JP5670812B2 - ポリスチレン樹脂多層押出発泡板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主に建築物の壁、床、屋根等の断熱材として使用される断熱特性に優れたポリスチレン樹脂多層押出発泡板及びその製造方法に関する。
ポリスチレン樹脂押出発泡体は優れた断熱性及び機械的強度を有することから、板状に成形されたものが断熱材として従来から広く利用されてきている。また、このようなポリスチレン樹脂押出発泡体の製造方法としては、ポリスチレン樹脂に気泡調整剤を加え溶融混練し、物理発泡剤を添加した樹脂溶融物を高圧域から低圧域に押出し、更に必要に応じて押出機のダイ出口の賦形装置を通して発泡させて板状発泡体を製造する方法が挙げられる。
従来、このような板状の押出発泡体の製造方法に用いられる発泡剤としては、長期にわたって優れた断熱性を維持できることから、ポリスチレン樹脂に対して難透過性であるフロン類が広く利用されてきた。しかしながら、これらのフロン類からなる発泡剤はオゾン破壊係数や温暖化係数が高く、環境負荷が大きいことから、環境への負荷が少ない発泡剤への転換が進められている。例えば、プロパン、ブタンなどの脂肪族炭化水素或いはそれらの混合物を発泡剤として用いたポリスチレン樹脂押出発泡体及びその製造方法が種々提案されている。
これらの脂肪族炭化水素は、ポリスチレン樹脂に対する透過性がフロン類に比べ高いことから、発泡体から徐々に散逸してしまう。一方、空気は発泡剤として使用した脂肪族炭化水素に比べて、ポリスチレン樹脂に対する透過性が高く、発泡体の製造直後からポリスチレン樹脂発泡体の内部へ浸透していくことになる。また、空気の熱伝導率は脂肪族炭化水素の熱伝導率に比べて高いことから、空気が発泡体内部の気泡に浸透していくにつれて、得られた発泡体の熱伝導率は徐々に上昇してしまうことになる。従って、発泡剤として脂肪族炭化水素を使用した場合には、長期間にわたって優れた断熱性を維持させることは難しかった。
このような問題点を解決するために、発泡体を構成するポリスチレン樹脂にガスバリア性を示す樹脂を配合することにより、ガスバリア性を高めた発泡体を得る方法が提案されている。例えば、ポリスチレン樹脂とニトリル系樹脂とからなる熱可塑性樹脂に発泡剤を添加し、押出発泡した、断熱性が改良された発泡体が特許文献1に開示されている。また、スチレン系樹脂とビニルアルコール系樹脂とからなる熱可塑性樹脂に発泡剤と水又はアルコールを添加し、押出発泡した発泡体が特許文献2に開示されている。
また、他の方法としては、発泡体の外表面にガスバリア性を有するフィルムや被膜で被覆する方法が提案されている。例えば、ポリスチレン系樹脂発泡体の表面にガスバリア性樹脂フィルムを熱融着した発泡板が特許文献3に開示されている。また、ハロゲンを含まない発泡剤を使用し、ハロゲン系添加剤を含有しないスチレン系樹脂押出発泡体の表面に、例えばフェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、金属箔等のガスバリア性の非ハロゲン物質の皮膜を有する発泡体が特許文献4に開示されている。また、スチレン系樹脂発泡体の表面に短時間で常温硬化するエポキシ系樹脂を積層被覆した発泡体が特許文献5に開示されている。
特開2006−131719号公報 特開2006−131757号公報 特開昭58−162337号公報 特開2002−144497号公報 特開2006−198933号公報
しかしながら、発泡体を構成するポリスチレン樹脂にガスバリア性を示す樹脂を配合するだけでは、発泡体の長期断熱性を向上させるのには限界があった。また、発泡体表面にガスバリア性樹脂フィルムを熱融着させる場合には、融着時の加熱により発泡体表面や表面近傍の気泡が破壊され、気泡の連通化が起こってガスバリア性能が損なわれ、長期断熱性が得られない場合があった。一方、発泡体表面や表面近傍の気泡が破壊されない程度に融着時の加熱温度を下げた場合には、ガスバリア性樹脂フィルムと発泡体との接着強度が十分に得られないおそれがあり、発泡体から散逸する発泡剤の圧力に耐えることができず、フィルムや被膜が剥離して、ガスバリア性能や長期断熱性が損なわれるおそれがあった。また、接着剤によりフィルムを接着する方法や塗布により被膜を形成する場合には、接着工程や塗布工程が別途必要となることから、工程が複雑になり、接着工程や塗布工程において使用する有機溶剤が製品中に残存するおそれが高く、建築物の断熱材として使用した場合には、室内に有機溶剤が放散してしまうという問題があった。
本発明は、ポリスチレン樹脂に対するガス透過速度が速い物理発泡剤を使用した場合にも、熱伝導率が小さく、長期に亘り高い断熱性能を有するポリスチレン樹脂多層押出発泡板、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定のポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)を含有する複合樹脂からなる熱可塑性樹脂層が積層されたポリスチレン樹脂多層押出発泡板が、空気の流入、発泡剤ガスの散逸を抑制し、発泡板の熱伝導率の上昇が抑制され、長期間に亘って優れた断熱効果を示すことを見出した。
本発明は下記(1)〜(5)を要旨とする。
(1)ポリスチレン樹脂発泡層の少なくとも片面に、樹脂層が積層されてなるポリスチレン樹脂多層押出発泡板であって、
前記樹脂層を構成する樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)4〜60重量%とポリスチレン樹脂(B)96〜40重量%(但し、前記樹脂(A)と前記ポリスチレン樹脂(B)との合計は100重量%である)とからなり、
前記樹脂(A)が下記(a)及び(b)の条件を満足し、
前記樹脂層は、前記樹脂(A)が分散相、前記ポリスチレン樹脂(B)が連続相を形成していることを特徴とするポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
(a)測定温度200℃、せん断速度100sec−1での溶融粘度が1000〜5000Pa・s、
(b)JIS K7122(1987)における熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温した後、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から300℃まで昇温して得られるDSC曲線において、前記樹脂(A)の融解に伴う吸熱ピークの熱量が5J/g未満(0を含む)。
(2)前記樹脂層は、前記樹脂(A)が層状に分散した分散相を形成していることを特徴とする前記(1)に記載のポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
(3)前記樹脂(A)が環状エーテル骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むジオール成分と、ジカルボン酸成分とからなるポリエステル共重合体である前記(1)または(2)に記載のポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
(4)前記樹脂(A)が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸とからなるジカルボン酸成分と、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分とからなるポリアミドである前記(1)または(2)に記載のポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
(5)ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の、下記(a)及び(b)を満足する樹脂(A)と、ポリスチレン樹脂(B)とからなる複合樹脂に、揮発性化合物(D)を添加し溶融混練してなる、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)と、
ポリスチレン樹脂と発泡剤とを溶融混練してなる、発泡層を形成する樹脂溶融物(II)とを、ダイ内で積層合流させて共押出する、ポリスチレン樹脂発泡層の少なくとも片面に樹脂層が積層されてなるポリスチレン樹脂多層押出発泡板の製造方法。
(a)測定温度200℃、せん断速度100sec−1での溶融粘度が1000〜5000Pa・s、
(b)JIS K7122(1987)における熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温した後、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から300℃まで昇温して得られるDSC曲線において、前記樹脂(A)の融解に伴う吸熱ピークの熱量が5J/g未満(0を含む)。
本発明のポリスチレン樹脂多層押出発泡板は、ポリスチレン樹脂発泡層と、ポリスチレン樹脂(B)とポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)とからなる複合樹脂の樹脂層とから構成された多層押出発泡板である。前記発泡層に前記樹脂層が積層されることにより、発泡板の気泡内への空気の流入、発泡板からの発泡剤の散逸が抑制され、熱伝導率の上昇が抑制され、長期間に亘って優れた断熱性能が得られるので、本発明のポリスチレン樹脂多層押出発泡板は、主として建築用の断熱材として有用である。
本発明のポリスチレン樹脂多層押出発泡板の製造方法によれば、ポリスチレン樹脂に発泡剤を添加した発泡層を形成する樹脂溶融物(II)と、ポリスチレン樹脂(B)とポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)とからなる複合樹脂の樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)とを共押出する際に、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)に揮発性化合物(D)を添加することにより、発泡層を形成する樹脂溶融物(II)の押出発泡時の溶融物性に、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)の溶融物性を近づけることができ、安定して共押出することが可能となり、発泡層に樹脂層を良好に積層させることが可能となる。
本発明における多層発泡板の樹脂層断面における樹脂(A)の分散状態を示す電子顕微鏡写真を示す。樹脂(A)がポリスチレン樹脂(B)の連続相中に層状に分散している樹脂層断面の一例である。図1は実施例1の多層発泡板樹脂層断面の電子顕微鏡写真(倍率40,000倍)であり、樹脂(A)の延伸された極微細な相が多数存在していることを示す。図1において、1は樹脂(A)、2はポリスチレン樹脂(B)をそれぞれ表す。写真において白く微細な層状を為す部分が1で示す樹脂(A)の部分であり、その周りに黒色に見える部分が2で示すポリスチレン樹脂(B)の部分である。
本発明のポリスチレン樹脂多層押出発泡板(以下、「多層押出発泡板」または単に「発泡板」ともいう。)は、ポリスチレン樹脂発泡層の少なくとも片面に、樹脂層が積層されてなるポリスチレン樹脂多層押出発泡板であって、前記樹脂層を構成する樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)とポリスチレン樹脂(B)とからなる複合樹脂で構成される。さらに、本発明の多層押出発泡板における前記樹脂層を形成する複合樹脂は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)4〜60重量%とポリスチレン樹脂(B)40〜96重量%とからなる(但し、前記樹脂(A)と前記ポリスチレン樹脂(B)との合計は100重量%である)。
本発明の多層押出発泡板の前記樹脂層の複合樹脂は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)を含有することが特徴の一つである。
前記樹脂(A)の含有量が少なすぎる場合、すなわち、前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂の合計の含有量が少なすぎる場合には、樹脂層のガスバリア性が低下することから、発泡体の気泡内への空気の流入や発泡体からの発泡剤の逸散が起こり易くなり、長期に亘って優れた断熱性能が得られなくなる。
従って、発泡体の気泡内への空気の流入や発泡体からの発泡剤の逸散を防止する、ガスバリア性の観点からは、該複合樹脂中の樹脂(A)の合計の含有量の下限は、8重量%であることが好ましく、10重量%であることがより好ましく、15重量%であることがさらに好ましい。一方、樹脂層と発泡層の接着性の観点からは、該複合樹脂中の樹脂(A)の含有量の上限は、55重量%であることが好ましく、50重量%であることがより好ましい。
前記樹脂(A)及び樹脂(B)が、上記範囲内であれば、図1に示すような、ポリスチレン樹脂(B)が連続相をなし、前記ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)が分散相を形成した樹脂層を得ることが可能となり、優れた長期断熱性を有する多層押出発泡板が得られる。
前記樹脂(A)を構成するポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂について説明する。
(i)ポリエステル樹脂
前記ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合させる方法や、ポリエステル単独重合体及び/又はポリエステル共重合体のエステル交換反応等により製造されるポリエステル共重合体等が挙げられる。
なお、前記ポリエステル樹脂は、ジオール成分単位(ジオールに由来する成分単位)とジカルボン酸成分単位(ジカルボン酸に由来する成分単位)とからなるものである。
本発明で用いるポリエステル樹脂のジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸或いはそのエステル形成性誘導体が挙げられる。エステル形成性誘導体としては、例えば、炭素数1〜4のアルキルエステルなどのエステル誘導体、ジアンモニウム塩などの塩、ジクロリドなどの酸ハロゲン化物などを挙げることができる。ポリエステル樹脂中のジカルボン酸成分単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、 2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、 4,4’−ジフェニルジカルボン酸、 3,4’−ジフェニルジカルボン酸、 1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、 2,5−ナフタレンジカルボン酸、 2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸若しくはその酸無水物等の誘導体、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸若しくはその誘導体、又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、 1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸およびその誘導体が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
上記ポリエステル樹脂は、主たるジカルボン酸成分単位として、芳香族ジカルボン酸若しくはその酸無水物またはその誘導体からなる酸成分単位、例えば、テレフタル酸成分単位、イソフタル酸成分単位、ナフタレンジカルボン酸成分単位、これらのジカルボン酸成分を1種類以上含むことが好ましい。
上記ポリエステル樹脂のジオール成分としては、脂肪族系ジオール、脂環式系ジオール若しくは芳香族系ジオール(二価のフェノールを含む)又はそのエステル形成性誘導体が挙げられる。例えば、前記ジオール成分単位としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、 1,4−ブタンジオール、若しくはネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール又はそのエステル形成性誘導体、1,4−シクロヘキサンジメタノール、 1,3−シクロヘキサンジメタノール、 若しくは1,6−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール又はそのエステル形成性誘導体、ビスフェノールA等の芳香族ジオール又はそのエステル形成性誘導体、又は3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン(以下、スピログリコールという)等の環状エーテル骨格を有するジオール又はそのエステル形成性誘導体を挙げることができる。これらのジオール成分は、単独使用でもよく2種以上を混合して使用してもよい。
上記ポリエステル樹脂は、主たるジオール成分単位として、前記シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール成分単位、ネオペンチルグリコール成分単位、スピログリコールなどの環状エーテル骨格を有するジオール、これらのジオール成分単位を1種類以上含むことが好ましい。また、これらのジオール成分の合計量は全ジオール成分中10モル%以上、更には10〜80モル%であることが好ましい。
上記ポリエステル樹脂が、主たるジオール成分単位としてスピログリコールなどの環状エーテル骨格を有するジオール成分単位、前記シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオールから誘導されるジオール成分単位を含有する場合には、前記樹脂層の耐熱性を向上させることができることから好ましく使用される。
上記ポリエステル樹脂のジオール成分単位として、前記スピログリコールなどの環状エーテル骨格を有するジオール成分単位を含有する場合には、全ジオール成分中に10〜80モル%含有することが好ましく、更には20〜60モル%含有することが好ましく、特に25〜50モル%含有することが好ましい。なお、他のジオール成分としては、前記環状エーテル骨格を有するジオール成分以外のジオール成分を、好ましくは90〜20モル%、さらに好ましくは80〜40モル%、特に好ましくは75〜50モル%含有させることができる。
一方、上記ポリエステル樹脂のジオール成分単位として、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール成分単位を含有する場合には、全ジオール成分中に25〜60モル%含有することが好ましい。
また、上記ポリエステル樹脂のジオール成分単位として、ネオペンチルグリコール成分単位を含有する場合には、ガスバリア性の高い樹脂が得られるという観点から、ネオペンチルグリコール成分単位が全ジオール成分中に、10〜40モル%含有することが好ましく、さらには20〜40モル%含有することが好ましい。
上記ポリエステル樹脂は、例えば、少量の安息香酸,ベンゾイル安息香酸,メトキシポリエチレングリコール等の単官能化合物から誘導される成分単位によって分子末端が封止されていてもよい。また、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される成分単位を少量含んでいてもよい。
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、非晶性のポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂が非晶性である場合には、結晶化した樹脂が核となって、樹脂層に気泡が生成されることがなく、樹脂層のガスバリア性を良好に維持することができる。なお、ポリエステル樹脂の結晶性の程度は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸等のジカルボン酸を2種以上使用し、それらジカルボン酸成分単位のモル比を変える方法や、ジオール成分としてエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノール等のジオールを2種以上使用して、それらジオール成分単位のモル比を変える方法等により調整することができる。
(ii)ポリアミド樹脂
本発明に使用されるポリアミド樹脂は、ジアミン成分単位(ジアミンに由来する成分単位)とジカルボン酸成分単位(ジカルボン酸に由来する成分単位)からなるポリアミド樹脂である。
前記ジアミン成分単位としては、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分単位を有するポリアミド樹脂(C1)(以下、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分単位を有するポリアミド樹脂を、単にポリアミド樹脂(C1)ということがある。)を含有するものであることが好ましい。さらに、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分単位が、全ジアミン成分単位中の70モル%以上(100モル%も含む)であることが、樹脂層のガスバリア性の向上の観点から好ましく、更には80モル%以上であることがより好ましい。
他のジアミン成分単位としては、メタキシリレンジアミン以外のジアミン成分として、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン(構造異性体を含む。)、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン(構造異性体を含む。)等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン(構造異性体を含む。)等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができる。これらは全ジアミン成分単位中に30モル%以下の範囲で使用することが好ましく、更には、20モル%以下の範囲で使用することがより好ましい。
前記ジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸成分単位の70モル%以上(100モル%も含む)が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸とからなるジカルボン酸成分に由来することが好ましい。また、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸成分単位を構成し得る化合物としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、上記化合物を2種以上含有するものを用いることもできる。これらの中でもアジピン酸がより好ましい。
さらには、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸のモル比率は、前記多層押出発泡板のバリア性向上の観点からは、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸:イソフタル酸=50:50〜98:2であることが好ましく、75:25〜97:3であることがより好ましく、80:20〜96:4であることが更に好ましい。
ジカルボン酸成分単位にイソフタル酸に由来する成分単位が含まれると、複合樹脂を構成するポリスチレン樹脂(B)との混練性が向上することから、樹脂層にポリアミド樹脂が良好に分散して、前記多層押出発泡板のガスバリア性が向上する。また、ジカルボン酸成分単位が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸のみからなる場合に比べ、ポリアミド樹脂の融点が低下し、結晶化速度が遅くなる。従って、発泡層を形成するポリスチレン樹脂溶融物の押出発泡温度において、共押出法により樹脂層を形成する際には、ポリアミド樹脂の溶融粘度が高すぎたり、ポリアミド樹脂の結晶化が開始してしまったりすることによる押出成形性の悪化を防止することができ、良好な樹脂層が得られる。
炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸及びイソフタル酸以外のジカルボン酸成分単位を構成し得る化合物としては、上記以外の脂肪族又は芳香族カルボン酸、例えば、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸;安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物等が例示できる。これらは全ジカルボン酸成分単位の30モル%以下の範囲で使用することが好ましい。
前記ポリアミド樹脂には、上記の外に他のモノマー成分を配合することもできる。他のモノマー成分としては、重縮合により前記メタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分単位を有するポリアミドを得る際には、重縮合反応系に、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ω−エナントラクタムなどのラクタム類、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、9−アミノノナン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸などを、性能を損なわない範囲で加えることができる。
本発明に使用されるポリアミド樹脂としては、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分単位を有するポリアミド樹脂(C1)と、前記ポリアミド樹脂(C1)以外の、脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(C2)とを混合したポリアミド樹脂を使用することができる。
前記脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(C2)としては、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−66、ナイロン−46、ナイロン−610、ナイロン−612、ナイロン666等の脂肪族ポリアミドやナイロン−6I、ナイロン−6T、ナイロン−6IT等の非晶性ポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドを、例えば押出機などを用いて混合させたものを用いることが好ましい。
上記のメタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分単位を有するポリアミド樹脂(C1)と脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(C2)からなるポリアミド樹脂は、アロイを形成していることが好ましいことからは、前記ポリアミド樹脂(C1)と脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(C2)との配合比率は、前記ポリアミド樹脂(C1):脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(C2)=30〜98重量%:2〜70重量%(両者の合計は100重量%)であることが好ましい。また、前記ポリアミド樹脂(C1):脂肪族ポリアミドおよび/または非晶性ポリアミド(C2)=40〜98重量%:2〜60重量%であることがより好ましく、(C1):(C2)=50〜98重量%:2〜50重量%であることが更に好ましく、(C1):(C2)=60〜98重量%:2〜40重量%であることが特に好ましい。なお、脂肪族ポリアミドと非晶性ポリアミドの混合割合は、前記ポリアミド樹脂の溶融粘度とも関連するものであり、樹脂層を構成する樹脂(A)の溶融粘度の要件を満足する範囲内で、決定することができる。
前記ポリエステル樹脂及び前記ポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)は、本発明の多層押出発泡板の前記樹脂層の複合樹脂を構成する。前記樹脂(A)としては、前記ポリエステル樹脂、前記ポリアミド樹脂、又は前記ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂との混合物からなるものが挙げられ、上述の様に、前記樹脂層のガスバリア性と深く関連する。
本発明の前記樹脂(A)の、測定温度200℃、せん断速度100sec−1での溶融粘度は1000〜5000Pa・sである。前記溶融粘度が低すぎる場合には、ガスバリア性を有する樹脂層の形成が困難となり、目的とする高いガスバリア性を有する多層押出発泡板を得ることが難しくなるおそれがある。前記樹脂(A)の溶融粘度が樹脂層に使用されるポリスチレン樹脂(B)の溶融粘度と比較して高すぎる場合は、複合樹脂中でのポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂の分散性が低下する。ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂がポリスチレン樹脂(B)中に均一に微分散できない場合には、樹脂層においてガスバリア性が十分に発現されなくなり、高いガスバリア性を有する多層押出発泡体を得ることが困難になるおそれがある。
前記樹脂(A)の溶融粘度は、多層押出発泡板の樹脂層において分散層を層状に分散させるという観点からは、1500〜4500Pa・sであることが好ましく、2000〜4000Pa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
特に、前記溶融粘度は、樹脂層に使用されるポリスチレン樹脂(B)の溶融粘度と近いことが好ましい。前記樹脂(A)と、ポリスチレン樹脂(B)との溶融粘度が近い値であると、樹脂同士の相溶性が良好となることから、ポリスチレン樹脂(B)と前記樹脂(A)との界面が核となって樹脂層が発泡状態となることがなく、良好な樹脂層が得られ易くなる。
本明細書において溶融粘度の測定は、温度200℃、剪断速度100sec−1の条件下において測定するものとし、株式会社東洋精機製作所製の「キャピログラフ1D」によって測定することができる。
前記ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)は、JIS K7122(1987)における熱流束示差走査熱量測定に基づいて、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温した後、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から300℃まで昇温して得られるDSC曲線において、前記樹脂(A)の融解に伴う吸熱ピークの熱量が5J/g未満(0を含む)である。
該吸熱ピークの熱量が5J/g以上である場合には、前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂が結晶化することにより、結晶化した樹脂が核となって、樹脂層が発泡してしまい、非発泡状態の樹脂層が得られ難くなり、樹脂層に気泡が生成するおそれがある。
なお、前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂の結晶化の程度については、上述した、各樹脂を構成する成分単位の種類や配合量を変えることにより調整することができる。
本発明の多層押出発泡板における樹脂層を形成するポリスチレン樹脂(B)は、従来のポリスチレン樹脂発泡体に使用されるポリスチレン樹脂を使用することができる。該ポリスチレン樹脂(B)としては、スチレン単独重合体やスチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレンアクリレート共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、上記スチレン系共重合体におけるスチレン成分含有量は50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
前記ポリスチレン樹脂の中でも、スチレン単独重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体が好ましく、なかでも、スチレン単独重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体が好適である。
上記ポリスチレン樹脂(B)は、前記樹脂(A)との混練性や、発泡層と樹脂層との接着性に優れ、発泡層と樹脂層とが剥離し難くなり、より均一な表面を形成できるという観点からは、測定温度200℃、せん断速度100sec−1における溶融粘度が500〜5000Pa・sであることが好ましく、さらに600〜4000Pa・sであることがより好ましい。さらに、樹脂層におけるポリスチレン樹脂(B)が連続相を形成しやすくなるという観点からは、測定温度200℃、せん断速度100sec−1における溶融粘度が、630〜3500Pa・sであることがより好ましい。
一方、本発明の多層押出発泡板の前記発泡層を構成するポリスチレン樹脂は、前記樹脂層を形成するポリスチレン樹脂(B)として例示したものを使用することができる。多層押出発泡体製造時の押出発泡成形性に優れるという観点からは、測定温度200℃、せん断速度100sec−1における溶融粘度が500〜10000Pa・sであることが好ましく、700〜8000Pa・sであることがより好ましく、1000〜6000Pa・sであることがさらに好ましい。
前記複合樹脂には、 本発明では、本発明の目的を阻害しない範囲内で、ポリオレフィン樹脂やスチレン系エラストマーやポリフェニレンエーテル樹脂のような他の(共)重合体を更に混合して使用することもできる。そのような他の(共)重合体の使用量は、複合樹脂100重量部に対して、30重量部を上限とすることが好ましく、0〜20重量部であることが更に好ましく、0〜10重量部であることが特に好ましい。
本発明の多層押出発泡板の樹脂層は、多層押出発泡体の樹脂層が、ポリスチレン樹脂(B)と、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂の少なくとも1種である樹脂(A)との複合樹脂からなる。また、該樹脂層は、ポリスチレン樹脂(B)が連続相をなし、該樹脂(A)が分散相をなした構造を形成している。ポリスチレン樹脂(B)の連続相中に、前記樹脂(A)の分散相が分散した構造を形成していることにより、発泡体中の発泡剤の散逸や発泡体への空気の流入を効果的に防止することが可能となり、優れた長期断熱性を得ることができる観点から好ましい。さらに、前記樹脂(A)の分散状態がポリスチレン樹脂(B)中に層状に分散していることが、より一層優れた長期断熱性を得ることができる観点から好ましい。
なお、本発明において「層状」とは、樹脂層断面において、図1に示すように、ポリスチレン樹脂(B)中に分散している樹脂(A)の大部分が、微細に、かつ樹脂層の厚み方向(以下、「厚み方向」ということがある)に対し直交する方向(以下、「樹脂層に沿った方向」という。)に延伸された状態で重なり合うように存在している状態のことをいう。
前記樹脂層中の、樹脂(A)の相の数が多いほど発泡板の熱伝導率を低下させる効果が大きく、かかる観点から、具体的には、樹脂(A)の相の数の平均が樹脂層全体の厚み方向に対して3以上であることが好ましく、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは7以上であり、特に好ましくは10以上であり、最も好ましくは20以上である。なお、樹脂(A)の相が多数に存在し、樹脂(A)の相の数を正確に数えることができない場合にも、20以上存在すると認識することが妥当と判断される場合は相の数が20以上とする。
ここで、樹脂層の厚み方向における、樹脂(A)の相の数を増やすには、連続相と分散相との構造が逆転しない範囲で、単に樹脂(A)の配合量を増やすことによっても為し得る。
さらに、分散相を構成する樹脂(A)の相の、厚み方向の長さ(a)に対する、樹脂層に沿った方向の長さ(b)の比(b/a)、すなわちアスペクト比は大きいほど発泡板の熱伝導率を低下させる効果が大きく、具体的には、上記のアスペクト比の平均は2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、さらに5以上であることが特に好ましい。アスペクト比は大きいほど熱伝導率低減効果が高くなり、かかる観点からはアスペクト比の上限はないが、樹脂層の延伸によって達成し得る分散相のアスペクト比の上限は概ね100程度である。
さらに、効果的に多層発泡板の熱伝導率を低減させるためには、分散相を構成する樹脂(A)の厚み方向の厚みは0.01μm以上0.3μm以下であることが好ましい。前記範囲内であれば、樹脂層におけるガスバリア性の効果が良好である。
さらに、多層発泡板の樹脂層断面において、樹脂(A)が、発泡板の樹脂層断面に存在する樹脂(A)成分の大部分を占めることが好ましく、具体的には、層状を呈してかつある範囲で微細に分散している樹脂(A)の個数基準の存在率が90%以上であることにより、多層発泡板の熱伝導率を低下させる効果がさらに大きくなると考えられる。
本発明における発泡板の樹脂層断面の連続相と分散相の構造は、以下のような染色処理を施し、透過型電子顕微鏡を用いて観察することができる。
まず、適当な大きさに切り出した多層押出発泡板をエポキシ樹脂中に入れ包埋する。包埋後、ガラスナイフ等で厚み方向に垂直な面を切り出し、ダイヤモンドナイフ等で断面から厚さ約0.1μmの樹脂層の超薄型切片を切り出す。切り出した切片(サンプル)をCuメッシュに載せた状態で2%OsO水溶液数mlと共にシャーレ内に入れ室温で密封し、OsO蒸気に暴露させ、染色を30分間行う。次にサンプルをNaClO水溶液数mlと小スパチュラ1杯分のRuCl結晶を使用直前に混合した液とともにシャーレ内に入れ室温で密封し、発生するRuO蒸気に暴露させて30分間染色する。染色された樹脂層の超薄型切片を透過型電子顕微鏡を用いて撮影する。撮影した電子顕微鏡写真において樹脂(A)の部分が白く、ポリスチレン樹脂(B)の部分が黒く観察される。なお、透過型電子顕微鏡としては、例えば日本電子株式会社製透過電子顕微鏡「JEM−1010」などを使用することができる。
上記のように、ポリスチレン樹脂(B)と、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)とからなる複合樹脂の樹脂層により、多層発泡板の熱伝導率を効果的に低下させることができる。ポリスチレン樹脂(B)の連続相中に樹脂(A)を層状に分散させるためには、押出発泡中に延伸される樹脂層に沿って樹脂(A)が配向する必要があるが、ポリスチレン樹脂(B)と樹脂(A)との相溶性、体積比、粘度バランス等を調整して両者を混合する必要がある。
例えば、ポリスチレン樹脂(B)と前記樹脂(A)との相溶性を改善し、前記樹脂(A)をポリスチレン樹脂(B)の連続相中に均一に層状に分散させるための方法として、両者の相溶化剤的に作用する、揮発性の可塑剤を添加する方法が挙げられる。
また、樹脂(A)をより層状に分散させるためには、樹脂(A)の溶融粘度はポリスチレン樹脂(B)の溶融粘度に近いほど好ましく、さらに、ポリスチレン樹脂(B)と樹脂(A)との体積比(重量比)は近いほど好ましい。
本発明の多層押出発泡板の発泡層の見かけ密度は、発泡板としての機械的強度を十分に有し、充分な断熱性を発揮し、また軽量性を有する多層押出発泡板が得られるという観点からは、好ましくは20〜100kg/mであることが好ましく、20〜50kg/cmであることがより好ましい。
本発明の多層押出発泡板は、その使用目的から厚みが10〜150mmであることが好ましい。上記範囲内であれば、断熱材として使用する場合に要求される、十分な断熱性を有する。なお、厚みは15〜120mmであることがより好ましい。
本発明の多層押出発泡板の樹脂層の厚みは、十分なガスバリア性を有する共に、断熱性に優れた断熱材となるという観点からは、10〜500μmであることが好ましい。上記観点から、樹脂層の厚みは、20〜400μmであることがより好ましく、50〜250μmであることが更に好ましく、70〜200μmであることがよりさらに好ましい。
本発明の多層押出発泡板の発泡層の厚み方向平均気泡径は、好ましくは0.05〜2mmであり、より好ましくは0.06〜1mmであり、さらに好ましくは0.06〜0.3mmである。平均気泡径が上記範囲内にあることにより気泡膜の厚みが調整され、赤外線透過を抑制することができることから、一層高い断熱性を有する発泡板を得ることができるなどの利点がある。
更に本発明の多層押出発泡板においては、発泡層の平均気泡変形率が0.7〜2.0であることが好ましい。気泡変形率とは、厚み方向の平均気泡径(D:mm)を発泡板の水平方向の平均気泡径(D:mm)で除すことにより算出される値(D/D)であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が小さすぎる場合は、気泡が扁平なので圧縮強度が低下するおそれがあり、扁平な気泡は球形に戻ろうとする傾向が強いので、多層押出発泡体の寸法安定性が低下するおそれがある。気泡変形率が大きすぎる場合は、厚み方向における気泡数が少なくなるので、気泡形状による断熱性向上効果が小さくなるおそれがある。そのような観点から、上記気泡変形率は、0.8〜1.5であることがより好ましく、0.8〜1.2であることがさらに好ましい。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ更に高い断熱性を有する多層押出発泡板となる。
多層押出発泡板の発泡層の独立気泡率は85%以上であることが好ましい。さらに前記独立気泡率は、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。前記独立気泡率が高い程、高い断熱性能を維持することができる。なお、独立気泡率(%)は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定することができる。
本発明の多層押出発泡板においては、発泡層の外側の両面に樹脂層を有する場合には、多層押出発泡板中の炭素原子数3〜5の炭化水素の残存量は、多層発泡板製造後100日経過時において発泡板1kg当たり0.6〜5.2重量%であることが好ましく、2.3〜5.2重量%であることがより好ましく、3.1〜5.2重量%であることが更に好ましい。上記範囲内であれば、難燃性を阻害しない範疇で優れた断熱性を得ることができる。本明細書における発泡板中の前記炭化水素の残存量は、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定される値である。なお、本発明のポリスチレン樹脂多層押出発泡板によれば、ポリスチレン樹脂(B)と、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)との複合樹脂からなる樹脂層がポリスチレン樹脂発泡層に積層されているので、前記樹脂層によって効果的に発泡剤として使用された炭素原子数3〜5の炭化水素の散逸が防止される。
本発明により得られる多層押出発泡板は、JIS A9511(2006年)4.2で規定される熱伝導率の規格を満足することが望ましい。発泡板の長期断熱性を考慮すると、物理発泡剤として、多層発泡板中に残存し易い物理発泡剤を全物理発泡剤100モル%に対して10モル%以上(100モル%も含む)、更に好ましくは20モル%以上(100モル%も含む)含有されていることが好ましい。多層発泡板中に残存し易い物理発泡剤として、ポリスチレン樹脂に対してガス透過速度が比較的遅い、炭素原子数3〜5の炭化水素系物理発泡剤が好適に使用できる。
本発明の多層押出発泡板は、発泡層に、ポリスチレン樹脂(B)と、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)とからなる複合樹脂の樹脂層が積層された多層押出発泡体であり、該樹脂層により、発泡体気泡内への空気の流入、発泡体からの発泡剤ガスの逸散が抑制され、熱伝導率の上昇が抑制されて、長期間に亘って優れた断熱性能を示すことが可能となる。本発明の多層押出発泡板は、発泡体中にガス透過性の遅い炭素原子数3〜5の炭化水素系有機物理発泡剤が比較的多量残存しうることから、JIS A9511で規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種或いは3種の高度の断熱性を発現することができる。
上記、長期断熱性の観点から、発泡層の外側の両面に樹脂層を有する場合には、製造100日経過後の熱伝導率は、0.0280(W/m・K)以下であることが好ましく、更には、0.0270(W/m・K)以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、多層押出発泡板は長期間に亘って優れた断熱性能を保持することができる。
本発明の多層押出発泡板は、製造100日後の多層発泡板の気泡内の空気分圧が0.5atm以下であることが好ましい。特に、本発明の多層押出発泡板が、発泡層の外側の両面に樹脂層を有する場合には、該樹脂層によって大気からの空気の流入が効果的に防止され、上記範囲を満足する多層発泡板が得られる。従来の発泡板では、多層発泡板製造後長期間経過した場合には、大気成分のガス透過速度が速いため、発泡体気泡内への空気の流入は完了し、気泡内の空気の分圧は1atmとなる。一方、本発明の多層押出発泡板では、空気よりも熱伝導率の低い発泡剤の大気中への逸散と、発泡体の熱伝導率を上昇させる要因となる発泡体気泡内への空気の流入とを、前記樹脂層により遅延させることができるので、従来よりも長期間、低い熱伝導率を維持することができるものと推察される。上記観点から、発泡層の外側の両面に樹脂層を有する場合には、製造100日後の空気分圧は、0.3atm以下であることがより好ましく、0.25atm以下であることがさらに好ましい。
本発明の多層押出発泡板は、前記発泡層の少なくとも片面に前記樹脂層が積層された多層押出発泡体である。なお、効率的にガスバリア性を発揮させるという観点からは、前記樹脂層は、発泡層の上下両面の外側に積層されていることが好ましい。
次に、本発明のポリスチレン樹脂積層発泡板の製造方法について説明する。
本発明の多層押出発泡断熱板は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の、下記(a)及び(b)を満足する樹脂(A)と、ポリスチレン樹脂(B)とからなる複合樹脂に、揮発性化合物(D)を添加し溶融混練してなる、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)と、ポリスチレン樹脂と発泡剤とを溶融混練してなる、発泡層を形成する樹脂溶融物(II)とを、ダイ内で積層合流させて共押出することにより、ポリスチレン樹脂発泡層の少なくとも片面に樹脂層が積層されてなるポリスチレン樹脂多層発泡板が製造される。
(a)前記樹脂(A)の、測定温度200℃、せん断速度100sec−1での溶融粘度が1000〜5000Pa・s、
(b)JIS K7122(1987)における熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温した後、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から300℃まで昇温して得られるDSC曲線において、前記樹脂(A)の融解に伴う吸熱ピークの熱量が5J/g未満(0を含む)。
前記共押出法について以下に詳細に説明する。まず、ポリスチレン樹脂と必要に応じて添加される気泡調整剤などの添加剤とを発泡層形成用押出機に供給し、溶融混練した後、物理発泡剤を圧入し、さらに混練してポリスチレン樹脂発泡層を形成する樹脂溶融物(II)(以下、発泡層形成用樹脂溶融物(II)ということがある。)とする。一方、ポリスチレン樹脂(B)と、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)とからなる複合樹脂を樹脂層形成用押出機に供給し、加熱溶融し混練した後、揮発性化合物を添加し溶融混練して、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)(以下、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)ということがある。)とする。
上記、発泡層形成用樹脂溶融物(II)と樹脂層形成用樹脂溶融物(I)とを、ダイ内で前記樹脂層形成用樹脂溶融物(I)が外層となるように、前記発泡層形成用樹脂溶融物(II)と積層し共押出して多層押出発泡板を製造することにより、発泡層と樹脂層が強固に接着した良好な多層発泡板を、より容易に得ることが可能となる。
さらに、前記樹脂層を形成する複合樹脂は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)4〜60重量%とポリスチレン樹脂(B)40〜96重量%とからなる(但し、前記樹脂(A)と前記ポリスチレン樹脂(B)との合計は100重量%である)ことが好ましい。上記範囲内であれば、樹脂層と発泡層の接着が良好な多層発泡板をより容易に得ることができる。上記観点から、該複合樹脂中の樹脂(A)の合計の含有量は、8〜55重量%であることが好ましく、10〜50重量%であることがより好ましい。
尚、ダイ内で樹脂層形成用樹脂溶融物(I)と発泡層形成用樹脂溶融物(II)とを積層するものである。また、前記ダイ、押出機等は、従来から押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
本発明において、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)には揮発性化合物(D)が添加されている。該揮発性化合物(D)は、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)の溶融粘度を低下させる機能を有すると共に、樹脂層形成後に、該樹脂層から揮発して樹脂層中に存在しなくなるものが用いられる。揮発性化合物(D)を樹脂層形成用樹脂溶融物(I)中に添加することにより、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)と発泡層形成用樹脂溶融物(II)とを共押出しする際に、発泡層形成用樹脂溶融物(II)の発泡を阻害しない温度に、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)の押出温度を低下させ、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)の押出温度を発泡層形成用樹脂溶融物(II)の押出温度に近づけても良好な押出成形性を示すこととなる。
また、該揮発性化合物(D)は、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)と発泡層形成用樹脂溶融物(II)とが積層され、発泡層形成用樹脂溶融物(II)が発泡して伸長する際に、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)に伸長性を付与することができる。これにより、該発泡層の発泡時の伸びに対して、該樹脂層の伸びが追随することが可能となるので、樹脂層の伸び不足による亀裂等の発生が防止される。
また、樹脂層が伸長しやすくなることから、ポリスチレン樹脂(B)の連続相、該樹脂(A)の分散相構造が得られやすくなり、さらには、前記樹脂(A)の分散状態がポリスチレン樹脂(B)中に層状に分散しやすくなることから、良好な樹脂層を形成したポリスチレン樹脂多層発泡板が得られる。さらに、樹脂層形成用樹脂溶融物(I)の押出温度を低くすることができるので、押出発泡成形時に樹脂層の熱によって発泡層の気泡が破壊されることが防止できる。従って、樹脂層が発泡層に積層され、ガスバリア性に優れ、発泡倍率が高く、独立気泡率の高いポリスチレン樹脂多層発泡板が得られる。
前記揮発性化合物(D)は、樹脂層を形成する複合樹脂において、ポリスチレン樹脂(B)中へのポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)の分散性を良好にし、ポリスチレン樹脂(B)中に樹脂(A)を微分散し易くする機能も有する。揮発性化合物(D)は、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)中に存在している状態で、樹脂溶融物(I)の粘度を低下させる機能を有するとともに、押出された直後に揮散し樹脂層の性能に悪影響を与えないものが使用される。このような揮発性化合物(D)としては、炭素数2〜7の脂肪族炭化水素、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、または炭素数2〜8の脂肪族エーテル、アルキル鎖の炭素数が1〜5のカルボン酸アルキルエステル等が例示され、これらの1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
前記炭素数2〜7の脂肪族炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素としては、例えば、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等が挙げられる。炭素数1〜4の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、iso−プロピルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等が挙げられる。炭素数2〜8の脂肪族エーテルとしては、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、iso−プロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルアミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルアミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアイルエーテル等が挙げられる。また、アルキル鎖の炭素数が1〜5のカルボン酸アルキルエステルとしては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。
また、上記揮発性化合物(D)は、沸点が120℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。このような沸点を有することにより押出発泡成形後、揮発性化合物(D)が樹脂層中に多少残存していても樹脂層から自然に揮散される。揮発性化合物(D)の沸点の下限値は概ね−50℃程度である。
揮発性化合物(D)の添加量は、樹脂層を形成する複合樹脂1kg当たり、0.2〜2モルであることが好ましい。揮発性化合物(D)の添加量が概ね0.2モル以上であれば、樹脂層を構成する複合樹脂等の混練時のせん断による発熱を十分に抑制できるので、樹脂層が積層される発泡層を形成する樹脂溶融物(II)の樹脂温度の上昇が抑えられる(温度低下効果)。従って、発泡層を形成する樹脂溶融物(II)が発泡する際に、気泡が破泡する等の弊害が防止される。さらに、揮発性化合物(D)は、発泡層を形成する樹脂溶融物(II)が発泡する際における樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)が追随する伸長性を向上させ(伸長性改善効果)、樹脂層の厚みを均一に薄く形成する効果も有する。かかる観点から、揮発性化合物(D)の添加量は、樹脂層を形成する複合樹脂1kg当たり、0.3〜1.5モルであることが好ましく、0.4〜1.2モルであることが更に好ましい。
本発明の多層押出発泡板の製造に使用される発泡剤は、オゾン破壊係数がゼロか又は極めて低く、且つ温暖化係数の低い物理発泡剤を使用することが好ましい。また、物理発泡剤として、多層押出発泡板の長期断熱性を考慮すると、多層押出発泡板の発泡層中に残存し易い物理発泡剤を、全発泡剤中10モル%以上(100モル%も含む)、更に好ましくは20モル%以上(100モル%も含む)含有することが好ましい。多層押出発泡板の発泡層中に残存し易い物理発泡剤としては、ポリスチレン樹脂に対してガス透過性が比較的遅い炭化水素系発泡剤が好適に使用できる。
ポリスチレン樹脂に対してガス透過性が比較的遅い発泡剤の具体例としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素原子数3〜5の脂肪族炭化水素、;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素原子数3〜6の脂環式炭化水素が挙げられる。これらの中でも、ガス透過性が遅く発泡剤として好適な、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタンがより好ましく、イソブタンが特に好ましい。
発泡剤の添加量は発泡剤の種類、目的とする見かけ密度等に応じて調整される。発泡剤は発泡層を構成するポリスチレン樹脂1kg当たり、発泡剤の全量として概ね0.5〜3モル添加され、好ましくは0.6〜2.5モルが添加される。また、発泡体中に残存しやすく長期断熱性に優れた高発泡倍率の発泡体を得ることができるという観点からは、上記ガス透過性が比較的遅い発泡剤と、ガス透過性が比較的速い発泡剤とを併用することが望ましく、ガス透過性が比較的遅い発泡剤とガス透過性が比較的速い発泡剤との混合割合は、ガス透過性が比較的遅い発泡剤/ガス透過性が比較的速い発泡剤(モル比)=10/90〜90/10であることが好ましく、20/80〜80/20であることがより好ましい。
ポリスチレン樹脂に対してガス透過性が比較的速い発泡剤としては、例えば、塩化アルキル、アルコール類、エーテル類、ケトン類、蟻酸メチル、二酸化炭素、水等が挙げられ、発泡倍率向上効果などが期待できるものである。これらの発泡剤の中でも炭素原子数1〜3の塩化アルキル、炭素原子数1〜4の脂肪族アルコール、アルキル鎖の炭素原子数が1〜3のエーテル類、二酸化炭素、水等が物理発泡剤として好適なものである。炭素原子数1〜3の塩化アルキルとしては、例えば塩化メチル、塩化エチル等が挙げられる。炭素原子数1〜4の脂肪族アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等が挙げられる。アルキル鎖の炭素原子数が1〜3のエーテル類としては例えばジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチレンジメチルエーテル等が挙げられる。特に、発泡倍率向上効果などが期待でできるものとして、塩化メチル、ジメチルエーテル、メタノール、エタノール、二酸化炭素、水が挙げられる。これらの物理発泡剤は単独または2種以上を併用することもできる。
また本発明の多層押出発泡板は、主として建築物の断熱材として使用されることから、難燃剤が添加されることが望ましい。難燃剤は発泡層を形成するポリスチレン樹脂及び樹脂層を形成する複合樹脂に所要量を配合することができる。難燃剤の混合方法は、分散性の点からポリスチレン樹脂のマスターバッチとして添加することが好ましい。
多層押出発泡板中における難燃剤の含有量は、多層押出発泡板の難燃性を向上させるとともに、発泡性の低下および機械的物性の低下を抑制するうえで、発泡層を構成するポリスチレン樹脂及び/又は樹脂層を構成する複合樹脂100重量部当たり1〜10重量部添加することが好ましく、1.5〜7重量部添加することがより好ましく、2〜5重量部添加することが更に好ましい。
本発明に使用される難燃剤は、ポリスチレン樹脂の難燃化に使用される市販の難燃剤が使用でき、なかでも臭素系難燃剤が好ましく使用される。臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、デカブロモジフェニルオキサイド、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、N−2,3−ジブロモプロピル−4,5−ジブロモヘキサヒドロフタルイミド、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールエーテル誘導体などが挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。上記の臭素系難燃剤の中でも、その熱安定性が高く、高い難燃効果が得られることから、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが特に好ましい。
さらに、本発明おいては、多層押出発泡板の難燃性をさらに向上させることを目的として、難燃助剤を上記臭素系難燃剤と併用して使用することができる。難燃助剤としては、例えば2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテン等のジフェニルアルカンやジフェニルアルケン、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン等のポリアルキル化芳香族化合物、トリフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、すず酸亜鉛、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛などの無機化合物、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、次亜リン酸塩等のリン系化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。難燃助剤の添加量は、発泡層を構成するポリスチレン樹脂及び樹脂層を構成する複合樹脂100重量部に対し、0.05〜5重量部添加することが好ましく、0.1〜0.4重量部添加することがより好ましい。
本発明の多層押出発泡板の発泡層形成用樹脂溶融物(II)には、その他に通常、気泡調整剤を添加することができる。該気泡調整剤としては有機系、無機系いずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等との組合せたもの等が使用される。気泡調整剤の添加量は、該気泡調整剤の種類、目的とする気泡径等によって異なるが、発泡層を構成するポリスチレン樹脂100重量部に対し、概ね、0.01〜8重量部、更に0.01〜5重量部、特に0.05〜3重量部が好ましい。これらの気泡調整剤もポリスチレン樹脂のマスターバッチとして添加することが好ましい。
その他、前記発泡層及び樹脂層には、各種の添加剤を添加することができる。この種の添加剤としては、例えば、核剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、無機充填剤、顔料、染料等を添加することができる。添加量は、発泡層を構成するポリスチレン樹脂及び樹脂層を形成する複合樹脂に対して、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下がさらに好ましい。
本発明の多層押出発泡板の製造方法は、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の、前記(a)及び(b)を満足する樹脂(A)とポリスチレン樹脂(B)とからなる複合樹脂に、揮発性化合物を添加し溶融混練してなる、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)と、ポリスチレン樹脂に発泡剤を混練した発泡層形成用樹脂溶融物(II)とを、押出機出口に備えられたダイ内で、前記発泡層形成用樹脂溶融物(II)を内層側とし前記樹脂層形成用樹脂溶融物(I)を外層として合流し、前記発泡層形成用樹脂溶融物(II)の発泡温度まで冷却してダイリップから両樹脂溶融物を共押出し、成形装置内を通して板状に発泡成形することによりポリスチレン樹脂発泡層にポリスチレン樹脂(B)と樹脂(A)との複合樹脂からなる樹脂層を積層させて、多層押出発泡板を製造するものである。
本発明の多層押出発泡板を製造するに際して、発泡層形成用樹脂溶融物(II)と樹脂層形成用樹脂溶融物(I)の吐出量の比は、平滑で均一な表面を有する樹脂層(外層)が得られ、また軽量性の観点から、目的とする発泡層および樹脂層の厚みにより調整されるが、通常、重量比で発泡層:樹脂層=10〜300:1〜40であることが好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)実施例及び比較例で使用した原材料、物性を以下に示す。
本発明の実施例及び比較例に使用したポリスチレン樹脂を表1に示し、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂を表2に示す。
尚、ポリアミド樹脂として使用した、メタキシリレンジアミン成分単位含有ポリアミド樹脂(以下、MXDということがある)は、下記により調製した。
攪拌機、分縮器、冷却器、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応器(50L)に、アジピン酸14.2kg(97.1モル)、イソフタル酸1.0kg(6.2モル)を秤量して仕込み、窒素置換し、窒素気流下に160℃で溶融し、アジピン酸とイソフタル酸からなる均一スラリーとした。このスラリーにメタキシリレンジアミン14.0kg(102.6モル)を攪拌下に1時間を要して滴下した。この間反応器内温度を連続的に247℃まで上昇させた。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は分縮器及び冷却器を通して系外に排出した。メタキシリレンジアミン滴下終了後、反応器内温度を260℃まで昇温し、1時間反応を継続した。反応終了得られたポリマーを反応器下部のノズルからストランドとして取り出し、冷却後切断してペレット状のポリアミド(MXD)を得た。
上記ポリアミド(MXD)40重量%と、非晶性ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、非晶性ナイロン、商品名:NOVAMIDX21)40重量%と、ナイロン6(宇部興産(株)製、商品名:UBEナイロン 1015B)20重量%とを混合した後、滞留部を有する内径37mmの二軸押出機に供給し、シリンダー温度310℃、スクリュー回転数100回転、吐出量6kg/hrで溶融混練し、ストランド状に押出し冷却、固化した後、切断しペレット状のポリアミド樹脂(MXD1)を調製した。
気泡調整剤マスターバッチ:ポリスチレン樹脂をベースレジンとし、タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#12)60重量%を含有するタルクマスターバッチを用いた。
難燃剤マスターバッチ:ヘキサブロモシクロドデカン93重量%を含有する難燃剤マスターバッチを用いた。
(2)以下に測定、評価方法を記載する。
溶融粘度の測定は、温度200℃、剪断速度100sec−1の条件下において測定するものとし、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定した。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃にし、熱風循環式乾燥機によりガラス転移温度より10℃低い温度で十分に乾燥させた測定樹脂(A)を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから測定し、そこで得られた溶融粘度(Pa・s)を採用する。なお、測定の際にオリフィスから押出されるストランドには気泡ができるだけ混入しないようにした。
発泡成形性の評価は、下記評価基準により評価した。
○:発泡状態が良好であり、表面に波うちなどがない良好な多層押出発泡板が安定して得られる。
×:発泡状態が悪く、表面に波うちなどが発生した多層押出発泡板となり、良好な多層押出発泡板が得られない。
多層押出発泡板の発泡層の見かけ密度の測定は、JIS K 6767(1999年)に準拠して行なった。試料は、発泡板の幅方向中央部および幅方向両端部付近の計3箇所から樹脂層の存在しないカットサンプルを切り出して、各々のサンプルについて見かけ密度を測定し、3箇所の測定値の相加平均値を発泡層の見かけ密度とした。
多層押出発泡板の断面積は、発泡板の押出方向と直交する垂直断面(幅方向垂直断面)の断面積とした。
多層押出発泡板の厚みは、多層押出発泡板の幅方向垂直断面の幅方向の一方の端から他方の端までを6等分して両端を除く5箇所に測定点を定め、続いて、前記5箇所の測定点における多層押出発泡板の厚み(mm)、発泡層の厚み(mm)を、顕微鏡で撮影した写真に基づいて、それぞれ測定し、5箇所の測定値の相加平均値とした。
また、前記多層押出発泡板の厚みから前記発泡層の厚み(mm)を差し引くことによって得られる値をもって、樹脂層の厚み(mm)とした。
本明細書において多層押出発泡板の発泡層の独立気泡率(S)は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、空気比較式比重計(東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用し、下記式(1)により算出される。多層発泡板の発泡層(樹脂層の存在しない)の、中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して各々のカットサンプルを測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を採用した。なお、カットサンプルは多層押出発泡板から縦25mm×横25mm×厚み20mmの大きさに切断された、樹脂層を有しないサンプルとし、厚みが薄く厚み方向に20mmのサンプルが切り出せない場合には、例えば縦25mm×横25mm×厚み10mmの大きさに切断された試料(カットサンプル)を2枚重ねて測定した。
(数1)
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(VA−W/ρ) (1)
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm)(発泡層のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:発泡層を構成する樹脂の密度(g/cm
本明細書における平均気泡径の測定方法は次の通りである。
多層押出発泡板の厚み方向の平均気泡径(D:mm)及び発泡板の幅方向の平均気泡径(D:mm)は発泡板の幅方向垂直断面(発泡板の押出方向と直交する垂直断面)を、発泡板押出方向の平均気泡径(D:mm)は発泡板の押出方向垂直断面(発泡板の押出方向に平行に、幅方向の中央部で二等分する垂直断面)の顕微鏡拡大写真を得る。次いで、該拡大写真上において、測定しようとする方向に直線を引き、その直線と交差する気泡の数を計数し、直線の長さ(当然のことながら、この長さは拡大写真上の直線の長さではなく、写真の拡大率を考慮した直線の真の長さを指す。)を計数された気泡の数で割ることによって、各々の方向における平均気泡径を求めた。
なお、平均気泡変形率は、各々の方向における平均気泡径から、上記した方法により算出することができる。
平均気泡径の測定方法について詳述すると、厚み方向の平均気泡径(D:mm)の測定は幅方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、厚み方向に発泡板の全厚みに亘る直線を引き各々の直線の長さと該直線と交差する気泡の数から各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ/該直線と交差する気泡の数)を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(D:mm)とした。
幅方向の平均気泡径(D:mm)は幅方向垂直断面の、中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、発泡板を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を幅方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式(3mm/(該直線と交差する気泡の数−1))にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を幅方向の平均気泡径(D:mm)とした。
押出方向の平均気泡径(D:mm)は、発泡板の幅方向を二等分する位置で、発泡板を押出方向に切断して得られた押出方向垂直断面の、中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、発泡板を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を押出方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式(3mm/(該直線と交差する気泡の数−1))にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を押出方向の平均気泡径(D:mm)とした。また、発泡板の水平方向の平均気泡径(D:mm)は、DとDの相加平均値とした。
多層押出発泡板の熱伝導率(製造後100日経過後)は、製造直後の多層押出発泡板を(発泡層の両面に樹脂層を有する発泡板)を、23℃、湿度50%の雰囲気下に保存し、製造後100日後に該発泡板を用いて以下の方法で測定した。製造後100日後に、前記した保存方法により保存した発泡板から縦200mm×横200mm×厚み25mmの発泡板の樹脂層が存在しない試験片を切り出し、該試験片についてJIS A 1412−2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定した。なお、厚み25mmの試験片を切り出せない場合は複数枚(できるだけ少ない枚数)の厚みの薄い試験片を積層して厚み25mmの試験片とする。
本明細書における発泡板中の、炭素原子数3〜5の炭化水素の残存量(製造後100日経過後)は、製造直後の多層押出発泡板を(発泡層の両面に樹脂層を有する発泡板)を、23℃、湿度50%の雰囲気下に保存し、製造後100日後に該発泡板を用いて、ガスクロマトグラフを用いた内部標準法により測定した。具体的には、多層押出発泡板の発泡層から適量のサンプルを切り出し、このサンプルを適量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、充分に撹拌し発泡板中の発泡剤をトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行って発泡板中の、発泡板1kg当りの炭素原子数3〜5の炭化水素残存量(wt%)を測定した。
気泡内の空気分圧は、製造直後の多層押出発泡板を(発泡層の両面に樹脂層を有する発泡板)を、23℃、湿度50%の雰囲気下に保存し、製造後100日後に該発泡板を用いて以下の方法で測定した。製造後100日後に、前記した保存方法により保存した発泡板の中央部より、縦90mm×横25mm×厚み15mmのサンプル(樹脂層の存在しないサンプル)を抜き加工により採取した。次に、エタノールを満たした容器中にサンプルを入れ、容器内の空気を排出した。次に、空気が混入しないようにトルエンを容器内に入れ、サンプルをトルエンに溶解させ、気泡中の空気の体積を測定し、気泡内の空気分圧を測定した。
樹脂層中の樹脂(A)の分散状態は、前記の方法により透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製透過電子顕微鏡「JEM−1010」、加速電圧100kV)を用いて発泡板の樹脂層断面の倍率10,000倍の顕微鏡写真を撮影し、目視にて以下の基準により層状分散の評価を行った。
なお、層状態が微細で倍率10,000倍では判別出来難い場合、倍率40,000倍とした。
○:大部分の樹脂(A)が層状に分散している。
×:粒状に分散する樹脂(A)が多数観察される。
実施例1〜7、比較例1〜5
ポリスチレン樹脂発泡層形成用の押出機として、内径65mmの第1押出機と内径90mmの第2押出機が直列に連結されており、発泡剤注入口が第1押出機の終端付近に設けられている押出機を用いた。一方、樹脂層形成用の押出機として、内径65mmの第3押出機を用いた。さらに、共押出用の間隙1mm×幅115mmの幅方向断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイに、第2押出機と第3押出機のそれぞれの出口を連結させ、それぞれの樹脂溶融物をフラットダイ中で積層可能にした製造装置を用いた。
更にフラットダイの樹脂出口には、これと平行するように設置された上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板で構成された賦形装置(ガイダー)が付設されている。
表3〜4中に示す配合量となるように、ポリスチレン樹脂、難燃剤及び気泡調整剤を、前記第1押出機に供給し、220℃まで加熱し、これらを溶融、混練し、第1押出機の先端付近に設けられた発泡剤注入口から表中に示す配合組成の物理発泡剤を供給し、溶融混練して発泡層形成用樹脂溶融物(II)を調製した。
一方、ポリスチレン樹脂(B)と、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種からなる樹脂(A)との複合樹脂、難燃剤を表中に示す割合で第3押出機に供給して溶融混練し、さらに揮発性化合物(D)を供給し、溶融混練して樹脂層形成用樹脂溶融物(I)を調製した。前記樹脂層形成用樹脂溶融物(I)を外層とするように、前記発泡層形成用樹脂溶融物(II)と樹脂層形成用樹脂溶融物(I)とを表に示す吐出量でダイ内に合流させ、樹脂温度を表中に示す樹脂温度(この樹脂温度は押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡層形成用溶融物の温度である。)に調整した後、ダイリップからガイダー内に積層させて押出し、押出発泡板の厚み方向に28mmの間隙で平行に配置されたガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)し、多層押出発泡板を製造した。評価結果を表3〜4にまとめて示す。
[評価結果]
実施例1〜7は、本発明の樹脂層の複合樹脂を構成する樹脂、ポリスチレン樹脂(B)とポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)の配合比率を変えて実施した。その結果を表3に示す。
比較例1は樹脂層の複合樹脂として樹脂(A)を使用しなかった例であり、比較例2は、樹脂(A)の配合量が少ない場合である。比較例3、4は樹脂層を形成する複合樹脂として、本発明の構成を満足しない樹脂を使用した例である。その結果を表4に示す。
なお、表3、表4において、発泡剤の塩化メチルをMeCl、イソブタンをi−Bと記す。
1・・・・樹脂(A)
2・・・・ポリスチレン樹脂(B)

Claims (5)

  1. ポリスチレン樹脂発泡層の少なくとも片面に、樹脂層が積層されてなるポリスチレン樹脂多層押出発泡板であって、
    前記樹脂層を構成する樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂(A)4〜60重量%とポリスチレン樹脂(B)96〜40重量%(但し、前記樹脂(A)と前記ポリスチレン樹脂(B)との合計は100重量%である)とからなり、
    前記樹脂(A)が下記(a)及び(b)の条件を満足し、
    前記樹脂層は、前記樹脂(A)が分散相、前記ポリスチレン樹脂(B)が連続相を形成していることを特徴とするポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
    (a)測定温度200℃、せん断速度100sec−1での溶融粘度が1000〜5000Pa・s、
    (b)JIS K7122(1987)における熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温した後、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から300℃まで昇温して得られるDSC曲線において、前記樹脂(A)の融解に伴う吸熱ピークの熱量が5J/g未満(0を含む)。
  2. 前記樹脂層は、前記樹脂(A)が層状に分散した分散相を形成していることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
  3. 前記樹脂(A)が環状エーテル骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むジオール成分と、ジカルボン酸成分とからなるポリエステル共重合体である請求項1または2に記載のポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
  4. 前記樹脂(A)が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸とからなるジカルボン酸成分と、メタキシリレンジアミンに由来するジアミン成分とからなるポリアミドである請求項1または2に記載のポリスチレン樹脂多層押出発泡板。
  5. ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも1種の、下記(a)及び(b)を満足する樹脂(A)と、ポリスチレン樹脂(B)とからなる複合樹脂に、揮発性化合物(D)を添加し溶融混練してなる、樹脂層を形成する樹脂溶融物(I)と、
    ポリスチレン樹脂と発泡剤とを溶融混練してなる、発泡層を形成する樹脂溶融物(II)とを、ダイ内で積層合流させて共押出する、ポリスチレン樹脂発泡層の少なくとも片面に樹脂層が積層されてなるポリスチレン樹脂多層押出発泡板の製造方法。
    (a)測定温度200℃、せん断速度100sec−1での溶融粘度が1000〜5000Pa・s、
    (b)JIS K7122(1987)における熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温した後、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から300℃まで昇温して得られるDSC曲線において、前記樹脂(A)の融解に伴う吸熱ピークの熱量が5J/g未満(0を含む)。

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