図1は、冷凍サイクルシステムの一例に適用された本発明に係る絞り装置の第1実施例の構成を示す。
絞り装置は、例えば、図2に示されるように、冷凍サイクルシステムの配管における凝縮器6の出口と蒸発器2の入口との間に配置されている。絞り装置は、後述するチューブ本体10の一端10E1で、一次側配管Du1に接合されており、冷媒が排出されるチューブ本体10の他端10E2で二次側配管Du2に接合されている。一次側配管Du1は、凝縮器6の出口と絞り装置とを接続し、二次側配管Du2は、蒸発器2の入口と絞り装置とを接続するものとされる。蒸発器2の出口と凝縮器6の入口との間には、図2に示されるように、蒸発器2の出口に接合される配管Du3と、凝縮器6の入口に接合される配管Du4とにより、圧縮機4が接続されている。圧縮機4は、図示が省略される制御部により駆動制御される。これにより、冷凍サイクルシステムにおける冷媒が、例えば、図2に示される矢印に沿って循環されることとなる。
絞り装置は、図1に拡大されて示されるように、上述の冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体10と、チューブ本体10の内周部に固定されるガイドチューブ18と、ガイドチューブ18における一次側配管Du1に近い端部に一体に形成され冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部を構成する弁座18V、および、ニードル部材20と、ニードル部材20を弁座18Vに対し近接する方向に付勢するコイルスプリング16と、コイルスプリング16の一方の端部を支持するばね受け部材12と、ニードル部材20の後述する円柱大径部20P2の端面を受け止めるストッパ部材22と、を主な要素として含んで構成されている。
所定の長さおよび直径を有するチューブ本体10は、例えば、銅製パイプ、ステンレス鋼パイプ、または、アルミニウム製パイプで作られ、冷媒が導入される一端10E1で、凝縮器6に接続される一次側配管Du1に接合されており、冷媒が排出される他端10E2で蒸発器2に接続される二次側配管Du2に接合されている。
チューブ本体10の内周部における一端10E1から所定距離、離隔した中間部には、後述するガイドチューブ18の固定部18Aの外周部が固定されている。ガイドチューブ18の固定部18Aは、かしめ加工によるチューブ本体10の窪み10CA1により形成される突起がその固定部18Aの外周部に食い込むことにより固定されている。
ガイドチューブ18は、例えば、銅、真鍮、または、アルミニウム、あるいは、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られている。ガイドチューブ18における固定部18Aよりも下流側にある円筒状のニードル部材収容部18D、および、固定部18Aよりも上流側にある円筒状のストッパ部材収容部18Uは、それぞれ、チューブ本体10の内径よりも小なる外径を有している。ガイドチューブ18は、チューブ本体10の他端10E2に最も近いニードル部材収容部18Dの端部の内周部に、ばね受け部材12を有し、チューブ本体10の一端10E1に最も近いストッパ部材収容部18Uの端部の内周部に、ストッパ部材22を有している。ガイドチューブ18における上述のニードル部材収容部18D、ストッパ部材収容部18U、および、固定部18Aは、一体に形成されている。
固定部18Aに形成される弁座18Vは、ニードル部材20における後述する先細部20P1が挿入される弁ポート18Pを内部中央部に有している。弁ポート18Pは、所定の一様な直径で弁座18Vの中心軸線に沿って貫通する円形の開口を有している。なお、弁ポート18Pは、斯かる例に限られることなく、例えば、弁座18Vの中心軸線に沿って一端10E1に向けて末広状に貫通するものであってもよい。ガイドチューブ18における弁ポート18Pよりも上流側部分には、弁ポート18Pの直径よりも内径が上流側に向けて徐々に大きくなる末広部が、固定部18Aの内側に形成されている。
ストッパ部材収容部18Uの内周部には、ストッパ部材22が固定されている。ストッパ部材22は、かしめ加工によるストッパ部材収容部18Uの窪み18CA2により形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定される。ストッパ部材22は、例えば、金属材料で作られ、略円形断面を有している。ストッパ部材22における冷媒の流れに直交するように形成される両端面には、略平坦な面が形成されている。ストッパ部材22の両端面のうちの一方の端面には、ニードル部材20の先細部20P1が弁ポート18Pに近接したとき、ニードル部材20の円柱大径部20P2の端面が当接されている。ストッパ部材22は、互いに離隔し向き合う平坦面22FSを外周面の一部に有している。これにより、冷媒の流路が、ガイドチューブ18の内周面とストッパ部材22の各平坦面22FSとの間に形成されることとなる。
図1に示されるように、ガイドチューブ18における弁座18Vよりも下流側部分には、弁ポート18Pの直径よりも内径が大である拡大部18Mが、ニードル部材収容部18Dの内側に形成されている。その拡大部18Mには、後述するニードル部材20の張出部20Fが配される。
ニードル部材収容部18Dの内周部におけるばね受け部材12と上述の弁座18Vとの間には、連通孔18cが弁座18Vの直上に上述の拡大部18Mに向き合って形成されている。連通孔18cは、ガイドチューブ18のニードル部材収容部18Dをその半径方向に貫通することにより、ガイドチューブ18の内周部、弁ポート18P、および、上述の拡大部18Mを、チューブ本体10の内周部とガイドチューブ18のニードル部材収容部18Dにおける外周部との間に連通させる。
ばね受け部材12は、かしめ加工によるガイドチューブ18におけるニードル部材収容部18Dの窪み18CA1により形成される突起がその外周部に食い込むことによりニードル部材収容部18Dの内周部に固定されている。付勢部材支持部としてのばね受け部材12は、コイルスプリング16の一端が係合されるばねガイド12bを有している。コイルスプリング16の他端は、ニードル部材20のばねガイド部20D1に係合されている。ニードル部材収容部18Dにおけるコイルスプリング16に向き合う部分には、連通孔18cの直径よりも小なる直径を有する連通孔18bがガイドチューブ18の半径方向に貫通するように形成されている。これにより、ニードル部材収容部18Dの内側とチューブ本体10の内周部とガイドチューブ18のニードル部材収容部18Dにおける外周部との間が、連通することとなる。
ニードル部材20は、例えば、真鍮、または、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られ、ニードル部材収容部18Dの内周部に摺動可能に配される円柱状の本体部20Aと、本体部20Aに後述する張出部20Fを介して連結され弁座18Vに向かい合って形成される先細部20P1と、先細部20P1の一端部に形成される円柱大径部20P2と、コイルスプリング16の他端に向かい合う本体部20Aの端部に形成される突起状のばねガイド部20D1と、本体部20Aと先細部20P1の基部との間に形成される張出部20Fと、を主な要素として構成されている。
先細部20P1の最小径部は、円柱大径部20P2の連結部の直径と同一に設定されている。所定のテーパ角度を有する円錐台状の先細部20P1は、図1に示されるように、円柱大径部20P2の端面がストッパ部材22の端面に当接されるとき、弁ポート18Pの直径よりも大なる直径を有する基部を弁ポート18Pから所定距離、離隔した位置に有している。先細部20P1における最小径部には、一様な直径を有する所定の長さの円柱部を有する円柱大径部20P2が連なって形成されている。円柱大径部20P2の端面の直径は、先細部20P1の最小径部よりも大に設定されている。先細部20P1における弁ポート18Pの開口端部に対応する位置から上述の円柱大径部20P2の端面までの長さは、所定の長さに設定されている。
円柱大径部20P2の端面がストッパ部材22の平坦な端面に当接されるとき、ニードル部材20の先細部20P1の外周部における弁ポート18Pの開口端部に対応する位置において、先細部20P1の外周部が、弁ポート18Pの開口端部の周縁に対し所定の隙間を形成するように配置されている。その際、ニードル部材20の先細部20P1と弁ポート18Pの開口端部との間には、後述する絞り部が形成される。チューブ本体10内の冷媒の圧力が所定値以下の場合、円柱大径部20P2の端面は、コイルスプリング16の付勢力と一次側配管Du1からの冷媒の圧力との差に応じた所定の圧力でストッパ部材22の平坦面に当接されている。
このような弁ポート18Pの開口端部の周縁に対して形成される所定の隙間の量により、絞り部を通過する所定のブリード量が設定されることとなる。また、ニードル部材20の円柱大径部20P2は、ストッパ部材22の平坦面に当接されているのでニードル部材20に二次側からの不所望な圧力が作用しニードル部材20の先細部20P1が弁座18Vの弁ポート18Pの開口端に食い付くことが回避される。
ニードル部材20のばねガイド部20D1には、コイルスプリング16の他方の端部が係合されている。また、コイルスプリング16の一方の端部には、ばね受け部材12のばねガイド部12bが係合されている。ばねガイド部20D1に連なる当接部20D2とばねガイド部12bの先端とは、所定の距離、離隔されている。これにより、仮に、ニードル部材20が、ばねガイド部12bに向って所定値以上、移動せしめられた場合、当接部20D2の端面とばねガイド部12bの先端とが当接するのでニードル部材20の移動が規制されることとなる。従って、コイルスプリング16が、所定値以上に過剰に圧縮されることが回避される。
ニードル部材20のばねガイド部20D1には、ニードル部材20の移動速度を減速させるはね部材24が設けられている。はね部材24は、例えば、薄板金属材料で作られ、環状の固定片に一体に形成される3枚の接触片を有している。固定片の孔には、ばねガイド部20D1が挿入される。3枚の接触片は、固定片の円周方向に沿って均等の角度で離隔され形成されている。これにより、弾性変位可能な3枚の接触片の先端がガイドチューブ18の内周面に所定の荷重で摺接することによってニードル部材20の移動速度が減速されることとなる。
ニードル部材20における張出部20Fは、図3に示されるように、円板形の輪郭を形成するように略環状に形成されている。張出部20Fの直径は、本体部20Aの直径よりも若干小に設定されている。例えば、張出部20Fの直径は、本体部20Aの直径より約0.2〜0.6mm程度小さく設定されている。なお、この設定値は、所定の長期間、冷凍サイクルシステムを運転した場合、ガイドチューブ18内に堆積するであろう溶出物等に基づいて設定されており、仮に、ガイドチューブ18内の張出部20Fに対応する箇所に溶出物等が堆積したとしても、堆積した溶出部等が張出部20Fに接触しない程度の値とされている。これにより、万一、溶出物がニードル部材収容部18Dの内周部の端部に付着した場合であっても、張出部20Fによってニードル部材20の摺動が阻害される虞がない。
また、張出部20Fは、本体部20Aの端部から所定距離、離隔した位置に軸部を介して形成されている。ニードル部材20の円柱大径部20P2が、ストッパ部材22の平坦面に対し最大離隔した位置にあるとき、張出部20Fの位置は、その下端が連通孔18cの周縁に近接し向き合うように設定されている。これにより、弁ポート18Pからの冷媒の一部は、ニードル部材収容部18Dの内周部と張出部20Fの外周部との間の隙間に流れ込むとともに、それよりも多くの量であるその他の冷媒は、図3の矢印に示されるように、張出部20Fの下端面および周縁により、連通孔18cに向けて誘導される。ニードル部材収容部18Dの内周部と張出部20Fの外周部との間の隙間に流れ込んだ冷媒は、本体部20Aの外周部とニードル部材収容部18Dの内周部との間の隙間、ニードル部材収容部18Dの内周部、および、連通孔18bを通じてニードル部材収容部18Dの外周部とチューブ本体10の内周部との間の隙間に放出される。これにより、弁ポート18Pからの冷媒の大部分が、ガイドチューブ18の連通孔18cを通じてニードル部材収容部18Dの外周部とチューブ本体10の内周部との間の隙間を通じて他端10E2に排出される。従って、冷媒や冷凍機油に含まれる成分が溶出し形成された溶出物または磨耗粉、あるいは、溶出物と摩耗粉の化合物等が、ニードル部材20の本体部20Aにおける上流側および下流側の端部に付着し堆積することがより一層回避される。また、上述の溶出物等が本体部20Aの外周部とニードル部材収容部18Dの内周部との間の隙間に噛み込むことも回避される。
一方、図4は、本発明に係る絞り装置の第1実施例に用いられるニードル部材20の代わりに、ニードル部材30が用いられる比較例としての絞り装置を示す。なお、図4においては、図3に示される例における同一の構成要素について同一の符号を示し、その重複説明を省略する。
ニードル部材30は、本発明の一例に採用されるような張出部を有することなく、ニードル部材20の材料と同様な材料で機械加工により作られ、ニードル部材収容部18Dの内周部に摺動可能に配される円柱状の本体部30Aと、本体部30Aの端部に面取部を介して連結され弁座18Vに向かい合って形成される先細部30P1と、先細部30P1の一端部に形成される円柱大径部30P2と、コイルスプリング16の他端に向かい合う本体部30Aの端部に形成される突起状のばねガイド部30D1と、を主な要素として構成されている。
先細部30P1の最小径部は、円柱大径部30P2の連結部の直径と同一に設定されている。所定のテーパ角度を有する円錐台状の先細部30P1は、円柱大径部30P2の端面がストッパ部材22の端面に当接されるとき、弁ポート18Pの直径よりも大なる直径を有する基部を弁ポート18Pから所定距離、離隔した位置に有している。先細部30P1における最小径部には、一様な直径を有する所定の長さの円柱部を有する円柱大径部30P2が連なって形成されている。
ニードル部材30のばねガイド部30D1には、コイルスプリング16の他方の端部が係合されている。また、コイルスプリング16の一方の端部には、ばね受け部材17のばねガイド部17bが係合されている。ばねガイド部30D1に連なる当接部30D2とばねガイド部17bの先端とは、所定の距離、離隔されている。これにより、仮に、ニードル部材30が、ばねガイド部17bに向って所定値以上、移動せしめられた場合、当接部30D2の端面とばねガイド部17bの先端とが当接するのでニードル部材30の移動が規制されることとなる。
斯かる構成において、絞り部を通過することにより、流れが乱れた冷媒の一部は、図4に示されるように、弁ニードル部材収容部18Dの内周部とニードル部材30の外周部との間の隙間に直接的に流れ込み、弁ニードル部材収容部18Dの内周部、および、連通孔18bを通じて排出されるとともに、冷媒の他の部分は、連通孔18cを通じてチューブ本体10の内周部とガイドチューブ18の外周部との間に排出されることとなる。このような場合、冷凍サイクルシステムによる比較的長期間の運転により、この比較例としての絞り装置においては、冷媒や冷凍機油に含まれる成分が溶出し形成された溶出物または磨耗粉、あるいは、溶出物と摩耗粉の化合物等である溶出物SE1およびSE2が、ガイドチューブ18の内周部におけるニードル部材30の本体部30Aにおける下流側および上流側の端部近傍に付着し堆積する虞があり、その結果として、比較例としての絞り装置においては、ニードル部材30における円滑な作動が損なわれる場合がある。
さらに、上述した本発明に係る絞り装置の第1実施例におけるニードル部材20の先細部20P1の外周部が、差圧(一端10E1側の冷媒の入口圧力と他端10E2側の冷媒の出口圧力との差)により、弁ポート18Pの開口端部の周縁に対しさらに離隔し始める離隔開始タイミングは、コイルスプリング16の付勢力に基づいて設定される。コイルスプリング16のばね定数は、所定の値に設定されている。
また、ストッパ部材22に円柱大径部20P2の端面が当接した際、ストッパ部材22と円柱大径部20P2との当接面にはコイルスプリング16による弁閉方向の付勢力が作用する。
コイルスプリング16の付勢力の調整、即ち、各冷媒に応じたコイルスプリング16の基準高さ(セット長)の調整は、例えば、以下のような手順で行われる。その基準高さとは、各冷媒に応じたニードル部材20の先細部20P1の上述の所定の離隔タイミングとなるように、設定されたコイルスプリング16の高さをいう。
先ず、ストッパ部材22がガイドチューブ18のストッパ部材収容部18Uの内周部18aに固定される場合、まず、ニードル部材20の円柱大径部20P2が、弁ポート18Pに挿入される。そして、コイルスプリング等を用いてニードル部材20を弁座18Vに押し付けた状態とし、その後、ストッパ部材22が挿入されたガイドチューブ18が、例えば、空気を流体としたブリード流量測定装置/かしめ装置(不図示)に配された状態で、目標ブリード流量と等しい空気流量となるようにガイドチューブ18に対するストッパ部材22の位置を調整した後、円柱大径部20P2の端面が当接した状態でストッパ部材22がガイドチューブ18にかしめ固定されることにより、ブリード流量の調整が完了する。
そして、ばね受け部材12が固定される場合、ストッパ部材22が固定されたガイドチューブ18が、例えば、空気を流体とした所定の性能測定/かしめ装置(不図示)に配された状態で、あらかじめ規定された圧力が印加された状態での空気流量の検出に基づいてガイドチューブ18に対するばね受け部材12の位置を調整した後、ばね受け部材12がかしめ固定されることにより、コイルスプリング16のばね長さの調整が完了する。
従って、コイルスプリング16のばね長さの調整を行う調整ねじ等が不要とされるので各冷媒に応じた弁開き始め圧力を調整することができ、しかも、絞り装置の構造を簡略化し、製造コストを低減できる。
斯かる構成において、冷媒の圧力によるニードル部材20に作用する力がコイルスプリング16の付勢力を超えない場合、冷媒が、図2において一次側配管Du1を通じて矢印の示す方向に沿って供給されるとき、図1に示されるように、冷媒の圧力は、チューブ本体10の一端10E1、チューブ本体10の内周部10aとガイドチューブ18の外周部との間、上述の絞り部、連通路18cを通過することにより減圧され、その後、冷媒が、ガイドチューブ18の外周面とチューブ本体10の内周面10aとの間を通じて他端10E2から所定のブリード量で排出される。
さらに、冷媒の圧力によるニードル部材20に作用する力がコイルスプリング16の付勢力を超える場合、上述の絞り部を通じて流れる冷媒が、図2および図3に示されるように、弁ポート18Pの周縁からさらに離隔する方向にニードル部材20を押圧することとなる。これにより、差圧が増大するにつれて流量が急激に増大することとなる。
ニードル部材20の先細部20P1の外周部が、上述のように、弁ポート18Pの開口端部の周縁に対し離隔される場合、ニードル部材20の先細部20P1と弁ポート18Pの開口端部との間には、その開度が冷媒圧力に応じて可変になる絞り部が形成される。絞り部とは、弁ポート18Pの周縁から先細部20P1の母線への垂線と、先細部20P1の母線との交点が、弁ポート18Pの縁から最も近い箇所(最狭部)をいう。この垂線が描く円錐面の面積が、絞り部の開口面積となる。なお、この開口面積の算出は、冷媒の圧力によるニードル部材20に作用する力がコイルスプリング16の付勢力を超えない場合に形成される先細部20P1の外周部と弁ポート18Pの開口端部の周縁との間に形成される隙間の場合も同様である。
図5は、冷凍サイクルシステムの一例に適用された本発明に係る絞り装置の第2実施例の構成を示す。
図1に示される例においては、ニードル部材20は、一段の張出部20Fを本体部20Aの端部と先細部20P1の基部との間に有するものとされるが、その代わりに、図5に示される例においては、ニードル部材40は、互いに離隔した二段の張出部40F1および張出部40F2を本体部40Aの端部と先細部40P1の基部との間に有するものとされる。なお、図5において、図1に示される例における同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
絞り装置は、例えば、上述の例と同様に図2に示されるように、冷凍サイクルシステムの配管における凝縮器6の出口と蒸発器2の入口との間に配置されている。
絞り装置は、上述の冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体10と、チューブ本体10の内周部に固定されるガイドチューブ18´と、ガイドチューブ18´における一次側配管Du1に近い端部に一体に形成され冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部を構成する弁座18´V、および、ニードル部材40と、ニードル部材40を弁座18´Vに対し近接する方向に付勢するコイルスプリング16と、コイルスプリング16の一方の端部を支持するばね受け部材12´と、冷媒の圧力によるニードル部材40に作用する力がコイルスプリング16の付勢力を超えない場合、ニードル部材40の円柱大径部40P2の端面を受け止めるストッパ部材22と、を主な要素として含んで構成されている。
チューブ本体10の内周部における一端10E1から所定距離、離隔した中間部には、チューブ本体10の内径よりも小なる外径を有するガイドチューブ18´の固定部18´Aの外周部が固定されている。ガイドチューブ18´は、かしめ加工によるチューブ本体10の窪み10CA1により形成される突起がその固定部18´Aの外周部に食い込むことにより固定されている。チューブ本体10の他端10E2に最も近いニードル部材収容部18´Dの端部の内周部に、ばね受け部材12´が固定されている。ばね受け部材12´は、かしめ加工によるガイドチューブ18´における円筒形の窪み18´CA1により形成される突起がその外周部に食い込むことにより固定されている。
ガイドチューブ18´は、例えば、銅、真鍮、または、アルミニウム、あるいは、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られている。ガイドチューブ18´における固定部18´Aよりも下流側にある円筒状のニードル部材収容部18´D、および、固定部18´Aよりも上流側にある円筒状のストッパ部材収容部18´Uは、それぞれ、チューブ本体10の内径よりも小なる外径を有している。ガイドチューブ18´は、チューブ本体10の他端10E2に最も近いニードル部材収容部18´Dの端部の内周部に、ばね受け部材12´を有し、チューブ本体10の一端10E1に最も近いストッパ部材収容部18´Uの端部の内周部に、ストッパ部材22を有している。ガイドチューブ18´における上述のニードル部材収容部18´D、ストッパ部材収容部18´U、および、固定部18´Aは、一体に形成されている。
固定部18´Aに形成される弁座18´Vは、ニードル部材40における後述する先細部40P1が挿入される弁ポート18´Pを内部中央部に有している。弁ポート18´Pは、所定の一様な直径で弁座18´Vの中心軸線に沿って貫通する円形の開口を有している。なお、弁ポート18´Pは、斯かる例に限られることなく、例えば、弁座18´Vの中心軸線に沿って一端10E1に向けて末広状に貫通するものであってもよい。ガイドチューブ18´における弁ポート18´Pよりも上流側部分には、弁ポート18´Pの直径よりも内径が上流側に向けて徐々に大きくなる末広部が、固定部18´Aの内側に形成されている。
ストッパ部材収容部18´Uの内周部18´aには、ストッパ部材22が固定されている。ストッパ部材22の両端面のうちの一方の端面には、ニードル部材40の先細部40P1が弁ポート18´Pに近接したとき(冷媒の圧力によるニードル部材40に作用する力がコイルスプリング16の付勢力を超えない場合)、ニードル部材40の円柱大径部40P2の端面が当接されている。
図5に示されるように、ガイドチューブ18´における弁座18´Vよりも下流側部分には、弁ポート18´Pの直径よりも内径が大である拡大部18´Mが、ニードル部材収容部18´Dの内側に形成されている。その拡大部18´Mには、図5において二点鎖線および実線で示されるように、後述するニードル部材40の張出部40F1および40F2が配される。
ニードル部材収容部18´Dの内周部におけるばね受け部材12´と上述の弁座18´Vとの間には、連通孔18´cが弁座18´Vの直上に上述の拡大部18´Mに向き合って形成されている。連通孔18´cは、ガイドチューブ18´のニードル部材収容部18´Dをその半径方向に貫通することにより、ガイドチューブ18´の内周部、弁ポート18´P、および、上述の拡大部18´Mを、チューブ本体10の内周部とガイドチューブ18´のニードル部材収容部18´Dにおける外周部との間に連通させる。
ばね受け部材12´は、かしめ加工によるガイドチューブ18´におけるニードル部材収容部18´Dの窪み18´CA1により形成される突起がその外周部に食い込むことによりニードル部材収容部18´Dの内周部に固定されている。付勢部材支持部としてのばね受け部材12´は、コイルスプリング16の一端が係合されるばねガイド12´bを有している。コイルスプリング16の他端は、ニードル部材40のばねガイド部40D1に係合されている。ニードル部材収容部18´Dにおけるコイルスプリング16に向き合う部分には、連通孔18´cの直径よりも小なる直径を有する連通孔18´bがガイドチューブ18の半径方向に貫通するように形成されている。これにより、ニードル部材収容部18´Dの内側とチューブ本体10の内周部とガイドチューブ18´のニードル部材収容部18´Dにおける外周部との間の隙間が、連通することとなる。
また、ニードル部材収容部18´Dの内周部における連通孔18´bよりも後述するニードル部材40の本体部40Aの端部に近い部分には、環状の凹部18´Rが形成されている。
ニードル部材40は、例えば、真鍮、または、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られ、ニードル部材収容部18´Dの内周部に摺動可能に配される円柱状の本体部40Aと、本体部40Aに後述する張出部40F1および40F2を介して連結され弁座18´Vに向かい合って形成される先細部40P1と、先細部40P1の一端部に形成される円柱大径部40P2と、コイルスプリング16の他端に向かい合う本体部40Aの端部に形成される突起状のばねガイド部40D1と、本体部40Aと先細部40P1の基部との間に形成される二段の張出部40F1および40F2と、を主な要素として構成されている。
先細部40P1の最小径部は、円柱大径部40P2の連結部の直径と同一に設定されている。所定のテーパ角度を有する円錐台状の先細部40P1は、図5に二点鎖線で示されるように、円柱大径部40P2の端面がストッパ部材22の端面に当接されるとき、弁ポート18´Pの直径よりも大なる直径を有する基部を弁ポート18´Pから所定距離、離隔した位置に有している。先細部40P1における最小径部には、一様な直径を有する所定の長さの円柱部を有する円柱大径部40P2が連なって形成されている。円柱大径部40P2の端面の直径は、先細部40P1の最小径部よりも大に設定されている。先細部40P1における弁ポート18´Pの開口端部に対応する位置から上述の円柱大径部40P2の端面までの長さは、所定の長さに設定されている。
円柱大径部40P2の端面がストッパ部材22の平坦な端面に当接されるとき、ニードル部材40の先細部40P1の外周部における弁ポート18´Pの開口端部に対応する位置において、先細部40P1の外周部が、弁ポート18´Pの開口端部の周縁に対し所定の隙間を形成するように配置されている。その際、ニードル部材40の先細部40P1と弁ポート18´Pの開口端部との間には、後述する絞り部が形成される。チューブ本体10内の冷媒の圧力が所定値以下の場合、円柱大径部40P2の端面は、コイルスプリング16の付勢力と一次側配管Du1からの冷媒の圧力との差に応じた所定の圧力でストッパ部材22の平坦面に当接されている。
このような弁ポート18´Pの開口端部の周縁に対して形成される所定の隙間の量により、絞り部を通過する所定のブリード量が設定されることとなる。また、ニードル部材40の円柱大径部40P2は、ストッパ部材22の平坦面に当接されているのでニードル部材40に二次側からの不所望な圧力が作用しニードル部材40の先細部40P1が弁座18´Vの弁ポート18´Pの開口端に食い付くことが回避される。
ニードル部材40における張出部40F1および40F2は、それぞれ、図5に示されるように、中心軸線に対し直交し所定の間隔をもって互いに平行に形成されている。張出部40F1および40F2の直径は、本体部40Aの直径よりも若干小に設定されている。これにより、万一、溶出物等がニードル部材収容部18´Dの内周部の端部に付着した場合であっても、張出部40F1および40F2の機能が阻害される虞がない。張出部40F1は、円板形の輪郭を形成するように略環状に形成され、本体部40Aの端部から所定距離、離隔した位置に形成されている。張出部40F2は、張出部40F1に対し所定の間隔をもって離隔し先細部40P1の基部に連結されている。張出部40F1と本体部40Aとの間、および、張出部40F1と張出部40F2との間の部分は、それぞれ、張出部40F1および40F2の直径よりも小であって先細部40P1の基部の直径と略同一の直径を有する軸部により連結されている。このようにニードル部材40が、二段の張出部40F1および40F2を有することにより、図1に示される例に比してニードル部材収容部18´Dの内周部と張出部40F1および40F2の外周部との間を通過する冷媒の量が低減される。
ニードル部材40の円柱大径部40P2が、ストッパ部材22の平坦面に対し最大離隔した位置にあるとき、張出部40F2の位置は、その下端が連通孔18´cの周縁に近接し向き合うように設定されている。これにより、弁ポート18´Pからの冷媒の一部は、ニードル部材収容部18´Dの内周部と張出部40F1および40F2の外周部との間の隙間に流れ込むとともに、それよりも多くの量であるその他の冷媒は、張出部40F2の下端面および周縁により、連通孔18´cに向けて誘導される。ニードル部材収容部18´Dの内周部と張出部40F1および40F2の外周部との間の隙間に流れ込んだ冷媒は、本体部40Aの外周部とニードル部材収容部18´Dの内周部との間の隙間、ニードル部材収容部18´Dの内周部、および、連通孔18´bを通じてニードル部材収容部18´Dの外周部とチューブ本体10の内周部10aとの間の隙間に放出される。これにより、弁ポート18´Pからの冷媒の大部分が、ガイドチューブ18´の連通孔18´cを通じてニードル部材収容部18´Dの外周部とチューブ本体10の内周部との間の隙間を通じて他端10E2に排出される。従って、冷媒や冷凍機油に含まれる成分が溶出し形成された溶出物または磨耗粉、あるいは、溶出物と摩耗粉の化合物等が、ニードル部材40の本体部40Aにおける上流側および下流側の端部に付着し堆積することがより一層回避される。また、上述の溶出物等が本体部40Aの外周部とニードル部材収容部18´Dの内周部との間の隙間に噛み込むことも、回避される。
図6は、冷凍サイクルシステムの一例に適用された本発明に係る絞り装置の第3実施例の構成を示す。
図1に示される例においては、ガイドチューブ18が連通孔18bを有するものとされるが、その代わりに、図6に示される例においては、ガイドチューブ28は、そのような連通孔を有することなく、しかも、ニードル部材50の本体部50Aが、ガイドチューブ28のニードル部材収容部28Dの内周面に向かい合う平坦面50FSを有するものとされる。なお、図6において、図1に示される例における同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
絞り装置は、例えば、図2に示されるように、冷凍サイクルシステムの配管における凝縮器6の出口と蒸発器2の入口との間に配置されている。
絞り装置は、図6に拡大されて示されるように、上述の冷凍サイクルシステムの配管に接合されるチューブ本体10と、チューブ本体10の内周部に固定されるガイドチューブ28と、ガイドチューブ28における一次側配管Du1に近い端部に一体に形成され冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部を構成する弁座28V、および、ニードル部材50と、ニードル部材50を弁座28Vに対し近接する方向に付勢するコイルスプリング16と、コイルスプリング16の一方の端部を支持するばね受け部材12と、ニードル部材50の後述する円柱大径部50P2の端面を受け止めるストッパ部材22と、を主な要素として含んで構成されている。
チューブ本体10の内周部における一端10E1から所定距離、離隔した中間部には、後述するガイドチューブ28の固定部28Aの外周部が固定されている。ガイドチューブ28の固定部28Aは、かしめ加工によるチューブ本体10の窪み10CA1により形成される突起がその固定部28Aの外周部に食い込むことにより固定されている。
ガイドチューブ28は、例えば、銅、真鍮、または、アルミニウム、あるいは、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られている。ガイドチューブ28における固定部28Aよりも下流側にある円筒状のニードル部材収容部28D、および、固定部28Aよりも上流側にある円筒状のストッパ部材収容部28Uは、それぞれ、チューブ本体10の内径よりも小なる外径を有している。ガイドチューブ28は、チューブ本体10の他端10E2に最も近いニードル部材収容部28Dの端部の内周部に、ばね受け部材12を有し、チューブ本体10の一端10E1に最も近いストッパ部材収容部28Uの端部の内周部に、ストッパ部材22を有している。ガイドチューブ28における上述のニードル部材収容部28D、ストッパ部材収容部28U、および、固定部28Aは、一体に形成されている。
固定部28Aに形成される弁座28Vは、ニードル部材50における後述する先細部50P1が挿入される弁ポート28Pを内部中央部に有している。弁ポート28Pは、所定の一様な直径で弁座28Vの中心軸線に沿って貫通する円形の開口を有している。なお、弁ポート28Pは、斯かる例に限られることなく、例えば、弁座28Vの中心軸線に沿って一端10E1に向けて末広状に貫通するものであってもよい。ガイドチューブ28における弁ポート28Pよりも上流側部分には、弁ポート28Pの直径よりも内径が上流側に向けて徐々に大きくなる末広部が、固定部28Aの内側に形成されている。
ストッパ部材収容部28Uの内周部には、ストッパ部材22が固定されている。ストッパ部材22の両端面のうちの一方の端面には、ニードル部材50の先細部50P1が弁ポート28Pに近接したとき、ニードル部材50の円柱大径部50P2の端面が当接されている。ストッパ部材22は、互いに離隔し向き合う平坦面22FSを外周面の一部に有している。これにより、冷媒の流路が、ガイドチューブ28の内周面とストッパ部材22の各平坦面22FSとの間に形成されることとなる。
図6に示されるように、ガイドチューブ28における弁座28Vよりも下流側部分には、弁ポート28Pの直径よりも内径が大である拡大部28Mが、ニードル部材収容部28Dの内側に形成されている。その拡大部28Mには、後述するニードル部材50の張出部50Fが配される。
ニードル部材収容部28Dの内周部におけるばね受け部材12と上述の弁座28Vとの間には、連通孔28cが弁座28Vの直上に上述の拡大部28Mに向き合って形成されている。連通孔28cは、ガイドチューブ28のニードル部材収容部28Dをその半径方向に貫通することにより、ガイドチューブ28の内周部、弁ポート28P、および、上述の拡大部28Mを、チューブ本体10の内周部とガイドチューブ28のニードル部材収容部28Dにおける外周部との間に連通させる。
ばね受け部材12は、かしめ加工によるガイドチューブ28におけるニードル部材収容部28Dの窪み28CA1により形成される突起がその外周部に食い込むことによりニードル部材収容部28Dの内周部に固定されている。コイルスプリング16の他端は、ニードル部材50のばねガイド部50D1に係合されている。
ニードル部材50は、例えば、真鍮、または、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られ、ニードル部材収容部28Dの内周部に摺動可能に配される円柱状の本体部50Aと、本体部50Aに後述する張出部50Fを介して連結され弁座28Vに向かい合って形成される先細部50P1と、先細部50P1の一端部に形成される円柱大径部50P2と、コイルスプリング16の他端に向かい合う本体部50Aの端部に形成される突起状のばねガイド部50D1と、本体部50Aと先細部50P1の基部との間に形成される張出部50Fと、を主な要素として構成されている。
略D字形の横断面を有する本体部50Aは、その中心軸線から所定距離、離隔した位置に平坦面50FSを有している。平坦面50FSは、その中心軸線に沿って端から端まで延びている。これにより、上述の拡大部28Mとコイルスプリング16が配されるニードル部材収容部28Dの内周部とを連通させる連通路が、ガイドチューブ28におけるニードル部材収容部28Dの内周部と向かい合う本体部50Aの平坦面50FSとの間に形成されることとなる。
先細部50P1の最小径部は、円柱大径部50P2の連結部の直径と同一に設定されている。所定のテーパ角度を有する円錐台状の先細部50P1は、円柱大径部50P2の端面がストッパ部材22の端面に当接されるとき、弁ポート28Pの直径よりも大なる直径を有する基部を弁ポート28Pから所定距離、離隔した位置に有している。先細部50P1における最小径部には、一様な直径を有する所定の長さの円柱部を有する円柱大径部50P2が連なって形成されている。円柱大径部50P2の端面の直径は、先細部50P1の最小径部よりも大に設定されている。先細部50P1における弁ポート28Pの開口端部に対応する位置から上述の円柱大径部50P2の端面までの長さは、所定の長さに設定されている。
円柱大径部50P2の端面がストッパ部材22の平坦な端面に当接されるとき、ニードル部材50の先細部50P1の外周部における弁ポート28Pの開口端部に対応する位置において、先細部50P1の外周部が、弁ポート28Pの開口端部の周縁に対し所定の隙間を形成するように配置されている。その際、ニードル部材50の先細部50P1と弁ポート28Pの開口端部との間には、後述する絞り部が形成される。チューブ本体10内の冷媒の圧力が所定値以下の場合、円柱大径部50P2の端面は、コイルスプリング16の付勢力と一次側配管Du1からの冷媒の圧力との差に応じた所定の圧力でストッパ部材22の平坦面に当接されている。
このような、弁ポート28Pの開口端部の周縁に対して形成される所定の隙間の量により、絞り部を通過する所定のブリード量が設定されることとなる。また、ニードル部材50の円柱大径部50P2は、ストッパ部材22の平坦面に当接されているのでニードル部材50に二次側からの不所望な圧力が作用しニードル部材50の先細部50P1が弁座28Vの弁ポート28Pの開口端に食い付くことが回避される。
ニードル部材50における張出部50Fは、円板形の輪郭を形成するように略環状に形成されている。張出部50Fの直径は、本体部50Aの直径よりも若干小に設定されている。これにより、万一、溶出物がニードル部材収容部28Dの内周部の端部に付着した場合であっても、張出部50Fの機能が阻害される虞がない。また、張出部50Fは、本体部50Aの端部から所定距離、離隔した位置に軸部を介して形成されている。ニードル部材50の円柱大径部50P2が、ストッパ部材22の平坦面に対し最大離隔した位置にあるとき、張出部50Fの位置は、その下端が連通孔28cの周縁に近接し向き合うように設定されている。これにより、弁ポート28Pからの冷媒の一部は、ニードル部材収容部28Dの内周部と張出部50Fの外周部との間の隙間に流れ込むとともに、それよりも多くの量であるその他の冷媒は、張出部50Fの下端面および周縁により、連通孔28cに向けて誘導される。これにより、弁ポート28Pからの冷媒の大部分が、ガイドチューブ28の連通孔28cを通じてニードル部材収容部28Dの外周部とチューブ本体10の内周部との間の隙間を通じて他端10E2に排出される。従って、冷媒や冷凍機油に含まれる成分が溶出し形成された溶出物または磨耗粉、あるいは、溶出物と摩耗粉の化合物等が、ニードル部材50の本体部50Aにおける上流側および下流側の端部に付着し堆積することがより一層回避される。また、上述の溶出物等が本体部50Aの外周部とニードル部材収容部28Dの内周部との間の隙間に噛み込むことも、回避される。
一方、ニードル部材収容部28Dの内周部と張出部50Fの外周部との間の隙間に流れ込んだ冷媒は、本体部50Aの外周部とニードル部材収容部28Dの内周部との間の隙間、ニードル部材50の平坦面50FSとニードル部材収容部28Dの内周部との間に形成される連通路を通じてコイルスプリング16が配されるニードル部材収容部28Dの内周部に流れ込む。これにより、それ以降、冷媒が本体部50Aの外周部とニードル部材収容部28Dの内周部との間の隙間を通過しないので冷媒や冷凍機油に含まれる成分が溶出し形成された溶出物または磨耗粉、あるいは、溶出物と摩耗粉の化合物等が、ニードル部材50の本体部50Aにおける上流側および下流側の端部に付着し堆積することが回避される。
その際、仮に、ばね受け部材12の外周部とガイドチューブ28の内周部との間の隙間から冷媒が漏れ出す場合であっても、弁ポート28Pからの冷媒の圧力が、上述の連通路を通じてコイルスプリング16が配されるニードル部材収容部28Dの内周部に直接的に作用するので上述の拡大部28M内の圧力とコイルスプリング16が配されるニードル部材収容部28Dの内部圧力(背圧)とが略同一となり、流量特性の不安定さが、抑制される。
斯かる構成において、冷媒の圧力によるニードル部材50に作用する力がコイルスプリング16の付勢力を超えない場合、冷媒が、図2において一次側配管Du1を通じて矢印の示す方向に沿って供給されるとき、冷媒の圧力は、チューブ本体10の一端10E1、チューブ本体10の内周部10aとガイドチューブ28の外周部との間、上述の絞り部、連通路28cを通過することにより減圧され、その後、冷媒が、ガイドチューブ28の外周面とチューブ本体10の内周面10aとの間を通じて他端10E2から所定のブリード量で排出される。
さらに、冷媒の圧力によるニードル部材50に作用する力がコイルスプリング16の付勢力を超える場合、上述の絞り部を通じて流れる冷媒が、弁ポート28Pの周縁からさらに離隔する方向にニードル部材50を押圧することとなる。これにより、流量が所定の値以上となるとき、差圧が増大するにつれて流量が急激に増大することとなる。
図7は、冷凍サイクルシステムの一例に適用された本発明に係る絞り装置の第4実施例の構成を示す。
図6に示される例においては、ニードル部材50の張出部50Fの下端の周縁部は、直角の角で形成されているが、その代わりに、図7に示される例においては、ニードル部材60の張出部60Fの下端の周縁部には、面取部60FCが施されるものとされる。なお、図7は、図6に示される例における構成要素と同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
ニードル部材60は、例えば、真鍮、または、ステンレス鋼等の材料で機械加工により作られ、ニードル部材収容部28Dの内周部に摺動可能に配される円柱状の本体部60Aと、本体部60Aに後述する張出部60Fを介して連結され弁座28Vに向かい合って形成される先細部60P1と、先細部60P1の一端部に形成される円柱大径部60P2と、コイルスプリング16の他端に向かい合う本体部60Aの端部に形成される突起状のばねガイド部60D1と、本体部60Aと先細部60P1の基部との間に形成される張出部60Fと、を主な要素として構成されている。
略D字形の横断面を有する本体部60Aは、その中心軸線から所定距離、離隔した位置に平坦面60FSを有している。平坦面60FSは、その中心軸線に沿って端から端まで延びている。これにより、上述の拡大部28Mとコイルスプリング16が配されるニードル部材収容部28Dの内周部とを連通させる連通路が、ガイドチューブ28におけるニードル部材収容部28Dの内周部と向かい合う本体部60Aの平坦面60FSとの間に形成されることとなる。
先細部60P1の最小径部は、円柱大径部60P2の連結部の直径と同一に設定されている。所定のテーパ角度を有する円錐台状の先細部60P1は、円柱大径部60P2の端面がストッパ部材22の端面に当接されるとき、弁ポート28Pの直径よりも大なる直径を有する基部を弁ポート28Pから所定距離、離隔した位置に有している。先細部60P1における最小径部には、一様な直径を有する所定の長さの円柱部を有する円柱大径部60P2が連なって形成されている。円柱大径部60P2の端面の直径は、先細部60P1の最小径部よりも大に設定されている。先細部60P1における弁ポート28Pの開口端部に対応する位置から上述の円柱大径部60P2の端面までの長さは、所定の長さに設定されている。
円柱大径部60P2の端面がストッパ部材22の平坦な端面に当接されるとき、ニードル部材60の先細部60P1の外周部における弁ポート28Pの開口端部に対応する位置において、先細部60P1の外周部が、弁ポート28Pの開口端部の周縁に対し所定の隙間を形成するように配置されている。その際、ニードル部材60の先細部60P1と弁ポート28Pの開口端部との間には、後述する絞り部が形成される。チューブ本体10内の冷媒の圧力が所定値以下の場合、円柱大径部60P2の端面は、コイルスプリング16の付勢力と一次側配管Du1からの冷媒の圧力との差に応じた所定の圧力でストッパ部材22の平坦面に当接されている。
このような弁ポート28Pの開口端部の周縁に対して形成される所定の隙間の量により、絞り部を通過する所定のブリード量が設定されることとなる。また、ニードル部材60の円柱大径部60P2は、ストッパ部材22の平坦面に当接されているのでニードル部材60に二次側からの不所望な圧力が作用しニードル部材60の先細部60P1が弁座28Vの弁ポート28Pの開口端に食い付くことが回避される。
ニードル部材60における張出部60Fは、円板形の輪郭を形成するように略環状に形成されている。張出部60Fの直径は、本体部60Aの直径よりも若干小に設定されている。これにより、万一、溶出物がニードル部材収容部28Dの内周部の端部に付着した場合であっても、張出部60Fの機能が阻害される虞がない。また、張出部60Fは、本体部60Aの端部から所定距離、離隔した位置に軸部を介して形成されている。張出部60Fは、弁ポート28Pに向き合う下端に面取部60FCを有している。
ニードル部材60の円柱大径部60P2が、ストッパ部材22の平坦面に対し最大離隔した位置にあるとき、張出部60Fの位置は、その下端が連通孔28cの周縁に近接し向き合うように設定されている。
なお、斯かる実施例においても、上述の実施例において説明した同様な作用効果を奏する。
なお、上述の例においては、張出部60Fは、弁ポート28Pに向き合う下端に面取部60FCを有しているが、必ずしもこのようになされる必要がなく、例えば、冷媒をより円滑に連通孔に導くような凹状の形状が張出部60Fの下端に形成されてもよい。