JP2017004764A - 非水電解質二次電池用正極、その製造方法、及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高けん化度のPVAをPTC機能を有する導電層のバインダとして用いる場合において、該PVAを含む導電層混合液の表面張力を低下させ、導電層の端高現象を抑制できる非水電解質二次電池用正極、その製造方法、及び非水電解質二次電池を提供すること。【解決手段】正極集電体(22)と、正極集電体の表面に設けられる正極合剤層(21)と、正極集電体と正極合剤層との間に介在する導電層(25)と、を備え、導電層は、導電材及びけん化度97.5%以上のポリビニルアルコールを、水及び水より高沸点の高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒に混合した導電層混合液を正極集電体に塗工して形成されること。【選択図】図2
Description
本発明は、非水電解質二次電池用正極、その製造方法、及び非水電解質二次電池に関する。
ノート型コンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ等電子機器の普及に伴い、これら電子機器を駆動するための二次電池の需要が拡大している。近年、これら電子機器においては、高機能化の進展に伴い消費電力が増大していることや、小型化が期待されていることから、二次電池の性能の向上が求められている。二次電池の中でも、例えば非水電解質二次電池は、高容量化・高エネルギー密度化が可能であることから種々の電子機器への利用が進められている。
二次電池の高容量化・高エネルギー密度化が進むと、これに伴って二次電池の安全性の確保が大きな課題となる。例えば二次電池は、誤操作、圧壊、不正使用等により過充電されると発熱し、さらには過熱に至ることがある。かかる過充電時の過熱を防止するために、集電体と活物質層との間に導電層を設け、この導電層が過充電時の過熱により高抵抗化する技術(Positive Temperature Coefficient;PTC)が従来から用いられている。PTC機能を有する導電層は、結晶性熱可塑性樹脂と導電材と結着材とを必須成分としている。この導電層は、二次電池内の温度が結晶性熱可塑性樹脂の融点を超えると、導電層の抵抗が急上昇しあるいは導電層が集電体の表面から剥がれることにより、集電体と活物質層の間の電流が遮断されるよう作動する。
このようなPTCによる安全性向上の技術として、特許文献1には、導電性基材と活物質層との間にPTC機能を有する樹脂層(導電層)を設け、この樹脂層(導電層)はポリオレフィン系エマルション粒子と導電材と架橋剤とを含むペーストから形成されたものが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の技術ではPTC機能を有する樹脂層(導電層)に親水性官能基を持つマレイン酸変性樹脂を用いているため水分吸着が多く、その後の電池保存時にこの水分に起因するガスが発生するという問題があった。
そこで、本発明者等は、PTC機能を有する導電層として、正極集電体に塗工する際の導電層混合液に高けん化度のポリビニルアルコール(PVA)をバインダとして用いることに想到した。高けん化度のPVAは耐熱性に優れ、PTCとして機能する温度に到達するまで十分に正極集電体と活物質層を接着させることができる。また、耐吸水性に優れるため、上記したように電池保存時に水分に起因するガス発生を効果的に抑制することができる。
しかしながら、高けん化度のPVAは表面張力が大きく、正極集電体に塗工することが困難である。そこで、塗工面である正極集電体の表面を表面処理することで、塗工面における該PVAの濡れ性を向上させることができる。しかし、塗工面の表面処理を行うほど、この塗工面に形成された塗膜(PVAの被膜)のひっかき硬度が弱くなることが知られている。つまり過度に表面処理された場合には、塗膜のひっかき硬度を補強するために、該PVAを正極集電体表面に厚く形成させなければならない。かかる場合、導電性の低下が懸念される。
また、高けん化度のPVAを集電体の表面に塗工し乾燥させて導電層を形成すると、表面張力の影響により導電層の端部が中央部に比べて厚くなる端高現象が起こり得る。端高現象が起きると、均一な導電層の形成とはならず、よって高品質な電極を製造することが困難となる。
このような実情に鑑み、本発明は、高けん化度のPVAをPTC機能を有する導電層のバインダとして用いる場合において、該PVAを含む導電層混合液の表面張力を低下させ、導電層の端高現象を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討の結果、正極集電体と、正極集電体の表面に設けられる正極合剤層と、正極集電体と正極合剤層との間に介在する導電層と、を備え、導電層は、導電材及びけん化度97.5%以上のポリビニルアルコールを、水及び水より高沸点の高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒に混合した導電層混合液を正極集電体に塗工して形成される非水電解質二次電池を発明するに至った。
また、本発明者等は、正極集電体と、正極集電体の表面に設けられる正極合剤層と、正極集電体と正極合剤層との間に介在する導電層と、を備える非水電解質二次電池用正極の製造方法であって、導電材及びけん化度97.5%以上のポリビニルアルコールを、水及び水よりも高沸点である高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒に混合した導電層混合液を生成する生成工程と、導電層混合液を正極集電体に塗工し、導電層を正極集電体の表面に形成する導電層形成工程と、少なくとも正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに混合させた正極合剤スラリーを、正極集電体の表面に設けられた導電層に塗工して正極合剤層を形成する正極合剤層形成工程と、を備える発明をするに至った。
本発明における上記構成によれば、高けん化度のPVAを、水及び水よりも高沸点である高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒に混合した導電層混合液を生成している。導電層混合液に高沸点水溶性溶媒を含有させることにより、該PVAの表面張力を低くすることができる。したがって、本発明によれば、表面張力の影響により起こり得る導電層の端高現象を効果的に抑制することができる。
以下、本発明の非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池用正極の製造方法、並びに該正極を用いた非水電解質二次電池における好適な実施形態の一つとして、リチウムイオン二次電池を例にして説明する。ただし、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、他の種類の二次電池にも適用することができる。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
図1に本実施形態で適用される角型のリチウムイオン二次電池1を示す。また、図2に本実施形態の正極を適用した電極群5を示す。本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、本発明の導電層を有する正極(非水電解質二次電池用正極)を用いてなる二次電池(非水電解質二次電池)である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、正極2、負極3、セパレータ4、正極2とセパレータ4と負極3からなる電極群5、非水電解質6、外装体7、正極外部端子24、負極外部端子34、などを有する。
〈正極〉
(正極合剤層)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1の正極2は、正極活物質を含む正極合剤層21と、正極集電体22と、導電層25とを有する。正極合剤層21は、正極活物質と、結着材と、導電材等の材料からなる正極合剤を溶媒に分散させた正極合剤スラリーを正極集電体22に塗布して形成されている。
(正極合剤層)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1の正極2は、正極活物質を含む正極合剤層21と、正極集電体22と、導電層25とを有する。正極合剤層21は、正極活物質と、結着材と、導電材等の材料からなる正極合剤を溶媒に分散させた正極合剤スラリーを正極集電体22に塗布して形成されている。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質の一種又は二種以上を特に限定することなく使用することができる。このような正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物等の、リチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を主成分とする正極活物質が挙げられる。特に、Li1+xMO2(−0.1<x<0.1、M:Co,Ni,Mn,Al,Mg等)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、スピネル構造のリチウムマンガン酸化物、及びLiMPO4(M:Co,Ni,Mn,Fe等)で表されるオリビン型化合物等が、より好ましい例として挙げられる。
正極合剤用の結着材は、正極合剤層21に含まれる材料(正極活物質等)を結着させる。このような結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴムなどを使用できるが、特にこれらに限定されない。
正極合剤用の導電材は、正極2の電気伝導性を確保する。このような導電材としては、黒鉛の微粒子、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック、ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子、ニッケル粉末等の導電性金属粉末などを使用できるが、特にこれらに限定されない。
正極合剤層21は、正極活物質、結着材、及び導電材等からなる正極合剤を正極合剤用の溶媒に分散させた正極合剤スラリーを正極集電体22に塗工して形成される。このような溶媒としては、通常は結着材を溶解する有機溶媒を使用する。例えば、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで正極合剤をスラリー化する場合もある。以上の溶媒のうち、特に有機溶媒が好ましく用いられ、NMPがより望ましい。
(正極集電体)
正極集電体22は、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔などを用いることができるが、これらに限定されない。
正極集電体22は、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔などを用いることができるが、これらに限定されない。
(導電層)
図2に示すように、導電層25は、正極集電体22と正極合剤層21との間に介在し、電池正常時においては導電性を有する。一方、電池異常時では、導電層25は、電池異常時の過熱により高抵抗化し、正極集電体22と正極合剤層21との間の電流を遮断乃至抑制するPTC特性を有する。これにより、本実施形態の非水電解質二次電池用正極2であれば、電池異常時の過熱を効果的に抑制することができる。
図2に示すように、導電層25は、正極集電体22と正極合剤層21との間に介在し、電池正常時においては導電性を有する。一方、電池異常時では、導電層25は、電池異常時の過熱により高抵抗化し、正極集電体22と正極合剤層21との間の電流を遮断乃至抑制するPTC特性を有する。これにより、本実施形態の非水電解質二次電池用正極2であれば、電池異常時の過熱を効果的に抑制することができる。
ここで、PTC特性とは、電池異常時の過熱により温度の上昇に伴って導電層25が徐々に高抵抗化する意味とともに、所定の温度に到達すると導電層25が正極集電体22から剥離し絶縁状態となる意味も含まれる。
導電層25の厚さは、5μm以下であることが望ましく、より好ましくは1μm以下である。導電層25がこの範囲内の厚さであれば、電池正常時においてより効果的に導電性を確保することができる。また、電池異常時の過熱によりPTC特性をより効果的に発揮することができる。
導電層25は、導電材と、結着材と、必要に応じて用いられる分散材とからなる。導電層用の導電材は、導電層25の電気伝導性を確保するものであれば特に限定されるものではなく、上記した正極合剤層21で用いられたものを例示できる。特に、アセチレンブラック等の炭素材料であることが好ましい。
導電層用の結着材は、導電層25に含まれる材料(導電材等)を結着させるとともに、正極集電体22と正極合剤層21とを結着させる機能も有する。本実施形態においては、導電層用の結着材として、けん化度97.5%以上のポリビニルアルコール(PVA)を採用している。そして、より好ましいけん化度は99%である。なお、PVAのけん化度は、JIS−K6726に準じて測定して得られる値である。
PVAは、そのけん化度を97.5%以上とすることで、軟化温度が80℃以上、熱分解温度が約300℃と耐熱性に優れる。したがって、本実施形態の導電層25であれば、通常の電池使用時の発熱によって導電層25が軟化を始めることにより正極集電体22から剥がれることなく、導電性を有する層としての機能を効果的に果たす。そして、過充電時等の電池異常時における過熱により、該PVAが軟化を開始することで正極2が高抵抗化し、あるいは導電層25が正極集電体22から剥がれることにより、正極集電体22と正極合剤層21との間の電流を抑制乃至遮断する。したがって、本実施形態の導電層25は、電池異常時において効果的にPTC特性を発揮することができる。
また、該PVAは、耐吸水性に優れる。これにより、正極2の製造時において、導電層25の水分吸着を効果的に抑制することができる。したがって、本実施形態の導電層25を適用した正極2を用いた非水電解質二次電池1であれば、電池保存時等において、水分に起因するガス発生を効果的に抑制することが可能である。
該PVAの重合度は特に限定されるものではないが、例えば該PVAの重合度の下限値として、300、好ましくは1000、更に好ましくは1500が挙げられる。また該PVAの重合度の上限は、5000、好ましくは3500、更に好ましくは2000が挙げられる。これらの上限及び下限は任意に組み合わせ可能である。上記範囲内の重合度であれば、導電層25の皮膜強度を向上させることができる。なお、PVAの重合度とは、JIS−K6726に準じて測定した平均重合度を意味する。
導電層25は、導電材及び結着材を必須要素として溶媒に分散させた導電層混合液を、正極集電体22に塗工して形成される。このような導電層用の溶媒として、本実施形態では混合溶媒を用いている。混合溶媒は水と、水よりも高沸点である高沸点水溶性溶媒とからなる。
当実施形態では、導電層混合液に含有される結着材としてけん化度97.5%以上のPVAを用いている。該PVAは表面張力が高い。そのため、溶媒を水のみとした場合においては、表面張力の影響により導電層混合液を正極集電体22に塗工し乾燥させて導電層25を形成すると、形成された導電層25は端高現象を起こす。したがって、この端高現象のために高品質な電極を作成することが困難となる。そこで、水と水よりも高沸点な高沸点水溶性溶媒とする混合溶媒を用いることで、導電層混合液を正極集電体22に塗工後、混合溶媒を除去する乾燥時においても該PVAの高い表面張力を低く維持させることができる。
このような高沸点水溶性溶媒としては、沸点が100℃より高く200℃未満であり、水よりも表面張力が低いものが適用される。水より沸点が高く表面張力が低い高沸点水溶性溶媒を混合溶媒として用いることにより、正極集電体22に塗工された導電層混合液の乾燥工程において、水が蒸発した後においても高沸点水溶性溶媒が該PVAの表面張力を低く維持させることができる。これにより、形成後の導電層25に起こり得る端高現象をより効果的に抑制できる。
具体的な高沸点水溶性溶媒として、グリコール系溶媒や、グリコール−エーテル系溶媒であることが例示できる。このうち特に、ジプロピレングリコール、イソプロピレングリコール、及びプロピレングリコールn‐プロピルエーテルの少なくとも一つであることがより望ましい。
導電層混合液には必要に応じて分散材を用いることが望ましい。分散材は、導電層混合液の固形分が沈殿することを抑制する。このような分散材として、特にポリエチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド(PEO/PPO)ブロックコポリマーを用いることが望ましい。PEO/PPOブロックコポリマーは、導電層混合液に混合されている全固形分において2質量%以下含まれていることが望ましく、1質量%以下であることがより好ましい。また、耐熱性を考慮すると、PEO/PPOブロックコポリマーは、EOの質量比率が85%以上のものを用いることが望ましい。
本実施形態のように、導電層25のバインダとして用いられる高けん化度のPVAは、耐N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶解性にも優れる。一般に正極合剤層を形成するために生成される正極合剤スラリーは、NMPが溶媒として用いられている。つまり、正極合剤層21を導電層25の上に塗工するときに、PVAは耐NMP溶解性に優れるため、導電層25が溶解することを抑制できる。
(正極の製造方法)
次に正極2の製造方法について説明する。正極2の製造方法は、導電層25を正極集電体22の表面に形成する導電層形成工程と、正極合剤層21を導電層25の上に形成する正極合剤層形成工程と、を備える。なお、各工程で用いられる材料は、上記した材料を適宜選択して用いることができる。
次に正極2の製造方法について説明する。正極2の製造方法は、導電層25を正極集電体22の表面に形成する導電層形成工程と、正極合剤層21を導電層25の上に形成する正極合剤層形成工程と、を備える。なお、各工程で用いられる材料は、上記した材料を適宜選択して用いることができる。
導電層形成工程では、導電層用の導電材と、結着材であるけん化度97.5%以上のPVAと、必要に応じて混合される分散剤からなる導電層固形分を、水と高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒である導電層溶媒分に混合し、混練して導電層混合液を生成する工程(生成工程)を備える。
生成工程において、導電層混合液における導電層固形分中の導電材は、60〜80質量%であることが望ましく、より好ましくは65〜75質量%である。導電材の割合がこの範囲内であれば、導電層25の導電性をより効果的に向上させることができる。
また、導電層固形分中の結着材であるけん化度97.5%以上のPVAは、20〜40質量%であることが望ましく、より好ましくは25〜35質量%である。結着材の割合がこの範囲内であれば、導電材をより効果的に接着できるとともに正極合剤層21と正極集電体22との接着をより効果的に果たす。
また、導電層混合液に分散材を用いる場合において、導電層混合液における導電層固形分中の分散材は2質量%以下であることが望ましく、より望ましくは1質量%以下である。分散材の割合がこの範囲内であれば、導電層固形分の沈殿をより効果的に抑制することができる。したがって、結着材を均一に分散させることが可能となるため、分散材をこの範囲内で用いることは導電層25の剥離強度を向上させることができると考えられる。
生成工程において、導電層溶媒分中の水は、50〜90質量%であることが望ましく、より好ましくは60〜80質量%である。そして、導電層溶媒分中の高沸点水溶性溶媒は、10〜50質量%であることが望ましく、より好ましくは20〜40質量%である。また、この場合の水と高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒の表面張力は、30〜50mN/mであることが望ましく、より好ましくは30〜45mN/mである。導電層溶媒分中の水と高沸点水溶性溶媒の比率が上記範囲内であり、混合溶媒の表面張力が上記範囲内であることにより、混合溶媒はけん化度97.5%以上のPVAの表面張力を十分に低くすることができる。したがって、正極集電体22における導電層混合液の濡れ性が向上し、また、表面張力の影響による導電層の端高現象をより効果的に抑制することができる。
導電層固形分を導電層溶媒分(混合溶媒)に混合し、混練する混練操作は、特に限定されるものではないが、ミル、超音波ホモジナイザー、フィルミックス(商標)、プラネタリーミキサー、ホモディスパー、クレアミックス(商標)等の適当な混練装置を用いて行うことができる。上記した装置のうち、特にミル、超音波ホモジナイザー、フィルミックス(商標)を用いることは、導電材をより効果的に高分散できるため好ましい。
導電層形成工程では、上記のように生成された導電層混合液を正極集電体22に塗工する工程(塗工工程)を備える。
塗工工程では、導電層混合液の濡れ性を向上させるために、予め正極集電体22の塗工面を表面処理することが望ましい。表面処理の方法は特に限定されるものではないが、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、溶剤による洗浄処理等が例示できる。しかしながら、適度な表面処理により導電層混合液の濡れ性を向上させることができるものの、過度な表面処理は正極集電体22に形成される導電層25のひっかき硬度を弱くさせてしまう問題がある。そこで、正極集電体22における表面処理は、正極集電体22の臨界表面張力が40mN/m以下となるように行うことが望ましい。さらに、正極集電体22の臨界表面張力が40〜30mN/mとなるように表面処理を行うことがより好ましい。
導電層混合液を正極集電体22に塗工する方法は、特に限定されるものではないが、ダイコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、スリットコータ、コンマコータ等の適当な塗工装置を用いることができる。これらのうち、ダイコータ、グラビアコータを用いることが望ましく、特にオフロール式のスロットダイがより好ましく用いられる。
導電層形成工程では、塗工工程後の導電層混合液を乾燥する工程(乾燥工程)を備える。乾燥工程は、従来から用いられている乾燥方法で行うことができ、また、乾燥温度も混合溶媒を除去できる温度を適用できる。乾燥温度としては、110℃〜180℃(例えば120℃)とすること好ましい。
正極合剤層形成工程は、正極合剤層21を上記導電層形成工程で正極集電体22の表面に形成された導電層25の上に形成する工程である。正極合剤層形成工程では、正極活物質と、正極合剤用の結着材及び導電材とからなる正極合剤を、正極合剤層用の溶媒に分散させた正極合剤スラリーを生成する工程(生成工程)と、正極合剤層スラリーを導電層25上に塗工する工程(塗工工程)と、導電層25上に塗工した正極合剤層スラリーを乾燥させる工程(乾燥工程)と、を備える。
正極合剤層形成工程のこれらの工程は、一般的な非水電解質二次電池で用いられている方法を適用することができる。ここで、正極合剤を正極合剤用の溶媒に混合し、混練して生成される正極合剤スラリーの生成工程において、正極合剤における結着材は一般的にPVDFが好ましく用いられている。この場合、正極合剤用の溶媒は、一般的に有機溶媒であるNMPが用いられる。このような正極合剤スラリーを使用する場合には、正極合剤層スラリーを導電層25上に塗工する塗工工程において、導電層25はNMPに溶解しない耐NMP溶解性を有することが望ましい。導電層25が正極合剤スラリーの塗工時に溶解してしまうと、導電層25の均一な形成が困難となり、PTC特性の効果的な作用が損なわれる虞がある。本実施形態においては、導電層25を構成する結着材としてけん化度97.5%以上のPVAを用いている。けん化度97.5%以上のPVAは耐NMP溶解性に優れている。したがって、正極合剤層スラリーの溶媒としてNMPを用いた場合においても、本実施形態の導電層25であれば、NMPに溶解することなく、より効果的なPTC特性の効果を発揮することが可能である。
〈負極〉
負極3は、負極活物質と結着材と必要に応じて用いられる導電材を混合して得られた負極合剤を、負極集電体32の表面に塗工して負極合剤層31が形成される。
負極3は、負極活物質と結着材と必要に応じて用いられる導電材を混合して得られた負極合剤を、負極集電体32の表面に塗工して負極合剤層31が形成される。
負極活物質は、従来の負極活物質を用いることができる。Sn、Si、Sb、Ge、Cの少なくともひとつの元素を含有する負極活物質を挙げることができる。これらの負極活物質のうち、Cは、リチウムイオン二次電池1の電解質イオンを吸蔵・脱離可能な(Li吸蔵能がある)炭素材料であることが好ましく、アモルファスコート天然黒鉛であることがより好ましい。
また、これらの負極活物質のうち、Sn、Sb、Geは、特に、体積変化の多い合金材料である。これらの負極活物質は、Ti−Si、Ag−Sn、Sn−Sb、Ag−Ge、Cu−Sn、Ni−Snなどのように、別の金属と合金をなしていてもよい。
導電材としては、炭素材料、金属粉、導電性ポリマーなどを用いることができる。導電性と安定性の観点から、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラックなどの炭素材料を使用することが好ましい。
結着材としては、PTFE、PVDF、フッ素樹脂共重合体(例えば四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP))、SBR、アクリル系ゴム、フッ素系ゴム、PVA、スチレン・マレイン酸樹脂、ポリアクリル酸塩、カルボキシルメチルセルロース(CMC)などを挙げることができる。溶媒としては、NMPなどの有機溶媒、又は水などを挙げることができる。
負極集電体32としては、従来の集電体を用いることができ、銅、ステンレス、チタンあるいはニッケルなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔、網、パンチドメタル、フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
(負極の製造方法)
負極3の製造方法は、上記した材料を適宜用いて、一般的に行われている非水電解質二次電池の負極の製造方法を適用することができ、特に限定されるものではない。
負極3の製造方法は、上記した材料を適宜用いて、一般的に行われている非水電解質二次電池の負極の製造方法を適用することができ、特に限定されるものではない。
〈非水電解質〉
非水電解質6は、支持塩が有機溶媒に溶解してなるものを用いる。非水電解質6の支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4、及びLiAsF6から選ばれる無機塩、これらの無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF3)3及びLiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、から選ばれる有機塩、並びにこれらの有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが望ましい。これらの支持塩は、電池性能を更に優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においても更に高く維持することができる。支持塩の濃度についても特に限定されるものではなく、用途に応じ、支持塩及び有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
非水電解質6は、支持塩が有機溶媒に溶解してなるものを用いる。非水電解質6の支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4、及びLiAsF6から選ばれる無機塩、これらの無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF3)3及びLiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、から選ばれる有機塩、並びにこれらの有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが望ましい。これらの支持塩は、電池性能を更に優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においても更に高く維持することができる。支持塩の濃度についても特に限定されるものではなく、用途に応じ、支持塩及び有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
支持塩が溶解する有機溶媒(非水溶媒)は、通常の非水電解質に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えばカーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート等及びそれらの混合物が適当である。例に挙げたこれらの有機溶媒のうち、特にカーボネート類、エーテル類からなる群より選ばれた1種以上の非水溶媒を用いることにより、支持塩の溶解性、誘電率及び粘度において優れ、電池の充放電効率が高いので好ましい。本実施形態のリチウムイオン二次電池1において、最も好ましい非水電解質6は、支持塩が有機溶媒に溶解したものである。
〈その他の構成〉
正極2と負極3との間に介在させるセパレータ4は、正極2と負極3とを電気的に絶縁し、非水電解質6を保持する。セパレータ4は、例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いることができる。セパレータ4は、正極合剤層21と負極合剤層31の電気的な絶縁を担保するために、各合剤層21、31同士が接触しないよう合剤層21、31よりも大きな寸法で成形される。
正極2と負極3との間に介在させるセパレータ4は、正極2と負極3とを電気的に絶縁し、非水電解質6を保持する。セパレータ4は、例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いることができる。セパレータ4は、正極合剤層21と負極合剤層31の電気的な絶縁を担保するために、各合剤層21、31同士が接触しないよう合剤層21、31よりも大きな寸法で成形される。
本実施形態においては、図2に示すように正極2と負極3との間にセパレータ4を介在させた積層体を電極群5として用いている。なお電極群5は、この積層体に限定されることなく、積層体を渦巻状に巻回した巻回体として用いてもよい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、ケースとして角型の外装体7を用いている。外装体7は、スチール缶やアルミニウム缶等を使用することができる。なお、外装体7の形状や材質は特に限定されるものではなく、円筒型、コイン型等、種々の形状や、ラミネートフィルム等の材質を用いることもできる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、上記した各部材を用いて一般的に行われている非水電解質二次電池の組立て方法によって組み立てることができ、その一例として、以下のようにして組み立てることができる。電極群5を外装体7に封入するに際して、電極群5の正極集電体22を、正極リード23を介して正極外部端子24と電気的に接続する。また、電極群5の負極集電体32を、負極リード33を介して負極外部端子34と電気的に接続する。その後、外装体7に設けられた注入口(図示せず)より非水電解質6を注入し、外装体7を密封することにより、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は組み立てられる。
[試験例]
以下、試験例を用いて本発明を説明する。本発明を具体的に説明するための試験例として次の実験を行った。すなわち、以下に示す各試験例のように導電層混合液を生成し、この各導電層混合液を正極集電体に塗工し、乾燥させた後の端高高さ及び剥離強度を確認する実験を行った。なお、下記に記載する試験例1〜6は本実施形態に係る実施例であり、試験例7〜10は比較例を示している。
以下、試験例を用いて本発明を説明する。本発明を具体的に説明するための試験例として次の実験を行った。すなわち、以下に示す各試験例のように導電層混合液を生成し、この各導電層混合液を正極集電体に塗工し、乾燥させた後の端高高さ及び剥離強度を確認する実験を行った。なお、下記に記載する試験例1〜6は本実施形態に係る実施例であり、試験例7〜10は比較例を示している。
(試験例1)
試験例1では、導電材としてのカーボンと結着材としてのけん化度97.5%のPVA(重合度1500)と分散材としてのPEO/PPOブロックコポリマーからなる導電層固形分を、水と高沸点水溶性溶媒としてのジプロピレングリコールからなる混合溶媒(導電層溶媒分)に混合し、超音波ホモジナイザーにより混練して導電層混合液を作成した。
試験例1では、導電材としてのカーボンと結着材としてのけん化度97.5%のPVA(重合度1500)と分散材としてのPEO/PPOブロックコポリマーからなる導電層固形分を、水と高沸点水溶性溶媒としてのジプロピレングリコールからなる混合溶媒(導電層溶媒分)に混合し、超音波ホモジナイザーにより混練して導電層混合液を作成した。
ここで、カーボン(導電材)とPVA(結着材)とPEO/PPO(分散材)とからなる導電層固形分において、これらの材料の質量比(質量%)をカーボン:PVA:PEO/PPO=70:29:1とした。また、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてジプロピレングリコールを用い、導電層溶媒分において水とジプロピレングリコールの質量比(質量%)を水:ジプロピレングリコール=63:37とした。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、44mN/mであった。そして、(導電層固形分/導電層固形分+導電層溶媒分)×100(質量%)で表される固形分比率を10質量%となるように、導電層固形分を導電層溶媒分に混合した。
その後、導電層混合液を正極集電体に塗布し、導電層混合液を120℃で加熱乾燥させ、厚さ1μm以下の導電層を持つ正極集電体を得た。
(試験例2)
試験例2では、導電層固形分における材料の質量比をカーボン:PVA:PEO/PPO=70:28:2としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。
試験例2では、導電層固形分における材料の質量比をカーボン:PVA:PEO/PPO=70:28:2としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。
(試験例3)
試験例3では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてプロピレングリコールn−プロピルエーテルを用い、導電層溶媒分において水とプロピレングリコールn−プロピルエーテルの質量比(質量%)を水:プロピレングリコールn−プロピルエーテル=63:37としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、37mN/mであった。
試験例3では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてプロピレングリコールn−プロピルエーテルを用い、導電層溶媒分において水とプロピレングリコールn−プロピルエーテルの質量比(質量%)を水:プロピレングリコールn−プロピルエーテル=63:37としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、37mN/mであった。
(試験例4)
試験例4では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてイソプロピルグリコールを用い、導電層溶媒分において水とイソプロピルグリコールの質量比(質量%)を水:イソプロピルグリコール=63:37としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、34mN/mであった。
試験例4では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてイソプロピルグリコールを用い、導電層溶媒分において水とイソプロピルグリコールの質量比(質量%)を水:イソプロピルグリコール=63:37としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、34mN/mであった。
(試験例5)
試験例5では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてプロピレングリコールn−プロピルエーテルを用い、導電層溶媒分において水とプロピレングリコールn−プロピルエーテルの質量比(質量%)を水:プロピレングリコールn−プロピルエーテル=80:20としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、44mN/mであった。
試験例5では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてプロピレングリコールn−プロピルエーテルを用い、導電層溶媒分において水とプロピレングリコールn−プロピルエーテルの質量比(質量%)を水:プロピレングリコールn−プロピルエーテル=80:20としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、44mN/mであった。
(試験例6)
試験例6では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてプロピレングリコールn−プロピルエーテルを用い、導電層溶媒分において水とプロピレングリコールn−プロピルエーテルの質量比(質量%)を水:プロピレングリコールn−プロピルエーテル=80:20とし、固形分比率を12質量%となるように、導電層固形分を導電層溶媒分に混合したこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、44mN/mであった。
試験例6では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてプロピレングリコールn−プロピルエーテルを用い、導電層溶媒分において水とプロピレングリコールn−プロピルエーテルの質量比(質量%)を水:プロピレングリコールn−プロピルエーテル=80:20とし、固形分比率を12質量%となるように、導電層固形分を導電層溶媒分に混合したこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、44mN/mであった。
(試験例7)
試験例7では、導電層溶媒分を水のみとし、高沸点水溶性溶媒を用いなかったこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このときの水の表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、72mN/mであった。
試験例7では、導電層溶媒分を水のみとし、高沸点水溶性溶媒を用いなかったこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このときの水の表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、72mN/mであった。
(試験例8)
試験例8では、導電層溶媒分を水のみとし高沸点水溶性溶媒を用いず、固形分比率を15質量%となるように、導電層固形分を水に混合したこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このときの水の表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、72mN/mであった。
試験例8では、導電層溶媒分を水のみとし高沸点水溶性溶媒を用いず、固形分比率を15質量%となるように、導電層固形分を水に混合したこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このときの水の表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、72mN/mであった。
(試験例9)
試験例9では、導電層固形分における材料の質量比をカーボン:PVA:PEO/PPO=70:27:3としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。
試験例9では、導電層固形分における材料の質量比をカーボン:PVA:PEO/PPO=70:27:3としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。
(試験例10)
試験例10では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてエタノールを用い、導電層溶媒分において水とエタノールの質量比(質量%)を水:エタノール=63:37としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、36mN/mであった。
試験例10では、混合溶媒の高沸点水溶性溶媒としてエタノールを用い、導電層溶媒分において水とエタノールの質量比(質量%)を水:エタノール=63:37としたこと以外は試験例1と同様にして導電層を持つ正極集電体を得た。このとき混合溶媒のみの表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、36mN/mであった。
得られた試験例1〜10の正極集電体上に設けられた導電層の表面形状(膜厚プロファイル)を、レーザ変位計により、導電層の両端部と中央部の最大厚み差(端高高さ)を測定した。また、各試験例の導電層の剥離強度を、JIS−K6849に規定される丸棒型引張剥離試験に準拠した方法により測定した。結果を表1に示す。なお、端高高さの値が小さい程、端高現象は抑制されていることを示す。また、剥離強度の値が大きい程、正極集電体と導電層との接着性が向上していることを示す。
試験例1〜6は、試験例10と比較して端高高さの値を効果的に小さくすることができた。これは、試験例1〜6のような高沸点水溶性溶媒を用いることにより、PVAの表面張力を低く維持することができ、表面張力の影響を小さくすることができたため導電層の端高現象を抑制できたものと推測できる。
試験例1〜6は、高沸点水溶性溶媒を用いず水のみの導電性溶媒分である試験例7及び8と比較して、剥離強度が向上している。これは、高沸点水溶性溶媒を用いた試験例1〜6は、混合溶媒の表面張力を低くでき、よって正極集電体に対する導電層混合液の濡れ性を改善できたため、導電層の接着性が向上したものと推測される。
試験例5と試験例6は固形分比率が異なる。試験例5の方が試験例6よりも端高高さ及び剥離強度に優れた結果となっている。このことより、固形分比率が小さい方が導電層の端高現象を効果的に抑制でき、剥離強度を向上させることができると推測できる。
試験例1、2、及び9は、導電層固形分における分散材としてのPEO/PPOの含有比率が異なる。試験例1と試験例2の結果を比較すると、試験例2は試験例1よりも剥離強度の値が小さくなっているが、端高高さの値は小さくなっている。また、試験例1及び2と試験例9の結果を比較すると、試験例9は試験例1及び2よりも剥離強度の値が大幅に小さくなっているとともに、端高高さの値も大きくなっている。このことより、分散材の量は導電層固形分に対して3質量%よりも小さくすることが、導電層の端高現象及び剥離強度に対して効果的であることが推測できる。そして、より好ましくは2質量%以下である。
試験例1、3、4は、用いられる高沸点水溶性溶媒の種類が異なり、混合溶媒の表面張力が異なる。試験例1、3、4の結果を比較すると、混合溶媒の表面張力が最も低い試験例4の端高高さが最も優れていた。このことより、混合溶媒の表面張力は、44mN/m以下であれば導電層の端高現象をより効果的に抑制でき、さらに34mN/m以下であることが好ましいことが推測できる。
試験例3と試験例5は、導電層溶媒分に対する高沸点水溶性溶媒の比率が異なり、試験例3の方が試験例5よりも高沸点水溶性溶媒の比率が大きく表面張力が低い。試験例3と試験例5の結果を比較すると、試験例3の方が端高高さの値が小さく、剥離強度の値も大きくなっている。このことより、混合溶媒の表面張力が低くなるような水と高沸点水溶性溶媒の比率であることが導電層の端高現象及び剥離強度に対して効果的であることが推測できる。
以上のとおり、本発明の非水電解質二次電池用正極であれば、PTC特性を有する導電層として、耐吸水性に優れる高けん化度のPVAを用いることができる。これにより、正極製造時に正極が水分を含みその後の電池保存時における該水分に起因したガス発生を効果的に抑制することができる。
また、本発明では、導電層を構成する導電層混合液を生成するにあたり、高けん化度のPVAの溶媒として水と高沸点水溶性溶媒を用いている。この高沸点水溶性溶媒はPVAの表面張力を低くさせる効果を奏する。これにより、表面張力の高い高けん化度のPVAを用いることに起因する導電層の端高現象を効果的に抑制できる。さらに、高沸点水溶性溶媒を用いることにより、導電層混合液の正極集電体に対する濡れ性が改善されるため、導電層の剥離強度の向上にも有利となる。
1:リチウムイオン二次電池(非水電解質二次電池) 2:正極
21:正極合剤層 22:正極集電体 23:正極リード 24:正極外部端子
25:導電層 3:負極 31:負極合剤層 32:負極集電体
33:負極リード 34:負極外部端子 4:セパレータ 5:電極群
6:非水電解質 7:外装体
21:正極合剤層 22:正極集電体 23:正極リード 24:正極外部端子
25:導電層 3:負極 31:負極合剤層 32:負極集電体
33:負極リード 34:負極外部端子 4:セパレータ 5:電極群
6:非水電解質 7:外装体
Claims (8)
- 正極集電体(22)と、
前記正極集電体の表面に設けられる正極合剤層(21)と、
前記正極集電体と前記正極合剤層との間に介在する導電層(25)と、を備え、
前記導電層は、導電材及びけん化度97.5%以上のポリビニルアルコールを、水及び水より高沸点の高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒に混合した導電層混合液を前記正極集電体に塗工して形成される非水電解質二次電池用正極(2)。 - 前記高沸点水溶性溶媒は、グリコール系溶媒及びグリコール‐エーテル系溶媒の少なくとも一方からなる請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 前記高沸点水溶性溶媒は、ジプロピレングリコール、イソプロピレングリコール、及びプロピレングリコールn‐プロピルエーテルの少なくとも一つからなる請求項2に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 前記導電層混合液は、さらにPEO/PPOブロックコポリマーを含み、
前記PEO/PPOブロックコポリマーは、前記導電層混合液に混合されている全固形分において2質量%以下含む請求項1〜3の何れか一項に記載の非水電解質二次電池用正極。 - 前記PEO/PPOブロックコポリマーは、EOの質量比率が85%以上である請求項4に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 前記混合溶媒の表面張力は、44mN/m以下である請求項1〜5の何れか一項に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 正極集電体(22)と、前記正極集電体の表面に設けられる正極合剤層(21)と、前記正極集電体と前記正極合剤層との間に介在する導電層(25)と、を備える非水電解質二次電池用正極(2)の製造方法であって、
導電材及びけん化度97.5%以上のポリビニルアルコールを、水及び水よりも高沸点である高沸点水溶性溶媒からなる混合溶媒に混合した導電層混合液を生成する生成工程と、
前記導電層混合液を前記正極集電体に塗工し、前記導電層を前記正極集電体の表面に形成する導電層形成工程と、
少なくとも正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに混合させた正極合剤スラリーを、前記正極集電体の表面に設けられた前記導電層に塗工して前記正極合剤層を形成する正極合剤層形成工程と、を備える非水電解質二次電池用正極の製造方法。 - 請求項1〜6の何れか一項に記載の非水電解質二次電池用正極を用い、又は請求項7に記載の製造方法によって製造された非水電解質二次電池用正極を用いてなる非水電解質二次電池(1)。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2018181524A (ja) * | 2017-04-07 | 2018-11-15 | トヨタ自動車株式会社 | 積層電池 |
WO2023182554A1 (ko) * | 2022-03-25 | 2023-09-28 | 주식회사 한솔케미칼 | 이차전지용 바인더, 이를 포함하는 슬러리, 전극 및 이차전지 |
-
2015
- 2015-06-10 JP JP2015117592A patent/JP2017004764A/ja active Pending
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