JP2020089309A - ウエルシュ菌を検出または増菌するための培地およびその検出または増菌方法 - Google Patents

ウエルシュ菌を検出または増菌するための培地およびその検出または増菌方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来法(TSC(Tryptose Sulfite Cycloserine)寒天培地を用いる方法と、卵黄加CW(Clostridium Welchii)寒天培地を用いる方法)と比べてより正確、簡便かつ迅速にウエルシュ菌(Clostridium perfringens)を検出または増菌するための培地および同培地を用いたウエルシュ菌の検出または増菌方法を提供すること。【解決手段】亜硫酸塩およびレシチンを含む、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)を液体培養によって検出または増菌するための培地。【選択図】なし

Description

本発明は、ウエルシュ菌(Clostridium perfringensまたはClostridium welchii)を検出または増菌するための培地および同培地を用いたウエルシュ菌の検出または増菌方法に関する。
ウエルシュ菌は、偏性嫌気性のグラム陽性桿菌であり、動物の腸管内や土壌中に広く分布し、産生する毒素によって食中毒を引き起こす。ウエルシュ菌による食中毒は1事例あたりの患者数が多く、しばしば大規模発生があることが知られている(非特許文献1)。そのため、ウエルシュ菌の検出は食品衛生上極めて重要である。
ウエルシュ菌の検出および判定は、食品などの検体の粉砕液をスクリーニング培地で24〜48時間嫌気培養(一次培養)することで検出を行い、次にウエルシュ菌様のコロニーを釣菌し、これをチオグリコール培地などに植菌して24時間好気条件下で増菌培養し(二次培養)、その後、増菌した培養液に対してLS培地やNM培地を用いた確認試験を行うことによって判定がなされる(非特許文献2)。ウエルシュ菌の検出に用いられる従来の方法としては、TSC(Tryptose Sulfite Cycloserine)寒天培地を用いる方法と、卵黄加CW(Clostridium Welchii)寒天培地を用いる方法(以下「従来法」とする)が知られている。
TSC寒天培地を用いる方法は、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能を利用してウエルシュ菌を検出する方法である。具体的には、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能によって培地中の亜硫酸塩が還元され、これによって発生した硫化水素が培地中の鉄イオンと反応して硫化鉄が生じることにより、コロニーが黒色を呈する現象を利用する。コロニーが黒色を呈すればウエルシュ菌と推定し、コロニーが黒色を呈しなければウエルシュ菌とは推定されない(非特許文献2)。
他方、卵黄加CW寒天培地を用いる方法は、ウエルシュ菌の産生するレシチナーゼによるレシチン分解能を利用してウエルシュ菌を検出する方法である。具体的には、ウエルシュ菌の産生するレシチナーゼによって培地中の卵黄レシチンが分解され、コロニー周辺に白濁環が形成される現象を利用する。コロニー周辺に白濁環が形成されればウエルシュ菌と推定し、コロニー周辺に白濁環が形成されなければウエルシュ菌とは推定されない(非特許文献3)。このとき、ウエルシュ菌の乳糖分解能も併せて利用してウエルシュ菌を検出することもできる。具体的には、ウエルシュ菌によって培地中の乳糖が分解されて培地のpHが低下し、それによりpH指示薬(フェノールレッド)を含む培地が赤色から黄色へ変色する現象を利用する。この場合、コロニー周辺が赤色から黄色へ変色すればウエルシュ菌と推定し、コロニー周辺が赤色から黄色へ変色しなければウエルシュ菌とは推定されない(非特許文献3)。
厚生労働省ウェブサイト「細菌による食中毒 ウエルシュ菌による食中毒について(食品安全委員会)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/saikin.html#link03) 特定非営利活動法人「食の安全を確保するための微生物検査協議会」検査マニュアル専門委員会編 「食品からの定量法(集落計数法)によるウエルシュ菌試験法」 食の安全と微生物検査(検査マニュアルXII) Vol. 5 No. 2(2015) 日本食品微生物学会雑誌 Jpn. J. Food Microbiol., 25(2), 76-82 (2008)
上記のとおり、ウエルシュ菌の検出に用いられる従来法としては、TSC寒天培地を用いる方法と、卵黄加CW寒天培地を用いる方法が知られている。しかしながら、いずれの方法についても「正確性」について問題がある。TSC寒天培地を用いる方法では、ウエルシュ菌が存在するにも関わらず、上記の24〜48時間の一次培養の後であっても、コロニーが黒色を呈しないことが多く、すなわち偽陰性を生じることが多い。また、ウエルシュ菌以外の亜硫酸還元菌によってウエルシュ菌と同様に培地が黒色を呈することも多く、すなわち偽陽性を生じることも多い。他方、卵黄加CW寒天培地を用いる方法では、ウエルシュ菌と同様にレシチン分解能を有する黄色ブドウ球菌などによって培地上で白濁環が形成されることが多く、すなわち偽陽性を生じることが多い。
さらに、従来法は、「迅速性」および「簡便性」についても問題がある。上記のとおり、従来法では、ウエルシュ菌の検出には、確認試験を行う前に、24〜48時間の嫌気環境下での一次培養および24時間の二次培養が必須であるため、食品などの検体の粉砕から確認試験による判定結果が得られるまでに3〜4日間が必要となり、迅速性に劣る。そして、従来法では、このような煩雑な作業を必要とする嫌気培養と釣菌および植菌の作業を必要とする2段階の培養が実験操作を煩雑にするため、簡便性にも劣る。
そこで、本発明は、従来法と比べてより正確、簡便かつ迅速なウエルシュ菌を検出または増菌するための培地および同培地を用いたウエルシュ菌の検出または増菌方法を提供することを課題とする。
本発明者は、亜硫酸塩およびレシチンを同一の培地に加え、同培地を用いてウエルシュ菌を液体培養することにより、亜硫酸還元能およびレシチン分解能を併せ持つウエルシュ菌を従来法と比べてより正確、簡便かつ迅速に検出または増菌し得ること、そして、さらに同培地に乳糖を加えることによって、より高い検査の正確性を付与し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]
亜硫酸塩およびレシチンを含む、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)を液体培養によって検出または増菌するための培地。
[2]
亜硫酸塩が、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸アンモニウムからなる群から選択される、[1]の培地。
[3]
亜硫酸塩が、二亜硫酸ナトリウムである、[1]または[2]の培地。
[4]
還元剤をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかの培地。
[5]
還元剤が、ジチオスレイトールおよび/またはアスコルビン酸である、[4]の培地。
[6]
乳糖をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかの培地。
[7」
pH指示薬をさらに含む、[6]の培地。
[8]
鉄溶液を含まない、[1]〜[7]のいずれかの培地。
[9]
抗菌剤をさらに含む、[1]〜[8]のいずれかの培地。
[10]
液体培地である、[1]〜[9]のいずれかの培地。
[11]
[1]〜[10]のいずれかの培地を用いて、ウエルシュ菌を検出または増菌する方法。
[12]
ウエルシュ菌を培養する工程を含む、[11]の方法。
[13]
培養が好気培養である、[12]の方法。
[14]
培養が液体培養である、[12]または[13]の方法。
[15]
培養が24時間以内で行われる、[12]〜[14]のいずれかの方法。
[16]
培地に鉄溶液を入れる工程を含む、[11]〜[15]のいずれかの方法。
[17]
検出が、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能、レシチン分解能および/または乳糖分解能に基づく、[11]〜[16]のいずれかの方法。
[18]
生体試料、環境試料および/または食品試料を対象とする、[11]〜[17]のいずれかの方法。
[19]
[1]〜[10]のいずれかの培地および鉄溶液を含む、キット。
[20]
亜硫酸塩を含む、ウエルシュ菌を検出または増菌するための液体培地。
本発明は、亜硫酸還元能、レシチン分解能および/または乳糖分解能を同時に高感度で検出することができることから、従来法に見られる偽陽性や偽陰性の問題を解消することができる。また、本発明は、ウエルシュ菌を液体培養することにより、(1)従来法よりも亜硫酸還元能を正確に測定することができ、(2)従来法よりも実験の安全性や再現性を向上させることができ、(3)従来法では判別が難しかった黄色ブドウ球菌による卵黄反応とウエルシュ菌によるレシチナーゼ反応を区別できることから、ウエルシュ菌によるレシチン分解能を簡便に測定することができ、(4)従来法では2段階の培養が求められていた培養工程を1段階で行い、さらに培養時間を短縮して行うことができ、(5)従来法よりも多量の検体を培地に接種できることから検体中の菌体数が少なくても検出または増菌ができ、かつ、(6)ウエルシュ菌をより高密度かつ簡便に回収して同菌を直接的に様々な分子生物学的検査や生化学的性状の確認試験に供することにより、同菌に由来する遺伝子および/または毒素などを簡便に検出することができ、また生化学的性状からウエルシュ菌と簡便に確認することができる。すなわち、本発明は、従来法と比べてより正確、簡便かつ迅速にウエルシュ菌を検出または増菌するための培地および同培地を用いたウエルシュ菌の検出または増菌方法を提供することができる。
以下、本発明について、本発明の好適な実施態様に基づき、詳細に説明する。
1.ウエルシュ菌を検出または増菌するための培地
本発明において、ウエルシュ菌を検出または増菌するための培地は、亜硫酸塩およびレシチンを含む(以下「本発明の培地」とする)。また、本発明において、ウエルシュ菌の検出または増菌は、同菌の液体培養によってなされる。
(1)亜硫酸塩
一態様において、亜硫酸塩は、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸アンモニウムからなる群から選択される。一態様において、亜硫酸塩は二亜硫酸ナトリウムである。亜硫酸塩の濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害しない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.1〜5g/Lが好ましく、0.25〜4g/Lがさらに好ましく、0.5〜2g/Lが特に好ましい。
(2)レシチン
本発明において、レシチンは、リン脂質を含む脂質製品の総称である。一態様において、レシチンは卵黄を原料とする卵黄レシチンや大豆を原料とする大豆レシチンを用いることができる。一態様において、レシチンは、卵黄レシチンである。レシチンの濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害せず、また、ウエルシュ菌の産生するレシチナーゼを検出するのに十分な濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.08〜3.5mg/Lが好ましく、0.175〜1.75mg/Lがさらに好ましく、0.35〜1.4mg/Lが特に好ましい。
一態様において、レシチンを含む卵黄乳液を用いることができる。卵黄乳液の濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害せず、また、ウエルシュ菌の産生するレシチナーゼを検出するのに十分な濃度範囲であることが好ましく、具体的には、5〜200mL/Lが好ましく、10〜100mL/Lがさらに好ましく、20〜80mL/Lが特に好ましい。
(3)還元剤
一態様において、本発明の培地は、還元剤をさらに含む。一態様において、還元剤は、ジチオスレイトールおよび/またはアスコルビン酸の他にトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩である。ジチオスイレトールの濃度は、ウエルシュ菌に対する発育支持能の観点から、0.075〜1.5g/Lが好ましく、0.16〜1.2g/Lがさらに好ましく、0.6〜0.9g/Lが特に好ましい。アスコルビン酸の濃度は、ウエルシュ菌に対する発育支持能の観点から、0.075〜3.6g/Lが好ましく、0.16〜2.7g/Lがさらに好ましく、0.32〜1.8g/Lが特に好ましい。トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩の濃度は、ウエルシュ菌に対する発育支持能の観点から、0.1〜2.0g/Lが好ましく、0.25〜1.5g/Lがさらに好ましく、0.5〜1.2g/Lが特に好ましい。また、一態様において、本発明に用いる還元剤として、前記のものに加え、任意にシステインおよび/またはチオグリコール酸および/またはグルタチオンなどを培地に添加する。一態様において、還元剤は、ジチオスレイトールおよび/またはアスコルビン酸である。
(4)乳糖
一態様において、本発明の培地は乳糖をさらに含む。一態様において、乳糖はα体および/またはβ体である。乳糖の濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害せずガス産生を促進し過ぎない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.25〜20g/Lが好ましく、0.5〜10g/Lがさらに好ましく、1〜5g/Lが特に好ましい。
(5)pH指示薬
一態様において、本発明の培地はpH指示薬をさらに含む。本発明において、pH指示薬は、中性から酸性へのpHの変化に伴い変色を呈するものであれば任意のものでよい。一態様において、pH指示薬は、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、およびチモールブルーからなる群から選択される。一態様において、pH指示薬はフェノールレッドである。pH指示薬の濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害しない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、5〜240mg/Lが好ましく、10〜120mg/Lがさらに好ましく、20〜60mg/Lが特に好ましい。
(6)鉄溶液
本発明の培地において、鉄溶液は含まれるものでも含まれないものであってもよい。好ましくは、本発明の培地は鉄溶液を含まず、本発明の培地で培地の黄変およびレシチン分解による白濁環を確認した後に初めて培地に鉄溶液を加える。初めから鉄溶液が培地中に存在する場合、培地中でレシチン分解と硫化鉄生成が同時期に起こり、レシチン分解物が硫化鉄に覆われて検出できなくなる。鉄溶液を後から加えることで、亜硫酸還元能およびレシチン分解能を正確に測定することができる。
本発明において、鉄溶液とは、鉄が鉄イオンとして存在する任意の溶液を指し、例えば、鉄イオンを含む水溶液を指す。鉄イオンは、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能によって生じる硫化水素と反応して硫化鉄を生じるものであれば任意の形態であってよい。一態様において、鉄溶液は、クエン酸鉄アンモニウム、硝酸鉄および/または塩化鉄を含み、好ましくはクエン酸鉄アンモニウムを含む。
例えば、クエン酸鉄アンモニウム溶液を用いる際、クエン酸鉄アンモニウムの濃度は、本発明の培地に硫化鉄が視認できる程度に十分に生じる濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.01〜20g/Lが好ましく、0.05〜10g/Lがさらに好ましく、0.5〜5g/Lが特に好ましい。
(7)抗菌剤
一態様において、本発明の培地は抗菌剤をさらに含む。一態様において、抗菌剤は、セファロスポリン系抗菌剤、ジアミノピリミジン系抗菌剤、ポリエン系抗菌剤、ポリペプチド系抗菌剤、モノバクタム系抗菌剤、アミノグリコシド系抗菌剤、ホスホマイシンおよびサイクロセリンである。一態様において、セファロスポリン系抗菌剤は、セフスロジン、セファクロル、セフォテタン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、ロラカルベフ、セフジニル、セフジトレン、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソンおよびセフェピムを含む。一態様において、ジアミノピリミジン系抗菌剤は、トリメトプリムを含む。一態様において、ポリエン系抗菌剤は、アムホテリシンB、ナイスタチンおよびナタマイシンを含む。一態様において、ポリペプチド系抗菌剤は、バシトラシン、コリスチンおよびポリミキシンBを含む。一態様において、モノバクタム系抗菌剤は、アズトレオナムを含む。一態様において、アミノグリコシド系抗菌剤は、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ジベカシンおよびアルベカシンを含む。一態様において、セファロスポリン系抗菌剤、モノバクタム系抗菌剤、オキサセフェム系抗菌剤およびアミノグリコシド系抗菌剤は、抗細菌薬として使用され、ポリエン系抗菌剤は、抗真菌薬として使用される。
本発明において、抗菌剤は、ウエルシュ菌の発育に影響を与えずに夾雑菌の発育を特異的に抑制することが可能な抗菌剤を選択することが好ましい。一態様において、ウエルシュ菌を検出する際はサイクロセリンおよび/またはカナマイシンなどを選択する。サイクロセリンの濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害しない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.05〜2g/Lが好ましく、0.1〜1g/Lがさらに好ましく、0.25〜0.75g/Lが特に好ましい。また、カナマイシンの濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害しない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.025〜0.9g/Lが好ましく、0.05〜0.6g/Lがさらに好ましく、0.1〜0.3g/Lが特に好ましい。
(8)培地
本発明の培地は、ウエルシュ菌に生育環境を提供するものであれば任意の栄養素を含んでよい。一態様において、本発明の培地は、トリプトン、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、および/または塩類を含む。一態様において、ペプトンは肉ペプトンである。一態様において、塩類は、塩化ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸水素二カリウムなどを含む。
本発明の培地は、ウエルシュ菌に生育環境を提供するものであれば任意の形態であってよい。一態様において、本発明の培地は、乾燥した粉末の培地または液体培地である。本発明において、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能によって生じる硫化水素が本発明の培地から脱気しないように、本発明の培地は、液体培地であることが好ましい。
2.ウエルシュ菌を検出または増菌する方法
本発明において、ウエルシュ菌を検出または増菌する方法は本発明の培地を用いる(以下「本発明の方法」とする)。
(1)培養
一態様において、本発明の方法は、ウエルシュ菌を培養する工程を含む。
一態様において、本発明の方法における培養は好気培養である。
一態様において、本発明の方法における培養は液体培養である。
(2)培養時間
一態様において、本発明の方法における培養は24時間以内で行われる。培養時間は、ウエルシュ菌の十分な増殖を担保しつつも、本発明の方法によるウエルシュ菌の迅速な検出を実現できる範囲であることが好ましく、具体的には、8〜24時間が好ましく、12〜24時間がさらに好ましく、16〜24時間が特に好ましい。
(3)鉄溶液を入れる工程
一態様において、本発明の方法は、本発明の培地に鉄溶液を入れる工程を含む。好ましくは、本発明の培地で培地の黄変およびレシチン分解による白濁環を確認した後に初めて培地に鉄溶液を加える。このように鉄溶液を後から加えるのは、仮に初めから鉄溶液を培地に加えた場合、培地中でレシチン分解と硫化鉄生成が同時期に起こり、レシチン分解物が硫化鉄に覆われて検出できなくなるため、これを防ぐためである。
本発明において、鉄溶液とは、鉄が鉄イオンとして存在する任意の溶液を指し、例えば、鉄イオンを含む水溶液を指す。鉄イオンは、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能によって生じる硫化水素と反応して硫化鉄を生じるものであれば任意の形態であってよい。一態様において、鉄溶液は、クエン酸鉄アンモニウム、硝酸鉄および/または塩化鉄を含み、好ましくは、クエン酸鉄アンモニウムを含む。
例えば、クエン酸鉄アンモニウム溶液を用いる際、クエン酸鉄アンモニウムの濃度は、本発明の培地に硫化鉄が視認できる程度に十分に生じる濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.01〜20g/Lが好ましく、0.05〜10g/Lがさらに好ましく、0.5〜5g/Lが特に好ましい。
(4)ウエルシュ菌の検出
一態様において、本発明の方法におけるウエルシュ菌の検出は、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能、レシチン分解能および/または乳糖分解能に基づく。
(i)亜硫酸還元能
本発明において、亜硫酸還元能とは、亜硫酸塩を還元する能力または活性を指す。一態様において、亜硫酸塩は、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸アンモニウムからなる群から選択される。一態様において、亜硫酸塩は二亜硫酸ナトリウムである。亜硫酸塩の濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害しない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.1〜5g/Lが好ましく、0.25〜4g/Lがさらに好ましく、0.5〜2g/Lが特に好ましい。
ウエルシュ菌の亜硫酸還元能を利用してウエルシュ菌を検出する際、具体的には、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能によって培地中の亜硫酸塩が還元され、これによって発生した硫化水素が培地中の鉄イオンと反応して硫化鉄が生じることにより、培地底部に黒色の硫化鉄が沈殿を呈する現象を利用する。培地底部が黒色を呈すればウエルシュ菌が存在し、培地底部が黒色を呈しなければウエルシュ菌は存在しないと考えられる。
(ii)レシチン分解能
本発明において、レシチン分解能とは、ウエルシュ菌が産生するレシチナーゼによるレシチンを分解する能力または活性を指す。一態様において、レシチンは卵黄を原料とする卵黄レシチンまたは大豆を原料とする大豆レシチンである。一態様において、レシチンは卵黄レシチンである。レシチンの濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害しない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.08〜3.5mg/Lが好ましく、0.175〜1.75mg/Lがさらに好ましく、0.35〜1.4mg/Lが特に好ましい。
一態様において、レシチンを含む卵黄乳液を用いることができる。卵黄乳液の濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害せず、また、ウエルシュ菌の産生するレシチナーゼを検出するのに十分な濃度範囲であることが好ましく、具体的には、5〜200mL/Lが好ましく、10〜100mL/Lがさらに好ましく、20〜80mL/Lが特に好ましい。
ウエルシュ菌のレシチン分解能を利用してウエルシュ菌を検出する際、具体的には、ウエルシュ菌によって培地中の卵黄レシチンが分解され、培地上部に白濁環が形成される現象を利用する。培地上部に白濁環が形成されればウエルシュ菌が存在し、培地上部に白濁環が形成されなければウエルシュ菌が存在しないと考えられる。
(iii)乳糖分解能
本発明において、乳糖分解能とは、乳糖を分解する能力または活性を指す。一態様において、乳糖はα体および/またはβ体である。乳糖の濃度は、ウエルシュ菌の増殖を阻害せずガス発生を過剰に促進しない濃度範囲であることが好ましく、具体的には、0.25〜20g/Lが好ましく、0.5〜10g/Lがさらに好ましく、1〜5g/Lが特に好ましい。
ウエルシュ菌の乳糖分解能を利用してウエルシュ菌を検出する際、具体的には、ウエルシュ菌によって培地中の乳糖が代謝されることで酸が生じ、培地のpHが低下し、pH指示薬を含む培地が変色する現象を利用する。この場合、培地が変色すればウエルシュ菌が存在し、培地が変色しなければウエルシュ菌が存在しないと考えられる。
(5)試料
本発明に用いることができる試料としては、ヒトもしくは動物の糞便または肛門周囲もしくは直腸内壁などに由来する生体試料、病院内の任意の場所や湖沼や河川や上下水などに由来する環境試料、食材および/または食品や飲料などに由来する食品試料など、ウエルシュ菌が含まれる可能性のある試料であればいずれも対象となり得、好ましくは、食中毒の発生原因となるまたは発生原因と推定された食品試料である。食品試料は、例えば、生鮮食品、動物性食品、植物性食品、真菌類性食品、加工食品、嗜好食品、調理・調味用材料、飲料(水、ジュース、茶、コーヒー、清涼飲料水、アルコール飲料などを含む)、健康食品、加工材料などを含む。これらの検体を採取する方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、ウエルシュ菌は熱に強い芽胞を形成することから、採取した検体を加熱処理することも勧められる。一態様において、綿棒やピペットを用いた方法や箸またはスプーンなどを用いた方法が用いられる。一態様において、本発明の方法は、生体試料、環境試料および/または食品試料を対象とする。
3.ウエルシュ菌を検出するためのキット
本発明において、キットは本発明の培地および鉄溶液を含む(以下「本発明のキット」とする)。
一態様において、本発明のキットは、本発明の培地と鉄溶液をそれぞれ別々の容器に入れたものである。一態様において、本発明の培地は、ウエルシュ菌に生育環境を提供するものであれば任意の形態であってよい。一態様において、本発明の培地は、乾燥した粉末の培地または液体培地である。
本発明において、鉄溶液とは、鉄が鉄イオンとして存在する任意の溶液を指し、例えば、鉄イオンを含む水溶液を指す。鉄イオンは、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能によって生じる硫化水素と反応して硫化鉄を生じるものであれば任意の形態であってよい。一態様において、鉄溶液は、クエン酸鉄アンモニウム、硝酸鉄および/または塩化鉄を含み、好ましくは、クエン酸鉄アンモニウムを含む。
4.ウエルシュ菌による食中毒の診断方法
本発明において、ウエルシュ菌による食中毒の診断方法は、試料を本発明の培地に接種することによって、ウエルシュ菌を選択的に増殖させる工程を含む(以下「本発明の診断方法」とする)。一態様において、本発明の診断方法は、増殖させたウエルシュ菌が産生する毒素の有無を判定する工程をさらに含む。本発明の診断方法は、試料におけるウエルシュ菌の有無を選択的に増殖させることによって判定し、疾患の原因がウエルシュ菌であるか否かを診断またはその助けとなる情報を提供することができる。これにより、疾患の原因がウエルシュ菌であるか否かを正確に把握して適切な診断を行うことができ、また、発生原因を特定することでさらなる被害の拡大を防ぐことができる。
特に、本発明の培地は、液体培地であることが好ましい。これは、液体培地からウエルシュ菌を回収する方が同菌をより高密度かつ簡便に回収することができ、また回収した同菌を直接的に様々な分子生物学的検査や生化学的性状の確認試験に供することによって、同菌に由来する遺伝子および/または毒素などを簡便に検出でき、また生化学的性状からウエルシュ菌と確認することができるためである。
かかる分子生物学的検査は、例えば、免疫学的検査および遺伝子検査などが挙げられ、通常の免疫学的検査および遺伝子検査であればいずれも本発明に採用することができる。免疫学的検査としては、例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法(LIA)、酵素抗体法、蛍光抗体法、イムノクロマトグラフィー法(イムノクロマト法)、フィルター抗原アッセイ、免疫比濁法、ラテックス比濁法、ラテックス凝集反応測定法、赤血球凝集反応法または粒子凝集反応法などが挙げられ、迅速な診断に寄与する観点からイムノクロマト法が好ましい。遺伝子検査としては、PCR法など様々な核酸増幅手法による目的の遺伝子もしくは遺伝子断片の増幅、定量および/または検出、または、シークエンス法などによる遺伝子配列の決定などが挙げられる。
かかる生化学的性状の確認試験は、例えば、NM培地を用いる試験(運動性試験と硝酸塩還元試験)およびLG培地を用いる試験(乳糖分解能試験とゼラチンの液化試験)などが挙げられ、通常の確認試験であればいずれも本発明に採用することができる。
5.本発明の培地の製造方法およびその使用方法
本発明の培地は、通常の培地と同様に、熱に弱いとされている抗菌剤など以外の前記各成分を水などに溶解した後に高圧蒸気滅菌してから適切な温度まで冷やし、その後に抗菌剤などを加え溶解することによって製造することができる。
試料は、本発明の培地に直接接種することができる。本発明の培地を用いてウエルシュ菌を培養する際は、温度範囲は、ウエルシュ菌の十分な増殖を担保しつつも、本発明の方法によるウエルシュ菌の迅速な検出を実現できる範囲であることが好ましく、具体的には、25.0〜50.0℃が好ましく、30.0〜48.0℃がさらに好ましく、34.0〜46.5℃が特に好ましい。
<実施例1>
1.各培地の調製
本発明の培地、TSC寒天培地、および卵黄加CW寒天培地をそれぞれ表1〜3に記載される組成になるように調製した。
2.本発明の培地およびTSC寒天培地を用いたウエルシュ菌の検出
(1)本発明の培地を用いたウエルシュ菌の培養
10cfu/mLに調製したウエルシュ菌3株(ATCC13124、JCM3816、JCM5242)の菌懸濁液を本発明の培地に10μL加え、37±1℃で24、48、72時間好気培養した。各時間培養した培養液に、それぞれ、5g/Lのクエン酸鉄アンモニウム溶液を100μL加え、培地を観察した。なお、鉄溶液を後から加えるのは、仮に初めから培地中に鉄イオンが存在すると、培地中でレシチン分解と硫化鉄生成が同時期に起こり、レシチン分解物が硫化鉄に覆われて検出できなくなるため、これを防ぐためである。
(2)TSC寒天培地を用いたウエルシュ菌の培養
10cfu/mLに調製したウエルシュ菌3株(ATCC13124、JCM3816、JCM5242)の菌懸濁液をTSC寒天培地に10μL塗抹し、37±1℃で24、48、72時間嫌気培養した。各培養時間後に、培地を観察した。
3.本発明の液体培地およびTSC寒天培地での培養所見結果
両培地におけるウエルシュ菌の亜硫酸還元能の検出結果を表4に示す。本発明の培地は、ウエルシュ菌3株すべてがすべての培養時間で硫化鉄による黒色沈殿を呈した。しかしながら、TSC寒天培地ではウエルシュ菌3株すべてが24時間培養では硫化鉄による黒色を視認できず、ウエルシュ菌JCM3816とJCM5242が48時間培養でも黒色を視認できず、ウエルシュ菌JCM3816は72時間培養でも黒色を視認できなかった。
4.考察
上記の結果から、本発明の培地はTSC寒天培地よりもウエルシュ菌の亜硫酸還元能を短時間かつ正確に検出できたことから、より確実にウエルシュ菌を検出できることが分かった。本発明の培地がTSC寒天培地よりも短時間かつ正確にウエルシュ菌を検出できたのは、TSC寒天培地では亜硫酸還元能により発生した硫化水素が鉄イオンと反応することなく寒天培地から脱気してしまうが、本発明の培地では硫化水素が脱気することなく液体培地中に溶存し鉄イオンと反応したためと考えた。TSC寒天培地では、この様な寒天培地からの脱気を防ぐために混釈培養を行うこともある。しかしながら、混釈培養は、混釈の際に操作者が火傷を負う危険性や培地が急激に冷却されることで寒天が均一に固化せずに実験が正しく行われないといった欠点があり、日常検査には不向きである。よって、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能を検出する上で、本発明の培地は好ましいことがわかった。
5.本発明の培地および卵黄加CW寒天培地を用いたウエルシュ菌の検出
(1)本発明の培地を用いた各菌の培養
10cfu/mLに調製したウエルシュ菌3株(ATCC13124、JCM3816、JCM5242)、黄色ブドウ球菌3株(ATCC25923,分離株1、分離株2)および大腸菌1株(ATCC25922)の懸濁液を本発明の培地に10μL加え、37±1℃で24時間好気培養した。各時間培養した培地に、それぞれ、5g/Lのクエン酸鉄アンモニウム溶液を培養液に100μL加え、培地の培養所見を観察した。
(2)卵黄加CW寒天培地を用いた各菌の培養
10cfu/mLに調製したウエルシュ菌3株(ATCC13124、JCM3816、JCM5242)、黄色ブドウ球菌3株(ATCC25923,分離株1、分離株2)および大腸菌1株(ATCC25922)の懸濁液を卵黄加CW寒天培地に10μL塗抹し、37±1℃で24時間嫌気培養した。各培養時間後に、培地の培養所見を観察した。
6.本発明の培地および卵黄加CW寒天培地での培養所見結果
両培地における各菌の培養所見を表5にまとめる。本発明の培地は、ウエルシュ菌3株すべてが、亜硫酸還元能による黒色、レシチナーゼ産生能による白濁環、乳糖分解能による黄色を示した。一方、黄色ブドウ球菌3株すべてが、亜硫酸還元能による黒色およびレシチナーゼ産生能による白濁環を示さず、分離株1のみが乳糖分解能による黄色を示した。そして、大腸菌は乳糖分解による黄色のみを示した。他方、卵黄加CW寒天培地は、ウエルシュ菌3株すべてがレシチナーゼ産生能による白濁環の形成、乳糖分解による黄色を示した。黄色ブドウ球菌3株すべてが乳糖分解能による黄色を示し、分離株1が白濁環を形成した。そして、大腸菌は乳糖分解による黄変のみを示した。
7.考察
上記の結果から、本発明の培地はウエルシュ菌をウエルシュ菌として検出し、非ウエルシュ菌をウエルシュ菌として検出することは無かった。一方、卵黄加CW寒天培地は黄色ブドウ球菌分離株1をウエルシュ菌と誤って検出する結果となった。このことから、本発明の培地は卵黄加CW寒天培地よりも確実にウエルシュ菌を検出できることが分かった。本発明の培地が卵黄加CW寒天培地よりも正確に検出できたのは、卵黄加CW寒天培地が検査対象菌の生化学的特徴を2つ検出するのに対し、本発明培地が検査対象菌の生化学的特徴を3つ検出するために、より多くの情報からウエルシュ菌と推定できたためと考えた。また、黄色ブドウ球菌分離株1が卵黄加CW寒天培地では白濁環を形成したのに対し、本発明の培地では白濁環を形成せず培地全体が黄白色に濁っていたことで容易に非ウエルシュ菌と判断できたのも要因の一つである。一般的に、卵黄を含む培地で黄色ブドウ球菌が発育すると、黄色ブドウ球菌の産生するリパーゼが卵黄を分解し白濁環を形成する。しかしながら、本発明の培地で黄色ブドウ球菌が発育すると白濁環を形成せずに、培地全体が濁っていた。この理由として、本発明培地は寒天を含まないために分散性が卵黄加CW寒天培地よりも良く、卵黄分解物が拡散したためと考えているが、原因は不明である。なお、ウエルシュ菌では白濁環を形成した理由としては、黄色ブドウ球菌が産生するリパーゼとウエルシュ菌が産生するレシチナーゼでは、卵黄の分解の仕方が異なるためと考えているが、こちらも原因は不明である。よって、ウエルシュ菌を検出する上で、本発明の培地は好ましいことがわかった。
<実施例2>
1.実検体からの本発明の培地を用いたウエルシュ菌の検出
実検体(牛挽肉)を滅菌0.1%ペプトン加生理食塩水に加えストマッキング処理にて破砕し、これを検体液とした。この検体液を本発明の培地に1mL接種し、TSC寒天培地および卵黄加CW寒天培地に10μL塗抹した。その後、本発明の培地は好気条件下で24時間培養(37±1℃)し、TSC寒天培地は嫌気条件下で48時間培養(37±1℃)し、卵黄加CW寒天培地は嫌気条件下で24時間培養(37±1℃)した。培養後、本発明の培地は5g/Lのクエン酸鉄アンモニウム溶液を培養液に100μL加え、培養所見を観察し、ウエルシュ菌様の培養所見を呈した際は、培養液をLG培地に接種し嫌気条件下で24時間培養(37±1℃)し、確認試験を所定の工程に従って実施した。TSC寒天培地の培養所見を観察し、ウエルシュ菌様の培養所見を呈した際は、コロニーをチオグリコール培地に接種した後に24時間好気培養(37±1℃)を行い(増菌培養)、増菌培養液をLG培地に接種し嫌気条件下で24時間培養(37±1℃)し、確認試験を所定の工程に従って実施した。卵黄加CW寒天培地の培養所見を観察し、ウエルシュ菌様の培養所見を呈した際は、コロニーをチオグリコール培地に接種した後に24時間好気培養(37±1℃)を行い(増菌培養)、増菌培養液をLG培地に接種し嫌気条件下で24時間培養(37±1℃)し、確認試験を所定の工程に従って実施した。
2.結果および考察
確認試験の結果から、すべての培地を用いた検討からウエルシュ菌を検出できた。しかしながら、確認試験の結果が得られるまで、本発明の培地を用いた場合は48時間、TSC寒天培地を用いた場合は96時間、卵黄加CW寒天培地を用いた場合は72時間を必要とした。TSC寒天培地および卵黄加CW寒天培地の場合、確認試験を行うまでに、1段階目でTSC寒天培地又は卵黄加CW寒天培地によるスクリーニングを目的とする嫌気培養を行い、2段階目でチオグリコール培地による増菌培養を行う必要があるために、すべての工程を終えるのに2〜3日程度必要であるのに対して、本発明の培地は培養液中に十分にウエルシュ菌が増菌されていることから、1段階の好気培養である24時間で確認試験に供することができた。よって、本発明の培地は、実検体においても、従来法と比べてより正確、簡便かつ迅速にウエルシュ菌を検出できることがわかった。
なお、検体液を本発明の培地に接種し、好気条件下で培養し、逐次観察を行い培地の黄変および白濁環が見られた14時間後に5g/Lのクエン酸鉄アンモニウム溶液を培養液に100μL加え、硫酸鉄による黒色を確認後、培養液をLG培地に接種し嫌気条件下で24時間培養(37±1℃)することで、確認試験の結果が得られるまでの時間を38時間とし、必要時間の短縮もできた。これは、本発明の培地が好気条件下で培養が可能であり、TSC寒天培地の様に嫌気ジャーを開けるなどの動作が必要でないことから、逐次の観察が容易であるために必要時間を短縮できたことを理由とする。
さらに、本発明の培地は検体を1mL接種することができる。これは、通常、寒天培地に塗抹する検体量である10〜100μLの10〜100倍に匹敵する。より多くの検体量が接種できることから、例えば、ウエルシュ菌の混在数が少ない検体からも感度良くウエルシュ菌を検出できることが期待される。
本発明は、従来法と比べてより正確、簡便かつ迅速にウエルシュ菌を検出または増菌するための培地および同培地を用いたウエルシュ菌の検出または増菌方法を提供することができる。これにより、ウエルシュ菌による食中毒の大規模発生を予防するための有効な措置を実際の食品衛生現場などにて講じることができる。

Claims (20)

  1. 亜硫酸塩およびレシチンを含む、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)を液体培養によって検出または増菌するための培地。
  2. 亜硫酸塩が、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸アンモニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の培地。
  3. 亜硫酸塩が、二亜硫酸ナトリウムである、請求項1または2に記載の培地。
  4. 還元剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の培地。
  5. 還元剤が、ジチオスレイトールおよび/またはアスコルビン酸である、請求項4に記載の培地。
  6. 乳糖をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の培地。
  7. pH指示薬をさらに含む、請求項6に記載の培地。
  8. 鉄溶液を含まない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の培地。
  9. 抗菌剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の培地。
  10. 液体培地である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の培地。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の培地を用いて、ウエルシュ菌を検出または増菌する方法。
  12. ウエルシュ菌を培養する工程を含む、請求項11に記載の方法。
  13. 培養が好気培養である、請求項12に記載の方法。
  14. 培養が液体培養である、請求項12または13に記載の方法。
  15. 培養が24時間以内で行われる、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 培地に鉄溶液を入れる工程を含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 検出が、ウエルシュ菌の亜硫酸還元能、レシチン分解能および/または乳糖分解能に基づく、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 生体試料、環境試料および/または食品試料を対象とする、請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の培地および鉄溶液を含む、キット。
  20. 亜硫酸塩を含む、ウエルシュ菌を検出または増菌するための液体培地。


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