JP6197591B2 - マルテンサイト系Cr含有鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、マルテンサイト系Cr含有鋼材、詳しくは、耐硫化物応力割れ性と耐CO2腐食性に優れたマルテンサイト系Cr含有鋼材に関する。より詳しくは、本発明は、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、塩化物イオン(Cl-)などを含む腐食環境の厳しい油井または天然ガス井で使用される油井用鋼管の素材として用いるのに適した、比較的安価であってかつ優れた耐CO2腐食性と耐硫化物応力割れ性とを有するマルテンサイト系Cr含有鋼材に関する。
また、「油井用鋼管」とは、例えば、JIS G 0203(2009)の番号3514の定義欄に記載されているように、油井またはガス井の掘削、原油または天然ガスの採取などに用いられるケーシング、チュービング、ドリルパイプの総称である。
近年の原油価格の高騰に伴い、より苛酷な腐食環境下にある油井や天然ガス井の開発が進められている。このような油井や天然ガス井は一般に、CO2、H2S、Cl-などを含む厳しい腐食環境となっている場合が多い。したがって、このような油井やガス井で使用される油井用鋼管の素材としては、耐CO2腐食性と耐硫化物応力割れ性を兼ね備えた鋼材が要求される。
一般に、CO2およびCl-を含む環境下では、耐CO2腐食性に優れた、質量%で13%程度のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼(いわゆる「13%Cr鋼」)を用いた油井用鋼管が使用されている。しかしながら、その環境にH2Sが共存する場合、「13%Cr鋼」では硫化物応力割れ(以下、「SSC」という。)が生じやすい。
このため、このような環境で用いられる油井用鋼管には、「13%Cr鋼」の耐SSC性を改善した「Super 13Cr鋼」や、より厳しい腐食環境には、「2相ステンレス鋼」や「Ni−Cr系合金」が使用されている。しかしながら、「Super 13Cr鋼」の耐SSC性は十分とはいい難く、「2相ステンレス鋼」や「Ni−Cr系合金」は非常に高価である。
一方、CO2、H2S、Cl-などを含む厳しい腐食環境の油井やガス井において、高価な「2相ステンレス鋼」や「Ni−Cr系合金」を用いた油井用(鋼)管の使用を回避するためには、安価な耐SSC鋼を素材とする油井用鋼管を短期間で取替える、または、そのような油井用鋼管に内面コーティングなどを施して腐食速度を低減するなどの処置を講じなければならない。
このような背景から、CO2、H2S、Cl-などを含む厳しい腐食環境の油井やガス井において、内面コーティングを施すことなく使用可能な、優れた耐CO2腐食性と耐SSC性を有する安価な鋼を素材とする油井用鋼管が求められている。
上記の要望に対して、例えば、特許文献1に、質量%で、C:0.30%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.30〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:3.0〜9.0%、Al:0.005%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする「油井用Cr含有鋼管」が開示されている。なお、この油井用Cr含有鋼管は、必要に応じてさらに、(a)Nb:0.30%以下とV:0.50%以下を1種または2種あわせて0.01%以上または、(b)上述のNbまたは/およびVとともに、Cu、Ni、Mo、Ca、Ti、Zr、BおよびWから選択される1種以上を含んでもよい。
そして、特許文献1には、上記の油井用Cr含有鋼管が、CO2分圧:1MPa、温度:100℃でのCO2腐食試験において、腐食速度が0.100mm/年以下の耐CO2腐食性を有するとともに、「NACE−TM0177−96 method A」に準拠した試験液:「Solution A(pH:2.7)」、付加応力:551MPaの条件での定荷重試験で、SSCが発生しないことが示されている。なお、特許文献1における上記油井用Cr含有鋼管は、いわゆる「80ksi級(551〜655MPa)」の降伏強度に調整されたものである。
また、特許文献2に、質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:<1.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:<0.02%、S:<0.01%、Cr:11〜14%、Ni:<0.5%を含有し、必要に応じてさらに、(a)N:0.01〜0.1%または、(b)N:0.01〜0.1%と、Ca、Mg、REMの1種または2種以上をそれぞれ0.001〜0.3%含有し、かつマルテンサイト主体の組織からなる鋼を、Ac3とAc1の間の温度に加熱した後Ms点以下の温度まで冷却し、然る後さらにAc1以下の温度に加熱した後常温まで冷却することを特徴とする耐SSC性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法が開示されている。
この方法は、焼入れと焼戻しの中間工程で、下記<2>の「2相域熱処理」を行うことを特徴とする技術である。
すなわち、特許文献2で提案された技術は、熱間圧延材に対して、
<1>まず、焼準処理(上述の「焼入れ」に相当する。)を行ってマルテンサイト相主体の組織とし、
<2>次に、2相域に加熱して、焼戻しマルテンサイト相を主体とする組織に逆変態した少量のオーステナイト相が存在するようにし、その後冷却して、上記少量のオーステナイト相を再度マルテンサイト相に変態させ、
<3>最後に、上記少量のマルテンサイト相を軟化させるために焼戻しを行う、
ことによって、耐SSC性と靱性を高めたことを特徴とし、降伏強度(0.2%耐力)で507MPa(51.7kgf/mm2)以下の低強度を実現している。
特開2000−63994号公報 特開平7−76722号公報
中島孝一ら:CAMP−ISIJ、17(2004)、396 G.K.Williamson and W.H.Hall:Acta Metall.、1(1953)、22 H.M.Rietveld:J. Appl. Cryst.、2(1969)、65
後述するように、マルテンサイト系Cr含有鋼の耐SSC性は、降伏強度(0.2%耐力)の上昇により劣化することが考えられる。このため、いわゆる「110ksi級(758〜862MPa)」以上の降伏強度を有する高強度材を用いた場合には、耐SSC性を確保することがかなり難しくなると想定される。
これに対して、特許文献1で提案された油井用Cr含有鋼管は、前述のとおりいわゆる「80ksi級」の低い降伏強度に調整されたものである。このため、特許文献1に記載された発明では、良好な耐SSC性を確保しやすいと考えられる。しかしながら、上記の油井用Cr含有鋼管は、Crの含有量が少ないため耐CO2腐食性に問題がある。
特許文献2において開示されている2相域熱処理を用いたマルテンサイトステンレス鋼は、その製造方法からも明らかなように、焼入れと焼戻しの中間に、さらにもう1つの熱処理を挟む必要があり、製造コストが嵩むことを避け難い。また、形成された最終の組織は、高温焼戻しされた低強度なマルテンサイト組織と2相域熱処理とその後の焼戻しにより形成された高強度のマルテンサイト組織の2つの強度の異なる組織が共存するものとなるので、耐SSC性の点で一抹の懸念がある。
なお、特許文献2には、下記〔1〕および〔2〕の記載がある。
〔1〕一般に、炭素鋼、低合金鋼の分野では鋼の硫化物割れ抵抗性は、鋼強度に依存し、低強度材ほど優れている。マルテンサイト系ステンレス鋼についても同様であると考えられる。
〔2〕従来の製造方法(焼準−焼戻処理を施す方法)では耐力として55〜60kgf/mm2(539〜588MPa、78〜85.3ksi)以下にすることができず、必然的に得られる硫化物割れ抵抗性にも限界がある。
マルテンサイト系Cr含有鋼材は、通常、焼入れ−焼戻し(特許文献2でいう焼準−焼戻し)の熱処理を施して製造されるが、焼入れ−焼戻しによって、降伏強度(0.2%耐力)が539MPa(78ksi)以下の低強度を、比較的低温かつ短時間の焼戻しで実現できる工業的な生産手法は未だ明らかにされていない。
このため、耐SSC性に優れた降伏強度539MPa以下のマルテンサイト系Cr含有鋼材を工業的な生産手法によって経済性高く提供することが可能になれば、高深度向けの油井用鋼管を除き、安価な耐SSC性に優れた油井用鋼管の素材としてこれを活用することができる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、経済性の高い工業的な生産手法によって製造することが可能な、耐CO2腐食性および耐SSC性を具備し、油井用鋼管の素材として用いるのに適したマルテンサイト系Cr含有鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために、マルテンサイト系Cr含有鋼のCr含有量を適正化することで耐CO2腐食性を確保するとともに、降伏強度をできるだけ低減すること、具体的には、539MPa以下とすることで、耐SSC性を高めるという合金設計が可能かどうか検討した。
すなわち、本発明者らは、まず、耐CO2腐食性の観点から、高圧のCO2を含む油井環境を模擬した、CO2分圧:3MPa、5%NaCl、温度:125℃のオートクレーブ中のCO2腐食試験に基づき、マルテンサイト系Cr含有鋼のCr含有量の適正範囲について検討を行った。
その結果、マルテンサイト系Cr含有鋼の耐CO2腐食性は、鋼中のCr含有量とC含有量に依存し、
有効Cr=Cr含有量−11×C含有量
の増加に伴い、上記環境中の腐食速度が低減できることが判明した。また、実際の油井・ガス井の環境を考慮した場合には、上記の腐食環境において、腐食速度が0.25mm/年以下であることが必要である考え、この前提では、「有効Cr」の下限値は8.2%となる。
次に、本発明者らは、8.2%以上の有効Crを含むマルテンサイト系Cr含有鋼を用いて、耐SSC性を損なうことなく、539MPa以下の降伏強度を実現する手法について検討した。
その結果、焼入れ後の熱処理としての焼戻しが、比較的低温かつ短時間の条件であっても、化学組成を適正化すれば、降伏強度を539MPa以下に低下させることは実現できた。しかしながら、単に降伏強度を539MPa以下に低下させるだけでは、目的とする耐SSC性を確保することができない場合があることも明らかになった。
そこでさらに、本発明者らは、マルテンサイト系Cr含有鋼材の降伏強度を539MPa以下に低下させた場合に十分な耐SSC性を確保することが可能な組織について詳細な検討を行った。
その結果、マルテンサイト系Cr含有鋼材は、図1に示すように、2次元での、転位密度(m-2)と炭化物密度(m-2)とが下記の[3]式および[4]式を満たす組織であれば、目的とする耐SSC性を確保できることが判明した。
転位密度≦5.3×1014・・・[3]、
炭化物密度≦2.2×1012・・・[4]。
本発明は、上記の内容に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記に示すマルテンサイト系Cr含有鋼材にある。
(1)質量%で、
C:0.15%以下、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.01%以上で3.0%未満、Cr:9.0%を超えて12.0%以下、かつ下記の[1]式で定義される有効Crが8.2%超であり、sol.Al:0.001〜0.05%と、
残部がFeおよび不純物とからなり、
不純物中のP、S、Ni、NおよびOが、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Ni:0.3%以下、N:0.10%以下およびO:0.01%以下であり、
かつ下記の[2]式で表されるFn1が、Fn1<240を満たす化学組成を有し、
2次元での、組織内の転位密度(m-2)と2次元での炭化物密度(m-2)とがそれぞれ、下記の[3]式および[4]式を満たす組織であり、
さらに、降伏強度が539MPa以下であることを特徴とする、マルテンサイト系Cr含有鋼材。
有効Cr=Cr−11×C・・・[1]
Fn1=23×(Cr+5.757×sol.Al+0.504×Si+3.471×V)−477×(C+0.565×N+0.0480×Cu+0.0412×Mn+0.0688×Ni)・・・[2]
転位密度≦5.3×1014・・・[3]
炭化物密度≦2.2×1012・・・[4]
ただし、[1]式および[2]式において、元素記号はその元素の質量%での含有量を意味する。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、V:0.20%以下を含有することを特徴とする、上記(1)に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下およびMg:0.010%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
(4)質量%で、
C:0.15%以下、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.01%以上で3.0%未満、Cr:9.0%を超えて12.0%以下、かつ下記の[1]式で定義される有効Crが8.2%超であり、sol.Al:0.001〜0.05%と、
残部がFeおよび不純物とからなり、
不純物中のP、S、Ni、NおよびOが、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Ni:0.3%以下、N:0.10%以下およびO:0.01%以下であり、
かつ下記の[2]式で表されるFn1が、Fn1<240を満たす化学組成を有し、
2次元での、組織内の転位密度(m -2 )と2次元での炭化物密度(m -2 )とがそれぞれ、下記の[3]式および[4]式を満たす組織であり、
さらに、降伏強度が539MPa以下であることを特徴とする、マルテンサイト系Cr含有鋼材。
有効Cr=Cr−11×C・・・[1]
Fn1=23×(Cr+5.757×sol.Al+0.504×Si+3.471×V)−477×(C+0.565×N+0.0480×Cu+0.0412×Mn+0.0688×Ni)・・・[2]
転位密度≦5.3×10 14 ・・・[3]
炭化物密度≦2.2×10 12 ・・・[4]
ただし、[1]式および[2]式において、元素記号はその元素の質量%での含有量を意味する。
(5)Feの一部に代えて、質量%で、V:0.20%以下を含有することを特徴とする、上記(4)に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
(6)Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下およびMg:0.010%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(4)または(5)に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
本発明のマルテンサイト系Cr含有鋼材は、焼入れ後の熱処理としての焼戻しが、比較的低温かつ短時間の条件であっても、容易に降伏強度を539MPa以下に低下させることができ、しかも優れた耐CO2腐食性と耐SSC性とを有する。このため、本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材は、CO2、H2S、Cl-などを含む厳しい腐食環境の油井やガス井で使用される油井用鋼管の素材として好適である。
マルテンサイト系Cr含有鋼材において、2次元での、転位密度(m-2)と炭化物密度(m-2)とが、NACE−TM0177−2005に示された溶液A(H2S分圧:1bar(0.1MPa)、pH:2.68)環境下での耐SSC性に及ぼす影響を示す図である。 低炭素含有量かつCr含有量と有効Crの異なるマルテンサイト系Cr含有鋼を、5%NaCl水溶液を満たした、CO2分圧30bar(3MPa)で、温度125℃のオートクレーブ中に336時間(2週間)浸漬した場合の、浸漬前後の質量差から計算した、腐食速度とCr含有量との関係、および腐食速度と有効Crとの関係を示す図であり、後述の実施例での評価結果を纏めたものである。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.15%以下
Cは、強度を高める元素であるが、その含有量が0.15%を超えると、炭化物の析出の増加を招き、結果として耐CO2腐食性の低下を引き起こし、さらに靱性も低下させる。したがって、Cの含有量を0.15%以下とする。本発明のマルテンサイト系Cr含有鋼材においては、2次元での炭化物密度(m-2)が小さい方が望ましいので、C含有量の上限は、好ましくは0.12%、より好ましくは0.08%、さらに好ましくは0.04%である。一方、C含有量の下限は、脱炭コスト等の点で0.001%が好ましく、さらに好ましくは0.005%である。なお、Cr含有量が多い場合は高温においてδフェライトが生成して熱間加工性の低下を招く場合があり、そのような場合はCを多めに含有させることが好ましい。
Si:0.05〜1.0%
Siは、通常の製鋼過程において脱酸剤として作用する。脱酸効果を得るためには、Siを0.05%以上含有させる必要がある。ただし、Siの過剰の含有は耐CO2腐食性および熱間加工性の低下を招くので、上限を設けてその含有量を1.0%以下とする。Si含有量の好ましい下限は0.10%である。また、Si含有量の好ましい上限は0.75%、さらに好ましい上限は0.50%である。
Mn:0.01%以上で3.0%未満
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るためには、Mnを0.01%以上含有させる必要があり、一方、Mnの含有量が過剰になるとオーステナイト変態温度が低下し、焼戻し温度を十分に高めることができないので、上限を設けて、Mnの含有量を0.01%以上で3.0%未満とする。Mn含有量の好ましい下限は0.10%、さらに好ましい下限は0.20%である。また、Mn含有量の好ましい上限は1.2%、さらに好ましい上限は0.80%である。
Cr:9.0%を超えて12.0%以下かつ前記[1]式で定義される有効Crが8.2%超
Crは、耐CO2腐食性を確保するために必要な元素である。本発明者らは5%NaCl水溶液を満たした、CO2分圧30bar(3MPa)で、温度125℃の環境下での腐食速度からCr含有量および前記[1]式で定義される有効Crの下限値をそれぞれ、9.0%超および8.2%超と定めた。すなわち、Cr含有量および有効Crがそれぞれ、9.0%以下および8.2%以下では、前記環境での腐食速度が0.25mm/年を超えてしまう。Cr含有量が増加すると耐CO2腐食性は向上するが、耐SSC性が低下する。また、CやMnの含有量が少ない場合、δフェライトが形成され熱間加工性が低下する場合がある。したがって、上限を設けてCrの含有量を12.0%以下とする。Cr含有量の上限は、好ましくは11.0%である。なお、有効Crの上限は12.0%に近い値であっても構わない。
sol.Al:0.001〜0.05%
Alは、脱酸作用を有する。しかしながら、Alの含有量がsol.Alで0.001%未満ではその効果は十分ではない。一方、Alが過剰に含有されれば、その効果は飽和するとともに、介在物が増加し、耐SSC性の低下を招く場合がある。したがって、上限を設けてAlの含有量をsol.Alで0.001〜0.05%とする。sol.AlでのAl含有量の上限は、好ましくは0.03%未満、より好ましくは0.02%、さらに好ましくは0.01%である。なお、「sol.Al」とはいわゆる「酸可溶性Al」を意味する。
本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材は、上述の各元素と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物中のP、S、Ni、NおよびO(酸素)が、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Ni:0.3%以下、N:0.10%以下およびO:0.01%以下である化学組成を有する。「不純物」とは、マルテンサイト系Cr含有鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップまたは製造環境などから混入するものを指す。
P:0.03%以下
Pは、鋼中に含まれる不純物であり、粒界に偏析して、耐CO2腐食性および耐SSC性を劣化させる。このため、不純物中のPの含有量は少ない方が望ましいので、上限を設けて0.03%以下とする。P含有量の上限は、好ましくは0.020%であり、より好ましくは0.015%である。
S:0.003%以下
Sは、鋼中に含まれる不純物であり、粒界に偏析して耐SSC性を低下させる。また、Sの過剰の含有は熱間加工性にも悪影響を与える。そのため、不純物中のSの含有量は少ない方が好ましいので、上限を設けて0.003%以下とする。S含有量の上限は、好ましくは0.002%であり、より好ましくは0.001%である。
Ni:0.3%以下
Niは、本発明においては不純物であり、耐SSC性を低下させる好ましくない元素である。特に、Niの含有量が0.3%以上になると、耐SSC性の低下が著しくなる。したがって、不純物中のNiの含有量を0.3%以下とする。Ni含有量の上限は、好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.12%である。
N:0.10%以下
Nは、鋼中に含まれる不純物である。過剰なNの含有は、粗大な窒化物を形成して、孔食の起点となり、耐SSC性の低下を招きやすい。そのため、不純物中のNの含有量に上限を設けて0.10%以下とする。N含有量の上限は、好ましくは0.06%であり、より好ましくは0.04%である。
O:0.01%以下
O(酸素)は鋼中に含まれる不純物であり、過剰に含有されれば、粗大な酸化物を形成して、靱性および耐SSC性を低下させる。このため、不純物中のOの含有量は少ない方が好ましいので、上限を設けて0.01%以下とする。O含有量の上限は好ましくは0.005%である。
本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材には、Feの一部に代えて、次の〈a〉〜〈c〉から選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
〈a〉:Cu:3.0%以下
〈b〉:V:0.20%以下
〈c〉:Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下
以下、これらの任意元素について、詳述する。
Cu:3.0%以下
Cuは耐CO2腐食特性を向上させる効果があるとともに、オーステナイト安定化元素として寄与する。このため、必要に応じてCuを含有させてもよい。ただし、3.0%を超える含有量では高温割れに敏感となり熱間加工性が低下することから、上限を設けて、含有させる場合のCuの量を3.0%以下とする。含有させる場合のCuの量は、好ましくは1.2%以下であり、さらに好ましくは0.80%以下である。一方、前記したCuの効果を安定して発現させるためには、Cuの含有量は0.02%以上であることが好ましく、0.10%以上であればより好ましい。
V:0.2%以下
Vは、焼戻し軟化抵抗を向上させるので、高温での焼戻しが可能となり、その結果、転位密度が低減して、耐SSC性が向上する。このため、必要に応じてVを含有させてもよい。しかしながら、過剰のVの含有は鋼の強度上昇が大きくなって、耐SSC性の低下を招くので、上限を設けて、含有させる場合のVの量を0.2%以下とする。含有させる場合のVの量は、好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。一方、前記したVの効果を安定して発現させるためには、Vの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下
CaおよびMgは、熱間加工性の向上および連続鋳造における製造安定性の向上に有効に作用する元素である。このため、必要に応じてCaおよび/またはMgを含有させてもよい。しかしながら、CaおよびMgの含有量がそれぞれ、0.010%を超えると粗大介在物として存在しやすくなるため耐SSC性の劣化および靱性の低下を招きやすい。したがって、これらを含有させる場合の量はCaとMgそれぞれについて、0.010%以下とする。含有させる場合のCa量およびMg量の上限は、好ましくはそれぞれ0.0040%であり、さらに好ましくはそれぞれ0.0030%である。
一方、前記したCaおよびMgの効果を安定して発現させるためには、それぞれの含有量は、0.0003%以上であることが好ましく、0.0005%以上であればより好ましい。含有させる場合のさらに好ましいそれぞれの含有量は、0.0008%以上である。
上記のCaおよびMgは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種の複合で含有させることができるが、複合して含有させる場合のこれらの元素の合計量は、0.0040%以下とすることが好ましい。
Fn1:240未満
本発明に係るCr含有鋼材は、さらに、
Fn1=23×(Cr+5.757×sol.Al+0.504×Si+3.471×V)−477×(C+0.565×N+0.0480×Cu+0.0412×Mn+0.0688×Ni)・・・[2]
で表されるFn1が、Fn1<240を満たす化学組成でなければならない。
ただし、[2]式において、元素記号はその元素の質量%での含有量を意味する。
上記のFn1は、フェライト安定化元素とオーステナイト安定化元素のバランスを示すものであって、Fn1<240を充足することで、実質的にマルテンサイト単相の組織が得られる。
(B)組織
上記(A)項に記載の化学組成を有する本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材は、前述のようにFn1<240を満足することでマルテンサイト単相組織であるほか、転位密度(m-2)および炭化物密度(m-2)がそれぞれ、下記の[3]式および[4]式を満たす組織でなければならない。
転位密度≦5.3×1014・・・[3]、
炭化物密度≦2.2×1012・・・[4]。
図2は、マルテンサイト系Cr含有鋼材において、2次元での、転位密度(m-2)と炭化物密度(m-2)とが、NACE−Solution A(H2S分圧:1bar(0.1MPa)、pH:2.68)環境下での耐SSC性に及ぼす影響を示す図である。この図2から明らかなように、上記の[3]式および[4]式を同時に満たす範囲において、耐SSC性を確保することができる。
上記(A)項に記載の化学組成を有する本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材においては、炭化物は主にM236型炭化物(「M」は、Cr、Feなどの元素を指す。)として析出する。なお、観察される炭化物の円相当直径は、熱処理条件によって変化するものの、ほぼ30〜500nmの範囲である。炭化物は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による2次元観察により測定し、5000〜20000倍の適切な写真を用いてコンピュータ画像解析することによって、その密度(m-2)およびサイズを求めることができる。
また、転位密度の測定は、非特許文献1で中島らが提案する非特許文献2に記載されたWilliamson−Hall法に基づいた評価法を用いて行うことができる。
具体的には、例えば、X線回折プロファイルの測定には、陰極管にCo管球を用い、プロファイルはθ−2θ回折法を用いて、2θで40°から130°の範囲で測定を行う。そして、BCC結晶構造の{110}面、{211}面および{220}面の各回折について、非特許文献3に記載されたRietveld法を用いてフィッテングして得られた半価幅を用いて、ひずみ〔ε〕を求め、上記のひずみ〔ε〕とバーガースベクトル〔b〕とで表される
ρ=14.4ε2/b2
の式を計算して、単位がm-2での転位密度〔ρ〕を求めることができる。
なお、測定装置由来のプロファイル計測には、例えば純シリコンの粉末試料を用い、また、上記のバーガースベクトル〔b〕の値には0.24823×10-9mを用いればよい。
(C)降伏強度
上記(A)項に記載の化学組成を有し、(B)項に記載の組織である本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材は、降伏強度(0.2%耐力)が539MPa以下でなければならない。
降伏強度が539MPaを超えると、NACE−TM0177−2005に示された溶液A(H2S分圧:1bar(0.1MPa)、pH:2.68)環境下での耐SSC性が著しく低下する場合がある。なお、降伏強度は517MPa(75ksi)以下であることが好ましい。
本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、電気炉、AOD炉、VOD炉などを用いて溶製し、化学組成を調整する。
化学組成を調整した溶湯は、次に、インゴットに鋳造して、その後の鍛造など熱間加工によって、スラブ、ブルーム、ビレットなどいわゆる「鋼片」に加工してもよいし、また、連続鋳造して、直接にスラブ、ブルーム、ビレットなどいわゆる「鋼片」にしてもよい。
さらに、上記の「鋼片」を素材として、板材、管材など所望の形状に熱間加工する。例えば、板材に加工する場合は、熱間圧延によってプレートやコイル状に熱間加工することができる。また、管材に加工する場合は、マンネスマン−マンドレル製管法によって管状に熱間加工することができるし、前記プレートを溶接して管状に加工してもよい。
熱間加工後は大気中で放冷して冷却した後、再加熱焼入れおよび焼戻し処理を実施する。あるいは、熱間加工後に直接焼入れしてから焼戻し処理してもよい。また、熱間加工後、Ar3点以上の温度で補熱してインラインで焼入れを行い、その後に焼戻し処理してもよい。
焼入れ温度は、900〜970℃であることが好ましい。焼入れ温度が高いと、結晶粒が粗大化して耐SSC性が低下する場合がある。
焼戻しは、Ac1点以下の温度で行う。なお、上記(A)項に記載の化学組成を有する本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材の場合には、鋼材のサイズにもよるが、例えば、700〜750℃の温度で30分程度という比較的低温かつ短時間の条件であっても、降伏強度を539MPa以下に低下させることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼を真空高周波溶解炉にて溶解し、50kgのインゴットに鋳造した。
表1における鋼A〜Rはいずれも、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼SはC含有量が、鋼Tおよび鋼UはCr含有量が、鋼VはNi含有量が、本発明で規定する範囲から外れた鋼である。
Figure 0006197591
各インゴットは1200℃で2時間の加熱処理を行った後、熱間鍛造して50mm×50mmの板材に加工した。このようにして得た板材を、さらに、1200℃で1時間加熱した後、熱間圧延して厚さ15mmの板材に仕上げた。
次いで、上記の熱間圧延して得た厚さ15mmの板材を950℃で30分加熱してから水焼入れし、マルテンサイトの単相組織を得た。このマルテンサイト単相組織にした板材には、表2に示す条件で焼戻しを施し、その後水冷した。
上記の焼入れ−焼戻しを行った各板材から試験片を切り出して、引張特性、転位密度、炭化物密度、耐SSC性および耐CO2腐食性を調査した。
引張特性は、上記各板材の厚さ中央部の圧延方向に平行な方向(以下、「L方向」という。)から、平行部の直径が6mmで標点間距離が40mmの丸棒引張試験片を採取し、室温で引張試験して降伏強度(0.2%耐力)を求めた。
転位密度は、各板材の厚さ中央部からサイズが縦横それぞれ20mm、厚み2mmの試験片を切り出して、5%過塩素酸−メタノール溶液を電解液とし、−60℃にて試験片表面を電解研磨し、この試験片を用いて測定した。
なお、転位密度の測定は、既に述べたように、非特許文献1で中島らが提案する非特許文献2に記載されたWilliamson−Hall法に基づいた評価法を用いて行った。
具体的には、X線回折プロファイルの測定には、陰極管にCo管球を用い、プロファイルはθ−2θ回折法を用いて、2θで40°から130°の範囲で測定を行った。そして、BCC結晶構造の{110}面、{211}面および{220}面の各回折について、非特許文献3に記載されたRietveld法を用いてフィッテングして得られた半価幅を用いて、ひずみ〔ε〕を求め、上記のひずみ〔ε〕とバーガースベクトル〔b〕とで表される
ρ=14.4ε2/b2
の式を計算して、単位がm-2での転位密度〔ρ〕を求めた。
なお、測定装置由来のプロファイル計測には、純シリコンの粉末結晶を用いた。また、上記のバーガースベクトル〔b〕の値には0.24823×10-9mを用いた。
炭化物密度は、各板材から長さ20mm、高さ15mmの試験片を切り出し、元の板材の幅方向に垂直な断面が被検面となるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨した後、ビレラ試薬で腐食し、SEMにより測定した。
具体的には、SEMにより5000〜20000倍の適切な写真を10視野撮影し、その撮影画像を用いて、画像解析ソフトにより、面積1m2あたりの炭化物の個数を算出した。
耐SSC性は、NACE−TM0177−2005に示された「Method A」の引張試験にて評価した。試験片は各板材の厚さ中央部のL方向から、上記試験法に定義されたサブサイズ試験片を採取した。試験液には溶液A(H2S分圧:1bar(0.1MPa)、pH:2.68)を用い、付加応力は実際の降伏強度の90%とした。なお、上記の試験で割れが発生しないことをもって耐SSC性が良好と評価し、これを目標とした。
耐CO2腐食性は、各板材の厚さ中央部からL方向にそって、長さ75mm、幅10mm、厚さ2mmの試験片を切り出し、この試験片を、5%NaCl水溶液を満たした、CO2分圧30bar(3MPa)で、温度125℃のオートクレーブ中に336時間(2週間)浸漬した場合の、浸漬前後の質量差から腐食速度を計算した。なお、上記の試験で腐食速度が0.25mm/年以下であることをもって耐CO2腐食性が良好と評価し、これを目標とした。
表2に、上記の各調査結果を併せて示す。なお、「耐SSC性」欄における「○」は、上記環境中の試験で割れが発生しなかったことを、一方、「×」は、割れが発生したことを示す。
Figure 0006197591
表2から、本発明で規定する条件を満たす試験符号1〜18の鋼材は、焼入れ後の熱処理としての焼戻しが、比較的低温かつ短時間という経済性の高い工業的な生産手法によるものであるにも拘わらず、耐CO2腐食性および耐SSC性を具備しており、油井用鋼管の素材として用いるのに適したマルテンサイト系Cr含有鋼材であることが明らかである。
本発明のマルテンサイト系Cr含有鋼材は、焼入れ後の熱処理としての焼戻しが、比較的低温かつ短時間の条件であっても、容易に降伏強度を539MPa以下に低下させることができ、しかも優れた耐CO2腐食性と耐SSC性とを有する。このため、本発明に係るマルテンサイト系Cr含有鋼材は、CO2、H2S、Cl-などを含む厳しい腐食環境の油井やガス井で使用される油井用鋼管の素材として好適である。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.15%以下、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.01%以上で3.0%未満、Cr:9.0%を超えて12.0%以下、かつ下記の[1]式で定義される有効Crが8.2%超であり、sol.Al:0.001〜0.05%と、
    残部がFeおよび不純物とからなり、
    不純物中のP、S、Ni、NおよびOが、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Ni:0.3%以下、N:0.10%以下およびO:0.01%以下であり、
    かつ下記の[2]式で表されるFn1が、Fn1<240を満たす化学組成を有し、
    2次元での、組織内の転位密度(m-2)と2次元での炭化物密度(m-2)とがそれぞれ、下記の[3]式および[4]式を満たす組織であり、
    さらに、降伏強度が539MPa以下であることを特徴とする、マルテンサイト系Cr含有鋼材。
    有効Cr=Cr−11×C・・・[1]
    Fn1=23×(Cr+5.757×sol.Al+0.504×Si+3.471×V)−477×(C+0.565×N+0.0480×Cu+0.0412×Mn+0.0688×Ni)・・・[2]
    転位密度≦5.3×1014・・・[3]
    炭化物密度≦2.2×1012・・・[4]
    ただし、[1]式および[2]式において、元素記号はその元素の質量%での含有量を意味する。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、V:0.20%以下を含有することを特徴とする、請求項1に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下およびMg:0.010%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
  4. 質量%で、
    C:0.15%以下、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.01%以上で3.0%未満、Cr:9.0%を超えて12.0%以下、Cu:3.0%以下、かつ下記の[1]式で定義される有効Crが8.2%超であり、sol.Al:0.001〜0.05%と、
    残部がFeおよび不純物とからなり、
    不純物中のP、S、Ni、NおよびOが、P:0.03%以下、S:0.003%以下、Ni:0.12%以下、N:0.10%以下およびO:0.01%以下であり、
    かつ下記の[2]式で表されるFn1が、Fn1<240を満たす化学組成を有し、
    2次元での、組織内の転位密度(m -2 )と2次元での炭化物密度(m -2 )とがそれぞれ、下記の[3]式および[4]式を満たす組織であり、
    さらに、降伏強度が539MPa以下であることを特徴とする、マルテンサイト系Cr含有鋼材。
    有効Cr=Cr−11×C・・・[1]
    Fn1=23×(Cr+5.757×sol.Al+0.504×Si+3.471×V)−477×(C+0.565×N+0.0480×Cu+0.0412×Mn+0.0688×Ni)・・・[2]
    転位密度≦5.3×10 14 ・・・[3]
    炭化物密度≦2.2×10 12 ・・・[4]
    ただし、[1]式および[2]式において、元素記号はその元素の質量%での含有量を意味する。
  5. Feの一部に代えて、質量%で、V:0.20%以下を含有することを特徴とする、請求項4に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
  6. Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下およびMg:0.010%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項4または5に記載のマルテンサイト系Cr含有鋼材。
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