JP2017020086A - マルテンサイト鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐炭酸ガス腐食性及び優れた耐SSC性を有するマルテンサイト鋼材を提供する。【解決手段】本実施形態によるマルテンサイト鋼材は、質量%で、C:0.002〜0.05%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%未満、S:0.01%未満、Cr:6.5〜10.5%、Mo:0.3〜2.0%、sol.Al:0.1%以下、V:0〜0.03未満%、Nb:0〜0.01%以下、W:0〜1.0%、B:0〜0.010%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たし、371〜621MPaの降伏強度を有する。3C+0.04Cr<0.55 (1)(55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)W>X (2)マルテンサイト鋼材がBを含有する場合、X=0.20であり、Bを含有しない場合、X=0.25である。【選択図】図3

Description

本発明は鋼材に関し、さらに詳しくは、マルテンサイト組織を主体とするマルテンサイト鋼材に関する。
腐食性の低い井戸(油井及びガス井)の枯渇に伴い、腐食性の高い井戸(以下、高腐食性井戸という)の開発が進められている。高腐食性井戸は腐食性物質を多く含有する環境であり、その温度は井戸の深さにもよるが常温から200℃程度となる。腐食性物質は例えば、硫化水素及び炭酸ガス等の腐食性ガス等である。硫化水素は、高強度の低合金鋼の油井用鋼管において、硫化物応力割れ(Sulfide Stress Cracking、以下「SSC」という。)を引き起こす。一方、炭酸ガスは、特に高温環境で鋼の全面腐食、あるいは局部腐食を促進する。そのため、これらの高腐食性井戸に用いられる油井用鋼管では、高い耐SSC性及び高い耐炭酸ガス腐食性が要求される。
鋼の耐炭酸ガス腐食性の向上にはクロム(Cr)が有効であることが知られている。そのため、炭酸ガスを多く含む井戸では、炭酸ガスの分圧や温度に応じて、API L80 13Cr鋼(通常の13Cr鋼)やスーパー13Cr鋼等に代表される、13%程度のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼、あるいはさらにCrの添加量を高めた二相ステンレス鋼等が使用される。
しかしながら、13%のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼や二相ステンレス鋼では、低合金鋼に比べてSSCに対する感受性が高く、比較的低い硫化水素分圧(例えば0.1気圧以下)でSSCを引き起こす。そのため、これらの鋼は、炭酸ガスとともに硫化水素を含有する高腐食性井戸での使用には適さない。
特開2000−63994号公報(特許文献1)及び特開平7−76722号公報(特許文献2)は、耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性に優れた鋼を提案する。
特許文献1では、油井用Cr含有鋼管に関して、次の事項が記載されている。油井用Cr含有鋼管は、質量%で、C:0.30%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.30〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:3.0〜9.0%、Al:0.005%以下を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる。油井用Cr含有鋼管はさらに、80ksi級(551〜655MPa)の降伏強度を有する。
上記の油井用Cr含有鋼管では、炭酸ガス分圧1MPa、温度100℃での炭酸ガス腐食試験において、腐食速度が0.100mm/yr以下であることが特許文献1に記載されている。また、NACE−TM0177−96 method Aに準拠した定加重試験では、試験溶液A(pH2.7)、付加応力551MPaの条件で上記鋼管にはSSCが発生しない、と特許文献1には記載されている。
特許文献2では、油井用鋼管用マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法に関して、次の事項が記載されている。質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:<1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:11〜14%、Ni:<0.5%を含有し、マルテンサイト主体の鋼を準備する。この鋼を、Ac3点とAc1点との間の温度に加熱した後、Ms点以下まで冷却する。その後、鋼をAc1点以下の温度に加熱し、常温まで冷却する。この製造方法は、焼入れと焼戻しとの中間に2相域熱処理を行う。この製造方法により製造された鋼は、50kgf/mm2(490MPa、71.1ksi)以下の低降伏強度を有する。
一般的に、炭素鋼及び低合金鋼は、強度が低いほど耐SSC性に優れており、マルテンサイト系ステンレス鋼でも同様と考えられる。従来の鋼の熱処理方法(焼準及び焼戻しを実施する方法)では、鋼の降伏強度(耐力)を55〜60kgf/mm2(539〜588MPa、78.2〜85.3ksi)以下にすることができない。これに対して、特許文献2に記載の2相域熱処理を含む製造方法では、低降伏強度が得られる。そのため、この製造方法で得られた鋼は耐SSC性及び耐炭酸ガス腐食性に優れる、と特許文献2には記載されている。
特開2000−63994号公報 特開平7−76722号公報
しかしながら、特許文献1の油井用Cr含有鋼管の降伏強度が高い場合があり、耐SSC性が低い場合がある。
特許文献2のマルテンサイト系ステンレス鋼管は、高温焼戻しされたマルテンサイト又は再結晶フェライトと、炭素含有量の高いマルテンサイトとを含有する。これらの組織は異なる強度を有する。そのため、耐炭酸ガス腐食性が低い場合がある。
本発明の目的は、優れた耐炭酸ガス腐食性及び優れた耐SSC性を有するマルテンサイト鋼材を提供することである。
本実施形態によるマルテンサイト鋼材は、質量%で、C:0.002〜0.05%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%未満、S:0.01%未満、Cr:6.5〜10.5%、Mo:0.3〜2.0%、sol.Al:0.001〜0.1%、V:0〜0.03未満%、Nb:0〜0.01%以下、W:0〜1.0%、B:0〜0.010%、Cu:0〜1.0%、Co:0〜1.0%、Ta:0〜1.0%、Ti:0〜0.100%、Zr:0〜0.100%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、及び、希土類元素:0〜0.0050%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たし、371〜621MPaの降伏強度を有する。
3C+0.04Cr<0.55 (1)
(55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)W>X (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。前記マルテンサイト鋼材がBを含有する場合、X=0.20であり、Bを含有しない場合、X=0.25である。Wが含有されない場合、式(2)中の「W」には「0」が代入される。
本実施形態によるマルテンサイト鋼材は、優れた炭酸ガス腐食性及び優れた耐SSC性を有し、さらに、優れた耐HIC性を有する。
図1は、F1=3C+0.04Crと高温炭酸ガス環境での腐食速度(g/(m2・h))との関係を示す図である。 図2は、粒界割れの一例を示すSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。 図3は、Mo含有量(原子%)及びW含有量(原子%)と、割れ面積率CAR(Crack Area Ratio、単位は%)との関係を示す図である。
本発明者らは、鋼の耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性について調査及び検討を行い、次の知見を得た。
[耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性について]
鋼の耐炭酸ガス腐食性を高めるには、鋼中の固溶Crが有効である。しかしながら、Cr含有量が高すぎれば、耐SSC性が低下する。さらに、CrはCとの親和力が高く、Cr炭化物(Cr236)を形成しやすい。Cr炭化物が生成されれば、固溶Cr量が低減するため、耐炭酸ガス腐食性が低下する。
そこで、本実施形態では、Cr含有量を6.5〜10.5%とし、かつ、Cr含有量(質量%)及びC含有量(%)が式(1)を満たす。
3C+0.04Cr<0.55 (1)
F1=3C+0.04Crと定義する。図1は、F1と高温炭酸ガス環境での腐食速度(g/(m2・h))との関係を示す図である。図1は次の方法により得られた。
C含有量及びCr含有量が異なる種々のマルテンサイト鋼材から、試験片(2mm×10mm×40mm)を採取した。試験片を試験浴に720時間、無応力で浸漬した。試験浴には、30barの炭酸ガスを飽和させた100℃の5%食塩水溶液を用いた。試験前後の試験片の重量を測定した。測定された重量の変化量に基づいて、各試験片の腐食減量を求めた。腐食減量に基づいて、各試験片の腐食速度(g/(m2・h))を求めた。得られた腐食速度を用いて、図1を作成した。
図1を参照して、F1の増加に伴い、腐食速度は増加し、F1は腐食速度と比例関係を有する。そして、F1が0.55未満であれば、腐食速度は1.0g/(m2・h)未満になる。
さらに、耐SSC性は、Cr含有量だけでなく、鋼材の強度にも依存する。具体的には、強度が高ければ、耐SSC性は低下する。したがって、本実施形態では、鋼材の降伏強度を317〜621MPaと低くして、耐SSC性を高める。
[耐HIC性について]
上述のとおり、マルテンサイト鋼材が、6.5〜10.5%のCrを含有し、式(1)を満たす化学組成を有し、317〜621MPaの降伏強度を有すれば、優れた耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性が得られる。しかしながら、このような鋼材をH2Sを含有する高腐食性井戸と同等の環境に利用した場合、鋼材内部で図2に示すような粒界割れが発生しやすくなる。この粒界割れは、水素起因の割れ(Hydrogen Induced Cracking)である。以下、この粒界割れを粒界HICという。したがって、6.5〜10.5のCrを含有する低強度のマルテンサイト鋼材を高腐食性井戸に適用するためには、耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性だけでなく、耐粒界HIC性も高めなければならない。
そこで、本発明者らはさらに、低強度のマルテンサイト鋼材の耐HIC性について調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは次の知見を得た。
Mo、W、V及びNbはいずれも、少量含有しただけでは粒界HICの発生を促進するものの、所定量以上含有されれば、粒界HICの発生を抑制する。しかしながら、V及びNbはいずれも鋼の強度を高め、耐SSC性を低下させる。一方、Mo及びWは鋼の強度に影響を与えにくい。したがって、耐SSC性を低下させずに耐HIC性を高めるために、Mo及びWの含有が有効である。
Mo及びW含有量(質量%)は式(2)を満たす必要がある。
(55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)W>X (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。マルテンサイト鋼材がBを含有する場合、X=0.20であり、Bを含有しない場合、X=0.25である。以下、式(2)について説明する。
図3は、Mo含有量(原子%)及びW含有量(原子%)と、割れ面積率CAR(Crack Area Ratio、単位は%)との関係を示す図である。図3は、以下の試験方法により得られた。9%のCrを含有し、他の元素(C、Si、Mn、P、S、sol.Al)の含有量が本発明の範囲内であり、Mo含有量を変化させた複数の供試材を作製した。同様に、9%のCrを含有し、他の元素(C、Si、Mn、P、S、sol.Al)の含有量が本発明の範囲内であり、W含有量を変化させた複数の供試材を作製した。各供試材のMo含有量、W含有量以外の化学組成はほぼ同じであった。なお、いずれの供試材においてもBを含有しなかった。
各供試材を用いて、後述の製造方法により鋼板を製造した。各鋼板から、厚さ12mm、幅20mm、長さ100mmの試験片を採取した。採取された試験片を用いて、NACE TM0284−2011に基づいて、HIC試験を実施した。具体的には、5%NaCl及び0.5%CH3COOHを含有し、1気圧のH2Sで飽和させた酢酸水溶液を試験液として準備した。準備された試験液に試験片を96時間浸漬した。浸漬後、各試験片中に発生したHICを超音波探傷法(Cスキャン)により測定して、インディケーション部分(HIC割れ発生部分)の面積を求めた。
求めたインディケーション部分及び超音波探傷試験時の試験片の投影面積に基づいて、次の式により割れ面積率CAR(%)を求めた。
CAR(%)=インディケーション部分の面積/投影面積×100
なお、投影面積は20mm×100mmとした。各試験片のMo含有量(原子%)、W含有量(原子%)と、得られた割れ面積率CAR(%)とをグラフにプロットし、図3を得た。
図3中の「◇」印はMo含有量(原子%)を示し、「○」印はW含有量を示す。図2を参照して、割れ面積率CARは、Mo含有量(原子%)及びW含有量(原子%)の増加に伴い急激に増加する。しかしながら、Mo含有量及びW含有量が0.1at%を超えると、割れ面積率CARは、Mo含有量及びW含有量の増加に伴い急激に低下する。
以上の結果より、次の事項が考えられる。粒界HICは、Mo及びWの総原子数に依存する。Mo及びWは、鋼の見かけの水素拡散係数を小さくする。そのため、Mo及びWの総原子数が増加すれば、鋼中に水素が蓄積されやすくなる。その結果、Mo含有量及びW含有量が0.1at%程度までは、水素の蓄積により粒界HICが発生しやすくなる。
一方、Mo含有量及びW含有量が0.1at%を超えれば、割れ面積率CARは急激に低下し、粒界HICが発生しにくくなる。この理由は定かではないが、以下の事項が考えられる。粒界HICは、水素以外に、粒界に偏析するCrの影響を大きく受ける。具体的には、粒界に偏析したCrが粒界HICを引き起こす。しかしながら、Mo及びWの原子数が増加すると、Mo及びWが粒界に偏析するCrと置換する。CrがMo及びWに置換されることにより、粒界HICが発生しにくくなり、割れ面積率CARが低下する。
式(2)は以上の知見に基づいて定義されている。F2=(55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)Wと定義する。F2は、Mo及びWの原子%での含有量を意味し、Mo及びWの総原子数の指標である。
鋼材がBを含有しない場合、F2が0.25よりも高ければ、粒界に偏析したCrと置換可能なMo原子及びW原子が十分に含有されている。そのため、耐HIC性が高まる。
Bが含有されればさらに、Bが含有されていない場合と比較して、Mo及びWの含有量が低くても(つまり、F2が低くても)、耐HIC性が高まる。この理由は定かではないが、BがCrとMo及びWとの置換を促進する効果を有すると考えられる。鋼材がBを含有する場合、F2が0.20よりも高ければ、耐HIC性が高まる。
以上の知見に基づいて完成した 本実施形態によるマルテンサイト鋼材は、質量%で、C:0.002〜0.05%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.03%未満、S:0.01%未満、Cr:6.5〜10.5%、Mo:0.3〜2.0%、sol.Al:0.001〜0.1%、V:0〜0.03未満%、Nb:0〜0.01%以下、W:0〜1.0%、B:0〜0.010%、Cu:0〜1.0%、Co:0〜1.0%、Ta:0〜1.0%、Ti:0〜0.100%、Zr:0〜0.100%、Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、及び、希土類元素:0〜0.0050%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たし、371〜621MPaの降伏強度を有する。
3C+0.04Cr<0.55 (1)
(55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)W>X (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。前記マルテンサイト鋼材がBを含有する場合、X=0.20であり、Bを含有しない場合、X=0.25である。Wが含有されない場合、式(2)中の「W」には「0」が代入される。
上記マルテンサイト鋼材は、B:0.001〜0.010%を含有してもよい。
上記マルテンサイト鋼材は、Cu:0.01〜1.0%、Co:0.01〜1.0%、及び、Ta:0.01〜1.0%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上記マルテンサイト鋼材は、Ti:0.005〜0.100%、Zr:0.005〜0.100%、Ca:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0005〜0.0050%、及び、希土類元素:0.0005〜0.0050%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上記マルテンサイト鋼材はたとえば、油井用継目無鋼管である。
本明細書において、「油井用鋼管」は、例えば、JIS G 0203(2009)の番号3514の定義欄に記載されている油井用鋼管を意味する。具体的には、「油井用鋼管」は、油井又はガス井の掘削や、原油又は天然ガスの採取等に用いられるケーシング、チュービング、ドリルパイプの総称を意味する。「油井用継目無鋼管」は、油井用鋼管が継目無鋼管であることを意味する。
以下、本実施形態のマルテンサイト鋼材について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態のマルテンサイト鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.002〜0.05%
炭素(C)は焼入れ性を高めて鋼材の強度を高める。しかしながら、本実施形態のマルテンサイト鋼材では、Crにより焼入れ性が高められている。そのため、C含有量が高すぎれば、鋼材の強度が高くなりすぎて耐SSC性が低下する。さらに、Cは他の合金元素と結合して炭化物を生成し、他の合金元素の固溶を抑制する。炭化物はさらに、水素のトラップサイトとして働くため、水素に起因するSSC及びHICの感受性が高まる。そのため、C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、製鋼コストを考慮すれば、C含有量の下限は0.002%である。したがって、C含有量は0.002〜0.05%である。C含有量の好ましい下限は0.005%である。C含有量の好ましい上限は0.04%である。
Si:0.01〜1.0%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、この効果が飽和する。したがって、Si含有量は0.01〜1.0%である。Si含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Si含有量の好ましい上限は0.70%であり、さらに好ましくは0.50%である。
Mn:0.1〜2.0%
マンガン(Mn)は鋼の焼入れ性を高める。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、Mnは、P及びS等の不純物元素と共に、粒界に偏析する。この場合、耐SSC性及び耐HIC性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.1〜2.0%である。Mn含有量の好ましい下限は0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。Mn含有量の好ましい上限は1.5%であり、さらに好ましくは1.0%である。
P:0.03%未満
燐(P)は、不純物である。Pは、結晶粒界に偏析し、鋼の耐SSC性及び耐HIC性を低下する。したがって、P含有量は0.03%未満である。好ましいP含有量は0.025%以下であり、さらに好ましくは0.020%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
S:0.01%未満
硫黄(S)は、不純物である。SもPと同様に結晶粒界に偏析し、鋼の耐SSC性及び耐HIC性を低下する。したがって、S含有量は0.01%未満である。好ましいS含有量は0.08%以下であり、さらに好ましくは0.006%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
Cr:6.5〜10.5%
クロム(Cr)は、鋼の高温での耐炭酸ガス腐食性を高める。Cr含有量が低すぎれば、この効果が得られない。Cr含有量が6.5%以上であれば、100℃の高圧CO2を含有する湿潤環境において、腐食速度が1.0g/(m2・h)未満となり、優れた耐炭酸ガス腐食性を示す。一方、Cr含有量が高すぎれば、湿潤H2S環境ではかえって腐食速度が速くなる。Cr含有量が高すぎればさらに、耐SSC性も低下する。したがって、Cr含有量は6.5〜10.5%である。Cr含有量の好ましい下限は7.5%である。Cr含有量の好ましい上限は10.0%である。
Mo:0.3〜2.0%
モリブデン(Mo)は、湿潤H2S環境における鋼の粒界割れ(粒界HIC)を抑制する。Mo含有量が低すぎれば、この効果が得られず、かえって粒界割れが発生しやすくなる。一方、Moはフェライト形成元素であるため、Mo含有量が高すぎれば、オーステナイトが安定化しにくくなり、マルテンサイト組織が安定的に得られにくくなる。したがって、Mo含有量は0.3〜2.0%である。Mo含有量の好ましい下限は0.4%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mo含有量の好ましい上限は1.5%であり、さらに好ましくは1.2%である。
sol.Al:0.001〜0.1%
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Al含有量が低ければ、この効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、この効果が飽和する。したがって、Al含有量は0.001〜0.1%である。Al含有量の好ましい下限は0.002%である。Al含有量の好ましい上限は0.07%であり、さらに好ましくは0.05%である。本明細書でいうAl含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
V:0〜0.03%未満
バナジウム(V)は、鋼の強度を高め、鋼の耐SSC性を低下する。したがって、V含有量はなるべく低い方が好ましい。本実施形態では、V含有量は0〜0.03%未満である。V含有量の好ましい上限は0.02%であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.01%未満である。
Nb:0〜0.01%以下
ニオブ(Nb)はVと同様に、鋼の強度を高めて鋼の耐SSC性を低下する。したがって、Nb含有量はなるべく低い方が好ましい。本実施形態では、Nb含有量は0〜0.01%以下である。Nb含有量の好ましい上限は0.01%未満である。
本実施形態によるマルテンサイト鋼材の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものである。不純物はたとえば、Niである。Ni含有量が高すぎれば、局部腐食が発生して耐SSC性が低下する。したがって、Ni含有量の好ましい上限は0.03%であり、さらに好ましくは0.01%である。Ni含有量はなるべく低い方が好ましい。
本実施形態によるマルテンサイト鋼材の化学組成はさらに、Wを含有してもよい。
W:0〜1.0%
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、Wは、Moと同様に、湿潤H2S環境における鋼の粒界HICを抑制する。しかしながら、W含有量が高すぎれば、製造コストが高くなる。したがって、W含有量は0〜1.0%である。W含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。W含有量の好ましい上限は0.8%であり、さらに好ましくは0.6%である。
本実施形態によるマルテンサイト鋼材の化学組成はさらに、Bを含有してもよい。
B:0〜0.010%
ホウ素(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、Bは粒界を強化し、粒界HICの発生を抑制する。しかしながら、B含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、B含有量は0〜0.010%である。B含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。B含有量の好ましい上限は、0.008%であり、さらに好ましくは0.006%である。
本実施形態によるマルテンサイト鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu、Co、及びTaからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、粒界HICの発生を抑制する。
Cu:0〜1.0%
Co:0〜1.0%、
Ta:0〜1.0%
銅(Cu)、コバルト(Co)及びタンタル(Ta)はいずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、これらの元素はいずれも、Mo及びWと同様に、粒界HICの発生を抑制する。しかしながら、これらの元素含有量が高すぎれば、製造性が低下すると同時に、製造コストも高くなる。したがって、Cu含有量は0〜1.0%であり、Co含有量は0〜1.0%であり、Ta含有量は0〜1.0%である。Cu含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。Cu含有量の好ましい上限は0.7%であり、さらに好ましくは0.5%である。Co含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。Co含有量の好ましい上限は0.7%であり、さらに好ましくは0.5%である。Ta含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。Ta含有量の好ましい上限は0.7%であり、さらに好ましくは0.5%である。
本実施形態によるマルテンサイト鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti、Zr、Ca、Mg及び希土類元素(REM)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、耐SSC性を高める。
Ti:0〜0.1%、
Zr:0〜0.1%
チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)は、いずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、これらの元素はいずれも、C及びNと結合して炭窒化物を形成する。これらの炭窒化物は、結晶粒を微細化し、かつ、Cr炭化物の生成を抑制する。そのため、鋼の耐SSC性及び耐HIC性が高まる。しかしながら、これらの元素の含有量が高すぎれば、上記効果が飽和し、さらに、フェライトの生成を促進する。したがって、Ti含有量は0〜0.1%であり、Zr含有量は0〜0.1%である。Ti含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.007%である。Ti含有量の好ましい上限は0.07%であり、さらに好ましくは0.03%である。Zr含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.007%である。Zr含有量の好ましい上限は0.07%であり、さらに好ましくは0.03%である。
Ca:0〜0.0050%、
Mg:0〜0.0050%、
REM:0〜0.0050%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及び希土類元素(REM)はいずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、これらの元素は、鋼中のSと結合して硫化物を形成する。これにより、硫化物の形状が改善され、鋼の耐SSC性が高まる。REMはさらに、鋼中のPと結合して、結晶粒界におけるPの偏析を抑制する。そのため、P偏析に起因した鋼の耐SSC性の低下が抑制される。しかしながら、これらの元素の含有量が高すぎれば、この効果が飽和する。したがって、Ca含有量は0〜0.0050%であり、Mg含有量は0〜0.0050%であり、REM含有量は0〜0.0050%である。
本明細書において、REMは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称である。REM含有量は、鋼に含有されるREMがこれらの元素のうち1種である場合、その元素の含有量を意味する。鋼に含有されるREMが2種以上である場合、REM含有量は、それらの元素の総含有量を意味する。
Ca含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%である。Mg含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%である。REM含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。REM含有量の好ましい上限は0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
[式(1)について]
上記化学組成はさらに、式(1)を満たす。
3C+0.04Cr<0.55 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
F1=3C+0.04Crと定義する。F1は、耐炭酸ガス腐食性の指標である。F1が0.55未満であれば、図1に示すとおり、腐食速度が1.0g/(m2・h)未満となり、優れた耐炭酸ガス腐食性を示す。F1の好ましい上限は0.50である。
[式(2)について]
上記化学組成はさらに、式(2)を満たす。
(55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)W>X (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。マルテンサイト鋼材がBを含有する場合、X=0.20であり、Bを含有しない場合、X=0.25である。Wが含有されない場合、式(2)中の「W」には「0」が代入される。
F2=(55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)Wと定義する。F2はMo及びWの質量%を原子%に変換した式であり、F2はMo及びWの総原子数の指標である。上述のとおり、F2がX(B未含有ではX=0.25、B含有ではX=0.20)以下である場合、Mo及びWの原子数が不十分である。この場合、鋼中に蓄積された水素に起因した粒界HICが発生しやすくなる。一方、F2がXを超える場合、Mo及びWの総原子数が十分である。この場合、粒界HICの水素による影響よりも、粒界に偏析したCrがMo及びWに置換されることによる影響の方が強くなり、粒界HICの発生が抑制される。
マルテンサイト系ステンレス鋼がBを含有する場合、Mo及びWの総原子数に起因した粒界HICの抑制効果がさらに促進される。したがって、Bを含有しないマルテンサイト鋼材のF2が0.25よりも大きい場合、及び、Bを含有するマルテンサイト鋼材のF2が0.20よりも大きい場合、耐HIC性が高まる。Bを含有しないマルテンサイト鋼材のF2の好ましい下限は0.30である。
[ミクロ組織]
上述のマルテンサイト鋼材では、焼戻しマルテンサイトがミクロ組織の主体である。具体的には、ミクロ組織は、体積率で0〜5%のフェライトと、体積率で0〜5%のオーステナイトとを含有し、残部が焼戻しマルテンサイトからなる。フェライトの体積率及びオーステナイトの体積率はなるべく低い方が好ましい。好ましくは、ミクロ組織は、焼戻しマルテンサイト単相である。
[製造方法]
上述のマルテンサイト鋼材の製造方法の一例を説明する。マルテンサイト鋼材の製造方法は、素材を準備する工程(準備工程)と、素材を熱間圧延して鋼材を製造する工程(圧延工程)と、鋼材に対して焼入れ及び焼戻しを実施する工程(熱処理工程)とを備える。以下、各工程について詳述する。
[準備工程]
上述の化学組成を有し、式(1)及び式(2)を満たす溶鋼を製造する。溶鋼を用いて素材を製造する。具体的には、溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム、ビレット)を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを分塊圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の工程により素材(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。
[圧延工程]
準備された素材を加熱する。好ましい加熱温度は1000〜1300℃である。加熱温度の好ましい下限は1150℃である。
加熱された素材を熱間圧延してマルテンサイト鋼材を製造する。鋼材が板材である場合、例えば、一対のロール群を含む圧延機を用いて熱間圧延が実施される。鋼材が油井用鋼管である場合、例えば、マンネスマン−マンドレルミル法により穿孔圧延及び延伸圧延が実施され、油井用継目無鋼管が製造される。
[熱処理工程]
製造されたマルテンサイト鋼材に対して周知の方法で焼入れを実施する。焼入れ後の鋼材に対して、周知の方法で焼戻しを実施する。焼入れ及び焼戻しにより、マルテンサイト鋼材の降伏強度を371〜621MPaに調整する。
以上の工程により製造されたマルテンサイト鋼材のミクロ組織は、主として焼戻しマルテンサイトからなる。
表1に示す化学組成を有する溶鋼を製造した。
上記溶鋼を50kg真空炉で溶製し、造塊法によりインゴットを製造した。インゴットを1250℃で3時間加熱した。加熱後のインゴットに対して熱間鍛造を実施してブロックを製造した。熱間鍛造後のブロックを1230℃で15分均熱し、熱間圧延を実施して13mmの厚さを有する板材を製造した。
板材に対して焼入れ及び焼戻しを実施した。焼入れでは、いずれの試験番号においても、900℃で15分保持した後、水冷した。さらに、表2に示す焼戻し温度(℃)で焼戻しを実施して試験材(マルテンサイト鋼材)を製造した。
[引張試験]
各試験材から、引張試験片を採取した。引張試験片は、平行部径6mm、平行部長さ40mmの丸棒引張試験片とした。この試験片の長手方向は板材の圧延方向とした。この試験片を用いて、常温で引張試験を行い、降伏強度YS(MPa)を求めた。降伏強度YSは0.2%耐力とした。得られた降伏強度YSを表2に示す。
[耐HIC性評価試験]
各試験材から、厚さ12mm、幅20mm、長さ100mmの試験片を採取した。採取された試験片を用いて、NACE TM0284−2011に基づいて、HIC試験を実施した。具体的には、5%NaCl及び0.5%CH3COOHを含有し、1気圧のH2Sで飽和させた酢酸水溶液を試験液として準備した。準備された試験液に試験片を96時間浸漬した。浸漬後、各試験片中に発生したHICを超音波探傷法(Cスキャン)により測定して、インディケーション部分(HIC割れ発生部分)の面積を求めた。
求めたインディケーション部分及び超音波探傷試験時の試験片の投影面積とに基づいて、次の式により割れ面積率CAR(%)を求めた。
CAR(%)=インディケーション部分の面積/投影面積×100
なお、投影面積は20mm×100mmとした。
[耐SSC性評価試験]
各試験材から、厚さ2mm、幅10mm、長さ75mmの平滑4点曲げ試験片を採取した。4点曲げ試験片を用いて、硫化水素を含む試験液中で4点曲げ試験を実施した。具体的には、試験液として、5%のNaClと0.5%のCH3COOHとを含む水溶液(NACE−TM0177で規定されるSolution A)を準備した。試験中の4点曲げ試験片への付加応力は、歪みゲージ法で90%の実降伏応力とした。1気圧のH2Sガスを飽和させた上記水溶液に上記付加応力を付加した試験片を336時間浸漬した。試験温度は24±3℃とした。
試験後、試験片のSSCの有無を目視で観察した。表2中の「SSC判定」中の「×」は、SSCが発生したことを示し、「○」はSSCが発生しなかったことを示す。
[腐食速度評価試験]
各試験材から試験片(2mm×10mm×40mm)を採取した。試験片を試験浴に720時間、無応力で浸漬した。試験浴には、30barの炭酸ガスを飽和させた100℃の5%食塩水溶液を用いた。試験前後の試験片の重量を測定した。測定された重量の変化量に基づいて、各試験片の腐食減量を求めた。腐食減量に基づいて、各試験片の腐食速度(g/(m2・h))を求めた。
[試験結果]
表2を参照して、試験番号1〜13の化学組成は適切であり、式(1)及び式(2)を満たした。その結果、割れ面積率CARが0.5%以下であり、優れた耐HIC性を示した。さらに、SSCが観察されず、腐食速度も1.0g/(m2・h)以下であり、優れた耐SSC性及び耐炭酸ガス腐食性を示した。
一方、試験番号14〜16のMo含有量は低すぎた。その結果、割れ面積率CARが0.5%を超え、耐HIC性が低かった。
試験番号17ではBを含有しておらず、かつ、F2が0.25未満であり、式(2)を満たさなかった。そのため、割れ面積率CARが0.5%を超え、耐HIC性が低かった。
試験番号18では、F1が0.55以上であり、式(1)を満たさなかった。そのため、腐食速度が1.0g/(m2・h)を超え、耐炭酸ガス腐食性が低かった。
試験番号19のC含有量は高すぎた。また、試験番号20のV含有量及びNb含有量は高すぎた。そのため、これらの試験番号では、焼戻し後の降伏強度が621MPaを超え、耐SSC性が低かった。
試験番号21のCr含有量は高すぎた。そのため、耐SSC性が低かった。
試験番号22ではBを含有しており、かつ、F2が0.20未満であり、式(2)を満たさなかった。そのため、割れ面積率CARが0.5%を超え、耐HIC性が低かった。
試験番号23のV含有量は高すぎ、試験番号24のNb含有量は高すぎた。そのため、これらの試験番号では、焼戻し後の降伏強度が621MPaを超え、耐SSC性が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.002〜0.05%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.1〜2.0%、
    P:0.03%未満、
    S:0.01%未満、
    Cr:6.5〜10.5%、
    Mo:0.3〜2.0%、
    sol.Al:0.001〜0.1%、
    V:0〜0.03未満%、
    Nb:0〜0.01%以下、
    W:0〜1.0%、
    B:0〜0.010%、
    Cu:0〜1.0%、
    Co:0〜1.0%、
    Ta:0〜1.0%、
    Ti:0〜0.100%、
    Zr:0〜0.100%、
    Ca:0〜0.0050%、
    Mg:0〜0.0050%、及び、
    希土類元素:0〜0.0050%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    式(1)及び式(2)を満たし、
    371〜621MPaの降伏強度を有する、マルテンサイト鋼材。
    3C+0.04Cr<0.55 (1)
    (55.85/95.94)Mo+(55.85/183.8)W>X (2)
    ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。前記マルテンサイト鋼材がBを含有する場合、X=0.20であり、Bを含有しない場合、X=0.25である。Wが含有されない場合、式(2)中の「W」には「0」が代入される。
  2. 請求項1に記載のマルテンサイト鋼材であって、
    B:0.001〜0.010%を含有する、マルテンサイト鋼材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のマルテンサイト鋼材であって、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Co:0.01〜1.0%、及び、
    Ta:0.01〜1.0%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、マルテンサイト鋼材。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマルテンサイト鋼材であって、
    Ti:0.005〜0.100%、
    Zr:0.005〜0.100%、
    Ca:0.0005〜0.0050%、
    Mg:0.0005〜0.0050%、及び、
    希土類元素:0.0005〜0.0050%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、マルテンサイト鋼材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマルテンサイト鋼材であって、
    前記マルテンサイト鋼材は、油井用継目無鋼管である、マルテンサイト鋼材。
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