することにより袋状に形成されている。
フィルム部材42,43は、例えば、ポリエチレンフィルムなどの熱可塑性樹脂層の間に蒸着されたアルミニウムなどのガスバリア層を挟んだ積層構造となっている。
連通部45は、液体収容袋41の4辺のうちの1つである辺44に、2枚のフィルム部材42,43に挟まれた状態で熱溶着されている。
連通部45は、液体収容袋41の内部と外部とを連通させており、フィルム部材42,43の上記熱可塑性樹脂層と熱溶着可能な樹脂とによって形成されている。これにより、液体収容袋41の内部空間は封止されている。
インクパック40は、連通部45を通じて液体収容袋41の内部にインクが充填される。連通部45にキャップ(図示せず)をすることによって、インクが充填されたインクパック40を密封することができる。インクパック40の容量は、例えば、500ml(ミリリットル)である。
インクパック40は、液体充填装置を用いてインクが充填されるので、異物などが含まれずに清浄度が確保された状態で、インクパック40内にインクを保持することができる。従って、このようなインクパック40を用いて、製造装置10のインクジェットヘッド50からインクを吐出すれば、素子基板101上に異物などが少ない機能膜を安定的に形成することができる。ここで、異物とは、金属粉や繊維などの作業環境から混入するもの、インクがゲル化したものなどを含む。
<遮蔽部>
図11で説明したように、製造装置10は、金属などの遮光性を有する材料で形成されている遮蔽部11によって装置全体が覆われており、遮蔽部11の内側が、外部からの光に照射され難い構造になっている。
素子基板101に正孔注入層131を形成するインク60の塗布および発光層133を形成するインク80の塗布を実施する際に、これらのインクが光エネルギーを得ることの少ない暗所で塗布を行うことができる環境であれば、上記形態には限らない。
このようなことから、製造装置10が遮光性を有する外装体で囲まれていてもよい。ここで、外装体とは、遮光状態を形成するための物質、用具、機材または設備を意味するものであり、特定のものに限定されない。
例えば、製造装置10を、暗室、グローブボックスなどの外装体に収納することによって遮光状態を形成してもよい。
また、製造装置10の内部の一部が、遮光性を有する内装体で囲まれることによって、素子基板101に正孔注入層131を形成するインク60の塗布および発光層133を形成するインク80の塗布を実施する環境が、局所的に暗所となっていてもよい。
外装体および内装体の材質は、例えば、紙、布、段ボール、木、ガラス、アルミニウムやステンレスなどの金属またはその合金、陶磁器、樹脂などが挙げられる。
このような外装体または内装体による遮光状態の形成は、1つの手段によって限定されるものではなく、2つ以上の手段を組み合わせてもよい。
<塗布時の雰囲気と素子特性との関係>
有機EL素子130の製造方法における実施例と比較例とを挙げ、図面を参照して、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133のそれぞれの形成工程において、インクを塗布する際の環境および雰囲気と有機EL素子の素子特性との関係について説明する。
以下の実施例および比較例で説明する有機EL素子130は、すでに図2で説明した、画素電極103と対向電極104との間に設けられた、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133、電子輸送層134、電子注入層135を含む機能層136を有しているという素子構成は共通している。なお、機能層136からは、緑色発光が得られる有機EL素子130の構成となっている。
図14は、実施例および比較例のインクを塗布する際の環境および雰囲気と有機EL素子の素子特性との関係を示す表である。
図14に示すように、素子基板101に、正孔注入層131、正孔輸送層132、および発光層133を形成するためにインクを塗布する際の、環境と雰囲気とをパラメーターとして、有機EL素子130の素子特性の評価として、駆動電圧、電流効率、素子寿命を測定する実験を実施した。
図14では、環境が暗所で、雰囲気が大気の場合を「A」、環境がイエロールーム内で、雰囲気が大気の場合を「B」、環境が暗所で、雰囲気が不活性ガスの場合を「C」、と示している。
初めに、実施例1から実施例7までを具体的に説明する。
(実施例1)
まず、正孔注入層131を形成するため、インクジェット法により、PEDOT/PSSを含むインク60を隔壁105の開口部105aに塗布した(塗布工程)。塗布工程は、暗所で大気下で実施した。その後、イエロールーム内にて減圧乾燥することにより正孔注入層前駆体を形成した。
イエロールーム内の窒素雰囲気下で正孔注入層前駆体を焼成して正孔注入層131を形成した。正孔注入層131の膜厚は、40nm〜100nmである。PEDOT/PSSの溶媒は水である。
窒素雰囲気下での焼成は、酸素濃度と水分濃度とがそれぞれ1ppm以下となるように乾燥された窒素が充填されたチャンバー内に素子基板101を放置して行った。
次に、正孔輸送層132を形成するため、インクジェット法により、TFBを含むインク70を隔壁105の開口部105aに塗布した(塗布工程)。塗布工程は、イエロールーム内の大気下で実施した。その後、イエロールーム内にて減圧乾燥することにより正孔輸送層前駆体を形成した。
イエロールーム内の窒素雰囲気下で、正孔輸送層前駆体を焼成して正孔輸送層132を形成した。正孔輸送層132の膜厚は、10nm〜30nmである。TFBの溶媒は、3−フェノキシトルエン(3−PT)である。
次に、発光層133を形成するため、インクジェット法により、緑色発光が得られるPPV(ポリフェニレンビニレン誘導体)を含むインク80を隔壁105の開口部105aに塗布した(塗布工程)。塗布工程は、イエロールーム内で大気下で実施した。その後、イエロールーム内にて減圧乾燥することにより発光層前駆体を形成した。
イエロールーム内の窒素雰囲気下で、発光層前駆体を焼成して発光層133を形成した。発光層133の膜厚は、40nm〜70nmである。PPVの溶媒は、3−フェノキシトルエン(3−PT)である。
電子輸送層134は、真空蒸着法により、電子輸送材料としてのAlq3を成膜して形成した。電子輸送層134の膜厚は20nm〜40nmである。
電子注入層135は、真空蒸着法により、電子注入材料としてのCaを成膜して形成した。電子注入層135の膜厚は1nm〜5nmである。
対向電極104は、真空蒸着法により、Alを成膜して形成した。対向電極104の膜厚は100nm〜200nmである。
このようにして得られた有機EL素子の素子特性、具体的には、駆動電圧、電流効率、素子寿命を測定した結果、駆動電圧は、0.95であり、電流効率は、1.05であり、素子寿命は1.10であった。
なお、これらの素子特性を示す数値は、後述する比較例8の値を1としたときの相対値を示しており、以下の実施例および比較例においても同様である。
有機EL素子の素子特性として、駆動電圧に関しては、数値が小さい方が優れており、電流効率、素子寿命に関しては、数値が大きい方が優れている。
以下に説明する実施例2から実施例7および比較例1から比較例8までの有機EL素子130についても、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133を形成する方法は、実施例1の有機EL素子と同じである。
実施例2から実施例7および比較例1から比較例8までの有機EL素子について、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133を形成するためのインクを塗布する際の環境と雰囲気とが実施例1と異なる部分を中心に説明する。
なお、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133を形成するためのインクを塗布した後、イエロールーム内にて減圧乾燥し、焼成する工程は共通である。
(実施例2)
実施例2の有機EL素子では、正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.90であり、電流効率は、1.10であり、素子寿命は1.20であった。
(実施例3)
実施例3の有機EL素子では、発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.85であり、電流効率は、1.15であり、素子寿命は1.30であった。
(実施例4)
実施例4の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
正孔輸送層132を形成する際のインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.95であり、電流効率は、1.05であり、素子寿命は1.15であった。
(実施例5)
実施例5の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.80であり、電流効率は、1.20であり、素子寿命は1.40であった。
(実施例6)
実施例6の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
発光層133を形成する際のインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.90であり、電流効率は、1.10であり、素子寿命は1.20であった。
(実施例7)
実施例7の有機EL素子では、正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
発光層133を形成する際のインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.75であり、電流効率は、1.25であり、素子寿命は1.50であった。
以上で説明した実施例1から実施例7までの有機EL素子における素子特性は、良好であるという結果となった。
次に、比較例1から比較例8までを具体的に説明する。
(比較例1)
比較例1の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。以下の説明も含めて、不活性ガスは窒素を用いた。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、比較例1の有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、1.00であり、電流効率は、1.05であり、素子寿命は1.10であった。
(比較例2)
比較例2の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、比較例2の有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.95であり、電流効率は、1.10であり、素子寿命は1.20であった。
(比較例3)
比較例3の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
実験の結果、比較例3の有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.90であり、電流効率は、1.20であり、素子寿命は1.35であった。
(比較例4)
比較例4の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
実験の結果、比較例4の有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.90であり、電流効率は、1.10であり、素子寿命は1.20であった。
(比較例5)
比較例5の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
実験の結果、比較例5の有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.80であり、電流効率は、1.25であり、素子寿命は1.50であった。
(比較例6)
比較例6の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
実験の結果、比較例6の有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.90であり、電流効率は、1.10であり、素子寿命は1.25であった。
(比較例7)
比較例7の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境は暗所であり、雰囲気は不活性ガス雰囲気下で実施した。
実験の結果、比較例7の有機EL素子の素子特性を測定すると、駆動電圧は、0.80であり、電流効率は、1.30であり、素子寿命は1.60であった。
(比較例8)
比較例8の有機EL素子では、正孔注入層131を形成するためのインク60を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
正孔輸送層132を形成するためのインク70を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
発光層133を形成するためのインク80を塗布する際の環境はイエロールーム内であり、雰囲気は大気下で実施した。
比較例8の駆動電圧、電流効率、素子寿命を測定し、測定した値を本実験の有機EL素子の素子特性の基準、つまり、「1」であるとした。
この実験により、以下のことが明らかになった。
(1)実施例1から実施例7までは、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133のいずれのインクを塗布する際にも、雰囲気は大気下で実施した。言い換えれば、塗布工程において、雰囲気を不活性ガス雰囲気下としていないため、不活性ガス充填機構や不活性ガスを密閉する容器やそれらを繋ぐ配管などが不要である。
(2)実施例1から実施例7まで、および比較例1から比較例7までにおいて、今回測定した有機EL素子の素子特性(駆動電圧、電流効率、素子寿命)は、いずれも比較例8と比較して、同等または優れている。
以上のことから、本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
この方法によれば、正孔注入層131を大気中で成膜する場合においても、光エネルギーが、正孔注入層131の形成に用いるインク60に与える影響を抑制することができる。その結果、有機EL素子130の素子特性、例えば、発光特性や素子寿命の劣化を低減できる。そのため、窒素充填機構が不要となり、簡易な有機EL素子130の製造方法を実現できる。
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について、図15、図16を参照して説明する。図15は、電子機器の一例であるノート型のパーソナルコンピューターを示す概略図であり、図16は、電子機器の一例である薄型テレビ(TV)を示す概略図である。
図15に示すように、電子機器としてのパーソナルコンピューター1000は、本体部1001と、表示ユニット1003と、を備えている。さらに、本体部1001は、キーボード1002を備えており、表示ユニット1003は、表示部1004を備えている。
表示ユニット1003は、本体部1001に対して、ヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピューター1000において、上記第1実施形態の有機EL装置100が、表示部1004に搭載されている。
図16に示すように、電子機器としての薄型テレビ(TV)1100は、上記第1実施形態の有機EL装置100が、表示部1101に搭載されている。
つまり、優れた表示品質と信頼性品質とを有するパーソナルコンピューター1000や薄型TV1100を提供することができる。
有機EL装置100が搭載される電子機器は、上記パーソナルコンピューター1000や薄型TV1100に限定されない。例えば、スマートフォンやPOSなどの携帯型情報端末、ナビゲーター、ビューワー、デジタルカメラ、モニター直視型のビデオレコーダーなどの表示部を有する電子機器が挙げられる。
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う有機EL素子の製造方法および該有機EL素子を備えた電気光学装置、該電気光学装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)
上記第1実施形態では、インク70を用いて正孔輸送層132を形成する工程において、インク70の塗布をイエロールーム内で実施しているが、暗所で実施してもよい。
こうすることによって、光エネルギーがインク70に与える影響を低減できる。そのため、有機EL素子130の素子特性が光エネルギーによって劣化することを抑制できる。
(変形例2)
上記第1実施形態では、インク60を用いて正孔注入層131を形成する工程において、インク60の減圧乾燥工程をイエロールーム内で実施しているが、暗所で実施してもよい。
こうすることによって、インク60の塗布だけでなく、乾燥を暗所で行うことによって、光エネルギーが、インク60に与える影響を低減できる。
(変形例3)
上記第1実施形態では、インク80を用いて発光層133を形成する工程において、インク80の減圧乾燥工程をイエロールーム内で実施しているが、暗所で実施してもよい。
こうすることによって、インク80の塗布だけでなく、乾燥を暗所で行うことによって、光エネルギーが、インク80に与える影響を低減できる。
(変形例4)
上記第1実施形態では、インク60を用いて正孔注入層131を形成する工程において、インク60を乾燥して得られた薄膜の焼成をイエロールーム内で実施しているが、暗所で実施してもよい。
こうすることによって、インク60の塗布および乾燥だけでなく、焼成を暗所で行うことによって、光エネルギーが、インク60に与える影響を低減できる。
(変形例5)
上記第1実施形態では、インク80を用いて発光層133を形成する工程において、インク80を乾燥して得られた薄膜の焼成をイエロールーム内で実施しているが、暗所で実施してもよい。
こうすることによって、インク80の塗布および乾燥だけでなく、焼成を暗所で行うことによって、光エネルギーが、インク80に与える影響を低減できる。
(変形例6)
第1実施形態の有機EL素子130が適用される電気光学装置は、表示部を有する有機EL装置100に限定されず、照明装置や感光物を露光する露光装置であってもよい。
10…製造装置、60…インク、70…インク、80…インク、100…電気光学装置としての有機EL装置、101…基体としての素子基板、104…陰極としての対向電極、130…有機EL素子、131…正孔注入層、132…正孔輸送層、133…発光層、134…電子輸送層、135…電子注入層、136…機能層、1000…電子機器としてのパーソナルコンピューター、1100…電子機器としての薄型TV。

Claims (13)

  1. 基体において、正孔注入層と発光層とを含む機能層を備えた有機EL素子の製造方法であって、
    前記正孔注入層を液相プロセスにより形成する第1工程と、
    前記発光層を液相プロセスにより形成する第2工程と、
    を有し、
    前記第1工程において、前記正孔注入層の形成に用いる第1の機能液を暗所で塗布し、
    前記第2工程において、前記発光層の形成に用いる第2の機能液を暗所で塗布することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  2. 正孔輸送層を形成する第3工程を有し、前記第3工程において、前記正孔輸送層の形成に用いる第3の機能液を暗所で塗布することを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子の製造方法。
  3. 前記第1工程を大気下で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記第1工程において、塗布した前記第1の機能液の乾燥を暗所で行うことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記第2工程において、塗布した前記第2の機能液の乾燥を暗所で行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記第1工程において、塗布した前記第1の機能液を乾燥して得られた薄膜の焼成を、暗所で行うことを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子の製造方法。
  7. 前記第2工程において、塗布した前記第2の機能液を乾燥して得られた薄膜の焼成を、暗所で行うことを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子の製造方法。
  8. 前記機能層は、電子輸送層、電子注入層のうちの少なくとも1つの層を有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  9. 前記液相プロセスは、インクジェット法であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  10. 前記電子輸送層、前記電子注入層、陰極のうちの少なくとも1つの層は、真空蒸着法で形成されることを特徴とする請求項8に記載の有機EL素子の製造方法。
  11. 正孔注入層および発光層を形成する有機EL素子の製造装置であって、
    前記第1の機能液の塗布および前記第2の機能液の塗布を暗所で行う塗布機構を有していることを特徴とする有機EL素子の製造装置。
  12. 請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法を用いて製造された有機EL素子を備えていることを特徴とする電気光学装置。
  13. 請求項12に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。
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