以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
本例において、造形装置10は、積層造形法により立体物50を造形する装置(立体物造形装置)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて立体物50を造形する方法である。また、立体物50とは、例えば、三次元構造物のことである。
尚、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置10は、例えば、公知のインクジェットプリンタの構成の一部を変更した装置であってよい。例えば、造形装置10は、紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる二次元画像印刷用のインクジェットプリンタの一部を変更した装置であってよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、立体物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
本例において、造形装置10は、吐出ユニット12、主走査駆動部14、造形台16、副走査駆動部18、積層方向駆動部20及び制御部22を備える。吐出ユニット12は、立体物50の材料となる液滴(インク滴)を吐出する部分であり、所定の条件に応じて硬化するインクのインク滴を吐出し、硬化させることにより、立体物50を構成する各層を重ねて形成する。
また、本例では、インクとして、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。また、インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式で液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。また、吐出ユニット12は、紫外線光源により紫外線を照射することにより、紫外線硬化型インクの層を硬化させる。
また、立体物50の造形時において、吐出ユニット12は、立体物50の周囲にサポート層を形成してもよい。この場合、サポート層とは、例えば、造形中の立体物50の外周を囲むことで立体物50を支持する積層構造物であり、立体物50の造形完了後に、例えば水により溶解除去される。吐出ユニット12のより具体的な構成及び動作については、後に更に詳しく説明をする。
主走査駆動部14は、吐出ユニット12に主走査動作(Y走査)を行わせる駆動部である。この場合、吐出ユニット12に主走査動作を行わせるとは、例えば、吐出ユニット12が有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、主走査動作とは、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する動作である。また、本例において、主走査駆動部14は、第1方向走査駆動部の一例である。この場合、第1方向走査駆動部とは、例えば、インク滴を吐出しながら予め設定された第1の方向へ造形台16に対して相対的に移動する第1方向走査をインクジェットヘッドに行わせる駆動部のことである。
また、本例において、主走査駆動部14は、キャリッジ102及びガイドレール104を有する。キャリッジ102は、造形台16と対向させて吐出ユニット12を保持する保持部である。この場合、造形台16と対向させて吐出ユニット12を保持するとは、例えば、インク滴の吐出方向が造形台16へ向かう方向になるように、吐出ユニット12を保持することである。また、主走査動作時において、キャリッジ102は、吐出ユニット12を保持した状態で、ガイドレール104に沿って移動する。ガイドレール104は、キャリッジ102の移動をガイドするレール状部材であり、主走査動作時において、制御部22の指示に応じて、キャリッジ102を移動させる。
尚、主走査動作における吐出ユニット12の移動は、立体物50に対する相対的な移動であってよい。そのため、造形装置10の構成の変形例においては、例えば、吐出ユニット12の位置を固定して、例えば造形台16を移動させることにより、立体物50の側を移動させてもよい。
造形台16は、造形中の立体物50を支持する台状部材であり、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の立体物50を上面に載置する。本例において、造形台16は、少なくとも上面が上下方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、積層方向駆動部20に駆動されることにより、立体物50の造形の進行に合わせて、上面を移動させる。また、これにより、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドと造形台16との間の距離であるヘッド台間距離を適宜変化させ、造形途中の立体物50における被造形面と、吐出ユニット12との間の距離(ギャップ)を調整する。この場合、ヘッド台間距離とは、より具体的に、例えば、インクジェットヘッドにおいてノズルが形成されているノズル面と、造形台16の上面との間の距離であってよい。また、立体物50の被造形面とは、例えば、吐出ユニット12により次のインクの層が形成される面のことである。
副走査駆動部18は、吐出ユニット12に副走査動作(X走査)を行わせる駆動部である。この場合、吐出ユニット12に副走査動作を行わせるとは、例えば、吐出ユニット12が有するインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。また、副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ造形台16に対して相対的に移動する動作である。また、本例において、副走査駆動部18は、第2方向走査駆動部の一例である。この場合、第2方向走査駆動部とは、例えば、第1の方向と直交する第2の方向へ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる駆動部のことである。
また、より具体的に、副走査駆動部18は、例えば、副走査方向における吐出ユニット12の位置を固定して、造形台16を移動させることにより、インクジェットヘッドに副走査動作を行わせる。また、副走査駆動部18は、副走査方向における造形台16の位置を固定して、吐出ユニット12を移動させることにより、インクジェットヘッドに副走査動作を行わせてもよい。
積層方向駆動部20は、主走査方向及び副走査方向と直交する積層方向(図中のZ方向)へ吐出ユニット12又は造形台16の少なくとも一方を移動させる駆動部である。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において複数の層が積層される方向のことである。また、積層方向へ吐出ユニット12を移動させるとは、例えば、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。積層方向へ造形台16を移動させるとは、例えば、造形台16における少なくとも上面の位置を移動させることである。また、積層方向駆動部20は、積層方向へ吐出ユニット12又は造形台16の少なくとも一方を移動させることにより、Z方向への走査(Z走査)をインクジェットヘッドに行わせ、ヘッド台間距離を変化させる。
より具体的に、図中に示した構成において、積層方向駆動部20は、例えば、積層方向における吐出ユニット12の位置を固定して、造形台16を移動させる。また、積層方向駆動部20は、積層方向における造形台16の位置を固定して、吐出ユニット12を移動させてもよい。
制御部22は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、立体物50の造形の動作を制御する。制御部22は、例えば造形すべき立体物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、造形装置10の各部を制御することが好ましい。本例によれば、立体物50を適切に造形できる。尚、立体物50を造形するより具体的な動作については、後に更に詳しく説明をする。
続いて、吐出ユニット12のより具体的な構成及び動作について、説明をする。図1(b)は、吐出ユニット12のより詳細な構成の一例を示す。本例において、吐出ユニット12は、複数の有色インク用ヘッド202y、202m、202c、202k(以下、有色インク用ヘッド202y〜kと記載する)、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、サポート材用ヘッド210、複数の紫外線光源220、及び平坦化ローラユニット222を有する。
有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210は、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210は、例えば、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並んで配設される。
尚、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、これらのインクジェットヘッドは、造形台16と対向する面に、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を有する。これにより、各インクジェットヘッドのノズルは、造形台16へ向かう方向へインク滴を吐出する。また、複数のノズルが並ぶノズル方向は、主走査方向と直交する方向になる。また、インクジェットヘッドの構成の変形例においては、主走査方向とノズル列方向とが直交以外の角度で交差する構成を用いること等も考えられる。
また、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210の並び方については、図示した構成に限らず、様々に変更してもよい。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらして配設してもよい。また、吐出ユニット12は、例えば、各色の淡色や、R(赤)G(緑)B(青)やオレンジ等の色用のインクジェットヘッド等を更に有してもよい。
有色インク用ヘッド202y〜kは、互いに異なる色の有色のインクのインク滴をそれぞれ吐出するインクジェットヘッドである。本例において、有色インク用ヘッド202y〜kは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。
造形材用ヘッド204は、立体物50の内部の造形に用いるインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、造形材用ヘッド204は、所定の色の造形用インク(モデル材MO)のインク滴を吐出する。造形用インクは、例えば造形専用のインクであってよい。また、本例において、造形用インクは、CMYKインクの各色とは異なる色のインクである。造形用インクとしては、例えば、白色のインク又はクリアインク等を用いることも考えられる。
白インク用ヘッド206は、白色(W)のインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。また、クリアインク用ヘッド208は、クリアインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、クリアインクとは、透明色(T)であるクリア色のインクである。
サポート材用ヘッド210は、サポート層の材料を含むインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、サポート層の材料としては、立体物50の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を用いることが好ましい。また、この場合、造形後に除去されるものであるため、立体物50を構成する材料よりも紫外線による硬化度が弱く、分解しやすいい材料を用いることが好ましい。また、サポート層の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。
複数の紫外線光源220は、紫外線照射部の一例であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。紫外線光源220としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源220として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
また、本例において、複数の紫外線光源220のそれぞれは、間に有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210を挟むように、吐出ユニット12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。より具体的に、例えば、図中に符号UV1を付して示した一方の紫外線光源220は、吐出ユニット12の一端側に配設される。また、図中に符号UV2を付して示した一方の紫外線光源220は、吐出ユニット12の他端側に配設される。
平坦化ローラユニット222は、立体物50の造形中に形成される紫外線硬化型インクの層を平坦化するための構成である。本例において、平坦化ローラユニット222は、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210の並びと、他方側の紫外線光源220(UV2)との間に配設される。これにより、平坦化ローラユニット222は、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210の並びに対し、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
また、本例において、平坦化ローラユニット222は、平坦化ローラ302、ブレード304、及びインク回収部306を有する。平坦化ローラ302は、インクジェットヘッドにより形成されるインクの層を平坦化する平坦化手段の一例であり、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触することでインクの層を平坦化する。また、ブレード304は、平坦化ローラ302が掻き取ったインクを平坦化ローラ302から引き剥がすブレード部材である。インク回収部306は、ブレード304が平坦化ローラ302から引き剥がしたインクを回収する回収部である。
以上の構成により、吐出ユニット12は、制御部22の指示に応じて、立体物50を造形する動作を行う。また、造形の動作中に、平坦化ローラユニット222により、インクの層を平坦化する。インクの層を平坦化する動作や、平坦化ローラユニット222のより具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
続いて、本例において立体物50を造形するより具体的な動作や、インクの層を平坦化する動作等について、更に詳しく説明をする。先ず、立体物50を造形するより具体的な動作の例について、説明をする。
図2は、本例において立体物50を造形する動作の一例を示す。本例において、造形装置10は、例えば、立体物50の造形をマルチパス方式で行う。この場合、マルチパス方式で造形を行うとは、例えば、立体物50を構成するそれぞれのインクの層の形成をマルチパス方式で行うことである。また、それぞれのインクの層をマルチパス方式で形成するとは、例えば、一のインクの層を形成する動作において、造形中の立体物50の同じ位置に対して、インクジェットヘッドに複数回の主走査動作を行わせることである。また、同じ位置に対してインクジェットヘッドに複数回の主走査動作を行わせるとは、例えば、副走査動作を間に挟んで、インクジェットヘッドに複数回の主走査動作を行わせることである。
また、マルチパス方式でインクの層を形成する方法としては、より具体的に、例えば、2次元の画像を印刷する印刷装置(2Dプリンタ)においてマルチパス方式で印刷を行う場合と同一又は同様に行うことが考えられる。また、造形装置10で立体物を造形する場合、マルチパス方式でインクの層を形成する具体的な方法として、その他にも、様々な方法を用いることが考えられる。
ここでは、説明の便宜上、先ず、副走査動作における送り量を所定のパス幅に設定する方式(大ピッチパス方式)でマルチパス方式の動作を行う場合について、説明をする。この場合、副走査動作における送り量とは、1回の副走査動作におけるインクジェットヘッド(有色インク用ヘッド202y〜k等)の造形台16(図1参照)に対する相対移動量のことである。また、大ピッチパス方式以外のマルチパス方式の動作については、後に詳しく説明をする。
図2(a)は、立体物50を構成するインクの層を形成する動作の一例を示す。図2(a)においては、図示の便宜上、吐出ユニット12(図1参照)における複数のインクジェットヘッド(有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210)のうちのいずれかに対応するインクジェットヘッドをインクジェットヘッド200として示している。また、図示は省略したが、吐出ユニット12における他のインクジェットヘッドは、インクジェットヘッド200として示したインクジェットヘッドと共に造形台16に対して相対的に移動することにより、主走査動作及び副走査動作等を行う。
大ピッチパス方式でインクの層を形成する場合、一のインクの層を形成する動作において、インクの層の各位置に対し、主走査駆動部14(図1参照)は、予め設定された複数のパス数分の主走査動作をインクジェットヘッド200に行わせる。また、副走査駆動部18(図1参照)は、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、所定のパス幅分だけ、造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させる。また、この場合、パス幅は、例えば、副走査方向におけるノズル列の長さをパス数で除した幅に設定される。ノズル列の長さとは、例えば、副走査動作を行うインクジェットヘッド200におけるノズル列の長さである。
また、図2(a)においては、パス数を4として、大ピッチパス方式でインクの層を形成する場合について、インクジェットヘッド200の動作の例を示している。また、説明をより簡略化するため、主走査方向の一方の向き(図中の右側)への主走査動作のみを行い、かつ、1回の主走査動作を行う毎に副走査動作を行う場合について図示を行った。この場合、各回の主走査動作を行った後、少なくとも次回の主走査動作を行う前に、主走査方向において主走査動作時と反対の向きへインクジェットヘッド200を移動させて、インクジェットヘッド200を元の位置に復帰させる。
より具体的に、この場合、例えば、先ず、副走査方向における位置を符号Aを付したインクジェットヘッド200の位置にして主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402aで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、図中の領域404aに対し、1回目の主走査動作を行う。
また、その後、副走査動作を行い、副走査方向におけるインクジェットヘッド200の位置を符号Bを付したインクジェットヘッド200の位置に変更する。そして、この位置で主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402bで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、領域404aに対する2回目の主走査動作と、領域404bに対する1回目の主走査動作とを行う。
また、その後、副走査動作を行い、副走査方向におけるインクジェットヘッド200の位置を符号Cを付したインクジェットヘッド200の位置に変更する。そして、この位置で主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402cで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、領域404aに対する3回目の主走査動作と、領域404bに対する2回目の主走査動作と、領域404cに対する1回目の主走査動作とを行う。
また、その後、副走査動作を行い、副走査方向におけるインクジェットヘッド200の位置を符号Dを付したインクジェットヘッド200の位置に変更する。そして、この位置で主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402dで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、領域404aに対する4回目の主走査動作と、領域404bに対する3回目の主走査動作と、領域404cに対する2回目の主走査動作と、領域404dに対する1回目の主走査動作とを行う。
以上の動作により、領域404aに対する4回の主走査動作が完了し、予め設定された厚さのインクの層が形成される。また、その後の主走査動作及び副走査動作を同様に繰り返すことにより、他の領域においても、同じ厚さのインクの層が形成される。
このように構成すれば、例えば、マルチパス方式による立体物50の造形を適切に行うことができる。また、この場合、例えば副走査方向における立体物50の幅がノズル列の長さよりも大きい場合等にも、シリアル方式でインクジェットヘッド200を駆動して、立体物を適切に造形することができる。
尚、この構成において、パス幅については、ノズル列の長さをパス数で除した幅と厳密に同一とする場合に限らず、ノズル列の長さをパス数で除した幅と実質的に等しい幅であってよい。この場合、実質的に等しい幅であるとは、例えば、動作の都合や各種の設計上の意図等により設定した調整分や、許容される誤差量等を除いて、パス幅と、ノズル列の長さをパス数で除した幅とが等しいことである。また、より具体的には、例えば、同じ位置への各回の主走査動作について、副走査方向におけるインク滴の着弾位置をノズルピッチ未満の範囲でずらす場合等において、このズレ量等を除いて両者を等しくする場合等が考えられる。
図2(b)は、同じ領域に対する各回の主走査動作で形成されるインクのトッドの並び方の一例を示す図であり、各回の主走査動作で副走査方向におけるインク滴の着弾位置をノズルピッチ未満の範囲でずらす場合について、インクのトッドの並び方の一例を示す。図中において、1パス記録と示した線は、1回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。また、2パス記録と示した線は、2回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。3パス記録と示した線は、3回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。4パス記録と示した線は、4回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。
このように構成すれば、例えば、副走査方向における造形の解像度について、一のノズル列中のノズルの間隔(ノズルピッチ)よりも高い解像度に設定することができる。また、これにより、高い解像度での造形を適切に行うことができる。
ここで、図1を用いて説明をしたように、本例において、造形装置10は、主走査動作及び副走査動作に加え、インクの層の積層方向(Z方向)への走査を行う。また、より具体的に、積層方向への走査として、立体物50の造形の進行に合わせて、積層方向駆動部20(図1参照)により、造形台16の上面の位置を変化させる。そこで、以下、本例において行う積層方向への走査について、更に詳しく説明をする。また、説明の便宜上、先ず、従来の構成の造形装置において行っていた積層方向への走査について説明をする。
図3は、従来の構成の造形装置において行っていた積層方向への走査について説明をする図である。図3(a)は、積層方向への走査の一例を示す。
図3(a)に示した場合においては、図2を用いて説明をした場合と同様に、主走査方向における一方の向きでのみ、主走査動作を行う。より具体的に、主走査方向におけるインクジェットヘッドの往復移動のうち、復路(Y復路)においてのみインク滴を吐出して、主走査動作を行う。また、往路(Y往路)においては、インク滴を吐出せずに、移動のみを行う。
また、従来の方法で積層方向への走査を行う場合にも、図1を用いて説明をした構成と同一又は同様の吐出ユニット12を用いることが考えられる。そして、この場合、図1を用いて説明をしたように、吐出ユニット12における平坦化ローラユニット222(図1参照)により、主走査動作時にインクの層を平坦化する。より具体的に、図3(a)に示した場合においては、各回の主走査動作(1パス記録〜4パス記録)の動作と同時に、平坦化ローラユニット222による平坦化を行う。
そして、一のインクの層を形成する動作において、各回の主走査動作時の造形台16の高さは、同じ高さに設定される。この場合、造形台16に高さとは、積層方向における、インクジェットヘッドに対して相対的な造形台16の位置のことである。そのため、この場合、インクジェットヘッドと造形台16との間の距離が同じ状態で、主走査動作及びインクの層の平坦化を行うことになる。
また、この場合、インク滴を吐出せずにインクジェットヘッドを移動させるタイミング(Y往路)では、インクジェットヘッドと造形台16との間の距離を大きく開けた状態(戻り時逃げの状態)で、インクジェットヘッドを移動させる。このように構成すれば、インクジェットヘッドと立体物との間の無用な接触等を適切に避けることができる。
また、この場合、より具体的に、例えば、パス数を4回として、4回の主走査動作で30μm分程度の厚さのインクの層を形成し、平坦化を行うこと等が考えられる。また、この場合、平坦化後の一のインクの層の厚さについては、25μm程度とすることが考えられる。また、戻り時逃げの距離は、例えば150μm程度にすることが考えられる。
また、この場合、1層のインクの層の形成が完了した後(例えば、図中に第1層記録と示した動作を行った後)には、平坦化後のインクの層の厚さ分だけ造形台16を下げ、インクジェットヘッドと造形台16との間の距離を大きくする。そして、その後、次のインクの層を形成する(例えば、図中に第2層記録と示した動作を行う)。このように構成すれば、例えば、複数のインクの層を重ねて形成する動作を適切に行うことができる。
また、主走査動作の向きについては、往路及び復路の双方向で行うことも考えられる。また、この場合、積層方向への走査等についても、主走査動作を行う向きに合わせて行うことが考えられる。
図3(b)は、積層方向への走査の他の例を示す図であり、双方向の主走査動作を行う場合の積層方向への走査の例を示す。この場合、双方向で主走査動作を行うことにより、例えば、往路又は復路の一方でのみ主走査動作を行う場合と比べ、造形の速度を適切に高速化することができる。
また、この場合、平坦化の動作については、主走査方向の往路又は復路の一方にのみ行うことが考えられる。例えば、図1を用いて説明をした吐出ユニット12の構成のように、主走査方向における一方側にのみ平坦化ローラユニットが設けられている場合、平坦化ローラユニットが後方側になる向きで主走査動作を行う場合にのみ、平坦化を行うことが好ましい。例えば、図3(b)に示した場合においては、主走査方向への往復のうち、復路の主走査動作時にのみ、主走査動作と平坦化とを行う。また、往路の主走査動作では、平坦化は行わず、主走査動作のみを行う。
そのため、この場合、復路の主走査動作時には、図3(a)を用いて説明をした場合の復路の主走査動作時と同一又は同様にして、インクジェットヘッドと造形台16との間の距離が同じ状態で、主走査動作及びインクの層の平坦化を行う。また、往路の主走査動作時には、図3(a)を用いて説明をした場合の往路と同様にインクジェットヘッドと造形台16との間の距離を大きく開けた状態(往路時逃げの状態)で、主走査動作を行う。このように構成すれば、例えば、往復の主走査動作を適切に行うことができる。
しかし、図3(a)、(b)を用いて説明をしたような従来の構成で主走査動作及び平坦化を行った場合、平坦化の動作により新たな問題が生じる場合がある。そこで、続いて、このような問題について、説明をする。
図4は、平坦化の動作により生じる問題について説明をする図である。図4(a)は、n+1番目のインクの層(第n+1層)の平坦化時の様子を簡略化して示す図である。この場合、第n+1層は、造形台16上に積層されるインクの層のうち、下からn+1(nは、1以上の整数)番目のインクの層であり、下からn番目のインクの層(第n層)の上にマルチパス方式で形成される。
ここで、マルチパス方式でインクの層を形成する場合、同じ位置に対して行う複数回の主走査動作のうち、後の回の主走査動作時には、それ以前の回の主走査動作でインクのドットが形成されている領域に対し、主走査動作及び平坦化を行うことになる。また、この場合、既に形成されているインクのドットは、通常、紫外線の照射等により、既に硬化している。また、図3を用いて説明をしたように、従来の構成で主走査動作及び平坦化を行う場合、第n+1層の形成時において、平坦化を行う主走査動作時の造形台16の高さは、同じ高さになっている、そのため、この場合、平坦化を行う平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302(図1参照)は、硬化したインクのドットで構成されるインク面に接触しやすくなる。
しかし、このような接触が生じると、例えば、主走査方向へ移動する平坦化ローラ302が跳ねたり、余計な振動等が生じるおそれがある。また、その結果、平坦化後のインクの表面に余分な凹凸等が生じ、平坦化の結果に影響が生じるおそれもある。より具体的には、例えば、この場合、精緻な積層が行われず、造形される立体物の表面にスジムラ等が発生する場合がある。また、その結果、形状の品質が低下するおそれがある。
また、様々なバラツキ要因により、更なる問題が生じる場合もある。図4(b)は、様々なバラツキの影響について説明をする図である。
インクジェット方式でインク滴を吐出する場合、原理上、インク滴の吐出位置や着弾位置等にある程度のバラツキが生じることは避け得ない。また、この場合、これらの位置のバラツキの影響により、隣接するインクのドットの重なり方に差が生じ、インクの層の厚さにバラツキが生じる場合がある。より具体的に、例えば、1層の厚さが25μm程度になるようにインクの層を形成する場合において、このような要因により、インクの層の厚さに5μm程度のバラツキが生じる場合がある。また、平坦化ローラ302の精度のバラツキ(周面の振れ)により、平坦化ローラ302が平坦化する高さについても、5μm程度のバラツキが生じる場合がある。また、その他にも、造形に用いる複数種類のインクの間で生じる平坦化ローラ302に対する濡れ性の差により、平坦化後の厚さ(高さ)に差が生じる場合もある。
そして、これらの様々な要因を考慮すると、平坦化後のインクのドットの高さについては、インクの層の厚さの20%程度のバラツキが生じる場合がある。この場合、平坦化後のインクのドットの高さとは、例えば、インクの層を構成する個別のインクのドットの実際の高さのことである。また、インクの層の厚さとは、例えば、一のインクの層の厚さとして予め設定された設計値のことである。
そして、このようなバラツキが生じると、平坦化の動作時において、例えば、平坦化ローラ302の下端の位置が硬化したインクのドットの頂点位置よりも下になり、硬化したインクのドットと接触する状態、すなわち、平坦化ローラ302で硬化したインク面を擦る状態が生じやすくなる。そして、このような接触が生じると、硬化したドットが削られ、余分なカス(例えば、削り節状のカス等)等が発生することになる。
しかし、平坦化を行う場合において、このようなカスが発生すると、平坦化の動作に支障が生じる場合がある。より具体的には、例えば、本例の平坦化ローラユニット222のような構成で平坦化を行う場合、このような余分なカスが発生すると、例えばブレード304(図1参照)上等にカスが溜まり、動作に支障が生じるおそれがある。
これに対し、本願の発明者は、鋭意研究により、このようなカスの発生等を適切に抑え得る構成を見出した。また、そのような具体的な構成として、本例の造形装置10の構成を考えた。そこで、以下、本例の造形装置10の動作について、更に詳しく説明をする。
図5は、本例の造形装置10において行う積層方向への走査について説明をする図である。尚、以下において説明をする点を除き、本例において行う積層方向への走査は、例えば図3等を用いて説明をした従来の構成での動作と同一又は同様である。
図5(a)は、積層方向への走査の一例を示す。また、図5(a)に示した例は、図3(a)を用いて説明をした場合と同様に、主走査方向における一方の向きでのみ、主走査動作を行う。より具体的に、この場合、主走査方向におけるインクジェットヘッドの往復移動のうち、復路においてのみインク滴を吐出して、主走査動作を行う。また、往路においては、インク滴を吐出せずに、移動のみを行う。また、各回の主走査動作(1パス記録〜4パス記録)の動作と同時に、平坦化ローラユニット222(図1参照)による平坦化を行う。
これにより、主走査動作において、主走査駆動部14は、主走査方向における少なくとも一方の向きへインクジェットヘッドを移動させる。また、一のインクの層を形成する動作において、造形中の立体物の同じ位置に対し、一方の向きへインクジェットヘッドを移動させる主走査動作を複数回行わせる。更に、平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302は、この一方の向きの主走査動作において、インクジェットヘッドと共に移動して、インクの層を平坦化する。また、一のインクの層が形成される毎に、積層方向駆動部20は、インクの層の厚さ分だけ、造形台16を下げる。これにより、積層方向駆動部20は、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドと造形台16との間の距離であるヘッド台間距離について、当該一のインクの層の形成開始前と比べて、インクの層の厚さ分だけ大きくする。
一方、主走査動作時の造形台16の高さの設定については、図3(a)を用いて説明をした場合と異ならせる。より具体的に、この場合、一のインクの層を形成する動作において、主走査動作時の造形台16の高さを同じにはせず、予め設定された回数の主走査動作を行う毎に造形台16を少し下げる動作(パス間段差方式の動作)を行う。また、これにより、一のインクの層を形成する動作の中で行う一方の向きの複数回の主走査動作のそれぞれにおいて、後で行う主走査動作時のヘッド台間距離を、先に行う主走査動作時のヘッド台間距離よりも大きくする。すなわち、本例においては、一のインクの層を形成するために複数回の主走査動作を行う間に、ヘッド台間距離について、段差をつけて、徐々に変化させる。
また、この場合、造形台16を少し下げる場合の移動量については、一のインクの層の厚さよりも小さくすることが好ましい。すなわち、一のインクの層を形成する動作の中で行う一方の向きの複数回の主走査動作に対して、副走査駆動部18は、ヘッド台間距離について、インクの層の厚さよりも小さな距離だけ互いに異ならせることが好ましい。より具体的に、図5(a)に示した場合において、副走査駆動部18は、1回の主走査動作が行われる毎に、次の回の主走査動作時のヘッド台間距離を2μmだけ大きく設定する。このように構成すれば、ヘッド台間距離の変化に適切に段差をつけて、徐々に変化させることができる。また、これにより、例えば、平坦化が可能な範囲内で、ヘッド台間距離をより適切に変化させることができる。
尚、本例の構成について、より一般化して考えた場合、例えば、平坦化を行う主走査動作について、少なくとも連続する主走査動作時における造形台16の位置を異ならせた構成と考えることもできる。また、本例において、インク滴を吐出せずにインクジェットヘッドを戻す動作時(図中にキャリッジ戻りと示したタイミング)では、図3(a)を用いて説明をした場合と同様に、インクジェットヘッドと造形台16との間の距離を大きく開けた状態(戻り時逃げの状態)で、インクジェットヘッドを移動させる。この場合、戻り時逃げの距離は、例えば150μm程度にすることが考えられる。また、一のインクの層の形成が完了した後には、一のインクの層の厚さ分(例えば25μm)だけ造形台16を下げ、次のインクの層を形成する動作に合わせてヘッド台間距離を調整する。また、この場合、一のインクの層の厚さ分だけ造形台16を下げるとは、例えば、図中に示すように、各層の形成時に行う最初の主走査動作(1パス記録)を行う場合の造形台16の高さについて、一のインクの層の厚さ分だけ変化させることである。
このように構成した場合、例えば、一のインクの層を形成するための主走査動作時のヘッド台間距離について、例えば主走査動作を行う毎に徐々に大きくすることができる。そのため、本例によれば、例えば、平坦化の動作において、先の主走査動作時に形成されたインクのドットが平坦化ローラ302と接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、余分なカスの発生等を防ぎ、より適切に平坦化を行うことができる。
尚、主走査動作を行う毎に変化させるヘッド台間距離の変化量は、2μmに限らず、必要な精度や装置の構成等に応じて適宜設定することが好ましい。この変化量については、例えば、1層のインクの厚さや、1層内で同時に層形成をするために使用するインクの種類等に応じて設定することが好ましい。また、平坦化ローラ302と硬化したインクのドットとの接触を防ぎ、かつ、適切に平坦化を行うためには、主走査動作を行う毎に変化させるヘッド台間距離の変化量について、例えば、0.5〜5μm程度とすることが好ましい。
また、ヘッド台間距離を広げる動作は、必ずしも各回の主走査動作を行う毎に行わなくてもよい。この場合、例えば、予め設定された主走査動作を行う毎にヘッド台間距離を広げることが考えられる。例えば、平坦化を行う複数回の主走査動作のうち、少なくとも一部の複数回の主走査動作について、後で行う主走査動作時のヘッド台間距離を先に行うヘッド台間距離よりも大きくすることが考えられる。また、より具体的には、例えば、図5(a)を用いて説明をした場合と同様に、パス数を4回とする場合、2回目の主走査動作(2パス記録)を行った後にのみ、ヘッド台間距離を変化させてもよい。この場合、1回目及び2回目の主走査動作時には、ヘッド台間距離を同じにする。また、3回目及び4回目の主走査動作時には、ヘッド台間距離を同じにする。また、この場合、ヘッド台間距離について、例えば5μm程度等にすることが好ましい。
また、本例の造形装置10においても、主走査動作の向きについて、主走査方向の一方の向きのみではなく、往路及び復路の双方向で行うことも考えられる。また、この場合、積層方向への走査等についても、主走査動作を行う向きに合わせて行うことが考えられる。
図5(b)は、積層方向への走査の他の例を示す図であり、双方向の主走査動作を行う場合の積層方向への走査の例を示す。尚、以下において説明をする点を除き、図5(b)に示した積層方向への走査は、図5(a)に示した積層方向への走査や、図3等を用いて説明をした従来の構成での動作と同一又は同様である。
また、この場合、主走査動作時の造形台16の高さの設定については、図3(b)を用いて説明をした場合と異ならせる。より具体的に、この場合、一のインクの層を形成する動作において、一方の向きへの複数回の主走査動作(例えば、図中の1パス記録、3パス記録に対応する主走査動作)について、造形台16の高さを同じにはせず、主走査動作を行う毎に造形台16を少し下げる動作を行う。この場合、一方の向きへの複数回の主走査動作とは、例えば、平坦化ローラユニット222の平坦化ローラ302により平坦化を行う主走査動作である。また、この場合も、他方の向きへの複数回の主走査動作(例えば、図中の2パス記録、4パス記録に対応する主走査動作)については、戻り時逃げの分だけ造形台16を下げた状態で、同じ高さで主走査動作を行ってよい。
このように構成した場合、例えば、主走査動作を双方向で行うことにより、立体物の造形をより高速に行うことができる。また、このように構成した場合も、一のインクの層を形成するための一方の向きの主走査動作時のヘッド台間距離について、例えば主走査動作を行う毎に徐々に大きくすることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、平坦化の動作において、先の主走査動作時に形成されたインクのドットが平坦化ローラ302と接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、インクの層を適切かつ十分に平坦化することができる。更には、この場合、他方の向きの主走査動作時には平坦化を行わず、ヘッド台間距離を同じ距離に設定することにより、例えば造形装置10の構成や制御を適切に簡略化することができる。
続いて、本例において一のインクの層を形成する動作について、更に詳しく説明をする。図6は、一のインクの層を形成する動作の一例を示す図であり、図5(a)を用いて説明をした複数回の主走査動作及び平坦化の動作等について、更に具体的に説明をする。
図6(a)〜(d)は、第n+1層を形成する動作に関し、同じ位置に対して行う1〜4回目の主走査動作(1パス記録〜4パス記録)時の様子を簡略化して示す。図6(a)は、1回目の主走査動作(1パス記録)時の様子の一例を示す。
1回目の主走査動作時においては、第n+1層を形成すべき高さに合わせて造形台16の高さが調整されている状態で、既に形成されている第n層の上に、インクのドットを形成する。また、形成したインクのドットを硬化させる前に、平坦化ローラ302により平坦化を行う。また、平坦化後、紫外線を照射し、インクのドットを硬化させる。
そして、その後、造形台16を2μm下げ、2回目の主走査動作(2パス記録)を行う。図6(b)は、2回目の主走査動作(2パス記録)時の様子の一例を示す。2回目の主走査動作時においては、既に形成されている第n層の上において、1回目の主走査動作で平坦化後に硬化させたインクのドットの近傍に、更にインクのドットを形成する。また、形成したインクのドットを硬化させる前に、平坦化ローラ302により平坦化を行う。また、平坦化後、紫外線を照射し、インクのドットを硬化させる。
そして、その後、造形台16を更に2μm下げ、3回目の主走査動作(3パス記録)を行う。図6(c)は、3回目の主走査動作(3パス記録)時の様子の一例を示す。3回目の主走査動作時においては、既に形成されている第n層の上において、1回目及び2回目の主走査動作で平坦化後に硬化させたインクのドットの近傍に、更にインクのドットを形成する。また、形成したインクのドットを硬化させる前に、平坦化ローラ302により平坦化を行う。また、平坦化後、紫外線を照射し、インクのドットを硬化させる。
そして、その後、造形台16を更に2μm下げ、4回目の主走査動作(4パス記録)を行う。図6(d)は、4回目の主走査動作(4パス記録)時の様子の一例を示す。4回目の主走査動作時においては、既に形成されている第n層の上において、1〜3回目の主走査動作で平坦化後に硬化させたインクのドットの近傍に、更にインクのドットを形成する。また、形成したインクのドットを硬化させる前に、平坦化ローラ302により平坦化を行う。また、平坦化後、紫外線を照射し、インクのドットを硬化させる。
以上のように構成すれば、図5に関連しても説明をしたように、例えば、平坦化の動作において、先の主走査動作時に形成されたインクのドットが平坦化ローラ302と接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、余分なカスの発生等を防ぎ、より適切に平坦化を行うことができる。
また、この場合、カスの発生等を防ぐことにより、平坦化ローラユニット222の各部等へのインクの付着を適切に防ぐことができる。より具体的に、例えば、本例のように、平坦化ローラ302が掻き上げたインクをブレード304により除去する構成の場合、平坦化ローラ302やブレード304等へのインクの付着をより適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、平坦化により回収した余剰なインクの流れをより良好にし、インクの処理を安定化させることができる。また、インクの回収経路における詰り等を適切に防ぐこともできる。
また、この場合、硬化したインクのドットと平坦化ローラ302との接触を防ぐことにより、例えば、平坦化ローラ302に余分な振動等が発生すること等も適切に防ぐこともできる。また、これにより、インクの層の表面に意図しない凹凸等が形成されること等を適切に防ぐこともできる。
このように、本例によれば、例えば平坦化を行う複数回の主走査動作について、主走査動作を行う毎にヘッド台間距離を大きくすることにより、平坦化を適切に行いつつ、マルチパス方式での造形を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い精度で立体物をより適切に造形することができる。
また、この場合、主走査動作毎にヘッド台間距離を少しずつ変化させることにより、例えば、造形される立体物の表面を滑らかにすることもできる。より具体的には、例えば、立体物の表面が緩斜面状の場合等においても、等高線状の目立つ段差等が発生することを防ぎ、表面を滑らかにした造形をより適切に行うことができる。
ここで、本例の構成によりインクの層を形成した場合、インクの層を構成するインクのドットについて、従来の方法で形成した場合と違った状態になると考えられる。そのため、この点についても、簡単に説明をする。
図7は、本例において形成されるインクのドットの状態について説明をする図である。尚、図7においては、各回の主走査動作で形成されるインクのドットについて、図6において1パス記録〜4パス記録を説明する図中で各回の主走査動作で形成されるインクのドットと同じ網掛け模様をつけて示している。
図7(a)は、従来の方法でインクの層を形成した場合のインクのドットの状態の一例を示す。従来の方法でインクの層を形成した場合とは、例えば、主走査動作を行う毎に造形台16を下げる動作等を行わずにインクの層を形成した場合のことである。
この場合、一のインクの層の形成時において、平坦化を行う主走査動作時の造形台16の高さは一定である。そのため、この場合、各回の主走査動作で形成されるインクのドットは、同じ高さで平坦化されることになる。また、その結果、硬化後のインクのドットの高さについて、いずれの主走査動作で形成されたかによる差は生じない。
図7(b)は、本例の構成でインクの層を形成した場合のインクのドットの状態の一例を示す。また、図7(b)においては、本例の構成でインクの層を形成した場合のドットの状態の一例として、図5(a)及び図6を用いて説明をした方法でインクの層を形成した場合のドットの状態の例を示している。
この場合、主走査動作を行う毎に造形台16を下げるため、平坦化を行う主走査動作時の造形台16の高さは、主走査動作毎に異なることになる。そのため、各回の主走査動作で形成されるインクのドットは、互いに異なる高さで平坦化されることになる。また、その結果、硬化後のインクのドットの高さについて、図示のように、いずれの主走査動作で形成されたかに応じて差が生じることになる。従って、本例の構成によりインクの層を形成した場合、インクのドットの状態について、従来の方法で形成した場合と違った状態になると考えられる。
尚、各回の主走査動作で形成されるインクのドットと、平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302との接触の仕方については、装置の具体的な構成により異なると考えられる。例えば、パス数が4パス程度の場合、装置の構成により、同じ位置に対して行う4回の主走査動作のうち、概ね後半の2回の主走査動作で形成されるインクのドットのみが平坦化ローラ302と接触する場合等が考えられる。また、同じ位置に対して行う複数回の主走査動作のうち、最後の主走査動作で形成されるインクのドットのみが平坦化ローラ302と接触する場合も考えられる。そのため、具体的なドットの形状については、装置の具体的な構成に応じて、図示した場合に限らず、様々に変化すると考えられる。
続いて、平坦化ローラユニット222の具体的な構成について、更に詳しく説明をする。図1を用いて上記において説明をしたように、本例において、平坦化ローラユニット222は、平坦化ローラ302、ブレード304、及びインク回収部306を有する。また、この場合、平坦化ローラ302は、例えば、硬化していないインクを掻き取るローラである、主走査動作時にインクの層の表面と接触することにより、硬化していないインクの一部を除去して、インクの層を平坦化する。これにより、平坦化ローラ302は、一のインクの層を形成する動作の中で、インクの表面を平坦化する。また、この場合、インクの層を平坦化するとは、例えば、一のインクの層の厚さとして予め設定された厚さを超えた部分のインクを除去することであってよい。
また、平坦化ローラユニット222のより具体的な構成においては、上記以外の構成を更に用いること等も考えられる。図8は、平坦化ローラユニット222のより具体的な構成の例を示す。図8(a)は、平坦化ローラユニット222の構成の一例を示す。
尚、図8(a)において、左側の図は、平坦化ローラユニット222の断面図である。また、右側の図は、平坦化ローラユニット222の斜視図である。また、図8(a)においては、硬化済みのn−1番目の層の上にn番目のインクの層を形成している場合について、未硬化のインクの層を平坦化している様子を簡略化して示す。
図8(a)に示した場合において、平坦化ローラユニット222は、平坦化ローラ302、ブレード304、インク回収部306に加えて、吸引部308を更に備える。吸引部308は、平坦化ローラ302により除去されたインクを吸引するための構成であり、例えばポンプ310により吸引されることにより、インク回収部306に回収されたインクを廃インクタンク312へ移動させる。この場合、ポンプ310は、廃インクタンク312から吸引した空気を、例えば空気解放する。また、これにより、廃インクタンク312及び吸引部308を介した空気の吸引(エアー吸引)を行い、空気と共に、インクを廃インクタンク312へ移動させる。また、ポンプ310及び廃インクタンク312は、吐出ユニット12(図1参照)の外部に配設されてよい。このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ302により除去されたインクが平坦化ローラユニット222内に溜まりすぎることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば長時間連続で造形を行う場合等にも、平坦化をより適切に行うことができる。
図8(b)は、平坦化ローラユニット222の構成の他の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図8(b)において、図8(a)と同じ符号を付した構成は、図8(a)における構成と同一又は同様である。また、図8(b)においても、図8(a)と同様に、断面図及び斜視図を示している。
図8(b)に示した場合において、平坦化ローラユニット222は、図8(a)に示した場合と比べ、更に多くの吸引部308を有する。また、図8(a)の構成に対して追加した吸引部308は、例えば、平坦化ローラ302により掻き上げられたインクがインク回収部306に到達する前に、例えばブレード304上において、インクを吸引する。このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ302により除去されたインクが平坦化ローラユニット222内に溜まりすぎることをより適切に防ぐことができる。
図8(c)は、平坦化ローラユニット222の構成の更なる他の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図8(c)において、図8(a)と同じ符号を付した構成は、図8(a)における構成と同一又は同様である。また、図8(c)においても、図8(a)と同様に、断面図及び斜視図を示している。
図8(c)に示した場合において、平坦化ローラユニット222は、図8(a)に示した場合と比べ、加圧空気吐出部314を更に有する。加圧空気吐出部314は、平坦化ローラ302により掻き上げられたインクに加圧空気を吹き付ける構成であり、平坦化ローラ302により掻き上げられたインクがインク回収部306に到達する前に、例えばブレード304上において、インクに空気を吹き付ける。また、この場合、例えば、ブレード304により平坦化ローラ302から引き剥がしたインクについて、インク回収部306へ移動するように空気を吹き付けることが考えられる。また、この場合、ポンプ310は、廃インクタンク312から吸引した空気を、加圧空気吐出部314へ送る。これにより、加圧空気吐出部314は、加圧した空気(加圧エアー)をインクに吹き付ける。また、廃インクタンク312及び吸引部308を介した空気の吸引(エアー吸引)を行い、空気と共に、インクを廃インクタンク312へ移動させる。・このように構成すれば、例えば、ブレード304上にインクが溜まることをより適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、平坦化ローラ302により除去されたインクが平坦化ローラユニット222内に溜まりすぎることをより適切に防ぐことができる。
続いて、造形装置10の構成や動作の変形例について、説明をする。上記においては、主に、一方の向きへの主走査動作時にのみ平坦化を行う構成について説明をした。例えば、図5(a)を用いて説明をした構成では、一方の向きの主走査動作のみを行い、その主走査動作中に平坦化を行う。
また、図5(b)を用いて説明をした構成では、双方向の主走査動作を行い、そのうち、一方の向きの主走査動作時にのみ平坦化を行う。より具体的に、この場合、造形装置10における主走査駆動部14(図1参照)は、吐出ユニット12(図1参照)におけるインクジェットヘッドに、主走査方向における一方の向きの主走査動作と、主走査方向における他方の向きの主走査動作とを行わせる。また、平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302(図1参照)は、一方及び他方の向きの主走査動作のうち、一方の向きの主走査動作中にのみ、インクの層を平坦化する。更に、この場合、積層方向駆動部20(図1参照)は、一のインクの層を形成する動作の中で行う一方の向きの主走査動作を行う毎にヘッド台間距離を徐々に大きくする。また、他方の向きの複数回の主走査動作のそれぞれにおいて、ヘッド台間距離を同じ距離に設定する。
しかし、造形装置10の構成及び動作の変形例においては、例えば、双方向の主走査動作を行い、かつ、一方の向きの主走査動作時のみではなく、他方の向きの主走査動作時にも平坦化を行ってもよい。図9は、造形装置10の構成及び動作の変形例について説明をする図である。図9(a)は、一方及び他方の向きの主走査動作時に平坦化を行う場合の動作の一例を示す。図9(b)は、この場合に用いる吐出ユニット12の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図9に示す動作は、図1〜8を用いて説明をした動作と同一又は同様である。
この場合、主走査動作時にインクジェットヘッドを移動させる向きによらず、主走査動作を行う毎に造形台16(図1参照)を下げ、ヘッド台間距離を徐々に大きくすることが考えられる。例えば、図示した場合においては、1層の厚さが25μmのインクの層を形成する場合において、主走査動作を行う毎に2μmだけ造形台16を下げる場合の例を示している。
また、この場合、例えば、図9(b)に示すような、主走査方向の一方側及び他方側に平坦化ローラユニット222を有する吐出ユニット12を用い、主走査動作時に後方側になる平坦化ローラユニット222の平坦化ローラ302(図1参照)により平坦化を行うことが考えられる。すなわち、この場合、主走査駆動部14(図1参照)は、インクジェットヘッドに、主走査方向における一方の向きの主走査動作と、主走査方向における他方の向きの主走査動作とを行わせる。また、この場合、造形装置10における吐出ユニット12は、平坦化手段として、一方の向きの主走査動作中にインクの層を平坦化する第1の平坦化ローラ302と、他方の向きの主走査動作中にインクの層を平坦化する第2の平坦化ローラ302とを有する。
より具体的に、この場合、吐出ユニット12は、図1(b)に示した吐出ユニット12と比べ、符号UV1を付した紫外線光源220と、インクジェットヘッドの並び(サポート材用ヘッド210等)との間にも、平坦化ローラユニット222を更に有する。また、この場合、2個の平坦化ローラユニット222のそれぞれにおける平坦化ローラ302は、反対方向へ回転する。例えば、2個の平坦化ローラユニット222のうち、図中の右側に配設されている平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302は、図中において時計回りになる方向へ回転する。また、図中の左側に配設されている平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302は、図中において反時計回りになる方向へ回転する。
また、この場合、図中の左側から右側へ吐出ユニット12を移動させる主走査動作時には、左側の平坦化ローラユニット222により、平坦化を行う。また、図中の右側から左側へ吐出ユニット12を移動させる主走査動作時には、右側の平坦化ローラユニット222により、平坦化を行う。そのため、この場合、吐出ユニット12は、更に、主走査動作の向きに応じて一方の平坦化ローラユニット222のみを有効にする機構を有することが好ましい。また、このような機構としては、例えば、Z方向へ移動可能に平坦化ローラユニット222を保持して、有効にする平坦化ローラユニット222のみを選択して下げる構成等が考えられる。
また、この場合、積層方向駆動部20(図1参照)は、一のインクの層を形成する動作の中で行う複数回の主走査動作のそれぞれにおいて、後で行う主走査動作時のヘッド台間距離を、先に行う主走査動作時のヘッド台間距離よりも大きくする。また、これにより、一方の向きの主走査動作についてのみではなく、他方の向きの主走査動作についても、主走査動作を行う毎にヘッド台間距離を徐々に大きくする。
このように構成した場合も、主走査動作を双方向で行うことにより、立体物の造形をより高速に行うことができる。また、この場合、主走査動作の向きに合わせて複数の平坦化ローラ302を用いることにより、いずれの向きの主走査動作においても、適切に平坦化を行うことができる。
更には、主走査動作を行う毎にヘッド台間距離を徐々に大きくすることにより、例えば、先の主走査動作時に形成されたインクのドットが平坦化ローラ302と接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、余分なカスの発生等を防ぎ、より適切に平坦化を行うことができる。
続いて、マルチパス方式の動作の変形例について、説明をする。上記においては、マルチパス方式の動作の例として、主に、副走査動作における送り量を所定のパス幅に設定する方式である大ピッチパス方式について、説明をした。しかし、マルチパス方式の動作としては、大ピッチパス方式以外の方式を用いることも考えられる。
図10及び図11は、マルチパス方式の動作を行う様々な方式について説明をする図であり、ノズル列の解像度が150dpiのインクジェットヘッド200を用いて、パス数を4として、600dpiの解像度(密度)でインクの層を形成する場合の動作の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10の構成及び動作は、図1〜9を用いて説明をした場合と同一又は同様である。例えば、以下に説明をする各動作においても、図1〜9を用いて説明をした場合と同様に、予め設定された回数の主走査動作を行う毎に、ヘッド台間距離を広げることが好ましい。この場合、例えば、平坦化を行う主走査動作を1回行う毎に、ヘッド台間距離を所定の距離だけ広げることが好ましい。
図10(a)は、造形に用いるインクジェットヘッド200の構成の一例を示す。図示した構成において、インクジェットヘッド200は、副走査方向と平行なノズル列方向に複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、複数のノズルは、1/150インチの一定の間隔(ノズルピッチP)で並ぶ。そのため、ノズル列の長さは、(総ノズル数−1)×1/150インチになる。
図10(b)は、大ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する動作の一例を示す図である。上記においても説明をしたように、大ピッチパス方式とは、例えば、パス数をnとした場合に、副走査動作での送り量について、ノズル列の長さLhの1/n(=Lh/n)にする方式である。また、図10(b)においては、パス数を4とした場合について図示をしている。そのため、この場合、副走査動作での送り量は、ノズル列の長さLhの1/4(=Lh/4)になる
また、この図において、インクジェットヘッド200のノズル列を4等分した各領域の横に記した丸囲みの数字は、ノズル列中の各領域を区別するための数字である。また、インクジェットヘッド200の右側に示した図は、主走査動作と副走査動作とを繰り返す動作の一例を示す図であり、1回目の主走査動作(第1Pass)からN回目の主走査動作(第NPass)について、造形中の立体物の各領域と、その領域に対してインク滴を吐出するノズル列中の領域との関係を示している。この場合、ノズル列中の領域とは、上記の丸囲みの数字で区別して示した領域である。また、図の上側に記載した説明は、各回の主走査動作時やその前後に行う動作を示している。また、図の右側には、完了列長として、主走査動作を行った回数と、インクの層の形成が完了した領域の長さとの関係を示している。
図示のように動作を行うことにより、大ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を適切に形成することができる。また、複数の層を積層して形成することにより、立体物を適切に造形することができる。
図11(a)は、小ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する動作の一例を示す図である。小ピッチパス方式とは、例えば、パス数をnとした場合に、副走査動作での送り量について、ノズル列の長さLhの1/n(=Lh/n)よりも小さくする方式である。また、小ピッチパス方式については、大ピッチパス方式のように副走査動作の送り量を一定にして一のインクの層を形成するのではなく、より小さな送り量の副走査動作を挟んだ主走査動作を所定のパス数分だけ行う動作と、その後にノズル列の長さに対応する所定の送り量での副走査動作とを繰り返すことで一のインクの層を形成する動作であるといえる。また、図11(a)においては、より具体的に、より小さな送り量の副走査動作を行う場合の送り量について、ノズルピッチPよりも小さく、かつ、P/nの整数倍にした場合の例を示している。
また、この図において、丸囲みの数字等の記号や、説明の文字等は、図10(b)と同一又は同様の事項を示している。図示のように動作を行うことにより、小ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を適切に形成することができる。また、複数の層を積層して形成することにより、立体物を適切に造形することができる。また、この場合、完了列長の比較から分かるように、例えば、大ピッチパス方式で造形を行う場合と比べ、より少ない主走査動作の回数でインクの層を形成することができる。また、これにより、例えば、造形速度をより高速化することができる。
ここで、小ピッチパス方式について、より一般化して示した場合、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、副走査駆動部18(図1参照)により、副走査方向におけるノズル列の長さをパス数で除した幅よりも小さな距離である副走査方向移動距離だけ、造形台16に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッドを移動させる方式であるといえる。また、この場合、副走査方向移動距離は、ノズル列中で隣接するノズル間の副走査方向における距離であるノズルピッチ副走査方向成分の整数倍と、ノズルピッチ副走査方向成分未満の距離とを足した距離であるといえる。ノズルピッチ第2方向成分の整数倍とは、例えば、ノズルピッチ副走査方向成分と、0以上の整数との積のことである。このように構成すれば、例えば、副走査方向における解像度について、ノズルピッチ副走査方向成分よりも小さな距離の対応する高い解像度を適切に実現することができる。
また、図11(a)においては、小ピッチパス方式の動作の一例として、造形しようとする立体物の幅(副走査方向における長さ)がノズル列の長さ(Lh)よりも大きい場合について、図示をしている。そのため、この場合、4回の主走査動作を行う毎に、ノズル列の長さLhと等しい距離を送り量とする副走査動作を行っている。また、より一般化して示した場合、例えば、ノズル列の長さLh分の領域に対してパス数分の主走査動作を行った後に、ノズル列の長さLhに対応する距離だけ、副走査方向へ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させているといえる。また、この場合、インクジェットヘッド200の移動後、更に、パス数分の主走査動作を行う。このように構成すれば、例えば、立体物のサイズが大きい場合にも、立体物の造形を適切に行うことができる。
しかし、例えば立体物の幅がノズル列の長さLhよりも小さい場合、このような大きな距離の副走査動作を行うことなく、立体物の幅全体に対して同時にノズル列からインク滴を吐出することも考えられる。このように構成すれば、例えば、ライン型のインクジェットヘッドを用いる場合と同様にして、マルチパスでの造形を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、立体物の造形をより高速に行うことができる。
図11(b)は、全面順次パス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する動作の一例を示す図である。全面順次パス方式とは、例えば、同じ回の主走査動作をインクの層の全面に対して順次行う方式である。また、この場合、同じ回の主走査動作とは、例えば、一のインクの層を形成する動作において、同じ位置に対して複数回行う主走査のうち、同じ回の主走査動作のことである。
また、この図において、丸囲みの数字等の記号や、説明の文字等は、図10(b)と同一又は同様の事項を示している。図示のように動作を行うことにより、全面順次パス方式のマルチパス方式でインクの層を適切に形成することができる。また、複数の層を積層して形成することにより、立体物を適切に造形することができる。また、この場合、完了列長の比較から分かるように、例えば、大ピッチパス方式で造形を行う場合と比べ、より少ない主走査動作の回数でインクの層を形成することができる。また、これにより、例えば、造形速度をより高速化することができる。
ここで、全面順次パス方式について、より一般化して示した場合、例えば、一のインクの層を形成する動作において、1回の主走査動作が行われる毎に、副走査駆動部18により、副走査方向におけるノズル列の長さ分の距離だけ、造形台16に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッド200を移動させる動作であるといえる。また、この場合、一のインクの層を形成すべき領域の全体に対し、例えば、1回目の主走査動作を行った後に、インクの層の各位置に対し、インクジェットヘッド200に2回目の主走査動作を行う。
また、この場合、副走査動作において副走査方向へインクジェットヘッド200を移動させる距離は、例えば、副走査方向におけるノズル列の長さと等しい距離である。また、パス数が3以上である場合、3回目以降の各回の主走査動作については、例えば、前回の主走査動作がインクの層の全体に対して行われた後に行う。このように構成すれば、全面順次パス方式での造形をより適切に行うことができる。
また、上記においては、主に、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の移動の向きについて、一方の向きにする場合について、説明をした。この場合、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の移動の向きとは、例えば、造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させる向きのことである。しかし、造形装置10の構成及び動作の更なる変形例においては、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の移動の向きについても、一方の向き及び他方の向きの双方向にすることが考えられる。
図12及び図13は、造形装置10の構成及び動作の更なる変形例について説明をする図である。図12(a)は、以下において説明をする動作で用いるインクジェットヘッド200の構成、及び、造形する立体物50の構成の一例を示す。このインクジェットヘッド200は、例えば、図1〜11を用いて説明をした各構成において用いるインクジェットヘッドと同一又は同様のインクジェットヘッドであってよい。
また、図示した場合において、インクジェットヘッド200におけるノズル列の長さLhは、64mmである。そのため、パス数を4回とした場合、ノズル列の長さをパス数で除した長さ(Lh/4)は、16mmになる。また、図示した場合において造形する立体物50は、逆さのカップ形状の立体物であり、開口部となる部分を下向きにした状態で、造形台16上に形成される。また、この場合、カップの内部になる領域には、サポート層が形成される。また、この場合、断面Aと示した位置は、図12(b)、図13(a)、(b)に示す造形断面に対応する位置である。また、この造形断面は、直径が120mmの円型状になっている。また、図12(b)、図13(a)、(b)は、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の移動の向きを双方向にした場合の動作の例を示す図であり、大ピッチパス方式、小ピッチパス方式、及び全面順次パス方式のそれぞれでインクの層を形成する場合について、各回の主走査動作の後に行う副走査動作でのインクジェットヘッド200の移動の向きを示す。
より具体的に、例えば、図12(b)においては、大ピッチパス方式での動作に関し、連続する2つのインクの層を形成する動作について、それぞれのインクの層を形成する1〜11番目の主走査動作の合間に行う副走査動作の向きについて、数字を付した矢印で示している。また、この場合、それぞれのインクの層の形成する動作として、造形を制御する造形データの端と主走査動作の開始位置とを合わせて、複数回の主走査動作を行う。
例えば、一のインクの層の形成時において、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を一方の向き(往路方向)に設定し、図10(b)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。例えば、図示した場合においては、造形データの左端の位置から主走査動作を開始する。そして、各回の主走査動作を行う毎に、ノズル列の長さをパス数で除した距離である16mmだけ、副走査方向における一方の向き(図中の右側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、同様にして主走査動作と副走査動作とを繰り返し、11回の主走査動作を行うことで、1層目のインクの層が完成する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を他方の向き(復路方向)に設定し、図10(b)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。この場合、造形データの右端の位置から主走査動作を開始する。また、この場合も、各回の主走査動作を行う毎に、16mmだけ、副走査方向における他方の向き(図中の左側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、これにより、例えば、11回の主走査動作を行うことで、2層目のインクの層が完成する。
ここで、副走査動作を双方向で行う場合においても、図1〜10を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、ヘッド台間距離を変化させることが好ましい。また、この場合、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きに合わせて、ヘッド台間距離を変化させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、副走査動作を双方向で行う場合においても、硬化したインクのドットと平坦化ローラ302(図1参照)とが接触すること等を適切に防ぐことができる。
また、副走査動作を双方向で行う動作について、より一般化して示した場合、副走査駆動部18(図1参照)の動作について、一部の主走査動作に続いて、副走査方向における一方の向きへ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させ、かつ、他の少なくとも一部の主走査動作に続いて、副走査方向における他方の向きへ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させる動作であるといえる。このように構成すれば、例えば、副走査動作を双方向で行うことにより、立体物50の造形をより高速に行うことができる。
また、図12(b)を用いて説明をした動作については、例えば、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きについて、インクの層毎に反対にする動作であるともいえる。この場合、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きについて、連続する2のインクの層の間で反対になるように設定することになる。また、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きの設定について、より一般化して示した場合、積層される複数のインクの層のうち、一部のインクの層の形成時において、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きを一方の向きに設定し、他のインクの層の形成時において、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きを他方の向きに設定する構成であるともいえる。
また、図13(a)においては、小ピッチパス方式での動作に関し、同じ領域に対して連続して行うパス数(4回)分の主走査動作の合間に行う副走査動作の向きについて、数字を付した矢印で示している。この場合、一のインクの層の形成時には、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を一方の向き(往路方向)に設定し、図11(a)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。また、この場合も、それぞれのインクの層の形成は、造形を制御する造形データの端と主走査動作の開始位置とを合わせて行う。
より具体的に、この場合、造形データの左端の位置から主走査動作を開始して、間に小ピッチの副走査動作を挟みつつ、パス数分である4回の主走査動作を行う。そして、その後、ノズル列の長さ分の64mmだけ副走査方向における一方の向き(図中の右側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、図示した場合においては、このような動作を2回繰り返すことにより、ノズル列の長さの2倍の領域である128mmの範囲にインクの層を形成することができる。従って、この場合、上記の動作を2回行うことで1層目のインクの層が完成する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を他方の向き(復路方向)に設定し、図11(a)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。この場合、造形データの右端の位置から主走査動作を開始する。
より具体的に、この場合、造形データの右端の位置から主走査動作を開始して、間に小ピッチの副走査動作を挟みつつ、パス数分である4回の主走査動作を行う。そして、その後、ノズル列の長さ分の64mmだけ副走査方向における他方の向き(図中の左側)へインクジェットヘッド200を移動させる。この場合も、1層目と同様に、上記の動作を2回行うことで2層目のインクの層が完成する。また、上記以外の点について、図13(a)に示した動作は、図12(b)に示した動作と同一又は同様に行ってよい。
また、図13(b)においては、全面順次パス方式での動作に関し、同じ領域に対して連続して行うパス数(4回)分の主走査動作の合間に行う副走査動作の向きについて、数字を付した矢印で示している。また、この場合、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きについては、インクの層毎ではなく、全面に対して同じ回の主走査動作を行う毎(パス毎)に変化させる。また、この場合も、それぞれのインクの層の形成は、造形を制御する造形データの端と主走査動作の開始位置とを合わせて行う。
より具体的に、この場合、造形データの左端の位置から主走査動作を開始して、図11(b)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層の全面に対する1回目の主走査動作(1パス目)を行う。また、この場合、1回の主走査動作を行う毎に、ノズル列の長さ分の64mmだけ副走査方向における一方の向き(図中の右側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、図示した場合においては、この動作を2回繰り返すことにより、ノズル列の長さの2倍の領域である128mmの範囲に対し、1回目の主走査動作を行うことができる。また、これにより、インクの層の全面に対し、1回目の主走査動作が完了する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を他方の向き(復路方向)に設定し、インクの層の全面に対する2回目の主走査動作(2パス目)を行う。この場合、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向以外は1パス目と同一又は同様にして、各動作を行ってよい。これにより、インクの層の全面に対し、2回目の主走査動作が完了する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を順次反対にして、1パス目及び2パス目と同一又は同様の動作を行う。また、これにより、インクの層の全面に対し、3回目及び4回目の主走査動作(3パス目及び4パス目の動作)が完了する。また、上記以外の点について、図13(b)に示した動作は、図12(b)及び図13(a)に示した動作と同一又は同様に行ってよい。
以上のように構成すれば、例えば、大ピッチパス方式、小ピッチパス方式、及び全面順次パス方式のそれぞれでインクの層を形成する場合において、双方向の副走査動作を適切に行うことができる。また、これにより、立体物50の造形をより高速かつ適切に行うことができる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。