JP2016521996A - ファージベースの細菌検出アッセイ - Google Patents

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Abstract

標的細菌を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、試料を、一組の標的細菌に感染可能かつマーカーをコードする異種核酸配列を含むファージに曝すことを含む。いくつかの実施形態では、標的細菌は、リステリア(Listeria)を含む。いくつかの実施形態では、標的細菌は全てリステリアである。また、マーカーをコードする異種核酸配列を含む組換えリステリアファージを、かかるファージのうちとりわけ有用な組み合わせとして、そしてかかるファージを含む製品としても提供する。

Description

本出願は、2013年6月19日に出願された米国仮特許出願第61/837,152号、2013年7月9日に出願された米国仮特許出願第61/844,399号、2013年9月18日に出願された米国仮特許出願第61/879,640号、2013年9月30日に出願された米国仮特許出願第61/884,931号、2013年9月30日に出願された米国仮特許出願第61/884,935号、および2013年9月30日に出願された米国仮特許出願第61/884,946号の優先権を主張する。上記出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
細菌による汚染や感染は、公衆衛生や他の多くの分野において重大な問題である。細菌で汚染された食品が媒介する疾患は、ヒトの健康に重大な脅威を与え、毎年米国では約7600万人の病気、325000人の入院、5000人の死亡を引き起こすと推定されている。
例えば、1996年には、大腸菌で汚染されたジュースが、ジュースメーカーによって公衆に販売された結果、1人が死亡し、66人が病気になった。同社は150万ドルの罰金を支払い、かつリコールのみで650万ドルを要した。2006年には、カリフォルニア産の汚染ホウレンソウから大腸菌O157:H7が大流行(outbreak)し、205人が病気になり3人が死亡した。2011年には、7月にコロラド州産のマスクメロンからリステリア症が大流行し、8月と9月に30人が死亡した。これは、アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)が1970年代に大流行の追跡を開始して以来、死亡者数の点で、米国で二番目に最悪の記録を有する大流行である。2012年にリステリア症による別のリコール事件があり、食糧の供給が未だ安全ではないことが示され、食料を検査して汚染を同定する更なる方法および試薬に対する一般的かつ普遍的な必要性がハイライトされている。
別の例としては、細菌細胞による感染症であるウシ乳房炎が挙げられる。これは、ウシ乳房の炎症、乳量の減少や乳質の低下を引き起こす。この状態は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびB群溶血性レンサ球菌(Staphylococcus agalactiae)によって引き起こされる。乳量の減少や乳質の低下は、西欧諸国のみでも、年間37億ドルの経済的損失を引き起こすと示唆されている。
別の例としては、牛結核(マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis))が挙げられる。この細菌により、世界的な経済的損失が引き起こされている。例えば、2005年には、ミシガン州の小農場で牛結核検査をしたところ、牛55頭の群れのうち12頭が陽性であった。この農場は、これらの牛の群れ全体のみならず、豚の群れ全体も処分しなくてはならなかった。牛結核検査は、動物にとって2日間要するうえに、5%の確率で偽陽性となる。多くの場合、群れ全体を、隔離または処分する必要がある。世界中における経済的損失は一年あたり3億ドルと推定されている。
結核は、世界における主な死因である。世界の人口の三分の一は、結核を引き起こす細菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染している。毎日25,000人が新たに感染し、5000人が結核により死亡している。また、主に劣悪な診断に起因して、結核菌の多剤耐性株が出現し、結核が再出現して世界的な流行(epidemic)となり、実際、脅威となっている。結核の診断市場は、世界中で一年あたり1.8億ドルと推定されている。
MRSAは、一般的な黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の薬剤耐性バージョンであり、米国では250万人が保有している。MRSA菌の性質のため、保有者は健康な個体のまま非常に高い伝染性を有することもある。この細菌は非常に伝染性が高く、接触により拡大する。全感染の約86%は、病院内で発生し、感染の約20%は死亡する。この細菌は、毎年米国では標準的な治療に平均21,000ドルのコストがかかり、約19,000人を死に至らしめる。
リステリア・モノサイトゲネスは、ヒトおよび動物に侵襲的な疾患を引き起こし得る細胞内病原体である。ヒトリステリア感染の約99%は、食品によるものであるようだ。リステリア菌は、様々な生鮮食品および即席食品(ready-to-eat foods;RTE foods)から単離されるが、ヒトリステリア感染のほとんどは、RTE食品の摂取によって起こるようだ。というのは、RTE食品では、病原体が汚染してからも増殖できるからである。リステリア症は、米国では年間約500人が死亡する要因であり、年間死亡者の28%は食品が媒介する病原体によると推定されており、これは、サルモネラ感染症による死亡に次いで2番目に多い。
微生物による汚染を検出するための方法およびシステムが存在する。このような方法およびシステムには、ほとんどの場合、採取環境から汚染の可能性のある試料を採取し、実験環境に移して、数時間〜数日という範囲の長期間をかけて試料を富化し増殖させるための培養環境に置く必要があるなどの多くの欠点がある。さらに、これらの実験機関は、現場以外のことが多いので、多くの場合、実験機関へ試料を送付するのが遅れる。富化後、試料は、典型的には、高価な機器、従来からの培養法、PCRその他の方法を用いて分析される。よって、現在のプロセスは、多くの場合、試料の採取から結果を得るまでの間の時間差が大きく、その間に試料が採取された条件が変更されかねなく、アッセイの結果が、例えば、患者の感染診断、または、多くの加工食品の汚染対策に使用できない。従って、微生物による汚染を検出するための新規な組成物および方法が必要である。本発明は、これらの必要性に対処するものである。
本発明は、少なくとも1種の標的微生物に感染可能な少なくとも1種の組換えファージを含む組成物に関する。前記標的微生物は、環境試料から得られうる。前記組換えファージは、マーカーをコードする異種核酸配列を含む。前記組成物は、前記少なくとも1種の組換えファージが前記少なくとも1種の標的微生物内で増殖するのに適する少なくとも1つの水溶液を更に含む。
前記水溶液は、少なくとも1つの栄養剤;前記環境試料において少なくとも1つの非標的微生物の成長を阻害するのに適する少なくとも1つの選択剤;少なくとも1つのビタミン;少なくとも1つの二価金属;前記組成物をpH 7.0〜7.5に維持可能な少なくとも1つの緩衝剤;前記環境試料内に存在する殺菌剤を中和するのに適する少なくとも1つの薬剤;およびルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤:を含む。
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の組換えファージは、LP48::ffluc、LP99::ffluc、LP101::ffluc、LP124::ffluc、LP125::ffluc、LP143::ffluc、A511::ffluc、P100::ffluc、LP40::nluc、LP124::nluc、LP125::nluc、A511::nluc、またはP100::nlucより選択される。
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の組換えファージは、前記組成物中に1×106〜1×1011 pfu/mlの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の組換えファージは、前記組成物中に1×107〜1×108 pfu/mlの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の組換えファージは、前記組成物中に1.5×107 pfu/mlの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、前記組成物は、3種の組換えファージを含み、各組換えファージが前記組成物中に1.5×107 pfu/mlの濃度で存在する。
いくつかの実施形態では、前記水溶液中の少なくとも1つの栄養剤は、ブレインハートインフュージョン培地を含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの選択剤は、LiCl、アクリフラビン、ナリジクス酸、およびシクロヘキシミドからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記水溶液中の少なくとも1つのビタミンは、酵母エキスを含む。いくつかの実施形態では、前記水溶液中の少なくとも1つの二価金属は、CaCl2を含む。いくつかの実施形態では、前記水溶液中の少なくとも1つの緩衝剤は、HEPES緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、前記水溶液中の少なくとも1つの中和剤は、非イオン性界面活性剤(detergents)、脱酸素剤および乳化剤からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記水溶液中の少なくとも1つの中和剤またはルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤は、チオ硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、HEPESおよびレシチンからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、前記水溶液は、1×ブレインハートインフュージョン培地;0.5%LiCl;0.002%ナリジクス酸;0.2%酵母エキス;2mM CaCl2、40mM HEPES、pH 7.4;1mMメタ重亜硫酸ナトリウム;0.1%チオ硫酸ナトリウム;0.5%ポリソルベート80;および0.1%レシチンを含む。
いくつかの実施形態では、前記水溶液は、1/2×(半濃度)ブレインハートインフュージョン培地、5%重量/体積グルコース、1%体積/体積グリセロール、1%重量/体積LiCl、および0.002%重量/体積ナリジクス酸を含む。
いくつかの実施形態では、前記異種核酸配列によりコードされるマーカーは、ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、前記ルシフェラーゼは、配列番号2に対して少なくとも70%同一である。いくつかの実施形態では、前記ルシフェラーゼは、配列番号4に対して少なくとも70%同一である。いくつかの実施形態では、前記ルシフェラーゼは、配列番号2または配列番号4より選択されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記マーカーは、親和性タグを更に含む。いくつかの実施形態では、前記親和性タグは、HISタグである。
いくつかの実施形態では、前記標的微生物は、サルモネラ属(Salmonella)、大腸菌群(coliform bacteria)、エシェリキア属(Escherichia)、赤痢菌属(Shigella)、リステリア属(Listeria)、クロストリジウム属(Clostridium)、ビブリオ属(Vibrio)、腸内細菌科(Entero bacteriacae)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、バチルス属(Bacillus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、レンサ球菌属(Streptococcus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、およびエルシニア属(Yersinia)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記標的微生物は、大腸菌(E. coli)である。いくつかの実施形態では、前記標的微生物は、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア・ゼーリゲリ(Listeria seeligeri)、リステリア・イバノヴィ(Listeria ivanovii)、リステリア・グレイ(Listeria grayi)、リステリア・マルティ(Listeria marthii)、リステリア・ロコルティ(Listeria rocourti)、リステリア・ウェルシメリ(Listeria welshimeri)、リステリア・フロリデンシス(Listeria floridensis)、リステリア・アクアティック(Listeria aquatic)、リステリア・コルネレンシス(Listeria cornellensis)、リステリア・リパリア(Listeria riparia)、およびリステリア・グランデンシス(Listeria grandensis)からなる群より選択されるリステリアである。
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1種の標的微生物に感染可能な少なくとも1種の組換えファージを含むキットを含み得る。前記標的微生物は、環境試料から得られうる。前記組換えファージは、マーカーをコードする異種核酸配列を含む。前記組成物は、前記少なくとも1種の組換えファージが前記少なくとも1種の標的微生物内で増殖するのに適する少なくとも1つの水溶液を更に含む。前記キットは、以下を含む水溶液を更に含む:少なくとも1つの栄養剤;前記環境試料において少なくとも1つの非標的微生物の成長を阻害するのに適する少なくとも1つの選択剤;少なくとも1つのビタミン;少なくとも1つの二価金属;前記組成物をpH 7.0〜7.5に維持可能な少なくとも1つの緩衝剤;前記環境試料内に存在する殺菌剤を中和するのに適する少なくとも1つの薬剤;およびルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤。前記キットは、前記少なくとも1種の標的微生物による接着を支持可能な固体基質も含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、環境試料における標的微生物の存在または不存在を決定する方法を含む。前記方法は、環境試料を採取する工程;前記環境試料を、環境試料から得られる少なくとも1種の標的微生物に感染可能な少なくとも1種の組換えファージであって、マーカーをコードする異種核酸配列を含む前記組換えファージに接触させる工程;前記組換えファージが前記環境試料に関連して存在する前記標的微生物に感染するのに十分で、かつ前記標的微生物が前記異種核酸配列によりコードされる前記マーカーを産生するのに十分な条件を、前記ファージに暴した環境試料に提供する工程;および、前記ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する工程:を含む。本方法において、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから前記標的微生物の存在または不存在を検出するまでの時間は、1分〜6時間である。
いくつかの実施形態では、本方法で使用する前記少なくとも1種の組換えファージは、LP48::ffluc、LP99::ffluc、LP101::ffluc、LP124::ffluc、LP125::ffluc、LP143::ffluc、A511::ffluc、P100::ffluc、LP40::nluc、LP124::nluc、LP125::nluc、A511::nluc,またはP100::nlucより選択される。
いくつかの実施形態では、前記組換えファージが前記環境試料に関連して存在する前記標的微生物に感染するのに十分な条件を、前記ファージに暴した環境試料に提供する工程は、前記少なくとも1種の組換えファージが前記少なくとも1種の標的微生物内で増殖するのに適する少なくとも1つの水溶液に、前記ファージに暴した環境試料を曝すことを含む。該水溶液は、少なくとも1つの栄養剤;前記環境試料において少なくとも1つの非標的微生物の成長を阻害するのに適する少なくとも1つの選択剤;少なくとも1つのビタミン;少なくとも1つの二価金属;前記組成物をpH 7.0〜7.5に維持可能な少なくとも1つの緩衝剤;前記環境試料内に存在する殺菌剤を中和するのに適する少なくとも1つの薬剤;およびルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤を含む。
いくつかの実施形態では、前記環境試料を組換えファージに接触させてから標的微生物の存在または不存在を検出するまでの時間は、4時間以下である。いくつかの実施形態では、前記環境試料を組換えファージに接触させてから標的微生物の存在または不存在を検出するまでの時間は、1時間以下である。
いくつかの実施形態では、前記ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから30分後において、100個の標的微生物細胞数という検出の下限値を有する。いくつかの実施形態では、前記ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから60分後において、10個の標的微生物細胞数という検出の下限値を有する。いくつかの実施形態では、前記ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから180分後において、1個の標的微生物細胞数という検出の下限値を含む。
いくつかの実施形態では、本方法の精度は、環境試料に対し少なくとも90%であり、該方法は、代謝的に活性な標的微生物を含む対照試料では、約60分以内に検出されるのが約10個以下の細胞数という検出の下限値を有する。いくつかの実施形態では、本方法の特異性は、少なくとも90%である。いくつかの実施形態では、本方法の感度は、少なくとも80%である。
本明細書において定義しない限り、本開示に関連して使用される科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。また、文脈によって要求される場合を除き、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数を含む。本明細書に記載される、生化学、酵素学、分子細胞生物学、微生物学、遺伝学、タンパク質核酸化学、およびハイブリダイゼーションに関連して使用される名称および技術は、概して当技術分野でよく知られており一般的に使用されている。本明細書に引用される特定の参考文献その他の文書は、参照により本明細書に援用される。加えて、本明細書に引用される全てのGenbankその他の配列データベースの記録は、参照により本明細書に援用される。矛盾する場合、定義を含め本明細書に準拠する。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
本開示の方法および技術は、特に断らない限り、一般に、当技術分野において周知で、本明細書中で引用・説明される種々の一般的および具体的な参考文献に記載される従来方法に従って行う。例えば、参照により本明細書に援用される以下の文献を参照のこと:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992, and Supplements to 2002); Taylor and Drickamer, Introduction to Glycobiology, Oxford Univ. Press (2003); Worthington Enzyme Manual, Worthington Biochemical Corp., Freehold, N.J.; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol I, CRC Press (1976); Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol II, CRC Press (1976); Essentials of Glycobiology, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)。ファージに適用可能な多くの分子生物学的遺伝学的技術は、Clokie et al., Bacteriophages: Methods and Protocols, Vols. 1 and 2 (Methods in Molecular Biology, Vols. 501 and 502), Humana Press, New York, N.Y. (2009)に記載される。
本開示は、インターネット上で公開されている特定のアミノ酸および核酸配列についての配列データベースエントリ(例えば、UniProt/SwissProtまたはGENBANKの記録)、ならびに他のインターネット上の情報について言及する。当業者は、随時更新される配列データベースエントリを含むインターネット上の情報を理解し、例えば、特定の配列を参照するのに使用される参照番号が変更し得ることを理解している。配列情報や他のインターネット上の情報の公開データベースを参照する場合、変更する可能性があり、インターネット上の情報の特定の実施形態が錯綜し得ることが理解される。当業者は、インターネット上で検索することにより、同等の情報を見つけることができるので、インターネットウェブページアドレスや配列データベースエントリを言及することで、該当する情報が利用可能で、公衆に閲覧可能であることを証明する。
本願の組換えファージ、組成物、方法、および他の実施形態を開示して説明する前に本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的であり、限定する意図ではないことを理解すべきである。文脈が明確に指示しない限り、明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数の対象も含むことに留意すべきである。
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」または「含む(containing)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、列挙されていない追加的部分、要素、または方法工程を除外しない。
本明細書で使用される用語「インビトロ」は、生体(例えば、動物、植物、または微生物)内ではなく、人工的な環境、例えば、試験管または反応容器において、細胞培養物において、ペトリ皿において、等で起こる事象を指す。
本明細書で使用される用語「インビボ」は、生体(例えば、動物、植物、または微生物)内で起こる事象を指す。それにもかかわらず、少なくとも一部が微生物内のインビボで起こるアッセイは、該アッセイの他の部分が、例えば、培養物中の該微生物の外部で起こる場合等、インビトロで起こることもある。
本明細書で使用される「単離された」という用語は、以下のような物質または実体物を指す:(1)(天然内か実験的設定かによらず)最初に生成したときに結合していた成分の少なくとも一部から分離された物質または実体物;および/または(2)人の手によって生産、調製、および/または製造された物質または実体物。単離された物質および/または実体物は、最初に結合していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれ以上から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。本明細書で使用される場合、他の成分を実質的に含まない場合、物質は「純粋」である。
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、短いポリペプチド、例えば、典型的には約50個未満のアミノ酸、より典型的には約30個未満のアミノ酸を含むものを指す。本明細書で使用される用語は、構造、つまり生物学的機能、を模倣する類似体および模倣体をも包含する。
用語「ポリペプチド」は、天然に存在するタンパク質および天然に存在しないタンパク質、ならびにそれらの断片、変異体、誘導体、および類似体を包含する。ポリペプチドは、それぞれが1つまたは複数の異なる活性を有する多数の異なるドメインを含み得る。誤解を避けるために、「ポリペプチド」は、任意の長さの大きな2つのアミノ酸であってもよい。
用語「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」は、その発生源または誘導源により、(1)天然の状態において伴っていた天然関連成分が結合していないタンパク質またはポリペプチド、(2)他の細胞材料の存在に関し天然では見られない純度とみなすことができる純度で存在する(例えば、同じ種由来の他のタンパク質を含まない)タンパク質またはポリペプチド、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるタンパク質またはポリペプチド、あるいは、(4)天然には存在しない(例えば、天然で見出されるポリペプチドの断片であるか、天然で見られないアミノ酸類似体もしくは誘導体、または標準的なペプチド結合以外の結合体を含む)タンパク質またはポリペプチド、のことである。したがって、化学的に合成されるか、あるいは、天然由来の細胞とは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、その天然関連成分から「単離された」ということである。また、ポリペプチドまたはタンパク質は、当該分野で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって天然関連成分を実質的に含まないようにすることもできる。このように定義するように、「単離された」は、必ずしもそのように記載されるタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはオリゴペプチドが、それが合成された細胞から物理的に除去されていることを必要としない。
本明細書で使用される用語「ポリペプチド断片」は、欠失を有する、例えば、天然に存在するタンパク質等の完全長ポリペプチドに比べアミノ末端および/またはカルボキシ末端が欠失しているポリペプチドを指す。一実施形態では、ポリペプチド断片は、その断片のアミノ酸配列が、天然に存在する配列における対応する位置と同一である連続配列である。断片は、典型的には、例えば、少なくとも5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸長、または少なくとも12、14、16、または18個のアミノ酸長、または少なくとも20個のアミノ酸長、または少なくとも25、30、35、40、または45個のアミノ酸長、または少なくとも50または60個のアミノ酸長、または少なくとも70個のアミノ酸長である。
用語「融合タンパク質」は、異種アミノ酸配列に結合したポリペプチドまたは断片を含むポリペプチドを指す。融合タンパク質は、2つ以上の異なるタンパク質に由来し得る2つ以上の所望の機能的エレメントを含むように構築できるので、有用である。融合タンパク質は、目的のポリペプチドより少なくとも10個の連続するアミノ酸、あるいは少なくとも20または30個のアミノ酸、または少なくとも40、50、または60個のアミノ酸、または少なくとも75、100、または125個のアミノ酸を含む。融合タンパク質内に含まれる異種ポリペプチドは、通常、長さが少なくとも6個のアミノ酸、または長さが少なくとも8個のアミノ酸、または長さが少なくとも15、20、または25個のアミノ酸である。例えば、IgG Fc領域のような大きなポリペプチド、さらには例えば、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)発色団含有タンパク質のようなタンパク質全体、を含む融合物は、特に有用である。融合タンパク質は、ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸配列を、異なるタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列と共にインフレームで構築し、融合タンパクを発現するようにして組換え的に生成できる。あるいは、融合タンパク質は、ポリペプチドまたはその断片を別のタンパク質へ架橋することによって化学的に生成できる。
本明細書で使用される「組換え体」は、(1)遺伝子が天然に見られるポリヌクレオチドの全部又は一部に関連しない、(2)天然に存在しない連結の仕方でポリヌクレオチドに作動的に連結された、または(3)天然には存在しない、生体分子、例えば、遺伝子またはタンパク質を指す。好ましくは、「組換え体」は、天然に存在しない生体分子を指す。用語「組換え」は、クローニングされたDNA単離物、化学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、または異種系より生物学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、ならびにそのような核酸によりコードされたタンパク質および/またはmRNAを指すのに使用される。よって、例えば、微生物により合成されたタンパク質は、例えば、その細胞内で組換え遺伝子から合成されたmRNAより合成された場合、組換え体である。ファージは、組換え生体分子を含む場合、「組換え体」である。好ましくは、ファージは、天然に存在しない組換え生体分子を含む場合、「組換え体」である。よって、限定されない一例として、ファージは、そのファージのゲノムが組換え核酸配列をを含む場合、組換え体である。
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」、「核酸」、または「核酸配列」は、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNAまたは合成DNA)およびRNA分子(例えば、mRNAまたは合成RNA)、ならびに非天然クレオチド類似体、非天然ヌクレオシド間結合体、または両方を含むDNAまたはRNAの類似体を含む。核酸は、任意のトポロジー構造であり得る。例えば、核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四本鎖、部分的に二本鎖、分岐、ヘアピン状、円状、または南京錠状の構造であり得る。
「合成」RNA、DNA、または混合ポリマーは、細胞の外部で作成したもの、例えば化学的に合成したものである。
本明細書で使用される用語「核酸断片」は、欠失を有する、例えば、完全長参照ヌクレオチド配列に比べ5’末端または3'末端が欠失している核酸配列を指す。一実施形態では、核酸断片は、その断片のヌクレオチド配列が、天然に存在する配列における対応位置と同一である連続配列である。いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも10、15、20、または25ヌクレオチド長、または少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、核酸配列の断片は、オープンリーディングフレーム配列の断片である。いくつかの実施形態では、このような断片は、オープンリーディングフレームのヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質のポリペプチド断片をコードする(本願に記載)。
本明細書で使用される「発現制御配列」は、ポリヌクレオチド配列であって、それらが作動可能に連結されたコード配列の発現に作用するのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、転写、転写後の事象、および核酸配列の翻訳を制御する配列である。発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルといった効率的なRNAプロセシングシグナル;mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質の安定性を高める配列;および、タンパク質分泌を増強する配列;を含む。そのような制御配列の性質は宿主生物によって異なる。原核生物では、そのような制御配列は一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、その存在が発現に必須である最小限の成分を包含する意図であり、また、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列など、その存在が有利である追加の成分を包含することもある。
本明細書で使用される「作動的に連結された(operatively linked)」または「作動可能に連結された(operably linked)」発現制御配列とは、対象の遺伝子を制御するように当該対象の遺伝子と連続している発現制御配列、および、対象の遺伝子を制御するように当該対象の遺伝子とトランスにまたは一定の距離をもって作用する発現制御配列を指す。
本明細書で使用される「バクテリオファージ」は、細菌に感染するウイルスを指す。同様に、「古細菌ファージ」は、古細菌に感染するウイルスを指す。用語「ファージ」は、両方のタイプのウイルスを指すのに使用されるが、文脈によって示される特定の例では、特にバクテリオファージまたは古細菌ファージを指す略語として使用してもよい。バクテリオファージおよび古細菌ファージは、宿主の生合成機構の一部または全部を利用して内部で細菌/古細菌を増殖させる偏性細胞内寄生体(すなわち、細菌/古細菌に感染するウイルス)である。異なるバクテリオファージと古細菌ファージは異なる材料を含んでもよいが、それら全ては、核酸およびタンパク質を含み、特定の状況下で脂質膜に封入され得る。核酸は、ファージにより、DNAまたはRNAのいずれか、典型的には両方ではなく片方であるが、様々な形態で存在し得る。
本明細書で使用される「異種核酸配列」は、通常で起こらないゲノム中の位置に配置される任意の配列である。異種核酸配列は、特に細菌/古細菌および/またはファージに天然に発生しない配列を含むこともあり、あるいは細菌/古細菌および/またはファージに天然に発生する配列のみを含むがゲノム内で通常起こらないゲノム中の位置に配置されることもある。いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、天然ファージ配列ではない。いくつかの実施形態では、天然ファージ配列であるが異なるファージ由来である。更に別の実施形態では、出発ファージのゲノム中に天然に存在する配列であるが、天然では起こらない異なる部位に移動した配列であり、これにより当該新たな部位が異種配列となる。
「出発ファージ」または「出発ファージゲノム」は、遺伝子操作により改変されていない天然または人工環境、またはそのようなファージのゲノムから単離されたファージである。
「組換えファージ」または「組換えファージゲノム」は、ファージまたはファージのゲノム内へ、異種核酸配列を挿入することにより遺伝的に改変されたゲノムを含むファージである。いくつかの実施形態では、出発ファージのゲノムが、ゲノム内の特定の部位へ異種核酸配列を導入する組換えDNA技術によって改変される。いくつかの実施形態では、異種配列によって、内在していたファージゲノムのヌクレオチド該当部位が損失しない。換言すれば、塩基N1およびN2が出発ファージゲノム内で隣接している場合、異種配列がN1およびN2の間に挿入される。よって、得られる組換えゲノムにおける該異種配列は、ヌクレオチドN1とN2とに隣接する。いくつかの場合、異種配列の挿入により、内在していたヌクレオチドは、除去されるかまたは外来配列に置換される。例えば、いくつかの実施形態では、除去された内在配列の一部または全部の代わりに外来配列が挿入される。いくつかの実施形態では、内在配列が、外来配列の挿入部位から離れたファージゲノム内の位置から除去される。
「コード配列」または「オープンリーディングフレーム」は、ポリペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列である。コード配列の末端は、開始コドンおよび終止コドンである。
本明細書で使用される「ファージゲノム」は、天然に存在するファージゲノムおよびその誘導体を含む。一般的に(必須ではないが)、誘導体は、親と同じ宿主に感染する能力を有する。いくつかの実施形態では、天然に存在するファージゲノムと誘導体ファージゲノムの唯一の違いは、ゲノムが線状の場合、ファージゲノムの少なくとも一端部から少なくとも一つのヌクレオチドが欠失または付加することであり、あるいはゲノムが円状の場合、ゲノムの少なくとも一点である。
本明細書で使用される「ファージ宿主細胞」は、特定の種類のファージゲノムDNAからファージを形成することができる細胞である。いくつかの実施形態では、ファージゲノムDNAは、ファージが細胞に感染することにより細胞へ導入される。つまり、ファージは、宿主細胞の外側にある受容体分子に結合し、宿主細胞にそのゲノムDNAを注入する。いくつかの実施形態では、ファージゲノムDNAは、形質転換、または任意の他の適切な技術を用いて細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ファージゲノムDNAは、細胞に導入されるとき、実質的に純粋である。いくつかの実施形態では、ファージゲノムDNAは、細胞に導入されるとき、ベクター内に存在する。一の非限定的な例示的実施形態では、ファージゲノムDNAは、形質転換または同等の技術によって、ファージの宿主細胞に導入された酵母人工染色体(YAC)内に存在する。その後ファージゲノムDNAをコピーして、ファージの宿主細胞の溶菌後、ファージ粒子内部にパッケージングする。「ファージ宿主細胞」の定義は、必ずファージを別のものに移すことができるこということである。例えば、サルモネラ・エンテリカではなく大腸菌が特定の型のファージの宿主細胞であってもよく、大腸菌ではなくサルモネラ・エンテリカが別の特定の型のファージの宿主細胞であってもよい。
本明細書で使用される「コンピテントファージ宿主細胞」とは、ファージ粒子が感染官費で、該細胞内部でファージゲノムが該細胞由来のファージ粒子の産生を誘導可能なファージの宿主細胞のことである。したがって、すべての「ファージ宿主細胞」が「コンピテントファージ宿主細胞」ではないが、すべての「コンピテントファージ宿主細胞」が「ファージ宿主細胞」である。
本明細書で使用される「標的微生物」とは、検出アッセイで検出するように設計された微生物の集合のことである。アッセイの「標的微生物」とは、アッセイにおいて使用される組換えファージのコンピテントファージ宿主細胞の集合のことである。いくつかの実施形態では、アッセイの標的微生物は、単一の種の微生物である。いくつかの実施形態では、アッセイの標的微生物は、単一の亜種の微生物である。いくつかの実施形態では、アッセイの標的微生物は、単一の株の微生物である。いくつかの実施形態では、標的微生物は、単一の属、種、亜種、または菌株の微生物から成るかまたはこれらを含む。いくつかの実施形態では、標的微生物は、少なくとも1つの属、および/または少なくとも1つの種、および/または少なくとも1つの亜種、および/または少なくとも1つの菌株の微生物から成るかまたはこれらを含む。いくつかの実施形態では、アッセイの標的微生物は、単一の分類群の既知のメンバーの全部または一部を含むが、他の分類群のメンバーの全部を含まない。よって、例えば、アッセイの標的微生物は、第一属のメンバーの全部と第二属のメンバーの亜集合であってもよい。別の実施形態では、アッセイの標的微生物は、属全体またはさらに大きな群といった、多様な群である。いくつかの実施形態では、アッセイの標的微生物は、一般的に受け入れられている分類学的な分類に対応しない。例えば、アッセイの標的微生物は、細菌の属の種の集合であってもよく、その集合は、その属の既知の株の全部を含まなくてもよい。あるいはまたは加えて、アッセイの標的微生物は、細菌の種の亜種の集合であり、その集合は、その種の既知の亜種の全部を含まなくてもよい。あるいはまたは加えて、アッセイの標的微生物は、細菌の種の菌株の集合であり、その集合は、その種の既知の菌株の全部を含まなくてもよい。「標的微生物」の組成物は、アッセイにおいて使用される組換えファージの宿主範囲によって決定される。本明細書に開示されるように、本明細書に開示の組換えファージは、本明細書に開示の細菌検出方法に特異性を与える。いくつかの実施形態では、複数の組換えファージがアッセイで使用される。複数の種類の組換えファージの少なくとも二つの特異性が異なる場合、アッセイにおいてこれら複数の組換えファージを含めることはアッセイの標的微生物の範囲を増加させることになる。いくつかの実施形態では、アッセイで使用される少なくとも1対の組換えファージの特異性は、重複しない。いくつかの実施形態では、アッセイで使用される全組換えファージの特異性が、少なくとも部分的に重複する。
本明細書で使用されるファージ(組換えファージを含む)は、当該ファージが、アッセイ方法での検査対象である試料中に存在する標的微生物に感染するが他の非標的微生物に感染していない場合、検出方法における該標的微生物に「特異的」である。ファージ(組換えファージを含む)は、当該ファージが、既知のE. coliの亜集団に感染するがE. coliではない微生物に感染しない場合、属(例えば、E. coli)に「特異的」であると考えられる。
本明細書で使用される「採取デバイス」とは、除去すべき微生物による汚染を含むと疑われる固体表面であって、該表面上に微生物が存在すると疑われる固体表面に接触するように設計された第一の部分を含む任意の装置である。第一の部分は、その表面内または表面上に微生物を採取し保持する。第一の部分は、固体表面が接触するときに乾燥していても濡れていてもよい。典型的には、採取デバイスは、ユーザが取り扱う第二の部分を含む。第二の部分は、ユーザが直接扱ってよいし、または採取デバイスを移動させる制御手段に取り付けてもよい。このようなデバイスの例として、標準Qチップ綿棒がある。別の例として、LetheenブロスSSL10LETを染み込ませたカスタムスポンジスティック(3M社製)がある。Letheenブロスを染み込ませた3Mスポンジスティックは、滅菌袋に入って出荷され10mLのLetheenブロスを染み込ませたセルローススポンジである。プラスチックのハンドルを有し、これにより、ユーザがスポンジを直接扱う(そしておそらく汚染)することなく環境試料を採取でき、そして試料を採取する際に排水溝、パイプ、およびクレバス内に到達しやすくなる。セルロース材が、生物をスポンジマトリックス内または表面上に採取し保持する。Letheenブロスは、例えば、四級アンモニアなどの洗浄用の化学物質を中和し、検出対象の生物を生きたまま保持しやすくする。
いくつかの実施形態では、採取デバイスの第一の部分は、濡れ性、第一条件下では微生物に結合するが第二条件下に置くと微生物を放出する能力、摩耗耐性、および保存寿命のうちの少なくとも一つといった有用な特性を有するセルロース、綿、またはその他の天然繊維のような有機材料を含む(ただしこれらに限定されない)。
いくつかの実施形態では、採取デバイスの第一の部分は、濡れ性、第一条件下では微生物に結合するが第二条件下に置くと微生物を放出する能力、摩耗耐性、および保存寿命のうちの少なくとも一つといった有用な特性を有するポリエステルやポリウレタンのような合成材料を含む(ただしこれらに限定されない)。
本明細書で使用される「感度」とは、アッセイ方法により陽性と同定された試料のうち、実際に陽性であり正確に同定された試料の割合である。実際の陽性試料は、一般に、標的微生物の存在を検出するために使用され、検証が済んでいるアッセイを使用して規定される。いくつかの実施形態では、実際の陽性は、標的微生物が存在するかどうかを決定するために試料を培養することを含む方法によって規定される。
本明細書で使用される「特異性」とは、アッセイ方法により陰性と同定された試料のうち、実際に陰性であり正確に同定された試料の割合である。実際の陰性試料は、一般に、標的微生物の存在を検出するために使用され、検証が済んでいるアッセイを使用して規定される。いくつかの実施形態では、実際の陰性は、標的微生物が存在するかどうかを決定するために試料を培養することを含む方法によって規定される。
本明細書で使用される「精度」は、全体の試料群における感度および特異性により重み付けした複合的な尺度のことである。
A.ファージ
ファージは、宿主の生合成機構の一部または全部を利用して内部で細菌/古細菌を増殖させる偏性細胞内寄生体であるバクテリオファージおよび古細菌ファージの両方を含む(すなわち、細菌/古細菌に感染するウイルス)。ファージは、感染する宿主細胞を同定する工程、および適切な宿主細胞内で自身のゲノムを生産的に複製する能力の両方に関連する偏性寄生体である。異なるファージは異なる材料を含んでもよいが、それら全ては、核酸およびタンパク質を含み、脂質膜によって覆われ得る。核酸は、ファージによりDNAまたはRNAのいずれかであるが、両方ではなく片方であり、様々な形で存在し得る。核酸のサイズは、ファージにより異なる。最も単純なファージだと、数千ヌクレオチドのサイズしかないが、より複雑なファージは、自身のゲノム中に100,000超のヌクレオチドを有することもあり、まれな例だと1,000,000超のヌクレオチドを有することもある。ファージ粒子中の異なる種類のタンパク質の数および各種タンパク質の量は、ファージにより異なる。これらのタンパク質は、感染の際に機能し、環境内でヌクレアーゼから核酸を保護する。
ファージは、多くの異なるサイズと形状がある。ほとんどのファージは、直径24〜200nmの範囲内にある。頭部またはカプシドは、多くのコピー数の1つまたは複数の異なるタンパク質で構成される。核酸は、存在する場合、頭部の中に位置し、この頭部は核酸の保護カバーとして機能する。全てではないが多くのファージは、ファージ頭部に尾部がくっついている。尾部は、感染中に核酸が通過する中空の管である。尾部のサイズは様々であり、いくつかのファージは尾部構造を有していない。より複雑なファージでは、尾部は、細菌の感染中に収縮する尾鞘に囲まれている。ファージは、尾部の末端に、基盤と、それにくっつく1つまたは複数の尾部繊維を有する。基盤と尾部繊維は、細胞へのファージの結合に関与する。すべてのファージが、基盤と尾部繊維を有するわけではない。これらの例では、他の構造は、細菌/古細菌へのファージ粒子の結合に関与する。
感染プロセスにおける最初のステップは、ファージの細胞への吸着である。このステップは、尾部繊維、または尾部繊維を欠き可逆性があるファージ上のいくつかの類似構造が介する。尾部繊維は、細胞上の特異的な受容体に付着し、ファージの宿主特異性(すなわち、感染可能な細菌/古細菌)は、通常、ファージが有する尾部繊維の種類によって決定される。細菌/古細菌受容体の性質は、異なる細菌/古細菌によって異なる。例として、細胞の外表面上のタンパク質、細菌の細胞壁や細胞膜の成分、例えば、LPSまたはテイコ酸、線毛、およびリポタンパク質が挙げられる。これらの生体分子は他の目的のために細胞上にあるが、それらを感染の受容体として使用するようにファージが進化した。
尾部繊維を介した細胞へのファージの結合は弱いものであり、可逆的である。細胞へのファージの不可逆的な結合は、1つまた複数の基盤成分が介する。基盤を欠くファージは、細胞へ強固に結合するための他の手段を有する。
細胞へのファージの不可逆的な結合により、(鞘を有するファージでは)鞘が収縮し、中空の尾部繊維が細菌/古細菌のエンベロープに押しこまれる。収縮鞘を有さないファージは、細菌/古細菌のエンベロープを介してファージ粒子を得る他の機構を用いる。いくつかのファージは、エンベロープの各種成分を消化する酵素を有する。
ファージがエンベロープを介する場合、核酸は、頭部から中空の尾部を通過して細胞に侵入する。通常、実際に細胞に侵入する唯一のファージ成分は核酸である。ファージの残りの部分は、典型的には、細胞の外側に残る。このルールにはいくつかの例外がある。この点が、通常ウイルス粒子の大部分が細胞に侵入する動物細胞のウイルスとは異なる。
溶菌性または病原性ファージは、細菌/古細菌に増殖しライフサイクルの最後に溶菌することにより細胞を死滅させることができるファージである。溶菌性ファージのライフサイクルは、エクリプス期で始まる。エクリプス期の間、感染ファージ粒子は、細胞の内部または外部のいずれにも見られない。ファージ核酸が、宿主の生合成機構を乗っ取り、ファージが指定するmRNAおよびタンパク質を作る。動物のウイルス感染で見られるのと同じ様な高分子合成のための整然としたファージの発現がある。初期のmRNAは、ファージDNAを合成するため、そして宿主DNA、RNA、およびタンパク質の生合成を遮断するために必要とされる初期のタンパク質をコードする。いくつかの場合、初期タンパク質は、実際に宿主の染色体を分解する。ファージDNAを生成した後、後期mRNAおよび後期タンパク質が生成される。後期タンパク質は、ファージを構成する構造タンパク質や細菌細胞の溶菌に必要なタンパク質である。次に、細胞内蓄積期において、生成された核酸および構造タンパク質が組み立てられ、感染性ファージ粒子が細胞内に蓄積する。溶菌および放出期に、細菌/古細菌が。ファージ溶菌タンパク質の蓄積によって溶菌し始め、そして細胞内のファージが培地に放出される。感染細胞当たりに放出された粒子の数は、1000以上と多くなり得る。
溶菌性ファージは、プラークアッセイによってカウントできる。プラークは、明確な領域で、細菌/古細菌の溶菌から固形培地上に増殖し細菌/古細菌の芝生(lawn)につながるものである。アッセイは、各プラークが1つの感染性ファージから生じるほど十分に低い濃度のファージで実施される。アッセイの文脈では、プラークを生じる感染性粒子を、PFU(プラーク形成単位)と呼ぶ。
後述するように、本開示は、マーカーをコードするオープンリーディングフレームを含むゲノムを含む組換えファージを提供する。組換えファージは、天然に存在するファージに基づくもの、または「出発ファージ」である。
本開示のいくつかの実施形態では、出発ファージゲノムは、少なくとも5キロ塩基(kb)、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも40kb、少なくとも45kb、少なくとも50kb、少なくとも55kb、少なくとも60kb、少なくとも65kb、少なくとも70kb、少なくとも75kb、少なくとも80kb、少なくとも85kb、少なくとも90kb、少なくとも95kb、少なくとも100kb、少なくとも105kb、少なくとも110kb、少なくとも115kb、少なくとも120kb、少なくとも125kb、少なくとも130kb、少なくとも135kb、少なくとも140kb、少なくとも145kb、少なくとも150kb、少なくとも175kb、少なくとも200kb、少なくとも225kb、少なくとも250kb、少なくとも275kb、少なくとも300kb、少なくとも325kb、少なくとも350kb、少なくとも325kb、少なくとも350kb、少なくとも375kb、少なくとも400kb、少なくとも425kb、少なくとも450kb、少なくとも475kb、少なくとも500kb、またはそれ以上含む。本開示のいくつかの実施形態では、出発ファージゲノムは、5kb〜50kb、10kb〜100kb、50kb〜200kb、100kb〜300kb、200kb〜400kb、または300kb〜500kb含む。
本開示のいくつかの実施形態では、出発ファージは、カウドウイルス目(Caudovirales)及び、ミクロウイルス科(Microviridae)、コルチコウイルス科(Corticoviridae)、テクティウイルス科(Tectiviridae)、レビウイルス科(Leviviridae)、シストウイルス科(Cystoviridae)、イノウイルス科(Inoviridae)、リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)、ルディウイルス科(Rudiviridae)、プラズマウイルス科(Plasmaviridae)、およびフセロウイルス科(Fuselloviridae)より選択されるメンバーである。いくつかの実施形態では、ファージは、カウドウイルス目およびミクロウイルス科(Microviridae)、サイフォウイルス科(Siphoviridae)、およびポドウイルス科(Podoviridae)より選択される科のメンバーである。
出発ファージを選択する主な基準は、ファージの宿主範囲である。ファージの宿主範囲は、当該分野で公知の任意の方法を使用して規定できる。一般に、ファージの宿主範囲を規定する方法(すなわち、「宿主範囲の解析」)は、許容条件(permissive conditions)下で宿主微生物細胞パネルの各々とファージを混合し、ファージが該宿主に感染し、宿主細胞を溶菌するライフサイクルで完了できるか否かを判定することにより行う。いくつかの実施形態では、解析は、上記の代わりにまたはそれに加えて、ファージが宿主に感染し、溶原性になるかどうかを決定することを含んでもよい。
ファージ宿主範囲の解析では、使用した微生物パネルの組成は、ファージがどのように使用されるかに依存する。まず、ファージを、例えば、エスケリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、サルモネラ属(Salmonella)、リステリ属(Listeria)など様々な属の細菌に感染する能力についてスクリーニングしてもよい。サルモネラ株に感染し溶菌するファージなどの選択ファージを、その後、必要に応じて、サルモネラのどの種または株を感染し溶菌できるのかを決定するために更にスクリーニングしてもよい。
出発ファージまたは組換えファージの宿主範囲は、当該分野で公知の任意の技術を使用して改変し得る。一般的に、このような技術は、大きく二つ分けることができる。一つ目は、遺伝的改変であり、例えば、尾部繊維スワッピングといった合理的なもの、または、例えば、標的領域の突然変異誘発といったランダムなものであり得る。二つ目は、スクリーニングである(ファージの自然変異を利用するか、または突然変異誘発剤等を用いてファージの集団に人工的な変異を導入することのいずれかのスクリーニング)。いくつかの実施形態では、バクテリオファージの集団は、非許容宿主(non-permissive host)の存在下の許容条件下でインキュベートされる。バクテリオファージの集団は、その集団内の大多数のファージとは異なる宿主範囲を有する低頻度の変異体を含む。子孫バクテリオファージの多くの集団を生成し、それらを非許容宿主上にプレーティングすると、異なる宿主範囲を示す子孫バクテリオファージの単離につながる可能性がある。いくつかの実施形態では、宿主範囲が拡大される。いくつかの実施形態では、宿主範囲がシフトし、これは、先に許容されていた宿主の一部または全部に対する感染力を喪失すること、および、新しい宿主を獲得することを意味する。いくつかの実施形態では、改変宿主範囲は、永久的かつ安定しており、他の実施形態では一時的なものである。いくつかの実施形態では、同じまたは異なる宿主に対する更なる選択ラウンドにより、一時的な改変宿主範囲が安定した改変宿主範囲に改変される。
いくつかの実施形態では、出発ファージまたは組換えファージは、宿主範囲に加え更に少なくとも1つ多い基準に基づいて選択される。少なくとも1つの追加的な基準は、とりわけ、ライフサイクル特性、ゲノムのサイズおよび/または構造、細菌防御系に対する自然耐性、ゲノム末端構造、複製速度、バーストサイズ、感染性、安定性、増殖特性から選択され得る。出発ファージまたは組換えファージにおけるこれらの特性を、例えば、前段落に記載の方法を用いることにより改変してもよい。
B.組換えファージ
いくつかの実施形態では、異種核酸配列を出発ファージゲノムに挿入し、組換えファージゲノムを作成する。いくつかの実施形態では、組換えファージゲノムを更に改変して、異なる組換えファージゲノムを作成する。いくつかの実施形態では、組換えファージゲノムは、異種核酸配列に加え、出発ファージゲノムに対し更に少なくとも1つの改変を含む。
異種核酸配列は、任意の核酸配列であってもよいが、通常は少なくとも1つのオープンリーディングフレームおよび1つの発現制御配列を含む。いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、1つのオープンリーディングフレームおよび1つの発現制御配列を含む。いくつかの実施形態では、発現制御配列はプロモーターである。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発現制御配列を含む。いくつかの実施形態では、発現制御配列は、出発ファージゲノムに内在する。いくつかの実施形態では、出発ファージゲノムに内在しない。いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、内在性ファージ核酸配列の改変版である核酸配列を含む。オープンリーディングフレームは、検出可能なマーカーをコードしてもよい。いくつかの実施形態では、異種核酸配列の長さは、少なくとも100塩基、少なくとも200 based、少なくとも300塩基、少なくとも400塩基、少なくとも500塩基、少なくとも600塩基、少なくとも700塩基、少なくとも800塩基、少なくとも900塩基、少なくとも1.0キロ塩基(kb)、少なくとも1.1kb、少なくとも1.2kb、少なくとも1.3kb、少なくとも1.4kb、少なくとも1.5kb、少なくとも1.6kb、少なくとも1.7kb、少なくとも1.8kb、少なくとも1.9kb、少なくとも2.0kb、少なくとも2.1kb、少なくとも2.2kb、少なくとも2.3kb、少なくとも2.4kb、少なくとも2.5kb、少なくとも2.6kb、少なくとも2.7kb、少なくとも2.8kb、少なくとも2.9kb、少なくとも3.0kb、少なくとも3.1kb、少なくとも3.2kb、少なくとも3.3kb、少なくとも3.4kb、少なくとも3.5kb、少なくとも3.6kb、少なくとも3.7kb、少なくとも3.8kb、少なくとも3.9kb、少なくとも4.0kb、少なくとも4.5kb、少なくとも5.0kb、少なくとも5.5kb、少なくとも5.5kb、少なくとも6.0kb、少なくとも6.5kb、少なくとも7.0kb、少なくとも7.5kb、少なくとも8.0kb、少なくとも8.5kb、少なくとも9.0kb、少なくとも9.5kb、少なくとも10kb、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、異種核酸配列の長さは、500塩基以下、1.0kb以下、1.5kb以下、2.0kb以下、2.5kb以下、3.0kb以下、3.5kb以下、4.0kb以下、4.5kb以下、5.0kb以下、5.5kb以下、6.0kb以下、6.5kb以下、7.0kb以下、7.5kb以下、8.0kb以下、8.5kb以下、9.0kb以下、9.5kb以下、または10.0kb以下である。
いくつかの実施形態では、異種核酸配列の長さは、100 〜500塩基、200〜1,000塩基、500〜1,000塩基、500〜1,500塩基、1kb〜2kb、1.5kb〜2.5kb、2.0kb〜3.0kb、2.5kb〜3.5kb、3.0kb〜4.0kb、3.5kb〜4.5kb、4.0kb〜5.0kb、4.5kb〜5.5kb、5.0kb〜6.0kb、5.5kb〜6.5kb、6.0kb〜7.0kb、6.5kb〜7.5kb、7.0kb〜8.0kb、7.5kb〜8.5kb、8.0kb〜9.0kb、8.5kb〜9.5kb、または9.0kb〜10.0kbである。
いくつかの実施形態では、出発ファージゲノムの長さに対する異種核酸配列の長さの比は、0.05以下、0.10以下、0.15以下、0.20以下、または0.25以下である。いくつかの実施形態では、出発ファージに対応するゲノムの長さに対する組換えファージのゲノムの長さの比は、1.05以下、1.10以下、1.15以下、1.20以下、または1.25以下である。
いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、内在性出発ファージゲノム配列を欠失することなく出発ファージゲノムに挿入される。いくつかの実施形態では、挿入された異種核酸配列は、内在性出発ファージゲノム配列を置換する。かかる実施形態のいくつかでは、異種核酸配列は、異種核酸配列の長さよりも短い長さの内因性ゲノム配列を置換する。よって、このような実施形態では、組換えファージゲノムの長さは、出発ファージゲノムの長さよりも長い。かかる実施形態のいくつかでは、異種核酸配列は、異種核酸配列の長さよりも長い内因性ゲノム配列を置換する。よって、このような実施形態では、組換えファージゲノムの長さは、出発ファージゲノムの長さよりも短い(追加の異種配列が、ゲノムの他の場所に付加されない限り)。かかる実施形態のいくつかでは、異種核酸配列は、異種核酸配列の長さと同じ長さの内因性ゲノム配列を置換する。
いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、オープンリーディングフレームを含む。
いくつかの実施形態では、オープンリーディングフレームは、標的微生物の宿主細胞に少なくとも1つの表現型を付与する検出可能なマーカーをコードする。検出可能なマーカーは、スクリーニング可能なマーカーおよび/または選択可能なマーカーであってもよい。
いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、少なくとも1つの第2のオープンリーディングフレームを含む。いくつかの実施形態では、第1および少なくとも1つの第2のオープンリーディングフレームは、同じ発現制御配列に作動的に連結される。いくつかの実施形態では、第1のおよび少なくとも1つの第2のオープンリーディングフレームは、異なる発現制御配列に作動的に連結される。
いくつかの実施形態では、異種オープンリーディングフレームによりコードされるタンパク質またはポリペプチドは、ファージの宿主細胞中に存在するプロテアーゼによる切断が低減されるように改変される。例えば、計算アルゴリズムを使用して、既知のプロテアーゼ切断部位を同定でき、これらの部位を除去するように保存的置換を利用してオープンリーディングフレームの配列を改変できる。あるいは、特異的突然変異誘発を利用して、ファージの宿主細胞またはファージ宿主細胞の培養物中に存在する少なくとも1つのプロテアーゼに対する耐性が増大した産物をコードするようにオープンリーディングフレーム配列を進化させる。
いくつかの実施形態では、組換えファージは、適切な宿主細胞内で直接形質転換する、例えば、操作されたファージ-YAC DNAを形質転換することにより構築できる。これらのファージ-YACは、繰り返し感染が可能な感染性ファージ粒子内で複製、切断、およびパッケージングする。
この方法では、操作されたYAC(酵母人工染色体)を、YACを含む酵母形質転換体から回収する。いくつかの実施形態では、これは、ガラスビーズ溶菌によって酵母形質転換体を破壊し、それにより形質転換細胞からのYACを放出することによって達成される。放出されたファージを有するYACを、適切なファージの宿主細胞内に電気穿孔し、標準的なプラークアッセイでプレーティングする。本発明者らは、ファージゲノムを有するYACの形質転換からプラークを生産した。現在までに、大腸菌ファージ(T3およびT7)およびサルモネラファージ(FelixO1)を用いて成功した。これらの結果により、クローニングされたファージゲノムから機能性ファージが生産されることが実証される。
当技術分野で公知の任意の方法を使用して、出発ファージから遺伝的に改変されたファージを作製できる。例えば、米国特許第5,824,468号は、遺伝的に改変されたファージを作製する方法を開示する。代替的な方法として、参照により本明細書に援用する2012年9月26日に出願された同時係属出願第13/627,060号(2013年3月16日にUS 2013/0122549 A1として公開)に開示されている。代替的な方法が、本出願の実施例に開示されている。
C.検出可能なマーカー
検出可能なマーカーは、選択可能なおよび/またはスクリーニング可能なマーカーを含む。本明細書で使用される「選択可能なマーカー」とは、当該マーカーを発現しない同じ細胞の増殖を阻害または刺激する薬剤の存在および/または不存在下で増殖する能力を、該マーカーを有する細胞に付与するマーカーのことである。このような細胞は、選択可能なマーカーの発現によって「選択可能な表現型」を有すると言うこともできる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子(AmpR)は、該遺伝子を有し発現する細胞にアンピシリンの存在下で増殖する能力を付与する(Sutcliffe, J.G., Proc Natl Acad Sci U S A. 1978 August; 75(8): 3737-3741参照)。他の非限定的な例としては、クロラムフェニコール、カナマイシン、およびテトラサイクリンに対する耐性を付与する遺伝子が挙げられる。他のマーカーとしては、ウラシル、トリプトファン、およびロイシンそれぞれの非存在下での増殖を可能にするURA3、TRP、およびLEUが挙げられる。
本明細書で使用される「スクリーニング可能なマーカー」とは、該マーカーを発現する細胞を同定するための基準として使用できる検出可能な標識のことである。このような細胞は、スクリーニング可能なマーカーの発現によって「スクリーニング可能な表現型」を有すると言うこともできる。示差的に検出することができ、組換えファージによりコードできる任意の分子を、スクリーニング可能なマーカーとして機能させてもよい。スクリーニング可能なマーカーは、一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNA分子のような核酸分子またはその一部であってもよい。あるいは、スクリーニング可能なマーカーは、タンパク質またはその一部であってもよい。適切なタンパク質マーカーとしては、検出可能な反応生成物の形成を触媒する酵素が挙げられる。例としては、ルシフェラーゼまたはそのバリエーション、例えば、luxABおよびβ-ガラクトシダーゼなどの化学発光タンパク質がある。別の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素がある。発光シグナルを発生させるのに使用されるタンパク質は、以下のように大きく2つに分類される:直接光を発生するもの(ルシフェラーゼおよび関連タンパク質);そして、化学的カスケードの一部として間接的に光を発生するために使用されるもの(西洋ワサビペルオキシダーゼ)。生物学的研究に使用される最も一般的な生物発光タンパク質は、エクオリンおよびルシフェラーゼである。前者のタンパク質は、オワンクラゲ(Aequorea victoria)に由来し、溶液中のカルシウム濃度を決定するために使用できる。タンパク質のルシフェラーゼファミリーは、幅広い実験目的に適合されている。ホタルおよびウミシイタケのルシフェラーゼが生物学的研究に最も一般的に使用されている。また、これらのタンパク質は、二つの異なる機能ドメインに遺伝的に分けられ、これらのドメインは、該タンパク質が密接に共局在している場合にのみ光を発生する。過去10年にわたり、これらのタンパク質の両方の発光スペクトルシフト変異誘導体が各種作成されている。これらは、生細胞内のマルチカラーイメージングおよび共局在化のために使用されている。化学発光シグナルを発生するために使用される他のグループのタンパク質は、ペルオキシダーゼおよびホスファターゼである。ペルオキシダーゼは、光を発生させる反応でルミノールを酸化する過酸化物を生成する。これらの中で最も広く使用されておりのは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)であり、これはウェスタンブロットおよびELISA法で検出するために広く使用されている。同様に使用される第2のグループタンパク質はアルカリホスファターゼであり、これは、基質分子からリン酸塩を除去し、基質分子を不安定化して、発光を生じるカスケードを開始する。
いくつかの実施形態では、マーカーをコードする異種核酸配列は、配列番号1;配列番号1と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%相同な配列;および配列番号1とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列より選択される。いくつかの実施形態では、マーカーは、配列番号2;配列番号2と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%相同な配列;および配列番号1とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列によりコードされるアミノ酸配列;より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質である。
いくつかの実施形態では、マーカーをコードする異種核酸配列は、配列番号3;配列番号3と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%相同な配列;および配列番号3とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列より選択される。いくつかの実施形態では、マーカーは、配列番号4;配列番号4と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%相同配列番号4;および配列番号3とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列によりコードされるアミノ酸配列;より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質である。
いくつかの実施形態では、マーカーは、米国特許出願公開2010/0281552 A1の段落0061〜0093に開示のルシフェラーゼまたは改変ルシフェラーゼタンパク質である。いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、米国特許出願公開2010/0281552 A1の段落0061〜0093に開示のルシフェラーゼまたは改変ルシフェラーゼタンパク質であるをコードする核酸配列である。米国特許出願公開2010/0281552 A1の段落0061〜0093は、その全体が全ての目的のために参照により本明細書に援用される。
いくつかの実施形態では、マーカーは、米国特許出願公開2012/0174242 A1の段落0190〜0206に開示のルシフェラーゼまたは改変ルシフェラーゼタンパク質である。いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、米国特許出願公開2012/0174242 A1の段落0190〜0206に開示のルシフェラーゼまたは改変ルシフェラーゼタンパク質であるをコードする核酸配列である。米国特許出願公開2012/0174242 A1の段落0190〜0206は、その全体が全ての目的のために参照により本明細書に援用される。
他の適切なスクリーニング可能なマーカーとして、蛍光タンパク質が挙げられる。蛍光タンパク質として以下が挙げられるが、これらに限定されない:青色/UV蛍光タンパク質(例えば、TagBFP、Azurite、EBFP2、mKalama1、Sirius、Sapphire、およびT-Sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、SCFP3A、mTurquoise、monomeric Midoriishi-Cyan、TagCFP、およびmTFP1)、緑色蛍光タンパク質(例えば、EGFP、Emerald、Superfolder GFP、Monomeric Azami Green、TagGFP2、mUKG、およびmWasabi)、黄色蛍光タンパク質(例えば、EYFP、Citrine、Venus、SYFP2、およびTagYFP)、オレンジ蛍光タンパク質(例えば、Monomeric Kusabira-Orange、mKOκ、mKO2、mOrange、およびmOrange2)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mTangerine、tdTomato、TagRFP、TagRFP-T、mApple、およびmRuby)、遠赤色蛍光タンパク質(例えば、mPlum、HcRed-Tandem、mKate2、mNeptune、およびNirFP)、近赤外線蛍光タンパク質(例えば、TagRFP657、IFP1.4、およびiRFP)、ロングストークスシフトタンパク質(例えば、mKeima Red、LSS-mKate1、およびLSS-mKate2)、光活性化(photoactivatible)蛍光タンパク質(例えば、PA-GFP、PAmCherry1、およびPATagRFP)、光変換性(photoconvertible)蛍光タンパク質(例えば、Kaede (green)、Kaede (red)、KikGR1(green)、KikGR1(red)、PS-CFP2、PS-CFP2、mEos2(green)、mEos2 (red)、PSmOrange、およびPSmOrange)、および光切替(photoswitchable)蛍光タンパク質(例えば、Dronpa)。実施例に記載のいくつかの変形物および代替物も、当業者に知られており、適切な用途に応じて置き換えてもよい。
他の適切なマーカーとして、エピトープが挙げられる。例えば、抗体または他の結合分子を用いて検出できるエピトープを含むタンパク質が、スクリーニング可能なマーカーの一例である。エピトープを認識する抗体は、シグナル生成部分に直接連結でき(例えば、化学発光または蛍光タンパク質の共有結合により)、あるいは、例えば、シグナル生成部分に直接連結された少なくとも1つの追加の結合試薬を、例えば、二次抗体として用いて検出できる。いくつかの実施形態では、エピトープは、ファージまたは標的微生物のタンパク質には存在せず、試料中のエピトープの検出により、エピトープを含むタンパク質をコードする遺伝子を含む組換えファージによる感染後の微生物によりエピトープを含むタンパク質が産生されたことを示すようになっている。他の実施形態では、マーカーは、標的微生物またはファージ中に天然に存在するタンパク質に関連する精製タグであってもよい。例えば、タグ(例えば、6-Hisタグ)を使用して、他の細菌またはファージタンパク質から異種タンパク質を精製でき、その後精製されたタンパク質を、例えば、抗体を用いて検出できる。
D.組換えファージの産生
当業者は、本開示の方法で使用するための、組換えファージを産生するのに使用および/または適合できる多くの様々な方法を知っている。例示的な方法を、実施例10に示す。一般的に、例えば、本開示に係る組換えファージを用いてファージ溶解物を調製できる。ファージ溶解物を調製するため、コンピテントファージ宿主細胞の単一コロニーを、適切な液体増殖培地に接種し、フロアシェーカー中で一晩増殖させる。翌日、培養物のアリコートを希釈し液体増殖培地の体積を増やし、OD600が適切な濃度に達するまで増殖させる。次いで、増殖対象の組換えファージをこの培養物に接種する。その後、フラスコを溶解物が透明になるまで(例えば、0.02のOD600)さらに培養する。溶解物を次いで0.45μmの真空フィルター、その後0.22μmの真空フィルターで濾過し、そして更に精製するまで4℃で保存する。
使用前に、ファージ粒子を、Sambrook and Russell, Molecular Cloning Volume 1, 3rd edition 2001に記載されているような一般的な方法を用いて精製する。簡単に言えば、ファージ粒子を、pp2.43-2.44に記載のプロトコル6「Precipitation of Bacteriophage Lambda Particles from Large-scale Lysates」(これは、参照により本明細書に援用される)により、溶解物から沈殿させる。ただし、以下の例外を除く:クロロホルム抽出ステップ、DNアーゼおよびRNアーゼのステップを省略する。ファージ粒子を、その後、pp2.47-2.51に記載のプロトコル8「Purification of Bacteriophage Lambda Particles by Isopycnic Centrifugation through CsCl Gradients」(これは、参照により本明細書に援用される)を用いる塩化セシウム勾配により精製する。ただし、以下の例外を除く:ステップ勾配(Step gradients)はBeckman XL-90超遠心機で22,000rpmで2時間SW28ローターを用いてスピンし、平衡勾配物(Equilibrium gradients)はBeckman XL-90超遠心機で47,000rpmで24時間70.1tiローターを用いてスピンした。
平衡勾配物からファージバンドを採取する際に、ファージを4℃で24時間Pierce G2 Slide-a-lyzerカセット(10,000MWCO)内で、4LのSMバッファに対して透析する。ファージストックは、その後、使用するまで4℃で保存する。
本明細書に記載のように、ファージ溶解物の生成の際に産生されるマーカータンパク質が、得られるファージストックを汚染し得ることが発見された。汚染マーカーが、ファージとともに微生物検出アッセイに添加され、アッセイのバックグラウンドが増す可能性もある。いくつかの実施形態では、ファージストックがマーカータンパク質を含まない場合と比べ、アッセイのシグナル対ノイズ比が減少する。これにより、アッセイの感度および/または精度が低下し得る。場合により、本明細書に記載される方法を使用してファージストック中に存在するマーカータンパク質を触媒的に失活させることで、ファージストック中に存在する活性マーカータンパク質の量を減少させることができる。この方法は、酵素であるマーカータンパク質を含む組換えファージを含むファージストックを当該酵素の基質に曝露すると、その酵素(マーカータンパク質)が触媒的に失活するという本発明者らの発見に基づく。このようにファージストック中に存在する活性マーカータンパク質の量は減少する。活性マーカータンパク質は、いくつかの実施形態では、ファージストックを使用するとシグナル対ノイズ比を増加させるものである。これにより、ファージストックを使用する方法の感度および/または精度を向上できる。
本明細書で使用される「触媒失活」とは、酵素であるマーカーを含むファージストックを、マーカータンパク質の触媒活性を実質的に低下させる少なくとも1つの条件に露出することを指す。この文脈において、実質的に減少させるとは、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の減少を意味する。いくつかの実施形態では、マーカータンパク質の触媒活性を実質的に低下させる少なくとも1つの条件に露出するとは、ファージストックのpfu/mlを、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満減少させることである。いくつかの実施形態では、触媒失活条件への暴露は、約1時間〜約24時間、約2時間〜約12時間、約3時間〜約12時間、約3時間〜約6時間、または約6時間〜約24時間の期間である。
いくつかの実施形態では、マーカータンパク質は、ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態では、触媒不活性化後のファージストックに存在する(マーカールシフェラーゼタンパク質の汚染に起因する)相対光度単位のレベルは、1x10-4未満、9x10-5未満、8x10-5未満、7x10-5未満、6x10-5未満、5x10-5未満である。
E.標的微生物
本明細書に開示の組換えファージおよび本明細書に開示の方法は、任意の種類の古細菌および/または細菌を感染及び検出するために使用され得る。いくつかの実施形態では、古細菌はユリアーキオータ門(Euryarcheota)である。いくつかの実施形態では、古細菌はクレンアーキオータ門(Crenarcheota)である。いくつかの実施形態では、細菌は、放線菌門(Actinobacteria)、アクウィフェクス門(Aquificae)、アルマティモナス門(Armatimonadetes)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)、カルディセリクム門(Caldiserica)、クラミジア門(Chlamydiae)、クロロフレクサス門(Chloroflexi)、クリシオゲネス門(Chrysiogenetes)、シアノバクテリア(Cyanobacteria)、デフェリバクター門(Deferribacteres)、デイノコッカス・サーマス(Deinococcus-Thermus)、ディクチオグロムス門(Dictyoglomi)、エルシミクロビウム門(Elusimicrobia)、フィブロバクター門(fibrobacteres)、フィルミクテス門(Firmicutes)、フソバクテリウム門(Fusobacteria)、.. ゲマティモナス門(gemmatimonadetes)、ニトロスピラ門(Nitrospirae)、プランクトミケス門(Planctomycetes)、プロテオバクテリウム門(Proteobacteria)、スピロヘータ門(Spirochaetes)、シネルギステス門(Synergistets)、モリクテス門(Tenericutes)、サーモデスルフォバクテリア門(Thermodesulfobacteria)、テルモトガ門(Thermotogae)より選択される門のメンバーである。いくつかの実施形態では、細菌は、バチルス(Bacillus)、リステリア(Listeria)、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)より選択される少なくとも1つのフィルミクテス門(Firmicutes)である。いくつかの実施形態では、細菌は、アシドバシラス属(Acidobacillus)、アエロモナス属(Aeromonas)、バークホルデリア属(Burkholderia)、ナイセリア属(Neisseria)、シュワネラ属(Shewanella)、シトロバクター属(Citrobacter)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エスケリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、クライベラ属(Kluyvera)、モルガネラ属(Morganella)、サルモネラ属(Salmonella)、赤痢菌属(Shigella)、エルシニア属(Yersinia)、コクシエラ属(Coxiella)、リケッチア属(Rickettsia)、レジオネラ属(Legionella)、アビバクテリウム属(Avibacterium)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、モラクセラ属(Moraxella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ビブリオ属(Vibrio)、キサントモナス属(Xanthomonas)より選択される少なくとも1つのプロテオバクテリア門(Proteobacteria)である。いくつかの実施形態では、標的細菌は、マイコプラズマ科(Mycoplasma)、スピロプラズマ科(Spiroplasma)、およびウレアプラズマ科(Ureaplasma)より選択される少なくとも1つのモリクテス目(Tenericutes)である。
本明細書に開示のファージおよび方法を用いて検出し得る食品の一般的な細菌汚染源として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Salmonella、E. coli (病原性大腸菌E. coli O157:H7、志賀毒素産生性大腸菌E. coli O26、O E. coli 111、E. coli O103、E. coli O121、E. coli O45およびE. coli O145を含むがこれらに限定されない)、大腸菌群(シトロバクター属、エンテロバクター属、ハフニア属、クレブシエラ属、セラチア属を含むがこれらに限定されない)、赤痢菌、リステリア(リステリア・モノサイトゲネスを含むがこれらに限定されない)、クロストリジウム属 (ボツリヌス菌およびウェルシュ菌を含むがこれらに限定されない)、ビブリオ属(ビブリオ・コレラおよびビブリオ・バルニフィカスを含むがこれらに限定されない)、腸内細菌属、ブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌を含むがこれらに限定されない)、バチルス属(セレウス菌を含むがこれらに限定されない)、カンピロバクター(カンピロバクター・ジェジュニを含むがこれらに限定されない)、シュードモナス属、連鎖球菌属、アシネトバクター属、クレブシエラ属、カンピロバクター属、およびエルシニア属。
一般的なリステリア種として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:リステリア・イノキュア、リステリア・モノサイトゲネス、リステリア・ゼーリゲリ、リステリア・イバノヴィ、リステリア・グレイ、リステリア・マルティ、リステリア・ロコルティ、リステリア・ウェルシメリ、リステリア・フロリデンシス、リステリア・アクアティック、リステリア・コルネレンシス、リステリア・リパリア、およびリステリア・グランデンシス。これらのいくつかは近年記載されたものである(Bakker et al., Int. J. of Systematic and Evolutionary Microbiology. 2014. 64: 1-8参照)。
F.検出可能なマーカーを検出する方法
異種核酸配列によりコードされる検出可能なマーカーは、当該分野で公知の任意の方法によって検出できる。当業者は、多くの実施形態において、検出可能なマーカーは、使用されるマーカーのクラスまたは使用されるマーカーの種類に特に適する方法を用いて検出できることを理解するであろう。例えば、検出可能なマーカーが化学発光または蛍光タンパク質である場合、例えば、当該マーカーは、適切な条件下で、試料から発生する光の量を測定することによって検出されることが多い。例えば、検出可能なマーカーがルシフェラーゼである場合、当該マーカーは、ルシフェラーゼによって触媒される反応において光の発生を可能にする条件下でルシフェラーゼに対する基質を提供することによって、検出される。例えば、ホタルルシフェラーゼによって触媒される化学反応は、次の2つのステップで行われる:
1)ルシフェリン+ ATP →ルシフェリルアデニル酸 + Ppi;
2)ルシフェリルアデニル酸 + O2 →オキシルシフェリン+ AMP + 光。
反応は電子的に励起状態のオキシルシフェリンを形成するので光が放出される。反応は、オキシルシフェリンが基底状態に戻るので光の光子を放出する。ステップ1は、ホタルルシフェラーゼによって触媒される。したがって、検出可能なマーカーがホタルルシフェラーゼである場合、ルシフェラーゼによって触媒される反応で光が発生可能な条件下で、ルシフェラーゼにルシフェリン基質を提供することによって当該マーカーを検出できる。
セレンテラジンの化学反応は以下のように進行する。
1)セレンテラジン+ O2 →セレンテラジン-過酸化物;
2)セレンテラジン-過酸化物→セレンテラミドアニオン+ CO2 +光。
NanoLuc(登録商標)は、セレンテラジンの誘導体である。
セレンテラジン-過酸化物は自然に分解し、光が放出される。より具体的にはジオキセタノン4員環は、カブトムシルシフェリンで見られるように結合を分解する。エネルギー準位遷移が基底状態にあるとき、セレンテラミドのアミドアニオンの励起状態により発光し、これにより450〜470 nmの範囲の光すなわち。可視スペクトルの青色光、が発光する。
いくつかの実施形態では、使用されるマーカーの種類に特に適するわけではない方法を使用して検出可能なマーカーを検出してもよい。例えば、ある細胞による目的のタンパク質の産生を測定する標準的な方法を用いてマーカータンパク質の産生を測定することによって、異種核酸配列によりコードされるマーカーを検出してもよい。例えば、全タンパク質または全タンパク質の一部を試料から回収し、ポリアクリルアミドゲルに流し、そしてクーマシー染色でゲルを染色しマーカータンパク質の産生を可視化してもよい。この方法の変形として、マーカーの産生を検出するために、マーカータンパク質に特異的な抗体などの抗体を用いるウェスタンブロッティングによってゲルを分析してもよい。
いくつかの実施形態では、検出可能なマーカーは、試料中のマーカーの生成を検出するために使用されるタグを含む。いくつかの実施形態では、タグは、検出前に試料内で生成されたマーカーを精製および/または富化するために使用される親和性タグである。いくつかの実施形態では、マーカーは、6xHISタグである。いくつかの実施形態では、タグは、検出前の試料内で生成されたマーカーを精製および/または富化するために使用される、および/またはそのマーカーを検出するために使用される抗体によって特異的に認識されるエピトープである。
いくつかの実施形態では、マーカーは、標的微生物細胞の直接観察を含む方法によって検出される。本明細書で使用される「直接観察」とは、方法が、空間的に局在するマーカー生成源として、少なくとも1つの細胞を同定することを含むことを意味する。このような方法の例として、組換え溶原ファージを使用して、標的微生物に蛍光マーカーをコードする異種核酸配列を送達してから、顕微鏡を使用して適切な照明下でマーカータンパク質を産生した結果として蛍光が発生することにより、少なくとも一つの細胞を同定する方法がある。
いくつかの実施形態では、マーカーは、標的微生物細胞の直接観察を含まない方法によって検出される。このような間接的な観察法は、局在するマーカー生成源として、少なくとも1つの細胞を同定することを含まない。代わりに、試料中に生成したマーカーの量を測定し、組換えファージを感染させ、異種核酸配列によりコードされるマーカーを産生している試料中に存在する標的微生物の数を間接的に決定する。
マーカーがルシフェラーゼの場合、いくつかの実施形態では、試料をアッセイしてルシフェラーゼマーカーの存在および/または不存在を検出し、標的微生物の存在および/または不存在を決定することは、標的微生物によって生成されるマーカーとルシフェラーゼ基質を組み合わせることを含む。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼ基質は、ルシフェリンまたはその誘導体およびセレンテラジンまたはその誘導体より選択される。いくつかの実施形態では、セレンテラジンまたはその誘導体は、米国特許出願公開第 2012/0174242 A1の段落0157〜0189に開示される分子である。
検出可能なマーカーの存在は、固体基質の存在下でアッセイしてもよく、あるいは、ファージに暴した採取デバイスおよび/またはファージに暴した固体基質から生じたマーカーをアリコートに分けた後にアッセイしてもよい。例えば、固体基質の表面(例えば、食品加工工場における排水溝)を採取デバイス(例えば、3Mスポンジスティック)に接触させる場合、この採取デバイスを、標的微生物に感染可能で、マーカーをコードする異種核酸配列を含む組換えファージに接触させ、これにより採取デバイスがファージに暴され、このファージに暴された採取デバイスにおいて、組換えファージが、採取デバイスに付されて存在する標的微生物細胞に感染し、標的微生物細胞による異種核酸配列によりコードされるマーカーが産生されるのに十分な条件が設けられる。この結果、採取デバイスそして更に産生したマーカーを含む溶液が得られる。溶液は、採取デバイスの存在下で直接アッセイしてもよく、あるいは、アリコートを取り出し、採取デバイスから分けした後にマーカーの存在についてアッセイしてもよい。当業者は、これらの手順は、本開示に鑑み、種々の置換および変更がなされ得ることを理解するであろう。一般に、試料が検出可能なマーカー(したがって、標的微生物の場合)の存在について陽性または陰性かどうかを決定するために、閾値をアッセイに適用して検出可能なマーカーの存在を検出する。いくつかの実施形態では、アッセイのLLOD(検出の下限値)は、以下によって決定される:(1)対照試料のセットに存在するシグナルを測定する;および、(2)平均測定シグナルに3つの標準偏差を加える。検査アッセイで検出されたシグナルがLLODまたはこれを超える場合、検査試料は陽性とスコアされ、そうでない場合に陰性とスコアされる。当業者は、適切な状況下で代わりに使用できる多くの代替的なアプローチを認識している。
いくつかの実施形態では、マーカーの全量を、直接または間接的に連続してアッセイする。マーカーの全量が規定した期間内の任意の時点で閾値に達したら、アッセイは陽性とスコアされる。
G.ワークフロー
当業者は、本開示の方法は、微生物による汚染をアッセイするための多くの様々なワークフローを包含しこれらが可能であることを理解している。非限定的な例として、以下のようなものがある。
1.試料の採取および調製
固相試料は、LetheenブロスSSL10LETを染み込ませたカスタムスポンジスティック(3M)を使用して採取される。Letheenブロスを染み込ませた3Mスポンジスティックは、滅菌袋に入って出荷され10mLのLetheenブロスを染み込ませた殺生物剤フリーのセルローススポンジである。プラスチックのハンドルを有し、これにより、ユーザがスポンジを直接扱う(そしておそらく汚染)することなく環境試料を採取でき、そして試料を採取する際に排水溝、パイプ、およびクレバス内に到達しやすくなる。セルロース材が、生物をスポンジマトリックス内または表面上に採取し保持する。Letheenブロスは、例えば、四級アンモニアなどの洗浄用の化学物質を中和し、検出対象の生物を生きたまま保持しやすくする。
プラスチックのハンドルには、汚染しないようにユーザがそれを超えて接触してならないポイントを知らせるための親指ガイドが付いている。試料を採取した後、スポンジを袋に戻し、プラスチックのハンドルを折って、袋の中にはスポンジだけがある状態で密封できるようにしてもよい。
Letheenブロスで湿らせた3Mスポンジスティックを収納袋から取り出し、製造元の説明書に従って4インチ×4インチの固体表面を綿棒でこすって採取する。採取後、収納袋にスポンジスティックを戻し、袋を閉じる。
試料のセットを採取した後、50mLコニカルチューブに採取した各環境試料に対応するラベルを付ける。
ファージカクテルを準備するために、1×106〜1×1011 pfu/mlの濃度の予め測定した少なくとも1種の組換えファージのアリコートを加える。別の実施形態では、少なくとも1種の組換えファージは、1×107〜1×108 pfu/mlの濃度であってもよい。別の実施形態では、少なくとも1種の組換えファージは、1.5x107 pfu/mlの濃度であってもよい。別の実施形態では、3つの異なる組換えファージをそれぞれ1.5x107 pfu/mの濃度で設けてもよい。予め測定した組換えファージを、スポンジ感染バッファ(Sponge Infection Buffer: SIB)に加える。スポンジ感染バッファは、少なくとも一つの栄養剤、環境試料中の少なくとも1つの非標的微生物の増殖を阻害するのに適する少なくとも一つの選択剤、少なくとも一つのビタミン、少なくとも一つの二価金属、組成物を7.0〜7.5のpHに維持可能な少なくとも一つの緩衝剤、前記環境試料内に存在する殺菌剤を中和するのに適する少なくとも1つの薬剤、およびルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤、を含む。
スポンジ感染バッファは、5%重量/体積グルコース、1%体積/体積グリセロール、1%重量/体積塩化リチウム、および0.002%重量/体積ナリジクス酸を補充した半濃度(half-strength)ブレインハートインフュージョン(Brain Heart Infusion:BHI)培地(18.5 g/L Difco BHI培地)を含んでもよい。この組合せの補助剤により、リステリアの回収および感染プロセスの間の競合微生物の増殖阻害を促進する。
別の実施形態では、バッファは、表1の成分を含み得る。
スポンジ感染バッファの成分を第1列に示す。第2列は、これらの成分が属する分類であり、第3列は、スポンジ感染におけるこれらの成分の役割の簡単な説明である。バッファの成分の一部は、複数のグループに分類され得ることを理解されたい。例えば、HEPES緩衝液は、緩衝剤としても機能するが、ルシフェリンの分解を防止するための薬剤としても機能し得る。さらに、中和剤は、環境試料を採取する標的領域内に存在し得る化学物質又は殺菌剤を中和するものであってもよく、かつ、これらの成分が、さらにルシフェリンの分解を防止するものであってもよい。
2.試料の感染
場合により、陽性と推定された試料を独立して確認できるように、Letheenブロスを必要に応じて試料から回収する。袋の角を持ち、スポンジを絞って、液体がスポンジに再吸収しないようにしながら全液体を取り出す。袋を開け、血清学的ピペットを用いて、予めラベルした対応する50mL三角ビーカーに液体を移す。
6 mlのスポンジ感染バッファに、組換えファージを1.5x107 pfu/mlの最終濃度になるような濃度で添加する。複数の組換えファージがアッセイに使用できることを理解されたい。例えば、3つの組換えファージをそれぞれ1.5x107 pfu/mlの濃度で用いてもよい。
液体が泡立たないように注意しながら、優しく約15回絞ってスポンジをマッサージしスポンジ内にSIBを平衡化する。マッサージを完了した後、スポンジに全液体を再吸収させる。
上記で概説したのと同じ試料処理プロセスを用いて、2本の滅菌3Mスポンジスティックを処理することにより2本の陰性スポンジを準備する。
すべてのスポンジを30℃に置く。
3.試料特異的陰性対照
場合により、アッセイにおいて存在する非特異的バックグラウンドの補正を可能にするために、試料を必要に応じて各感染の30分後に採取する。
30℃のインキュベーターからスポンジを取り出し、液体が泡立たないように注意しながら、優しく約15回絞ってしてスポンジをマッサージする。
スポンジを袋内に保持しつつ、液体がスポンジに再吸収しないように離して、全ての液体をスポンジから袋内に絞り出す。
300μLを滅菌微小遠心管に移し、この微小遠心管を4℃に置く。
陰性対照を正規化し、シグナルにおけるスポンジ間のばらつきを考慮するため、2本の陰性スポンジのそれぞれから150μLを4本の微小遠心管のそれぞれに加える。
袋を再び閉じ、液体が泡立たないように注意しながら、優しく約15秒絞ってスポンジをマッサージする。
スポンジに液体を再吸収させる。
スポンジを再び30℃に置く。
4.時点における読み取り
業者の説明書に従ってNanoGloバッファとNanoGlo基質を混合することによりNanoGlo試薬を再構成する。
インキュベーションの4時間後に試料をインキュベーターから取り出し、約15秒間スポンジをマッサージする。本方法のいくつかの実施形態では、インキュベーションは様々であり得て、試料を組換えファージに接触させてから、標的微生物の存在または不存在を検出するまでの時間は1分〜6時間かかることを理解されたい。いくつかの実施形態では、この時間は4時間以下であり得る。いくつかの実施形態では、この時間は数時間以下であり得る。
スポンジを袋内に保持しつつ、液体がスポンジに再吸収しないように離して、全ての液体をスポンジから袋内に絞り出す。
300μLを滅菌微小遠心管に移す。
微小遠心管を16,100 rcfで1分間スピンする。
上清を、清潔な低光子微小遠心管に移す。
移した試料を32秒間Sirius L内で読み取り、10秒後に300μlのNanoGlo試薬(Promega社カタログ番号N1130またはN1150)を注入する。
陰性対照を正規化し、シグナルにおけるスポンジ間のばらつきを考慮するため、2本の陰性スポンジのそれぞれから150μLを4本の微小遠心管のそれぞれに加える。
5.試料特異的陰性対照の4時間目における読み取り
微小遠心管を4℃から取り出す。
16,100 rcfで1分間スピンする。
上清を、清潔な低光子微小遠心管に移す。
インキュベーション試料を同様に4時間読み取る。
さらなる例示的かつ非限定的なワークフローは、実施例で設ける。
H.標的細胞の増殖
試料における標的微生物の存在または不存在を決定する方法は、典型的には、陽性試料における標的細胞の数を増やすために、試料を細胞増殖条件に曝すことによって、試料中の標的細胞を富化する工程が必要であった。この増数工程は、検出方法を実行する前に行われるか、あるいは増数工程自体が検出方法に不可欠である。一例では、このような選択的な増数を、微生物特異的な富化培地を使用して行う。この種の培地は、従来の培養液よりも一般的に長くなってしまう富化対象の微生物の増殖を必要としない。富化培養液は、標的微生物の増殖にとって有益な化合物である一方、標的微生物の増殖に有害である他の微生物または下流のアッセイ工程に対しては阻害的な化合物である。異なる選択培地における標的微生物を継続的に富化することが、標的微生物の存在をアッセイする方法である。例えば、食品試料または食品製造環境または医薬環境において当該分野で公知の方法を、米国農務省(USDA)微生物実験ガイド(USDA-MLG)またはFDAバクテリアアッセイ方法第一巻 (FDA-BAM)で見ることができる。これらの方法は、高い信頼度で標的微生物を同定できる結果にするために何日間か要する。他の方法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、側方流動アッセイ形式、またはPCRベースの検出法といった分子技術を用いる。ELISA側方流動ベースの方法の1つとして、例えばBiomerieux’ VIDAS(登録商標)が挙げられる。このワークフローでは、試料を特別に処理しその後さらに加熱処理と自動ELISA側方流動ワークフローにより処理する前に、特定の富化培地中で24〜48時間富化する。富化に必要な時間は90〜120分である。PCRベースのアプローチでは、標的微生物由来の特定配列の増幅に焦点を当てる。アッセイの1つに、DuPont’s BAX(登録商標)システムがある。このワークフローでは、試料を特異的に処理しその後さらに核酸抽出及び手作業による試料の処理の前に、特定の富化培地中で24〜48時間富化する。
本明細書に開示される方法は、標的細胞の増数工程を含んでもよい。しかし、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、標的細胞の増数工程を含まない。驚くべきことに、本発明者らは、いくつかの実施形態では、100個、10個、または1個の細胞といった非常に少ない検出の下限値が、特定の実施形態では増数しなくとも達成できることを見出した。特定の実施形態では、この特徴により、本開示の方法は、標的細胞の増数を含む先行技術の方法よりも迅速に結果をもたらすことができるようになる。
いくつかの実施形態では、ファージに暴した環境試料をアッセイして、マーカーの存在または不存在を検出し、標的微生物の存在または不存在を決定する工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから30分後において、100個の標的微生物細胞数という検出の下限値を有する、いくつかの実施形態では、ファージに暴した環境試料をアッセイして、マーカーの存在または不存在を検出し、標的微生物の存在または不存在を決定する工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから60分後において、10個の標的微生物細胞数という検出の下限値を有する。いくつかの実施形態では、ファージに暴した環境試料をアッセイして、マーカーの存在または不存在を検出し、標的微生物の存在または不存在を決定する工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから180分後において、1個の標的微生物細胞数という検出の下限値を含む。
本明細書に開示される方法および組換えファージにより、一般に多くの状況では標的細胞の増数が不要になるが、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、試料中の標的細胞の増数を含む。増数は、一般に、増数工程なしで行う同等のアッセイと比べて、アッセイの感度を増加させる。本開示の本方法のいくつかの実施形態では、供給源から得た試料を増数することにより、標的細胞の増数を含まない同様の方法で達成されるよりも、微生物細胞の検出がより低い検出の下限値で可能になると現在考えられている。当該アッセイの過程でファージに感染した細胞数は、標的細胞の増数を含まない同様のアッセイの過程でファージに感染した細胞数よりも多くなるように、増数過程において1個の細胞を少なくとも一回分裂させてもよい。いくつかの実施形態では、増数は、10分〜12時間の期間行う。いくつかの実施形態では、増数は、30分〜8時間の期間行う。いくつかの実施形態では、増数は、1時間〜8時間の期間行う。いくつかの実施形態では、増数は、2時間〜6時間の期間行う。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して少なくとも1回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して少なくとも2回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して少なくとも3回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して少なくとも4回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して少なくとも5回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して少なくとも10回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して1〜10回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して2〜8回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して3〜6回細胞分裂できるのに十分な期間である。いくつかの実施形態では、増数は、試料中に存在する任意の生きている標的微生物が平均して約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10回細胞分裂できるのに十分な期間である。
いくつかの実施形態では、試料を少なくとも2つの部分に分ける。第1の部分は、本開示のファージベースの標的微生物の検出アッセイに直接使用するもので、第2の部分は、ファージベースの標的微生物の検出アッセイおよび異なるアッセイの確認から選択される1つまたは複数の用途のためである。いくつかの実施形態では、試料は、部分ごとに分ける前に増数するが、他の実施形態ではそうではない。部分に分けた後に、1つまたは複数の部分を増数してもよい。
I.細胞増殖を行わない検出
ファージが標的微生物細胞に感染すると、タンパク質を産生するために迅速に宿主細胞の代謝機構を互いに選び(co-opt)、ファージが溶菌性の場合、宿主細胞はすぐに溶解される。したがって、試料中の微生物標的細胞へのファージによる感染は、試料中の標的細胞の増殖を停止させる効果があり、最終的に、試料中のすべての標的細胞の溶解をもたらす。したがって、本方法のいくつかの実施形態では、アッセイで使用するファージの濃度は、試料中の全ての宿主細胞の増殖を実質的に停止するのに十分に高い。この文脈において、「実質的に停止する」とは、ファージを試料に接触させた後、該試料中で完全な細胞分裂サイクルを複数回完了する宿主細胞が存在しないことを意味する。当業者は、感染の多重度またはMOIを、ある感染単位に感染している集団の割合を示す測定基準として一般的に認識している。これは統計的プロセスであり、ポアソン分布に従ってモデル化されると一般的に理解される。つまり、MOIが3だと集団の95%が少なくとも1の感染性単位に感染しており、MOIが8だと集団の100%が感染しているという意味である。
このような実施形態の一つの利点は、アッセイの取扱い及び処理、およびアッセイが実施される容器の処分が、安全かつ標的微生物による汚染されにくいということである。これは、微生物汚染物質を拡散しないことが重要である医療診断および食品汚染のモニターなどの状況において有用であり得る。また、アッセイのユーザに対する安全性も高まる。
J.細菌汚染の特徴付け
本明細書に開示されたアッセイの高感度かつ迅速なスピードにより、複数の試料間での細菌汚染を比較する方法の精度を高くすることができる。したがって、本開示は、複数の固体基質間で細菌汚染を比較する、および/または、1つもしくは複数の固体基質の細菌汚染を経時的に比較する方法をも提供する。
いくつかの実施形態では、複数の固体基質の少なくとも2つが、標的微生物を異なる細胞数で含むと決定される。この情報は、標的微生物による汚染の拡散について少なくとも1つの特徴を特徴づけるために使用してもよい。
いくつかの実施形態では、複数の固体基質の少なくとも2つは、ほぼ同じ細胞数の標的微生物を含むように決定される。この情報は、標的微生物による汚染の拡散について少なくとも1つの特徴を特徴づけるために使用してもよい。
いくつかの実施形態では、複数の固体基質は、同一の採取源から異なる時点で採取された試料を含む。時刻T1において分析された固体基質が標的微生物により最初の汚染のレベルを示し、その後時刻T2において同じ固体基質を分析すると試料中の標的微生物によりさらに高いレベルの汚染を示す場合、T1からT2の時間間隔の間に標的微生物による固体基質の汚染レベルが増したことを示す。あるいは、時刻T1において分析された固体基質が標的微生物により最初の汚染のレベルを示し、その後時刻T2において同じ固体基質を分析すると試料中の標的微生物によりさらに低いレベルの汚染を示す場合、T1からT2の時間間隔の間に標的微生物による固体基質の汚染レベルが低下したことを示す。したがって、本開示は、標的微生物による固体基質の汚染レベルの変化を経時的に比較する方法をも提供する。
いくつかの実施形態では、複数の試料は、異なる固体基質源から採取された試料を含む。採取源S1から採取した試料が当該試料中の標的微生物によりある汚染レベルを示し、採取源S2から採取した試料が当該試料中の標的微生物によりさらに高いレベルの汚染を示す場合、採取源S2の標的微生物による汚染レベルが採取源S1の標的微生物による汚染レベルよりも高いことを示す。したがって、本開示は、標的微生物による異なる採取源の汚染レベルの違いを比較する方法をも提供する。
いくつかの実施形態では、複数の試料は、異なる時点で少なくとも1つの源から採取された試料を含み、また、異なる採取源から採取された複数の試料をも含む。異なる採取源から採取された複数の試料が、同じおよび/または異なる時点で採取された試料を含んでもよい。
本方法のいくつかの実施形態では、標的微生物が、少なくとも2つの試料に異なる細胞数で存在すると決定され、この違いが標的微生物による汚染の拡散について少なくとも1つの特徴を特徴づけるために使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の時間経過である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の空間的な分布である。
本方法のいくつかの実施形態では、標的微生物が、少なくとも2つの試料に異なる細胞数で存在すると決定され、この違いが標的微生物による汚染の浄化について少なくとも1つの特徴を特徴づけるために使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の時間経過である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の空間的な分布である。
いくつかの実施形態では、標的微生物が、少なくとも2つの試料にほぼ同じ細胞数で存在すると決定され、この性質が標的微生物による汚染の拡散について少なくとも1つの特徴を特徴づけるために使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の時間経過である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の空間的な分布である。
いくつかの実施形態では、標的微生物が、少なくとも2つの試料にほぼ同じ細胞数で存在すると決定され、この性質が標的微生物による汚染の浄化について少なくとも1つの特徴を特徴づけるために使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の時間経過である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特徴は、汚染の時間経過である。
本開示の組換えファージは、細菌の存在を検出するために使用することができる。標的細菌の検出は、標的細菌に結合し、標的細菌内へファージゲノムを移送し、細菌にマーカーをコードする異種核酸配列を発現させるという組換えファージの能力に基づく。従って、マーカーをコードする異種核酸配列を含む組換えファージを用いて標的細菌を検出する方法の特異性は、ファージへの暴露後のマーカーの発現に役立つ細菌の種類の範囲に基づく。ファージへの曝露後のマーカーの発現に役立つ細菌の種類の範囲を、ファージの「宿主範囲」と呼ぶことがある。ファージの宿主範囲を構成する細菌の種類のセットを、本明細書において「標的細菌」と呼ぶこともある。
K.組換えファージに感染した標的微生物に導入された異種マーカー核酸配列の増幅
本開示の方法では、組換えファージが試料中の標的微生物細胞に感染することを可能にする感染条件下でファージに暴露した試料を保持すると、標的微生物が試料中に存在する場合、標的微生物に内在するかまたは組換えファージゲノムによりコードされる少なくとも1つの核酸ポリメラーゼによる異種マーカー核酸配列の増幅により、試料中で異種マーカー核酸配列のコピーが生産される。この段階で増幅した異種マーカー核酸配列を含む試料は、標的細胞の破片や成分および組換えファージ成分を含め、他の成分による複合的な混合物をも含む。典型的には、試料をこの段階で処理し、これらの他の成分の少なくとも1つの濃度を減少させ、および/または、または増幅された異種マーカー核酸配列の濃度を増加させる。
試料の処理は、増幅した異種マーカー核酸配列を、他の試料成分から特異的または非特異的に分離するための標的捕捉工程を含んでもよい。非特異的な標的調製法は、実質的に水性の混合物から選択的に核酸を沈殿させるものでもよく、支持体に核酸を付着させこの支持体を洗浄して他の試料成分を除去するものでもよく、またはSTEC核酸を含む核酸を他の成分を含む混合物から物理的に分離する他の手段を使用してもよい。他の非特異的な標的調製法は、試料中のDNAからRNAを選択的に分離するものであってもよい。
L.組換えポリメラーゼを用いた異種マーカー核酸配列の増殖
多くの周知の核酸増幅方法は、二本鎖核酸を変性させプライマーをハイブリダイズする交互の熱サイクルを必要とするが、核酸増幅を等温で行う周知の方法もある。典型的な増幅法として、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、リガーゼ連鎖反応(「LCR」)、ストランド置換増幅(「SDA」)、核酸配列ベースの増幅(「NASBA」)、自己持続配列複製、転写媒介増幅(「TMA」)などが挙げられる。
適切な増幅条件は、本開示に鑑みて当業者によって容易に決定できる。増幅条件は、本明細書に開示されるように、核酸増幅を可能にする条件を指す。本明細書に記載のように増幅条件は、いくつかの実施形態において、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」よりも緩やかな条件であり得る。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、特定の検出プローブが、検査試料中に存在する他の核酸よりも標的核酸とハイブリダイズすることが可能なハイブリダイゼーションアッセイ条件を意味する。これらの条件は、プローブのGC含量および長さ、ハイブリダイゼーション温度、ハイブリダイゼーション試薬または溶液の組成、および求められるハイブリダイゼーション特異性の程度などの要因に応じて様々であり得ることが理解されるであろう。
本明細書に開示される増幅反応において使用されるオリゴヌクレオチドは、増幅条件下で意図する標的に特異的であり、これらにハイブリダイズし得るが、特定の実施形態では、よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズしてもしなくてもよい。一方、検出プローブは、一般に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。
いくつかの実施形態では、異種マーカー核酸配列は、転写ベースの増幅技術によって増幅し得る。上述のように、転写ベースの増幅システムの1つは、RNAポリメラーゼを用い標的領域の複数のRNA転写物を生成する転写媒介増幅(TMA)である。例示的なTMA増幅方法は、例えば、米国特許番号第4,868,105号、第5,124,246号、第5,130,238号、第5,399,491号、第5,437,990号、第5,480,784号、第5,554,516号、第7,374,885号;PCT公開番号WO88/01302号;WO88/10315号、およびWO95/03430号に記載されている。
本開示の方法は、米国特許番号第7,374,885号に記載されているように、単一プライマーTMA反応の使用を伴うTMA反応を含み得る。一般に、単一プライマーTMA法は、プライマーオリゴマー(例えば、NT7プライマー)、3'末端からのDNA合成の開始を防止するように改変された改変プロモーターベースのオリゴマー(または「プロモータープロバイダーオリゴマー」、例えば、T7プロバイダー)、そして場合により、標的鎖からのcDNAの伸長を終了させるための遮断オリゴマー(例えば、ブロッカー)を使用する。プロモーターベースのオリゴマーは、RNAポリメラーゼによって認識されるオリゴヌクレオチド配列を提供する。この単一プライマーTMA法は、標的配列を複数コピー合成し、プライミングオリゴマーおよび結合分子を用いて標的配列を含む標的RNAを処理する工程を含み、ここで該プライマーは標的鎖の3'末端にハイブリダイズする。RTは、標的鎖と二本鎖になる(例えば、RNAxDNA)cDNAを作製するため、プライマーの3'末端からプライマー伸長を開始する。ブロッカーオリゴマーを反応に使用する場合、ユーザが指定する標的配列の5'末端付近に隣接する標的核酸に結合する。cDNAを作製するRTのDNAポリメラーゼ活性によってプライマーを伸長する場合、標的鎖に結合した結合分子にプライマー伸長産物が到達したときに重合が停止するので、cDNAの3'末端はブロッカーオリゴマーの位置によって決定される。したがって、cDNAの3'末端は、標的配列の5'末端に相補的である。RNアーゼ(例えば、RTのRNアーゼH)がRNA鎖を分解するときにRNAxDNA二本鎖が分離するが、当業者は、任意の形態の鎖分離を使用し得ることを理解するだろう。次いで、プロモータープロバイダーオリゴマーがcDNA鎖の3'末端付近のcDNAにハイブリダイズする。
プロモータープロバイダーオリゴマーは、RNAポリメラーゼに対する5'プロモーター配列およびcDNAの3'領域における配列に相補的な3'標的ハイブリダイズ領域を含む。プロモータープロバイダーオリゴマーは、プロモータープロバイダーオリゴマーの3'末端からのDNA合成の開始を阻止するブロッキング部分を含む改変3'末端も有する。プロモータープロバイダーxDNA二本鎖では、cDNAにプロモーター配列を追加し、機能的二本鎖プロモーターを作成するために、鋳型としてプロモーターオリゴマーを使用しRTのDNAポリメラーゼ活性によってcDNAの3'末端が伸長される。
プロモーター配列に特異的なRNAポリメラーゼは、その後、機能的プロモーターに結合し、cDNAと相補的で、最初の標的鎖から増幅された標的領域配列と実質的に同一の複数のRNA転写物を転写する。得られた増幅RNAは、その後、プライマーに結合させさらなるcDNAの生産のための鋳型とすることによりプロセスを繰り返し、最終的に試料中に存在する最初の標的核酸由来のアンプリコンを多数生成することができる。単一プライマー転写関連の増幅法のいくつかの実施形態は、ブロッキングオリゴマーを含まないので、プライマーから作製されたcDNA産物は、不確定の3'末端を有するが、他のすべての工程については実質的に上述したような増幅工程が進行する。
本開示の方法は、逆転写媒介増幅(RTMA)、例えば、米国特許出願公開2006-0046265 Alに開示されている様々な態様を利用するものであってもよい。RTMAは、反応を駆動するための2つの酵素、RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素、を用いるRNA逆転写媒介増幅システムである。RTMAは等温である、つまり、全反応を水浴またはヒートブロックにおいて同じ温度で行う。これは、反応を駆動させるために温度を迅速に変えるためのサーマルサイクラー機器を必要とするPCRのような他の増幅反応とは対照的である。
RTMAは、DNAまたはRNAのいずれかを増幅でき、そしてDNAまたはRNAアンプリコンのいずれかを生成できる。これは、DNAのみを生成する他のほとんどの核酸増幅法とは対照的である。RTMAの反応速度は非常に早く、15〜60分以内に10億倍の増幅が得られる。RTMAは、ハイブリダイゼーションロテクションアッセイ(HPA)と組み合わせることができる。HPAは、エンドポイント検出のために化学発光シグナルを放出するアクリジニウムエステルの検出分子、またはリアルタイム検出のための分子トーチで標識された特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用する。洗浄工程はなく、いずれのアンプリコンも試験管外に移されないので、手順が簡素化され汚染の可能性が減る。よって、RTMAの利点として、複数の標的を増幅できることが挙げられ、これにより、結果が定性的または定量的であり得て、移動および洗浄工程が不要であり、検出が分子トーチを用いてリアルタイムにできる。
例示的な実施形態として、タグ付けした増幅オリゴマー、場合により遮断オリゴマーと両方で、核酸試料中のRNA標的配列を処理することによってRTMA反応を開始する。タグ付き増幅オリゴマーは、標的配列の3'末端にハイブリダイズする標的ハイブリダイズ領域(target hybridyzing region:以下、標的ハイブリダイズ領域)と、該標的ハイブリダイズ領域の5'側に位置するタグ領域を含む。遮断オリゴマーは、標的配列の5'末端付近の標的配列を含む標的核酸にハイブリダイズする。したがって、標的核酸は、プライマー伸長反応が開始する前に、標的配列の3'末端のタグ付き増幅オリゴマー、および、標的配列の決定された5'末端の付近に隣接して位置する終結オリゴヌクレオチドと安定な複合体を形成する。
好ましくは、ハイブリダイズしていないタグ付きプライミングオリゴヌクレオチドを不活性化および/または核酸試料から除去することによって、タグ付きプライミングオリゴヌクレオチドとのプライマー伸長反応を開始する前に、ハイブリダイズしていないタグ付き増幅オリゴマーは、標的配列へのハイブリダイゼーションに使用できなくされる。不活性化および/またはシステムから除去されたハイブリダイズしていないタグ付き増幅オリゴマーは、その後、汚染核酸との不要なハイブリダイゼーションに使用できなくなる。ハイブリダイズしていないタグ付き増幅オリゴマーを反応混合物から除去する一例では、タグ付き増幅オリゴマーが標的核酸にハイブリダイズし、タグ付き増幅オリゴマーと標的核酸との複合体を、洗浄工程を用いてハイブリダイズしていないタグ付き増幅オリゴマーから除去する。この例では、タグ付き増幅オリゴマーと標的核酸との複合体は、さらに、標的捕捉オリゴマーおよび固体支持体と複合体を形成してもよい。ハイブリダイズしていないタグ付き増幅オリゴマーを不活性化する一例では、タグ付き増幅オリゴマーは、標的閉鎖領域を含む。この例では、タグ付き増幅オリゴマーの標的ハイブリダイズ領域が、第1の条件セット(例えば、ストリンジェンシー)下で標的核酸にハイブリダイズする。タグ付き増幅オリゴマーと標的核酸との複合体の形成に続いてハイブリダイズしていないタグ付き増幅オリゴマーを第2の条件セットで不活性化することにより、ハイブリダイズしていないタグ付き増幅オリゴマーの標的ハイブリダイズ領域に標的閉鎖領域をハイブリダイズさせる。不活性化されたタグ付き増幅オリゴマーは、その後、汚染核酸とのハイブリダイズに使用できない。不活性化されたタグ付けされた増幅オリゴマーをアッセイから除去するための洗浄工程を含んでもよい。
次に伸長反応が、DNAポリメラーゼにより、例えば、逆転写酵素によるタグ付き増幅オリゴマーの3'末端から開始され、タグ配列を含む初期増幅産物が産生される。初期増幅産物は、その後、標的配列を選択的に分解する酵素(例えば、RNアーゼH活性)を用いて、標的配列から分離される。次に、標的ハイブリダイズ領域および該標的ハイブリダイズ領域の5'側に位置するRNAポリメラーゼプロモーター領域を有するプロモーターベースのオリゴマーで初期増幅産物を処理することにより、プロモーターベースのオリゴマー:初期増幅産物ハイブリッドを形成する。プロモーターベースのオリゴマーは、好ましくは、プロモーターベースのオリゴマーの3'末端にブロッキング部分(例えば、3'→5'方向を有するヌクレオチド配列)を配置することによって、DNA合成の開始を防止するように改変してもよい。次に、初期増幅産物の3'末端が伸長してプロモーターに相補的な配列が追加され、その結果、二本鎖プロモーター配列が形成される。初期増幅産物の少なくとも一部に相補的なRNA産物の複数のコピーは、その後、二本鎖プロモーターを認識しそこから転写を開始するRNAポリメラーゼを用いて転写される。結果、RNA産物のヌクレオチド配列は、標的核酸のヌクレオチド配列およびタグ配列のヌクレオチド配列の相補体と実質的に同一である。
その後、RNA産物を、タグ配列の相補体にハイブリダイズするタグを標的とするオリゴマー(tag-targeting oligomer、以下、タグ標的オリゴマー)で処理し、タグ標的オリゴマーとRNA産物のハイブリッドを形成してもよい。DNAポリメラーゼによりタグ標的オリゴマーの3'末端を伸長し、RNA産物に相補的な増幅産物を生成する。この増幅産物のDNA鎖は、その後、第1のRNA産物を選択的に分解する酵素(例えば、RNアーゼH活性)を用いて、この増幅産物のRNA鎖から分離される。次に、第2のDNAプライマー伸長産物の3'末端にハイブリダイズするプロモーターベースのオリゴマーで増幅産物のDNA鎖を処理することにより、プロモーターベースのオリゴマー:増幅産物ハイブリッドを形成する。その後、プロモーターベースのオリゴマー:増幅産物ハイブリッドは、転写が二本鎖プロモーターから開始される増幅サイクルに再び入り、このサイクルが続くことで、標的配列の増幅産物が得られる。
増幅産物は、その後のアッセイに使用できる。その後のアッセイの1つとして、核酸検出、好ましくは、核酸プローブベースの核酸検出が挙げられる。検出工程は、例えば、増幅産物を標識プローブにハイブリダイズさせ、標識プローブから生じるシグナルを検出することによって、増幅された標的配列に特異的に関連するシグナルを検出することが知られている種々の方法のいずれかを用いて行うことができる。また、検出工程は、核酸塩基配列の全部または一部といった増幅配列に関する追加情報を提供するものであってもよい。
検出は、増幅反応が終了した後に、または標的領域の増幅と同時、例えば、リアルタイムで行ってもよい。一実施形態では、検出工程は、混合物からハイブリダイズしていないプローブを除去することなくハイブリダイズしたプローブを検出することが可能である(例えば、米国特許第5,639,604号および第5,283,174号参照)。
また、本明細書中に開示されるような増幅方法は、特定の実施形態において、増幅反応の感度、選択性、効率等を向上させるのに有効な1つまたは複数の他の種類のオリゴヌクレオチドの使用をも採用する。
M.標的の捕捉
いくつかの実施形態では、核酸増幅の前に試料から異種マーカー核酸配列を精製または富化する。標的の捕捉とは、一般的に、磁気誘引粒子などの固体支持体上に標的ポリヌクレオチドを捕捉すること(ここで、標的ポリヌクレオチド精製手順の1つまたは複数の洗浄工程において、固体支持体が標的ポリヌクレオチドを保持する)を指す。このように、標的ポリヌクレオチドは、後続の核酸増幅工程の前に実質的に精製される。多くの標的捕捉方法が当技術分野において公知であり、本明細書に記載する方法と組み合わせて使用するのに適している。例えば、任意の支持体、例えば、任意の様々な材料から製造できるマトリックスまたは溶液中で遊離状態の粒子、ナイロン、ニトロセルロース、ガラス、ポリアクリレート、混合ポリマー、ポリスチレン、シランポリプロピレン、または金属を使用することができる。
具体例としては、磁気誘引粒子、例えば、固定プローブが直接的に結合結合した(例えば、共有結合、キレート化、またはイオン性相互作用により)または間接的に結合した(例えば、リンカーを介して)単分散常磁性ビーズ(ここで、当該結合は、核酸ハイブリダイゼーション条件において安定である)である支持体を使用する。要するに、増幅の前に、対象の標的核酸配列を精製するのに効果的なら、当業者に利用可能な本質的に任意の技術を使用してもよい。
N.異種マーカー核酸配列の検出
核酸ハイブリダイゼーションをモニターするために使用される標識または検出システムのいすれかまたは両方を用いて、増幅異種マーカー核酸配列を含む、異種マーカー核酸配列を検出できる。このようなシステムは、当技術分野でよく知られている。
検出システムは、典型的には、対象の標的核酸の検出を容易にするために、ある種の検出オリゴヌクレオチドを利用する。検出は、直接的(すなわち、標的に直接ハイブリダイズしたプローブ)または間接的(すなわち、プローブと標的を結合する中間構造にハイブリダイズしたプローブ)であってもよい。プローブの標的配列は、一般に、プローブが特異的にハイブリダイズする長い配列のうちの特定の配列を指す。検出プローブは、標的配列が存在するか否かに応じて、標的特異的配列その他の配列またはプローブの三次元構造に寄与する構造を含んでもよい。
特定の核酸ハイブリダイゼーションをモニターするために使用することができる本質的に任意の数の公知の標識および検出システムを、本開示の方法と共に使用することができる。有用な標識としては、蛍光部分(単独で、または「クエンチャー」部分との組み合わせ)、化学発光分子、および電子検出方法に適している酸化還元活性部分が挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましい蛍光標識として、臭化エチジウム、臭化プロピジウム、クロモマイシン、アクリジンオレンジ、等のような非共有結合性標識(例えば、インターカレート色素)が挙げられる。
いくつかの用途では、検査試料において少なくともある程度の自己相補性を示すプローブは、検出の前にまずハイブリダイズしていないプローブを除去することを必要とせずにプローブ:標的二本鎖の検出を容易にするために望ましい。一例として、「分子トーチ」および「分子ビーコン」と呼ばれる構造体が、区別可能な自己相補性領域および標的相補性領域を含むように設計されている。分子トーチは米国特許第6,849,412号、第6,835,542号、第6,534,274号、および第6,361,945号に完全に記載され、分子ビーコンは米国特許第5,118,801号、第5,312,728号、および第5,925,517号に完全に記載されている。
核酸に標識を付着し標識を検出する合成技術および方法は、当該分野で周知である。
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を行ってもよく均等物を置換してもよいことが、当業者によって理解されるべきである。加えて、本発明の目的、精神および範囲に、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程、または工程を適合させるために、多くの改変を行うことができる。そのような改変は全て、添付の特許請求の範囲内にある意図である。
以下の実施例は、本願開示の本発明の特定の実施形態を如何に行うかをより完全に説明するのに役立つ。これらの実施例は、例示目的であって、本明細書に開示の発明の真の範囲を限定するものではない。
実施例1:組換えリステリアファージ
組換えファージを作成するために新規のファージ操作方法を開発した。この方法を本願ではファージ感染操作(Phage Infective Engineering:PIE)と呼ぶことがある。この方法は、ファージゲノムの任意の所望の位置に異種核酸配列の挿入することを可能にする。挿入のために選択された初期部位は、Loessner、et al.(Appl. Environ Microbiol., 62:1133-1140)で使用されているもの、つまり、主なキャプシドタンパク質遺伝子cpsの下流であった。ホタルルシフェラーゼ(配列番号2)についてはコード配列(配列番号1)を挿入し、nanolucルシフェラーゼ(配列番号4)についてはコード配列(配列番号3)をこの位置に挿入した。
PIE法は、ファージ配列の所望の挿入部位の直接の上流および下流〜1KBに隣接するルシフェラーゼ遺伝子配列を含む(上流ホモロジー領域(UHR)および下流ホモロジー領域(DHR)と呼ぶ)ファージターゲットベクター(Phage Targeting Vectors PTVs)を使用する。これらの挿入物(インサート)は、それぞれ、組み立てを容易にするために、20bpの相同性を与えつつ所望のアンプリコンを増幅するPCRプライマーを用いて作製された。プラスミドは、GeneArt Seamless組立キット(Life Technologies)を用いて組み立てた。3つのインサート(UHR、LUC、DHR)を、SmaI及びPstI(NEB)で制限切断したグラム陽性/グラム陰性シャトルベクターpMK4内に組み立てた。
A511ファージゲノム配列は、Genbank(NC_009811)で利用可能である。A511ファージはATCC(PTA-4608TM)から取得可能である。
PIE法を使用して、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(配列番号1)をゲノム配列の46695番塩基と46696番塩基の間、A511のcps遺伝子の終止コドンの後に直接挿入した。ファージゲノムから欠失した配列はなかった。リボソーム結合部位(GAGGAGGTAAATATAT)(配列番号36)を含有する16bpの配列を、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の開始コドン(ATG)の前に配置した。
ファージA511を操作するために、cps遺伝子の1276塩基を、オリゴ「pMAK upf」および「pMAK upr」を用いて増幅し、断片「A511 UHR」を形成した。ルシフェラーゼ遺伝子を、プライマー「pMAK lucf」および「pMAK lucr」を用いて増幅し、断片「A511 luc」を作成した。また、プライマー「pMAK lucf」は、ルシフェラーゼ遺伝子の上流のリボソーム結合部位(Shine-Dalgarno)を追加した。「pMAK dnf」および「pMAK dnr」(「A511 DHR」と命名)を用いて、cps終止コドンの直後1140bpを増幅した。
これらの3つのアンプリコンを、製造業者の説明書に従って、GeneArt Seamless組立キットを使用して制限酵素SmaI/PstIで切断した後のpMK4内に組み換えた。E.coli内で単離した後に、増幅およびアセンブリが正しいことを確認するためにプラスミドの配列決定をした。検証の際に、プラスミドをL.モノサイトゲネスEGD-e株に形質転換し、BHI-クロラムフェニコール(10μg/ml)寒天プレート上で選択した。
PTVが正常にEGD-eに形質転換した後で、最初の組換えを行った。A511::FF PTV-含有EGD-eの一晩培養物を1:100に希釈し、OD600が0.1になるまで増殖させた。この培養物を、希釈してOD600を0.02に戻し、1x105 pfu/mlの野生型A511ファージと2ml容積になるよう混合した。この感染物を50rpmで一晩振とうし、30℃で培養した。
組換えが起こったかどうかを評価するために、感染を翌日に分析した。まず、溶解物をクロロホルムと混合し残りの細胞を死滅させ、PTVによるバックグラウンドルシフェラーゼを破壊した。ファージはクロロホルム耐性があり、これはバクテリオファージに共通の特徴である。4%(v/v)CHCl3を溶解物に添加し、ボルテックス、スピンダウンし、上清を回収した。EGD-eの一晩培養物の1:10希釈物を、組換え溶解物に加え混合することで検査感染を行った(90μ1の細胞希釈物、10μlのファージ溶解物)。対照感染は細胞なしで設定された。感染物を30℃で3時間静置してインキュベートし、その後Glomax 20/20で発光をアッセイした。20μlの感染物を100μlのPromegaルシフェラーゼアッセイ試薬(NanoLucファージについては20μlの溶解物および20μlのNanoGlo)と混合し、その後、10秒間の積分値(10 second integration)(NanoGloでは1秒)で読み取った。組換え溶解物は光を発光し、溶解液中に組換えファージがあったことが示された。
組換えファージを富化し単離するためには、組換え溶解物中に存在する野生型ファージから分離する必要があった。希釈および分裂の連続ラウンドを採用した。溶解物を投入ファージの10倍希釈液を用いて作成し、ルシフェラーゼ活性について溶解物をアッセイすることにより、組換えファージの存在についてスクリーニングした。
組換え効率は1:1x105〜1:1x106と推定された。純粋な組換え溶解物を単離するために、Appl. Environ Microbiol. 62:1133-1140に記載の方法を以下のように改変した。初期組換え溶解物を力価設定した。1mlのEGD-e(OD 0.02)を、1x10Xのファージと共に一晩30℃、50rpmで処理して、1x106、1x105、および1x104 pfu/mlの組換え溶解物として、それぞれ20個の1mlの溶解物を設定した。翌日、各溶解物について、上記のようにCHCl3処理を行った。溶解物は、上記のような感染設定で使用した。各溶解物をGlomax 20/20で分析した(FFでは、20μlの感染物および100μlの試薬;nlucでは、20μlの感染物および20μlのNanoGlo)。目標は、感染により発光を示す最小数のファージにより産生された溶解物を見つけることであった。この溶解物を同定した後に力価を測定し、溶解物を1x103、1x102および1x101 pfu/mlに設定した。1x102ファージを用いて産生された発光溶解物単離した後、この溶解物を、単一のプラークを見出すためプレーティングした。プラークは、SMバッファ内に採取した。これらの「浸出物(soakates)」をdH2Oで1:10に希釈し、「DBONO360」を用いたPCRによってアッセイし、ルシフェラーゼ遺伝子とファージ配列との間の組換えジャンクションの存在を調べた。
P100ファージゲノム配列は、Genbank(DQ004855)で利用可能である。P100は、ATCC(PTA-4383TM)から取得可能である。
P100のルシフェラーゼ挿入部位は、同じcps遺伝子の下流であった。P100におけるホタルルシフェラーゼの挿入位置は、P100ゲノム配列の塩基番号13196番と13197番の間である。
P100は、以下の例外を除いてA511と同様に操作した。「P100 DHR」断片を、プライマー「pMAK dnf」および「pMAK dnr P100」を用いて増幅した。プラークを100μlのSMバッファ内で選択することにより、単一の組換えプラークを同定した。この浸出物の10μlを50μ1のルシフェリンと混合し、ルミノメーターで発光を観察した。陽性を特定するこの方法は、その後の組換えファージの単離に用いた。
以下のファージは、ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびA511::ffluc: LP48、LP124、LP125、LP99、LP101、およびLP143について記載された方法を用いて操作した。
NanoLuc遺伝子: A511、P100、LP40、LP124およびLP125を用いて以下のファージを操作した。
A511::nlucのPTVは、以下のPCR断片を増幅することにより構築した。A511溶解物を鋳型として用い、オリゴpMAK upfおよびDBONO356を用いてUHR断片を作成した。DHR断片を、オリゴDBONO359およびpMAK dnrを用いて増幅した。PromegaプラスミドpNL1.1を鋳型として用い、オリゴDBONO357およびDBONO358を用いてNanoLuc断片を増幅した。組み立ておよびそれに続くPIE方法は、上述したものと同様である。
P100::nlucのPTVおよび操作は、pMAK dnrではなくオリゴpMAK dnr P100を用いてDHR断片を増幅したこと以外、A511::nlucと同様に行った。
LP124、LP125、およびLP40のPTVは、以下の変更点を除きA511::nlucと同様に構築した。増幅したDHR断片は短くし、オリゴDBON0359とDBON0382を使用してプラスミドの組み立てをより効率的にできるようにした。また、2つの追加の停止コドン(TAATAA)をこれらのファージのcps遺伝子の直接の下流に加えることにより挿入部位を改変した。これらの6塩基は、追加のプライマーDBONO379およびDBONO380を作成することによって追加した。これらのファージのUHR断片をオリゴpMAK upfとDBONO380を用いて増幅した。NanoLuc断片は、オリゴDBON0379とDBON0358を用いて増幅した。
以下のオリゴヌクレオチドをPIE方法に使用した。
pMAK upf: TTACGCCAAGCTTGGCTGCAACGTGAGTTCCTAGACGACC (配列番号37)
pMAK upr: ATGTTTTTGGCGTCTTCCATATATATTTACCTCCTCTTAGTTGCTATGAACGTTTT (配列番号38)
pMAK lucf: AAAACGTTCATAGCAACTAAGAGGAGGTAAATATATATGGAAGACGCCAAAAACAT (配列番号39)
pMAK lucr: ATTCAATTATCCTATAATTATTACAATTTGGACTTTCCGC (配列番号40)
pMAK dnf: GCGGAAAGTCCAAATTGTAATAATTATAGGATAATTGAAT (配列番号41)
pMAK dnr: ACGACGGCCAGTGAATTCCCAGTTACTAACTGCTCTAATG (配列番号42)
pMAK dnr P100: ACGACGGCCAGTGAATTCCCAGTTACTAACTGTTCTAATG (配列番号43)
DBONO360: CCTCTAGCTCAAATTAACGCATCTGT (配列番号44)
DBONO361: TGGCTCTACATGCTTAGGGTTCC (配列番号45)
DBONO356: TCTTCGAGTGTGAAGACCATATATATTTACCTCCTCTTAGTTGC (配列番号46)
DBONO357: CTAAGAGGAGGTAAATATATATGGTCTTCACACTCGAAGATTT (配列番号47)
DBONO358: ATTCAATTATCCTATAATTATTACGCCAGAATGCGTTCGC (配列番号48)
DBONO359: GCGAACGCATTCTGGCGTAATAATTATAGGATAATTGAATAAA (配列番号49)
DBONO379: AAAACGTTCATAGCAACTAATAATAAGAGGAGGTAAATATATATGGTCTTCACACTCGAAGATTT (配列番号50)
DBONO380: ATATTTACCTCCTCTTATTATTAGTTGCTATGAACGTTTTTTACAGG (配列番号51)
DBONO382: ACGACGGCCAGTGAATTCCCTCGTGGTGTTCTGACTCCCG (配列番号52).
その後の実験において、方法をいくつか改変した。PTV構築の間、DHR断片が組み立てプラスミドから欠落していることが多いことが発見された。これは、オリゴDBON0382を利用して、使用される断片の長さを短くすることにより克服した。
改変アプローチでは、組換え溶解物の力価を決定後、以下のような富化プロセスを時々行い、nanolucファージを作成するために使用した。
96ウェルマイクロタイタープレートを使用して、200μ1の容量でPIE溶解物を増殖させた。FF溶解物について、最初の工程は、1x106 pfu/溶解物(5x106 pfu/ml)、1x105 pfu/溶解物、および1x104pfu/溶解物でそれぞれ96個の溶解物を作成することである。NanoLucファージについては、組換え溶解物の組換え効率が非常に高いことが分かり、1x100 pfu/溶解物までの希釈液を使用することができた。これらの溶解物は、一晩50rpmで振とうしながら、30℃でインキュベートすることによって生産した。溶解物は、適切なルシフェラーゼアッセイシステム(ffまたはnanoglo)を用いてアッセイした。新鮮な細胞を感染させるために溶解物を使用するのではなく、溶解物自体のバックグラウンドシグナルが、組換えファージの存在を示していることを発見した。
最少数のファージから産生された溶解物の同定では、この溶解物を用い、より少ない数のファージを使用して新しい96ウェル溶解物を設定した。おおよそ1:10〜1:100の組換え頻度に到達した後、上記のように、ファージを寒天プレート上にプレーティングし単一のプラークを単離した。
これらの方法を使用して、ffルシフェラーゼをコードする異種オープンリーディングフレームまたはnanolucルシフェラーゼをコードするオープンリーディングフレームのいずれかを含む組換えファージを作成した。組換えファージに挿入されたペイロードの整合性と周囲の配列を確認するために、断片をPCRにより増幅し、配列決定した。この断片は、挿入配列にわたっており、cps遺伝子から始まり、ホタルまたはnanoluc遺伝子を介して交差し、そして下流配列へと交差していた。完全なcps遺伝子は、以下のオリゴDBON0398およびpMAK uprを用いてPCR増幅した。
DBONO398: TGCTATATTATAGGAACATGGGAA (配列番号53)
遺伝子は、オリゴDBONO273、DBONO398、およびpMAK uprを用いて配列決定した。
PCR 断片は、以下のプライマーを用いて増幅した。
DBONO273: TGCTTACATGCCAGTAGGGGT (配列番号54);および
DBONO382: ACGACGGCCAGTGAATTCCCTCGTGGTGTTCTGACTCCCG (配列番号55)
nanolucファージは、以下のオリゴを用いて配列決定した。
DBONO273;DBONO382;DBONO361: TGGCTCTACATGCTTAGGGTTCC (配列番号56);
DBONO360: CCTCTAGCTCAAATTAACGCATCTGT (配列番号57);
DBONO362: GTATGAAGGTCTGAGCGGCG (配列番号58);および
DBONO363: GATCTGGCCCATTTGGTCGC (配列番号59)。
ホタルファージは、以下のオリゴを用いて配列決定した。
DBONO273;DBONO382;DBONO360;DBONO361;DBONO274;
CGCATAGAACTGCCTGCGTC (配列番号60);DBONO151;
CACCCCAACATCTTCGACGC (配列番号61);および、
DBONO152: GCGCAACTGCAACTCCGATA (配列番号62)。
配列決定は、Genewiz, Incにより行った。Geneiousソフトウェアパッケージを使用しアラインし、各ファージについてコンセンサス配列を作成した。
上述のように、以下の組換えファージを作成し挿入部位の領域を配列決定した。
挿入ホタルルシフェラーゼを含むファージ
LP48::ffluc (配列番号23);
LP99::ffluc (配列番号24);
LP101::ffluc (配列番号25);
LP124::ffluc (配列番号26);
LP125::ffluc (配列番号27);
LP143::ffluc (配列番号28);
A511::ffluc (配列番号29);および
P100::ffluc (配列番号30)。
挿入ルシフェラーゼを含むファージ
LP124::nluc (配列番号31);
LP125::nluc (配列番号32);
A511::nluc (配列番号33);
P100::nluc (配列番号34);および
LP40::nluc (配列番号35)。
挿入されたホタルルシフェラーゼコード配列を含むファージの挿入部位の領域は、表2に示す部分を含む。
挿入されたnanolucルシフェラーゼコード配列を含むファージの挿入部位の領域は、表3に示す部分を含む。
各ファージについてのcpsオープンリーディングフレームおよびコードされるタンパク質を表4に示す。
上記のファージは全て、上記の方法を用いて操作した。部分的なゲノム配列により、A511に使用されるプライマーは、LP48、LP124、およびLP125のPTVを作成するのにも使用できることが示された。LP99、LP101、またはLP143に利用可能なゲノム配列は現時点ではなかった。A511 PTVプライマーを用いて、PTV構築のための適切な断片をA511と同様に増幅することが可能であった。これは、これらのファージ間におけるcps遺伝子間の相同性を反映している。ルシフェラーゼ遺伝子挿入部位は、A511::fflucにおけるもの(cps遺伝子終止コドンTAAの後)と同じ位置にあった。
HIS-タグ付きファージの操作
組換えファージによるリステリアの感染によって生成されたシグナルの濃縮を可能にするために、HISタグを含む組換えファージの代替バージョンを作製した。6xHISタグ(配列番号63)は、組換えタンパク質の濃縮および精製に一般的に使用されるアフィニティータグである。
HISタグは、一般的に、最適位置が先験的に未知であることが多いため、タンパク質のN末端またはC末端に配置される。タグ付けされるタンパク質の構造、ならびに基質との相互作用によって、タグ配列は、酵素機能を干渉、阻害、または増強する。このような理由からファージを操作して、N末端またはC末端のいずれかにHISタグを付加した。
また、少数のアミノ酸残基を含むスペーサ配列は、HISタグとタグ付けされる遺伝子の間にあることが多い。このスペーサのサイズ、電荷、その他の特徴は、酵素、基質、またはHIS-結合ビーズ/樹脂/抗体との相互作用に影響し得る。この理由のためにHISタグとNanolucタンパク質の間に2つの異なるスペーサを使用した。
A511、LP124、およびLP40のHISタグ付きnanolucバージョンは、タグの付いていないファージと同じ方法を用いて構築した。HISタグおよびスペーサは、種々のDNA断片を増幅するために使用されるオリゴに配列を追加することにより、PTV構築中に導入した。A511、LP124、およびLP40のPTVを構成するために使用されるオリゴは、3つの全てのファージに共通する。
各ファージにつき以下の4つのバージョンを構築した。
a.C末端のロングスペーサ
b.C末端のショートスペーサ
c.N末端のロングスペーサ
d.N末端のショートスペーサ
C末端のロングスペーサPTVを構築するのに使用したオリゴは以下のものである。
a.UHR 断片: pMAK upfおよびDBONO380
b.NLUC 断片: DBONO379およびDBONO400
c.DHR 断片: DBONO401およびDBONO382
C末端のショートスペーサPTVを構築するのに使用したオリゴは以下のものである。
a.UHR 断片: pMAK upfおよびDBONO380
b.NLUC 断片: DBONO379およびDBONO402
c.DHR 断片: DBONO401およびDBONO382
N末端のロングスペーサPTVを構築するのに使用したオリゴは以下のものである。
a.UHR 断片: pMAK upfおよびDBONO380
b.NLUC 断片: DBONO403およびDBONO358
c.DHR 断片: DBONO359およびDBONO382
N末端のショートスペーサPTVを構築するのに使用したオリゴは以下のものである。
a.UHR 断片: pMAK upfおよびDBONO380
b.NLUC 断片: DBONO404およびDBONO358
c.DHR 断片: DBONO359およびDBONO382
PTVを構築および検証した後、上述のようにPIE法の残りを行った。
オリゴ配列:
DBONO400: ATTCAATTATCCTATAATTATTAATGGTGATGGTGATGATGACCTCCACCTGCTGCCGCCAGAATGCGTTCGCACA (配列番号64)
DBONO401: ATCATCACCATCACCATTAATAATTATAGGATAATTGAATAAAAAC (配列番号65)
DBONO402: ATTCAATTATCCTATAATTATTAATGGTGATGGTGATGATGTGCTGCCGCCAGAATGCGTTCGCACA (配列番号66)
DBONO403: TAATAAGAGGAGGTAAATATATATGCATCATCACCATCACCATGGTGGAGGTGCAGCAGTCTTCACACTCGAAGATTTCG (配列番号67)
DBONO404: AGCAACTAATAATAAGAGGAGGTAAATATATATGCATCATCACCATCACCATGCAGCAGTCTTCACACTCGAAGATTTCG (配列番号68)
HISタグのアミノ酸配列: HHHHHH (配列番号63)
HISタグのDNA配列: CATCATCACCATCACCAT (配列番号69)
ロングスペーサを有するC末端HISのアミノ酸配列: AAGGGHHHHHH (配列番号70)
ロングスペーサを有するC末端HISのDNA配列: GCAGCAGGTGGAGGTCATCATCACCATCACCAT (配列番号71)
ショートスペーサを有するC末端HISのアミノ酸配列: AAHHHHHH (配列番号72)
ショートスペーサを有するC末端HISのDNA配列: GCAGCACATCATCACCATCACCAT (配列番号73)
ロングスペーサを有するN末端HISのアミノ酸配列: HHHHHHGGGAA (配列番号74)
ロングスペーサのを有するN末端HIS DNA配列: CATCATCACCATCACCATGGTGGAGGTGCAGCA (配列番号75)
ショートスペーサを有するN末端HISのアミノ酸配列: HHHHHHAA (配列番号76)
ショートスペーサを有するN末端HISのDNA配列: CATCATCACCATCACCATGCAGCA (配列番号77)
各タグ付き酵素の挿入位置を表5に示す。この例では、番号は前出の表と同じである。
本実施例に記載の組換えファージを、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC(登録商標))に、2013年5月16日に寄託した。寄託は、寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項の下で行った。寄託したATCC(登録商標)特許寄託名称を表6に示す。
更なる配列を以下の表7に示す。
実施例2:組換えファージの調製
以下のようにファージ溶解物(ストック)を調製した。リステリア・モノサイトゲネスの単一コロニー(例えば、ATCCのEGD-e)を5mlの0.5X BHI液体に接種し、フロアシェーカー内で200rpm、30℃で一晩増殖させた。翌日、1000mlフラスコ内で、5mlの培養物を500mlの0.5X BHIで希釈し、フロアシェーカー内でで30℃、200rpmで4時間、あるいは、OD600が0.15に達するまで増殖させた。次いで、培養物を実施例9に記載の1x108pfu/mlの組換えファージで接種し増殖させた。フラスコを30℃に戻し、50rpmで4時間または溶解物が透明(<0.02のOD600)になるまで振とうした。溶解物を次いで0.45μmの真空フィルター、その後0.22μmの真空フィルターで濾過し、そして下記のように精製するまで4℃で保存した。
使用前に、ファージ粒子を、Sambrook and Russell, Molecular Cloning Volume 1, 3rd edition 2001に記載されているような一般的な方法を用いて精製した。簡単に言えば、ファージ粒子を、pp2.43-2.44に記載のプロトコル6「Precipitation of Bacteriophage Lambda Particles from Large-scale Lysates es」(これは、参照により本明細書に援用される)を用いて、溶解物から沈殿させた。ただし、以下の例外があった:クロロホルム抽出ステップ、DNアーゼおよびRNアーゼのステップを省略した。ファージ粒子を、その後、pp2.47-2.51に記載のプロトコル8「Purification of Bacteriophage Lambda Particles by Isopycnic Centrifugation through CsCl Gradients」(これは、参照により本明細書に援用される)を用いる塩化セシウム勾配により精製した。ただし、以下の例外を除いた:ステップ勾配(Step gradients)はBeckman XL-90超遠心機で22,000rpmで2時間SW28ローターを用いてスピンし、平衡勾配(Equilibrium gradients)はBeckman XL-90超遠心機で47,000rpmで24時間70.1tiローターを用いてスピンした。
平衡勾配物からのファージバンドを採取する際に、ファージを4℃で24時間Pierce G2 Slide-a-lyzerカセット(10,000MWCO)内で、4LのSMバッファに対して透析した。ファージストックは、その後、使用するまで4℃で保存した。
実施例3:組換えファージを使用したアッセイの感度および速度
ファージLP40::nluc、LP124::nluc、およびA511::nlucのストックを本明細書の実施例に従って調製した。本アッセイでは、これらのファージを使用してリステリアを検出した。本実施例では、アッセイにより達成された検出の下限値およびアッセイの速度を調べる。
リステリアの培養物を30℃で一晩0.5X BHI培地で飽和するまで増殖させた。この培養物を、新鮮な0.5X BHI培地中で1:5に希釈し、2時間30℃で回収した。回収した培養物を、その後、同じ培地で1x10-1〜1x10-8に連続希釈した。これらの各希釈液の細胞濃度は、非選択培地にプレーティングすることによって決定した。続いて、100μlの各細胞希釈物を、100μlの組換えファージカクテルと共に30分、60分、120分、または180分インキュベートした。組換えファージカクテルは、各々の最終濃度が1x107で、合計ファージ最終濃度が3x107のLP40::nluc、LP124::nluc、およびA511::nlucを有していた。インキュベーションの終了時に、1容量のNanoGlo(1:50の比率のNanoGloバッファおよび基質)を加え、ベンチで2分間インキュベートし、Sirius Lルミノメーター(Titertek Berthold)を用いて10秒間測定値を読み取り、1秒の積分値を用いることによって結果を測定した。10個の読み取り値の平均値を用いて試料のRLU値を決定した。検出の下限値(LLOD)は、3つの独立した陰性反応の平均値を測定し3つの標準偏差を添加する確立された方法によって決定した。
結果は、30分のLLODが100個の細胞、60分のLLODが10個の細胞、120及び180分の時点では1個の細胞を検出できることを示す。
第2の実験では、リステリアの培養物を30℃で一晩0.5X BHI培地で飽和するまで増殖させた。この培養物を、新鮮な0.5X BHI培地中で1:5に希釈し、2時間30℃で回収した。回収した培養物を、その後、同じ培地で1x10-1、1x10-2、1x10-3、1x10-4、1x10-5、1x10-6、1x10-7、5x10-7、および1x10-8に連続希釈した。これらの各希釈液の細胞濃度は、非選択培地にプレーティングすることによって決定した。5つの独立した希釈を実施し、アッセイした。簡単に説明すると、100μlの各細胞希釈物を100μlの組換えファージカクテルと共に指定の時間インキュベートし生成物を上述のようにアッセイした。検出の下限値(LLOD)は、3つの独立した陰性反応の平均値を測定し3つの標準偏差を添加する確立された方法によって決定した。
各試料における各希釈液についての細胞数のおおよその予想値を、X軸に沿って示す。いかなる倍率の細胞希釈液についても、各アリコート間で細胞数の正規分布が期待される。このことは、データに見られる。陰性対照試料は、バックグラウンドの発光レベルが非常に一貫している。最も低い希釈では5個の検査アリコートのうちの3つがバックグラウンドと区別できず、このことより、これらの試料がいかなる細胞も含んでいなかったことが示される。4番目のアリコートはバックグラウンドよりも約250〜275 RLU高いシグナルで、5番目のアリコートはバックグラウンドよりも約500〜550 RLU高いシグナルであり、このことより、これらの試料はそれぞれ、1つまたは2つの感染可能な標的細胞を含むことが示される。同様の関係は、二番目に低い希釈についても見られる(アリコート当たり4〜6個の細胞と予想)。これらのアッセイは、1、7、5、5、および4個の細胞を含む試料をそれぞれ区別する。
本実施例では、単一の標的細胞から生成されたシグナルは、バックグラウンドと同程度なので、単一の細胞が検出されたときに生成されるシグナルはバックグラウンドの約2倍であることに留意されたい。本開示によれば、その関係は必ずしもすべてのアッセイについて存在するわけではなく、当業者はこのことは必須というわけでないことを理解するであろう。重要なのは、この方法は、単一の細胞について解像(single cell resolution)し、少なくとも1〜10個の範囲にわたる細胞数の識別を可能にすることである。その範囲を超えると、細胞数の正確度は、細胞ごとに産生する生成したシグナルがばらつくため低くなる。
実施例4:スポンジからの細胞の回収
環境微生物試料は、食品加工工場の機器の一部の表面や食品製品そのものといった固体基質に付着して発見されることが多い。かかる物質から微生物汚染検査のために試料を採取することは困難であることが多い。例えば、食品製品そのものが汚染されているかどうかを決定するために食品製品自体の試料を検査する必要があるが、この必要性のため、食品の成分を取り出すのに時間がかからず工程が高価でない場合、食品の成分も検査に供することになる。同様に、(食品、機器、排水溝などの)環境表面から試料を採取すると、存在し得る任意の微生物のみならず、洗浄剤及びバイオフィルム成分といった環境汚染物質をも採取してしまう結果となる。本実施例では、ファージベースの微生物検出アッセイの状況において、かかる汚染物質の影響に対応する。
固相試料の状況では、これらの問題は、LetheenブロスSSL10LETを染み込ませたカスタムスポンジスティック(3M)を使用して採取することにより対応する。Letheenブロスを染み込ませた3Mスポンジスティックは、滅菌袋に入って出荷され10mLのLetheenブロスを染み込ませた殺生物剤フリーのセルローススポンジである。プラスチックのハンドルを有し、これにより、ユーザがスポンジを直接扱う(そしておそらく汚染)することなく環境試料を採取でき、そして試料を採取する際に排水溝、パイプ、およびクレバス内に到達しやすくなる。セルロース材が、生物をスポンジマトリックス内または表面上に採取し保持する。Letheenブロスは、例えば、四級アンモニアなどの洗浄用の化学物質を中和し、検出対象の生物を生きたまま保持しやすくする。
プラスチックのハンドルには、汚染しないようにユーザがそれを超えて接触してならないポイントを知らせるための親指ガイドが付いている。試料を採取した後、スポンジを袋に戻し、プラスチックのハンドルを折って、袋の中にはスポンジだけがある状態で密封できるようにしてもよい。
L.モノサイトゲネス1839株を30℃で2時間振とうし、リフレッシュした(1mL in 4mL BHI)。リフレッシュした1839株のODを決定し、おおよその細胞濃度に変換した(cfu/mL = 2.0x109*OD - 9.0x107)。次いで、細胞をLetheenブロスで連続希釈し(1:10)、1x106 cfu/mLに最も近い7mLの希釈液を作成した(典型的には1x10-2希釈)。
バッファを、3Mスポンジスティックから取り出した。1x106 cfu/mLに最も近い希釈液を1mLスポンジから取り出したバッファに添加した。1x106 cfu/mLに最も近い希釈液を1mLスポンジにも添加した。両方の試料を、室温で60分間インキュベートした。
その後、スポンジを絞り、バッファ/細胞を抽出した。100μLのバッファを各条件から取り出し、それぞれ、1.5mLのエッペンドルフチューブに添加した。
各チューブを、その後100μLのA511:ffに1.0x107 pfu/mLで感染させた。20μLの各感染物を、その後、プレーティングし、3時間30℃でインキュベートした。
スポンジから回収したnanolucタンパク質の量を次のように定量した。NanoGloバッファおよび基質を、Promega社の説明書に従って混合した(1:50=基質:バッファ)。次いで、1容積の試料と1容積のNanoGloを、エッペンドルフチューブ内で混合し、ベンチ上で2分間インキュベートした。
発光量を、Sirius Lルミノメーター(Titertek Berthold)を用いて10秒間測定値を読み取り、1秒間の積分値を求めた。
10個の読み取り値の平均値を用いて試料のRLU値を決定した。
細胞回収率を決定するために、100μLの1x10-4、1x10-5、および1x10-6Letheenブロス希釈液を、0.5x BHIプレート上にプレーティングした。細胞希釈液から100μLをスポンジバッファ内のスポンジに添加した。スポンジから得た細胞、スポンジバッファ内の細胞、および3M Letheenブロスから得た細胞の1:10および1:100希釈液を調製した。その後、100μLの未希釈液、1:10および1:100希釈液をBHIプレート上にプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。スポンジから回収した細胞の数を、Letheenブロスバッファのみを用いた細胞数と比較した。スポンジから回収した細胞のCFU / Letheenブロス回収率のCFU× 100%= 細胞回収率%である。
本実施例で示した両方のアッセイの結果を表8に示す。
これらの実験より、対照と比べ約28%の細胞が、スポンジから回収されることが示された。また、所与のスポンジから回収した細胞の割合も、バッファのみを用いた場合の細胞と異なっていた。これらの値が健康的な浮遊細胞ものであること(および、その100万個がスポンジに加わっていたこと)を考えると、更なる課題は、より少ない細胞しか存在しない場合、環境試料を採取するのに使用するスポンジから細胞を回収することであろう。
この知見は、固体基質に結合した試料の状況で利用するファージベースの細菌検出アッセイにおいて重要な意味を持つ。採取スポンジから試料細胞を取り出してファージが細胞に感染できるようにすることに依存するアッセイの形式は、スポンジから十分な割合の細胞を回収してアッセイ感度を損なわないようにすることに依存する。例えば、(スポンジを絞ることによって回収された5〜7mLのうち)1mLの材料を検出するように構成されたアッセイでは、これらのデータは、出発材料の20%未満がサンプリングされることを意味する。このアッセイは、典型的には細胞の30%未満がスポンジマトリックスから回収されることを考慮すると、検出用にアクセス可能なスポンジによって採取された出発細胞の全体の約7%しか有しないこととなりアッセイ感度に大きな影響を与える。
この結果は、これらの種類の試料にとって、代替的なアッセイ形式がより効率的であり、より高い精度、感度、および/または特異性をもたらすことを示唆する。
実施例5:スポンジからのファージおよびルシフェラーゼの回収
固体基質を使用して、微生物により汚染されている可能性のある試料を採取し、この固体基質から液体中に細胞(存在する場合)を取り出し、その後、ファージと液体を組み合わせる代わりに、(液体中の)ファージをスポンジに直接接触させて、ファージがスポンジに関連して存在し得る標的細胞に感染できる機会を得るようにする。これにより、標的細胞がスポンジから回収できるか否かにかかわらず、ファージがスポンジに関連する任意の標的細胞に感染できるようになる。よって、液体をサンプリングし、ファージが感染した標的微生物(存在する場合)が産生するマーカーについてアッセイすることにより、検出感度の高い方法が簡便になるであろう。このアッセイ形式は、実施例4で特定された課題を回避するであろう。
翻って、この種のアッセイ形式の効率は、固体支持体から放出され下流の検出にアクセス可能なファージおよび/またはマーカーの比率に部分的に依存することになる。例えば、固体基質に捕捉されたファージおよび/またはマーカーの比率が高すぎる場合、アッセイへのアクセスが不能になり、アッセイの性能を低下させる。この問題を評価するための予備実験は、スポンジを用いたインキュベーション後のファージおよびルシフェラーゼ酵素の回収率をベースにするものであった。
プロトコル、実行番号1:
4mLの濾過していないA511:nlucの各溶解物について、1.2x1010 pfu/mLの力価からスタートし、4.0x109、4.0x108、および4.0x107 pfu/mLの力価に希釈した希釈物を調製した。
各溶解物の希釈
1.なるべく多くのLetheenブロスが出るように、3Mスポンジスティック#SSL10LETを絞った。3mLのLetheenブロスを15mL円錐管に移した。1mLの溶解物希釈液を、この15mL円錐管に加えた。
2.なるべく多くのLetheenブロスが出るように、第2のスポンジを絞り、15mL円錐管に移した。このうち3mLをスポンジに接触させないように、スポンジスティックの袋に戻した。1mLの溶解物希釈物をこの液体に加え、混合し、混合物をスポンジに浸した。
3.円錐管およびスポンジを、添加したファージと共に30℃で3時間インキュベートした。
RLUバックグラウンドの検出
インキュベートした円錐管の各々から、100μLを移してそれぞれ3本の微小遠心管に移した。
インキュベートしたスポンジの各々から、なるべく多くの液体を絞り出し、15mL円錐管に移した。100μLを円錐管からそれぞれ3本の微小遠心管に移した。
全ての微小遠心管をSirius Lルミノメーターで合計40秒読み取った。ここで、100μLのPromega NanoGlo試薬#N1130を20秒で注入した。
力価:
各円錐管(インキュベートまたはインキュベート後のスポンジから絞った)から100μLを96ウェル力価プレートの3つのウェルのそれぞれに移した。溶液は、10倍希釈を8回行う連続希釈した。各希釈物のセットを、1839個の細胞が覆っている調製BHIプレート上に3回プレーティングした。
プロトコル、実行番号2:
濾過していないLP124:nlucの溶解物を用いて、1.2E10 pfu/mLの力価からスタートし、プロトコル1を繰り返した。
結果は、ファージ力価および3Mスポンジスティックに添加したファージからのRLUシグナルの両方で約30%の回収率であったことを示す。これは、微生物検出アッセイの間にスポンジに関連するファージまたはルシフェラーゼの約70%が内部に結合または捕捉されることを示している。これは、スポンジの存在下で起こる感染から十分なシグナルを得るには、ファージのファージ濃度を高くして使用する必要があること示唆している。
重要なことに、この回収率は、固体基質に関連する細胞の感染及び感染後におけるファージおよびルシフェラーゼ酵素の回収に依存するアッセイが、実現可能なアッセイ形式であることを意味する。また、この結果は、このアッセイ形式は、懸濁相アッセイ形式と比較して、より高い精度、感度、および/または特異性を有し得ることも示唆する。
実施例6:アッセイ感度
この実験では、懸濁していない状況で標的細胞の感染を利用するアッセイ形式の感度を調べた。
プロトコル:20mLのA511:nlucおよびLP124:nlucファージカクテルを、合計ファージが4.0x107 pfu/mLになるように調製した。
4mLの1839株の細胞を希釈系列1x10-01〜1x10-08で調製した。希釈していない培養物の最終細胞数は、5.1x109 cfu/mLであった。
各細胞希釈物についてなるべく多くのLetheenブロスが出るように、スポンジを絞った。2mLの絞り液を15mL円錐管に移した。1mLの1mLの細胞を、正しい希釈でファージに加えた。
なるべく多くのLetheenブロスが出るように、第2のスポンジを絞り、15mL円錐管に移した。絞り出した容量およびスポンジに残った対応する容量(10mL-絞り出した容量=残った容量)を記録した。このうち2mLをスポンジに接触させないように、スポンジスティックの袋に戻した。正確な希釈の1mLの細胞と1mLのファージをこのLetheenブロスに加え、混合した。全容量を、スポンジに接触させて浸した。
その後、円錐管とスポンジを、添加したファージと共に30℃で3時間インキュベートした。
インキュベートした円錐管の各々から、100μLを移してそれぞれ3本のエッペンドルフ管に移した。
インキュベートしたスポンジの各々から、なるべく多くの液体を絞り出し、15mL円錐管に移した。100μLを円錐管からそれぞれ3本のエッペンドルフ管に移した。
全ての微小遠心管をSirius Lルミノメーターで合計40秒読み取った。ここで、100μLのPromega NanoGlo試薬#N1130を20秒で注入した。
結果を表9に示す。
これらのデータは、スポンジの感染により、13個未満の細胞という感度で検出可能なシグナルがもたらされることを示す。
実施例7:アッセイ期間
この実施例は、1)スポンジとファージを接触させ、組換えファージが試料内に存在する標的微生物に感染するのに十分で、かつ、この標的微生物が異種核酸配列によりコードされるマーカーを産生するのに十分な条件を、ファージに暴した環境試料に対して与えてから、2)培地をスポンジ支持体およびファージから取り出してマーカーを検出するまでの時間の長さがアッセイ性能に与える影響に焦点を当てる。
プロトコル:
実行番号1:
1日目:
40個の環境試料のスポンジを魚の包装/加工施設の排水溝および機器からで採取し、そのうち5個をランダムに選択した。
試料を採取するのに使用したものと同じロットの3Mスポンジスティックで新しい滅菌スポンジを選び、陰性対照として使用した。
各スポンジから、液体を全て絞り出し滅菌50mL円錐管に移した。5%グルコースおよび1%グリセロールを添加した10mLの0.5Xブレインハートインフュージョン培地をスポンジに加えた。液体を分散させるためにスポンジを15秒間優しくマッサージした。次いで、40mLのUVM選択培地を50mL円錐管に加えた。スポンジを30℃で1時間置いた。円錐管は、キャップを緩め、30℃で24時間置いた。
1時間後、スポンジを30℃のインキュベーターから取り出した。各スポンジについて、液体を全て袋の角に絞り出し、1mLのA511::nluc、P100::nluc、およびLP124::nlucのファージカクテル(全ファージで1.1x109 pfu/mL)を添加し混合した。その後、液体を全てスポンジに再吸収させた。液体を分散させるために袋を15秒間優しくマッサージした。スポンジを再び30℃で3時間置いた。
3時間後、スポンジを30℃のインキュベーターから取り出した。各スポンジについて、液体を全て袋の角に絞り出し、900μLを3本の微小遠心管に移した(各300μL)。各試料をSirius Lルミノメーターで合計40秒読み取った。ここで、100μLのPromega NanoGlo試薬#N1130を20秒で注入した。この手順は、5、7、9、そして24時間まで繰り返した。
注:5時間の時点で、シグナルが高いと予想されるものを含め全ての試料に見られるシグナルが低かったため、Sirius Lで試料を読み取る前に清澄化スピンを追加した。各試料から300μlを、第2の微小遠心管に加え、16.1 rcfで1分間スピンした。その後上清を新しい微小遠心管に移し、他の遠心管と同様に読みとった。
2日目:
RLUを決定する為の24時間の時点の経過後、各袋から100μLをMOX寒天プレートにプレーティングした。100mLのUVMを袋に加えた。袋を30℃で24時間インキュベートした。
24時間後、UVM富化した絞り液を読み取った。50mL円錐管を、30℃のインキュベーターから取り出した。1mLを各円錐管から微小遠心管に移した。微小遠心管を4,000gで1分間スピンした。上清を除き、ペレットを100μLの1.0E7ファージ内に再懸濁した。微小遠心管を、30℃で3時間置いた。
3時間後、微小遠心管を、30℃インキュベーターから取り出し、最大速度で1分間スピンした。50μLの上清を、96ウェルのルミノメータープレートのウェルに移した。ウェル当たり50μLのNanoGloを注入し、ウェル当たり2秒遅れで1秒間の各読み取り値を読み取ることでGlomax 96ウェルのルミノメーターの読み取りを行った。
50mL円錐管の各々から100μLをMOX寒天プレートにプレーティングし培養確認した。
3日目:
24時間後、UVM富化したスポンジを読み取った。スポンジを、30℃のインキュベーターから取り出した。1mLを各々から微小遠心管に移した。微小遠心管を4,000gで1分間スピンした。上清を除き、ペレットを100μLの1.0E7ファージ内に再懸濁した。微小遠心管を、30℃で3時間置いた。
3時間後、微小遠心管を、30℃のインキュベーターから取り出し、最大速度で1分間スピンした。50μLの上清を、96ウェルのルミノメータープレートのウェルに移した。ウェル当たり50μLのNanoGloを注入し、ウェル当たり2秒遅れで1秒間の各読み取り値を読み取ってGlomax 96ウェルのルミノメーターを読み取った。
各袋から100μLをMOX寒天プレートにプレーティングし培養確認した。
実行番号2:
読み取り前の清澄化スピンを加え、全ての時点において上述の手順を繰り返した。
結果を表10に示す。
実行番号1の結果は、試料の読み取り前に清澄化のためのスピンを追加すると、スピンしない場合に得られる24時間後での値が5時間で得られ、精度を向上できることを示す。実行番号2の結果は、このスピンが、スピンした場合の実行番号1でに得られる5時間後での値が3時間で得られて、精度を向上し、感染後3時間での試料読み取り値は妥当な精度であることを示す。
実施例8:代謝の刺激
環境試料のファージベースの検出アッセイは、伝統的に、試料中に存在する標的細胞の数を増幅するための富化工程を利用して行われる。このような条件の1つの影響として、この方法で処理されていない試料中の細胞よりも代謝を刺激することがある。本実施例では、本明細書に開示されたアッセイの特定の実施形態は、別個の代謝刺激手順を必要としないことを示す。
40個の環境試料を魚の加工施設の排水溝および機器から採取し、そのうち10個をランダムに選択した。試料はそれぞれ5個から成る2つの群に分けた。第1及び第2群は、5つの同じ箇所から採取した。つまり、各群により二重検査をすると言うことである。
試料を採取するのに使用したものと同じロットの3Mスポンジスティックで新しい滅菌スポンジを2個選び、陰性対照として使用した。
プロトコル1:
(試料1〜5)
各スポンジから、液体を全て絞り出し滅菌50mL円錐管に移した。5%グルコースおよび1%グリセロールを添加した3.5mLの0.5Xブレインハートインフュージョン培地をスポンジに加えた。液体を分散させるためにスポンジを15秒間優しくマッサージした。次いで、40mLのUVM選択培地を50mL円錐管に加えた。スポンジを30℃で1時間置いた。円錐管は、キャップを緩め、30℃で24時間置いた。
1時間後、スポンジを30℃のインキュベーターから取り出した。各スポンジについて、液体を全て袋の角に絞り出し、1%グルコース、5%グリセロール、6%塩化リチウムおよび0.12%ナリジクス酸を補充した1.5mLの0.5Xブレインハートインフュージョン、および1mLのA511::nluc、P100::nluc、およびLP124::nlucのファージカクテル(全ファージで6.0x108 pfu/mL)を添加し混合した。液体を全てスポンジに再吸収させた。液体を分散させるために15秒間優しくマッサージした。スポンジを再び30℃で3時間置いた。
3時間後、スポンジを30℃のインキュベーターから取り出した。各スポンジについて、液体を全て袋の角に絞り出し、300μLを微小遠心管に移した。16.1 rcfで1分間スピンし、上清を新しい微小遠心管に移した。Sirius Lルミノメーターで合計40秒読み取った。ここで、100μLのPromega NanoGlo試薬#N1130を20秒で注入した。
読み取り後、各袋から500μLの液体を、MOX寒天プレートにプレーティングした。100mLのUVM選択培地をスポンジに加え30℃で24時間インキュベートした。
プロトコル2:
(試料6〜10)
各スポンジから、液体を全て絞り出し滅菌50mL円錐管に移した。5%グルコースおよび1%グリセロールを添加した3.5mLの0.5Xブレインハートインフュージョン培地を袋の角に加え、1%グルコース、5%グリセロール、6%塩化リチウムおよび0.12%ナリジクス酸を補充した1.5mLの0.5Xブレインハートインフュージョン、および1mLのA511::nluc、P100::nluc、およびLP124::nlucのファージカクテル(全ファージで6.0x108 pfu/mL)を添加し混合した。液体を全てスポンジに再吸収させた。液体を分散させるために15秒間優しくマッサージした。スポンジを再び30℃で4時間置いた。
40mLのUVM選択培地を50mL円錐管に加えた。円錐管は、キャップを緩め、30℃で24時間置いた。
4時間後、スポンジを30℃のインキュベーターから取り出した。各スポンジについて、液体を全て袋の角に絞り出し、300μLを微小遠心管に移した。16.1 rcfで1分間スピンし、上清を新しい微小遠心管に移した。Sirius Lルミノメーターで合計40秒読み取った。ここで、100μLのPromega NanoGlo試薬#N1130を20秒で注入した。
読み取り後、各袋から500μLの液体を、MOX寒天プレートにプレーティングした。100mLのUVM選択培地をスポンジに加え30℃で24時間インキュベートした。
2日目:
24時間後、UVM富化した絞り液及びスポンジを読み取った。50mL円錐管およびスポンジ袋を、30℃インキュベーターから取り出した。1mLを各円錐管/スポンジから微小遠心管に移した。微小遠心管を6,000gで2分間スピンした。上清を除き、ペレットを100μLの1.0x107ファージ内に再懸濁した。微小遠心管を、30℃で3時間置いた。
3時間後、微小遠心管を、30℃のインキュベーターから取り出し、16.1 rcfで1分間スピンした。50μLの上清を、96ウェルのルミノメータープレートのウェルに移した。ウェル当たり50μLのNanoGloを注入し、ウェル当たり2秒遅れで1秒間の各読み取り値を読み取ることによりGlomax 96ウェルのルミノメーターの読み取りを行った。
各50mL円錐管から100μLを、MOX寒天プレートにプレーティングし培養確認した。
結果を表11に示す。
プロトコル1の合理性は、試料中に存在する細胞が代謝的に活性ではないことがあることであり、これにより、細胞が、ファージ感染および/またはファージにコードされるマーカーの産生に有効でなくなることがある。そうである場合、ファージと細胞を接触する前に、代謝刺激を1時間追加することで、細胞を、ファージによる感染に対してより感染しやすいおよび/またはファージによってコードされるマーカーを産生しやすい状態にすることができると考えられる。この結果は、感染時間にウェイクアップするために使用されるであろう時間を追加すると、ウェイクアップする工程を有するものと同レベルの精度が得られることを示す。これは、いくつかの点で重要である。例えば、これは、(1時間超の)追加ウェイクアップ期間を加えても、アッセイの精度が向上する可能性は低いことを意味する。また、(ファージの非存在下での)ウェイクアップ工程は、アッセイの性能に不要なことを示す。ユーザの参加を必要とする工程数が減少すると、アッセイの商業性および有用性が概して増するため、これらの点は重要である。また、これは、試料の採取から結果を得るまでの合計アッセイ時間が非常に短くなり得ることも示す。
実施例9:ファージ濃度の影響
固体支持体環境から得られた微生物試料を、ファージベースのアッセイを含む微生物アッセイで検出することが困難であることは、よく知られており本明細書においても実証されている。本明細書で提供するデータは、懸濁液内にない標的微生物細胞の感染により、いくつかのアッセイパラメータが影響されることを示す。これは、他の状況で決定される微生物検出アッセイにおいて使用する最適なファージ濃度を直接この状況に適用できないことを意味する。したがって、ファージ濃度とアッセイ性能との関係を調べた。
一日に一施設内の3つの異なる検査地点から採取した10個の環境試料を用い、ファージ濃度の影響を直接比較した。
40個の環境試料を、施設内の2階分の排水溝と機器の一部(送付及び受取領域におけるスケール)から採取した。検査地点は、スポンジスティックで拭い取り、スポンジスティックを袋に戻した。プラスチックスティックをスポンジから折り、袋を密封し、ラボに返却した。12個の追加のスポンジを開け、いかなる表面も拭き取ることなくスポンジスティックを除去した。これらのスポンジは、設定の陰性対照として機能する。
A511::nluc、LP40::nluc、およびLP124::nlucのファージカクテルを混合・希釈して、各ファージの希釈濃度を、9x109 pfu/mL、4.5x109 pfu/mL、2.25x108 pfu/mL、および9x108 pfu/mLに調製した。各カクテルにおいて、各ファージは同じpfu/mLで存在し、その数は総ファージpfu/mLである。つまり、カクテル内の個々のファージに対応する値は、記載されている値の3分の1である。
全液体を、堅く一回絞ってスポンジから取り出した。液体を、その後、血清ピペットを使用して20mLのUVM富化ブロスを含有する50mLの円錐管に移した。これらの管を、30℃で一晩置いた。
14mLのファージカクテルを70mLのスポンジ感染バッファに添加した。6mLのスポンジ感染バッファ/ファージ混合物を、各スポンジに加え、10個の試料プラス3個の陰性対照を各ファージ濃度について平行して試験した。
ファージを添加した後、スポンジを3〜4回軽くマッサージし、スポンジ全体に液体を行きわたらせた。各スポンジを1回堅く絞ってスポンジから液体を抽出した。ピペットを用いて、500μLの液体をスポンジから1.5mLの微小遠心管に移した。次いでスポンジの袋を密封し、4時間30℃のインキュベーターに入れた。
管を、14,000×gで60秒間スピンした。300μLの液体を、新しい微小遠心管に移した。検出の4分前、各管に300μLのNanoGloバッファ/基質混合物を加え、各試料をBerthold SiriusLルミノメーターで検出し、1秒間の積分時間で20秒間の動態を読み取った。これは、各スポンジごとの試料特有の対照となる、T0における読み取り値を構成する。
4時間後、袋をインキュベーターから取り出した。各スポンジを1回堅く絞ってスポンジから液体を抽出した。ピペットを用いて、500μLの液体をスポンジから1.5mLの微小遠心管に移した。
2時間後、6時間または総インキュベーション後、袋を再びインキュベーターから取り出した。各スポンジを1回堅く絞ってスポンジから液体を抽出した。ピペットを用いて、500μLの液体をスポンジから1.5mLの微小遠心管に移した。
管を、14,000×gで60秒間スピンした。300μLの液体を、新しい微小遠心管に移した。検出の4分前、各管に300μLのNanoGloバッファ/基質混合物を加え、各試料をBerthold SiriusLルミノメーターで検出し、1秒間の積分時間で20秒間の動態(kinetic)を読み取った。これを、特定のスポンジが異常な挙動をしているか否かの指標となる、T0に対するT4の読み取り値とする。しかし、この態様は、本実施例で陽性または陰性を示すのに使用しなかった。
各試料について平均RLU値を計算した。陰性対照の平均値と標準偏差も計算した。閾値は、以下の式に従って決定される。
閾値= {1.2*[(Neg Avg) + (3*(StDev of Neg Avg))]}
この閾値より大きい平均RLU値を陽性とした。この閾値と同じまたはより小さい値を陰性とした。
翌日、液体富化物をインキュベーターから取り出し、100μlの各富化物をMOX寒天プレート上にプレーティングする。プレートを、24〜28時間35℃に置き、その後、L.モノコロニーについて検査する。また、確認のため、富化物を第三者機関にも送付する。測定値は、第三者機関の確認結果と一致するよう試料の%として表す。4時間の時点のデータを表12に示す。6時間の時点のデータを表13に示す。
これらのデータは、ファージ濃度が9e8 pfu/mLから9e9 pfu/mLに増加した場合、4時間および6時間のインキュベーションを用いるアッセイの性能における有意な改善を示している。この発見は、予想外かつ驚くべきことである、というのは、1x107以下のファージ濃度で完全液体アッセイ形式に使用すると、検査ファージカクテルが高い性能を示したからである(データは示さず)。理論に束縛されるものではないが、環境試料(特に汚れたもの)にはある成分が含まれており、この成分により、液体アッセイにおいて見られるのと同様の有効濃度に到達するためにはより高い濃度のファージが必要になるのだと推測される。そうであっても、感染の多重度は、1,000,000:1またはそれ以上のオーダーであり、これにより、検出可能なレベルのNanoLucタンパク質を産生可能となる前に細胞に対しファージが増え過ぎた場合、より多くのファージを追加するアッセイが不要なうえに有害にすらなり得ることが示唆されていたため、これらの非常に高いファージ濃度が利益をもたらすであろうことは予測不可能であった。
実施例10:触媒失活はファージ調製物におけるバックグラウンドを減少させる
PEG沈殿および塩化セシウム勾配法を用いて作られた、本明細書に開示の組換えファージnlucのファージ調製物は、1x10-4〜4x10-4のRLU / PFU値を有する傾向がある。これは、組換えファージゲノムによってコードされるnlucタンパク質は、溶解物の調製中に合成され、その後、溶解物から回収されたファージと関わることを示唆する。
これらの値は、好ましい値よりも未だ高いバックグラウンド値につながる。ファージ調製物のバックグラウンドをさらに低減する模索において、複数の努力がなされた。例えば、以下の努力がある:1)複数のPEG沈殿ステップ(全く改善が認められず);2)複数の段階勾配(全く改善が認められず);3)複数の連続勾配(全く改善が認められず);および4)HISビーズ/樹脂を用いた追加的バックグラウンドの除去(0〜15%のバックグラウンドの低減、調製物により異なる)。
このファージアッセイ系を使用するときに得られるノイズ対シグナル比を増加させるために、nanoluc酵素のNanoGlo基質とファージをインキュベートすることによってファージ調製プロセスから残った過剰な酵素を触媒的に失活させる試みを行った。
プロトコル
富化ファージ懸濁液(塩化セシウム勾配による、透析後)を、適切な容量(2〜5ml)のSMバッファ中で1x1011に希釈した。
50ml円錐管内で、NanoGlo基質をNanoGloバッファに対し1:50の比率で加えることにより、1容量のNanoGlo(Promega)を混合した。
1容量のファージ懸濁液と1容量のNanoGloを混合した。
30℃で24時間静置してインキュベートした。
針と注射器を用いて、ファージ/nanogloを透析カセットに移した(Pierce Slide-a-lyzer G2透析カセット、10,000MWCO)。
5LのSMバッファを4℃で一晩透析した。
針と注射器を用いて、透析ファージ懸濁液をカセットから取り出し50ml円錐管に移した。
必要に応じて力価測定した。
この触媒失活プロトコルを繰り返し、RLU/PFUを大幅に、典型的には、〜5x10-5 RLU/PFUまで減少させた。二つの最新触媒失活バッチを以下の表14に示す。
別の実験において、触媒失活の時間を0時間、3時間、6時間、および24時間にして比較した。結果は、3時間触媒を失活すると、バックグラウンドの発光が90%減少し、6時間の触媒失活だと92%の減少で、24時間の触媒失活だと発光が97%減少した。0時間の触媒失活だと、他の触媒失活プロトコルと同様の透析した場合、発光が79%減少した。この後者の結果は、NanoGlo基質が、透析手順の少なくとも一部に存在するためである。興味深いことに、触媒失活プロトコルは、触媒失活前の初期バックグラウンドとは独立して〜5e-5 RLU/PFUまでRLU / PFUの減少をもたらすことが実験全体を通じて繰り返し観察された。このように触媒失活はバッチ間のばらつきを減少するのに使用でき、翻って、全バッチにわたるアッセイの精度を向上させる。
触媒の失活の有効性が高いことは、いくつかの理由のために驚くべきことであった。例えば、nluc酵素は非常に安定でクロロホルム耐性であることが知られている。さらに、多くの分離方法(CsCl、タンジェンシャルフローろ過、限外ろ過など)にもかかわらず、汚染nlucをファージから完全に分離できなかったので、酵素がNanoglo基質に十分にアクセス可能であるかどうかが不明であった。酵素が十分にその触媒活性を失うために十分な触媒サイクルが0〜24時間で可能かどうかも不明であった。ファージが長い触媒インキュベーション時間によって損なわれてしまうかどうかも不明であった。以下に示すように、触媒失活工程により調製したファージと当該工程を経ずに調製したファージを比較するアッセイの比較により、触媒不活性化の利点はあらゆる損失を上回ることが実証された。
実施例11:触媒失活を利用して調製したファージ調製物の使用
本実施例は、触媒失活によりバックグラウンドが減少したファージ調製物を使用するアッセイに対する効果に焦点を当てたものである。
触媒失活を用いる場合と用いないで調製したLP40::nluc、A511::nluc、およびLP124::nlucの調製物を比較した。すべての場合において、ファージカクテルは、各ファージの濃度を同じにして混合した。検査濃度は、総ファージ数を1x109 pfu/mL、1x108 pfu/mL、および1x107 pfu/mLにした。ファージカクテルを0.5x BHIで希釈した。一晩静置した1mLのL.モノサイトゲネス1839培養物を4mLの0.5x BHIに希釈し、30℃で2時間振とうしてインキュベートした。この培養物を、0.5x BHIにより1x10-8希釈まで連希続釈した。希釈液を細胞カウント用に0.5x BHI寒天プレート上にプレーティングした。
40μLの各希釈物を6本の1.5mL微小遠心管に移した。対照として並行して40μLの0.5x BHIも6本の1.5mL微小遠心管に移した。これら6本ずつを、個々の希釈系列に分けた。各系列を、触媒的に失活または未処理のいずれである40μLのファージ濃縮物に感染させた。感染物を30℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、感染物を検出のために3つの96ウェルプレートに移した。プレートを2秒の遅延時間、1秒の積分時間で読み取った。
結果は、各ファージ濃度においてファージが触媒的に失活したかどうかについて比較した。このアッセイの閾値は、陰性対照(0.5X BHI中にファージのみ)の平均RLUをとり、その平均に3標準偏差を加算することによって決定される。感度は、閾値と希釈系列に対する最良適合線の交点を求めることによって決定され、これを検出下限値(LLOD)と呼ぶ。
データは、1x107濃度のファージだと、触媒的に失活したか未処理かにかかわらず、ファージ間でバックグラウンドや閾値の違いが無いことを示す。それより高い濃度のファージだと、触媒的に失活させたファージの閾値と未処理ファージの閾値との間が明確に分かれる。1x109濃度のファージだと、単一の細胞を検出することがより困難になるので、アッセイの感度に影響を与える。1x109の触媒的に失活させたファージのLLODは、このアッセイでは1個の細胞であった。1x109の未処理のファージのLLODは、このアッセイでは19個の細胞であった。
このデータは、ファージの濃度が増加するにつれて、バックグラウンドも対応して増加することを示唆している。いくつかの場合において、この増加の程度は、陰性試料間の絶対RLU出力のばらつきが大きいと、単一の細胞を検出可能な点を超えて閾値が上がる傾向になることもある。触媒的に失活させたファージ調製物の使用により、この影響を低減し得る。
また、これらのデータは、触媒的に失活させたファージ調製物によりもたらされるバックグラウンドの低下は、比較的低い濃度のファージを利用する用途には必須でないことがあるが、ファージの濃度が高い(他の条件は同じ)場合、バックグラウンドの低下はアッセイの感度に有益となるということを実証する。固体基質に関連する細菌の試料をアッセイする際に、明らかにそのような状況が発生する可能性がある。これらの状況では、ファージ濃度が高いと精度がより高くなるが、その利点はバックグラウンドが高い場合に幾分限定される。触媒的に失活させたファージ調製物の使用により、試料に対しファージ濃度を高くすることの利点がより完全に実現できるようになる。
実施例12:固体表面における細菌汚染の分析
この実施例で分析する試料は、排水溝、床、壁、機器(スケール、カート、テーブル、機械など)を含む食品加工工場内の様々な場所において種々の固体表面から採取した。
環境試料は、複数の箇所において種々な検査部位から採取した。採取プロトコルは以下の通りである。固相試料はLetheenブロスSSL10LET(3M)を使用したカスタムスポンジスティックを用いて採取した。Letheenブロスを使用した3Mスポンジスティックは、滅菌袋に入って出荷され10mLのLetheenブロスを染み込ませたセルローススポンジである。プラスチックのハンドルを有し、これにより、ユーザがスポンジを直接扱う(そしておそらく汚染)することなく環境試料を採取でき、そして試料を採取する際に排水溝、パイプ、およびクレバス内に到達しやすくなる。セルロース材が、生物をスポンジマトリックス内または表面上に採取し保持する。Letheenブロスは、例えば、四級アンモニアなどの洗浄用の化学物質を中和し、検出対象の生物を生きたまま保持しやすくする。
プラスチックのハンドルには、汚染しないようにユーザがそれを超えて接触してならないポイントを知らせるための親指ガイドが付いている。試料を採取した後、スポンジを袋に戻し、プラスチックのハンドルを折って、袋の中にはスポンジだけがある状態で密封できるようにした。
Letheenブロスで湿らせた3Mスポンジスティックを収納袋から取り出し、製造元の説明書に従って4インチ×4インチの固体表面をこすって採取した。採取後、収納袋にスポンジスティックを戻し、次のプロセスまで袋を閉じた。
1つの箇所から採取した各試料のセットにつき、追加のスポンジを3個開封し、いかなる表面もこすらないでスポンジスティックを取り出した。これらのスポンジを当該セットの陰性対照として使用した。2つのデータセットについては、中等度〜高度なシグナル減少を示し、陰性対照と同等のシグナルを示さず、陽性および陰性対照間のシグナルの差異を決定でききないため、これら両者のセットに使用した特定のファージ調製物に問題があったという仮説が導かれるためこれら2つのデータセットを除外した。この仮説は、現在調査中である。
LP40::nluc、A511::nluc、およびLP124::nlucのファージカクテルを、各ファージの希釈ストックと混合して希釈することにより総ファージの最終濃度を9x109 pfu/mLに調製した。ファージ調製物を実施例10に記載の触媒失活プロトコルで処理した。本実施例で使用した触媒失活処理をしていないファージ調製物中に存在するバックグラウンドの輝度は、従来技術の範囲であった。つまり、β試料に使用されるファージ調製物は、12,000 RLU〜81,000 RLUの範囲であった(9x109 pfu/mLの場合)。本実施例で使用した触媒失活処理したファージ調製物中に存在するバックグラウンド輝度は、1500〜10,000 RLUの範囲であった(9x109 pfu/mLの場合)。
全液体を、堅く一回絞ってスポンジから取り出した。液体を、その後、血清ピペットを使用して20mLのUVM富化ブロスを含有する50mLの円錐管に移した。これらの管を、30℃で一晩置いた。
14mLのファージカクテルを70mL(または42mL)のスポンジ感染バッファに添加した。6mL(または3mL)のスポンジ感染バッファ/ファージ混合物を、各スポンジに加えた(10個の試料プラス3個の陰性対照)。スポンジ感染バッファは、5%重量/体積グルコース、1%体積/体積グリセロール、1%重量/体積塩化リチウム、および0.002%重量/体積ナリジクス酸を補充した半濃度ブレインハートインフュージョン(BHI)培地(18.5 g/L Difco BHI培地)である。この混合添加物は、感染プロセスにおけるリステリアの回収および競合微生物の成長阻害を促進する。
ファージを添加した後、スポンジを3〜4回軽くマッサージし、スポンジ全体に液体を行きわたらせた。各スポンジを1回堅く絞ってスポンジから液体を抽出した。ピペットを用いて、500μLの液体をスポンジから1.5mLの微小遠心管に移した。次いでスポンジの袋を再密封し、4時間30℃のインキュベーターに入れた。
管を、14,000×gで60秒間スピンした。300μLの液体を、新しい微小遠心管に移した。検出の4分前、各管に300μLのNanoGloバッファ/基質混合物を加え、各試料をBerthold SiriusLルミノメーターで検出し、1秒間の積分時間で20秒間の動態を読み取った。これは、各スポンジごとの試料特有の対照となる、T0における読み取り値を構成する。
4時間後、袋をインキュベーターから取り出した。各スポンジを1回堅く絞ってスポンジから液体を抽出した。ピペットを用いて、500μLの液体をスポンジから1.5mLの微小遠心管に移した。
管を、14,000×gで60秒間スピンした。300μLの液体を、新しい微小遠心管に移した。検出の4分前、各管に300μLのNanoGloバッファ/基質混合物を加え、各試料をBerthold SiriusLルミノメーターで検出し、1秒間の積分時間で20秒間の動態を読み取った。これを、T4の読み取り値とする。
各試料について平均RLU値を計算した。陰性対照の平均値並びに標準偏差も計算した。閾値は、以下の式に従って決定される。
閾値= [(Neg Avg) + (3*(StDev of Neg Avg))]
この閾値より大きい平均RLU値を陽性とした。この閾値と同じまたはより小さい値を陰性とした。
翌日、液体富化物をインキュベーターから取り出し、100μlの各富化物をMOX寒天プレート上にプレーティングした。プレートを、24〜28時間35℃に置き、その後、L.モノコロニーについて検査した。また、確認のため、富化物を第三者機関にも送付した。
結果を表15に示す。表中の陽性の数および陰性の数は、第三者機関の確認結果に基づく。精度、感度、および特異性は、第三者機関の研究確認結果と一致するよう試料の%として表す。
実施例13:His-タグ付きルシフェラーゼ
固体基質に対する感染を利用するファージベースの微生物検出アッセイは、特定の状況で環境試料に対するアッセイの性能に影響を与えかねない多くの環境要因に遭遇することがある。本実施例では、組換えファージのゲノム内の異種核酸配列によってコードされるタグ付きマーカー等のタグ付きマーカーを使用する実現可能性について調査する。このアッセイでは、異なる構成のHISタグをnanoluc酵素に添加した。
本実験では、異種HIS-タグ付きルシフェラーゼタンパク質をコードする開示された組換えファージのファージ溶解物の調製物に関連するHIS-タグ付きnanolucタンパク質を利用した。このアッセイにこれらの調製物を使用すると、HIS-タグ付きルシフェラーゼの供給源を提供することになる。また、本明細書に開示の微生物検出アッセイに利用されるファージの存在下でHisタグルシフェラーゼを濃縮するためのHIS-タグ付きルシフェラーゼの有効性の評価が可能になる。
材料および方法:
LP40::nluc-L、LP40::nluc-S、LP124::nluc-L、LP124::nluc-S、A511::nluc-L、およびA511::nluc-Sファージのファージ溶解物を、実施例2の記載のように調製した。
磁気ビーズは、Life Technologiesから購入した(His-Tag Dynal beads Cat.10103D)。使用した結合バッファは、5%グリセロール、1%グルコース、300mM NaCl、および0.01%Tween20を含有する0.5x BHIであった。使用した溶出バッファは、5%グリセロール、1%グルコース、および300mMイミダゾールを含有する0.5x BHIであった。10mlの各検査ファージ溶解物を結合バッファで1.0x10-05に希釈して調製した。350μlのアリコートを初期RLU値の測定用に各管から採取した。
各試料および剰余分に十分なアリコートを採取することによって磁気ビーズを調製し、次に1.5ml管に入れ、磁気スタンドに挿入した。2分の分離時間の後、ビーズをかく乱しないように全液体を取り除き、ビーズを結合バッファで洗浄し、最後に、ビーズを元の容量の結合バッファで再懸濁した。
10μlのビーズを、ファージ溶解物の各管に分注し、管を回転台の上に置き、20分間インキュベートした。インキュベーション後、管を磁気スタンドに置き、ビーズを2分間液体から分離させ、そして350μlを未結合RLU値の測定のために各管から採取した。その後、全ての液体を各管から取り出し、ビーズを1mlの結合バッファ中に再懸濁し、1.5mlチューブに移した。磁気分離工程の後、全液体を再び取り出し、穏やかに回転させながら350μlの溶出バッファで10分間ビーズを処理した。最終的な磁気分離工程の後、放出RLU値の測定のために全液体を取り出した。
発光測定は、100μlのアリコートと100μlのNanoGloのルシフェラーゼアッセイ溶液(Promega、カタログ番号N11 10)を三連で用い、プレートリーダーで行った。測定値を使用して結合した出発NanoLucタンパク質割合とビーズから放出した値を計算した。
結果および考察
結果を表16に示す。NanoLucが結合した割合%は、試料の初期値とその試料の未結合値との差である。図示しないデータにおいて、溶出の効率が約95%であると決定されたことが示された。初期RLU値とビーズから放出したRLU値との比較は、ビーズを用いたシグナルを濃縮することによる実際のシグナル増加の尺度である。
2種のファージ溶解物についての結合効率の評価により、N末端にHISタグを有するファージは、コバルト改変された磁気ビーズに対し2種のC末端よりはるかに高い結合効率を示したことが明らかになった。これらのデータは、N末端結合についてのHISタグのアクセシビリティが優れていることを示す。初期シグナルのRLU値は、より短いスペーサを含むN末端の株から得られたファージについて最も高かった。また、これらの株は、最も高い放出シグナル値を与えた。これらの結果は、マーカータンパク質に対するタグの結合は、本明細書に開示のアッセイの状況においてシグナルを濃縮するために実行可能なアプローチであることを示している。この任意の工程により、いくつかの状況におけるアッセイ性能を向上させることができる。
実施例14:選択剤の存在下におけるアッセイの性能
生細胞を特異的に検出するリステリア汚染の従来のアッセイは、試料中に存在する標的微生物をある期間にわたり増殖させる工程を含んでいた。このウェイクアップ期間により、細胞がアッセイにおけるさらなる処理に適するようになる。最も一般的なアッセイは、培養物における細胞数を劇的に増加させ多くの細胞数で検出できるように、培養期間を延長させていた。このようなアッセイでは、標的微生物の検出は、いわゆるウェイクアップまたは修復条件によって細胞の代謝活性を促進したあとは行わない。また、環境試料をアッセイし生細胞を区別するファージベースの細菌検出方法は、標的細胞を増殖させる延長培養期間に依存していた。
論文(Busch and Donnelly, 1992) “Development of a Repair-Enrichment Broth for Resuscitation of Heat-Injured Listeria monocytogenes and Listeria innocua,” Appl. Environ. Microbiol., Vol. 58, No. 1, pp. 14-20において、著者らはリステリア修復ブロス(LRB)を開発した。LRPは、グルコース、酵母エキス、硫酸マグネシウム、およびピルビン酸塩を補充し、そしてMOPSの添加により緩衝したトリプチケースソイブロス(TSB)ベースの富化ブロスである。これらの補助剤の各々は、5時間以下で熱損傷したリステリアの修復を独立して促進することが見出された。
成長阻害剤(選択剤)の添加前における修復の効果を評価するために、著者らは、様々な選択的富化培地対LRB中で増殖させた熱損傷リステリア細胞の回復を比較した。これを行うために、損傷細胞の最初の接種物を、FDA富化ブロス(FDA)、リステリア富化ブロス(LEB)及びUVM富化ブロス(UVM)、またはLRBに添加した。5時間の回復後、選択剤(アクリフラビン、ナリジクス酸、およびシクロヘキシミド)をFDA及びLEBに使用したのと同じ濃度でLRBに添加した。すべての培養物を、合計24時間インキュベーションし、その後、非選択培地上にプレーティングすることによって細胞数を得た。選択富化培地(FDA、LEB、UVM)中での24時間のインキュベーション後の最終的なリステリア集団は、1.7 x 108〜9.1 X 108 CFU/mlであり、LRBにおける集団は平均2.5 x 1011〜8.2 x 1011 CFU/mlと一貫していた。著者らは、リステリアの回復時において非選択的な修復富化工程を使用しないと、損傷細胞が培養ベースの方法において検出しそこなうと結論付けた。
Pritchard and Donnelly, 1999 “Combined secondary enrichment of primary enrichment broths increases Listeria detection,” Journal of Food Protection, Vol. 62, No. 5, pp. 532-535において、Donnellyのグループは、熱損傷したリステリア細胞の代わりに実世界の試料を使用して、1992年論文の結果の再現を試みた。環境試料および食品試料の両方において23.8%が少なくとも1つの検査方法によってリステリアに陽性であった。彼らが発見したのは、LRBまたはUVMを単独で使用してもリステリア陽性試料を同定する可能性を増加しないが、両方の富化ブロスを混合した組み合わせた二次富化を行うと増加するということである。彼らは、試料を2つに分割し、各半分をUVMまたはLRBで24時間富化し、その後両方の一次富化物を混ぜて24時間二次富化物し、そこからの培養物を検出することと、両方の一次富化物につき完全な手順を実行した後、24時間UVMまたはLRBで富化するという独立した二次富化を行った。
本明細書で開示のアッセイは、非常に短い時間で生リステリア細胞による汚染を検出することが可能である。いくつかの実施形態では、アッセイは、試料中に存在し得る非標的微生物の増殖を選択的に抑制する選択剤をも含む。もちろん、このような薬剤は、程度が低いものの、試料中のリステリアの増殖に影響を与える可能性がある。選択的抑制剤のこの使用は、アッセイの性能のばらつきを低減すると考えられる。選択剤の存在及びアッセイ期間の短さ(ファージによる標的細胞の効率的な感染が必要である)を考慮すると、リステリアの修復に関する文献は、アッセイの性能を最大にするためにウェイクアップ期間が必要であろうことを示唆している。しかし、上述したように、少なくとも1つのウェイクアップ形式では、食品加工施設から採取した環境試料のアッセイの性能に影響を与えなかった。
本開示のアッセイにおけるリステリアの検出に対する選択剤(アクリフラビン0.012g/Lおよびナリジクス酸0.02g/L)の添加の効果を決定するために、L.モノサイトゲネス1839株の一晩培養物の10倍希釈系列(1x10-1〜1x10-8)を0.5xBHIを用いて作製し、1スポット250μlの各希釈液を6スポット、18時間ステンレス鋼表面上で乾燥させた。陰性対照として、6スポットの滅菌0.5XBHIを表面上で乾燥させた。18時間後、スポットを、本明細書に記載のようにLetheenブロスを含む3Mスポンジスティックで拭って、これらのスポンジをその袋内で2時間30℃インキュベートした。2時間後、過剰のLetheenブロス(4〜5mL)をスポンジから取り除き、同量のLP40::nluc、A511::nluc、およびLP124::nlucを、2.25x108 pfu/mLの総ファージで含む0.5xBHIgg(グリセロールおよびグルコースを含む0.5XBHI)またはSIB(BHIgg + 選択剤)のいずれか6mLを、3つのスポンジ/希釈液および3つの陰性対照に添加した。30℃で4時間インキュベートした後、スポンジを絞って、各スポンジから400μlを取り出し、遠心分離し、300μlを300μLの検出試薬入りの検出用の新しいチューブに移した。検出限界値を決定するために、(設定に応じてBHIggまたはSIBのいずれを含む)3つの陰性対照を使用した。
選択剤がアッセイ性能を阻害する場合、選択剤を含む設定だとアッセイの感度が低くなるおよび/またはアッセイにより陽性と見出されたスポンジからの光量(RLU)がBHIggに比べて低くなってしまう。もしくは、何も影響しない場合、感度およびRLUは、両方の設定において同等である。
データを表17に示す。各試料の記載値は、各スポンジ液のRLU/300μlとして表示される。表中の網掛けされていない細胞は得られたRLUがLLODより高いことを示し(陽性の結果として同定される)、網掛けされた細胞は測定したRLUがLLODより低いことを示している(陰性の結果として同定される)。記載された平均値は、3つのスポンジ/希釈液/条件の平均RLUを表す。各設定(BHlgg対SIB)の陽性試料間で観察された光の出力に統計的な差はなかったので(P> 0.5)、選択剤の添加は各条件から得られるシグナルのレベルに影響を与えないことが示唆される。
この結果は、生細胞の存在についてアッセイする前に環境試料から採取されたリステリアを復活させるというよく知られた必要性を考慮すると予想外のことである。この結果は、選択薬剤がアッセイの性能を低下させることなく、このアッセイの状況において使用し得ることを意味する。
実施例15:リステリアパネル
リステリア種や亜種の多様な組み合わせを含む細菌株パネルを、リステリアファージの特徴付けのために選択した。パネルは、食品加工工場や食品小売店を含む様々な地理的および環境的なニッチから単離された株を含む。細菌株パネル内における自然変動が最大になるよう地理的に十分離れた食品加工環境から細菌株を得るように、特に配慮した。
パネルの組み合わせは、当初272個のリステリア単離株を含み、リステリアの4つの主な種(L.モノサイトゲネス、L.イノキュア、L.ウェルシメリおよびL.ゼーリゲリ)を代表する(表18)。一般的に、データの亜種への応用が意味あるものとするために、確実に十分詳細にカバーするよう、各種内のパネルは様々な亜種の代表的な単離株を含む。細菌パネル用の株の選択は、特定の株の食品環境内における普及度およびヒトの疾患への関連性に基づいた。小売食品店の環境スクリーニングでは、最も一般的に同定されるリステリア亜種を識別するためにアレロタイプを用い、特定のアレロタイプは、同定種の集団内で非常に現れやすいことが確認された(Williams, S. K. et al., J Food Prot 74, 63-77 (2011); Sauders, B. D. et al., Appl Environ Microbiol 78, 4420-4433 (2012))。食品やヒトの疾患からの単離株を代表する最も一般的なリボタイプの各々に由来する10個のL.モノサイトゲネス株を、採取用に選択した。これらの集団は、大きく重複しており、普及度と強く相関しているため、食品加工工場で同定するのに最も有用な株を代表する。ヒト疾患および食品加工工場で単離されたリボタイプに基づきL.モノサイトゲネス株のカバー範囲を見ると、構築されたパネルは、それぞれ、〜86%および91%のカバー率を表す。10株の各L.モノサイトゲネスリボタイプを選択する目的は、集団内の自然変動の識別を可能にし、L.モノサイトゲネス種を確実に合理的に完全にカバーすることであった。
L.モノサイトゲネスを超えて拡がる同属内の他の種をカバーする為に、追加の種および亜種のバリエーションを考慮して、さらなる株をパネル用に選択した。再び、食品加工工場で一般的に同定される種および亜種に焦点を当てた。L.ウェルシメリ、L.イノキュア、およびL.ゼーリゲリの最も一般的なアレロタイプをそれぞれ代表する10個の単離株を選択した。構築されたパネルは、L.イノキュアの96%、L.ゼーリゲリの98%、およびL.ウェルシメリの100%をカバーし(Saunders et al.により同定されたリボタイプによる)、リステリア属を正確に代表するものである。このように組み合わせたリステリア宿主パネルは、任意のバクテリオファージのリステリア属に対する宿主範囲を分析するためのツールとして機能する。従って、このパネルは、任意の所与のファージの標的細菌を規定するのに使用できる。
パネルのメンバーの属、種、および亜種を表18に示す。
実施例16:プレートベースのファージ宿主範囲アッセイ
所与のバクテリオファージの宿主範囲を定量化するために、所与の単離株に対するバクテリオファージのプラーク形成効率を、当該バクテリオファージに対する参照株、通常は、バクテリオファージの産生に使用する株、に対し標準化した。プラーク形成効率を決定するために、ファージの希釈系列を作成し、各宿主における力価を測定した。これは、本明細書に記載する前から、ファージ宿主範囲を分析する標準的な方法であった。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)を参照のこと。
特定のバクテリオファージの宿主範囲を決定するためにリステリア細菌株のパネルを使用した。これを行うために、検査対象の各リステリア株の培養を、5mlのLBL1中で開始し、オービタルシェーカー内で30℃で一晩増殖させ、16時間増殖させた。各細菌宿主株について、30 μlの16時間培養物を270 μlの新鮮なLBLl培地と混合した。各細胞希釈物に、4mlのLBLl軟寒天を添加し、100mmのペトリ皿のLBLl寒天上にオーバーレイした。軟寒天のオーバーレイは、室温で冷却して凝固させた。さらに、参照株(A511およびP100についてはFSL F6-367)を宿主範囲の単離株と同様に処理した。LBLl培地を用いるバクテリオファージの10倍希釈系列を10-1〜10-8で調製した。バクテリオファージの各希釈物を5μlで、軟寒天のオーバーレイ上にスポットし、この液体を吸着させてから、このプレートを16時間30℃でインキュベートした。インキュベーション後、各希釈系列に存在するプラークを計数し参照株と比較して、各宿主範囲の単離株のプラーク形成効率を求めた。宿主範囲は、実験宿主上で観察された力価を参照株と比較した割合として表した。参照株より10%以上高いプラーク形成効率を示した細菌株(表19、濃い灰色の網掛け部)が宿主範囲内であると考えられた。参照株より10%未満であるが0.01%より高いプラーク形成効率を示した細菌株(表19、薄い灰色の網掛け部)は、ファージに弱い感受性があると考えられた。参照株の0.01%未満のプラーク形成効率を示した細菌株(表19、網掛けなし)は、ファージの宿主範囲外であると考えられた。検査した細菌株の多くに見られた現象は、「細胞外殺傷」(extra cellular killing:ECK)としてなどの文献や当該分野において記載されているものである(表19、黒部)。例えばShaw et al.の(J Immunol Methods. 1983;56(1):75-83)を参照のこと。高いファージ濃度の芝生を完全に除去したとき、株を特定のファージのECKを示すものとして規定したが、それに続く希釈物ではクリアにならなかった。
プレートベースの宿主範囲を決定してリステリア単離株ライブラリに対するA511およびP100の宿主範囲を概算した。細菌株ライブラリにおいて検査した272株のうち、67株および120株がそれぞれA511およびP100のプラーク形成を支持した(表19)。この方法の最大の制限事項は、所与のバクテリオファージのライブラリ全体を処理するのに必要な時間が長いこと、そしてECK現象により全宿主範囲を決定することができないことであった。検査した宿主範囲パネルの272個の細菌株のうち、バクテリオファージA511およびP100については、それぞれ、117および42のECKを示し、これらの株の宿主範囲に関する情報は得られなかった。さらに、ECK現象の観点およびプレートで増殖させた細菌と液体培養で増殖させた細菌と間には一般的に差異があるため、宿主範囲を決定するためのプレートベースの方法は、液体ベースの方法での宿主範囲を表していない可能性があると仮定した。
実施例17:液体培養ファージの宿主範囲アッセイ
プレートベースの宿主範囲方法においてA511およびP100の両方によって実証された細胞外殺害(ECK)現象が広く見られたので、プレートベースは、いずれのファージの宿主範囲を決定するものとして使用可能な程度に有用ではないことが示される。これらの欠点を克服するために、新規な液体ベースの宿主範囲アッセイを開発した。液体ベースの宿主範囲アッセイは、培養物の光学密度をバクテリオファージの有無間で比較することにより特定の細菌単離株に感染するファージの能力を決定するエンドポイントアッセイである。
リステリア宿主パネル株のコレクションを、ブレインハートインフュージョン(BHI)寒天プレート上に設置し、単一コロニーを、滅菌通気性の滅菌膜で覆われた2mlの深い96ウェルディッシュ内の1mlのBHI液体に接種し、16時間30℃で増殖させた。当該96ウェルプレートから得た16時間後の培養物をそれぞれ、300 μl平底光学96ウェルプレート内で198 μlのLBL1で希釈し、その後1X 105 pfuのバクテリオファージまたは等量のLBL1のいずれかを96ウェルプレートの各ウェルに添加した。この濃度のバクテリオファージ及び細菌細胞の希釈物は、各ウェル中の1の感染多重度(MOI)を近似するものである。ファージまたは対照を添加した後、プレートを50rpmで振とうしながら26℃で16時間インキュベートした。プレートを、96ウェルプレートリーダー(Biotek Eonマイクロプレートリーダー)に入れて、振盪しながら3秒間攪拌し、培養物から沈降した細胞を再懸濁した。攪拌後、各ウェルの光学密度を600nm(OD600)の波長光で測定した。未感染細菌単離株に対するバクテリオファージの存在下における細菌単離株のOD600の比率を、細菌株に対する感染の効率を決定する基準として使用した。0.4以下の比率を有する菌株(表19、濃い灰色の網掛け部)が、バクテリオファージによる感染に感受性があると考えた。
液体ベースの宿主範囲アッセイにより、細菌株のパネル内の272株のうち、それぞれ、A511およびP100に感受性のある細菌株を192および153株同定した(表19)。このデータは、A511が宿主範囲パネルの約70%に感染可能で、P100が約58%に感染可能であることを示している。液体ベースの宿主範囲に比べ、プレートベースの宿主範囲の方法では、それぞれA511およびP100プラーク形成効率を示す62個および120個の菌株を同定した。プレートベースの宿主範囲の方法で同定された株のうち、8個のA511感受性細菌株および3個のP100感受性細菌株のみは、液体ベースのクリアランスアッセイにおいてクリアランスを示さなかった。液体ベースのアッセイは、エンドポイントアッセイであり、バクテリオファージ感染と細菌細胞増殖間で動力学的相互作用を示すので、増殖速度が増加した特定の細菌株は、感染に感受性があっても培養物を飽和し得る場合がある、これは、プラークベースアッセイで同定された株のうち少数が液体アッセイで同定されなかった理由の説明となるかもしれない。
液体ベースの宿主範囲アッセイにより同定される菌株が増えたことは、プレートベースの宿主範囲アッセイにおいてECK表現型を示した株についてのデータも採取できることによるものであった。この表現型を示した大多数の株は、A511およびP100の宿主範囲に関し大量の未知の情報を提供した。液体ベースのアッセイは、プレートベースの宿主範囲方法の大きな欠点の一つであるECK現象を排除した。二つの要因がECKの排除に貢献した。一つめは、液体ベースのアッセイにおいて使用したファージの濃度を、プレートベースの宿主範囲アッセイでECKを示したファージの濃度より低い濃度で設定したことである。二つめは、液体感染内のバクテリオファージの濃度を局在化させなかったこと、かつMOIを低くしたことにより、細菌細胞とバクテリオファージ間の相互作用数を減少させたことである。相互作用を制限することにより、非生産的な出会いの確率を減少させ、重複感染、または1つの細胞に対し複数のバクテリオファージによる感染を低下させる。ECKを排除することによって、バクテリオファージに対する特定の細菌細胞の感受性を測定するための感度が大幅に上昇し、リステリア種全体におけるバクテリオファージの宿主範囲をより正確に示した。
バクテリオファージの宿主範囲の決定について、液体ベースの宿主範囲アッセイは、プレートベースのシステムを使用する従来の方法を超える実質的な進歩を示した。従前の文献では、プレートベースの方法以外の形式でこれらのバクテリオファージを増殖させる能力について報告されていなかった。液体ベースの宿主範囲のアッセイを実施可能な速度が速まるので、バクテリオファージの宿主範囲を決定する速度も、パネルが組み合わされているので、実験室において手作業で行う場合7〜10日から数時間に短縮するという意味でも、液体形式は有用である。さらに、宿主の感受性にスコア付けをするハイスループットの性質により、複数のバクテリオファージの宿主範囲が同時に決定できるようになる。これは、従前では不可能であったことである。複数のバクテリオファージを同時に処理することができるので、細菌培養物の生理学的特性と培地のロット間のばらつきを最小にすることによりバクテリオファージのより直接的な比較が可能になる。速度の増加とバクテリオファージの直接的な特徴付けが一緒になって、本明細書に記載のバクテリオファージ操作について、複数のファージの処理と順位付けを迅速化することが可能になった。また、液体ベースの宿主範囲アッセイにより、予測される製品において可能性のあるバクテリオファージの機能を、プレートベースの宿主範囲検定に比べより正確に決定することが可能になった。速度の増加、より直接的な比較が可能になったこと、そして最終製品に対しより直接的な方法でバクテリオファージの機能を評価することが可能になったことを総合すると、液体ベースの宿主範囲アッセイは、ほとんどの場合、プレートベースの宿主範囲方法よりもかなり有用である。
P100およびA511バクテリオファージのカクテルの有効性は、特定の株に感染するバクテリオファージの各々の能力によって決定することができる。P100およびA511のカクテルによる宿主パネルの感染は、個々の宿主範囲から推測されるものより追加的な宿主範囲を示す。感染に単一のバクテリオファージまたは複数のファージカクテルを使用したかにかかわらず、感染の過程で最適なルシフェラーゼ産生に必要なバクテリオファージ濃度の観察に基づき、加えたバクテリオファージの濃度を1X107の総ファージ濃度で一定に維持した。A511およびP100のカクテルは、構築されたパネルの74%のカバー率を示す一方、個々のバクテリオファージは、それぞれ、70%および55%のカバー率を示す(表19)。パネルのカバー率が増加したのは、P100の感染に感受性のある株のサブセットを大きく重複してカバーされるファージが、A511株では完全には含まれていなかったことから生じる。個々の液体ベースの宿主範囲からバクテリオファージカクテルの機能を推定できることは、新たなバクテリオファージを同定し、より完全なカクテルを構築する操作用に順位付けをするのに強力なツールとなる。
環境試料から採取した試料に対するP100およびA511のバクテリオファージカクテルの機能は、宿主パネルから厳密に推測できるわけではない。環境検査におけるサンプリングの場所は多様な細菌集団を代表するもので、個々の場所で複数のリステリア種または亜種が存在することが多い。地理的条件および供給源が多様な食品加工工場で環境サンプリングし、第3者機関の研究所にて培養ベースの検出方法を用いリステリアに陽性であることが確認された31個の試料を同定した。これらの31個の陽性試料のうち、10個の試料に複数のリステリア種または亜種が含まれていた。A511およびP100のカクテルは、31個中24個(77%)の陽性試料を検出可能であった。液体ベースの宿主範囲の結果と採取した環境試料との間に相関があるので、リステリア属をより完全にカバーするためにバクテリオファージカクテルを更に繰り返し作成し、液体ベースの宿主範囲方法の有用性を検証することが可能になる。
実施例18:追加リステリアファージの宿主範囲の特性評価
リステリア宿主株パネルの構築および迅速な液体ベースの宿主範囲アッセイの開発により、追加的なバクテリオファージを迅速にスクリーニングして、リステリア属のカバー範囲を拡げるようなバクテリオファージを同定することが可能になった。25個の追加バクテリオファージを、液体ベースの宿主範囲のアッセイにおいて宿主パネルに対してスクリーニングし、非感染対照と比較したクリアランスに基づいて宿主感受性について分析した。データを表20に示す。株は、0.4以下の比率を示した場合に宿主範囲内であると考えた(濃い灰色の網掛け部)。培養物のOD600の決定において、増殖培地または培養プレートの吸光度の補正をしなかったので、0.09という比率は、感染によって完全にクリアになった培養物のことである。様々なリステリア株により得られた最大OD600にばらつきがあるため、所与のバクテリオファージに感受性があるリステリア株を示す0.4という従来からの比率を選択した。0.4より大きいOD600の比率を有した株を、宿主範囲外であると考えた(表20、白抜き)。これらのアッセイした25個のバクテリオファージから、7個のバクテリオファージを選択し、有用な宿主パネルをカバーする基準に基づく操作に進めたところ、これらは、ゲノム配列がファージターゲティングベクターの開発に利用可能かつL.モノサイトゲネスEGD-e株に感染可能で、形質転換に最も適するリステリア株であった。
A511およびP100に加えて選択された7個のバクテリオファージは、LP44、LP40、LP48、LP99、LP101、LP124、LP125、およびLP143であった。個々に、リステリア宿主株パネルの78%を超えてカバーするファージはなかった。組み合わせると、これらのバクテリオファージは、液体ベース宿主範囲アッセイによる検査では宿主株パネルの約92%をカバーする(表20)。この組み合わせによるアプローチにより、採取した環境試料中のリステリアの存在の信頼性を決定するために必要なリステリア種をカバーするバクテリオファージカクテルの構築が可能になる。
二つの異なる遺伝的ペイロードであるホタルルシフェラーゼおよびNanoルシフェラーゼを用いてファージゲノムを操作した後、これらのファージの宿主範囲を再検査し、ゲノムの改変がファージの適応度に影響せず、標的細菌へ感染する能力も損なわないことを確認した。感染に対するバクテリオファージの組み合わせによる結果を調べるために、液体ベースの宿主範囲アッセイを用いて、ファージ感染の組み合わせの効果を検査した。これらの感染に、カクテル内の各ファージを等量にしてファージの最終濃度を1X105 pfuで一定に維持した(すなわち、2つのファージから構成されるカクテルの場合、2つのファージ成分のそれぞれが5X104 pfuである)。
実施例19:ファージT3のクローニングおよび遺伝子改変
A.ファージの捕捉
ファージT3を、以下の方法でクローニングと操作をした。宿主としてルリアブロス(LB)+2 mM塩化カルシウム中で増殖させた大腸菌DH10Bを用いてT3を増殖させた。ファージ溶解物を、10%ポリエチレングリコール8000を用い4℃で一晩インキュベーションし続いて遠心分離することで濃縮した。ペレットをSMバッファに再懸濁した(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001))。DNAは、NorgenファージDNAキット(カタログ番号46700)を用いて濃縮T3溶解物から調製した。T3のゲノム配列(NCBI寄託番号NC_003298)を用いて、pYES1Lベクター(Invitrogen(登録商標))内に、T3を捕捉するためのオリゴを設計した。使用したオリゴは:CCTAGTGTACCAGTATGATAGTACATCTCTATGTGTCCCTCCTCGCCGCAGTTAATTAAAGTCAGTGAGCGAGGAAGCGC [配列番号78]およびその相補鎖の二本鎖;並びに、GAACGACCGAGCGCAGCGGCGGCCGCGCTGATACCGCCGCTCTCATAGTTCAAGAACCCAAAGTACCCCCCCCATAGCCC [配列番号79]およびおよびその相補鎖の二本鎖であった。
オリゴを、精製T3 DNAおよび酵母人工染色体pYES1Lと共に、コンピテントMaV203酵母細胞(Invitrogen(登録商標))内に形質転換した。形質転換した細胞を、トリプトファンを含まない合成完全培地にプレーティングし、pYES1L上のTRPマーカーについて選択した。T3ゲノムの捕捉が成功したものを示すために、トリプトファンを含まない合成完全培地上で増殖したコロニーを、PCRによってスクリーニングした。
B.YACプラーク(YAC-to-plaque)
pYES1L-T3ファージ-YACを含む選択MaV203細胞を増殖させ、ガラスビーズ溶解物を調製し(Invitrogen(登録商標) High-Order Genetic Assembly kit)、トップ10の大腸菌内にエレクトロポレーションした。形質転換株を、LB + 2mM塩化カルシウム寒天と混合し、LB + 2mM塩化カルシウム寒天プレート上にプレーティングした。一晩のインキュベーションにより、捕捉されたファージに対応するプラークを明確化した。捕捉されたファージは、典型的には、形質転換あたり1x 102〜1x 104のプラークを産生した。
C.クローニングしたT3ファージへのルシフェラーゼの挿入
T3ゲノムの様々な位置に挿入するための発現カセットを設計した。カセットは、必要に応じて、無傷のルシフェラーゼオープンリーディングフレームが、内在性T3遺伝子の代わりに挿入されており、内在性T3プロモーターによりルシフェラーゼが発現されるようになっており、その後に、自身のプロモーターと共にURA3遺伝子が続き、そして場合により、ルシフェラーゼ遺伝子の3'末端の直接反復を含む。T3の0.7および4.3遺伝子に挿入された。T3::0.7 lucでは、ルシフェラーゼおよびURA3を含むカセットがT3の0.7遺伝子内に置換されている。T3::0.7DRlucでは、ルシフェラーゼ、URA3、およびルシフェラーゼ遺伝子の3'末端の直接反復を含むカセットがT3の0.7遺伝子内に置換されている。T3::4.3DRlucでは、ルシフェラーゼ、URA3、およびルシフェラーゼ遺伝子の3'末端の直接反復を含むカセットがT3の4.3遺伝子内に置換されている。T3::0.7IceuILucでは、ルシフェラーゼ、URA3、およびICeu Iホーミングエンドヌクレアーゼ部を含むカセットがT3の4.3遺伝子内に置換されている。
挿入のために、これらのカセットを、2つまたは3つのPCR産物として増幅した。1つ目は、ファージ内に、ルシフェラーゼおよび第1部位にフランキングするホモロジーを含み、2つ目は、URA3遺伝子および他の2つのPCR産物にフランキングするホモロジーを含み、3つ目は、ルシフェラーゼの断片およびファージ染色体上の異なる部位に対するホモロジーを含んでいた。構築物は、他の隣接配列を欠失せずに標的遺伝子を置き換えるように設計された。URA3を含む内部断片を、以下のプライマーを用いて増幅した:CCTCATAAAGGCCAAGAAGGGCGGAAAGTCCAAATTGTAAACGGATTCACCACTCCAAGA [配列番号80];およびATAATCATAGGTCCTCTGACACATAATTCGCCTCTCTGATTCAACGACAGGAGCACGATC [配列番号81]。
完全ルシフェラーゼ断片の3'末端を、以下の配列を用いて増幅した:AAGAATTGATTGGCTCCAATTCTTGGAGTGGTGAATCCGTTTACAATTTGGACTTTCCGC [配列番号82]。
短いルシフェラーゼ断片の5'末端を、以下の配列を用いて増幅した:TCCTGGCCACGGGTGCGCATGATCGTGCTCCTGTCGTTGAATCAGAGAGGCGAATTATGT [配列番号83]。
この重複カセットをT3の0.7遺伝子に挿入するために、完全ルシフェラーゼ断片の5'末端を、以下の配列を用いて増幅し:AATTTACTCTTTACTCTTACAGATAACAGGACACTGAACGATGGAAGACGCCAAAAACAT [配列番号84]、短いルシフェラーゼ断片の3'末端を、以下の配列を用いて増幅した:ATTCAGGCCACCTCATGATGACCTGTAAGAAAAGACTCTATTACAATTTGGACTTTCCGC [配列番号85]。
4.3遺伝子部位に挿入するために、完全ルシフェラーゼ断片の5'末端を、以下の配列を用いて増幅し:CTCACTAACGGGAACAACCTCAAACCATAGGAGACACATCATGGAAGACGCCAAAAACAT [配列番号86]、短いルシフェラーゼ断片の3'末端を、以下の配列を用いて増幅した:TGTTTGCGTGCTTGATTGATTTACTCATGTTGTGCTCCTATTACAATTTGGACTTTCCGC [配列番号87]。
各場合(0.7と4.3の遺伝子部位)において、3つのPCR産物を作成し、上述のT3-YACを含む酵母に共形質転換した。組換え体は、ウラシルの非存在下で細胞を増殖させることによって選択した。ウラシルの非存在下で増殖したコロニーを、PCRによりカセットの存在についてスクリーニングした。PCRによる陽性コロニーは、生存ファージを回収する(上記の)YACプラーク技術に供した。その後、これらのファージを、PCRによってスクリーニングしカセットの存在を確認した。
D.組換えファージにおけるルシフェラーゼの発現
大腸菌細胞の一晩培養物をLB + 1 mM塩化カルシウムで1/100に希釈し、対数期中期になるよう増殖させた(約2時間半)。細胞を希釈し合計100μlにして、過剰のファージを感染させた(感染あたり1 x 107個のファージ)。感染は振とうさせずに37℃で行った。90分後、100μlのPromega(登録商標)Steady-Gloルシフェラーゼ検出試薬を、20μLの感染物に加え、直ちに感染物をPromega(登録商標)GloMax 20/20で読み取った。異なる操作を施したファージに感染させた細胞は、発現レベルが異なっていたが、T3::0.7Luc、T3::DRLuc、T3::4.3DRLuc、およびT3::0.7IceuILucに感染させた細胞は全て検出可能なレベルのルシフェラーゼを発現した。
実施例20:ファージT7のクローニングおよび遺伝子改変
A.ファージの捕捉
T7 lucは、実施例19のT3ファージの操作とやや異なる方法で作成した。
T7 dspB(本明細書で参照により援用するT. K. Lu and J. J. Collins, “Dispersing Biofilms with Engineered Enzymatic Bacteriophage,” Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 104, no. 27, pp. 11197-11202, July 3, 2007)、T7 dspBのゲノムDNA、YAC pYES1L、TTGTCTTTGGGTGTTACCTTGAGTGTCTCTCTGTGTCCCTCCTCGCCGCAGTTAATTAAAGTCAGTGAGCGAGGAAGCGC [配列番号88]およびその相補鎖の二本鎖;並びに、CCCGAACGACCGAGCGCAGCGGCGGCCGCGCTGATACCGCCGCCGCCGGCGTCTCACAGTGTACGGACCTAAAGTTCCCCCATAGGGGGT [配列番号89]およびその相補鎖の二本鎖を、MaV203酵母細胞(Invitrogen(登録商標))内に形質転換することにより、pYES1L内に捕捉した。これらのオリゴヌクレオチドは、T7ゲノム配列(NC_001604)とYACベクターの末端を架け渡すものである。
B.YACプラーク
クローニングしたT7ファージは、上記のように、YACプラークにすることができることが示された。
pYES1L-T7 dspBファージ-YACを含む選択MaV203細胞を増殖させ、ガラスビーズ溶解物を調製し(Invitrogen(登録商標) High-Order Genetic Assembly kit)、トップ10の大腸菌内にエレクトロポレーションした。形質転換株を、プレーティングし、一晩のインキュベーションにより、捕捉されたファージに対応するプラークを明確化した。
C.クローニングしたT7ファージへのルシフェラーゼの挿入
T7-dspB YACをガラスビーズ溶解物により精製し、EcoRIおよびHindIIIで切断した。ルシフェラーゼを、以下のプライマーを用いて増幅した:TAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGGAAGACGCCAAAAACAT [配列番号89];およびCCAAGGGGTTAACTAGTTACTCGAGTGCGGCCGCAAGCTTTTACAATTTGGACTTTCCGC [配列番号90]。
また、ACATTTTCTGGCGTCAGTCCACCAGCTAACATAAAATGTAAGCTTTCGGGGCTCTCTTGCCTTCCAACCCAGTCAGAAAT [配列番号91]およびその相補鎖の二本鎖も用いて、HindIIIで切断したYAC骨格を修復した。切断したファージYAC、ルシフェラーゼPCR産物、および二本鎖修復オリゴを、MaV203酵母細胞(Invitrogen(登録商標))内に共形質転換し、トリプトファンを含まない培地で選択したところ、1つのTRP+コロニーがあった。操作されたファージYACをPCRにより確認し、上記のようなYACプラーク技術によりファージ粒子内に変換した。
D.組換えファージに感染させた大腸菌におけるルシフェラーゼの発現
大腸菌細胞の一晩培養物をLB + 1 mM塩化カルシウムで1/100に希釈し、対数期中期になるよう増殖させた(約2時間半)。細胞を希釈し合計100μlにして、過剰のファージを感染させた(感染あたり1 x 107個のファージ)。感染は振とうさせずに37℃で行った。90分後、100μlのPromega(登録商標)Steady-Gloルシフェラーゼ検出試薬を、20μLの感染物に加え、直ちに感染物をPromega(登録商標)GloMax 20/20で読み取った。T7::Lucファージに感染させた細胞は全て検出可能なレベルのルシフェラーゼを発現した。
本発明は、特定の実施形態を参照して説明したが、当業者は本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を施してもよく、等価物を置換してもよいことを理解するべきである。さらに、本発明の目的、精神および範囲内で、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程または工程を適合させるために改変を行ってもよい。このような改変は全て、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。

Claims (36)

  1. 環境試料から得られる少なくとも1種の標的微生物に感染可能な少なくとも1種の組換えファージ;および、
    前記少なくとも1種の組換えファージが前記少なくとも1種の標的微生物内で増殖するのに適する少なくとも1つの水溶液;を含む、組成物であって、
    ここで、前記組換えファージは、マーカーをコードする異種核酸配列を含み、
    ここで、前記水溶液は、
    a)少なくとも1つの栄養剤;
    b)前記環境試料において少なくとも1つの非標的微生物の成長を阻害するのに適する少なくとも1つの選択剤;
    c)少なくとも1つのビタミン;
    d)少なくとも1つの二価金属;
    e)前記組成物をpH7.0〜7.5に維持可能な少なくとも1つの緩衝剤;
    f)前記環境試料内に存在する殺菌剤を中和するのに適する少なくとも1つの薬剤;および、
    g)ルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤:を含む、
    前記組成物。
  2. 前記少なくとも1種の組換えファージが、LP48::ffluc、LP99::ffluc、LP101::ffluc、LP124::ffluc、LP125::ffluc、LP143::ffluc、A511::ffluc、P100::ffluc、LP40::nluc、LP124::nluc、LP125::nluc、A511::nluc、またはP100::nlucより選択される、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記少なくとも1種の組換えファージが、前記組成物中に1×106〜1×1011 pfu/mlの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記少なくとも1種の組換えファージが、前記組成物中に1×107〜1×108 pfu/mlの濃度で存在する、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記少なくとも1種の組換えファージが、前記組成物中に1.5×107 pfu/mlの濃度で存在する、請求項4に記載の組成物。
  6. 前記少なくとも1種の組換えファージが3種の組換えファージを含み、各組換えファージが前記組成物中に1.5×107 pfu/mlの濃度で存在する、請求項5に記載の組成物。
  7. 前記少なくとも1つの栄養剤は、ブレインハートインフュージョン培地を含む、請求項1に記載の組成物。
  8. 前記少なくとも1つの選択剤は、LiCl、アクリフラビン、ナリジクス酸、およびシクロヘキシミドからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
  9. 前記少なくとも1つのビタミンは、酵母エキスを含む、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記少なくとも1つの二価金属は、CaCl2を含む、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記少なくとも1つの緩衝剤は、HEPES緩衝液を含む、請求項1に記載の組成物。
  12. 前記少なくとも1つの中和剤は、非イオン性界面活性剤、脱酸素剤、および乳化剤からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
  13. 前記少なくとも1つの中和剤または前記ルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤は、チオ硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、HEPES、およびレシチンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
  14. 前記水溶液は、1×ブレインハートインフュージョン培地;0.5%LiCl;0.002%ナリジクス酸;0.2%酵母エキス;2mM CaCl2、40mM HEPES、pH 7.4;1mMメタ重亜硫酸ナトリウム;0.1%チオ硫酸ナトリウム;0.5%ポリソルベート80;および0.1%レシチンを含む、請求項1に記載の組成物。
  15. 前記水溶液は、半濃度ブレインハートインフュージョン培地、5%重量/体積グルコース、1%体積/体積グリセロール、1%重量/体積LiCl、および0.002%重量/体積ナリジクス酸を含む、請求項1に記載の組成物。
  16. 前記マーカーは、ルシフェラーゼである、請求項1に記載の組成物。
  17. 前記ルシフェラーゼは、配列番号2に対して少なくとも70%同一である、請求項16に記載の組成物。
  18. 前記ルシフェラーゼは、配列番号4に対して少なくとも70%同一である、請求項16に記載の組成物。
  19. 前記ルシフェラーゼは、配列番号2または配列番号4より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の組成物。
  20. 前記マーカーは、親和性タグを更に含む、請求項16に記載の組成物。
  21. 前記親和性タグは、HISタグである、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記標的微生物は、サルモネラ属(Salmonella)、大腸菌群(coliform bacteria)、エシェリキア属(Escherichia)、赤痢菌属(Shigella)、リステリア属(Listeria)、クロストリジウム属(Clostridium)、ビブリオ属(Vibrio)、腸内細菌科(Entero bacteriacae)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、バチルス属(Bacillus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、レンサ球菌属(Streptococcus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、およびエルシニア属(Yersinia)からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
  23. 前記標的微生物は、大腸菌(E. coli)である、請求項1に記載の組成物。
  24. 前記標的微生物は、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア・ゼーリゲリ(Listeria seeligeri)、リステリア・イバノヴィ(Listeria ivanovii)、リステリア・グレイ(Listeria grayi)、リステリア・マルティ(Listeria marthii)、リステリア・ロコルティ(Listeria rocourti)、リステリア・ウェルシメリ(Listeria welshimeri)、リステリア・フロリデンシス(Listeria floridensis)、リステリア・アクアティック(Listeria aquatic)、リステリア・コルネレンシス(Listeria cornellensis)、リステリア・リパリア(Listeria riparia)、およびリステリア・グランデンシス(Listeria grandensis)からなる群より選択されるリステリアである、請求項22に記載の組成物。
  25. 請求項1の組成物;および、
    前記少なくとも1種の標的微生物による接着を支持可能な固体基質:を含むキット。
  26. 環境試料における標的微生物の存在または不存在を決定する方法であって、
    該方法は、
    環境試料を採取する工程;
    前記環境試料を、環境試料から得られる少なくとも1種の標的微生物に感染可能な少なくとも1種の組換えファージであって、マーカーをコードする異種核酸配列を含む前記組換えファージに接触させる工程;
    前記組換えファージが前記環境試料に関連して存在する前記標的微生物に感染するのに十分で、かつ前記標的微生物が前記異種核酸配列によりコードされる前記マーカーを産生するのに十分な条件を、前記ファージに暴した環境試料に提供する工程;および、
    前記ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する工程:を含み、
    ここで、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから前記標的微生物の存在または不存在を検出するまでの時間が、1分〜6時間である、前記方法。
  27. 前記少なくとも1種の組換えファージは、LP48::ffluc、LP99::ffluc、LP101::ffluc、LP124::ffluc、LP125::ffluc、LP143::ffluc、A511::ffluc、P100::ffluc、LP40::nluc、LP124::nluc、LP125::nluc、A511::nluc、またはP100::nlucより選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 前記組換えファージが前記環境試料に関連して存在する前記標的微生物に感染するのに十分な条件を、前記ファージに暴した環境試料に提供する工程は、
    前記少なくとも1種の組換えファージが前記少なくとも1種の標的微生物内で増殖するのに適する少なくとも1つの水溶液に、前記ファージに暴した環境試料を曝すことを含み、
    ここで前記溶液は、
    a)少なくとも1つの栄養剤;
    b)前記環境試料において少なくとも1つの非標的微生物の成長を阻害するのに適する少なくとも1つの選択剤;
    c)少なくとも1つのビタミン;
    d)少なくとも1つの二価金属;
    e)前記組成物をpH7.0〜7.5に維持可能な少なくとも1つの緩衝剤;
    f)前記環境試料内に存在する殺菌剤を中和するのに適する少なくとも1つの薬剤;および、
    g)ルシフェリンの分解を防止するための少なくとも1つの薬剤、を含む、
    請求項26に記載の方法。
  29. 前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから前記標的微生物の存在または不存在を検出するまでの時間は、4時間以下である、請求項26に記載の方法。
  30. 前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから前記標的微生物の存在または不存在を検出するまでの時間は、1時間以下である、請求項29に記載の方法。
  31. 前記ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する工程は、
    前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから30分後において、100個の標的微生物細胞数という検出の下限値を含む、請求項26に記載の方法。
  32. ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する前記工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから60分後において、10個の標的微生物細胞数という検出の下限値を含む、請求項26に記載の方法。
  33. ファージに暴した環境試料をアッセイして、前記マーカーの存在または不存在を検出し、前記標的微生物の存在または不存在を決定する前記工程は、前記環境試料を前記組換えファージに接触させてから180分後において、1個の標的微生物細胞数という検出の下限値を含む、請求項26に記載の方法。
  34. 前記方法の精度は、環境試料に対し少なくとも90%であり、
    前記方法は、代謝的に活性な標的微生物を含む対照試料では、約60分以内に検出されるのが約10個以下の細胞数という検出の下限値を有する、請求項26に記載の方法。
  35. 前記方法の特異性は、少なくとも90%である、請求項26に記載の方法。
  36. 前記方法の感度は、少なくとも80%である、請求項26に記載の方法。
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