JP2017045631A - 液状体、液状体の消泡性評価方法、および有機半導体層を含む素子の形成方法 - Google Patents

液状体、液状体の消泡性評価方法、および有機半導体層を含む素子の形成方法 Download PDF

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圭介 森田
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光治 今村
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Abstract

【課題】消泡性を確保し、吐出不良の発生を抑制可能な液状体を提供すること。【解決手段】本発明の液状体は、吐出ヘッド50に充填される、機能層形成用材料を含む液状体であって、液状体が詰められた瓶を所定の時間内において所定の方向に所定の回数で振とうさせ、瓶を静置してから所定静置時間の後に、振とうにより生じた泡が消えていることを特徴とする。【選択図】図8

Description

本発明は、液状体、液状体の消泡性評価方法、および当該液状体を用いた有機半導体層を含む素子の形成方法に関する。
従来、吐出ヘッドのノズルからインク滴を吐出して、被記録媒体上に画像などを形成する、インクジェットプリンター(液滴吐出装置)が知られていた。このインクジェットプリンターは、pl(ピコリットル)単位の微細なインク滴を吐出するために、インク中に泡(気泡)が存在するとノズルからインク滴が正常に吐出されなくなることがあった。
そのため、インクジェット用のインクにおいて、泡の立ち易さ(起泡性)や泡の消え易さ(消泡性)は重要な特性の一つとなっている。特に、消泡性は、インクの種類が水系、溶剤系、モノマー系(紫外線硬化型や電磁線硬化型)のいずれであっても、吐出不良に直結する特性に挙げることができる。例えば、特許文献1では、ポリジメチルシロキサンとポリアルキレンオキサイドとを構造単位とする、直鎖状のブロック共重合体を界面活性剤として添加したことにより、泡立ちが抑制されたインクジェット用水系顔料インクが提案されている。
特開2006−225509号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクは、界面活性剤を配合して消泡性を向上させているが、有機半導体層などの素子をインクジェット法によって形成する場合では、インク(液状体)に界面活性剤を配合することが困難なため、インクの消泡性が確保し難く、吐出不良が発生し易いという課題があった。詳しくは、上記素子の有機半導体層は、電子の授受に係わっているため、界面活性剤などの添加剤は、電子の挙動に悪影響を及ぼし、上記素子の機能を阻害する可能性があった。また、上記素子の形成に用いる液状体に適した、簡易かつ安価な消泡性の評価方法の確立が求められているという課題もあった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例]本適用例に係わる液状体は、吐出ヘッドに充填される、機能層形成用材料を含む液状体であって、液状体が詰められた瓶を所定の時間内において所定の方向に所定の回数で振とうさせ、瓶を静置してから所定静置時間の後に、振とうにより生じた泡が消えていることを特徴とする。
本適用例によれば、機能層形成用材料を含んだ素子を形成する液状体について、所定の条件で発生させた泡が所定の時間後に消泡することにより、界面活性剤などの添加剤を配合しなくても、吐出不良の発生を抑制した液状体(インク)を提供することができる。詳しくは、液状体が所定の消泡性を有することによって、吐出ヘッドにおける液状体の充填やメンテナンスなどで発生した泡が所定静置時間の後に消泡し、吐出ヘッドのノズル近傍の泡が減少する。ノズル近傍の泡を低減することで、泡に起因して不吐出が生じたり、ノズル内の液面の挙動が不安定となりノズルから液状体が所望の方向に吐出されなかったりする、吐出不良の発生を抑制することができる。
上記適用例に記載の液状体において、上記所定静置時間が、貯留部から配管経路を経て吐出ヘッドへ到達して充填されるまでの、液状体の充填時間以内であることが好ましい。
これによれば、液状体の貯留部に泡が発生しても、その泡が配管経路を経て吐出ヘッドへ到達するまでの間に消泡することになる。そのため、吐出ヘッドのノズル近傍の泡が低減され、吐出不良の発生を抑制することができる。
上記適用例に記載の液状体は、所定静置時間が5分以内であることが好ましい。
これによれば、吐出ヘッドへ液状体を5分以内で充填しても、吐出ヘッドまで到達する泡の量を低減することができる。
上記適用例に記載の液状体は、所定の方向において20cmの振とう幅で、1分間に100回振とうさせることが好ましい。
これによれば、泡の発生に適した振動が液状体に印加され、液状体の消泡性を的確に評価し、消泡性を備えた液状体を提供することができる。
上記適用例に記載の液状体は、23℃における粘度が、1.0mPa・s(秒)以上、15.0mPa・s(秒)以下であることが好ましい。
これによれば、液状体の消泡性が向上する。これによって、吐出不良の発生を抑制することができる。詳しくは、液状体に発生した泡の接合部であるプラトー境界に向って、泡平面部から液状体が排出されるため、泡平面部の液状体の膜が次第に薄くなる。膜が薄くなる現象が進行することで泡が壊れて消失する。この消泡機構の根幹である液状体の排出は、液状体の粘度が低い程進行が速くなる。そのため、粘度が低い液状体は、粘度が高いものに比べて消泡し易くなり、消泡性を向上させる効果が得られる。
上記適用例に記載の液状体は、含まれる溶剤の23℃における粘度が、0.5mPa・s(秒)以上、10.0mPa・s(秒)以下であることが好ましい。
これによれば、23℃における液状体の粘度を、15.0mPa・s(秒)以下とすることができる。
[適用例]本適用例に係わる液状体の消泡性評価方法において、吐出ヘッドに充填される、機能層形成用材料を含む液状体の消泡性評価方法であって、液状体が詰められた瓶を、所定の時間内において所定の方向に所定の回数で振とうさせる工程と、振とうにより生じた泡の有無を、瓶を静置してから所定静置時間の後に評価する工程と、を備えたことを特徴とする。
本適用例によれば、機能層形成用材料を含む液状体の消泡性を評価することにより、消泡性が確保され、吐出不良の発生が抑制された液状体の選択が可能となる。従って、機能層形成用材料を含む液状体に適した、消泡性評価方法を提供することができる。
上記適用例に記載の液状体の消泡性評価方法は、所定静置時間が、貯留部から配管経路を経て吐出ヘッドへ到達して充填されるまでの、液状体の充填時間以内であることが好ましい。
これによれば、液状体の貯留部に発生した泡が消泡し、吐出ヘッドまで到達しにくい液状体が選択可能となる。これにより、吐出不良を抑制する液状体の消泡性評価方法を提供できる。
上記適用例に記載の液状体の消泡性評価方法は、所定静置時間が5分以内であることが好ましい。
これによれば、吐出ヘッドに液状体を5分以内で充填しても、吐出不良が発生し難い液状体を提供できる。
上記適用例に記載の素子の形成方法は、有機半導体層を含む素子の形成方法であって、適用例1から適用例6のいずれかの液状体を用いて、有機半導体層を形成する工程を備えていることが好ましい。
これによれば、消泡性を向上させて吐出不良の発生が抑制された液状体を用いることにより、有機半導体層を形成する工程における、品質や歩留まりを改善することができる。
実施形態1に係わる有機EL装置の構成を示す概略平面図。 有機EL素子の構造を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。 液滴吐出装置におけるインク供給機構の構成を示す概略側面図。 吐出ヘッドの構成を示す概略斜視図。 消泡性評価方法の手順を示す模式図。 実施例に係わるインクの組成を示す図表。 インクの評価結果を示す図表。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
(実施形態1)
<有機EL装置>
まず、実施形態1の液状体に係わる有機EL素子を備えた有機EL装置について、図1を参照して説明する。図1は、有機EL装置の構成を示す概略平面図である。本実施形態では、有機EL素子を備えた有機EL装置を例に挙げ、インクジェット法によって有機EL素子の有機半導体層(機能層)を形成するための、機能層形成用材料を含む液状体(インク)について説明する。
図1に示した有機EL装置100は、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光(発光色)が得られるサブ画素110R,110G,110Bが配置された素子基板101を有している。各サブ画素110R,110G,110Bは略矩形状であり、素子基板101の表示領域Eにおいてマトリックス状に配置されている。
サブ画素110Rには、赤(R)の発光が得られる有機EL素子が設けられている。同様に、サブ画素110Gには緑(G)の発光が得られる有機EL素子が設けられ、サブ画素110Bには青(B)の発光が得られる有機EL素子が設けられている。
次に、本実施形態に係わる有機EL素子について、図2を参照して説明する。図2は、有機EL素子の構造を示す概略断面図である。
上述した各サブ画素110R,110G,110Bには、図2に示した有機EL素子130が設けられている。有機EL素子130は、素子基板101上に設けられた反射層102、絶縁膜103、画素電極104、対向電極105、画素電極104と対向電極105との間に設けられた、発光層133を含む機能層136を有している。
機能層136は、画素電極104側から、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133、電子輸送層134、電子注入層135が順に積層されたものである。特に、発光層133は発光色に応じて構成材料が選ばれる。なお、機能層136の構成は、これに限定されるものではなく、これらの層以外に、キャリア(正孔や電子)の移動を制御する中間層などを備えていてもよい。
なお、有機EL素子130は、発光方式がトップエミッション方式である構成を例としている。また図2においては、画素回路の図示を省略している。
有機EL素子130は、画素電極104上に開口部106aを構成する隔壁106を有している。この隔壁106は、画素電極104の外縁と重なっている。また、有機EL素子130の機能層136は、機能層136を構成する正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133のうち、少なくとも一層が液相プロセスで形成されたものである。液相プロセスとは、一層を構成する成分と溶媒とを含んだ液状体としてのインクを、隔壁106で囲まれた膜形成領域としての開口部106aに塗布して乾燥させることにより、一層を形成する方法である。一層を所望の膜厚で形成するためには、所定量の上記インクを精度よく開口部106aに塗布する必要があり、本実施形態では、液相プロセスとしてインクジェット法(液滴吐出法)を採用している。
<有機EL素子の製造方法>
次に、インクジェット法を採用した、有機EL素子の製造方法について、図3、図4、図5を参照して説明する。図3、図4、図5は有機EL素子における機能層の形成方法を示す概略断面図である。
有機EL素子130の製造方法は、隔壁形成工程(ステップS1)、表面処理工程(ステップS2)、機能層形成工程(ステップS3)などを有している。
ステップS1(隔壁形成工程)では、図3に示すように、反射層102および画素電極104が形成された素子基板101に、感光性樹脂材料を塗布して乾燥することにより感光性樹脂層を形成する。塗布方法としては、転写法、スリットコート法などが挙げられる。形成された感光性樹脂層を、サブ画素110の形状に対応した露光用マスクを用いて露光・現像して、画素電極104の外縁と重なると共に、画素電極104上に開口部106aを構成する隔壁106を形成する。
ステップS2(表面処理工程)では、隔壁106が形成された素子基板101に表面処理を施す。表面処理工程は、次工程で機能層136を構成する正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133をインクジェット法(液滴吐出法)で形成する際に、隔壁106で囲まれた開口部106aにおいて、上記インクがむらなく濡れ広がるように、画素電極104の表面の隔壁残渣などの不要物を取り除く目的で行われる。表面処理方法としては、例えば、エキシマ紫外線処理が適用できる。
ステップS3(機能層形成工程)では、図4に示すように、正孔注入層材料を含むインク150を、開口部106aに塗布する。インク150の塗布方法は、インク150を、吐出ヘッド50のノズル52からインク滴(液滴D)として吐出するインクジェット法を用いている。吐出ヘッド50から吐出される液滴Dの吐出量は、pl(ピコリットル)単位で制御され、所定量を液滴Dの吐出量で除した数の液滴Dが開口部106aに吐出される。以後、乾燥工程へ進む。
乾燥工程では、例えば、インク150が塗布された素子基板101を減圧化に放置し、インク150から溶媒を蒸発させて乾燥させる減圧乾燥を用いる(減圧乾燥工程)。その後、例えば、大気圧下で加熱・焼成処理を施すことにより、インク150が固化して、図5に示すように正孔注入層131が形成される。
次に、正孔輸送層材料を含むインク160を用いて、正孔輸送層132を形成する。正孔輸送層132の形成方法も、正孔注入層131と同様に、インクジェット法を用いて、所定量のインク160を吐出して行う。また、正孔注入層131と同様に、減圧乾燥と加熱焼成を施して正孔輸送層132を形成する。
次に、発光層材料を含むインク170を用いて、発光層133を形成する。発光層133の形成方法も、正孔注入層131と同様に、インクジェット法を用いて、所定量のインク170を吐出して行う。また、正孔注入層131と同様に、減圧乾燥と加熱焼成を施して発光層133を形成する。このとき、減圧乾燥の後、酸素や水分などが発光機能に与える影響を考慮して、例えば窒素などの不活性ガス雰囲気下で焼成して固化させることが好ましい。
この工程以降、電子輸送層134、電子注入層135、陰極としての対向電極105を真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成し、有機EL素子130(図2)が製造される。
上述した機能層136の形成方法では、正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133を液相プロセス(インクジェット法)で形成したが、これらの層のうち1つを液相プロセス(インクジェット法)で形成すればよく、他の層は真空蒸着などの気相プロセスを用いて形成してもよい。
以上に述べたように、機能層136の形成に用いるインクジェット法においては、液滴Dの吐出量をpl単位で制御している。そのため、液滴Dを継続して安定的に吐出する必要があった。
<インク供給機構>
次に、本実施形態に係わる液滴吐出装置におけるインク供給機構の概要について、図6を参照して説明する。図6は、インク供給機構の構成を示す概略側面図である。本実施形態では、吐出ヘッドに機能層形成用材料を含むインク(以降、単に「インク」ともいう)を供給するための、インク供給機構を例に挙げて述べる。
図6において鎖線で囲まれた範囲に含まれる構成を、インク供給機構80としている。インク供給機構80は、インクタンク81と、フィルター82と、サブタンク85と、圧力調整弁87と、これらを繋ぐインク配管88と、インク180とを有している。このインク供給機構80の貯留部としてのインクタンク81は、インクを貯留するための容器となっている。インクタンク81は、インクの配管経路としてのインク配管88に底面において接続され、吐出ヘッド50にインクを供給する構成としている。ここで、インク配管88は、インクタンク81に近い上流側から順に、インク配管88a,88b,88cの3つの部分から構成され、配管内部をインク180が流動可能な構造となっている。
インク配管88aは、インクタンク81とフィルター82を接続している。フィルター82は、インク180中の異物を低減する機能を有している。このフィルター82は、インク配管88bによって、サブタンク85と接続されている。サブタンク85はインクタンク81よりも容積が小さく、フィルター82よりも吐出ヘッド50に近い、下流側に設置されている。このサブタンク85は、上部に大気開放部84を備えた大気開放型であって、フィルター82やインク配管88a,88bによる圧力損失を低減し、吐出ヘッド50に必要な量のインク180を供給する機能を有している。
また、サブタンク85は、インク配管88cによって圧力調整弁87と接続されている。圧力調整弁87は、吐出ヘッド50に供給されるインク180の圧力を調整するバッファー機能を有している。圧力調整弁87の先(下流側)には、ノズル面51aおよびノズル52などを有する吐出ヘッド50が設置されている。
ここで、インク配管88b,88cの途中には、第1バルブ91、第2バルブ92が設けられている。第1バルブ91および第2バルブ92は、インク供給機構80のメンテナンスや調整時などに、インク配管88bやインク配管88cを閉塞する機能を有している。
上述した構成により、インクタンク81にインク180を入れ、吸引装置(図示せず)によって吐出ヘッド50の全てのノズル52からインク180を吸い出すことにより、インク供給機構80から吐出ヘッド50内までインク180が充填される。ここで、インク180がインクタンク81からインク配管88を経て、吐出ヘッド50に充填されるのに要する時間(充填時間)は、約5分となっている。
<吐出ヘッド>
次に、本実施形態に係わる吐出ヘッドの概要について、図7を参照して説明する。図7は、吐出ヘッドの構成を示す概略斜視図である。
図7に示した吐出ヘッド50は、導入部53、ヘッド基板55、ヘッド本体56などを有している。導入部53は、吐出ヘッド50におけるインク導入部の機能を有している。この導入部53には、2連の接続針54が設置されている。接続針54は、上述したインク供給機構80(図6参照)と配管によって接続され、インク180を吐出ヘッド50内部に供給する機能を有している。
ヘッド基板55は、一方の面が導入部53に隣接して設置され、他方の面がヘッド本体56に面して設置されている。また、このヘッド基板55には2連のコネクター58が設けられている。コネクター58は、フレキシブルフラットケーブル(図示せず)を介して、回路基板(図示せず)と吐出ヘッド50とを電気的に接続するための端子を構成している。
ヘッド本体56はヘッド基板55と隣接して設置され、その内部には接続針54から導入されたインクの流路が形成されている。このヘッド本体56は、加圧部57、ノズルプレート51などを有している。加圧部57には、吐出ヘッド50の駆動手段(アクチュエーター)としての圧電素子がキャビティ部(図示せず)に設置されている。また、ノズルプレート51の、吐出ヘッド50がインク180を液滴Dとして吐出する面には、ノズル面51aが形成されている。このノズル面51aには、複数のノズル52が一定間隔で整列した、2つのノズル列52a,52bが平行に配置されている。これらノズル列52a,52bが2列配置されていることから、吐出ヘッド50は所謂2連型の構成となっている。また、ノズル52は円形であって、その直径は約30μmとしている。このノズル52ごとにキャビティ部が設置されている。
上述した構成により、インク180がインクタンク81からインク配管88を経て吐出ヘッド50に供給され、充填される。次いで、ヘッドドライバー(図示せず)から吐出ヘッド50内の圧電素子に駆動信号(電気信号)が印加されると、圧電素子の変形によって加圧部57のキャビティに体積変化が生じる。この体積変化によるポンプ作用で、キャビティ内に充填されたインク180が加圧され、ノズル52から液滴Dとして吐出される構成となっている。
ここで、吐出ヘッド50のノズル52ごとに設置される駆動手段(アクチュエーター)は、圧電素子に限定されない。例えば、アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、加熱によって生じる気泡によってインク180をインク滴として吐出させる電気熱変換素子を用いてもよい。また、吐出ヘッド50は、往復運動が自在なキャリッジ(図示せず)に搭載され、被記録媒体(図示せず)に対して相対的に走査可能な構成となっている。
<機能層形成用材料を含むインク>
次に、上述した吐出ヘッド50から液滴Dとして吐出されるインク180(以降、単にインクともいう)について説明する。
インクは、溶媒と機能層形成用材料(固形分)とを含んでいる。このインクの23℃における粘度は、1.0mPa・s(秒)以上、15.0mPa・s(秒)以下であることが好ましい。上記粘度が1.0mPa・s未満であると、吐出ヘッド50からの液滴Dの吐出安定性が低下することがある。また、上記粘度が15.0mPa・sを超えると、泡同士が接してできるプラトー境界へのインクの排出が遅くなるため、インクの消泡性が低下する傾向がある。上記粘度の範囲は、より好ましくは2.0mPa・s以上、13.0mPa・s以下であり、さらに好ましくは3.0mPa・s以上、12.0mPa・s以下である。
溶媒としては、1種類または2種類以上の溶剤を併用することができる。また、上述した機能層形成工程において、液滴Dの乾燥時間を確保してレベリング性を向上させるため、沸点が約200℃以上の溶剤を選択することが好ましい。例えば、o−トルニトリル、シクロヘキシルベンゼン、n−オクチルベンゼン、3−フェノキシトルエン、2−イソプロピルナフタレン、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、1,4−ジメチルナフタレン、ジフェニルエーテル、3−イソプロピルビフェニル、ニトロベンゼン、2−フェノキシエタノールなどが挙げられる。
また、インクの粘度を上記の範囲内とするため、低粘度の溶剤を選択することが好ましい。特に、インクにおける固形分(機能層形成用材料)の含有量が増えると、インクの粘度が増加するため、固形分の含有量によって溶剤を選択する。23℃における溶剤の粘度は、0.5mPa・s以上、10.0mPa・s以下であることが好ましい。上記の粘度が0・5mPa・s未満であると、調製した上記インクの粘度が1.0mPa・sを下回る可能性があり、同じく10.0mPa・sを超えると、調製したインクの粘度が15.0mPa・sを超える場合がある。より好ましくは1.0mPa・s以上、7.0mPa・s以下である。
なお、インクおよび溶剤の粘度測定には粘弾性試験機MCR302(Anton Paar社製)を用い、インクまたは溶剤の温度を23℃に調整して測定している。具体的には、Shear Rateを10から1000に順次上げていき、Shear Rateが200のときの粘度を読み取り測定することができる。
次に、上述した正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133(いずれも図2参照)を、インクジェット法で形成するための機能層形成用材料について説明する。
機能層形成用材料としては、正孔注入層材料、正孔輸送層材料、発光層材料が挙げられる。正孔注入層131や正孔輸送層132の形成に好適な正孔注入輸送材料としては、特に限定されないが、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン(TFB)などのポリアリールアミンのようなアリールアミン骨格を有する芳香族アミン系化合物、フルオレン−ビチオフェン共重合体のようなフルオレン骨格や、フルオレン−アリールアミン共重合体のようなアリールアミン骨格およびフルオレン骨格の双方を有するポリフルオレン誘導体(PF)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系、ポリ[bis(4―フェニル)(2,4,6―トリメチルフェニル)アミン])(PTTA)、ポリ[N,N’−bis(4−ブチルフェニル)−N,N’−bis(フェニル)−ベンジジン]などが挙げられる。
このようなp型の高分子材料は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、綜研化学製導電性ポリマーベラゾール(商標)など、ポリアニリンとして日産化学製エルソース(商標)が挙げられる。
p型の低分子材料としては、例えば、1,1−bis(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−bis(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン(TAPC)のようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−bis(3−メチルフェニル)−1,1’ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−bis(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−bis(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−bis(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、トリフェニルアミン−テトラマー(TPTE)、1,3,5−トリス−[4−(ジフェニルアミノ)ベンゼン(TDAPB)、トリス−(4−カルバゾール−9−イル−フェニル)−アミン(スピローTAD)、トリス−パラ−トリルアミン(HTM1)、1,1−bis[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(HTM2)、N4,N4’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)bis(N4, N4’,N4’−トリフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン)(TPT1)のようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)、PDA−Si(Mol.Cryst.Liq.Cryst.Vol.462.pp.249−256,2007)、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(DPPD)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、VB−TCA(Adv.Mater.2007,19,300−304)のようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OxZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)、4,4’,4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)のようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−bis(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物などが挙げられる。なお、PDA−Siは、高分子化を図るために、カチオン重合性化合物:キシレンビスオキセタン(東亞合成 アロンオキセタンOXT−121)、ラジカル重合開始剤:脂肪族系ジアシルパーオキサイド(パーロイルL、日本油脂株式会社)が添加されて用いられる。
次に、蛍光または燐光が得られる発光層材料について、発光色ごとに具体例を挙げて説明する。
[赤色発光材料]
燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、ペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−(1−シアノビニレンフェニレン)]、ポリ[{9,9−ジヘキシル−2,7−bis(1−シアノビニレン)フルオレニレン}オルト−co−{2,5−bis(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン}]、ポリ[{2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−(1−シアノビニレンフェニレン)}−co−{2,5−bis(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン}]などが挙げられる。
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格などを持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、bis[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、bis[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム、bis(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)などが挙げられる。
また、赤色の発光層133中には、上述した赤色発光材料の他に、赤色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料を含んでいてもよい。
ホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有している。このようなホスト材料を用いる場合、例えば、ゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
このようなホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して上述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、ナフタセン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体のようなアセン誘導体(アセン系材料)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)などのキノリノラト系金属錯体(BAql)、トリフェニルアミンの4量体などのトリアリールアミン誘導体(TDAPB)、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体(SimCP、UGH3)、ジカルバゾール誘導体(CBP、mCP、CDBP、DCB)、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−bis(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、リン誘導体(PO6)などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上述したような赤色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、赤色の発光層133中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
[緑色発光材料]
緑色発光材料としては、特に限定されず、例えば、各種緑色蛍光材料および緑色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、9,10−bis[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−co−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−co−(1,4−ベンゾ−{2,1’、3}−チアジアゾール)](F8BT)などが挙げられる。
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属錯体が挙げられ、具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、bis(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムなどが挙げられる。
また、緑色の発光層133中には、上述した緑色発光材料の他に、緑色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料が含まれていてもよい。
このようなホスト材料としては、上述した赤色の発光層133で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
[青色発光材料]
青色発光材料としては、例えば、各種青色蛍光材料および青色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、ジスチリルジアミン系化合物などのジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−bis(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−co−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(エチルニルベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ジフェニル)−N,N’−ジ(パラ−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノ−ベンゼン])などが挙げられる。
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウムなどの金属錯体が挙げられ、具体的には、bis[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム(FIrpic)、トリス(1−フェニル−3−メチルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C2’)(Ir(pmb)3)、bis(2,4−ジフルオロフェニルピリジネート)(5−(ピリジン−2−イル)−1H−テトラゾール)イリジウム(FIrN4)、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C2’]イリジウム、bis[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、bis(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)などが挙げられる。
また、青色の発光層133中には、上述した青色発光材料の他に、青色発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料が含まれていてもよい。
このようなホスト材料としては、上述した赤色の発光層133で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
ここで、本実施形態において、低分子とは分子量あるいは重量平均分子量が1000未満のものを指し、高分子とは重量平均分子量が1000以上であって、基本骨格が繰り返された構造を有するものを指す。
なお、インクにおける機能層形成用材料の含有量は、23℃におけるインクの粘度が上述した範囲内であれば特に限定されないが、インク全質量に対して、0.3質量%以上、3.5質量%以下であることが好ましい。含有量が0.3質量%未満であると、機能層形成のために吐出する液滴Dの量を増やす必要があり、製造効率が低下することがある。同じく3.5質量%を超えると、インクの粘度が15.0mPa・sを超える場合がある。
以上に説明したインクを構成する材料について、溶剤および形成する機能層に応じた機能層形成用材料を選択し、機能層形成用材料を溶剤に溶解させてインクを調製する。
<液状体(インク)の消泡性評価方法>
次に、液状体(インク)の消泡性評価方法について、図8を参照して説明する。図8は、インクの消泡性評価方法の手順を示す模式図である。
まず、本実施形態のインクとして、インク180を用いた。インク180は、機能層形成用材料として上述したTFBを配合し、溶剤として3−フェノキシトルエンおよびジエチレングリコールブチルメチルエーテルを選択した。各成分の配合割合をTFB:1.0質量%、3−フェノキシトルエン:49.5質量%、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル:49.5質量%として調製した。このインク180について、23℃におけるインク粘度を上述した方法により測定したところ、9.4mPa・sであった。
次に図8に示すように、10mlのインク180を、瓶としてのガラス管瓶200(内容量約22ml)に入れ、蓋210をして静置し、インクに泡がなくなるまで待った。泡がない状態で、ガラス管瓶200の底面から、内部のインク180の液面までの高さを測定した。これを振とう前のインク液面高さ(X1)とした。
その後、ガラス管瓶200を手に持って振とうした。振とう条件は、所定の方向として上下に約20cmの振とう幅において、所定の時間内として1分間に、所定の回数として約100回とした。ここで、上記振とう条件は、振とう幅が15cm以上、25cm以下、振とう回数で50回以上、150回以下の範囲にあればよい。なお、振とうおよび静置は、振とう装置を用いて行ってもよい。
次いで、振とうしたガラス管瓶200を即座に静置して、ガラス管瓶200の底面から、泡上面(泡と気相との境界面)までの高さを測定した。これを振とう直後の泡面高さ(X2)とした。これと同時に、ストップウォッチにより静置直後からの、所定静置時間としての経過時間の計測を開始した。
この経過時間について、1分、3分、5分の時点で泡の有無を確認した。その結果、静置開始から次第に消泡が進行し、1分および3分では泡の残存が認められたが、静置後5分では泡が消失した。また、この静置中に、上述した振とう直後の泡液面高さ(X2)と同様な方法で、静置中の泡液面高さ(X3)を測定してもよい。
以上に説明した方法により、インク180について、所定静置時間(経過時間)1分、3分、5分における泡の有無を評価した。また、測定したX1およびX2の差から、泡高ΔX(ΔX=X2−X1)を求めて、ΔXを起泡性の指標としてもよい。さらに、静置中に測定したX3から泡高ΔX’(ΔX’=X3−X1)を求め、所定静置時間に対する消泡性の指標としてもよい。
上述した消泡性評価の操作は、約23℃に温度調節された室内で実施した。
ここで、評価に用いるガラス管瓶200の容量は特に限定されないが、泡の確認の容易さから10ml以上であることが好ましく、インク180の節約のためには50ml以下であることが好ましい。また、上記瓶の材質はガラス製に限定されず、蓋などによって密閉空間が確保可能であれば、金属製や樹脂製のものを用いてもよい。瓶の材質が透光性を有さない場合は、蓋を開放して泡の状態を確認してもよい。さらに、ガラス管瓶200に入れるインクの量は、ガラス管瓶200の内容量に対して、40体積%以上、60体積%以下であることが好ましい。
以上に述べたように、本実施形態に係わるインクおよびインクの消泡性評価方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態のインクおよびインクの消泡性評価方法によれば、消泡性を確保して吐出不良の発生を抑制したインクを選択し、提供することができる。詳しくは、従来技術では界面活性剤をインクに配合して泡立ちを抑制していたが、本実施形態によれば、界面活性剤などの添加剤を配合しなくても、インクの粘度を上述した範囲とすることで、インクに所定の消泡性を付与することができる。これにより、吐出不良の原因となるノズル近傍やインク配管の泡が速やかに消失し、吐出不良の発生を抑制することが可能となる。また、インクの消泡性を評価し、所定の消泡性を有するインクを選択することも可能となる。
また、従来、泡に関する試験に用いられていた、家庭用合成洗剤試験方法(JISK3362 2008)の試料量200mlに対して、大幅に試料を節約できる。さらには、最大泡圧法やWilhelmy法などを利用した測定装置に比べて簡易かつ安価であり、機能層形成用材料を含むインクに適した評価方法を提供することができる。
以下に本実施形態の液状体(インク)の消泡性評価方法を用いて評価した、液状体の実施例と比較例とを示し、本実施形態の効果をより具体的に説明する。
<インクの調製>
図9は、実施例および比較例のインクの組成を示す図表である。
各実施例および各比較例のインクを、図9に示す組成で調製した。これらのインクには、機能層形成用材料としてTFBを配合している。また、参考例1から参考例4として、機能層形成用材料を含まない溶剤単体の水準を加えた。なお、表中の数値はインク中の含有割合(質量%)を示すものである。
<インク粘度の測定>
図10は、各実施例、各比較例、各参考例について23℃における粘度を、上記実施形態で述べた方法により求めた測定結果などを示す表である。
<消泡性評価>
各実施例、各比較例、各参考例について、消泡性を上記実施形態で述べた方法により評価した。その評価結果を図10に示した。なお、振とう後の静置開始から5分を経過しても消泡しない水準は、「消泡せず」とした。
<吐出安定性評価>
次に、吐出不良の指標として吐出安定性の評価を実施した。なお、この評価は消泡性の影響を受け易い、インクの充填直後に実施した。以下にその方法を述べる。
まず、上記実施形態で説明したインク供給機構80(図6参照)および吐出ヘッド50(図6参照)のインクを全て排除し、内部を空の状態(空気置換状態ともいう)とした。次いで、上述したようにインクタンク81にインクを入れ、吸引装置(図示せず)によって全てのノズル52からインクを吸い出すことにより、吐出ヘッド50内までインクを充填した。この操作直後から、全てのノズル52の連続吐出を開始した。吐出を100,000回実施した後、ノズルチェックパターンを印刷させて、全てのノズル52についてインクの吐出不良の有無を調べた。吐出不良としては、不吐出となっているノズルおよび正常な吐出がされていないノズルの数を調査した。ノズル52の全個数に対する、吐出不良が発生したノズル数を百分率に換算し、0%の評価を「○(好適)」とし、0%超、10%未満の評価を「△(やや不適)」とし、10%以上の評価を「×(不適)」として評価した。1水準ごとにインクの排出と内部の空気置換を実施し、各実施例、各比較例、各参考例について評価を実施した。その評価結果を図10に示した。
<評価結果>
図10に示したように、実施例1から実施例4のインクは、いずれも、粘度が15.0mPa・s以下であって消泡性評価では5分以内に消泡しており、かつ吐出安定性の評価が良好であることがわかった。このように実施例に係わるインクは、消泡性が良好で、吐出安定性にも優れるものであることが示された。
これに対して、比較例1から比較例3のインクは、いずれも粘度が15mPa・sを超えており、またいずれも、消泡せずに泡が残り、吐出安定性の評価も劣っていることが示された。
また、参考例1から参考例4では、参考例4の粘度が10.0mPa・sを超えている。粘度が10.0mPa・s以下であった参考例1から参考例3は、消泡性および吐出安定性が共に良好であることが示された。参考例4は、消泡性および吐出安定性が劣る結果となった。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更が可能であり、そのような変更を伴う液状体(インク)および該液状体の消泡性評価方法ならびに該液状体を適用する素子の形成方法もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)
上記実施形態では有機EL素子を例に挙げて、素子をインクジェット法で形成するためのインクについて説明したが、有機EL素子以外の有機半導体層を含む素子の形成に、本発明のインクを適用することもできる。その他の有機半導体層を含む素子としては、例えば、有機電界効果トランジスターや有機太陽電池などの素子が挙げられる。これらに本発明の吐出不良の発生を抑制したインクを適用することにより、有機半導体層をインクジェット法によって形成する工程における、歩留まりや品質を向上させることができる。
50…吐出ヘッド、81…インクタンク、88,88a,88b,88c…インク配管、130…有機EL素子、136…機能層、150,160,170,180…液状体(インク)、200…ガラス管瓶。

Claims (10)

  1. 吐出ヘッドに充填される、機能層形成用材料を含む液状体であって、
    前記液状体が詰められた瓶を、所定の時間内において所定の方向に所定の回数で振とうさせ、
    前記瓶を静置してから所定静置時間の後に、前記振とうにより生じた泡が消えていることを特徴とする液状体。
  2. 前記所定静置時間が、貯留部から配管経路を経て前記吐出ヘッドへ到達して充填されるまでの、前記液状体の充填時間以内であることを特徴とする請求項1に記載の液状体。
  3. 前記所定静置時間が、5分以内であることを特徴とする請求項2に記載の液状体。
  4. 前記所定の方向において20cmの振とう幅で、1分間に100回振とうさせることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液状体。
  5. 前記液状体の23℃における粘度が、1.0mPa・s(秒)以上、15.0mPa・s(秒)以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液状体。
  6. 前記液状体に含まれる溶剤の23℃における粘度が、0.5mPa・s(秒)以上、10.0mPa・s(秒)以下であることを特徴とする請求項5に記載の液状体。
  7. 吐出ヘッドに充填される、機能層形成用材料を含む液状体の消泡性評価方法であって、
    前記液状体が詰められた瓶を、所定の時間内において所定の方向に所定の回数で振とうさせる工程と、
    前記振とうにより生じた泡の有無を、前記瓶を静置してから所定静置時間の後に評価する工程と、を備えたことを特徴とする液状体の消泡性評価方法。
  8. 前記所定静置時間が、貯留部から配管経路を経て前記吐出ヘッドへ到達して充填されるまでの、前記液状体の充填時間以内であることを特徴とする請求項7に記載の液状体の消泡性評価方法。
  9. 前記所定静置時間が、5分以内であることを特徴とする請求項8に記載の液状体の消泡性評価方法。
  10. 有機半導体層を含む素子の形成方法であって、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の液状体を用いて、前記有機半導体層を形成する工程を備えていることを特徴とする素子の形成方法。
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