JP2017008425A - 吸水性ポリエステル巻糸体及びその製造方法 - Google Patents

吸水性ポリエステル巻糸体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸水加工を施さない場合においても半永久的に吸水し、且つアルカリに対する耐性のない素材や、撥水加工を施した糸等を交編することができる吸水性ポリエステル繊維の巻糸体の提供。【解決手段】S元素を0.005〜1wt%含有し、繰り返し単位の95モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステル繊維の巻糸体であって、該ポリエステル繊維の表面に末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が存在し、かつ、該ポリエステル繊維の、JIS L0217 103 C法による洗濯30回後のJIS L1907 滴下法による吸水性が5秒以下である、吸水性ポリエステル巻糸体。【選択図】なし

Description

本発明は、吸水性ポリエステル繊維の巻糸体及びその製法に関する。より詳細には、本発明は、吸水加工を施さずに半永久的に吸水性を有し、吸水性に優れる為、着用時の汗をすばやく吸い取ることができ、快適性に優れ、さらに、柔らかく、肌触りも良いために、インナーウエア、スポーツウエア、寝具等に好適に用いることができる吸水性ポリエステル繊維の巻糸体に関する。
ポリエステルやポリアミド繊維などの合成繊維は、汎用素材としてインナーウエア、スポーツウエア等に使用されている。しかしながら、これらの合成繊維は、疎水性繊維であるため、特に肌周りの商品に使用する際には吸水加工が必要であり、洗濯を繰り返すと吸水性が低下するという問題点がある。特に、ユニフォームなどで使用される工業洗濯といわれる高温での洗濯では吸水加工剤の脱落が顕著であり、洗濯耐久性向上が求められている。
ポリエステルの吸水性を改善する方法として種々の検討が進められている。
例えば、以下の特許文献1には、ポリエステル繊維にアルカリ加工を施した後、親水剤を含む処理液で処理することにより、吸水性を有するポリエステル繊維織編物を製造することが記載されている。しかしながら、通常のポリエステルにアルカリ加工及び親水加工したものでは、洗濯繰返しにより性能が低下するため、洗濯耐久性のある吸水性を付与することはできていない。
また、以下の特許文献2には、S元素を0.005〜0.5wt%含有するポリエステル繊維を含んだ布帛を、また、特許文献3には、エステル形成性スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%で含有するポリエステル繊維を含んだ布帛を、それぞれ、アルカリ処理することにより、洗濯耐久性のある吸水性を付与することが記載されている。しかしながら、アルカリに対する耐性のない素材を混用した布帛ではアルカリ処理ができず、撥水加工を施した糸を混用した場合、撥水性が低下してしまうという問題点がある。
特開2005−200799号公報 特開2014−101598号公報 特開2014−101599号公報
本発明が解決しようとする課題は、吸水加工を施さない場合においても半永久的に吸水し、且つアルカリに対する耐性のない素材や、撥水加工を施した糸等を交編することができる吸水性ポリエステル繊維の巻糸体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、特定のポリエステル繊維に特定の方法でアルカリ処理することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]S元素を0.005〜1wt%含有し、繰り返し単位の95モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステル繊維の巻糸体であって、該ポリエステル繊維の表面に末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が存在し、かつ、該ポリエステル繊維の、JIS L0217 103 C法による洗濯30回後のJIS L1907 滴下法による吸水性が5秒以下である、吸水性ポリエステル巻糸体。
[2]前記ポリエステル繊維の巻量が、0.5〜4kgである、前記[1]に記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
[3]前記ポリエステル繊維の巻密度が、0.1以上1.2g/cm未満である、前記[1]又は[2]に記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
[4]前記ポリエステル繊維が、仮撚糸である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
[5]前記ポリエステル繊維が、ニットループ形状の捲縮を有さない、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
[6]前記S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維に、該ポリエステル繊維に対する減量率0.6〜9%でアルカリ減量を施す工程を含む、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の吸水性ポリエステル巻糸体の製造方法。
本発明の吸水性ポリエステル巻糸体は、吸水加工を施さない場合においても半永久的に吸水し、着用時の汗をすばやく吸い取ることができ、快適性に優れ、柔らかく肌触りがよいため、インナーウエア、スポーツウエア等に好適に利用可能である。
LC/MS測定におけるUVクロマトグラム(240nm)である。 図1のUVクロマトグラムの特徴ピーク推定構造を示す図である。 MALDI-TOF/MSスペクトル;正イオン(全体)図である。 MALDI-TOF/MSスペクトル;正イオン(m/z500-1500)図である。 MALDI-TOF/MSスペクトル;正イオン(m/z1500-2500)図である。 検出された正イオンピークの帰属を説明する図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の巻糸体を構成するポリエステル繊維は、表面に末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が存在することを特徴としている。表面に末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が存在することで吸水性の繰り返し洗濯耐久性が発現するものである。ここで、末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分は、例えば、以下の式(1):
Figure 2017008425
で表されるn=3〜10程度のものであることができる。
このような末端カルボン酸直鎖オリゴマー成分が存在するポリエステル繊維の巻糸体は、優れた吸水性能を有する。
該オリゴマー成分は、以下に記す、2種の分析手法の組み合わせによって定性、定量することによってその存在を確認することができる。
かかる末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分のうち、比較的低分子のオリゴマー成分はTHFに溶解し、LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)で分析することができる。その代表的成分をn=4とすると、繊維表面に存在するn=4のオリゴマー成分は、以下の方法で測定することができる。
20mL容量のガラスサンプル瓶(AS ONE ラボランパック スクリュー管瓶 9−852−07 NO.5)中に、試料として巻糸体から取り出したポリエステル糸100mgを入れ、THF3mlを添加する。ヤマト マグミキサー 形式M−41を用いて回転数約800回/分で6時間撹拌した後、4日間静置し、THF溶液のLC/MSを行うことで試料から抽出した成分の分析を行う。THF溶液のサンプリングに際し、固形分が入らないようにして0.495mlの溶液を採取し、内部標準として、Methyl Benzoate 1mg/ml溶液を0.005ml添加し試料とした。LC/MS分析の条件を以下の表1に示す。
Figure 2017008425
図1に、該THF溶液のUVクロマトグラム(240nm)のチャート例を示す。図1において、前記末端カルボン酸直鎖オリゴマー成分、及び後述する環状オリゴマー成分のピークが多数検出されている。図1におけるピークxがn=3の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分(分子量786.24)由来ピークである。これは、そのピークのESI−質量スペクトル(エレクトロスプレーイオン化、負イオン質量スペクトル)において、質量数(m/z)785のイオン([M−H]−)が検出されることにより推定される。他のピークについても同様に、ESI−質量スペクトルによって検出されるイオンの質量数から、そのピークが由来するところの成分を推定することができる。
UVクロマトグラムにおいて、前記オリゴマー由来のピークが明確でない場合には、質量数785のマスクロマトグラム(縦軸:特定質量数の検出強度、横軸:保持時間)を表示させ、UVスペクトル例から推定される保持時間(図1では約4.5min.)付近に該質量数の検出強度ピーク(ピークzとする)が存在するか否かで、該オリゴマーが存在するか否かを判断できる。
n=3の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーの量は、UVクロマトグラムのピーク面積値で測定でき、内部標準として添加したMethyl BenzoateのUVクロマトグラムのピーク(ピークcとする)のピーク面積値との比率から濃度換算することができる。内部標準物質ピークcの位置は、該ピークのESI−質量スペクトルにおいて当該質量数のイオンが検出されることにより推定される。UVクロマトグラムにおいてピークxが他のピークと重なるなどして明確でない場合には、前述の質量数785のマスクロマトグラムピークzの面積を使い、ピークxとピークzの両方が明確に検出される別のサンプルを同じ条件で測定してxとzの強度比を求めておくことで、着目試料のピークzの面積をピークxの面積に換算できる。こうして求めた着目試料のピークxの面積を用いて、ピークcとの強度比を計算できる。
本実施形態の巻糸体は、n=4の末端カルボン酸直鎖オリゴマーの量は、内部標準換算濃度2〜15μg/ml相当であることが好ましく、3〜10μg/ml相当であることがより好ましい。
このように末端カルボン酸の直鎖オリゴマーは、吸水性に寄与するが、例えば、以下の式(2):
Figure 2017008425
で表される環状オリゴマーは、吸水性がなく、むしろ吸水性を阻害する。式(2)に示される環状オリゴマーの量についても、比較的低分子の環状オリゴマーについてはTHFに溶解し、LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)で分析することができ、内部標準に対するピーク強度比から、内部標準換算濃度を求めることができる。その代表的成分をn=3とすると、n=3の環状オリゴマーの量は、内部標準換算濃度80μg/mL以下相当であることが好ましく、70μg/mL以下相当であることがより好ましい。
具体的には図1のUVクロマトグラム(240nm)のチャートの例において、ピークbがn=3の環状オリゴマー成分のピークである。このピークが該環状オリゴマー成分(分子量576.18)由来であることは、そのピークのESI−質量スペクトル(エレクトロスプレーイオン化、正イオン質量スペクトル)において、質量数(m/z)594のイオン([M+NH4]+)が検出されることにより確認できる。UVクロマトグラムにおいて、前記オリゴマー由来のピークが明確でない場合には、n=4末端カルボン酸直鎖オリゴマーと同様に、質量数594のマスクロマトグラムを表示させ、UVスペクトル例から推定される保持時間(図1では約5.3min.)付近に該質量数の検出強度ピーク(ピークwとする)が存在するか否かで、該オリゴマーが存在するか否かを判断できる。該オリゴマー成分の存在量は、UVクロマトグラムのピーク面積値で測定でき、内部標準として添加したMethyl BenzoateのUVクロマトグラムのピーク(ピークcとする)のピーク面積値との比率から濃度換算することができる。
末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分のうち、比較的高分子のオリゴマー成分は、THFに溶解しにくいため、上述の方法では検出できない。本実施形態の巻糸体は、前記THFに可溶なオリゴマーを抽出した後にも、巻糸体を構成するポリエステル繊維の表面にTHFで抽出されない比較的高分子の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーを保持していることが好ましい。該末端カルボン酸の直鎖オリゴマーは繊維との接着性が高く、繰り返し洗濯後にも、該オリゴマーは脱落しにくいことから、繰り返し洗濯後の吸水性により大きな効果を発揮していると考えられる。
THF処理で抽出されない比較的高分子のオリゴマーはMALDI―TOF/MS測定で定量することができる。
THFでオリゴマーを抽出した後の試料を風乾したのち、2mgを採取し、20mL容量のガラスサンプル瓶に入れ、1mlのHFIP(ヘキサフロロイソプロパノール)を加え、試料を溶解させる。また、以下に示すマトリックス溶液も調整する。試料溶液20μLを取り、マトリックス溶液20μLを添加する。溶液を採取するガラス毛細管で撹拌、混合後、すぐに析出分が確認される。上層にある析出分ではなく、下層溶液を採取し、下記条件でMALDI―TOF/MS測定を行う。測定に際して、マトリックスの強度が50mV/Profiles以上2000mV/Profiles未満のレーザー強度で測定を行う。
[測定条件]
装置:島津AXIMA CFR plus
レーザー:窒素レーザー(337nm)
検出器形式:リニアモード
イオン検出:正イオン(Positive mode)
:負イオン(Negative mode)
積算回数:500回
マトリックス溶液:CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)10mg/ml H2O+CH3CN
カチオン化剤:NaI 1mg/mlアセトン
スキャンレンジ:m/z 1〜8000
図3〜5に、MALDI―TOF/MS測定における正イオンスペクトル例を示す。図3〜5において、n=4〜10付近の末端カルボン酸直鎖オリゴマーや類似のオリゴマー類由来のピークが検出され、そのうち「■(黒四角)」印をつけたピークが、MSで検出された質量数から推定される、末端カルボン酸直鎖オリゴマーに該当するピークである。
本実施形態においては、式(1)のn=4〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分を有していることが吸水性の耐久性に非常に効果的である。n=4〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分の定量は以下の方法で行う。
n=4〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーのピークは、MALDI−TOF/MSの正イオンスペクトルにおいてNa付加体として検出される。該オリゴマー成分量は、該オリゴマーNa付加体のピーク強度をマトリックスピーク強度で規格化した値で評価できる。すなわち、該オリゴマーNa付加体ピーク高さを、マトリックスであるCHCAのNa付加体ピーク(m/z=212)高さで除した値を成分量の指標とし、n=4〜n=10のそれぞれのオリゴマーNa付加体ピーク高さをCHCAのNa付加体ピークの高さで除し、それらの総和で評価する。この値が0.07以上であるのが好ましく、0.10以上がさらに好ましい。総和値が0.5を超えると分解が進みすぎているため、好ましくない。
特に、n=8〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分は耐久吸水性への寄与が非常に大きい。その代表例をn=8とすると、n=8の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分の、内部標準に対するピーク強度比は、n=8のオリゴマーNa付加体ピーク高さ(図5におけるピークD)をCHCAのNa付加体ピークの高さで除した値で求めることができ、0.005〜0.1であることが好ましく、0.008〜0.08であることがより好ましい。
本実施形態の巻糸体は、THF可溶及び不溶の、n=3〜10の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーが存在していることにより、吸水効果が発揮される。オリゴマーを存在させる方法は特に限定されず、末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分を布帛に塗布等の方法で付与したり、エステルポリマーに混合させてもよいが、特定のポリエステル繊維においては、特定のアルカリ処理を施すことによって、繊維表面付近に付与することができ、好ましい。
本実施形態の巻糸体は、S元素(硫黄元素)を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維を含むことを特徴とする。S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維の例としては、例えば、エステル形成性スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%含有するポリエステル繊維が挙げられる。
ポリエステル繊維に0.5〜5モル%含有させるエステル形成性スルホン酸塩化合物の例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−ナトリウムスルホ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、2,6−ジカルボン酸ナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、2,6−ジカルボン酸ナフタレン−4−スルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩等又はこれらのメチル、ジメチルエステル等のエステル誘導体が挙げられる。これらのメチル、ジメチルエステル等のエステル誘導体はポリマーの白度、重合速度が優れる点で好ましく用いられる。ポリエステル繊維に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸等金属スルホネート基含有イソフタル酸成分を含有させることが好ましく、中でも5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルは特に好ましい。
また、S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維の例として、エステル非形成性スルホン酸塩化合物を含有するポリエステル繊維も挙げられる。エステル非形成性スルホン酸塩化合物とはスルホン酸塩化合物がポリエステルと直接エステル化反応し、重縮合してポリエステルを形成することなく、スルホン酸塩化合物を含有しているポリエステル繊維であり、スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%練り込んだマスターチップと通常のエチレンテレフタレート成分が95モル%以上のポリエステルチップを混合する方法で得られるポリエステル繊維や重合時に直接、スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%を添加して得られるポリエステル繊維などが挙げられる。
エステル非形成性スルホン酸塩化合物の例としては、例えば、アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩又はアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩の例としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩の例としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。加工安定性の観点からドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
ポリエステル繊維の総繊度は約8〜約167デシテックス(dtex)が好ましく、約22〜約110dtexがより好ましい。単糸繊度も特に限定されないが、約0.5〜約2.5dtexが、肌触りや風合いの観点から、好ましい。
ポリエステル繊維には、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、フェームドシリカ等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
ポリエステル繊維は仮撚糸であることが好ましい。仮撚糸の捲縮は、捲縮伸長率が30〜150%であることが好ましい。尚、仮撚糸の捲縮伸長率は、下記条件にて測定したものである。
捲縮糸の上端を固定し、下端に1.77×10-3cN/dtexの荷重をかけ、30秒後の長さ(A)を測定する。次いで、1.77×10-3cN/dtexの荷重を取り外し、0.088cN/dtexの荷重をかけ、30秒後の長さ(B)を測定し、下記式(1)により捲縮伸長率を求める:
捲縮伸長率(%)={(B−A)/A}×100 ...(1)
本実施形態の巻糸体は、巻糸体の状態でアルカリ処理することで好適に得られる。また、アルカリ処理はチーズ染色機を使って行うことができる。
チーズ染色機でのアルカリ処理の場合、捲縮のない糸をチーズ染色用のチューブに巻きつけた場合、巻崩れが発生しやすく、また、熱収縮によって巻締りが発生することで液通り性が悪くなり減量率に斑が発生してしまう恐れがあり好ましくない。
本実施形態の巻糸体を構成するポリエステル繊維は、JIS L0217 103 C法による洗濯30回後の吸水性(JIS L1907 滴下法)が5秒以下である。洗濯30回後の吸水性は3秒以下が好ましく、2秒以下がより好ましく、1秒以下がさらに好ましい。同法による洗濯1回後の吸水性も5秒以下であることが好ましく、3秒以下がより好ましく、2秒以下が更に好ましく、1秒以下が特に好ましい。本実施形態の巻糸体を構成するポリエステル繊維は、該洗濯回数50回、100回後も吸水性を保持することができ、50回、100回後も吸水性が5秒以下となるのがさらに好ましい。洗濯時の洗剤は中性洗剤、弱アルカリ性洗剤等通常の洗剤が好適に用いられる。
また、本実施形態の巻糸体を構成するポリエステル繊維は、工業洗濯時にも吸水効果を持続する効果に優れる。工業洗濯とは作業着、ユニフォームなどの洗濯に適用されている、家庭洗濯よりも厳しい条件での洗濯で、例えば、JIS L1096 8.39.5 b) 2.2.2)F−2中温ワッシャー法に規定されている方法が挙げられ、通常、洗剤成分の他、過酸化水素や珪酸ソーダなどの助剤が添加される。本実施形態の布帛は、JIS L1096 F−2による60℃30分の洗濯30回後の吸水性も5秒以下であることが好ましい。
本実施形態の巻糸体において、特定のアルカリ処理により特定のオリゴマーを付与する場合には、S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維の表面には、100μmの表面内に(又は当たり)長さ0.5〜5μmのピットが0.1〜30個形成されていることが好ましく、より好ましくは0.2〜2個である。ピットとは繊維表面に存在する微細な窪みであり、アルカリ処理によって形成される。通常のアルカリ処理ではピットが多く形成され、連通して長さが5μmを超える筋状の溝となることがあるが、本実施形態では、長さが5μmを超える筋状の溝は少ないことが好ましい。ここで、100μmの表面内のピットの個数とは、当該繊維の任意の10μm×10μmの表面を50か所、電子顕微鏡を用いて1000倍程度に拡大してピットの個数を計測した平均値である。同様に、同表面における長さ5μmを超える筋状の溝数を計測したときに、溝の平均個数が1個以下であることが好ましく、より好ましくは0.1個以下である。ここで長さとは1つのピットの最大長さを言う。本実施形態のポリエステル繊維の表面には非常に小さいピットが形成されていることにより耐久的な吸水性に寄与しているものと推定される。
長さ0.5μm以下のピットは、吸水効果が乏しく、長さ5μmを超える筋状の溝が存在することは過剰にアルカリ処理が進み、分解が進みすぎたことを意味するため、好ましくない。また、長さ0.5〜5μmのピットが30個を超える場合も、過剰にアルカリ処理が進んだことを意味し、好ましくない。本実施形態では、アルカリ減量を行っても長さが5μmを超える筋状の溝や連通孔などの発生が無いことから強度の低下率が小さい。さらにピットの形状は、タテ/ヨコが1.0〜2.5が好ましく、1.0〜2.0がより好ましい。ここで、タテは最大長さをいい、ヨコはタテの方向と直交する方向での最大長さをいう。尚、ピットの計測は試料の汚れによる計測ミスを防ぐため、試料を十分水洗してから実施する。JIS法で洗濯を1回以上行い、20分以上水洗するのが好ましい。
吸水性を発現させるために、アルカリ処理の条件としてはポリエステル繊維の減量率を好ましくは0.6〜9%、より好ましくは1〜8%、さらに好ましくは1.5〜7%にすることが好ましい。減量率はアルカリ処理前後のポリエステル糸の重量から算出できる。減量率が0.6%未満の場合にはアルカリ処理による吸水性が発現しないためこのましくなく、減量率が9%より大きいとアルカリ減量が進みすぎるため、吸水性の耐久性に劣るため好ましくない。
エステル形成性スルホン酸塩化合物を0.5〜5モル%含有するポリエステル繊維は、通常のポリエステル繊維に比べアルカリ減量の速度が速いため、アルカリを低濃度に調整し、処理することが好ましい。
S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維に特定のアルカリ処理を行うことで、吸水効果が得られ、洗濯を繰り返してもその効果がほとんど変わらない糸条となる。S元素の含有量が0.005wt%未満ではアルカリ処理後の吸水性の耐久効果が小さく、また、ポリエステル繊維中にS元素を1wt%以上含む場合には繊維の強度が低下し、紡糸が困難となる。ポリエステル繊維中のS元素は0.01〜0.8w%がより好ましく、0.015〜0.7wt%がさらに好ましい。尚、S元素を定量する方法としてはICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いる。
アルカリ処理の方法としてはS元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維を糸の状態で0.6〜9%の減量率になるようにチーズ染色機を用いる方法などでアルカリ処理を施し、該ポリエステル繊維を一部に用いて布帛を形成する方法が好適に用いられる。
チーズ染色機を用いてアルカリ処理を行う場合、チーズ染色用の穴開きチューブにポリエステル繊維を巻きつける必要がある。
この時、S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維の巻量は、0.5〜4kgが好ましく、より好ましくは1〜3.5kg、更に好ましくは2〜3kgである。巻量が0.5kg未満であると生産性に劣り、巻量が4kgを超えるとチーズ染色機でアルカリ処理を行う際の液通りが悪くなり減量率にバラツキが出やすくなるとともに、巻径も大きくなり取扱い性が悪くなる。
S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維の巻密度は0.1超1.2g/cm未満が好ましく、より好ましくは0.2超1.0g/cm未満、更に好ましくは0.3超0.8g/cm未満、特に好ましくは0.4超0.6g/cm未満である。巻密度が0.1g/cm以下であるとチーズ染色機でのアルカリ処理時に巻形態が崩れ、編立時に解舒不良が生じる。また、巻密度が1.2g/cm以上であるとアルカリ処理時の液通り性が悪く均一な処理ができずに吸水性に斑ができる。
また、ニットデニットの手法を用いてS元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維を一旦編地にし、アルカリ処理を施した後、改編し巻糸体とする手法も挙げられるが、該ポリエステル繊維にニットループ形状の捲縮が付与されてしまう。ここで言うニットループとは編地にした際に形成される編目が熱処理によって固定され、編地を改編した際に糸に付与されているループ状のクリンプのことであり、この糸を用いて編地や織物とした際に独特の風合いとなるためあまり好ましくない。
S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維を綛にして噴射式染色機等でアルカリ処理を施した後、ワインダーで巻き返して巻糸体とする手法も挙げられるが、綛揚工程と巻き返し工程で人手が掛かり高コストとなるだけでなく、綛がアルカリ処理液を含むことで自重により仮撚糸の捲縮が伸びてしまうため、好ましくない。
チーズ染色機でのアルカリ処理の場合、内外層斑が発生しやすいため、低濃度での長時間の処理が好ましく、減量率を0.6〜9%にするには、例えば、水酸化ナトリウムを0.1g/L〜10g/Lの濃度で90〜100℃で40分〜100分処理することが好ましく、さらに好ましくは水酸化ナトリウムを5g/L〜10g/Lの濃度で90〜95℃で50分〜80分処理することである。
通常、アルカリ処理の後には酸で中和し、水洗する。水洗の条件としては、例えば、10〜30分間を2回以上行うことが好ましい。2回以上とは一度水を排水し、水を入れ替えることを2回以上行うことを意味する。40℃〜60℃の温水を1回以上使用することがさらに好ましい。尚、中和時の酸には揮発性の酢酸等が好適に用いられる。設備によってはアルカリ溶液を回収もしくは排液し、その後に中和し、水洗を強化してもよい。
本実施形態の巻糸体には染色を施してもよい。先染糸として使用する場合は、チーズ染色機でアルカリ処理後を行った後、そのままチーズ染色を行ってもよい。
本実施形態の巻糸体には風合いを柔らかくするための柔軟剤処理や糸の解舒性、ニットの編成性を向上させるためにオイリング処理を浴中で行ってもよいが、カチオン性の柔軟剤やシリコンオイルなど吸水性を阻害するものを使用することは好ましくない。
また、本実施形態の巻糸体はチーズ染色機でのアルカリ処理を施した後、ワインダーで巻き返して巻糸体としたものでもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。無論、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で得た編地を、以下の方法で評価した。
(1)n=4の末端カルボン酸の直鎖オリゴマーの定量(THF可溶成分)
上述の方法を用いた。
(2)n=8の末端カルボン酸の直鎖オリゴマー)の定量(THF不溶成分)
上述の方法を用いた。
(3)n=3の環状オリゴマーの定量(THF可溶成分)
上述の方法を用いた。
(4)繊維表面のピットの定量
試料をJIS L0217 付表1の103 C法で洗濯を1回行い、20分水洗し、電子顕微鏡を用いて2000倍の表面画像を取得し、上述の方法でピットを計測し、50か所の平均値とした。
(5)吸水性
巻糸体から糸を引き出して筒編地を作成し、得られた筒編地を常法にて精練、乾燥した後、得られた筒編地をJIS L1907 滴下法 の方法を用いて測定を行った。
(6)洗濯処理
巻糸体から糸を引き出して筒編地を作成し、得られた筒編地を常法にて精練、乾燥した後、得られた筒編地をJIS L0217 付表1の103 C法により、洗剤は弱アルカリ性洗剤(商品名花王(株) アタック)を使用して洗濯処理を行った。
(7)工業洗濯試験
巻糸体から糸を引き出して筒編地を作成し、得られた筒編地を常法にて精練、乾燥した後、得られた筒編地を工業洗濯試験を想定し、JIS L1096 8.39.5 b) 2.2.2)F−2中温ワッシャー法の条件で洗浄剤として石鹸0.8%owf、過酸化水素0.8%owf、珪酸ソーダ0.8%owfを使用して洗濯処理を行った。
(8)解舒性
巻糸体を水平に突き出たクリルスタンドにセットし、100m/分で水平方向に糸を解舒する。5分間解舒した際に、糸が巻糸体に引っ掛からずに解舒できた場合に○、糸賀真美糸体に引っ掛かるものの解舒し続けられた場合に△、糸が巻糸体に引っ掛かり糸が切れたり巻糸体がクリルから落ちたりした場合を×と評価した。
(9)染色性
巻糸体から糸を引き出して筒編地を作成し、得られた筒編地を常法にて精練した後、分散染料(住化テック製Sumikaron Blue SE−RPD(N)を濃度1%owfの濃度でミニカラー染色機にて温度130℃で30分間常法にて染色、水洗、乾燥を行った後、筒編地の染色状態を、色ムラが無い場合に○、若干色ムラが見られるが実使用に耐えうる場合に△、色ムラが見られ実使用に耐えない場合に×と評価した。
(10)ニットループの有無
巻糸体から糸を引き出し荷重を掛けない状態で糸の形態を観察した。その際に編地由来のループ状のクリンプが存在するか確認した。
[実施例1]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸を2モル%含有する84dtex/36f丸断面のポリエステル仮撚糸(S元素含有率0.14wt%)をチーズ染色用穴開きチューブに巻密度0.5g/cm巻量3kgで巻き付けた。チーズ染色機を用いて80℃×20分で精練、水洗した後に、水酸化ナトリウム濃度10g/Lで2℃/minの条件で昇温し、95℃で60分間アルカリ処理を施し、中和、水洗した。排水後に、チーズ染色機から取り出し、遠心脱水機にて脱水後、チーズ乾燥機にて乾燥を行い、巻糸体を得た。得られた巻糸体の減量率は6.0%であり、JIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性はそれぞれ1秒未満と2秒であった。また、この巻糸体の解舒性は良好であった。
[実施例2]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸を4.5モル%含有するポリエステルチップと通常のエチレンテレフタレート成分が99モル%以上のポリエステルチップをブレンドし、S元素含有量を0.30wt%に調整したチップを用いた84dtex/36f丸断面のポリエステル仮撚糸をチーズ染色用穴開きチューブに巻密度0.5g/cm巻量3kgで巻き付けた。チーズ染色機を用いて80℃×20分で精練、水洗した後に、水酸化ナトリウム濃度5g/Lで2℃/minの条件で昇温し、95℃で60分間アルカリ処理を施し、中和、水洗した。排水後に、チーズ染色機から取り出し、遠心脱水機にて脱水後、チーズ乾燥機にて乾燥を行い、巻糸体を得た。得られた巻糸体の減量率は7.2%であり、JIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性はそれぞれ1秒未満と2秒であった。また、この巻糸体の解舒性は良好であった。
[実施例3]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸を2モル%含有する84dtex/36f丸断面のポリエステル仮撚糸(S元素含有率0.14wt%)をチーズ染色用穴開きチューブに巻密度1.2g/cm巻量3kgで巻き付け以外は実施例1と同様にして、巻糸体を得た。得られた巻糸体の減量率は6%であり、JIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性はそれぞれ1秒未満と2秒であった。また、この巻糸体の解舒性は巻糸体に糸が引っ掛かるものの解舒し続けた。筒編地での染色性の確認では内外層で色ムラが発生しているものの実使用に耐えうるものであった。
[実施例4]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸を2モル%含有する84dtex/36f丸断面のポリエステル仮撚糸(S元素含有率0.14wt%)を綛揚げ機で綛にし、噴射式染色機を用いて80℃×20分で精練、水洗した後に、水酸化ナトリウム濃度5g/Lで2℃/minの条件で昇温し、95℃で60分間アルカリ処理を施し、中和、水洗した。綛を脱水し、乾燥させた後、コーンワインダーで巻き返し、巻糸体を得た。得られた巻糸体の減量率は7%であり、JIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性はそれぞれ1秒未満と2秒であった。但し、仮撚糸の捲縮が伸びてしまったため編地とした際に膨らみ感に欠けるものとなってしまった。
[実施例5]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸を2モル%含有する84dtex/36f丸断面のポリエステル仮撚糸(S元素含有率0.14wt%)を編地にし、液流染色機を用いて80℃×20分で精練、水洗した後に、水酸化ナトリウム濃度5g/Lで2℃/minの条件で昇温し、95℃で60分間アルカリ処理を施し、中和、水洗した。編地を脱水し、乾燥させた後、改編しコーンワインダーで巻き返し、巻糸体を得た。得られた巻糸体の減量率は7%であり、JIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性はそれぞれ1秒未満と2秒であった。但し、ニットデニット特有のニットループ形状の捲縮を有するため、編地とした際に独特の凹凸感のある風合いとなってしまった。
[実施例6]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸を2モル%含有する84dtex/36f丸断面のポリエステル仮撚糸(S元素含有率0.14wt%)をチーズ染色用穴開きチューブに巻密度0.1g/cm巻量3kgで巻き付け以外は実施例1と同様にして、巻糸体を得た。得られた巻糸体の減量率は6%であり、JIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性はそれぞれ1秒未満と2秒であった。但し、この巻糸体はチーズの形状が崩れ、解舒性は巻糸体に糸が引っ掛かるものの解舒し続けた。
[比較例1]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸を2モル%含有する84dtex/36f丸型断面ポリエステル仮撚糸に代えて、スルホン酸を含有しないレギュラーポリエステルの84dtex/36f丸型断面ポリエステル仮撚糸を用いた以外、実施例1と同様にして、巻糸体を得た。得られた巻糸体の減量率は1.5%であり、末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が検出されず、吸水性は発現していなかった。
[比較例2]
スルホン酸を含有しないレギュラーポリエステルの84dtex/36f丸型断面ポリエステル仮撚糸をチーズ染色用穴開きチューブに巻密度0.5g/cm巻量3kgで巻き付けた。チーズ染色機を用いて80℃×20分で精練、水洗した後に、吸水加工剤として高松油脂製SR−1000を2%owf加え2℃/minの条件で昇温し、95℃で60分間熱水処理を施し、水洗した。排水後に、チーズ染色機から取り出し、遠心脱水機にて脱水後、チーズ乾燥機にて乾燥を行い、巻糸体を得た。得られた巻糸体のJIS L0217 付表1の103 C法とJIS L1096 F−2中温ワッシャー法での洗濯30回後の吸水性はそれぞれ15秒以上と180秒以上であり、工業洗濯での吸水性に劣る結果となった。また、この巻糸体の解舒性は良好であった。
[比較例3]
ナトリウムイソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸(エステル形成性)を2モル%含有する84dtex/36f丸断面のポリエステル仮撚糸をチーズ染色用穴開きチューブに巻密度0.5g/cm巻量3kgで巻き付けた。チーズ染色機を用いて80℃×20分で精練、水洗した後に、水酸化ナトリウムを加えず2℃/minの条件で昇温し、95℃で60分間熱水処理を施し、水洗した。排水後に、チーズ染色機から取り出し、遠心脱水機にて脱水後、チーズ乾燥機にて乾燥を行い、巻糸体を得た。得られた巻糸体からは末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が検出されず、吸水性は発現していなかった。
上記実施例1〜6、及び比較例1〜3で得られたポリエステル巻糸体の製造条件、物性値等を以下の表2に纏める:
Figure 2017008425
本発明に係るポリエステル巻糸体は、吸水加工を施さずに半永久的に吸水性を有し、吸水性に優れる為、着用時の汗をすばやく吸い取ることができ、快適性に優れ、さらに、柔らかく、肌触りも良いために、インナーウエア、スポーツウエア、寝具等に使用する編地や織物に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. S元素を0.005〜1wt%含有し、繰り返し単位の95モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステル繊維の巻糸体であって、該ポリエステル繊維の表面に末端カルボン酸の直鎖オリゴマー成分が存在し、かつ、該ポリエステル繊維の、JIS L0217 103 C法による洗濯30回後のJIS L1907 滴下法による吸水性が5秒以下である、吸水性ポリエステル巻糸体。
  2. 前記ポリエステル繊維の巻量が、0.5〜4kgである、請求項1に記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
  3. 前記ポリエステル繊維の巻密度が、0.1以上1.2g/cm未満である、請求項1又は2に記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
  4. 前記ポリエステル繊維が、仮撚糸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
  5. 前記ポリエステル繊維が、ニットループ形状の捲縮を有さない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸水性ポリエステル巻糸体。
  6. 前記S元素を0.005〜1wt%含有するポリエステル繊維に、該ポリエステル繊維に対する減量率0.6〜9%でアルカリ減量を施す工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸水性ポリエステル巻糸体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018123043A1 (ja) * 2016-12-28 2018-07-05 旭化成株式会社 吸水性ポリエステル繊維の巻糸体及びその製法
WO2019187804A1 (ja) * 2018-03-30 2019-10-03 富士フイルム株式会社 感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、感活性光線性又は感放射線性膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法、並びにポリエステル

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