JP2017002215A - ゴム組成物およびその製造方法並びに空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物およびその製造方法並びに空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】近年の環境意識の高まりに伴い、タイヤの転がり抵抗を小さくすることが望まれている。そのため、フィラーの配合量を減らす等の手法が用いられているが、低転がり抵抗性は得られるものの、硬度が低下し、耐久性が悪化するとともに、耐摩滅性も悪化するという問題点がある。
【解決手段】ブタジエンゴムを50質量部未満含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜150m/gのカーボンブラックを60〜90質量部、および2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド(2EBZ)のようなスルフィド化合物を前記カーボンブラックに対して0.1〜20質量%混合して得られるゴム組成物であって、前記スルフィド化合物を混合するときの混合温度が120℃以下であるゴム組成物により、前記課題を解決した。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物およびその製造方法並びに空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、特定のスルフィド化合物を使用してもスコーチおよび加工性を悪化させず、硬度、低転がり抵抗性および耐摩滅性を共に高め得るゴム組成物およびその製造方法並びに空気入りタイヤに関するものである。
タイヤリムクッション用ゴムは、車両の荷重を支え、強い圧縮荷重を受けることからゴム硬度を高くして耐久性を高めることが求められる。また、耐摩滅性等の性質も求められる。
一方、近年の環境意識の高まりに伴い、タイヤの転がり抵抗を小さくすることが望まれている。従来、低転がり抵抗性を得るため、フィラーの配合量を減らす等の手法が用いられているが、低転がり抵抗性は得られるものの、硬度が低下し、耐久性が悪化するとともに、耐摩滅性も悪化するという問題点がある。
したがって、従来技術では、硬度、低転がり抵抗性および耐摩滅性を共に高めることは非常に困難であった。
なお、下記特許文献1には、特定の構造を有するスルフィド化合物を含有するゴム・カーボンブラック用カップリング剤が提案され、該化合物は分子内に芳香族縮合複素環を有することから、カーボンブラック表面のベンゼン環とのπ電子相互作用による結合が形成され、その結果、該化合物を含むゴム組成物をタイヤの原料に用いた場合、良好な転がり抵抗性を有するタイヤが提供されるとの開示がある。
しかしながら、前記スルフィド化合物をゴム組成物に配合すると、スコーチが悪化し、加工性が悪化するという問題点がある。
特開2013−23610号公報
したがって本発明の目的は、前記特許文献1に記載のスルフィド化合物を使用してもスコーチおよび加工性を悪化させず、硬度、低転がり抵抗性および耐摩滅性を共に高め得るゴム組成物およびその製造方法並びに空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有するジエン系ゴムに対し、特定の窒素吸着比表面積(NSA)を有するカーボンブラック、および前記特許文献1に記載された特定のスルフィド化合物を特定量で配合するとともに、該スルフィド化合物を特定温度以下で混合することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.ブタジエンゴムを50質量部未満含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜150m/gのカーボンブラックを60〜90質量部、および下記式(I)で表されるスルフィド化合物を前記カーボンブラックに対して0.1〜20質量%混合して得られるゴム組成物であって、
前記スルフィド化合物を混合するときの混合温度が120℃以下であることを特徴とするゴム組成物。
Figure 2017002215
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
2.加硫系配合物を除く1種または2種以上の配合物をn回にわたり混合する初期混合工程と(ただし、nは1以上の数を表す)、前記初期混合工程後、前記加硫系配合物を配合し混合する最終混合工程とを有し、前記スルフィド化合物を、前記最終混合工程で配合し混合することを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記式(I)で表されるスルフィド化合物において、xが2であることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
4.ブタジエンゴムを50質量部未満含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜150m/gのカーボンブラックを60〜90質量部、および下記式(I)で表されるスルフィド化合物を前記カーボンブラックに対して0.1〜20質量%混合するゴム組成物の製造方法であって、
前記スルフィド化合物を混合するときの混合温度が120℃以下であることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
Figure 2017002215
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
5.加硫系配合物を除く1種または2種以上の配合物をn回にわたり混合する初期混合工程と(ただし、nは1以上の数を表す)、前記初期混合工程後、前記加硫系配合物を配合し混合する最終混合工程とを有し、前記スルフィド化合物を、前記最終混合工程で配合し混合することを特徴とする前記4に記載のゴム組成物の製造方法。
6.前記式(I)で表されるスルフィド化合物において、xが2であることを特徴とする前記4または5に記載のゴム組成物の製造方法。
7.前記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物をリムクッションに用いた空気入りタイヤ。
本発明によれば、特定の組成を有するジエン系ゴムに対し、特定の窒素吸着比表面積(NSA)を有するカーボンブラック、および前記特許文献1に記載された特定のスルフィド化合物を特定量で配合するとともに、該スルフィド化合物を特定温度以下で混合していることから、スコーチおよび加工性を悪化させず、硬度、低転がり抵抗性および耐摩滅性を共に高め得るゴム組成物およびその製造方法並びに空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、ブタジエンゴム(BR)を必須成分とする。BRの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに50質量部未満であることが必要であり、30〜45質量部であることが好ましい。BRの配合量が50質量部以上であると、硬度が低下してしまい、好ましくない。なお、BR以外にも他のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜150m/gであることが必要であり、本発明の効果が向上するという観点から、60〜100m/gであることが好ましく、60〜90m/gであることがさらに好ましい。なお、窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値である。
本発明で使用するカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等が使用可能であるが、タイヤ用途の場合は、ファーネスブラックを好ましく使用することができる。
(スルフィド化合物)
本発明で使用されるスルフィド化合物は、前記特許文献1に開示されている。具体的には、下記式(I)で表される。
Figure 2017002215
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
本発明で使用されるスルフィド化合物は、スルフィド部の両末端に、芳香族縮合複素環がアルキレン基を介して結合した左右対称の構造(ビス体構造)を有している。
当該化合物としては、例えば、
ビス(ベンズイミダゾリル−2)メチルスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルトリスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルテトラスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルトリスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルテトラスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルトリスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
2,2’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ブチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ブチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド
等が挙げられる。なお、これらのスルフィド化合物は、1種または2種以上を組み合わせてもよい。
前記スルフィド化合物は、1,2−ジアミノベンゼン系化合物、2−アミノチオフェノール系化合物または2−アミノフェノール系化合物のいずれかと、チオジカルボン酸系化合物を、4N希塩酸中で反応させることによって、容易に合成することができ、特許文献1にその製造方法が詳細に開示されている。
前記スルフィド化合物において、分子内の芳香族縮合複素環がカーボンブラック表面と相互作用するとともに、分子内のスルフィド結合がゴム混練り時に切断され、生じたラジカルによってゴムとの相互作用がさらに高まる。とくに、前記式(I)で表されるスルフィド化合物において、xが2である場合に該効果が高まり、好ましい。
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜150m/gのカーボンブラックを60〜90質量部、および前記式(I)で表されるスルフィド化合物を前記カーボンブラックに対して0.1〜20質量%配合する。
カーボンブラックの配合量が60質量部未満であると、補強性能が悪化し硬度が低下する。逆に90質量部を超えると加工性および転がり抵抗性が悪化する。
スルフィド化合物の配合量が0.1質量%未満であると、添加量が少なすぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると加工性および耐摩滅性が悪化する。
さらに好ましい前記カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、70〜80質量部である。
さらに好ましい前記スルフィド化合物の配合量は、カーボンブラックに対し、5〜15質量%である。
本発明のゴム組成物は、前記スルフィド化合物を混合するときの混合温度が120℃以下であることを特徴としている。120℃以下での混合により、スルフィド化合物が、カーボンブラックとジエン系ゴムとの架橋を適切に促進しているものと推測される。
スルフィド化合物の混合温度が120℃を超えると、スコーチが悪化し、加工性が悪化する。該混合温度は、90〜110℃が好ましい。
また本発明では、前記スルフィド化合物を混合する時期を特定することにより、本発明の効果をさらに高めることができる。
一般的に、ゴム組成物の調製は、例えば次のような混合工程が組み合わされて行われる。
(1)ジエン系ゴムのみを素練りする素練り工程;
(2)素練りされた、あるいは素練りされていないジエン系ゴムに、加硫系配合物を除く各種配合物を加え、混合するNP(non-processing)工程(このNP工程は分割されて複数回行われることもある);および
(3)NP工程後のゴムに加硫系配合物を加え、混合する最終混合工程。
本発明において、前記(1)および/または(2)の工程は、「加硫系配合物を除く1種または2種以上の配合物をn回にわたり混合する初期混合工程(ただし、nは1以上の数を表す)」と呼称する。
前記のように、スルフィド化合物は、混合温度が120℃以下であれば、上記の各工程において添加し、混合することができるが、本発明では、スルフィド化合物を上記の(3)最終混合工程で添加するのが好ましい。一般的に、上記の(1)素練り工程および(2)NP工程は、140℃以上の温度で行われ、120℃以下の温度でスルフィド化合物を混合するには、各工程において一旦配合物を冷却する必要がある。これに対し、最終混合工程は概ね120℃以下で行われるものであるので、スルフィド化合物を添加するに際し、前記冷却等の手間がかからず、製造コストの上昇を避けることができる。
なお、本発明でいう加硫系配合物とは、硫黄のような加硫剤や加硫促進剤を意味する。加硫促進剤としては、従来から公知のものがいずれも使用可能であり、例えば、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、等が挙げられ、中でも好ましくはスルフェンアミド系促進剤である。
また本発明では、ジエン系ゴムとスルフィド化合物とを含むマスターバッチを予め調製し、得られたマスターバッチを最終混合工程で配合し混合することがさらに好ましい。この形態によれば、最終混合工程でスルフィド化合物がゴム組成物中に均一に分散するとともに、スコーチや転がり抵抗性に優れるという点で有利である。この場合、マスターバッチ中のスルフィド化合物の割合は、例えば20〜50質量%である。
さらに本発明では、ジエン系ゴムとスルフィド化合物と加硫系配合物とを含むマスターバッチを予め調製し、得られたマスターバッチを最終混合工程で配合し混合することがさらに好ましい。この形態によれば、スルフィド化合物の分散性、スコーチおよび転がり抵抗性が一層優れる。この場合、マスターバッチ中のスルフィド化合物の割合は、例えば20〜30質量%であり、加硫系配合物の割合は、例えば20〜30質量%である。なおこの形態において加硫系配合物は、硫黄のみでもよいし、硫黄および加硫促進剤の両方をマスターバッチ化してもよい。
本発明において、スルフィド化合物の混合時間としては、例えば1分〜5分であり、混合装置は初期混合工程や最終混合工程で従来から使用されている公知の装置を用いればよい。
本発明のゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また本発明のゴム組成物は、スコーチおよび加工性を悪化させず、硬度、低転がり抵抗性および耐摩滅性を共に高め得ることから、タイヤ用途、とくにタイヤリムクッション用ゴム組成物として使用するのが好ましい。また本発明のゴム組成物は、従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
標準例1
表1に示す配合(質量部)において、加硫系配合物を除く配合物を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーに入れ、混合時の最高温度が160℃となるように5分間混練した(初期混合工程)。続いて、加硫系配合物を加え、オープンロールで混合時の最高温度が110℃となるように、2分混合した(最終混合工程)。得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法でゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。なお、本例ではスルフィド化合物は配合していない。
比較例1〜2
標準例1において、スルフィド化合物として2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド(2EBZ)を用い、これを最終混合工程で添加するとともに、カーボンブラックの量または種類を表1のように変更したこと以外は、標準例1を繰り返した。結果を表1に示す。
比較例3
2EBZを初期混合工程で表1に示す配合量でもって配合し混合したこと以外は、標準例1を繰り返した。結果を表1に示す。
実施例1〜4
比較例1において、スルフィド化合物として2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド(2EBZ)を用い、最終混合工程で表1に示す配合量でもって配合し混合したこと以外は、標準例1を繰り返した。結果を表1に示す。
実施例5
実施例2において、スルフィド化合物として2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド(4EBZ)を用いたこと以外は実施例2を繰り返した。結果を表1に示す。
比較例4
実施例1において、スルフィド化合物の配合量を表1に示す配合量に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
スコーチ:ゴム組成物に対し、JIS K6300に準拠して、温度125℃にて粘度が5ムーニー単位上昇する時間を測定した。標準例1の値を100として指数表示した。値が大きいほうがスコーチに優れることを意味する。
シート切れ:ゴム組成物を押出機により押出し、その押出物の単位長さあたりのエッジ部の切れ(亀裂)の数と大きさを調べ、4段階に分類して評価した。
◎ 優れている、○ やや優れている、△ やや劣っている、× 劣っている
硬度(20℃):JIS K6253に準拠して20℃にて測定した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど硬度が高いことを示す。
tanδ(60℃):(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が小さいほど低転がり抵抗性であることを示す。
耐摩滅性:加硫したゴム組成物をタイヤリムクッションに装着し、舗装した一般車道を50000km走行した後、走行前後の比較からリムクッションに発生した摩滅量を測定した。結果は、標準例1の値の100として指数表示した。指数が大きいほど耐摩滅性に優れることを意味する。
結果を表1に併せて示す。
Figure 2017002215
*1:NR(TSR20)
*2:BR(日本ゼオン(株)製NIPOL BR 1220)
*3:カーボンブラック−1(キャボットジャパン社製ショウブラックN330T、窒素吸着比表面積(NSA)=70m/g)
*4:カーボンブラック−2(新日化カーボン社製HTC SL、窒素吸着比表面積(NSA)=26m/g)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*6:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*7:2EBZ(四国化成工業(株)製2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド)
*8:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*9:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*10:4EBZ(四国化成工業(株)製2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド)
上記の表1から明らかなように、実施例1〜5で調製されたゴム組成物は、特定の組成を有するジエン系ゴムに対し、特定の窒素吸着比表面積(NSA)を有するカーボンブラック、および特定のスルフィド化合物を特定量で配合するとともに、該スルフィド化合物を120℃以下で混合して調製されたものであるので、従来の代表的な標準例1に比べ、スコーチおよび加工性が改善され、また、硬度、転がり抵抗性および耐摩滅性がすべて良化している。
比較例1は、カーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、スコーチ、加工性、転がり抵抗性が悪化した。
比較例2は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する下限未満であるので、硬度および耐摩滅性が悪化した。
比較例3は、特定のスルフィド化合物を混合するときの混合温度が120℃を超えているので、スコーチ、加工性が悪化した。
比較例4は、特定のスルフィド化合物の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、加工性、耐摩滅性が悪化した。

Claims (7)

  1. ブタジエンゴムを50質量部未満含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜150m/gのカーボンブラックを60〜90質量部、および下記式(I)で表されるスルフィド化合物を前記カーボンブラックに対して0.1〜20質量%混合して得られるゴム組成物であって、
    前記スルフィド化合物を混合するときの混合温度が120℃以下であることを特徴とするゴム組成物。
    Figure 2017002215
    (式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
  2. 加硫系配合物を除く1種または2種以上の配合物をn回にわたり混合する初期混合工程と(ただし、nは1以上の数を表す)、前記初期混合工程後、前記加硫系配合物を配合し混合する最終混合工程とを有し、前記スルフィド化合物を、前記最終混合工程で配合し混合することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記式(I)で表されるスルフィド化合物において、xが2であることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. ブタジエンゴムを50質量部未満含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜150m/gのカーボンブラックを60〜90質量部、および下記式(I)で表されるスルフィド化合物を前記カーボンブラックに対して0.1〜20質量%混合するゴム組成物の製造方法であって、
    前記スルフィド化合物を混合するときの混合温度が120℃以下であることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
    Figure 2017002215
    (式中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。Aは、O、S、NH、またはNRを表わす。Rは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基もしくはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基もしくはアルケニル基を表わす。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
  5. 加硫系配合物を除く1種または2種以上の配合物をn回にわたり混合する初期混合工程と(ただし、nは1以上の数を表す)、前記初期混合工程後、前記加硫系配合物を配合し混合する最終混合工程とを有し、前記スルフィド化合物を、前記最終混合工程で配合し混合することを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物の製造方法。
  6. 前記式(I)で表されるスルフィド化合物において、xが2であることを特徴とする請求項4または5に記載のゴム組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物をリムクッションに用いた空気入りタイヤ。
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