JP2017014398A - ポリアミド系樹脂発泡体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、耐熱性、押出加工性、押出発泡性に優れたポリアミド系樹脂発泡体を提供することを目的とする。【解決手段】融点+30℃の温度で測定した、周波数0.1rad/sでの溶融粘度(A)と、周波数10rad/sでの溶融粘度(B)との比(A/B)がある一定の範囲内にあるポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂組成物からなることを特徴するポリアミド系樹脂発泡体。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド系樹脂発泡体に関する。
ポリアミド6(以下、「PA6」ともいう。)及びポリアミド66(以下、「PA66」ともいう。)等に代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用品及び家庭品用途等の各種部品材料として広く用いられている。
現在では、自動車産業において、環境に対する取組として、排出ガス低減のために車体軽量化が要求されている。この要求に応えるために、自動車の外装材料や内装材料等として、金属に代わりポリアミドが一段と用いられるようになってきている。
最近では、さらなる軽量化が要求されており、樹脂発泡体への期待が高まっている、しかしながら、汎用の発泡体は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の汎用樹脂であり、耐熱性が十分ではない。そこで、より高い耐熱性を発泡体の開発が求められている。
しかしながら、ポリアミド樹脂は、高い耐熱性が期待できるものの、元来、溶融粘度や溶融張力等の溶融物性が低く、改質せずに発泡させることは困難である。
上記のような問題点を解決するため、改質剤や架橋剤と発泡剤を添加し、単軸押出機中でポリアミド樹脂を増粘させながら発泡剤を溶解させて押出発泡させる方法が知られている。
例えば、特許文献1には、ポリアミドに架橋剤を添加して、得られた混合物を押出発泡させて発泡体とする方法を記載している。
また、特許文献2には、ポリアミドに、1分子中に3個以上のカルボン酸無水物基を持った化合物、又はα、β−不飽和カルボン酸無水物と、スチレン及び/又はオレフィンとの(共)重合体を添加して、押し出して発泡させる方法を記載している。この場合、架橋剤を中心としてポリアミドが三次元的に結合することで、溶融粘度は飛躍的に向上する。
特公平7−76285号公報 特開2000−86800号公報
特許文献1に記載のポリアミド系樹脂発泡体は、ロッド状の発泡体が得られるだけで、板状又はシート状の発泡体は得ることが困難であり、シート状の発泡体を得るための溶融物性が十分とは言えず、加工性が悪かった。また、特許文献2に記載のポリアミド系樹脂発泡体は、ポリアミドと架橋剤の官能基との反応性が高く、樹脂温度をより低い温度で均一にするために、押出機内の滞留時間を長くすると、必要以上に架橋反応が進行したり、架橋度の違いによる溶融粘度のばらつきが生じたりして、発泡体を引き取る際に裂けやすくなったり、高せん断速度での溶融粘度が高くなって流動性が損なわれたりするため、押出発泡性が悪くなる。
そこで、本発明は、耐熱性、押出加工性、押出発泡性に優れたポリアミド系樹脂発泡体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、融点+30℃で測定した周波数0.1rad/sでの溶融粘度(A)と、周波数10rad/sでの溶融粘度(B)の比(A/B)がある一定の範囲内にあるポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂組成物からなることを特徴するポリアミド系樹脂発泡体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕融点+30℃の温度で測定した、周波数0.1rad/sでの溶融粘度(A)と、周波数10rad/sでの溶融粘度(B)との比(A/B)が3〜7であるポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂組成物からなることを特徴とする、ポリアミド系樹脂発泡体。
〔2〕上記ポリアミド系樹脂組成物が、上記ポリアミド系樹脂100質量部に対して架橋剤を0.05〜7質量部含有する、〔1〕に記載のポリアミド系樹脂発泡体。
〔3〕上記架橋剤がイソシアヌレート系化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド系樹脂発泡体。
本発明によれば、耐熱性、押出加工性、押出発泡性に優れたポリアミド系樹脂発泡体を提供することができる。
本発明のポリアミド系樹脂発泡体は、特に、高温条件下で使用される自動車部材に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のポリアミド系樹脂発泡体は、ポリアミド系樹脂組成物からなり、該組成物は、ポリアミド系樹脂を含み、必要に応じて架橋剤、気泡調整剤等の他の成分を含むことが好ましい。
本実施形態において用いられるポリアミド系樹脂は、アミノカルボン酸の自己縮合反応、ラクタムの開環重合、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により得られる重合体により得られる、アミド結合(−NHCO−)を主鎖中に有する重合体を意味する。
アミノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましい。このようなアミノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、特に限定されないが、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。中でも、ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどがある。
ジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
本実施形態に用いられるポリアミド系樹脂としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ポリアミド6T/6I)、ポリビス(1−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミンの重縮合体(非晶性ポリアミド)、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体(非晶性ポリアミド)およびこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドなどがある。上記の中でも、耐熱性に優れ、押出加工が容易と言う観点から、ポリアミド6、ポリアミド66および非晶性ポリアミドが特に好ましい。さらに好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66が特に好ましい。
上記ポリアミド系樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミド系樹脂の製造方法としては、特に限定されないが、通常公知の溶融重合法で、あるいはさらに固相重合法を併用して製造する方法が挙げられる。
ポリアミド系樹脂の製造方法は、特に限定されず、バッチ式でも連続式でもよい。重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダー等の押出機型反応器等が挙げられる。
本実施形態に用いる架橋剤としては、特に限定されないが、分子中に少なくとも2個以上の炭素間二重結合を有する多官能モノマーが挙げられる。低角速度領域での溶融粘度の向上、押出時の安定性、シート引取性、及びコルゲートの抑制の観点から、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌレート系化合物が好ましく、より好ましくは、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートであり、さらに好ましくは、トリメタリルイソシアヌレートである。
本実施形態のポリアミド系樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、ポリアミド系樹脂100質量部に対し、0.05〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部である。架橋剤の含有量が0.05質量部以上であると、溶融粘度が適度に向上し、押出発泡時に破泡が起こりにくく、発泡シートの引き取り時に裂けにくくなる。一方、7質量部以下であると、ゲルや分解ガスの発生を抑制でき、シートの裂け防止効果が得られやすく、表面外観が良好になる。
本実施形態の架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド系樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂組成物に含まれるポリアミド系樹脂の融点+30℃の温度で測定した、周波数0.1rad/sでの溶融粘度(A)と周波数10rad/sでの溶融粘度(B)との比(A/B)がある一定の範囲内にある溶融物性を示す。
通常のポリアミド系樹脂のように周波数0.1rad/sでの溶融粘度が低い場合は、押出発泡時に破泡しやすくなる。一方、周波数10rad/sでの溶融粘度が低すぎる場合はシートの形状維持が困難であり、逆に高すぎる場合は押出機への負荷が大きくなり、ストランド切れやトルクオーバーの発生につながる。
押出性と発泡性を両立させるためには、周波数0.1rad/sでの溶融粘度(A)と周波数10rad/sでの溶融粘度(B)のバランスが重要であり、(A)と(B)の比が適切な範囲内にあることが望ましい。
(A)と(B)の比(A/B)は、3〜7であり、好ましくは3〜5である。
(A)と(B)の比が3より低いと、押出発泡時に破泡しやすく、シート形状の維持が困難であり、所望の発泡体を得ることが難しい場合やトルクオーバーにより押出が困難になる場合がある。また、発泡シートの引き取り速度が速くなると裂けやすくなる。
また、(A)と(B)の比が7より高いと、押出発泡時に気泡の成長が阻害され、高い発泡倍率の発泡体が得にくく、発泡シートが引き取り時に裂ける要因にもなる。
本実施形態のポリアミド系樹脂組成物にはポリアミド系樹脂、及び架橋剤以外に、その他の成分として、気泡調整剤、安定剤、衝撃改良材、難燃剤、滑剤、顔料、染料、耐候性改良剤、帯電防止剤、耐衝撃改質剤、結晶核剤、ガラスビーズ、無機充填材や他の熱可塑性樹脂を、本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
また、本実施形態のポリアミド系樹脂組成物には、この樹脂組成物を発泡体としたときに、より微細な気泡を得る目的で、あらかじめ気泡調整剤を添加しても良い。あるいは、発泡時に気泡調整剤を添加しても良い。気泡調整剤としては、例えば、タルク、カオリン、クレー、珪酸カルシウム、シリカ、クエン酸ソーダ、炭酸カルシウム、珪藻土、焼成パーライト、ゼオライト、ベントナイト、ガラス、石灰石、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸第二鉄、ポリテトラフルオロエチレン粉末等が挙げられる。このような気泡調整剤は、発生する気泡を小さくする観点から、平均粒径が100μm以下のものが好ましい。
気泡調整剤の添加量(含有量)としては、ポリアミド系樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上であると、発泡体の気泡が適度となり外観が良好となる。また、5質量部以下であると、押出発泡時に破泡が起こりにくく、独立気泡率が低下しにくく、外観が良好となる。
安定剤としては、特に限定されることなく、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等の有機系酸化防止剤や熱安定剤;ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤;金属不活性化剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱安定剤としては、120℃以上の高温環境下で長期熱老化を効果的に防止する観点から、銅化合物が好ましく、この銅化合物とハロゲン化アルカリ金属化合物との組み合わせも好ましい。ここで、ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド系樹脂発泡体を製造する方法は、特に限定されないが、公知の発泡方法を用いることができる。例えば、押出機を用いて、溶融した本実施形態のポリアミド系樹脂組成物に発泡剤を注入してスリット状ダイから押出発泡して発泡シート状にしたり、丸形ダイから押出発泡してストランド形状(発泡ストランド)にしたりしてポリアミド系樹脂発泡体を得ることができる。
発泡剤としては、特に限定されないが、熱分解型発泡剤、物理発泡剤等が挙げられる。
熱分解型発泡剤として好ましいものは、アゾジカルボンアミドやバリウムアゾジカルボキシレートに代表されるアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンに代表されるニトロソ化合物、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)やヒドラジカルボンアミドに代表されるヒドラジン化合物、テトラゾール化合物、あるいは炭酸水素ナトリウムなどの無機系の発泡剤などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
物理発泡剤として好ましいものは、二酸化炭素、窒素、酸素、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水等の無機化合物や、トリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)、テトラクロロジフルオロエタン(R112)ジクロロフルオロエタン(R141b)クロロジフルオロエタン(R142b)、ジフルオロエタン(R152a)、HFC−245fa、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−225ca等のフルオロカーボンやHFO−1234y、HFO−1234ze(E)等のハイドロフルオロオレフィンや、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等の飽和炭化水素や、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類や、塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述の発泡剤の添加量は、ポリアミド系樹脂組成物全量に対して0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜6質量%がさらに好ましい。発泡剤の配合量が0.05質量%以上であると、適度に発泡した(発泡倍率が高い)発泡体が得られやすく、発泡剤の配合量が10質量%以下であると、破泡が起こりにくく、発泡体内部で気泡の合一も起こりにくいため、発泡体の外観が良好となる。
また、本実施形態のポリアミド系樹脂発泡体を得る方法としては、あらかじめポリアミド系樹脂組成物の粒子を作製し、上記に記載した無機化合物、炭化水素、エーテル類、塩素化炭化水素等の発泡剤を加圧下にて含浸させた後、温度や圧力の変化で発泡させて予備発泡粒子を作製する方法も挙げられる。
ポリアミド系樹脂組成物に発泡剤を含有(含浸)させる方法としては、特に限定されないが、例えば、水等の懸濁系で水性媒体を用いて行う方法(懸濁含浸)や、重炭酸ナトリウム等の熱分解型発泡剤を用いる方法(発泡剤分解)、ガスを臨界圧力以上の雰囲気とし液相状態にして、基材樹脂に接触させる方法(液相含浸)、ガスを臨界圧力未満の雰囲気とし気相状態にして、基材樹脂に接触させる方法(気相含浸)等が挙げられる。
発泡剤を含有(含浸)させたポリアミド系樹脂組成物に発泡を生じさせる方法としては、特に限定されないが、例えば、予備発泡粒子を高圧雰囲気下から低圧雰囲気下に一気に持ち込むことによって、予備発泡粒子中に溶解している発泡剤としてのガスを膨張させて、発泡を生じさせる方法や、圧力蒸気等を用いて加熱することによって、予備発泡粒子中のガスを膨張させて、発泡を生じさせる方法等を用いることができる。
なお、予備発泡粒子とは、最終段階の発泡を行っていない発泡性を有する粒子をいう。
ポリアミド系樹脂予備発泡粒子を成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、予備発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填し、加熱することによって、発泡を生じさせると同時に予備発泡粒子同士を熱融着させた後、冷却により生成物を固化し、成形することができる。ここで、予備発泡粒子の充填方法は、特には限定されないが、例えば、金型を多少開けた状態で予備発泡粒子を充填するクラッキング法、金型を閉じたままの状態で加圧圧縮した予備発泡粒子を充填する圧縮法、金型に加圧圧縮した予備発泡粒子を充填した後に上記クラッキング法を行う圧縮クラッキング法等が挙げられる。
本実施形態のポリアミド系樹脂発泡体の密度は、0.02〜0.8g/cmであることが好ましい。密度が0.02g/cm以上であることにより気泡径を均一に保て、気泡膜の厚みが薄くなりすぎず、強度を高く保持することができる。また、0.8g/cm以下であることにより発泡体の軽量性を高めることができる。
また、本実施形態のポリアミド系樹脂発泡体の独立気泡率としては、75%以上であることが好ましい。独立気泡率が75%以上であることにより、発泡体の強度を高く維持すること、ならびに高い断熱性能を発揮することができる。
以下、本発明を具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
後述する実施例及び比較例のポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂発泡体の原材料、物性の測定方法を以下に示す。
[原材料]
<<(a)ポリアミド系樹脂>>
(a−1)PA6(Tm2:220℃、ΔH:59J/g、96%硫酸粘度ηr:3.9)
(a−2)PA66(Tm2:260℃、ΔH:56J/g、96%硫酸粘度ηr:2.5)
<<(b)架橋剤>>
(b−1)トリメタリルイソシアヌレート
(b−2)トリアリルイソシアヌレート
<<その他の成分>>
気泡調整剤:タルク(平均粒子径 6μm)
有機過酸化物:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
[物性の測定方法]
(1)融点Tm2(℃)、融解熱量ΔH(J/g)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製DSC7を用いて、後述の実施例及び比較例で用いたポリアミド系樹脂の融点Tm2(℃)及び融解熱量ΔH(J/g)を測定した。具体的には、以下のとおり測定を行った。まず、窒素雰囲気下、サンプル約10mgを、室温からサンプルの融点に応じて300〜350℃まで、昇温速度20℃/minで昇温した。このときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とした。次に、昇温の最高温度で温度を2分間保った。この最高温度ではポリアミド系樹脂は溶融状態であった。その後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した。その後、30℃からサンプルの融点に応じて300〜350℃まで、昇温速度20℃/minで昇温した。このときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最高ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。
融点Tm2を、ポリアミド系樹脂の融点(℃)とした。
(2)25℃の硫酸相対粘度ηr
JIS−K6810に準じて、後述の実施例及び比較例で用いたポリアミド系樹脂の25℃の硫酸相対粘度ηrの測定を実施した。具体的には、96%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(96%硫酸100mL)の割合)を作製し、得られた溶解液を用いて25℃の温度条件下で硫酸相対粘度ηrを測定した。
(3)溶融粘度
実施例及び比較例で得られたポリアミド系樹脂組成物を、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて成形することにより、長さ60mm×巾60mm×厚さ1.0mmの成形片を作製した。そこから1mmφの円柱形状サンプルをプレスにより作製し、溶融粘度測定装置[ARES−G2:TA INSTRUMENTS社製]を用いて、溶融粘度を測定した。測定条件は、周波数を100〜0.01rad/s、プレート径25φmm、ギャップ間隔0.05mm、測定温度をポリアミド系樹脂の融点(Tm2)+30℃とした。
そして、「(周波数0.1rad/sの溶融粘度)/(周波数10rad/sの溶融粘度)」を算出した。
(4)密度
後述の実施例及び比較例で得られたポリアミド系樹脂発泡体について、質量W(g)を測定した後、水没法により、発泡体の見かけの容積Va(cm)を測定した。そして、その質量Wを見かけの容積Vaで除した値W/Va(g/cm)を、発泡体の密度とした。
(5)独立気泡率
前述の(4)において見かけの容積Vaを測定した発泡体について、その真の容積(Vx)を空気比較式比重計(ベックマン(株)社製)を用いて測定した。そして、下記の式1に従って、独立気泡率S(%)を算出した。
S(%)={(Vx−W/ρ)/(Va−W/ρ)}×100 ・・・式1
(式中、Vxは、発泡体の真の容積(cm)であり、Vaは、発泡体の見かけの容積(cm)であり、Wは、発泡体の質量(g)であり、ρは、発泡体の基材樹脂の密度(g/cm)である。)
(6)発泡体の平均気泡径
後述の実施例及び比較例で得られたポリアミド系樹脂発泡体の押出方向(MD方向)と直交する面を走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、その写真において少なくとも100個の隣接するセルの円相当径をセル径とし、それらの100個の平均値を求め、これを任意の三箇所において行い、三箇所で得られた3つの平均値を平均した値を平均セル径とした。
(7)二軸押出性
実施例及び比較例で記載したポリアミド系樹脂組成物のペレットを、スクリュー径30mmの二軸押出機(商品名「TEX30α」、日本製鋼所製)により押出加工した。該押出加工の際、シリンダーの温度を、ポリアミド系樹脂の融点(Tm2)+30℃に設定し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hに設定した。押出開始から30分後〜3時間後の時間帯に5本のストランドを引いたときに、安定的にストランドが引き取れた本数を目視により、以下のような基準に従って評価した。該安定的に引き取れたストランドの本数が多いほど、押出加工性に優れると判断した。
○:5本のストランドのうち、5本とも引取可能
△:5本のストランドのうち、3〜4本が引取可能
×:5本のストランドのうち、0〜2本が引取可能
(8)押出発泡性
実施例及び比較例で得られた押出発泡シートを観察し、押出発泡性を以下のような基準に従って評価した。
○:自重によるシートの垂れ下がりやダイ詰まりなどが発生せず、押出発泡シートの製造開始から2時間継続して、安定して、シートが得られた。
△:押出発泡シートの製造開始から2時間以内に、自重によるシートの垂れ下がりや断続的なダイ詰まりの発生などが起こり、シートに裂けが生じる等シートの成形が不安定であった。発生したダイ詰まりは、樹脂を押し出す圧力で解消し、再びシートの成形が可能となり、2時間継続してシートが得られた。
×:押出発泡シートの製造開始から2時間以内に、自重によるシートが垂れ下がりや継続的なダイ詰まりの発生などが起こり、シートの成形が困難であった。
(9)押出シートの伸縮性
フィッシュテールダイから出てきた押出発泡シートを引取装置で引き取った際に、シートが裂ける等して引取不可になる引取速度を測定して、伸縮性を評価した。
その引取速度が速いほど、コルゲートの抑制が容易になるなど押出加工性が優れると判断した。
(10)コルゲートの有無
実施例及び比較例で得られたポリアミド系樹脂発泡体のシート表面のコルゲートの有無を、目視で確認した。コルゲートが見られた場合を「有」、見られなかった場合を「無」とした。
(実施例1)
ポリアミド系樹脂(a−1)100質量部、架橋剤(b−1)0.2質量部と気泡調整剤0.1質量部を30mmφ二軸押出機により溶融混練し、ペレット状のポリアミド系樹脂組成物を作製した。該押出加工の際、シリンダーの温度をポリアミド系樹脂(a−1)の融点(Tm2)+30℃に設定し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hに設定した。
得られたポリアミド系樹脂組成物を40mmφ単軸押出機のホッパーに供給して溶融させたのち、押出機バレルの途中から発泡剤としてノルマルブタンを圧入した。ブタン圧入後、樹脂温度を均一にするためのスクリュークーラーを通過させ、フィッシュテールダイ(スリット形状:幅300mm×厚み1mm)からポリアミド系樹脂発泡体の押出発泡シートを得た。各設備の設定温度は、単軸押出機をTm2+30℃、スクリュークーラーをTm2、フィッシュテールダイをTm2+5℃に設定した。
(実施例2〜7、比較例1〜3)
ポリアミド系樹脂、架橋剤、有機過酸化物が表1に記載の種類、添加量であること以外は、実施例1と同様に製造を行った。
評価結果を表1に示す。
Figure 2017014398
表1の結果から、本発明のポリアミド系樹脂発泡体は、押出加工性、押出発泡性に優れていることを確認した。また、本発明のポリアミド系樹脂発泡体は、アミド系樹脂を用いているため、耐熱性にも優れていた。

Claims (3)

  1. 融点+30℃の温度で測定した、周波数0.1rad/sでの溶融粘度(A)と、周波数10rad/sでの溶融粘度(B)との比(A/B)が3〜7であるポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂組成物からなることを特徴とする、ポリアミド系樹脂発泡体。
  2. 前記ポリアミド系樹脂組成物が、前記ポリアミド系樹脂100質量部に対して架橋剤を0.05〜7質量部含有する、請求項1に記載のポリアミド系樹脂発泡体。
  3. 前記架橋剤がイソシアヌレート系化合物である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡体。
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